IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧

特開2023-164660通信装置、通信方法及び通信プログラム
<>
  • 特開-通信装置、通信方法及び通信プログラム 図1
  • 特開-通信装置、通信方法及び通信プログラム 図2
  • 特開-通信装置、通信方法及び通信プログラム 図3
  • 特開-通信装置、通信方法及び通信プログラム 図4
  • 特開-通信装置、通信方法及び通信プログラム 図5
  • 特開-通信装置、通信方法及び通信プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164660
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法及び通信プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
G08G1/09 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023152488
(22)【出願日】2023-09-20
(62)【分割の表示】P 2022132302の分割
【原出願日】2014-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】舘野 実
(72)【発明者】
【氏名】君塚 和弘
(57)【要約】
【課題】信号機が停止していることを検出し、通信により他の車両などに知らせる。
【解決手段】通信装置は、道路に設置された停止中の信号機、即ち動作していない信号機を検出するとともに、その信号機の位置を取得し、停止中の信号機の位置情報を外部装置に送信する。外部の装置は、例えば他の車両の車載器、情報を集中管理するセンターなどを含む。これにより、1つの車両により検出された停止中の信号機の位置情報を他の車両などに伝搬させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両とともに移動する通信装置であって、
前記車両が移動する道路に関する信号機であって、停止中の信号機を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した信号機が停止していることを示す信号機停止情報を前記車両の外部の装置に送信する第1の送信手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機の状態を示す情報を通信する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路に設置されている信号機は、例えば停電その他の原因で停止することがある。特許文献1は、停電により交差点の信号機が消えた場合に、蓄電体の電力を使用して信号機の近傍に設置されているLEDを点滅させることで、交差点の存在をドライバに認識させる技術を記載している。
【0003】
また、特許文献2は、移動体に搭載されたカメラなどによって取得された信号機の表示状態に基づいて進行方向の信号機の表示状態を予測し、予測された信号機の表示状態の情報と、運転者の挙動情報とに基づき、運転者に報知する報知情報の出力形態を変える手法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-41507号公報
【特許文献2】国際公開WO2008/038376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1の手法では、信号機が視認できる位置まで車両が接近しないと、信号機が停止していることがわからない。また、特許文献2は、信号機の表示状態が変化した場合に運転者に報知するが、信号機が停止している場合の報知については開示が無い。
【0006】
本発明の解決しようとする課題としては、上記のものが一例として挙げられる。本発明は、信号機が停止していることを検出し、通信により他の車両などに知らせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項に記載の発明は、車両とともに移動する通信装置であって、前記車両が移動する道路に関する信号機であって、停止中の信号機を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した信号機が停止していることを示す信号機停止情報を前記車両の外部の装置に送信する第1の送信手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例による信号機停止情報の通信方法を模式的に示す図である。
図2】車両に搭載されるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
図3】情報送信処理のフローチャートである。
図4】情報受信処理のフローチャートである。
図5】信号機停止情報の表示例を示す。
