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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164686
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】通信装置及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/16 20090101AFI20231102BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20231102BHJP
   H04W 56/00 20090101ALI20231102BHJP
   H04W 72/0457 20230101ALI20231102BHJP
   H04W 76/15 20180101ALI20231102BHJP
   H04W 84/12 20090101ALN20231102BHJP
【FI】
H04W28/16
H04W92/20
H04W56/00 130
H04W72/0457 110
H04W76/15
H04W84/12
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023154177
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2020567388の分割
【原出願日】2019-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2019010696
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】110000763
【氏名又は名称】弁理士法人大同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 茂
(72)【発明者】
【氏名】相尾 浩介
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠介
(57)【要約】
【課題】データ共有と共有したデータの協調送信を実現する通信装置を提供する。
【解決手段】アクセスポイントとして動作する通信装置は、無線信号を送受信する通信部と、隣接するアクセスポイント間で1つの通信端末に同時に送信するデータを共有するための通信動作、及び、前記データの共有が完了したことを認識するための通信動作を含む、前記通信部における通信動作を制御する制御部を具備する。前記制御部は、前記共有したデータを前記隣接するアクセスポイントと同時に送信するときに、他の通信装置宛ての送信ストリームと多重化して、マルチユーザ多重ストリームとして送信するように制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を送受信する通信部と、
隣接するアクセスポイント間で1つの通信端末に同時に送信するデータを共有するための通信動作、及び、前記データの共有が完了したことを認識するための通信動作を含む、前記通信部における通信動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記1つの通信端末において前記共有するデータの受領が完了したことに基づいて、前記共有するデータを破棄する、
アクセスポイントとして動作する通信装置。
【請求項2】
前記通信部は、複数のデータを多重ストリームとして構成した無線信号を送受信することが可能であり、
前記制御部は、前記共有したデータを前記隣接するアクセスポイントと同時に送信するときに、他の通信装置宛ての送信ストリームと多重化して、マルチユーザ多重ストリームとして送信するように制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信部は、複数のデータを多重ストリームとして構成した無線信号を送受信することが可能であり、
前記制御部は、前記隣接するアクセスポイント間で共有するデータを多重ストリームとして多重化して通信するように制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記1つの通信端末が通信不可能な時間区間において、前記隣接するアクセスポイント間で前記データを共有するための通信動作を実施するように制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記隣接するアクセスポイント間で前記データを共有するための通信を、高速伝送可能な符号化方式又は変調方式を利用して実施するように制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、所定のイニシエートフレームを送信することによって、前記隣接するアクセスポイントに対して、前記データの共有、又は前記共有したデータの前記1つの通信端末への同時送信を実施することを通知する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記隣接するアクセスポイントから所定のイニシエートフレームを受信したことによって、前記データの共有、又は前記共有したデータの前記1つの通信端末への同時送信を実施することを認識する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記イニシエートフレームは、前記共有するデータを同時に送信するアクセスポイントに関する情報を含む、
請求項6に記載の通信装置。
【請求項9】
前記イニシエートフレームは、前記共有するデータの送信タイミングに関する情報、前記共有するデータ送信時における符号化方式又は変調方式に関する情報、前記共有するデータを送信するチャネルに関する情報のうち少なくとも1つをさらに含む、
請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記制御部は、所定のトリガーフレームを送信し又は前記隣接するアクセスポイントから前記トリガーフレームを受信したことに基づいて、前記共有するデータの送信タイミングを制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記隣接するアクセスポイントとの間での所定のグラントフレームの通信に基づいて、前記データの共有を認識する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記共有するデータを送信してきた前記隣接するアクセスポイントに対して前記グラントフレームを返送するように制御する、
請求項11に記載の通信装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記共有するデータの受信先となる前記隣接するアクセスポイントから返送された前記グラントフレームの受信処理を制御する、
請求項11に記載の通信装置。
【請求項14】
前記グラントフレームは、前記1つの通信端末に関する情報、前記共有するデータを送信する際の多重送信数に関する情報、前記共有するデータ送信時における通信パラメータのうち少なくとも1つを含む、
請求項11に記載の通信装置。
【請求項15】
前記通信部は、複数のデータを多重ストリームとして構成した無線信号を送受信することが可能であり、
前記グラントフレームは、前記共有するデータを送信する際の多重送信数に関する情報、前記共有するデータ送信時における通信パラメータのうち少なくとも1つをさらに含む、
請求項11に記載の通信装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記1つの通信端末及び前記他の通信端末の受信可能な多重ストリーム数に基づいて、データの多重化送信を制御する、
請求項2に記載の通信装置。
【請求項17】
隣接するアクセスポイント間で1つの通信端末に同時に送信するデータを共有するステップと、
前記データの共有が完了したことを認識するステップと、
前記共有したデータを送信するステップと、
前記1つの通信端末において前記共有するデータの受領が完了したことに基づいて、前記共有するデータを破棄するステップと、
を有する、アクセスポイントにおける通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、無線信号の送受信を行う通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Multiple Input Multiple Output(MIMO)方式によって、複数のデータを空間分割多重化して無線伝送する技術が既に実用化されている。このMIMO技術を利用することで、例えばアクセスポイントとして動作する1つの送信元通信装置から、通信端末として動作する複数の受信先通信装置へ、データを同時に伝送することができる。具体的には、アクセスポイントが複数のアンテナモジュールを装備するとともに、通信端末は1つのアンテナモジュールから構成される場合に、下りリンクMIMO技術を用いることで、下りリンクの伝送量を増加させることができる。
【0003】
他方、複数のアクセスポイントが協調して動作することで、隣接するアクセスポイント間での干渉を避けて通信する技術も実用化されつつある。最近では、複数のアクセスポイントから1つの受信先通信装置に同時にデータを送信して、受信先で受信に成功したデータを獲得するマルチポイント協調送信技術が開発されている。
【0004】
例えば、イーサネット(登録商標)などの有線LAN(Local Area Network)やその他の通信手段を介してアクセスポイント同士が接続され、あらかじめ同期しているシステムにおいて、アクセスポイントが協調してデータ伝送を実施する方法が考えられる。また、複数のグループを統括し、各グループにおけるスケジュールドアクセスを実施する無線通信装置について提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-85656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書で開示する技術の目的は、データ共有と共有したデータの協調送信を好適に実現することができる通信装置及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する技術の第1の側面は、
無線信号を送受信する通信部と、
隣接するアクセスポイント間で1つの通信端末に同時に送信するデータを共有するための通信動作、及び、前記データの共有が完了したことを認識するための通信動作を含む、前記通信部における通信動作を制御する制御部と、
を具備する、アクセスポイントとして動作する通信装置である。
【0008】
前記通信部は、複数のデータを多重ストリームとして構成した無線信号を送受信することが可能である。前記制御部は、前記共有したデータを前記隣接するアクセスポイントと同時に送信するときに、他の通信装置宛ての送信ストリームと多重化して、マルチユーザ多重ストリームとして送信するように制御する。また、前記制御部は、前記隣接するアクセスポイント間で共有するデータを多重ストリームとして多重化して通信するように制御する。
【0009】
また、本明細書で開示する技術の第2の側面は、
隣接するアクセスポイント間で1つの通信端末に同時に送信するデータを共有するステップと、
前記データの共有が完了したことを認識するステップと、
前記共有したデータを送信するステップと、
を有する、アクセスポイントにおける通信方法である。
【0010】
また、本明細書で開示する技術の第3の側面は、
無線信号を送受信する通信部と、
アクセスポイントから所定のフレームを受信したことに基づいて複数のアクセスポイントから同時に同じデータが送信されたことを認識する動作を含む、前記通信部における通信動作を制御する制御部と、
を具備する、アクセスポイントに接続する通信端末として動作する通信装置である。
【0011】
前記所定のフレームは、前記隣接するアクセスポイント間における前記同じデータの共有に関する情報を含むグラントフレームである。前記グラントフレームは、前記通信端末に関する情報、前記共有するデータを送信する際の多重送信数に関する情報、前記共有するデータ送信時における通信パラメータのうち少なくとも1つを含む。
【0012】
また、本明細書で開示する技術の第4の側面は、
アクセスポイントから所定のフレームを受信するステップと、
受信した前記所定のフレームに基づいて、複数のアクセスポイントから同時に同じデータが送信されたことを認識するステップと、
前記複数のアクセスポイントから同時に送信される前記同じデータを受信するステップと、
を有する、アクセスポイントに接続する通信端末における通信方法である。
【発明の効果】
【0013】
本明細書で開示する技術によれば、アクセスポイント間で短時間によりデータを共有するとともに、共有データの協調送信により無線伝送路を効率よく利用することができる通信装置及び通信方法を提供することができる。
【0014】
なお、本明細書に記載された効果は、あくまでも例示であり、本発明の効果はこれに限定されるものではない。また、本発明が、上記の効果以外に、さらに付加的な効果を奏する場合もある。
【0015】
本明細書で開示する技術のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、無線ネットワークの構成例を示した図である。
図2図2は、無線ネットワークの他の構成例を示した図である。
図3図3は、複数のアクセスポイント間でデータ共有とデータの協調送信を実施する流れを示した図である。
