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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016469
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】騒音低減構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
E04B1/86 M
E04B1/86 A
E04B1/86 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120805
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 朗蘭
(72)【発明者】
【氏名】中川 武彦
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DF04
2E001FA04
2E001FA14
2E001FA20
2E001GA18
2E001GA81
2E001GA82
2E001HD01
(57)【要約】
【課題】建物内外双方の騒音を低減できる騒音低減構造を提供する。
【解決手段】騒音低減構造20は、建物10におけるベランダ12の天井面及び側壁面の少なくとも一方に設けられると共に、窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜する傾斜部34、46と、傾斜部34、46に設けられ騒音を吸音可能な吸音機構と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物におけるベランダの天井面及び側壁面の少なくとも一方に設けられると共に、窓面から前記ベランダの先端に向かって拡がるように傾斜する傾斜部と、
前記傾斜部に設けられ騒音を吸音可能な吸音機構と、
を備えた騒音低減構造。
【請求項2】
前記傾斜部は前記天井面及び側壁面の双方に設けられている、
請求項1に記載の騒音低減構造。
【請求項3】
前記吸音機構は、パンチングメタル及び多孔質材料の少なくとも一方によって形成されている、請求項1又は2に記載の騒音低減構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ベランダ天井面に、入射した騒音の音波を反射する反射面を備えた遮音性ベランダ構造が記載されている。この遮音性ベランダ構造では、騒音の直接波の伝搬方向に対する反射面の傾斜角度を90度以上に設定することで、建物の窓開口へ入射する騒音を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-211509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の遮音性ベランダ構造では、騒音を建物の外部へ反射する。このため、建物の内部の騒音を低減することができても、建物の外部の騒音を低減することは難しい。これにより、反射した騒音が異なる建物へ影響を与える可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、建物内外双方の騒音を低減できる騒音低減構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の騒音低減構造は、建物におけるベランダの天井面及び側壁面の少なくとも一方に設けられると共に、窓面から前記ベランダの先端に向かって拡がるように傾斜する傾斜部と、前記傾斜部に設けられ騒音を吸音可能な吸音機構と、を備える。
【0007】
請求項1の騒音低減構造では、ベランダの天井面及び側壁面の少なくとも一方に設けられた傾斜部に、騒音を吸音する吸音機構が設けられている。吸音機構がベランダの天井面の傾斜部にあれば、下方からの騒音を吸音できる。また、吸音機構がベランダの側壁面の傾斜部にあれば、側方からの騒音を吸音できる。
【0008】
これにより、ベランダの天井面に「反射面」を設けて騒音を反射する構造と比較して、建物内外双方の騒音を低減できる。
【0009】
また、ベランダの天井面や側壁面に直接吸音機構を設けるより、ベランダの天井面や側壁面の傾斜部に吸音機構を設けることで、吸音機構の吸音面積が大きくなり、高い吸音性能を発揮できる。
【0010】
さらに、傾斜部は窓面からベランダの先端に向かって拡がるように傾斜しているため、室内からの眺望を妨げにくく、採光も妨げ難い。
【0011】
請求項2の騒音低減構造は、請求項1に記載の騒音低減構造において、前記傾斜部は前記天井面及び側壁面の双方に設けられている。
【0012】
請求項2の騒音低減構造では、傾斜部が天井面及び側壁面の双方に設けられているため、下方及び側方の双方から入射する騒音を吸音できる。このため、傾斜部が天井面及び側壁面のどちらか一方のみに設けられている場合と比較して、吸音性能を高めることができる。
【0013】
請求項3の騒音低減構造は、請求項1又は2に記載の騒音低減構造において、前記吸音機構は、パンチングメタル及び多孔質材料の少なくとも一方によって形成されている。
