(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164680
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】位置出力装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20231102BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/044
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023154098
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2020019573の分割
【原出願日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019022995
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】波多野 直行
(72)【発明者】
【氏名】山田 朋輝
(57)【要約】
【課題】使い勝手が良好な位置出力装置を提供する。
【解決手段】位置出力装置は、対象物によって操作される操作面に沿って設けられる複数の検出電極と、前記複数の検出電極に対象物が近接する位置を前記複数の検出電極によって区分けされる複数の区画における静電容量に基づいて検出する位置検出部と、前記位置を表す位置データを出力する出力端子と、記位置データを前記出力端子から出力するかどうかを判定する判定部であって、前記複数の区画で検出される静電容量のピーク値と前記ピーク値が検出される区画の周りの所定数の区画で検出される静電容量との合計値と、前回の制御周期における合計値及び現在の制御周期における合計値を所定の重みで加算した重み付け平均値との差が所定値よりも大きい場合には前記位置データを前記出力端子から出力しないと判定し、前記差が前記所定値以下の場合には前記位置データを前記出力端子から出力すると判定する判定部とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物によって操作される操作面に沿って設けられる複数の検出電極と、
前記複数の検出電極に対象物が近接する位置を前記複数の検出電極によって区分けされる複数の区画における静電容量に基づいて検出する位置検出部と、
前記位置を表す位置データを出力する出力端子と、
前記位置データを前記出力端子から出力するかどうかを判定する判定部であって、前記複数の区画で検出される静電容量のピーク値と前記ピーク値が検出される区画の周りの所定数の区画で検出される静電容量との合計値と、前回の制御周期における合計値及び現在の制御周期における合計値を所定の重みで加算した重み付け平均値との差が所定値よりも大きい場合には前記位置データを前記出力端子から出力しないと判定し、前記差が前記所定値以下の場合には前記位置データを前記出力端子から出力すると判定する判定部と
を含む、位置出力装置。
【請求項2】
前記所定値は、前記前回の制御周期における合計値に対する前記所定の重みが、前記現在の制御周期における合計値に対する所定の重みよりも大きいほど、大きな値に設定される、請求項1記載の位置出力装置。
【請求項3】
対象物によって操作される操作面に沿って設けられる複数の検出電極と、
前記操作面に前記対象物が近接する位置を静電容量に基づいて検出する位置検出部と、
前記位置を表す位置データを出力する出力端子と、
前記位置データを前記出力端子から出力するかどうかを判定する判定部であって、前記位置データが表す第1位置が前記操作面の操作領域の外縁から所定範囲内の境界領域内に入る際の当該第1位置と前記境界領域の中心とがなす第1角度と、前記位置データが表す位置が前記境界領域内で前記第1位置から第2位置に移動する方向を表す第2角度との差が所定値より大きい場合には前記位置データを前記出力端子から出力しないと判定し、前記差が前記所定値以下の場合には前記位置データを前記出力端子から出力すると判定する判定部と
を含む、位置出力装置。
【請求項4】
前記位置検出部は、前記複数の検出電極に対象物が近接する位置を前記複数の検出電極によって区分けされる複数の区画における静電容量に基づいて検出し、
前記判定部は、前記複数の区画における静電容量に基づいて前記対象物の第1軸方向における第1幅と第2軸方向における第2幅とが所定幅よりも大きいである場合に、前記差が所定値より大きい場合には前記位置データを前記出力端子から出力しないと判定し、前記差が前記所定値以下の場合には前記位置データを前記出力端子から出力すると判定する、請求項3記載の位置出力装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記差が前記所定値以下であっても、前記位置データが表す位置が前記境界領域内で前記第2位置から第3位置に移動する方向を表す第3角度と前記第2角度との差が前記所定値より大きい場合には前記位置データを前記出力端子から出力しないと判定する、請求項3又は4記載の位置出力装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記差が前記所定値よりも大きい場合であっても、前記位置データの移動距離が所定距離以上の場合には、前記位置データを前記出力端子から出力すると判定する、請求項3乃至5のいずれか一項記載の位置出力装置。
【請求項7】
前記操作領域の外縁は、円形である、請求項3乃至6のいずれか一項記載の位置出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、表示パネルに重ねて配置され、ユーザによって指示された座標を検出するセンサパネルと、センサパネルにより検出可能な第1領域の外周部の第2領域において検出された座標を無効とする情報処理装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、座標(位置)を検出するセンサパネル(位置検出部)によって第1領域の外周部の第2領域で検出された座標(位置)を無効とするだけでは、必ずしも使い勝手は良好ではない。