図4図4は、複数のアクセスポイント間でデータ共有とデータの協調送信を実施する流れを示した図である。
図5図5は、協調送信を実現するための動作確認を実施する通信シーケンス例を示した図である。
図6図6は、協調送信を実現するための動作確認を実施する通信シーケンス例を示した図である。
図7図7は、アソシエーションフレームの構成例を示した図である。
図8図8は、協調フレームの構成例を示した図である。
図9図9は、イニシエートフレームの構成例を示した図である。
図10図10は、グラントフレームの構成例を示した図である。
図11図11は、トリガーフレームの構成例を示した図である。
図12図12は、データフレームの内部構造を示した図である。
図13図13は、データフレームの構成例を示した図である。
図14図14は、データフレームの構成例を示した図である。
図15図15は、データフレームの構成例を示した図である。
図16図16は、データフレームの構成例を示した図である。
図17図17は、データフレームの構成例を示した図である。
図18図18は、データフレームの構成例を示した図である。
図19図19は、データフレームの構成例を示した図である。
図20図20は、通信装置2000の機能的構成例を模式的に示した図である。
図21図21は、無線通信モジュール2005の内部構成例を示した図である。
図22図22は、アクセスポイントが通信端末を登録するための処理手順を示したフローチャートである。
図23図23は、アクセスポイントが隣接するアクセスポイントを登録するための処理手順を示したフローチャートである。
図24図24は、アクセスポイントが送信データを受領したときの処理手順を示したフローチャートである。
図25図25は、アクセスポイントが協調送信を能動的に実施するための処理手順を示したフローチャートである。
図26図26は、アクセスポイントが協調送信を受動的に実施するための処理手順処理手順を示したフローチャートである。
図27図27は、通信端末が複数のアクセスポイントからの協調送信データを受信するための処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本明細書では、複数のアクセスポイント間でデータ共有及び協調送信を最適化する技術について提案する。具体的には、隣接するアクセスポイント間で協調送信するデータを事前に共有しておくとともに、共有できたことを通知するグラント(Grant)フレームで協調送信の対象となる通信装置を指定しておき、以降のタイミングで協調送信が実施されることを事前に通知することによって、データ共有及び協調送信を最適化する技術について提案する。
【0019】
また、本明細書では、アクセスポイントが協調送信を実施する場合において、1つの通信装置に対して通信を実施するのみならず、他の通信装置宛てのデータもマルチユーザ向け空間分割多重通信技術を利用して多重化することによって、無線伝送路を効率よく利用する技術についても提案する。
【0020】
また、本明細書では、シングルユーザ向け空間分割多重通信技術を利用することによってアクセスポイント間で短時間によりデータを共有するとともに、共有した後に所定のタイミングで同期をとってデータを送信する技術についても提案する。
【0021】
図1には、本明細書で開示する技術が適用される無線ネットワークの構成例を示している。図示の無線ネットワークは、第1のネットワークグループと第2のネットワークグループで構成される。
【0022】
第1のネットワークグループは、アクセスポイントAP1と、AP1に接続している通信端末STA1及びSTA3で構成される。また、第2のネットワークグループは、アクセスポイントAP2と、AP2に接続している通信端末STA2で構成される。図1では、各々のネットワークグループの範囲をそれぞれ点線で囲んでいる。また、各アクセスポイントAP1及びAP2の送信信号を実線矢印で示している。
【0023】
ここで、各ネットワークグループのアクセスポイントAP1とAP2は、互いに通信可能な位置に存在しているものと仮定している。また、第1のネットワークグループ内の通信端末STA3は、第2のネットワークグループのアクセスポイントAP2及び通信端末STA2と互いに通信可能な位置に存在している状態であるものとする。
【0024】
また、図1に示す無線ネットワークでは、第1のネットワークグループ内の通信端末STA3と、第2のネットワークグループ内の通信端末STA2の各々に、他の通信システム(Other)などの干渉源(Interference)からの干渉波が届くものとする。図1では、干渉信号を点線矢印で示している。
【0025】
STA3は、AP1とAP2の双方と通信可能なことから、同じデータを複数のアクセスポイントAP1及びAP2から受け取ることが可能である。したがって、AP1とAP2の間でデータが共有されていれば、AP1とAP2が同じデータを同時に送信することができる。そして、STA3はこの同時送信されたデータを受信することで、より確実にデータを受け取ることができる。
【0026】
なお、アクセスポイントAP1とAP2の間では、無線通信ではなくイーサネット(登録商標)などの有線通信を経由してデータ共有を実施するようにしてもよい。
【0027】
図2には、本明細書で開示する技術が適用される無線ネットワークの他の構成例を示している。図示の無線ネットワークは、第1のネットワークグループと第2のネットワークグループで構成される。
【0028】
第1のネットワークグループは、アクセスポイントAP1と、AP1に接続している通信端末STA1及びSTA3で構成される。また、第2のネットワークグループは、アクセスポイントAP2と、AP2に接続している通信端末STA2で構成される。図2に示す無線ネットワークは、さらに双方のネットワークグループを統括するマスターアクセスポイント(M-AP)が存在し、且つ、干渉源(Interference)となる他の通信システムが存在することを想定している。干渉源からの干渉波は、第1のネットワークグループ内の通信端末STA3と、第2のネットワークグループ内の通信端末STA2の各々に届くものとする。図2では、各々のネットワークグループの範囲をそれぞれ点線で囲んでいる。また、各アクセスポイントAP1及びAP2の送信信号を実線矢印で示し、干渉信号を点線矢印で示している。
【0029】
M-APは、AP1とAP2の双方と通信が可能なため、データを共有することが可能である。具体的には、M-APは、受け取ったデータをAP1とAP2に高速で伝送して、AP1とAP2の双方からSTA3宛てに協調してデータを届けることができる。そして、STA3はAP1とAP2から同時送信されたデータを受信することで、より確実にデータを受け取ることができる。
【0030】
なお、アクセスポイントM-APとAP1及びAP2の間では、無線通信ではなくイーサネット(登録商標)などの有線通信を経由してデータ共有を実施するようにしてもよい。
【0031】
図3には、複数のアクセスポイント間でデータ共有とデータの協調送信を実施する流れを示している。但し、図1に示した無線ネットワーク構成を想定し、横軸を時間軸とする。各横軸に実線で描かれた四角は、対応する通信装置が該当する時間区間で送信する信号(若しくは、フレーム)を表している。また、点線で描かれている四角は、対応する通信装置が該当する時間区間で受信する信号(若しくは、フレーム)を表している。
【0032】
ここでは、アクセスポイントAP1は協調送信を能動的に実施し、AP2は協調送信を受動的に実施するものとする。また、通信端末STA1とSTA3は、AP1が運営する第1のネットワークグループに属して動作し、通信端末STA2は、AP2が運営する第2のネットワークグループに属して動作している。
【0033】
また、STA2とSTA3には、他の通信システムなどの干渉源(Other)からの干渉信号が届く。STA2とSTA3は、干渉信号が届いている期間を、BUSY状態として把握することができる。したがって、各アクセスポイントAP1、AP2は、干渉源(Other)から干渉信号(BUSY)が届いている期間は応答がないことから、STA2やSTA3への通信ができないことを把握することができる。
【0034】
このような状況下で、アクセスポイントAP1は、配下の通信端末STA3への協調送信のためのデータ共有のイニシエーション(Ini)を開始して、ターゲットとなるアクセスポイントAP2を指定する。
【0035】
データ共有のイニシエーションは、協調送信を能動的に実施するアクセスポイントが、必要に応じて開始する。図3に示す例では、AP1がイニシエーションを開始している。事前に双方のアクセスポイントAP1とAP2の間で、通知を実施した直後のタイミングや、協調送信を実施する直前のタイミングで、イニシエーションを開始してもよい。あるいは、協調送信を実施する際に、共有データとともにイニシエーションを送信してもよい。
【0036】
イニシエーションにより、協調送信を受動的に実施するアクセスポイントAP2は、協調送信を能動的に実施するアクセスポイントAP1からの要求に応じて、以降、共有するデータを受信する。例えば、SU(Single User)-MIMO空間分割多重通信技術や、周波数チャネルのボンディング技術を用いて、AP1からAP2へ、協調送信するデータが送信され、STA3宛てのデータ(DMU-3)が、短時間のうちにAP1とAP2間で共有される。
【0037】
ここで、STA2及びSTA3が干渉源(Other)から干渉信号を被っているBUSY状態を利用して、AP1とAP2間でSTA3宛てのデータ(DMU-3)を共有するための通信処理を実施できるという点に留意されたい。また、AP1からAP2への共有データ(DMU-3)の通信において、高速伝送可能なMCS(Modulation and Coding Scheme)を利用することによって、短時間でアクセスポイント間のデータ共有を実現することができる。
【0038】
AP2は、AP1から共有データを受領すると、受領確認と、協調送信を受信すべきターゲットにSTA3を指定したグラントフレームを、AP1へ返送する。
【0039】
AP2から送信されたグラントフレームは、AP1の他に、STA2及びSTA3にも届く。グラントフレームと、共有データを協調送信するデータフレーム(後述)のフレーム間隔は一定である。したがって、グラントフレームを受信できたSTA2及びSTA3は、アクセスポイントAP1及びAP2との間での時間同期を確保することができ、また、所定時間内に周囲のアクセスポイントによる協調送信が実施されることを認識することができる。
【0040】
そして、AP1は、配下の通信端末STA1及びSTA3と、協調送信を受動的に実施するAP2宛てに、協調送信の各種パラメータを記載したトリガー(Trigger)フレームを送信する。その後、AP1とAP2が、タイミングを合わせて、共有したデータを同時に協調送信する。
【0041】
AP1から送信されたトリガーフレームは、AP2の他に、STA1及びSTA3にも届く。トリガーフレームと、その直後のデータフレームのフレーム間隔は一定である。したがって、トリガーフレームを受信できたAP2、STA1及びSTA3は、アクセスポイントAP1との間で詳細な(マイクロ秒単位での)時間同期を確保することができる。
【0042】
ここで、各アクセスポイントAP1並びにAP2から送信されるデータも、さらに各アクセスポイントにおいて空間分割多重化されてもよい。図3に示す例では、AP1側からは、AP2と共有されるSTA3向けのデータ(CDMU-3)に、AP1の配下のSTA1向けのデータ(CDMU-1)が、空間多重技術を利用して多重化されて送信される。また、AP2側からは、AP1と共有されるSTA3向けのデータ(CDMU-3)に、AP2の配下のSTA2向けのデータ(CDMU-2)が、空間多重技術を利用して多重化されて送信される。このように、アクセスポイントが、協調送信するデータを、他の通信端末宛てのデータと空間多重送信することによって、無線伝送路を効率よく利用することができる。
【0043】
なお、アクセスポイントが、協調送信するデータを、他の通信端末宛てのデータと空間多重送信する場合、各送信データの時間長を揃えてから送信するように構成されており、時間長が短い方の送信データにはパディング(P)が施される。
【0044】
図3に示す例では、AP1は、STA3向けに協調送信するデータ(CDMU-3)よりも短いSTA1向けのデータ(CDMU-1)に対してパディング(P)を施して、CDMU-3の時間長を揃えてから、送信している。また、AP2は、STA3向けに協調送信するデータ(CDMU-3)よりも短いSTA2向けのデータ(CDMU-2)に対してパディング(P)を施して、CDMU-3の時間長を揃えてから、送信している。
【0045】
AP1とAP2がそれぞれ空間分割多重して協調送信したデータは、STA1、STA2、及びSTA3で受信される。そして、STA1、STA2、及びSTA3は、それぞれ自己宛てのデータを収集して、それぞれの受領確認をブロックACK(BA)の形式で返信する。なお、STA3においては、AP1から送られたCDMU-3と、AP2から送られたCDMU-3のどちらか一方のデータを誤りなく受信できれば受領確認されたことになる。
【0046】
アクセスポイント毎に異なるタイミングでブロックACK要求(BAR)が送信され、各通信端末は、アクセスポイント毎に異なるタイミングでブロックACKを返信する。図3に示す例では、第1のタイミングでAP1からブロックACK要求が送信されて、AP1へのACKフレームがSTA1とSTA3から返信される。また、第2のタイミングでAP2からブロックACK要求が送信されてAP2へのACKフレームがSTA2とSTA3から返信される。