【0014】
請求項3の騒音低減構造では、吸音機構が、パンチングメタル及び多孔質材料の少なくとも一方によって形成されている。このため、吸音機構が風雨に晒されても、雨水が溜まりにくく排水されやすい。これにより吸音機構が劣化し難い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、建物内外双方の騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は実施形態に係る騒音低減構造を示す側断面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図である。
図2】(A)は吸音機構としてパンチングメタルを用いた例を示す部分拡大断面図であり、(B)は吸音機構として多孔質材料を用いた例を示す部分拡大断面図であり、(C)は吸音機構としてパンチングメタル及び多孔質材料を用いた例を示す部分拡大断面図である。
図3】(A)は実施形態に係る騒音低減構造の変形例を示す側断面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図である。
図4】(A)は実施形態に係る騒音低減構造の別の変形例を示す側断面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図である。
図5】(A)は吸音機構の配置の変形例を示す部分拡大断面図であり、(B)は別の変形例を示す部分拡大断面図であり、(C)はさらに別の変形例を示す部分拡大断面図である。
図6】(A)は吸音機構として音響管を用いた変形例を示す側断面図であり、(B)は音響管の配置のバリエーションを示す側断面図である。
図7】(A)は音響管の構成を示す断面図であり、(B)は音響管の吸音効果の仕組みを示すグラフである。
図8】は実施形態に係る騒音低減構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る騒音低減構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0018】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0020】
<騒音低減構造>
図1(A)、(B)には、本発明の実施形態に係る騒音低減構造20が示されている。騒音低減構造20は、建物10に適用され、建物10の内部及び外部の双方の騒音を抑制することを目的とする騒音抑制手段である。騒音低減構造20は、後述する天井部材30、隔板部材40及び吸音機構としてのパンチングメタル50を含んで構成されている。
【0021】
(建物)
建物10の用途は特に限定されるものではないが、本実施形態における建物10は共同住宅とされている。そして、騒音低減構造20は、建物10のベランダ12に適用されている。
【0022】
建物10におけるベランダ12の前面には、図示しない幹線道路(高速自動車国道、一般国道、都道府県道等)が通っている。ベランダ12の長手方向(X方向)は、幹線道路における車線の方向に沿って配置されている。なお、建物10の前面には、必ずしも幹線道路でなくてもよく、例えば幹線道路以外の各種道路や、電車の軌道などが通っていてもよい。
【0023】
ベランダ12は、建物10の屋内空間Rとガラス窓14によって隔てられた屋外空間である。ガラス窓14は、屋内空間Rからベランダ12へ出入りするための掃き出し窓であり、ベランダ12の長手方向に沿って配置されている。ガラス窓14の外側には、スラブ16が形成されている。
【0024】
スラブ16は、建物10の外側へ跳ね出した片持ちスラブであり、建物10の階毎に設けられ、それぞれの階におけるベランダ12の床面を形成している。スラブ16の先端には、手すり16Aが設けられている。
【0025】
なお、本実施形態においては、建物10として、幹線道路に面した部分に2つの住戸配置された例を示しているが、幹線道路に面した部分に配置される住戸数は特に限定されるものではない。
【0026】
(天井部材)
図1(A)に示すように、ベランダ12において、上階の床面を形成するスラブ16の下方には、天井部材30が設けられている。この天井部材30は、水平部32と、傾斜部34と、を備えている。水平部32及び傾斜部34は、それぞれ例えばケイ酸カルシウム板等の不燃性の板材を用いて形成されている。
【0027】
水平部32は、スラブ16の下方において水平方向に沿って形成された部分であり、建物10の外壁面側に配置されている。一方、傾斜部34は、スラブ16の下方において、水平部32に対して上側へ傾斜して形成された部分であり、水平部10の先端からスラブ16の先端に亘って配置されている。なお、傾斜部34は、ガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜している。また、傾斜部34は、湾曲していてもよい。
【0028】
水平部32及び傾斜部34の下面は、ベランダ12の天井面を形成している。傾斜部34は、本発明における「ベランダの天井面に設けられる傾斜部」の一例である。