【0005】
そこで、使い勝手が良好な位置出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態の位置出力装置は、対象物によって操作される操作面に沿って設けられる複数の検出電極と、前記複数の検出電極に対象物が近接する位置を前記複数の検出電極によって区分けされる複数の区画における静電容量に基づいて検出する位置検出部と、前記位置を表す位置データを出力する出力端子と、記位置データを前記出力端子から出力するかどうかを判定する判定部であって、前記複数の区画で検出される静電容量のピーク値と前記ピーク値が検出される区画の周りの所定数の区画で検出される静電容量との合計値と、前回の制御周期における合計値及び現在の制御周期における合計値を所定の重みで加算した重み付け平均値との差が所定値よりも大きい場合には前記位置データを前記出力端子から出力しないと判定し、前記差が前記所定値以下の場合には前記位置データを前記出力端子から出力すると判定する判定部とを含む。
【発明の効果】
【0007】
使い勝手が良好な位置出力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】操作領域111の外縁における位置データのずれが生じる理由を説明する図である。
【
図4】第1の処理方法を示すフローチャートである。
【
図5】第2の処理方法で用いる合計値と重み付け平均値を説明する図である。
【
図6】第2の処理方法の処理を示すフローチャートである。
【
図7】第3の処理方法で判定部133が算出する角度を説明する図である。
【
図8】例外的に位置データを出力するケースを説明する図である。
【
図9】第3の処理方法の処理を示すフローチャートである。
【
図10】指先が操作パネル110に接触する領域の幅と幅の閾値を説明する図である。
【
図11】第4の処理方法の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の位置出力装置を適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態>
図1は、位置出力装置100を示す図である。位置出力装置100は、操作パネル110、電極120、及び制御装置130を含む。以下では、各図において共通のXYZ座標を用いて説明する。また、XY面視することを平面視と称す。また、説明の便宜上、+Z方向を上、-Z方向を下と称す場合があるが、普遍的な上下関係を表すものではない。
【0011】
位置出力装置100は、一例として、車両に搭載され、ダッシュボード周辺に配置されるディスプレイパネルに表示されるナビゲーション装置やエアコンディショナ等の様々な装置の操作画面に表示されるGUI(Graphic User Interface)の操作部等を遠隔操作する際に利用される入力装置に組み込まれるタッチパネルである。
【0012】
このような入力装置は、利用者の操作によってZ軸に平行な回転軸に対して回転可能な円筒状の部材を有し、円筒状の部材の上面(円筒の上側の面)に位置出力装置100の操作パネル110が設けられる。位置出力装置100が組み込まれた入力装置は、例えば、車両のセンターコンソールのように運転者又は助手席(利用者)の乗員の手元に配置される。ただし、位置出力装置100が組み込まれた入力装置の利用形態は、このような利用形態に限られるものではない。
【0013】
また、位置出力装置100は、利用者が指等で操作パネル110を操作することによって生じる静電容量の変化に基づいて、指等が操作パネル110に近接した位置を表す位置データを出力する。利用者の体の一部であれば指以外の部位でも操作可能であり、また、静電容量対応型のスタイラスペンのような道具を使って操作することも可能であるが、以下では利用者が指を使って操作する場合について説明する。
【0014】
操作パネル110は、操作面110Aを有する円板状のプレートであり、一例として樹脂製である。操作面110Aは、操作パネル110の上面であり、位置出力装置100に操作が行われる表面である。操作パネル110の操作面110Aとは反対側(-Z方向側)には、電極120が配置される。
【0015】
操作面110Aは、操作領域111を有する。操作領域111は、操作面110Aに示す破線の円の内側の領域であり、操作面110Aのうちの外周部を除いた領域である。電極120は、平面視で操作領域111内に配置される。破線の円で示す操作領域111の外縁は、操作領域111と、操作領域111の外側の領域との境界である。
【0016】
電極120は、X方向に延在する複数の電極120Aと、Y方向に延在する複数の電極120Bとを有する。電極120は、検出電極の一例である。複数の電極120A及び複数の電極120Bは、Z方向における位置が異なり、所定の間隔を隔てて離間している。電極120A及び120Bは、導電性のある材料製であればどのような形状及び材料製であってもよく、一例として銅製である。
【0017】
電極120A及び120Bが平面視で交差する交差部121には、容量が形成される。複数の電極120Aと複数の電極120Bとの交差部121は、操作領域111内にマトリクス状に配置される。交差部121は、操作領域111をマトリクス状に区分けした区画の一例である。
【0018】
電極120A及び120Bは、ケーブル125を介して制御装置130に接続されている。ケーブル125は、複数の電極120A及び複数の電極120Bによって検出される電位を別々に制御装置130に伝達する。
【0019】
制御装置130は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。制御装置130は、主制御部131、位置検出部132、判定部133、メモリ134、及び出力端子135を有する。
【0020】
主制御部131、位置検出部132、判定部133は、制御装置130が実行するプログラムの機能を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ134は、制御装置130のメモリを機能的に表したものである。出力端子135は、上述した入力装置、又は、入力装置が接続されるECU(Electronic Controlled Unit:電子制御装置)等の外部装置に接続され、制御装置130が検出する位置データを外部装置に出力する。