【0047】
これらのACKフレームは、上りリンクマルチユーザMIMO技術を適用して返信してもよいし、所定のトリガーフレームに対する応答フレームとして返信されてもよい。
【0048】
AP1は、STA1とSTA3の各々から返送されたACKフレームをすべて受信できたならば、送信バッファに保存されている送信データCDMU-1及びCDMU-3をすべて破棄する。つまり、AP1若しくはAP2から送信されたCDMU-3のどちらかが正しく届いていなくとも、STA3では受信できたことになる。また、AP1は、受信できないACKフレームがあったならば、該当するデータの再送を開始する。同様に、AP2は、STA2とSTA3の各々から返送されたACKフレームをすべて受信できたならば、送信バッファに保存されている送信データCDMU-2及びCDMU-3をすべて破棄する。また、AP2は、受信できないACKフレームがあったならば、該当するデータの再送を開始する。
【0049】
図4には、複数のアクセスポイント間でデータ共有とデータの協調送信を実施する流れを示している。但し、図2に示した無線ネットワーク構成を想定し、横軸を時間軸とする。各横軸に描かれた四角は、対応する通信装置が該当する時間区間で送信する信号(若しくは、フレーム)を表している。また、点線で描かれた四角は、対応する通信装置が該当する時間区間で受信する信号(若しくは、フレーム)を表している。
【0050】
ここでは、協調送信を管理するマスターアクセスポイント(M-AP)が存在し、各ネットワークグループのアクセスポイントAP1及びAP2は、M-APの管理下で協調送信を受動的に実施するものとする。また、通信端末STA1とSTA3は、AP1が運営する第1のネットワークグループに属して動作し、通信端末STA2は、AP2が運営する第2のネットワークグループに属して動作している。
【0051】
また、STA2とSTA3には、他の通信システムなどの干渉源(Other)からの干渉信号が届く。STA2とSTA3は、干渉信号が届く期間を、BUSY状態として把握することができる。したがって、各アクセスポイントAP1、AP2は、干渉源(Other)から信号が届いている期間は、STA2やSTA3への通信ができないことを把握することができる。
【0052】
このような状況下で、マスターAPは、協調送信のためのデータ共有にイニシエーション(Ini)を開始して、ターゲットとなるアクセスポイントAP1及びAP2を指定する。
【0053】
データ共有のイニシエーションは、協調送信を管理するアクセスポイントが、必要に応じて開始する。図4に示す例では、マスターAPがイニシエーションを開始している。事前に双方のアクセスポイントの間で、通知を実施した直後のタイミングや、協調送信を実施する直前のタイミングで、イニシエーションを開始してもよい。あるいは、協調送信を実施する際に、共有データとともにイニシエーションを送信してもよい。
【0054】
イニシエーションにより、協調送信を受動的に実施する各アクセスポイントAP1及びAP2は、協調送信を管理するマスターAPからの要求に応じて、以降、共有するデータを受信する。例えば、各通信端末STA1、STA2、STA3宛てのデータが、マスターAPから送信される。例えば、SU-MIMO空間分割多重通信技術や、周波数チャネルのボンディング技術を用いて、マスターAPからAP1及びAP2へ、協調送信するデータが送信され、STA3宛てのデータ(DMU-3)が、短時間のうちにAP1とAP2間で共有される。また、マスターAPからAP1へ、STA1宛てのデータ(DMU-1)が送信されるとともに、マスターAPからAP2へ、STA2宛てのデータ(DMU-2)が送信される。そして、これらのデータは、MU-MIMO技術を適用して、AP1及びAP2から、各通信端末STA1、STA2、STA3に送信されることになる(後述)。
【0055】
ここで、STA2及びSTA3が干渉源(Other)から干渉信号を被っているBUSY状態を利用して、マスターAPとAP1及びAP2間でSTA3宛てのデータ(DMU-3)を共有するための通信処理を実施できるという点に留意されたい。また、マスターAPからAP1及びAP2への共有データ(DMU-3)の通信において、高速伝送可能なMCSを利用することによって、短時間でアクセスポイント間のデータ共有を実現することができる。
【0056】
AP1とAP2は、マスターAPから共有データを受領すると、受領確認と、協調送信を受信すべきSTA3をターゲットとしたグラントフレームを、マスターAPにそれぞれ返送する。なお、ここではAP1とAP2が同時にグラントフレームを返送しているが、上りマルチユーザMIMO空間分割多重などを用いて送信される構成としてある。
【0057】
AP1から送信されたグラントフレームは、マスターAPの他に、AP2や、STA1、STA3にも届き、AP2から送信されたグラントフレームは、マスターAPの他に、AP1、STA2及びSTA3にも届く。グラントフレームと、共有データを協調送信するデータフレーム(後述)のフレーム間隔は一定である。したがって、グラントフレームを受信できたSTA2及びSTA3は、マスターAP、AP1及びAP2との間での時間同期を確保することができ、また、所定時間内に周囲のアクセスポイントによる協調送信が実施されることを認識することができる。
【0058】
そして、マスターAPは、AP1及びAP2宛てに、協調送信の各種パラメータを記載したトリガーフレームを送信する。その後、AP1とAP2が、タイミングを合わせて、共有したデータを同時に協調送信する。トリガーフレームと、その直後のデータフレームのフレーム間隔は一定である。したがって、トリガーフレームを受信できたAP1及びAP2は、マスターAPとの間で詳細な(マイクロ秒単位での)時間同期を確保することができる。
【0059】
ここで、各アクセスポイントAP1並びにAP2から送信されるデータも、さらに各アクセスポイントにおいて空間分割多重化されてもよい。図4に示す例では、AP1から送信されるデータが、STA1向けのデータ(CDMU-1)と、STA3向けのデータ(CDMU-3)が多重化されて送信される。また、AP2から送信されるデータは、STA2向けのデータ(CDMU-2)と、STA3向けのデータ(CDMU-3)が多重化されて送信される。このように、アクセスポイントが、協調送信するデータを、他の通信端末宛てのデータと空間多重送信することによって、無線伝送路を効率よく利用することができる。
【0060】
アクセスポイントが、協調送信するデータを、他の通信端末宛てのデータと空間多重送信する場合、各送信データの時間長を揃えてから送信するように構成されており、時間長が短い方の送信データにはパディング(P)が施される。図4に示す例では、AP1は、STA3向けに協調送信するデータ(CDMU-3)よりも短いSTA1向けのデータ(CDMU-1)に対してパディング(P)を施して、CDMU-3の時間長を揃えてから、送信している。また、AP2は、STA3向けに協調送信するデータ(CDMU-3)よりも短いSTA2向けのデータ(CDMU-2)に対してパディング(P)を施して、CDMU-3の時間長を揃えてから、送信している。
【0061】
AP1とAP2がそれぞれ空間分割多重して協調送信したデータは、STA1、STA2、及びSTA3で受信される。そして、STA1、STA2、及びSTA3は、それぞれ自己宛てのデータを収集して、それぞれの受領確認をブロックACK(BA)の形式で返信する。なお、STA3においては、AP1から送られたCDMU-3と、AP2から送られたCDMU-3のどちらか一方のデータを誤りなく受信できれば受領確認されたことになる。
【0062】
アクセスポイント毎に異なるタイミングでブロックACK要求(BAR)が送信され、各通信端末は、アクセスポイント毎に異なるタイミングでブロックACKを返信する。つまり、AP1若しくはAP2から送信されたCDMU-3のどちらかが正しく届いていなくとも、STA3では受信できたことになる。図4に示す例では、第1のタイミングでAP1からブロックACK要求が送信されて、AP1へのACKフレームがSTA1とSTA3から返信される。また、第2のタイミングでAP2からブロックACK要求が送信されてAP2へのACKフレームがSTA2とSTA3から返信される。
【0063】
これらのACKフレームは、上りリンクマルチユーザMIMO技術を適用して返信してもよいし、所定のトリガーフレームに対する応答フレームとして返信されてもよい。
【0064】
AP1は、STA1とSTA3の各々から返送されたACKフレームをすべて受信できたならば、送信バッファに保存されている送信データCDMU-1及びCDMU-3をすべて破棄する。また、AP1は、受信できないACKフレームがあったならば、該当するデータの再送を開始する。同様に、AP2は、STA2とSTA3の各々から返送されたACKフレームをすべて受信できたならば、送信バッファに保存されている送信データCDMU-2及びCDMU-3をすべて破棄する。また、AP2は、受信できないACKフレームがあったならば、該当するデータの再送を開始する。
【0065】
なお、図2及び図4では省略したが、M-APも無線ネットワークを運営して、配下に1又は複数の通信端末が存在して、AP1やAP2と同様に、協調送信するデータを、他の通信端末宛てのデータと空間多重送信することも想定される。
【0066】
図5には、複数のアクセスポイントによるデータの協調送信を実現するための動作確認を実施する通信シーケンス例を示している。
【0067】
但し、図5では、図1に示した無線ネットワークのように、協調送信を能動的に実施するアクセスポイントAP1と、協調送信を受動的に実施するアクセスポイントAP2と、AP1のネットワークに属する通信端末STA1及びSTA3と、AP2のネットワークに属する通信端末STA2がそれぞれ動作していることを想定している。
【0068】
まず、STA1からAP1にアソシエーション要求(Association Request)を送信する(SEQ501)。そして、AP1は、STA1の自ネットワークへのアソシエーションを許可する場合には、STA1にアソシエーション応答(Association Response)を返送する(SEQ502)。
【0069】
同様に、STA2からAP2にアソシエーション要求を送信する(SEQ503)。そして、AP2は、STA2の自ネットワークへのアソシエーションを許可する場合には、STA2にアソシエーション応答を返送する(SEQ504)。
【0070】
さらに、STA3からAP1にアソシエーション要求を送信する(SEQ505)。そして、AP1は、STA3の自ネットワークへのアソシエーションを許可する場合には、STA3にアソシエーション応答を返送する(SEQ506)。
【0071】
ここで、各通信端末STA1、STA2、並びにSTA3は、アクセスポイントAP1又はAP2との間で上記のアソシエーション手続きを実施する際に、自身の受信可能な空間分割多重パラメータが記載された協調送信情報エレメント(Coordinate Transmit Information Element)を含んだ情報交換を行うようになっている。この協調送信情報エレメントには、通信装置の送信多重数並びに受信多重数を含んでいる(後述)。したがって、AP1は、配下のSTA1及びSTA3がそれぞれ受信可能な空間多重ストリーム数を把握することができる。同様に、AP2は、配下のSTA2の受信可能な空間多重ストリーム数を把握することができる。
【0072】
さらに、AP1とAP2は、例えば互いに通信が可能な位置に存在していることを把握した場合に、協調送信情報エレメントから構成される、協調要求(Coordinate Request)と、協調応答(Coordinate Response)を交換することで(SEQ507、SEQ508)、双方のアクセスポイントで存在を把握できる通信端末への通信を協調送信することが可能であることを把握する。また、AP1は、AP2の無線ネットワークにおける空間多重ストリーム数を把握し、AP2は、AP1の無線ネットワークにおけるSTA1及びSTA3の受信可能な空間多重ストリーム数を把握することができる。
【0073】
図6には、複数のアクセスポイントによるデータの協調送信を実現するための動作確認を実施する他の通信シーケンス例を示している。
【0074】
但し、図6では、図2に示した無線ネットワークのように、協調送信を管理するマスターAPアクセスポイント(M-AP)と、協調送信を受動的に実施するアクセスポイントAP1及びAP2と、AP1のネットワークに属する通信端末STA1及びSTA3と、AP2のネットワークに属する通信端末STA2がそれぞれ動作していることを想定している。
【0075】
まず、STA1からAP1にアソシエーション要求を送信する(SEQ601)。そして、AP1は、STA1の自ネットワークへのアソシエーションを許可する場合には、STA1にアソシエーション応答を返送する(SEQ602)。同様に、STA2からAP2にアソシエーション要求を送信する(SEQ603)。そして、AP2は、STA2の自ネットワークへのアソシエーションを許可する場合には、STA2にアソシエーション応答を返送する(SEQ604)。さらに、STA3からAP1にアソシエーション要求を送信する(SEQ605)。そして、AP1は、STA3の自ネットワークへのアソシエーションを許可する場合には、STA3にアソシエーション応答を返送する(SEQ606)。
【0076】