【0029】
上階の床面を形成するスラブ16と天井部材30との間に形成された空間V1は、設備及び配管を設置するスペースとして利用することができる。
【0030】
なお、水平部32及び傾斜部34は、それぞれアルミや鋼等の金属材料を用いて形成された下地材に固定したり、四方枠等に嵌め込んだりして設置することが好ましい。これにより、天井部材30が風に煽られた場合に変形や飛散しない程度の剛性を確保できる。
【0031】
(隔板部材)
図1(B)に示すように、ベランダ12は、隔板部材40によって区画されている。隔板部材40は、互いに隣り合う住戸の戸境部分に設置されており、ベランダ12を複数の専用使用部分に区画して、当該専用使用部分の側壁を形成している。「専用使用部分」とは、1つの住戸の住人のみが日常的に利用する領域のことである。
【0032】
隔板部材40は、2枚の鉛直部42及び44と、傾斜部46と、を備えている。鉛直部42、44、傾斜部46は、それぞれ例えばケイ酸カルシウム板やフレキシブル板等の不燃性の板材を用いて形成されている。
【0033】
鉛直部42は、上下のスラブ16の間に鉛直方向に沿って形成された部分であり、建物10の外壁面側に配置されている。また、鉛直部42は、ベランダ12の短手方向(Y方向)に沿って配置され、鉛直部44よりY方向の長さが長い。
【0034】
鉛直部44は、鉛直部42と同様に、上下のスラブ16の間に鉛直方向に沿って形成された部分であり、建物10の外壁面側に配置されている。また、鉛直部44は、鉛直部42とベランダ12の長手方向に離間して、かつ、鉛直部42と平行に配置されている。
【0035】
傾斜部46は、鉛直部42の先端と鉛直部44の先端とを連結する部分である。傾斜部46は、上下のスラブ16の間において、連結された鉛直部44に対してガラス窓14の外側へ傾斜して形成された部分(換言すると、鉛直部44に対してガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜した部分)である。また、傾斜部46は、湾曲していてもよい。
【0036】
鉛直部42、44及び傾斜部46は、ベランダ12における専用使用部分の側壁面を形成している。傾斜部46は、本発明における「ベランダの側壁面に設けられる傾斜部」の一例である。鉛直部42、44及び傾斜部46の間に形成された空間V2は、設備及び配管を設置するスペースとして利用することができる。
【0037】
なお、鉛直部42、44及び傾斜部46は、それぞれアルミや鋼等の金属材料を用いて形成された下地材に固定したり、四方枠等に嵌め込んだりして設置することが好ましい。これにより、隔板部材40が風に煽られた場合に変形や飛散しない程度の剛性を確保できる。
【0038】
ここで、図8に示すように、隔板部材40における傾斜部46の上端部は、天井部材30における傾斜部34の横方向端部と接合されている。
【0039】
すなわち、ベランダ12を前方(Y方向に沿う方向)からみて、傾斜部46と傾斜部34とは、ガラス窓14(図8において紙面「左側」のガラス窓14)の三方を囲む門型のフレームを形成している。
【0040】
また、傾斜部46と傾斜部34とは、ガラス窓14(図8において紙面「右側」のガラス窓14)の二方を囲むL字型のフレームを形成している。
【0041】
(吸音機構)
図1(A)及び図8に示すように、天井部材30における傾斜部34の表面には、パンチングメタル50が設けられている。パンチングメタル50は、本発明における吸音機構の一例である。
【0042】
また、パンチングメタル50は、図1(B)及び図8に示すように、隔板部材40における傾斜部46の表面にも設けられている。さらに、パンチングメタル50は、傾斜部34及び46の略全面を被覆している。
【0043】
パンチングメタル50は、図2(A)に示すように、面内方向に所定の間隔で複数の貫通孔52が形成された鋼製又はアルミ製の板材である。パンチングメタル50は、傾斜部34及び46の表面に、ボルトや接着剤等、適宜の固定手段を用いて固定されている。
【0044】
なお、本発明における吸音機構は、図2(B)に示す多孔質材料54としてもよい。多孔質材料54としては、例えば空隙を有する発泡ポリプロピレン等を用いることができる。また、多孔質材料54としては、ウレタン等を用いてもよい。
【0045】
また、本発明における吸音機構は、図2(C)に示すように、パンチングメタル50と多孔質材料54とを組み合わせて用いることもできる。これらの吸音機構は、適用する場所ごとに、仕様を変えてもよい。例えば傾斜部34にパンチングメタル50を用いて、傾斜部46に多孔質材料54を用いてもよい。
【0046】
なお、本発明の吸音機構による「吸音」性能とは、入射音の少なくとも一部が吸音(消音)される性能のことを示している。吸音されない入射音は、外部に反射されてもよい。
【0047】
この吸音性能を発揮するために、吸音機構は、入射音を吸音するための孔(パンチングメタル50の貫通孔52や多孔質材料54の気泡)を備えている。一方、吸音機構でない「反射面」は、一例として、金属材料等、重量のある材料によって形成された平滑で硬い面である。