【0021】
主制御部131は、制御装置130の処理を統括する処理部であり、位置検出部132及び判定部133が行う処理以外の処理を実行する。
【0022】
位置検出部132は、電極120によって検出され、ケーブル125を介して入力される静電容量に基づき、複数の電極120A及び複数の電極120Bの各交差部121における電位差(電圧)に基づいて、各交差部121における静電容量を検出する。位置検出部132は、各交差部121の静電容量に基づいて、利用者の指が操作面110Aに近接する位置を検出し、検出した位置を表す位置データを生成する。位置検出部132は、位置出力装置100の制御周期の各周期に各交差部121における静電容量を検出し、位置データを生成する。
【0023】
ここで、複数の電極120A及び複数の電極120Bの各交差部121における静電容量は、利用者の指が操作面110Aに接触する場合に限らず、操作面110Aに近づいた場合にも変化する。このため、操作面110Aに近接するとは、利用者の指が操作面110Aに接触する場合と、利用者の指が操作面110Aに接触していないが、複数の電極120A及び複数の電極120Bの各交差部121における静電容量が変化する程に操作面110Aに近づく場合とを含む意味である。
【0024】
利用者の指が操作面110Aに接触する場合と、非接触だが操作面110Aに近づいている場合とでは、静電容量の大きさが異なるだけであり、位置検出部132による検出は同様に行われる。このため、以下では特に断らない限り、利用者の指が操作面110Aに接触する場合について説明する。
【0025】
位置検出部132は、利用者の指が操作面110Aに近接する位置を検出する際には、例えば、複数の交差部121における静電容量のうちのピーク値(最大値)と、ピーク値を与える交差部121の周りの所定数の交差部121の静電容量との重心の位置をXY平面で求め、求めた位置を検出した位置とする。なお、このような位置の検出方法は一例であり、他の種々の方法によって位置を検出してもよい。
【0026】
判定部133は、電極120によって検出され、ケーブル125を介して入力される静電容量に基づき、位置検出部132が検出する位置を表す位置データを出力端子135から位置出力装置100の外部に出力するかどうかを判定する。
【0027】
判定部133によって位置データを出力端子135から出力すると判定されると、位置検出部132は、位置データを出力端子135に出力する。この結果、位置データは、出力端子135に接続される入力装置又はECU等の外部装置に出力される。
【0028】
また、判定部133によって位置データを出力端子135から出力しないと判定されると、位置検出部132は、位置データを出力端子135に出力しない。この結果、位置データは、出力端子135から出力されない。
【0029】
メモリ134は、主制御部131、位置検出部132、判定部133が処理を実行するのに必要なプログラムやデータ等を格納する。
【0030】
次に、
図2を用いて、操作領域111の外縁で位置検出部132が検出する位置のずれが生じる理由について説明する。
図2は、操作領域111の外縁における位置データのずれが生じる理由を説明する図である。
図2において、黒い塗りつぶしの点は、位置検出部132が検出する位置を表す。指先は、操作パネル110に接触しながら矢印(1)に沿って移動することとする。
【0031】
操作パネル110は円形であるため、操作領域111の外縁(境界)も円形である。このため、交差部121は、操作領域111の外縁に沿ってジグザグな形で配置されることになる。
【0032】
また、1本の指先の全体が操作パネル110に接触している場合には、検出されるすべての交差部121の静電容量のうちの最大値(ピーク値)は、指先の略中心が接触する位置で得られる。静電容量のピーク値は、重心に与える影響が大きいため、1本の指先の全体が操作パネル110に接触している場合には、位置検出部132が検出する位置は、静電容量のピーク値を与える交差部121の位置に非常に近い。
【0033】
このため、指先を操作パネル110に接触させて外縁の外から操作領域111の内部へ移動させると、X軸方向及び/又はY軸方向において検出される静電容量のピーク値が、指先の全体が操作パネル110に接触している場合のX軸方向及び/又はY軸方向において検出される静電容量のピーク値とずれる場合がある。
【0034】
この結果、
図2に破線Aで示すように指先が操作領域111の外縁と重なっている状態では、指先の全体が操作パネル110に接触している場合と比べて、位置検出部132によって検出される位置がX軸方向及び/又はY軸方向にずれる場合がある。指先が外縁と重なっている状態では、指先の全体が操作パネル110に接触している場合に静電容量のピーク値を与える指先の部分が、操作領域111の外部にある可能性があるからである。このような検出される位置のずれは、特に、指先の移動方向が操作パネル110の径方向(中心を通る方向)に沿っていない場合に顕著になる。
【0035】
このため、利用者が操作パネル110に接触する指先を真っ直ぐ移動させた場合でも、指先が外縁と重なっている状態では、指先の軌跡が曲がって検出されることになる。指先の軌跡が曲がって検出されると、利用者が思っている通りに入力操作を行えなくなる場合がある。
【0036】
位置出力装置100は、上述のように指先の軌跡が曲がって検出されることによる不具合を抑制するとともに、所定の動作を行った場合には位置データを出力することにより、使い勝手を向上させる。以下、位置出力装置100の4種類の処理(第1の処理乃至第4の処理)の詳細について説明する。位置出力装置100は、第1の処理乃至第4の処理のうちのいずれか1つを行う。
【0037】
図3は、第1の処理方法を説明する図である。
図3(A)~(C)には、操作領域111のうちの四半円の部分に、位置検出部132が検出する交差部121の静電容量の値を、各交差部121に相当する位置に示された区画内の数値で示す(本明細書において説明を簡易化するため、