ここで、各通信端末STA1、STA2、並びにSTA3は、アクセスポイントAP1又はAP2との間で上記のアソシエーション手続きを実施する際に、自身の受信可能な空間分割多重パラメータが記載された協調送信情報エレメントを含んだ情報交換を行う。したがって、AP1は、配下のSTA1及びSTA3がそれぞれ受信可能な空間多重ストリーム数を把握することができる。同様に、AP2は、配下のSTA2の受信可能な空間多重ストリーム数を把握することができる。
【0077】
さらに、M-APは、AP1が互いに通信が可能な位置に存在していることを把握した場合に、協調送信情報エレメントから構成される、協調要求(Coordinate Request)と、協調応答(Coordinate Response)を交換する(SEQ607、SEQ608)。また、M-APは、AP2が互いに通信が可能な位置に存在していることを把握した場合に、協調送信情報エレメントから構成される、協調要求(Coordinate Request)と、協調応答(Coordinate Response)を交換する(SEQ609、SEQ610)。これによって、M-APは、AP1及びAP2の双方のアクセスポイントで存在を把握できる通信端末への通信を協調送信することが可能であることを把握する。また、M-APは、AP1及びAP2の各無線ネットワークにおける空間多重ストリーム数を把握することができる。
【0078】
図7には、アソシエーションフレームの構成例を示している。但し、ここで言うアソシエーションフレームは、アソシエーション要求フレーム及びアソシエーション応答フレームの双方を含むものとする。また、本実施形態において特に特徴的となるフィールドは、グレーで塗り潰している。
【0079】
図示のアソシエーションフレームは、所定のPHY層におけるプリアンブルとしてのPLCP(Physical Layer Convergence Protocol)ヘッダに続き、MAC(Media Access Control)層におけるマネジメントフレームとして構成される。すなわち、従来からのアソシエーションフレーム構造として、当該フレームの種類を示すFrame Control、当該フレームの持続時間を示すDuration、受信先のアドレスを示すReceive Address、送信元のアドレスを示すTransmit Addressなどの各フィールドを含んでいる。そして、これら従来からのフィールドに続いて、協調送信情報エレメント(Coordinate Transmit Information Element)が含まれ、末尾には当該フレーム全体から所定の計算手順に従って計算したフレームチェックシーケンス(FCS)が付加される。協調送信情報エレメントの構造については、後述に譲る(図8を参照のこと)。
【0080】
図8には、協調(Coordination)フレームの構成例を示している。但し、ここで言う協調フレームは、協調要求フレーム及び協調応答フレームの双方を含むものとする。また、本実施形態において特に特徴的となるフィールドは、グレーで塗り潰している。
【0081】
図示の協調フレームは、所定のPHY層におけるプリアンブルとしてのPLCPヘッダに続き、MAC層におけるマネジメントフレームとして構成される。すなわち、当該フレームの種類を示すFrame Control、当該フレームの持続時間を示すDuration、受信先のアドレスを示すReceive Address、送信元のアドレスを示すTransmit Addressなどの各フィールドを含んでいる。そして、これらのフィールドに続いて、アクセスポイントの属性を示したAP Attributeと、協調送信情報エレメント(Coordinate Transmit Information Element)が含まれ、末尾にフレームチェックシーケンス(FCS)が付加される。
【0082】
協調送信情報エレメントは、情報エレメントの形式を示すElement Type、情報長を示すLength、利用可能な変調方式と符号化方式を示すAvailable MCS、送信タイミングのパラメータを示すTiming Parameter、アグリゲーションするMPDU(MAC Protocol Data Init)数を示すA-MPDU(Aggregation MPDU) Countsなどのパラメータを含んでいる。
【0083】
また、協調送信情報エレメントは、さらに、空間分割多重パラメータ(Spatial Division Parameter)として、送信多重数Tx MIMO、受信多重数Rx MIMOなどのパラメータを含んでいる。
【0084】
また、協調送信情報エレメントは、さらに、周波数パラメータ(Frequency Parameter)として、利用可能な帯域幅を示すBands、利用可能なチャネル数を示すChannelsなどのパラメータを含んでいる。
【0085】
なお、協調フレーム内の協調送信情報エレメントには、必要に応じて、図8に示した以外の各種パラメータが設定されてもよい。
【0086】
図9には、イニシエートフレームの構成例を示している。但し、本実施形態において特に特徴的となるフィールドは、グレーで塗り潰している。イニシエートフレームは、協調送信を能動的に実施するアクセスポイントや、協調送信を管理するマスターアクセスポイントが、通信端末への協調送信のためのデータ共有のイニシエーション時に使用される(例えば、図3並びに図4を参照のこと)。
【0087】
図示のイニシエートフレームは、所定のPHY層におけるプリアンブルとしてのPLCPヘッダに続き、MAC層におけるコントロールフレームとして構成される。すなわち、従来からのコントロールフレーム構造として、当該フレームの種類を示すFrame Control、当該フレームの持続時間を示すDuration、対象アクセスポイントのアドレスを示すTarget AP Address1、送信元アクセスポイントのアドレスを示すAP MAC Addressなどの各フィールドを含み、必要に応じて第2の対象アクセスポイントのアドレスを示すTarger Ap Address2をさらに含んでいる。
【0088】
ここで言う対象アクセスポイントは、協調送信を能動的に実施するアクセスポイントや協調送信を管理するマスターアクセスポイントが、協調送信の相手として指定するアクセスポイントである。対象アクセスポイントは、基本的には、協調送信を受動的に実施するアクセスポイントである。第2の対象アクセスポイントは、例えばマスターアクセスポイントが2番目に指定する対象アクセスポイントである。図2及び図4に示した例に則して述べると、M-APがAP1を第1の対象アクセスポイントに指定し、AP2を第2の対象アクセスポイントに指定することが想定される。なお、3台以上のアクセスポイントを使って協調送信を実施する場合には、イニシエートフレームには第3の対象アクセスポイントのアドレスを示すTarger AP Address3、…を格納するフィールドが設けられることになる。
【0089】
そして、これらのフィールドに続いて、協調送信のタイミングを示すCoorinate Tx Timing、協調送信する際の変調方式と符号化率を示すCoordinate MCS Info、協調送信するチャネルを示すCoordinate Channelsなどのパラメータがさらに含まれ、末尾にフレームチェックシーケンス(FCS)が付加される。
【0090】
図10には、グラントフレームの構成例を示している。但し、本実施形態において特に特徴的となるフィールドは、グレーで塗り潰している。グラントフレームは、協調送信を受動的に実施するアクセスポイントが、共有データの受領確認時に使用される(例えば、図3並びに図4を参照のこと)。
【0091】
図示のグラントフレームは、所定のPHY層におけるプリアンブルとしてのPLCPヘッダに続き、MAC層におけるコントロールフレームとして構成される。すなわち、従来からのコントロールフレーム構造として、当該フレームの種類を示すFrame Control、当該フレームの持続時間を示すDuration、受信先のアドレスを示すReceive Address、送信元のアドレスを示すTransmit Addressなどの各フィールドを含んでいる。そして、これらのフィールドに続いて、協調送信の対象となる通信端末を示すTarget Address、協調多重送信数Coordinate Multiplex、協調送信する場合のパラメータCoordinate Parameterに加えて、共有データとして受領したフレームのブロックACK情報であるBA ControlとBA Informationなどのパラメータがさらに含まれ、末尾にフレームチェックシーケンス(FCS)が付加される。Coordinate Parameterには、協調送信する際に使用するMCS、送信電力、ガードインターバル長など、さまざま通信パラメータが記載される。
【0092】
なお、グラントフレームに協調送信の受信ターゲットとなる通信端末に関する情報を記載して、協調送信データを受信する通信端末を指定することによって、その受信端末に対して協調送信が実施されることをあらかじめ把握させることができるという点を理解されたい。
【0093】
図11には、トリガーフレームの構成例を示している。但し、本実施形態において特に特徴的となるフィールドは、グレーで塗り潰している。トリガーフレームは、協調送信を能動的に実施するアクセスポイントや、協調送信を管理するマスターアクセスポイントが、協調送信を受動的に実施するアクセスポイントとの間で協調送信の詳細な(マイクロ秒単位での)タイミングをとるために使用される(例えば、図3並びに図4を参照のこと)。
【0094】
図示のトリガーフレームは、所定のPHY層におけるプリアンブルとしてのPLCPヘッダに続き、MAC層におけるコントロールフレームとして構成される。すなわち、従来からのコントロールフレーム構造として、当該フレームの種類を示すFrame Control、当該フレームの持続時間を示すDuration、受信先のアドレスを示すReceive Address、送信元のアドレスを示すTransmit Addressなどの各フィールドを含んでいる。そして、これらのフィールドに続いて、すべての受信先に共通となるCommon Informationと、ユーザ毎(受信先となる通信装置毎)に必要な情報であるUser Informationが必要に応じて付加され、末尾にフレームチェックシーケンス(FCS)が付加される。
【0095】
Common Informationとして、協調送信を実施することを示すCoordinate Transmitと、協調送信とともに多重した通信であることを示すCoordinate Multiplexの各ビットが用意されている。
【0096】
また、ユーザ毎に必要な情報であるUser Informationとして、協調送信を実施する際に必要なユーザ毎の送信パラメータCoordinate Parameterが記載される。Coordinate Parameterには、協調送信する際に使用するMCS、送信電力、ガードインターバル長など、さまざま通信パラメータが記載される。
【0097】
図12には、データフレームの内部構造を示している。図示のデータフレームは、複数のサブフレーム(MPDU)をアグリゲートした、A-MPDUフレームとして構成されるものとする。
【0098】
図示のデータフレームのプリアンブル(Preamble)は、L(Legacy)-STF(Short Training Field)、L-LTF(Long Training Field)、L-SIG、RL-SIG(Repeated L-SIG)、HE(High Efficiency)-SIG-A、HE-SIG-B、HE-STF、及びHE-LTF群から構成される。STFは例えば粗い同期獲得に使用され、LTFは例えば詳細な同期獲得やチャネル推定などに使用される。また、各SIGフィールドには、各々の規格に対応したシグナリング情報が記載される。
【0099】
プリアンブルに含まれるHE-SIG-Aのパラメータとして、協調送信動作が実施されていることを識別するCoordinate Transmitビットが用意されている点に特徴がある。当該データフレームの受信側の通信装置は、当該ビットに基づいて、他の空間多重伝送されるA-MPDUに同じMPDUが含まれていること(すなわち、同じMPDUが複数の送信元から協調送信されていること)を識別することができる。
【0100】
また、プリアンブルに含まれるHE-SIG-Bのパラメータとして、協調送信動作を実施するパラメータが記載されたCoordinate Parameterが含まれる。Coordinate Parameterには、協調送信する際に使用するMCS、送信電力、ガードインターバル長など、さまざま通信パラメータが記載される。
【0101】
また、図12に示す例では、MPDU-1からMPDU-8までの8個のMPDU(サブフレーム)がアグリゲートされてA-MPDUが構成され、必要に応じてEOF(End of Frame)パディング(Pad)が付加される。但し、サブフレームのアグリゲート数は8個には限定されず、7個以下又は9個以上であってもよい。
【0102】
A-MPDUフレームのサブフレームとして構成される個々のMPDUには、所定のデリミタと、必要に応じて末尾のパディングが付加される。
【0103】
個々のMPDUは、所定のMACヘッダとデータペイロードで構成され、末尾にMPDU毎に所定の計算手順に従って計算したフレームチェックシーケンス(FCS)が付加される。
【0104】
MACヘッダは、当該フレームの形式を示すFrame Control、当該フレームの持続時間を示すDuration、送受信装置を適宜指定するためのAddress1~Address4に、シーケンス番号などを格納するSequence Control、QoS(Quality of Service)パラメータが記載されたQoS Control、高速伝送パラメータが記載されたHT(High Throughput) Controlの各フィールドから構成される。