図6】第2実施例による信号機停止情報の通信方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1つの好適な実施形態では、車両とともに移動する通信装置は、前記車両が移動する道路に関する信号機であって、停止中の信号機を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した信号機の位置情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記停止中の信号機の位置情報を前記車両の外部の装置に送信する第1の送信手段と、を備える。
【0010】
上記の通信装置は、道路上設置された停止中の信号機、即ち動作していない信号機を検出するとともに、その信号機の位置を取得する。そして、停止中の信号機の位置情報を外部装置に送信する。外部の装置は、例えば他の車両の車載器、情報を集中管理するセンターなどを含む。これにより、1つの車両により検出された停止中の信号機の位置情報を他の車両などに伝搬させることができる。
【0011】
上記の通信装置の一態様は、前記車両の前方の画像を撮影する撮影手段を備え、前記検出手段は、前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、前記停止中の信号機を検出する。この態様では、撮影手段により得られた撮影画像に基づいて、停止中の信号機をリアルタイムで検出することができる。
【0012】
上記の通信装置の他の一態様では、前記第1の送信手段は、前記検出手段が前記停止中の信号機を検出した際に、前記撮影手段により撮影された画像を、前記停止中の信号機の位置情報に付加して送信する。この態様では、停止中の信号機の位置情報を受信した他の車両などの搭乗者は、撮影された画像を見ることにより、その停止中の信号機の実際の状態を知ることができる。
【0013】
上記の通信装置の他の一態様では、前記第1の送信手段は、前記車両の後続車に対して前記停止中の信号機の位置情報を送信する。これにより、後続車の運転者は、停止中の信号機がある交差点を通過する際に注意したり、その交差点を回避するように走行ルートを変更したりすることができる。
【0014】
上記の通信装置の他の一態様では、前記第1の送信手段は、前記検出手段が前記停止中の信号機を検出した時刻を、前記停止中の信号機の位置情報に付加して送信する。この態様では、複数の車両から停止中の信号機の位置情報を受信した場合に、時刻の情報に基づいて最新の情報を特定することが可能となる。
【0015】
上記の通信装置の他の一態様は、外部の装置から、前記停止中の信号機の位置情報を受信する受信手段と、前記停止中の信号機の位置情報が示す位置が、前記車両の現在位置から所定範囲内である場合に、当該停止中の信号機の位置情報を前記車両の外部の装置に送信する第2の送信手段と、を備える。この態様では、停止中の信号機の位置情報を有効に活用できる車両などに対してのみ情報を送信するとともに、その情報を活用できない遠方の車両などにまで情報が際限なく伝搬することを防止できる。
【0016】
上記の通信装置の他の一態様は、外部の装置から、前記停止中の信号機の位置情報を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した前記停止中の信号機の位置情報が示す信号機の動作の回復を検出する回復検出手段と、前記回復検出手段により前記動作の回復が検出されたときに、動作が回復した信号機の位置情報を外部の装置に送信する第3の送信手段と、を備える。この態様では、停止中の信号機の位置情報を受信した車両が、その信号機が回復したことを検出した場合には、回復した信号機の位置情報を他の車両などに送信するので、複数の車両間で信号機が回復したとの情報を共有することができる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態では、車両とともに移動する通信装置により実行される通信方法は、前記車両が移動する道路に関する信号機であって、停止中の信号機を検出する検出工程と、前記検出工程が検出した信号機の位置情報を取得する取得工程と、前記取得工程により取得された前記停止中の信号機の位置情報を前記車両の外部の装置に送信する第1の送信工程と、を有する。この方法によっても、1つの車両により検出された停止中の信号機の位置情報を他の車両などに伝搬させることができる。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態は、コンピュータを備え、車両とともに移動する通信装置により実行される通信プログラムであって、前記車両が移動する道路に関する信号機であって、停止中の信号機を検出する検出手段、前記検出手段が検出した信号機の位置情報を取得する取得手段、前記取得手段により取得された前記停止中の信号機の位置情報を前記車両の外部の装置に送信する第1の送信手段、として前記コンピュータを機能させる。このプログラムをコンピュータが実行することにより、上記の通信装置を実現することができる。このプログラムは記憶媒体に記憶して取り扱うことができる。
【実施例0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
[第1実施例]
(基本動作)