図3に示されるようなマトリクス状の正方形で示される各区画を交差部と称する場合がある)。静電容量の値は、規格化した値であり、0であっても実際には幾らかの静電容量の値が得られている。
【0038】
図3(A)~(C)には、一例として、操作パネル110に接触している指先が操作領域111の外側の+Y方向から操作領域111の内部に移動する場合の静電容量を示す。
図3(A)~(C)に示す静電容量は、連続する3つの制御周期において取得されたものである。
【0039】
図3(A)、(B)では、指先の全体が操作パネル110に接触している状態ではなく、操作領域111の外側にはみ出している部分がある。
図3(C)では、指先の全体が操作領域111に入っている。
【0040】
また、マトリクス状に配置される複数の交差部121のうち、最も外側に位置し、操作領域111の外縁に最も近い交差部121(濃いグレーで示す交差部121)は、境界領域に含まれる交差部121である。境界領域は、操作領域111の外縁の内側の所定範囲内に位置する。
【0041】
ここでは所定範囲は、1つの交差部121に相当するため、
図3(A)~(C)には、操作領域111の外縁から1つの交差部121の分に相当するジグザグの境界領域を示す。なお、境界領域は、操作領域111の外縁から2以上の交差部121の分に相当する範囲であってもよい。
【0042】
図3(A)では、すべての交差部121の静電容量のうちのピーク値は、各交差部121に示された各検出値(すなわち0、10、40及び120)の最大値(120)であり、濃いグレーで示す境界領域に丸で囲んで示される交差部121で得られている。指先の全体が操作パネル110に接触しておらず、指先の略中心が境界領域にある状態である。
【0043】
位置出力装置100は、静電容量のピーク値が境界領域内の交差部121で得られている場合には、位置データを出力しない。上述のように、検出される位置のずれが生じるおそれがあるからである。
【0044】
また、
図3(B)では、静電容量のピーク値は、濃いグレーで示す境界領域よりも内側(操作領域111の中心側)に移動している。指先の位置は、
図3(A)の場合よりも-Y方向に移動しているが、ピーク値に近い値(110)が境界領域で得られているため、指先の全体が操作パネル110に接触していないと考えられる状態である。
【0045】
この場合には、位置出力装置100は、ピーク値を与える交差部121に境界領域内で隣接する交差部121(
図3(B)では、矢印で示すように静電容量のピーク値(120)の隣に位置する4つの交差部121)で得られている各静電容量(40、110、40、10)と、ピーク値との差分を求め、差分の最小値が所定値(閾値)以上であるかどうかを判定する。所定値は、一例として50である。なお、ピーク値を与える交差部121に境界領域内で隣接する交差部121とは、ピーク値を与える交差部121に境界領域内で1つ隣りの交差部121のことである。
【0046】
図3(B)では、4つの差分は、80(120-40)、10(120-110)、80(120-40)、110(120-10)となり、それらの最小値は10であり、所定値(50)以上ではないため、位置出力装置100は、位置データを出力しない。
【0047】
このように、境界領域内で隣接する交差部121(
図3(B)で得られた静電容量と、ピーク値との差分を求めるのは、指先の全体が操作パネル110に接触していない場合には、操作領域111の中心側には指先の端があると考えられるが、外側(境界領域側)には、指先の中心側が存在する可能性があるからである。
【0048】
また、
図3(C)では、静電容量のピーク値は、濃いグレーで示す境界領域よりもさらに内側に移動している。指先の位置は、
図3(B)の場合よりも-Y方向に移動しており、ピーク値に近い値(110)の+Y方向側に隣接する交差部121で得られる値が40に低下しているため、指先の全体が操作パネル110に接触したいと考えられる状態である。
【0049】
この場合には、位置出力装置100は、ピーク値を与える交差部121に境界領域内で隣接する交差部121(
図3(C)では、矢印で示すように静電容量のピーク値(120)の隣に位置する2つの交差部121)で得られている各静電容量(40、40)と、ピーク値との差分を求め、差分の最小値が所定値(閾値)以上であるかどうかを判定する。
【0050】
図3(C)では、2つの差分は、ともに80(120-40)であり、最小値の80は所定値(50)以上であるため、位置出力装置100は、位置データを出力する。
【0051】
図4は、第1の処理方法を示すフローチャートである。
【0052】
処理がスタートすると、位置検出部132は、各交差部121における静電容量を検出する(ステップS11)。
【0053】
判定部133は、静電容量のピーク値が境界領域にあるかどうかを判定する(ステップS12)。
【0054】
判定部133は、静電容量のピーク値が境界領域にない(S11:NO)と判定すると、静電容量のピーク値が境界領域よりも内側にあるかどうかを判定する(ステップS13)。
【0055】
判定部133は、静電容量のピーク値が境界領域よりも内側にある(S13:YES)と判定すると、ピーク値を与える交差部121に隣接する交差部121が境界領域内にあるかどうかを判定する(ステップS14)。
【0056】
判定部133は、ピーク値を与える交差部121に隣接する交差部121が境界領域内にある(S14:YES)と判定すると、ピーク値を与える交差部121に境界領域内で隣接する交差部121で得られている静電容量と、ピーク値との差分を求め、差分の最小値をメモリ134に保存する(ステップS15)。
【0057】
判定部133は、メモリ134から差分の最小値を読み出し、差分の最小値が所定値(閾値)以上であるかどうかを判定する(ステップS16)。
【0058】
判定部133は、差分の最小値が所定値(閾値)以上である(S16:YES)と判定すると、位置データを出力すると判定し、位置検出部132に位置データを出力端子135に出力させる(ステップS17)。位置検出部132は、各制御周期において各交差部121から取得した静電容量に基づいて位置データを生成しているため、ステップS17では位置データを出力端子135から出力する。