【0105】
図13図19には、データ共有や協調送信に適用されるデータフレームの構成例をそれぞれ示している。但し、各図において、横軸を時間軸とする。
【0106】
図13には、アクセスポイントの間で、複数の空間多重ストリームを利用してデータを共有する場合に利用されるフレームの構成例を示している。図示のフレーム構成によれば、MPDU-1からMPDU-4までのデータを共有する場合に、それぞれのMPDUを異なる空間多重ストリームSD1~SD4として構成して多重伝送することで、時間的には短い時間で共有させることができる。
【0107】
例えば、図1に示した無線ネットワーク構成において、協調送信を能動的に実施するAP1から協調送信を受動的に実施するAP2へ、図13に示すデータフレームを送信することで、AP1とAP2間でのMPDU-1からMPDU-4までの協調送信用データの共有を短時間で実現することができる。また、高速伝送可能なMCSを利用することによって、データ共有の所要時間をさらに短縮することができる。
【0108】
図14には、図1に示した無線ネットワークにおいて、アクセスポイントAP1から送信されるデータの構成を示している。ここでは、AP1が配下の通信端末STA3宛てに協調送信を実施するデータ(MPDU-1~MPDU-4)を、第1の空間多重ストリームSD1として構成するとともに、配下の他の通信端末STA1宛てのデータ(MPDU-1~MPDU-6)を、第2の空間多重ストリームSD2として構成する例を示している。空間多重ストリーム間でデータ長が揃わないときには、短い方の空間多重ストリームにパディング(Pad)を施してデータ長を揃える。図14に示す例では、SD2パディング(Pad)が施されている。但し、図14に示すデータ構成は、受信先となるSTA1が受信可能な空間多重ストリーム数は1であり、STA3が受信可能な空間多重ストリーム数が2以上であることを前提とする。
【0109】
図15には、図1に示した無線ネットワークにおいて、アクセスポイントAP2から送信されるデータの構成を示している。ここでは、AP2が他の無線ネットワークに属する通信端末STA3宛てに協調送信を実施するデータ(MPDU-1~MPDU-4)を、第1の空間多重ストリームSD3として構成するとともに、配下の他の通信端末STA2宛てのデータ(MPDU-1~MPDU-8)を、第2の空間多重ストリームSD4として構成する例を示している。空間多重ストリーム間でデータ長が揃わないときには、短い方の空間多重ストリームにパディング(Pad)を施してデータ長を揃える。図15に示す例では、SD4にパディング(Pad)が施されている。但し、図15に示すデータ構成は、受信先となるSTA2が受信可能な空間多重ストリーム数は1であり、STA3が受信可能な空間多重ストリーム数が2以上であることを前提とする。
【0110】
図16には、マスターアクセスポイント(M-AP)から複数のアクセスポイントへ共有データを送信するデータフレームの構成例を示している。ここでは、図2に示した無線ネットワークにおいて、4つの空間多重ストリームSD1~SD4をM-APから各アクセスポイントAP1、AP2宛てに送信するフレームとして構成する例を示している。
【0111】
まず、AP1とAP2がSTA3宛てに協調送信を実施するデータ(MPDU-1~MPDU-4)を、第1の空間多重ストリームSD1として構成している。これに、AP1が他の通信端末STA1宛てに送信するデータ(MPDU-1~MPDU-6)を、第2の空間多重ストリームSD2として構成している。また、AP2が他の通信端末STA2宛てに送信するデータ(MPDU-1~MPDU-8)を、第3の空間多重ストリームSD3として構成している。さらに、AP2宛てのデータ(MPDU-1~MPDU-7)を、第4の空間多重ストリームSD4として構成している。空間多重ストリーム間でデータ長が揃わないときには、短い方の空間多重ストリームにパディング(Pad)を施してデータ長を揃える。図16に示す例では、SD2、SD3、SD4にそれぞれパディング(Pad)が施されている。
【0112】
図16に示すデータフレームを送信することで、AP1とAP2間でのMPDU-1からMPDU-4までの協調送信用データの共有を短時間で実現することができるとともに、AP1とAP2がそれぞれ他の通信端末宛てに送信するデータも併せて送ることができる。また、高速伝送可能なMCSを利用することによって、データ共有の所要時間をさらに短縮することができる。
【0113】
図17には、マスターアクセスポイント(M-AP)から複数のアクセスポイントへ共有データを送信するデータフレームの他の構成例を示している。ここでは、図2に示した無線ネットワークにおいて、8つの空間多重ストリームSD1~SD8をM-APから各アクセスポイントAP1、AP2宛てに送信するフレームとして構成する例を示している。
【0114】
まず、AP1とAP2がSTA3宛てに協調送信を実施するデータ(MPDU-1~MPDU-4)を、第1の空間多重ストリームSD1として構成している。これにAP1が通信端末STA1宛てに送信するデータの一部(MPDU-1~MPDU-4)を、第2の空間多重ストリームSD2として構成し、さらにAP1がSTA1宛てに送信するデータの残りの一部(MPDU-5~MPDU-6)を、第3の空間多重ストリームSD3として構成している。
【0115】
また、AP2が他の通信端末STA2宛てに送信するデータの一部(MPDU-1~MPDU-4)を、第4の空間多重ストリームSD4として構成し、さらにAP2がSTA2宛てに送信するデータの残りの一部(MPDU-5~MPDU-8)を、第5の空間多重ストリームSD5として構成している。
【0116】
さらに、AP2宛てのデータの一部(MPDU-1~MPDU-4)を、第6の空間多重ストリームSD6として構成し、さらにAP2宛のデータの残りの一部(MPDU-5~MPDU-7)を、第7の空間多重ストリームSD7として構成している。
【0117】
そして、AP1とAP2がSTA3宛てに協調送信を実施するデータ(MPDU-1~MPDU-4)の信頼性を向上させるために、第8の空間多重ストリームSD8としても、SD1と同じデータとして構成している。
【0118】
図17に示すデータフレームを送信することで、AP1とAP2間でのMPDU-1からMPDU-4までの協調送信用データの共有を短時間で実現することができるとともに、AP1とAP2がそれぞれ他の通信端末宛てに送信するデータも併せて送ることができる。また、高速伝送可能なMCSを利用することによって、データ共有の所要時間をさらに短縮することができる。
【0119】
図18には、図2に示した無線ネットワークにおいて、アクセスポイントAP1から送信されるデータフレームの構成例を示している。
【0120】
同図では、AP1が配下の通信端末STA3宛てに協調送信を実施するデータ(MPDU-1~MPDU-4)を、第1の空間多重ストリームSD1として構成している。これに加えて、配下の他の通信端末STA1宛てのデータ(MPDU-1~MPDU-6)を、第2の空間多重ストリームSD2として構成している。
【0121】
さらに、STA3宛てに協調送信を実施するデータ(MPDU-1~MPDU-4)の信頼性を向上させるために、第3の空間多重ストリームSD3として、第1の空間多重ストリームSD1と同じデータとして構成している。
【0122】
また、STA1宛てに多重送信するデータ(MPDU-1~MPDU-6)の信頼性を向上させるために、第4の空間多重ストリームSD4として、第2の空間多重ストリームSD2と同じデータとして構成している。
【0123】
空間多重ストリーム間でデータ長が揃わないときには、短い方の空間多重ストリームにパディング(Pad)を施してデータ長を揃える。図18に示す例では、SD2及びSD4にそれぞれパディング(Pad)が施されている。但し、図18に示すデータ構成は、受信先となるSTA1が受信可能な空間多重ストリーム数は2以上であり、STA3が受信可能な空間多重ストリーム数が4以上であることを前提とする。
【0124】
図19には、図2に示した無線ネットワークにおいて、アクセスポイントAP2から送信されるデータフレームの構成例を示している。
【0125】
同図では、他の無線ネットワークに属する通信端末STA3宛てに協調送信を実施するデータ(MPDU-1~MPDU-4)を、第1の空間多重ストリームSD1として構成している。これに加えて、配下の通信端末STA2宛てのデータ(MPDU-1~MPDU-8)を、第3の空間多重ストリームSD3として構成している。
【0126】
さらに、STA3宛てに協調送信を実施するデータ(MPDU-1~MPDU-4)の信頼性を向上させるために、第2の空間多重ストリームSD2として、第1の空間多重ストリームSD1と同じデータとして構成している。
【0127】
また、STA2宛てに多重送信するデータ(MPDU-1~MPDU-8)の信頼性を向上させるために、第4の空間多重ストリームSD4として、第3の空間多重ストリームSD3と同じデータとして構成している。
【0128】
空間多重ストリーム間でデータ長が揃わないときには、短い方の空間多重ストリームにパディング(Pad)を施してデータ長を揃える。図19に示す例では、SD3及びSD4にそれぞれパディング(Pad)が施されている。但し、図19に示すデータ構成は、受信先となるSTA2が受信可能な空間多重ストリーム数は2以上であり、STA3が受信可能な空間多重ストリーム数が4以上であることを前提とする。
【0129】
図20には、通信端末並びにアクセスポイントとして動作することができる通信装置2000の機能的構成例を模式的に示している。図示の通信装置2000は、インターネット接続モジュール2001と、情報入力モジュール2002と、機器制御部2003と、情報出力モジュール2004と、無線通信モジュール2005を備えている。但し、通信装置2000は、通信端末若しくはアクセスポイントとして動作するために必要とされるモジュールのみで構成され、不要なモジュールは簡素化され又は組み込まないように構成することができ、あるいは逆に図示しないその他の機能モジュールをさらに組み込んで通信装置2000を構成することもできる。
【0130】
インターネット接続モジュール2001は、例えば当該通信装置2000がアクセスポイントとして動作する場合に、インターネット網へ接続するための通信モデムなどの機能が実装され、公衆通信回線とインターネットサービスプロバイダを介してインターネット接続を実現する。
【0131】
情報入力モジュール2002は、ユーザからの指示を伝える情報を入力するための機能モジュールであり、例えば押しボタンやキーボード、タッチパネルなどで構成される。
【0132】
機器制御部2003は、当該通信装置2000をユーザの意図した通りの通信端末又はアクセスポイントとして動作させるための制御を行う機能モジュールである。
【0133】
情報出力モジュール2004は、当該通信装置2000の動作状態や、インターネットを介して得られる情報をユーザに提示する機能モジュールである。情報出力モジュール2004は、例えば、LED(Light Emitting Diode)や液晶パネル、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの表示素子や、音声や音楽を出力するスピーカなどのデバイスで構成される。情報出力モジュール2004は、機器制御部2003において処理中又は処理後の情報などをユーザに向けて表示又は通知するようになっている。
【0134】
無線通信モジュール2005は、例えばマイクロプロセッサなどのプロセッサや回路で構成され、当該通信装置2000において、無線通信を処理するための機能モジュールである。ここで言う無線通信には、協調送信を能動的又は受動的に実施するアクセスポイント、若しくは、協調送信を管理するマスターアクセスポイントとして動作して、アクセスポイント間でのデータの共有並びに通信端末へのデータの協調送信を行うことを含むものとする。無線通信動作の詳細については後述に譲る。
【0135】
図21には、図20に示した通信装置2000内の無線通信モジュール2005の内部構成例を示している。図示の無線通信モジュール2005は、インターフェース2101と、送信バッファ2102と、ネットワーク管理部2103と、送信フレーム構築部2104と、受信データ構築部2105と、受信バッファ2106と、協調通信管理部2107と、空間多重送信処理部2108と、空間多重受信処理部2109と、管理情報生成部2110と、管理情報処理部2111と、無線送信処理部2112と、送信電力制御部2113と、送受信アンテナ制御部2114と、検出閾値制御部2115と、無線受信処理部2116を備えている。
【0136】
ここで、インターフェース2101と、送信バッファ2102と、ネットワーク管理部2103と、送信フレーム構築部2104と、受信データ構築部2105と、受信バッファ2106は、IEEE802.11などの規格に基づく無線LANシステムにおけるソフトウェアに共通する部分として構成される。また、無線送信処理部2112と、送信電力制御部2113と、送受信アンテナ制御部2114と、検出閾値制御部2115と、無線受信処理部2116は、無線LANシステムにおけるベースバンド処理に共通する部分として構成される。
【0137】
インターフェース2101は、ユーザからの入力やインターネット網からのデータやユーザへの情報を、所定の信号形式で交換するための機能モジュールである。