図1は、第1実施例による信号機停止情報の通信方法を示す。図1に示すように、車両1A~1Cは、ナビゲーション装置3を備える。また、車両1Aはカメラ32を搭載しており、車両前方の風景を撮影している。いま、何らかの原因により信号機2が停止している、即ち、信号機の赤、緑、黄色のいずれのランプも点灯していないものとすると、車両1Aは、カメラ32による撮影画像に基づいて、信号機2が停止していることを検出する。そして、車両1Aは周辺の車両1Bに対して、信号機が停止していることを示す信号機停止情報を送信する。信号機停止情報は、少なくとも停止している信号機の位置情報を含み、好ましくはさらにその信号機が停止していることを車両1Aが検出した時刻を含む。
【0020】
車両1Aから信号機停止情報を受信した車両1Bは、運転者に対して信号機2が停止していることを報知する。例えば、車両1Bに搭載されているナビゲーション装置3は、表示部に表示されている地図上に、停止している信号機を示すマークなどを表示する。これにより、車両1Bの運転者は、現在位置の周辺に存在する信号機が停止していることを知ることができる。
【0021】
さらに車両1Bは、一定条件下で車両1Aから受信した信号機停止情報を、周辺の他の車両に送信、即ち転送する。車両1Cも、信号機停止情報を受信すると、ナビゲーション装置3の表示部に表示された地図上に停止している信号機を示すマークなどを表示するとともに、一定条件下でさらに信号機停止情報を周辺の他の車両に送信する。こうして、車両1Aにより検出された停止中の信号機の情報が周辺の他の車両に拡散される。
【0022】
(ナビゲーション装置)
図2は、車両1A~1Cに搭載されるナビゲーション装置3の構成を示す。図2に示すように、ナビゲーション装置1は、自立測位装置10、GPS受信機18、システムコントローラ20、カメラ32、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、通信装置38、表示ユニット40、音声出力ユニット50、入力装置60を備える。
【0023】
システムコントローラ20、カメラ32、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0024】
自立測位装置10は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13を備える。加速度センサ11は、例えば圧電素子からなり、車両の加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサ12は、例えば振動ジャイロからなり、車両の方向変換時における車両の角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。距離センサ13は、車両の車輪の回転に伴って発生されているパルス信号からなる車速パルスを計測する。
【0025】
GPS受信機18は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波19を受信する。測位用データは、緯度及び経度情報等から車両の絶対的な位置(以後、「現在位置」とも呼ぶ。)を検出するために用いられる。
【0026】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23及びRAM(Random Access Memory)24を含んでおり、ナビゲーション装置1全体の制御を行う。
【0027】
インタフェース21は、加速度センサ11、角速度センサ12、距離センサ13、GPS受信機18とのインタフェース動作を行う。そして、これらから、車速パルス、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、絶対方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。
【0028】
CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ20を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置60を介して使用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。
【0029】
カメラ32は、車両の前方に取り付けられ、車両前方の風景を撮影する。撮影された画像は実写画像を用いたAR(Augmented Reality)表示に使用される他、停止中の信号機の検出に使用される。
【0030】
データ記憶ユニット36は、例えば、HDDなどにより構成され、地図データなどのナビゲーション処理に用いられる各種データを記憶する。通信装置38は、ネットワークを介してサーバなどとの間で無線通信を行うか、周辺の車両と車車間通信を行う。あるいは、それらの両方を行ってもよい。なお、通信装置38は、ナビゲーション装置1に内蔵される専用の無線通信ユニットであってもよく、有線又は無線で携帯電話と接続し、携帯電話の通信機能を利用してネットワークに接続するユニットであってもよい。