【0048】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る騒音低減構造20では、図1(A)、(B)に示すように、ベランダ12の天井面及び側壁面の少なくとも一方に設けられた傾斜部に、騒音を吸音する吸音機構が設けられている。
【0049】
具体的には、ベランダ12の天井面を形成する天井部材30における傾斜部34に、吸音機構としてのパンチングメタル50が設けられ、かつ、ベランダ12の側壁面を形成する隔板部材40における傾斜部46に、パンチングメタル50が設けられている。
【0050】
吸音機構がベランダ12の天井面の傾斜部34にあることにより、図1(A)に矢印N1で示すような下方からの騒音を吸音できる。特に、建物10の上方階では、主な騒音源である前面道路を走行する車両などから放射された騒音が、下方から入射する。このような騒音に対して、天井面に吸音面または吸音機構を設けることで、騒音を効率的に低減できる。
【0051】
また、吸音機構がベランダ12の側壁面の傾斜部46にあることにより、図1(B)に矢印N2で示すような側方からの騒音を吸音できる。例えば建物10の前面道路を走行する車両の移動に伴って、側壁面へ入射する騒音の角度は変化するが、入射角度の変化に関わらず騒音を低減できる。
【0052】
これにより、例えばベランダ12の天井面や側壁面に「反射面」を設けて騒音を反射する構造と比較して、建物10内外双方の騒音を低減できる。これに対して、ベランダ12の天井面や側壁面に「反射面」を設ける場合、騒音の大部分が建物10の外部へ反射されるため、建物10外部の騒音を低減することは難しい。
【0053】
また、傾斜部34及び46に吸音機構を設けることにより、反射音が抑制されるため、ガラス窓14に対する反射音の擦過入射が抑制される。これにより、ガラスと擦過入射音とのコインシデンス効果による遮音性の低減を抑制できる。
【0054】
また、ベランダ12の天井面や側壁面に直接吸音機構を設けるより、ベランダの天井面や側壁面の傾斜部34及び46に吸音機構としてのパンチングメタル50を設けることで、パンチングメタル50の吸音面積が大きくなり、高い吸音性能を発揮できる。
【0055】
すなわち、傾斜部34の面積は、図1(A)に示す領域Mの面積より大きい。領域Mは、傾斜部34のスラブ16に対する水平投影部であり、領域Mの面積は、傾斜部34の水平投影面積である。傾斜部34と領域Mとは、平面計画上等しい面積を必要とするが、実面積は、傾斜部34のほうが大きい。このため、傾斜部34のほうがパンチングメタル50を設置できる面積が大きく、吸音性能を発揮し易い。傾斜部46についても同様である。すなわち、吸音機構を傾斜部34、46に設けることにより、より広い範囲の入射角度の騒音を低減できる。
【0056】
また、傾斜部34はガラス窓14の窓面からベランダ12の先端(換言するとスラブ16の先端)に向かって拡がるように傾斜しているため、図1(A)に矢印N3で示すような前方からの騒音も吸音し易い。同様に、傾斜部46もガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜しているため、図1(B)に矢印N4で示すような前方からの騒音も吸音できる。
【0057】
さらに、これらの傾斜部34及び46は、ガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜していることにより、屋内空間Rからの眺望を妨げにくく、採光も妨げ難い。さらに、ベランダ12を正面視した際に、傾斜部34及び46はガラス窓14へ向かって後退するように傾斜しているため、建物10の圧迫感を抑制できる。
【0058】
また、本発明の実施形態に係る騒音低減構造20では、吸音機構が、パンチングメタル50及び多孔質材料54の少なくとも一方によって形成されている。具体的には、吸音機構が、図2(A)に示すパンチングメタル50、図2(B)に示す多孔質材料54、及び図2(C)に示すパンチングメタル50と多孔質材料54との複合材によって形成されている。
【0059】
このため、吸音機構が風雨に晒されても、雨水が溜まりにくく排水されやすい。これにより吸音機構が劣化し難い。
【0060】
<変形例>
(吸音機構の配置に関する変形例)
本実施形態に係る騒音低減構造20では、図1(A)、(B)に示すように、吸音機構としてのパンチングメタル50が、ベランダ12の天井面及び側壁面のそれぞれに形成された傾斜部34及び46の双方に設けられているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、傾斜部34及び46の何れか一方には吸音機構を設けない構成としてもよい。
【0061】
また、例えば図3(A)、(B)に示すように、隔板部材を鉛直部42のみで形成し、吸音機構としてのパンチングメタル50を、ベランダ12の天井面に形成された傾斜部34に設けてもよい。鉛直部42には、吸音機構を設けてもよいし、設けなくてもよい。さらに、ベランダ12には隔板部材を設けなくてもよい。隔板部材を設けない構成は、例えば病院や公共建築等の建物に適用できる。