【0138】
送信バッファ2102は、ユーザからの入力や、無線送信する信号をインターフェース2101から受け取った場合に、一時的に格納しておくための機能モジュールである。
【0139】
ネットワーク管理部2103は、無線ネットワークに含まれる通信装置のアドレス情報などを管理する機能モジュールである。当該通信装置2000がアクセスポイントとして動作している場合には、ネットワーク管理部2103は、自局に接続する通信装置(通信端末など)のアドレス情報を管理している。また、当該通信装置2000が通信端末として動作している場合には、ネットワーク管理部2103は、接続先となるアクセスポイントのアドレス情報を管理している。
【0140】
本実施形態では、アクセスポイントは、周囲に存在する他のアクセスポイントの存在を把握し、必要に応じてそれらの他のアクセスポイントと協調して動作する構成となっている。したがって、当該通信装置2000がアクセスポイントとして動作している場合には、ネットワーク管理部2103は、必要に応じて周囲に存在する他のアクセスポイントの情報も管理するように構成されている。
【0141】
送信フレーム構築部2104は、無線送信データを無線伝送するためのデータフレームとして構築するための機能モジュールである。また、送信フレーム構築部2104は、送信バッファ2102に格納された複数のMPDUを集めて、A-MPDUを構築するようになっている。
【0142】
受信データ構築部2105は、無線受信したデータフレームから元のデータを再構築するための機能モジュールである。例えばA-MPDUを受信した場合には、受信データ構築部2105は、そのA-MPDUのデータフレームから所定のヘッダ情報を除去して、MPDUを抽出し、必要とされるデータ部分のみを抽出する。
【0143】
受信バッファ2106は、すべてのデータフレームが揃うまで、受信データ構築部2105によって抽出されたデータ部分を、シーケンス番号に基づいて一時的に格納しておく機能モジュールである。受信バッファ2106は、インターフェース2101経由で接続されたアプリケーション機器(図示しない)にデータを出力するタイミングが到来するまで、受信データを格納しておくように構成されている。
【0144】
協調通信管理部2107は、当該通信装置2000がアクセスポイントとして動作する場合において、周囲に存在する他のアクセスポイントの存在を把握し、それらの他のアクセスポイントと協調送信動作の実施の可否判定を行い、パラメータの設定などを行う。
【0145】
具体的には、当該通信装置2000が協調送信を能動的に実施するアクセスポイント(若しくは、協調送信を管理するマスターアクセスポイント)として動作する場合において、協調通信管理部2107は、協調送信のためのデータ共有のイニシエーション時におけるイニシエートフレーム(図9を参照のこと)の送信や、協調送信を受動的に実施する他のアクセスポイントへのトリガーフレーム(図11を参照のこと)の送信のための制御を行う。
【0146】
また、当該通信装置2000が協調送信を受動的に実施するアクセスポイントとして動作する場合において、協調通信管理部2107は、他のアクセスポイントからのイニシエートフレームの受信や、共有データの受領確認時におけるグラントフレーム(図10を参照のこと)の送信のための制御を行う。
【0147】
他方、当該通信装置2000が通信端末としていずれかのアクセスポイントの無線ネットワークに接続している場合において、協調通信管理部2107は、周囲の複数のアクセスポイントから協調送信されるデータを受信するための、無線通信モジュール2005内における各種設定を行う。
【0148】
空間多重送信処理部2108は、複数の空間多重ストリームの同時送信を実施するために必要となる、空間多重数の設定や、空間多重ストリームの送信に必要な各種のパラメータの設定を行う機能モジュールである。
【0149】
例えば、当該通信装置2000がアクセスポイントとして協調送信を実施する場合において、空間多重送信処理部2108は、協調送信を実施する空間多重ストリームの設定や、通信端末宛てのデータと多重化して送信する場合には、その都度、必要となるパラメータの設定を行う。具体的には、空間多重送信処理部2108は、隣接するアクセスポイントと協調送信のタイミングを合わせるとともに、必要なパラメータを一致させて送信するための制御を行う。
【0150】
空間多重受信処理部2109は、複数の空間多重ストリームを同時に受信するために必要となる、空間多重数の設定や、空間多重ストリームの受信に必要な各種のパラメータの設定を行う機能モジュールである。具体的には、空間多重受信処理部2109は、周囲の1以上のアクセスポイントから送られる、空間多重フレームの中から自己の受信が必要とされる空間多重ストリームを抽出するための制御を行う。
【0151】
また、複数のアクセスポイントによってデータ共有及び協調送信が実施される無線ネットワーク環境において、空間多重受信処理部2109は、異なるアクセスポイントから、同じデータが送信されていることを把握し、必要に応じてこれらの受信データを合成して、受信データを構築する制御を行うようになっている。
【0152】
管理情報生成部2110は、ネットワークの管理に必要なビーコン信号や、通信制御プロトコルに必要な制御フレーム並びに管理フレームを構築する機能モジュールである。本実施形態において、当該通信装置2000がアクセスポイントとして動作する場合には、管理情報生成部2110は、イニシエートフレームやグラントフレーム、ブロックACK要求フレームなどを生成する。一方、当該通信装置2000が通信端末として動作する場合には、管理情報生成部2110は、ACKフレームを生成する。
【0153】
管理情報処理部2111は、受信したフレームが制御フレームや管理フレームであった場合に、通信制御プロトコルに必要な制御情報を構築する機能モジュールである。受信したフレームがビーコンフレームであった場合には、管理情報処理部2111は、そのビーコンフレームに記載されているパラメータを協調通信管理部2107やネットワーク管理部2103に渡して、アクセスポイントのパラメータを把握するようになっている。また、受信したフレームがイニシエートフレームやグラントフレームであった場合には、管理情報処理部2111は、協調通信管理部2107にパラメータを通知して、当該通信装置2000がアクセスポイントとして動作する場合、又は通信端末として動作する場合に、それぞれに必要に応じて以降の処理を実施する。
【0154】
無線送信処理部2112は、所定の周波数チャネルにおいて、無線送信するデータフレームなどのフレームに所定のプリアンブルを付加するとともに、所定のベースバンド信号に変換して、アナログ信号として処理する機能モジュールである。図21では、無線送信処理部2112を単一の機能モジュールとして描いているが、複数の空間多重ストリームを扱う場合は、それぞれのストリームを同時に送信するために複数のエレメントがパラレルに動作する構成であってもよい。また、複数の無線送信処理部から、それぞれ別の空間多重ストリームの信号が送信アンテナに供給される構成であってもよい。
【0155】
送信電力制御部2113は、所定のフレームを送信する場合に、不要な電波到達範囲まで信号が届かないように送信電力を制御する機能モジュールである。本実施形態では、受信側に意図した受信電界強度で信号が届くように、送信電力制御部2113が必要最低限の送信電力を調整して、データ送信を制御するように構成されているものとする。
【0156】
送受信アンテナ制御部2114は、複数のアンテナ素子が接続されており、空間多重ストリームとして信号を無線送信する制御と、これら空間多重ストリームとして送信された信号を受信する処理を実施する。
【0157】
検出閾値制御部2115は、送信電力制御を実施した場合に、その電波到達範囲内に存在する通信装置からの信号を検出することができるような信号の検出レベルを設定して、必要最低限の検出閾値で信号を検出できるように制御する機能モジュールである。検出閾値制御部2115は、現在利用中のチャネルであれば、所定の検出レベル以上の信号を検出するように構成されている。
【0158】
無線受信処理部2116は、所定のプリアンブル信号を検出した場合に、空間多重化された個々のストリームを分離して、そのプリアンブル以降に付加されるヘッダやデータ部分の受信処理を実施する機能モジュールである。図21では、無線受信処理部2116を単一の機能モジュールとして描いているが、複数の空間多重ストリームを扱う場合は、それぞれのストリームを同時に受信するために複数のエレメントがパラレルに動作する構成であってもよい。
【0159】
通信装置2000がアクセスポイントとして構成される場合、図21に示した無線通信モジュール2005内の構成からも分かるように、空間多重伝送に対応している。他方、通信装置2000が通信端末として構成される場合には、空間多重伝送に対応していることがより好ましいが、必須ではない。
【0160】
図22には、アクセスポイントが通信端末を登録するための処理手順をフローチャートの形式で示している。図示の処理手順は、アクセスポイントとして動作する通信装置2000において実施されるものとする。
【0161】
アクセスポイントは、既存(既に自身に接続されている)通信端末、又は新規(自身に接続されていない)通信端末から、アソシエーション要求フレーム(図7を参照のこと)を受信すると(ステップS2201のYes)、その通信端末のパラメータを獲得し(ステップS2202)、例えば協調送信情報エレメントの記載内容などに基づいて、その通信端末が複数のアクセスポイントから協調送信されるデータを受信できるかどうかをチェックする(ステップS2203)。
【0162】
アソシエーション要求する通信端末が協調送信されるデータの受信(協調受信)に対応している場合には(ステップS2203のYes)、アクセスポイントは、その通信端末を協調受信対応端末として登録して(ステップS2204)、本処理を終了する。
【0163】
一方、アソシエーション要求する通信端末が協調送信されるデータの受信(協調受信)に対応していない場合には(ステップS2203のNo)、アクセスポイントは、その通信端末が空間多重ストリームの受信(多重受信)に対応しているかどうかをさらにチェックする(ステップS2205)。
【0164】
そして、アソシエーション要求する通信端末が空間多重ストリームの受信に対応している場合には(ステップS2205のYes)、アクセスポイントは、その通信端末を多重受信対応端末として登録して(ステップS2206)、本処理を終了する。また、アソシエーション要求する通信端末が空間多重ストリームの受信に対応していない場合には(ステップS2205のNo)、アクセスポイントは、その通信端末を多重受信非対応端末として登録して(ステップS2207)、本処理を終了する。
【0165】
図23には、アクセスポイントが隣接するアクセスポイントを登録するための処理手順をフローチャートの形式で示している。図示の処理手順は、アクセスポイント(協調送信を能動的に実施するアクセスポイント、又は協調送信を管理するマスターアクセスポイント)として動作する通信装置2000において実施されるものとする。
【0166】
アクセスポイントは、オーバーラップして存在するBSS(Basic Service Set)からの信号(OBSS信号)を受信した場合には(ステップS2301のYes)、その受信信号から、隣接するアクセスポイントの動作パラメータを獲得する(ステップS2302)。OBSS信号として、例えば、通信端末が送信するアソシエーション応答フレーム(図7を参照のこと)が想定され、協調送信情報エレメントの記載内容などに基づいて、隣接するアクセスポイントの動作パラメータを獲得することができる。
【0167】
次いで、アクセスポイントは、協調送信情報エレメントの記載内容などに基づいて、隣接するアクセスポイントが協調送信に対応しているかどうかをチェックする(ステップS2303)。
【0168】
そして、隣接するアクセスポイントが協調送信に対応している場合には(ステップS2303のYes)、アクセスポイントは、その隣接アクセスポイントを、協調送信対応アクセスポイントとして登録して(ステップS2304)、本処理を終了する。また、隣接するアクセスポイントが協調送信に対応していない場合には(ステップS2303のNo)、アクセスポイントは、かかる隣接するアクセスポイントの登録を行うことなく、本処理を終了する。
【0169】
なお、上記の協調送信対応アクセスポイントの登録処理は、すべてのアクセスポイントにおいて実施するようにしてもよいが、協調送信を能動的に実施するアクセスポイントや協調送信を管理するマスターアクセスポイントのみが登録処理を実行し、協調送信を受動的に実施するアクセスポイントは行わないようにしてもよい。
【0170】
図24には、アクセスポイントが送信データを受領したときの処理手順をフローチャートの形式で示している。図示の処理手順は、アクセスポイントとして動作する通信装置2000において実施されるものとする。
【0171】
アクセスポイントは、インターフェース2001を介して送信データを受領すると(ステップS2401のYes)、その送信データの受信先となる通信装置のアドレス情報を獲得し(ステップS2402)、さらにその受信先となる通信装置(通信端末)のアソシエーション情報を獲得する(ステップS2403)。
【0172】