【0059】
主制御部131は、ステップS17の処理が終了すると、当該制御周期における処理を終了する(エンド)。次の制御周期では、スタートから処理を開始する。
【0060】
なお、判定部133は、ステップS14において、ピーク値を与える交差部121に隣接する交差部121が境界領域内にない(S14:NO)と判定すると、フローをステップS17に進行させ、位置データを出力すると判定し、位置検出部132に位置データを出力端子135に出力させる(ステップS17)。
【0061】
ピーク値は、境界領域よりも操作領域111の内側で、境界領域の隣の交差部121(
図3(A)~(C)において、薄いグレーで示す交差部121)よりも操作領域111の内側の交差部121で得られており、指先の全体が操作領域111内にあると考えられるため、位置データを出力することとするものである。
【0062】
また、判定部133は、ステップS12において静電容量のピーク値が境界領域にある(S11:YES)と判定すると、位置データを出力しないと判定し、位置検出部132に位置データを出力させない(ステップS18)。
【0063】
主制御部131は、ステップS18の処理が終了すると、当該制御周期における処理を終了する(エンド)。次の制御周期では、スタートから処理を開始する。
【0064】
また、判定部133は、ステップS13において静電容量のピーク値が境界領域よりも内側にない(S13:NO)と判定すると、位置データを出力しないと判定し、位置検出部132に位置データを出力させない(ステップS18)。
【0065】
また、判定部133は、ステップS16において差分の最小値が所定値(閾値)以上である(S16:NO)と判定すると、位置データを出力しないと判定し、位置検出部132に位置データを出力させない(ステップS18)。
【0066】
以上のように、位置出力装置100は、静電容量のピーク値を与える交差部121の位置が境界領域にある場合には位置データを出力しない。しかしながら、位置出力装置100は、ピーク値を与える交差部121が境界領域よりも内側にあり、ピーク値を与える交差部121に隣接する交差部121が境界領域内にあり、差分が所定値(閾値)以上であれば位置データを出力する。これは、指先の中心が操作領域111内に入っており、位置検出部132が求める重心の位置にずれが生じる可能性が非常に低い状態になっていることから、位置データを出力することとしたものである。
【0067】
このため、位置出力装置100は、指先が操作領域111の外縁の近くにある場合でも位置データを出力することができる。
【0068】
したがって、使い勝手が良好な位置出力装置100を提供することができる。
【0069】
なお、指先の全体が操作領域111内にある場合は、ステップS14からステップS17に進行して位置データが出力されるため、指先の全体が操作領域111内にある場合の使い勝手も良好である。
【0070】
次に、第2の処理方法について説明する。
図5は、第2の処理方法で用いる合計値と重み付け平均値を説明する図である。
【0071】
第2の処理方法では、位置出力装置100は、静電容量のピーク値と、静電容量のピーク値を与える交差部121の隣にある8つの交差部121で得られる静電容量との合計値と、前回の制御周期における合計値及び現在の制御周期における合計値を所定の重みで加算した重み付け平均値との差が所定値よりも大きい場合には位置データを出力端子135から出力しないと判定し、差が所定値以下の場合には位置データを出力端子から出力すると判定する。
【0072】
上述した合計値は、換言すれば、
図5(A)に示すように、静電容量のピーク値(150)を与える交差部121を中心とした3×3(X方向の3個×Y方向の3個)の9個の交差部121で得られる静電容量の合計値である。
図5(A)では、ピーク値(150)の1つ隣の8つの交差部121では、4個の54と、4個の75とが得られている。
【0073】
なお、静電容量のピーク値を与える交差部121が操作領域111の外縁に最も近い位置に存在する場合には、静電容量のピーク値を与える交差部121を中心とした3×3の交差部121が存在せず、静電容量のピーク値を与える交差部121に隣接する交差部121の数は、7個以下になる。この場合には、静電容量のピーク値を与える交差部121と、隣接する7個以下の交差部121で得られる静電容量との合計値を取ることになる。なお、静電容量のピーク値を与える交差部121に隣接する交差部121とは、静電容量のピーク値を与える交差部121の1つ隣りの交差部121である。
【0074】
また、重み付け平均値とは、前回の(1周期前の)制御周期における合計値と、現在の制御周期における合計値とを所定の重みで加算した重み付け平均値である。例えば、前回の制御周期における合計値の重みを現在の制御周期における合計値の重みよりも大きくすると、重み付け平均値は、前回の制御周期における合計値の影響が多い値になる。これとは逆に、前回の制御周期における合計値の重みを現在の制御周期における合計値の重みよりも小さくすると、重み付け平均値は、前回の制御周期における合計値の影響が少ない値になる。
【0075】
指先の位置が操作領域111の外縁と重なっていて、指先の全体が操作領域111内に入っていない状態では、上述したようにピーク値を与える交差部121に隣接する交差部121の数は少ないため、合計値の値は相対的に低くなる。
【0076】
このため、第2の処理方法では、位置出力装置100は、現在の制御周期における合計値と、重み付け平均値との差が所定値よりも大きい場合には位置データを出力端子135から出力しないと判定し、差が所定値以下の場合には位置データを出力端子135から出力すると判定する。
【0077】
この判定手法では、指先の位置が操作領域111の外縁と重なっていて、指先の全体が操作領域111内に入っていない状態では差が大きくなり、指先の全体が操作領域111内に入っている状態では差が小さくなる。
【0078】
図5(B)において、横軸はX方向又はY方向の位置であり、両端に行くほど操作領域111の外縁に近くなる。また、
図5(B)において縦軸は静電容量を示す。