【0031】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データをディスプレイなどの表示装置に表示する。具体的には、システムコントローラ20は、データ記憶ユニット36から地図データを読み出す。表示ユニット40は、システムコントローラ20によってデータ記憶ユニット36から読み出された地図データなどを表示画面上に表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM)等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記憶するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備える。ディスプレイ44は、画像表示部として機能し、例えば対角5~10インチ程度の液晶表示装置等からなり、車内のフロントパネル付近に装着される。
【0032】
音声出力ユニット50は、システムコントローラ20の制御の下、データ記憶ユニット36又はRAM24等からバスライン30を介して送られる音声デジタルデータのD/A(Digital to Analog)変換を行うD/Aコンバータ51と、D/Aコンバータ51から出力される音声アナログ信号を増幅する増幅器(AMP)52と、増幅された音声アナログ信号を音声に変換して車内に出力するスピーカ53とを備えて構成されている。
【0033】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン、音声入力装置等から構成されている。入力装置60は、車内に搭載された当該車載用電子システムの本体のフロントパネルやディスプレイ44の周囲に配置される。また、ディスプレイ44がタッチパネル方式の場合、ディスプレイ44の表示画面上に設けられたタッチパネルも入力装置60として機能する。
【0034】
上記の構成において、カメラ32は本発明の撮影手段の一例であり、システムコントローラ20は本発明の検出手段、取得手段の一例であり、通信装置38は本発明の送信手段、受信手段の一例である。
【0035】
(情報送信処理)
次に、情報送信処理について説明する。図3は情報送信処理のフローチャートである。情報送信処理は、図1に示すように、情報発信車両である車両1Aのナビゲーション装置3により、所定時間毎に繰り返し実行される。詳しくは、ナビゲーション装置3のCPU22が、予め用意されたプログラムを実行することにより行われる。
【0036】
まず、CPU22は、車両1Aが信号機の周辺に到達したか否かを判定する(ステップS11)。道路に設置された信号機の位置は、データ記憶ユニット36に記憶されている地図データに含まれている。よって、CPU22は、車両1Aの現在位置の周辺に存在する信号機の位置情報を地図データから取得し、車両1Aの現在位置が信号機の位置から所定距離以内に到達したか否かを判定する。
【0037】
車両1Aが信号機の周辺に到達していない場合(ステップS11:No)、処理は終了する。一方、車両1Aが信号機の周辺に到達した場合(ステップS11:Yes)、CPU22は、カメラ32の撮影画像中において信号機が含まれるエリアを予測する(ステップS12)。詳しくは、CPU22は、車両1Aの現在位置及び進行方向、並びに地図データに基づいて、撮影画像において信号機が位置するエリアを予測する。
【0038】
次に、CPU22は、ステップS12において予測された撮影画像中のエリア内に信号機が存在するか否かを判定する(ステップS13)。具体的には、CPU22は、予め用意された信号機の外形形状を示すテンプレートを使用するなどして、撮影画像中の信号機の有無を判定する。なお、撮影画像中の信号機を検出する方法としては、既知の各種の画像認識手法を適用することができる。
【0039】
撮影画像中に信号機が含まれない場合(ステップS13:No)、処理は終了する。一方、撮影画像中に信号機が含まれる場合(ステップS13:Yes)、CPU22は、撮影画像中の信号機において、赤、緑、黄の3色のいずれかのランプが点灯しているか否かを判定する(ステップS14)。3色のいずれの色も点灯していない場合(ステップS14:No)、CPU22は、その信号機が停止中であると判定する(ステップS15)。なお、信号機の点灯色は時々刻々と変化するものであり、信号の切り替わりのタイミングや点滅信号の場合には一時的に全ての色が消灯することがあるため、ステップS14においてCPU22は、所定時間連続して3色のうちのいずれのランプも点灯していない場合に、その信号機が停止中であると判定する。
【0040】
信号機が停止中であると判定した場合、CPU22は、信号機停止情報を他の車両に送信する(ステップS16)。信号機停止情報は、少なくとも停止中と判定された信号機の位置情報を含み、好ましくは停止中と判定された時刻をさらに含む。
【0041】
一方、ステップS14において、赤、緑、黄の3色のうちのいずれかのランプが点灯していると判定された場合(ステップS14:Yes)、CPU22は信号機が動作中、即ち停止していないと判定し(ステップS17)、処理を終了する。
【0042】
以上のようにして、図1における車両1Aの如き情報発信車両は、停止中の信号機を検出して、周辺の車両に信号機停止情報を送信することができる。
【0043】