次いで、アクセスポイントは、送信データの空間多重伝送が可能かどうかをチェックする(ステップS2404)。空間多重伝送が可能であるかどうかは、アクセスポイント自身が空間多重伝送に対応していることに加えて、受信先の通信装置が空間多重伝送に対応しているかどうかで判定される。双方で空間多重伝送が可能である場合、アクセスポイント自身及び受信先の通信装置の各々の可能な多重ストリーム数に基づいて、許容される(最大限の)空間多重ストリーム数を決定する構成となる。
【0173】
そして、空間多重伝送が可能であれば(ステップS2404のYes)、アクセスポイントは、オーバーラップして存在するBSS(OBSS)のアクセスポイントとの接続状況を獲得して(ステップS2405)、そのOBSS APと協調送信が可能かどうかをさらにチェックする(ステップS2406)。
【0174】
ステップS2406において、協調送信を実施可能な場合とは、具体的には、アクセスポイント自身が協調送信を実施するケイパビリティを有し、且つ、図23に示した処理手順などに従って、協調送信対応アクセスポイントとして既に登録されているOBSS APが存在する場合である。
【0175】
ここで、OBSS APと協調送信が可能である場合には(ステップS2406のYes)、アクセスポイントは、ステップS2401で受領した送信データを、アクセスポイント間で協調して空間多重送信が可能であると設定する(ステップS2407)。一方、OBSS APと協調送信が可能でない場合には(ステップS2406のNo)、アクセスポイントは、送信データを、単独での空間多重送信が可能であると設定する(ステップS2408)。
【0176】
また、空間多重伝送が可能でない場合には(ステップS2404のNo)、アクセスポイントは、ステップS2401で受領した送信データを、空間多重非対応として送信が可能であると設定する(ステップS2409)。
【0177】
そして、アクセスポイントは、送信の可能性(協調送信可能、単独空間多重送信可能、又は、単独非多重送信可能のいずれであるか)とともに、ステップS2402でアドレス情報を獲得した通信装置宛てのデータを送信バッファに保存して(ステップS2410)、本処理を終了する。
【0178】
図25には、アクセスポイントが協調送信を能動的に実施するための処理手順をフローチャートの形式で示している。図示の処理手順は、アクセスポイントとして動作する通信装置2000において実施されるものとする。
【0179】
アクセスポイントは、送信すべきデータがあり、送信タイミングが到来したときに(ステップS2501のYes)、協調送信を実施することが可能かどうかをチェックする(ステップS2502)。
【0180】
ステップS2501において、送信すべきデータがある場合とは、例えば図24に示した処理手順に従って送信データを受領して、送信バッファ2102に保存している場合である。また、ステップS2502において、協調送信を実施可能な場合とは、具体的には、アクセスポイント自身が協調送信を実施するケイパビリティを有し、且つ、図23に示した処理手順などに従って、既に登録された協調送信対応アクセスポイントが存在する場合である。
【0181】
協調送信を実施することができる場合には(ステップS2502のYes)、アクセスポイントは、協調送信に対応している隣接アクセスポイントに対して、イニシエートフレーム(図9を参照のこと)を送信し(ステップS2503)、続いて協調送信用の共有データの送信を行った後(ステップS2504)、イニシエートフレームの送信先のアクセスポイントからのグラントフレーム(図10を参照のこと)を待機する(ステップS2505)。なお、ステップS2503において、協調送信に対応している隣接アクセスポイントは、例えば図23に示した処理手順に従って、協調送信対応アクセスポイントとして登録されたアクセスポイントである。また、ステップS2504では、高速伝送可能なMCSを利用することによって、短時間でアクセスポイント間のデータ共有を実現することができる。
【0182】
また、協調送信を実施できない場合(ステップS2502のNo)、若しくは、隣接する協調送信対応アクセスポイントからグラントフレームを受信できない場合には(ステップS2505のNo)、アクセスポイントは、データの多重伝送が可能であるかどうかをチェックする(ステップS2506)。
【0183】
ステップS2506において、多重伝送が可能であるかどうかは、アクセスポイント自身が多重伝送に対応していることに加えて、受信先の通信装置が多重伝送に対応しているかどうかで判定される。双方で多重伝送が可能である場合、アクセスポイント自身及び受信先の通信装置の各々の可能な多重ストリーム数に基づいて、許容される(最大限の)多重ストリーム数を決定する構成となる。
【0184】
そして、イニシエートフレームの送信先のアクセスポイントからグラントフレームを受信して、共有データの受領を確認することができた場合(ステップS2505のYes)、又は、グラントフレームを受信できなかったがデータの多重伝送が可能な場合には(ステップS2506のYes)、アクセスポイントは、アクセスポイント内での空間多重送信を実施できるかどうかをさらにチェックする(ステップS2507)。ステップS2507では、具体的には、アクセスポイントは、自ネットワーク内に空間多重伝送に対応する通信端末が存在し、且つ、その通信端末宛てのデータがあるかどうかをチェックする。
【0185】
アクセスポイント内での空間多重送信を実施できる場合には(ステップS2507のYes)、アクセスポイントは、他の空間多重データを獲得する(ステップS2508)。すなわち、アクセスポイントは、空間多重により共有データの協調送信と同時に送信すべき、配下の通信端末宛てのデータを獲得する。
【0186】
次いで、アクセスポイントは、隣接する協調送信対応アクセスポイントに対して、下りリンクマルチユーザ空間多重送信(DL MU-MIMO)を実施するためのトリガーフレームを送信する(ステップS2509)。
【0187】
そして、アクセスポイントは、トリガーフレームを送信後に、所定の送信タイミングでデータを送信する(ステップS2510)。トリガーフレームと空間多重送信フレームのフレーム間隔は一定である。したがって、事前にトリガーフレームを送信することによって、協調送信を実施するアクセスポイント間においてマイクロ秒単位での時間同期を確保することができる。また、ステップS2510において、アクセスポイントは、協調送信するデータに、(ステップS2508で獲得した)他の通信端末宛てのデータを、空間多重技術を利用して多重化することによって、無線伝送路を効率よく利用するができる。
【0188】
また、データの多重伝送が可能でない場合には(ステップS2506のNo)、アクセスポイントは、トリガーフレームを送信することなく、そのまま、所定の送信タイミングでデータを送信する(ステップS2510)。
【0189】
アクセスポイントは、データ送信後に、必要に応じてブロックACK要求フレームを送信して(ステップS2511)、データ受信側からのACKフレームの受信を待機する(ステップS2512)。
【0190】
そして、ACKフレームを受信して、当該データのすべてを正常に受信できていた場合には(ステップS2512のYes)、アクセスポイントは、その送信データを送信バッファ2101から破棄して(ステップS2513)、本処理を終了する。
【0191】
アクセスポイントが共有データを協調送信した場合、その送信先の通信端末は、協調送信を実施したいずれかのアクセスポイントからデータを受信できた場合にACKを返送する。いずれにせよ、アクセスポイントは、共有データの協調送信先の通信端末からACKを受領できた場合に(ステップS2512のYes)、その共有データを送信バッファ2101から破棄して(ステップS2513)、本処理を終了することになる。
【0192】
一方、ACKフレームを受信できず、当該データのすべてが受信されていない場合には(ステップS2512のNo)、ステップS2502に戻り、アクセスポイントはデータの再送処理を実施する。
【0193】
図26には、アクセスポイントが協調送信を受動的に実施するための処理手順処理手順をフローチャートの形式で示している。図示の処理手順は、アクセスポイントとして動作する通信装置2000において実施されるものとする。
【0194】
協調送信を受動的に実施するアクセスポイントは、隣接する(協調送信を能動的に実施する)アクセスポイントからイニシエートフレーム(図9を参照のこと)を受信すると(ステップS2601のYes)、そのフレームに記載されている、協調送信に関するパラメータを獲得して、協調送信のための設定を行う(ステップS2602)。
【0195】
また、アクセスポイントは、以降に送られてくる、協調送信の共有データを受信すると(ステップS2603のYes)、これを協調送信用データとして送信バッファ2101に保存する(ステップS2604)。協調送信を能動的に実施するアクセスポイントから高速伝送可能なMCSを利用して共有データが送信されることによって、短時間でアクセスポイント間のデータ共有を実現することができる。
【0196】
次いで、アクセスポイントは、自分が協調送信に対応していることを確認し、又は、協調送信を実施することに了承すると(ステップS2605のYes)、イニシエートフレームの送信元のアクセスポイントに対してグラントフレーム(図10を参照のこと)を返送する(ステップS2606)。
【0197】
次いで、アクセスポイントは、アクセスポイント内での空間多重送信を実施できるかどうかをさらにチェックする(ステップS2607)。ステップS2607では、具体的には、アクセスポイントは、自ネットワーク内に空間多重伝送に対応する通信端末が存在し、且つ、その通信端末宛てのデータがあるかどうかをチェックする。また、アクセスポイント自身及び受信先の通信装置の各々の可能な多重ストリーム数に基づいて、許容される(最大限の)多重ストリーム数を決定するとなる。
【0198】
そして、アクセスポイント内での空間多重送信を実施できる場合には(ステップS6507のYes)、アクセスポイントは、他の空間多重データを獲得する(ステップS2608)。すなわち、アクセスポイントは、空間多重により共有データの協調送信と同時に送信すべき、配下の通信端末宛てのデータを獲得する。
【0199】
その後、下りリンクマルチユーザ空間多重送信を実施するためのトリガーフレームを受信することで、協調送信のタイミングが到来すると(ステップS2609)、アクセスポイントは、協調送信によるデータ送信を実施する(ステップS2610)。トリガーフレームと空間多重送信フレームのフレーム間隔は一定である。したがって、事前にトリガーフレームを受信することによって、協調送信するアクセスポイント間においてマイクロ秒単位での時間同期を確保することができる。また、ステップS2610において、アクセスポイントは、協調送信するデータに、(ステップS2608で獲得した)他の通信端末宛てのデータを、空間多重技術を利用して多重化することによって、無線伝送路を効率よく利用するができる。
【0200】
アクセスポイントは、データ送信後に、必要に応じてブロックACK要求フレームを送信して(ステップS2611)、データ受信側からのACKフレームの受信を待機する(ステップS2612)。
【0201】
そして、ACKフレームを受信して、当該データのすべてを正常に受信できていた場合には(ステップS2612のYes)、アクセスポイントは、その送信データを送信バッファ2101から破棄して(ステップS2613)、本処理を終了する。
【0202】
アクセスポイントが共有データを協調送信した場合、その送信先の通信端末は、協調送信を実施したいずれかのアクセスポイントからデータを受信できた場合にACKを返送する。いずれにせよ、アクセスポイントは、共有データの協調送信先の通信端末からACKを受領できた場合に(ステップS2612のYes)、その共有データを送信バッファ2101から破棄して(ステップS2613)、本処理を終了することになる。
【0203】
一方、ACKフレームを受信できず、当該データのすべてが受信されていない場合には(ステップS2612のNo)、ステップS2601に戻り、アクセスポイントはデータの再送処理を実施する。
【0204】
図27には、通信端末が複数のアクセスポイントからの協調送信データを受信するための処理手順をフローチャートの形式で示している。図示の処理手順は、いずれかのアクセスポイントの配下で通信端末として動作する通信装置2000において実施されるものとする。
【0205】
通信端末は、周囲のアクセスポイントからグラントフレーム(図10を参照のこと)を受信して(ステップS2701のYes)、そのグラントフレーム内で自己が協調送信データの受信ターゲットとして指定されている場合(ステップS2702のYes)、又は、周囲のアクセスポイントからトリガーフレーム(図11を参照のこと)を受信して、そのトリガーフレーム内で自己が受信先として指定されている場合には(ステップS2704のYes)、受信したグラントフレーム又はトリガーフレームに記載されているパラメータ情報を獲得する(ステップS2705)。
【0206】
そして、通信端末は、所定のタイミングで送られてくる多重化データを受信処理する(ステップS2706)。多重化データは、自己(又は他の通信端末)がターゲットに指定された協調送信データと、他の通信端末(又は自己)が受信先に指定されたデータを含む。
【0207】
ここで、グラントフレームに協調送信の受信ターゲットとなる通信端末に関する情報を記載して、協調送信データを受信する通信端末を指定することによって、そのターゲット端末に対して協調送信が実施されることをあらかじめ把握させることができるという点を理解されたい。
【0208】