図5(B)において、破線は合計値を表し、実線は重み付け平均値を表し、一点鎖線は合計値と重み付け平均値の差を表す。
【0079】
図5(B)に示すように、操作領域111の外縁に近い両端では合計値と重み付け平均値との差が大きくなることが分かる。
【0080】
なお、前回の制御周期における合計値の重みと、現在の制御周期における合計値の重みとをどのように配分するかは、例えば、操作パネル110の平面視でのサイズや、電極120A、120Bのピッチ(電極120A同士、120B同士が隣り合う間隔)等に応じて設定すればよい。
【0081】
指先の全体が操作領域111内に入っていない状態では、前回の制御周期における合計値の重みを現在の制御周期における合計値の重みよりも大きくするほど、現在の制御周期における合計値と、重み付け平均値との差は大きくなる。
【0082】
また、指先の全体が操作領域111内に入っていない状態では、前回の制御周期における合計値の重みを現在の制御周期における合計値の重みよりも小さくするほど、現在の制御周期における合計値と、重み付け平均値との差は小さくなる。
【0083】
したがって、位置出力装置100は、前回の制御周期における合計値の重みが、現在の制御周期における合計値の重みよりも大きいほど、位置データを出力するかどうかの判定に用いる所定値(閾値)を大きな値に設定する。
【0084】
図6は、第2の処理方法の処理を示すフローチャートである。
【0085】
処理がスタートすると、位置検出部132は、各交差部121における静電容量を検出する(ステップS21)。
【0086】
判定部133は、位置検出部132に位置データを生成させるとともに、静電容量のピーク値を中心とする合計値を算出する(ステップS22)。
【0087】
判定部133は、前回の制御周期における合計値と、現在の制御周期における合計値を所定の重みで加算した重み付け平均値を算出する(ステップS23)。
【0088】
判定部133は、ステップS22で算出した合計値からステップS23で算出した重み付け平均値を減算した値の絶対値が所定値(閾値)以下であるかどうかを判定する(ステップS24)。
【0089】
判定部133は、減算した値の絶対値が所定値(閾値)以下である(S24:YES)と判定すると、位置データを出力すると判定し、位置検出部132に位置データを出力端子135に出力させる(ステップS25)。
【0090】
主制御部131は、ステップS25の処理が終了すると、当該制御周期における処理を終了する(エンド)。次の制御周期では、スタートから処理を開始する。
【0091】
なお、判定部133は、ステップS24において、減算した値の絶対値が所定値(閾値)以下ではない(S24:NO)と判定すると、位置データを出力しないと判定し、位置検出部132に位置データを出力させない(ステップS26)。
【0092】
主制御部131は、ステップS26の処理が終了すると、当該制御周期における処理を終了する(エンド)。次の制御周期では、スタートから処理を開始する。
【0093】
以上のように、位置出力装置100は、合計値と重み付け平均値の差が所定値以下であるかどうかによって、指先が操作領域111の外縁にあるか、又は、指先の全体が操作領域111内にあるかを判定し、判定結果に応じて位置データを出力の可否を決定している。
【0094】
すなわち、指先が操作領域111の外縁に近い場合でも、合計値と重み付け平均値の差が所定値以下であれば位置データを出力する。これは、指先の中心が操作領域111内に入っており、位置検出部132が求める重心の位置にずれが生じる可能性が非常に低い状態になっていることから、位置データを出力することとしたものである。
【0095】
このため、位置出力装置100は、指先が操作領域111の外縁の近くにある場合でも位置データを出力することができる。
【0096】
したがって、使い勝手が良好な位置出力装置100を提供することができる。
【0097】
次に、第3の処理方法について説明する。
図7は、第3の処理方法で判定部133が算出する角度を説明する図である。
図7には、操作領域111と操作領域111の中心111Cを示す。また、操作領域111内で中心111Cから距離RI以上離れた円環状の領域を境界領域(グレーで示す領域)111Dである。
【0098】
なお、境界領域111Dの幅(径方向の幅)は、利用者の平均的な指先の操作速度において、位置検出部132によって少なくとも2回以上にわたって位置が検出される程の幅に設定される。利用者が操作領域111の外側から指先で操作パネル110に接触した指先の位置を境界領域111D内で2回以上検出できるようにするためである。
【0099】
図7に示すように、位置検出部132が検出する利用者の指先の位置が操作領域111の外縁上の点A(X0,Y0)から点B(X1,Y1)を経て点C(X2,Y2)に移動したとする。なお、中心111Cの座標を(0,0)とする。
【0100】
中心111C(0,0)を通りX軸に平行な直線に対する、点A(X0,Y0)と中心111C(0,0)とを結ぶ直線の角度θ0は、θ0=tan-1(Y0/X0)で求まる。角度θ0は、指先の位置が操作領域111に侵入する位置の中心111C(0,0)に対する初期角度であり、メモリ134に保存される。
【0101】
中心111C(0,0)を通りX軸に平行な直線に対する、検出される位置が点A(X0,Y0)から点B(X1,Y1)への移動する方向の移動角度θ1は、θ1=tan-1(Y0-Y1/X0-X1)で求まる。
【0102】
同様に、中心111C(0,0)を通りX軸に平行な直線に対する、検出される位置が点B(X1,Y1)から点C(X2,Y2)への移動する方向の移動角度θ2は、θ2=tan-1(Y1-Y2/X1-X2)で求まる。
【0103】
指先の位置が初期角度θ
0において点Aから点B、点Cへと移動する場合には、操作領域111の外縁における接線に対して垂直であり、指先が操作領域111に侵入し始めてから完全に操作領域111内に入るまで検出位置の軌道が操作パネル110の径方向に沿っているため、検出される位置のずれは生じにくい。しかしながら、例えば、点Aから、点B1、点C1というように初期角度θ
0とは異なる方向に移動する場合には、