次に、ステップS16において、車両1Aの如き情報発信車両が信号機停止情報を送信する具体的な手法について説明する。1つの方法は、単純に情報発信車両の現在位置から、予め決められた所定距離内の不特定多数の車両に対して情報送信する、いわゆるブロードキャストと呼ばれる方法である。この場合、実際には、信号停止情報を必ずしも有効に活用できない車両、例えば、停止中の信号機が存在する道路とは異なる道路を走行している車両や、停止中の信号機が存在する道路を走行しているものの、反対車線を走行しているため停止中の信号機を通過しない車両などにも信号機停止情報が送信されることとなるが、その車両に特に悪影響を及ぼすものではなく特に問題とはならない。
【0044】
もう1つの方法は、その信号機停止情報を有効に活用できる車両、主として自車の後続の車両に限定して情報を送信する方法である。具体的には、例えば光通信など送信方向に指向性を持たせることができる通信方法を利用して送信する方法や、周辺の車両と予備通信を行って位置情報や進行方向情報などを取得し、自車の後方の所定距離以内の位置を自車と同一方向に走行している車両に限定して送信する方法などが考えられる。
【0045】
(情報受信処理)
次に、情報受信処理について説明する。図4は情報受信処理のフローチャートである。情報受信処理は、図1に示す車両1B、1Cのように、情報発信車両から送信された信号機停止情報を受信する車両のナビゲーション装置3により実行される。詳しくは、ナビゲーション装置3のCPU22が、予め用意されたプログラムを実行することにより行われる。
【0046】
まず、CPU22は、他の車両から信号機停止情報を受信したか否かを判定する(ステップS21)。信号機停止情報を受信していない場合(ステップS21:No)、処理は終了する。一方、信号機停止情報を受信した場合(ステップS21:Yes)、CPU22は、受信した信号機停止情報をRAM24などに一時的に記憶する(ステップS22)。
【0047】
次に、CPU22は、受信した信号機停止情報に基づいて、停止中の信号機の位置が、そのときにナビゲーション装置3のディスプレイ44に表示中の地図の範囲内であるか否かを判定する(ステップS23)。停止中の信号機の位置が表示中の地図の範囲内である場合(ステップS23:Yes)、CPU22は、その信号機が停止中であることを地図上に表示する(ステップS24)。例えば、CPU22は、図5(A)に示すマーク71を地図中に表示する。なお、同時に音声メッセージなどで報知してもよい。そして、処理はステップS25へ進む。
【0048】
一方、停止中の信号機の位置が表示中の地図の範囲外である場合(ステップS23:No)、処理はステップS25へ進む。なお、この場合でも信号機停止情報22はRAM24などに記憶されているので、CPU22は、その後の車両の走行により停止中の信号機が表示中の地図の範囲内に入ったときに、その信号機が停止中であることを示すマークなどを表示する。
【0049】
次に、CPU22は、停止中の信号機は車両の現在位置から所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS25)。この所定範囲は、信号機停止情報を有効に活用できると予想される範囲であり、例えば半径1km以内などに設定される。停止中の信号機が現在位置から所定範囲内である場合(ステップS25:Yes)、CPU22は、一時的に記憶している信号機停止情報を他の車両に送信する(ステップS26)。一方、停止中の信号機が現在位置から所定範囲外にある場合(ステップS25:No)、信号機停止情報を他の車両に送信することなく、処理は終了する。これにより、信号機停止情報が際限なく伝搬することを防止し、停止中の信号機の周辺に存在する車両のみに信号機停止情報を提供することが可能となる。
【0050】
上述のように信号機停止情報は好ましくは停止中の信号機を検出した検出時刻を含んでいる。受信した信号機停止情報はステップS22で一時的に記憶されるが、CPU22は、信号機停止情報に含まれている検出時刻から所定時間を経過した場合、その信号機停止情報を破棄すればよい。
【0051】
上記のように、一定条件下で信号機停止情報を他の車両に転送するようにしているので、一度ある車両から受信した信号機停止情報と同一の信号機に関する信号機停止情報を他の車両からも受信することがある。この場合、CPU22は、受信した複数の信号機停止情報に含まれる検出時刻を比較し、後から受信した信号機停止情報の検出時刻の方が新しい場合はその信号機停止情報を他の車両に送信する。一方、後から受信した信号機停止情報の方が古い場合には、その信号機停止情報を他の車両に送信せず破棄すればよい。なお、信号機停止情報が同一の信号機のものであるか否かは、信号機停止情報に含まれる位置情報を比較することにより判定することができる。即ち、位置情報が一致する信号機停止情報は同一の信号機についてのものであると判定すればよい。
【0052】
他の車両から信号機停止情報を受信した車両において、ナビゲーション装置3が経路案内を実行しており、受信した信号機停止情報が示す停止中の信号機の位置が案内経路上に存在する場合には、ナビゲーション装置3は、その停止中の信号機の位置を迂回する経路を自動的に再探索してもよい。また、その代わりに、ナビゲーション装置3は、その停止中の信号機が現在の案内経路上に存在することを運転者に伝え、そこを迂回する経路を再探索すべきか否かを運転者に確認するようにしてもよい。