また、グランドフレーム、トリガーフレーム、及びその後に協調送信されるデータフレームのフレーム間隔は一定である。したがって、通信端末は、事前にグランドフレームやトリガーフレームを受信することで、協調送信を実施するアクセスポイントとの間で時間同期を確保することができる。とりわけ、直前のトリガーフレームを受信できた場合には、マイクロ秒単位で時間同期を確保することができる。
【0209】
通信端末は、ステップS2706でデータを正常に受信することができた場合には(ステップS2707)、そのMPDUのシーケンス番号をACK情報として記録する(ステップS2708)。
【0210】
通信端末は、フレーム(アグリゲーションフレーム)の末尾まで受信するまでは(ステップS2709のNo)、ステップS2706に戻って、アグリゲートされたMPDUの受信を繰り返し実施する。
【0211】
そして、通信端末は、フレームの末尾まで受信を完了した後(ステップS2709のYes)、自己が応答するように指定された所定のブロックACK要求(BAR)を受信すると(ステップS2710)、ステップS2708で記録しておいたACK情報を格納したACKフレームを返送する(ステップS2711)。
【0212】
ACKフレームを返送した後、すべてのデータを収集し終えていれば(ステップS2712のYes)、通信端末は、本処理を終了する。一方、すべてのデータが受信されていなければ(ステップS2712のNo)、ステップS2701に戻って、通信端末は、再送されるデータを待ち受ける。
【0213】
最後に、本明細書で提案してきた、複数のアクセスポイント間でデータ共有及び協調送信を最適化する技術の効果や利点についてまとめておく。
【0214】
(1)複数のアクセスポイントが、共有する送信データを同時に協調送信するので、宛先となる通信端末では安定してデータの受信を実施することができる。
【0215】
(2)隣接するアクセスポイント間で協調送信用のデータを共有する際に、複数のデータ(MPDU)を空間多重ストリームとして構成することによって、短時間のうちにデータの共有を実現することができる。
【0216】
(3)協調送信の受信ターゲットとなる通信端末へデータ伝送ができないタイミングを利用して、アクセスポイント間でデータ共有のための通信を実施することが可能である。
【0217】
(4)共有データの受領確認を通知するグラントフレームに、協調送信の受信ターゲットとなる通信端末に関する情報を記載して、協調送信データを受信する通信端末を指定することによって、その受信端末に対して協調送信が実施されることをあらかじめ把握させることができる。
【0218】
(5)複数のアクセスポイントによって協調送信を実施する場合に、協調送信の対象となる通信端末宛てのデータに、他の通信端末宛てのデータを空間多重ストリームとして多重化することで、効率よく無線伝送することができる。
【0219】
(6)複数のアクセスポイントで協調送信を実施する際の伝送パラメータは、接続状況の劣るアクセスポイントからの送信が確実に受信できる符号化方式や変調方式が選択される。したがって、協調送信の実施により比較的長い時間にわたって無線伝送路が占有される可能性があるが、この時間を利用して、接続状況の勝他の通信装置宛てに、より多くのデータを多重化して送信することで、伝送路利用効率を向上させることができる。
【0220】
(7)アクセスポイントは、自己に接続された通信端末への通信と、他のアクセスポイントに接続された通信端末への通信を、空間分割多重技術により同時に実施することで、無線伝送路を効率よく利用することができる。
【0221】
(8)1つのアクセスポイントから1つの通信端末に、複数の空間多重ストリームを多重して送信することで、単位時間当たりのデータ伝送量を増大させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0222】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本明細書で開示する技術について詳細に説明してきた。しかしながら、本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0223】
本明細書で開示する技術は、例えばIEEE801.11などの無線LAN規格に基づく無線ネットワークに適用することができるが、これに限定されるものではない。隣接するアクセスポイント若しくは基地局同士が協調して動作することが可能なさまざまなタイプの無線システムに、同様に本明細書で開示する技術を適用することができる。
【0224】
要するに、例示という形態により本明細書で開示する技術について説明してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本明細書で開示する技術の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【0225】
なお、本明細書の開示の技術は、以下のような構成をとることも可能である。
【0226】
(1)無線信号を送受信する通信部と、
隣接するアクセスポイント間で1つの通信端末に同時に送信するデータを共有するための通信動作、及び、前記データの共有が完了したことを認識するための通信動作を含む、前記通信部における通信動作を制御する制御部と、
を具備する、アクセスポイントとして動作する通信装置。
【0227】
前記通信部は、複数のデータを多重ストリームとして構成した無線信号を送受信することが可能であり、
前記制御部は、前記共有したデータを前記隣接するアクセスポイントと同時に送信するときに、他の通信装置宛ての送信ストリームと多重化して、マルチユーザ多重ストリームとして送信するように制御する、
上記(1)に記載の通信装置。
【0228】
(2-1)前記通信部は、複数のデータを空間多重ストリームとして構成した無線信号を送受信することが可能であり、
前記制御部は、前記共有したデータを前記隣接するアクセスポイントと同時に送信するときに、他の通信装置宛ての送信ストリームと多重化して、マルチユーザ空間多重ストリームとして送信するように制御する、
上記(1)に記載の通信装置。
【0229】
(3)前記通信部は、複数のデータを多重ストリームとして構成した無線信号を送受信することが可能であり、
前記制御部は、前記隣接するアクセスポイント間で共有するデータを多重ストリームとして多重化して通信するように制御する、
上記(1)又は(2)のいずれかに記載の通信装置。
【0230】
(3-1)前記通信部は、複数のデータを空間多重ストリームとして構成した無線信号を送受信することが可能であり、
前記制御部は、前記隣接するアクセスポイント間で共有するデータを空間多重ストリームとして多重化して通信するように制御する、
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の通信装置。
【0231】
(4)前記制御部は、前記1つの通信端末が通信不可能な時間区間において、前記隣接するアクセスポイント間で前記データを共有するための通信動作を実施するように制御する、
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の通信装置。
【0232】
(5)前記制御部は、前記隣接するアクセスポイント間で前記データを共有するための通信を、高速伝送可能な符号化方式又は変調方式を利用して実施するように制御する、
上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の通信装置。
【0233】
(6)前記制御部は、所定のイニシエーションフレームを送信することによって、前記隣接するアクセスポイントに対して、前記データの共有、又は前記共有したデータの前記1つの通信端末への同時送信を実施することを通知する、
上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の通信装置。
【0234】
(7)前記制御部は、前記隣接するアクセスポイントから所定のイニシエーションフレームを受信したことによって、前記データの共有、又は前記共有したデータの前記1つの通信端末への同時送信を実施することを認識する、
上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の通信装置。
【0235】
(8)前記イニシエートフレームは、前記共有するデータを同時に送信するアクセスポイントに関する情報を含む、
上記(6)又は(7)のいずれかに記載の通信装置。
【0236】
(9)前記イニシエートフレームは、前記共有するデータの送信タイミングに関する情報、前記共有するデータ送信時における符号化方式又は変調方式に関する情報、前記共有するデータを送信するチャネルに関する情報のうち少なくとも1つをさらに含む、
上記(8)に記載の通信装置。
【0237】
(10)前記制御部は、所定のトリガーフレームを送信し又は前記隣接するアクセスポイントから前記トリガーフレームを受信したことに基づいて、前記共有するデータの送信タイミングを制御する、
上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の通信装置。
【0238】
(11)前記制御部は、前記隣接するアクセスポイントとの間での所定のグラントフレームの通信に基づいて、前記データの共有を認識する、
上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の通信装置。
【0239】
(12)前記制御部は、前記共有するデータを送信してきた前記隣接するアクセスポイントに対して前記グラントフレームを返送するように制御する、
上記(11)に記載の通信装置。
【0240】
(13)前記制御部は、前記共有するデータの受信先となる前記隣接するアクセスポイントから返送された前記グラントフレームの受信処理を制御する、
上記(11)に記載の通信装置。
【0241】
(14)前記グラントフレームは、前記1つの通信端末に関する情報、前記共有するデータを送信する際の多重送信数に関する情報、前記共有するデータ送信時における通信パラメータのうち少なくとも1つを含む、
上記(11)乃至(13)のいずれかに記載の通信装置。
【0242】
(15)前記通信部は、複数のデータを多重ストリームとして構成した無線信号を送受信することが可能であり、
前記グラントフレームは、前記共有するデータを送信する際の多重送信数に関する情報、前記共有するデータ送信時における通信パラメータのうち少なくとも1つをさらに含む、
上記(13)に記載の通信装置。
【0243】
(16)前記制御部は、前記1つの通信端末において前記共有するデータの受領が完了したことに基づいて、前記共有するデータを破棄する、
上記(1)乃至(15)のいずれかに記載の通信装置。
【0244】
(17)前記制御部は、前記1つの通信端末及び前記他の通信端末の受信可能な多重ストリーム数に基づいて、データの多重化送信を制御する、
上記(2)に記載の通信装置。
【0245】
(18)隣接するアクセスポイント間で1つの通信端末に同時に送信するデータを共有するステップと、
前記データの共有が完了したことを認識するステップと、
前記共有したデータを送信するステップと、
を有する、アクセスポイントにおける通信方法。
【0246】
(19)無線信号を送受信する通信部と、
アクセスポイントから所定のフレームを受信したことに基づいて複数のアクセスポイントから同時に同じデータが送信されたことを認識する動作を含む、前記通信部における通信動作を制御する制御部と、
を具備する、アクセスポイントに接続する通信端末として動作する通信装置。
【0247】
(19-1)前記所定のフレームは、前記隣接するアクセスポイント間における前記同じデータの共有に関する情報を含むグラントフレームである、
上記(19)に記載の通信装置。
【0248】
(19-2)
前記グラントフレームは、前記通信端末に関する情報、前記共有するデータを送信する際の多重送信数に関する情報、前記共有するデータ送信時における通信パラメータのうち少なくとも1つを含む、
上記(19-1)に記載の通信装置。
【0249】
(19-3)前記通信部は、複数のデータを多重ストリームとして構成した無線信号を送受信することが可能であり、
前記制御部は、前記複数のアクセスポイントから、前記同じデータのストリームと他の通信装置宛ての送信ストリームが多重化されたマルチユーザ多重ストリームの受信を制御する、
上記(19)に記載の通信装置。
【0250】
(20)アクセスポイントから所定のフレームを受信するステップと、
受信した前記所定のフレームに基づいて、複数のアクセスポイントから同時に同じデータが送信されたことを認識するステップと、
前記複数のアクセスポイントから同時に送信される前記同じデータを受信するステップと、
を有する、アクセスポイントに接続する通信端末における通信方法。
【符号の説明】
【0251】
2000…通信装置、2001…インターネット接続モジュール
2002…情報入力モジュール、2003…機器制御部
2004…情報出力モジュール、2005…無線通信モジュール
2101…インターフェース、2102…送信バッファ
2103…ネットワーク管理部、2104…送信フレーム構築部
2105…受信データ構築部、2106…受信バッファ
2107…協調通信管理部、2108…空間多重送信処理部
2109…空間多重受信処理部、2110…管理情報生成部
2111…管理情報処理部、2112…無線送信処理部
2113…送信電力制御部、1014…送受信アンテナ制御部
2115…検出閾値制御部、2116…無線受信処理部
図1
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