図2を用いて説明したように検出される位置のずれが生じやすくなる。
【0104】
このため、位置出力装置100は、第3の処理方法では、初期角度θ0と移動角度との差の絶対値が所定角度(角度閾値)よりも大きい場合には位置データを出力せず、初期角度θ0と移動角度との差の絶対値が所定角度(角度閾値)以下の場合に位置データを出力する。
【0105】
また、位置出力装置100は、次のような場合には、初期角度θ
0に対する移動角度が所定角度(角度閾値)よりも大きい場合であっても例外的に位置データを出力する。
図8は、例外的に位置データを出力するケースを説明する図である。
【0106】
図8に示すように、位置検出部132によって検出される位置が点A2、点B2、点C2、点D2、点E2、点F2と連続的に、ある程度の距離にわたって移動した場合には、利用者は意図的にこのような操作をしていると考えられる。点A2、点B2、点C2、点D2、点E2、点F2への連続的な移動は、初期角度θ
0に対する移動角度が所定角度(角度閾値)よりも大きくなった後に行われた操作である。
【0107】
このような場合には、位置出力装置100は、例外的に位置データを出力することとする。例えば、位置出力装置100は、点A2及び点B2では位置データを出力しないと判定しても、点C2から点D2及び点E2を経て点F2に至るまでは、位置データを出力すると判定する。
【0108】
図9は、第3の処理方法の処理を示すフローチャートである。
【0109】
処理がスタートすると、位置検出部132は、各交差部121における静電容量を検出する(ステップS31)。
【0110】
判定部133は、位置検出部132に位置データを生成させるとともに、移動角度を算出する(ステップS32)。移動角度の算出は、指先の位置が操作領域111に侵入する際は初期角度θ0の算出であり、侵入した後は、前回の制御周期で位置検出部132に検出された位置から、現在の制御周期で位置検出部132に検出された位置までの移動方向の中心111C(0,0)を通りX軸に平行な直線に対する角度である。
【0111】
判定部133は、ステップS32において位置検出部132に生成させた位置データが表す位置が境界領域111D内であるかどうかを判定する(ステップS33)。
【0112】
判定部133は、境界領域111D内である(S33:YES)と判定すると、現在の位置は初めて操作領域111の外側から境界領域111D内で発生したかどうかを判定する(ステップS34)。操作領域111の外側から境界領域111D内で発生したかどうかは、位置検出部132によって位置が検出されていない状態から、操作領域111の外縁で初めて位置が検出されたかどうかで判定すればよい。
【0113】
判定部133は、初めて操作領域111の外側から境界領域111D内で発生した(S34:YES)と判定すると、ステップS32で算出した初期角度θ0をメモリ134に保存する(ステップS35)。
【0114】
主制御部131は、ステップS35の処理が終了すると、当該制御周期における処理を終了する(エンド)。次の制御周期では、スタートから処理を開始する。
【0115】
判定部133は、初期角度θ0をメモリ134に保存した制御周期の次以降の制御周期においてステップS31で各交差部121における静電容量を検出し、ステップS32で位置検出部132に位置データを生成させるとともに、移動角度を算出し、ステップS33で位置データが表す位置が境界領域111D内である(S33:YES)と判定した後のステップS34において、初めて操作領域111の外側から境界領域111D内で発生したのではない(S34:NO)と判定すると、ステップS36では次の処理を行う。
【0116】
判定部133は、ステップS32で算出した移動角度から初期角度θ0を減算した値の絶対値が所定角度(角度閾値)以下であるかどうかを判定する(ステップS36)。
【0117】
判定部133は、減算した値の絶対値が所定角度(角度閾値)以下である(S36:YES)と判定すると、位置データを出力すると判定し、位置検出部132に位置データを出力端子135に出力させる(ステップS37)。
【0118】
主制御部131は、ステップS37の処理が終了すると、当該制御周期における処理を終了する(エンド)。次の制御周期では、スタートから処理を開始する。
【0119】
なお、判定部133は、ステップS36において、減算した値の絶対値が所定角度(角度閾値)以下ではない(S36:NO)と判定すると、ステップS34において初めて操作領域111の外側から境界領域111D内で発生したと判定してから位置検出部132によって制御周期毎に検出される位置の移動距離が所定距離(距離閾値)以上であるかどうかを判定する(ステップS38)。所定距離(距離閾値)は、利用者が意図的に指先を移動させる操作をしていると考えられる程の適切な距離に設定すればよい。
【0120】
判定部133は、移動距離が所定距離(距離閾値)以上である(S38:YES)と判定すると、フローをステップS37に進行させて、位置データを出力すると判定し、位置検出部132に位置データを出力端子135に出力させる(ステップS37)。
【0121】
フローがステップS38からS37に進行する場合は、
図8に示すように、利用者が意図的に指先を移動させる操作をしている場合である。なお、
図8には、境界領域111D内で操作領域111の外縁に沿ってグルグルとスクロールする動作を示すが、境界領域111D内ではなく境界領域111Dよりも内側(中心111C側)の領域内での操作であってもよく、境界領域111Dと、境界領域111Dよりも内側の領域とを跨ぐ操作であってもよい。
【0122】
一方、判定部133は、ステップS38において、移動距離が所定距離(距離閾値)以上ではない(S38:NO)と判定すると、位置データを出力しないと判定し、位置検出部132に位置データを出力端子135に出力させない(ステップS39)。
【0123】
主制御部131は、ステップS37の処理が終了すると、当該制御周期における処理を終了する(エンド)。次の制御周期では、スタートから処理を開始する。
【0124】
以上のように、第3の処理方法では、位置出力装置100は、位置検出部132によって検出される位置が境界領域111D内で移動する移動角度を求め、移動角度と初期角度との差の絶対値を算出する。