【0053】
(変形例)
他の車両から信号機停止情報を受信した車両がその信号機を通過する際に既に信号機が回復して動作中となっており、カメラ32による撮影画像を解析して信号機の動作の復帰を検出した場合には、その車両は、その信号機の動作が回復したことを示す信号機回復情報を他の車両に送信することとしてもよい。信号機回復情報は、少なくともその信号機の位置情報を含み、好ましくはその信号機の回復が検出された時刻を含む。これにより、他の車両は、信号機回復情報を受信した場合には、信号機が停止中であることを示すマークを消去したり、音声メッセージにより信号機の動作の回復を運転者に報知したりすることができる。
【0054】
[第2実施例]
第1実施例では、情報発信車両のナビゲーション装置3は周辺の他の車両に信号機停止情報を送信している。その代わりに、第2実施例では、情報発信車両のナビゲーション装置3は信号機停止情報を路車間通信や電話回線などを介してセンターへ送信する。
【0055】
図6は、第2実施例における信号機停止情報の通信方法を模式的に示す。情報発信車両である車両1Aのナビゲーション装置3は、信号機2の撮影画像に基づいて停止中の信号機を検出すると、信号機停止情報を路車間通信のための路側機5へ送信する。路側機5はセンター(サーバ)7へ信号機停止情報を送信する。なお、信号機停止情報の内容は、第1実施例と同様に、少なくとも停止中の信号機の位置情報を含み、好ましくはさらに停止中の信号機の検出時刻を含む。
【0056】
センター7は、複数の情報発信車両から信号機停止情報を受信し、それらに含まれる停止中の信号機の位置情報を集計する。集計により得られた情報は、例えば警察署などに送信され、交通整理を行う警察官を配置するための情報などとして活用することができる。
【0057】
また、センター7は、停止中の信号機の位置情報に基づいて、例えば停止中の信号機から所定範囲内のエリアを配信エリアと決定し、その配信エリア内の路側機5に信号機停止情報を送信する。図6に示すように、配信エリア内を走行している車両1Dは、路側機5から信号機停止情報を受信することができる。このように、第2実施例によれば、短時間のうちに広範囲を走行している車両に対して信号機停止情報を送信することが可能となる。
【0058】
センター7から信号機停止情報を受信した車両において、ナビゲーション装置3が経路案内を実行しており、受信した信号機停止情報が示す停止中の信号機の位置が案内経路上に存在する場合には、ナビゲーション装置3は、その停止中の信号機の位置を迂回する経路を自動的に再探索してもよい。また、その代わりに、ナビゲーション装置3は、その停止中の信号機が現在の案内経路上に存在することを運転者に伝え、そこを迂回する経路を再探索すべきか否かを運転者に確認するようにしてもよい。
【0059】
(変形例)
第2実施例において、情報発信車両は、信号機停止情報に停止中の信号機の撮影画像を含めて送信するようにしてもよい。即ち、情報発信車両は、停止中の信号機を検出した際に、検出のための画像処理の対象となった撮影画像の画像データを信号機停止情報に含めてセンター7へ送信する。この画像データには、停止中の信号機の実際の状態が映っている。
【0060】
センター7は、配信エリア内の他の車両1Dに信号機停止情報を送信する際に、停止中の信号機の画像データがあることを示す情報を添付する。信号機停止情報を受信した他の車両1Dのナビゲーション装置3は、停止中の信号機を示すマークなどを表示する際に、例えば図5(B)に例示するように、画像データがあることを示すアイコン72を表示することにより、運転者に画像データの存在を示す。
【0061】
信号機停止情報を受信した車両1Dにおいて、停止中の信号機の画像を見たいと考えた場合、運転者はそのアイコンにタッチするなどの操作を行い、画像データの送信をセンター7へリクエストする。センター7は、リクエストに応じて、停止中の信号機の画像データを車両1Dへ送信する。車両1Dのナビゲーション装置3は、受信した停止中の信号機の画像をディスプレイ44に表示する。これにより、信号機停止情報を受信した他の車両の運転者は、停止中の信号機やその信号機がある交差点の実際の様子を事前に確認することができる。例えば、運転者は、受信した画像を見て交差点付近が混雑していると判断した場合には、その交差点を回避するように走行ルートを変更することもできる。
【0062】
なお、上記の例では、センター7は信号機停止情報に停止中の信号機の画像があることを示す情報を添付し、他の車両1からリクエストがあった場合に画像データを送信している。その代わりに、センター7は、情報発信車両から停止中の信号機の画像データを含む信号機停止情報を受信した場合には、他の車両からのリクエストを待つことなく、停止中の信号機の画像データを含む信号機停止情報を送信することとしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 車両
2 信号機
3 ナビゲーション装置
5 路側機
7 センター
22 CPU
36 データ記憶ユニット
38 通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6