【0125】
そして、差の絶対値が所定角度(角度閾値)より大きい場合には位置データを出力せず、差の絶対値が所定角度(角度閾値)以下である場合に位置データを出力する。移動方向が操作領域111の中心111C側に向かう方向であれば、位置データを出力しても位置ずれは少ないからである。
【0126】
このため、位置出力装置100は、指先が操作領域111の外縁の近くにある場合でも位置データを出力することができる。
【0127】
したがって、使い勝手が良好な位置出力装置100を提供することができる。
【0128】
次に、第4の処理方法について説明する。
図10は、指先が操作パネル110に接触する領域の幅と幅の閾値を説明する図である。第4の処理方法は、第3の処理方法に、指先が操作パネル110に接触する領域の幅に基づく判定を追加したものである。このため、以下では、第3の処理方法と同様の内容についての重複説明を省略する。指先が操作パネル110に接触する領域の幅については、X方向の幅とY方向の幅とを用いる。
【0129】
図10(A)に示すように、指先が操作パネル110に接触する領域が比較的大きい場合には、操作領域111の外側から矢印(2)に沿って操作パネル110に接触する指先が移動すると、操作領域111の外縁において位置検出部132によって検出される位置にずれが生じうる。
【0130】
しかしながら、
図10(B)に示すように、指先が操作パネル110に接触する領域が比較的小さい場合には、操作領域111の外側から矢印(3)に沿って操作パネル110に接触する指先が移動した場合に、操作領域111の外縁において位置検出部132によって検出される位置にずれは生じにくい。
【0131】
これは、指先が操作パネル110に接触する領域の面積が小さいと、交差部121のX方向及びY方向のピッチとの関係で、指先が操作パネル110に接触する領域の面積が大きい場合に比べて、位置検出部132によって検出される位置にずれが生じにくくなるからである。
【0132】
操作パネル110に接触する指先の幅は、例えば、次のようにして決定すればよい。例えば、
図10(C)に示すようにピーク値(150)を中心として放射状に広がる静電容量の分布が得られた場合に、隣り合う交差部121で得られる静電容量が大きく変化しているところで、指の幅がX方向及びY方向における交差部121の何個分に相当するかを決定すればよい。このように指の幅を決定する際には、一例として静電容量の閾値を用いてもよい。ここでは閾値が50であることとする。
【0133】
図10(C)では、ピーク値(150)を与える交差部121の1つ隣の交差部121では、75又は54の静電容量が得られており閾値(50)以上であるが、2つ隣の交差部121では、5、13、19の静電容量が得られており閾値(50)未満である。
【0134】
このような場合には、指先の幅は交差部121の3個分の幅であると決定すればよい。
【0135】
図11は、第4の処理方法の処理を示すフローチャートである。
図11に示すフローは、
図9に示す第3の処理方法の処理を示すフローのステップS32をS32Aに変更し、ステップS32Aの後にステップS32Bを追加したものである。ステップS32Bの後は、ステップS33からS39の処理が続く。このため、以下では
図9との相違点を中心に説明する。
【0136】
処理がスタートし、ステップS31で位置検出部132が各交差部121における静電容量を検出すると、判定部133は、位置検出部132に位置データを生成させるとともに、移動角度を算出し、さらに指先の幅を決定する(ステップS32A)。
【0137】
ステップS32Aの処理は、
図9に示すステップS32の処理に、指先の幅を計測する処理を追加したものである。
【0138】
判定部133は、ステップS32Aで決定した指先の幅が、メモリ134に保存された指先の幅の閾値(幅閾値)以下であるかどうかを判定する(ステップS32B)。
【0139】
判定部133は、幅閾値以下である(S32B:YES)と判定すると、フローをステップS37に進行させる。指の幅が幅閾値以下で細い場合には、操作領域111の外縁においても位置のずれが生じにくいからである。
【0140】
一方、判定部133は、幅閾値以下ではない(S32B:NO)と判定すると、フローをステップS33に進行させる。指の幅が幅閾値以下ではなく太い場合には、操作領域111の外縁においても位置のずれが生じるおそれがあるため、第3の処理方法と同様にステップS33以下の処理を行うことによって、位置データを出力するかどうかの判定を行うためである。
【0141】
以上のように、第4の処理方法では、第3の処理方法に対して、指の幅が幅閾値以下で細い場合には、操作領域111の外縁においても位置データを出力する処理を加えている。
【0142】
このため、位置出力装置100は、指先が操作領域111の外縁の近くにある場合でも位置データを出力することができる。
【0143】
したがって、使い勝手が良好な位置出力装置100を提供することができる。
【0144】
以上、本発明の例示的な実施の形態の位置出力装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。一例として、開示された実施形態において、所定の場合には位置データを出力しないことが説明されたが、位置データを出力しない代わりに位置データが無効であることを出力する形態も本発明に含まれることを意図する。
【0145】
また、
図1に示されたようなX方向に延在する複数の電極120Aと、Y方向に延在する複数の電極120Bとの交差部121で形成される静電容量に基づいた検出値を、
図3に示されるようなマトリクス状に区分けされた区画の検出値に相当するものとして本発明を説明したが、この電極構成に限定されるものではなく、近接する物体の近接座標を検知することができる任意の電極構成に適用することができる。
【符号の説明】
【0146】
100 位置出力装置
110 操作パネル
120 電極
125 ケーブル
130 制御装置
131 主制御部
132 位置検出部
133 判定部
134 メモリ
135 出力端子