【0062】
また、例えば図4(A)、(B)に示すように、天井部材30(図1参照)を省略し、吸音機構としてのパンチングメタル50を、ベランダ12の側壁面に形成された傾斜部46に設けてもよい。スラブ16の下面には、吸音機構を設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0063】
すなわち、本発明においては、ベランダ12の天井面及び側壁面の少なくとも一方に傾斜部(すなわち傾斜部34及び46の少なくとも一方)が設けられており、かつ、吸音機構が、これらの傾斜部34及び46の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0064】
このとき、吸音機構は、図5(A)に示すパンチングメタル50のように、傾斜部46の一部に設けられていればよい。また、吸音機構は、図5(B)に示すパンチングメタル50のように、鉛直部44も含んだ位置に配置してもよい。鉛直部44に固定する吸音機構は、図5(C)に示すように、鉛直部44の一部を覆うものとしてもよい。
【0065】
なお、これらの吸音機構に配置に関する各種の変形例は、後述する音響管60の配置において適用することもできる。
【0066】
(吸音機構の仕様に関する変形例)
本実施形態に係る騒音低減構造20では、図2(A)~(C)を用いて説明したように、吸音機構を、パンチングメタル50及び多孔質材料54の少なくとも一方によって形成したが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0067】
例えば吸音機構は、図6(A)、(B)に示すように、音響管60を用いて形成することができる。音響管60は、図7(A)に示す有底の筒状管体である。矢印N5で示すように音響管60に入射した騒音は、音響管60の底62で反射して、矢印N6で示すように音響管60から放出される。
【0068】
図7(B)には、音響管60の開口端において測定される波長λの音波の入射波及び反射波の波形が、それぞれ曲線K1、K2で示されている。波長λの音波の入射波及び反射波は、それぞれの位相が音響管60の開口端において半波長(0.5λ)だけずれているため、互いが干渉し、吸音効果を得ることができる。
【0069】
波長λの音波の入射波及び反射波は、音響管60の長さLが(0.25λ)であることにより、音響管60の開口端において位相が半波長(0.5λ)だけずれる。すなわち、音響管60には様々な波長の騒音が入射するが、当該騒音のうち、波長λの0.25倍に相当する長さが音響管60の長さLと一致する騒音が、吸音される。
【0070】
ここで、図6(A)に示すように、本実施形態の吸音機構においては、長さが異なる複数の音響管60を組み合わせて用いられている。具体的には、それぞれの音響管60は、開口端を下向きにして、筒軸方向が上下方向に沿うように配置されている。
【0071】
また、ベランダ12においてガラス窓14に近い位置に配置された音響管60の長さに対して、ベランダ12の先端側に配置された音響管60の長さが短い。
【0072】
これにより、ガラス窓14に近い位置に配置された音響管60は、相対的に波長が長い騒音(低い音)を吸収し、ベランダ12の先端側に配置された音響管60は、波長が短い騒音(高い音)を吸収できる。音響管60の長さのバリエーションは、吸音したい騒音の波長に応じて、適宜設定することができる。
【0073】
また、音響管60は、図6(B)に示すように配置することもできる。この図に示した例において、それぞれの音響管60は、開口端をベランダ12の先端に向けて、筒軸方向が横方向(ガラス窓14からベランダ12の先端に向かう方向)に沿うように配置されている。
【0074】
また、ベランダ12において上方のスラブ16に近い位置に配置された音響管60の長さに対して、下方に配置された音響管60の長さが短い。
【0075】
これにより、スラブ16に近い位置に配置された音響管60は、相対的に波長が長い騒音(低い音)を吸収し、下方に配置された音響管60は、波長が短い騒音(高い音)を吸収できる。
【0076】
このように、本発明における「ベランダの天井面に設けられると共に、窓面からベランダの先端に向かって拡がるように傾斜する傾斜部」とは、長さが異なる複数の音響管60の開口端によって形成された傾斜部も含む。
【0077】
なお、図示は省略するが、音響管60は、ベランダ12の天井面に加えてまたは代えて、ベランダ12の側壁面に設けてもよい。この場合においても、音響管60の開口端が、ガラス窓14からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜する傾斜部を形成するように配置する。
【0078】
このように、本発明における吸音機構は、騒音を吸音するものであれば、その構成は特に限定されるものではなく、例えばパンチングメタル50以外の各種の穴あき板を共鳴器として使用することもできる。また、吸音機構としては、入射する騒音の周波数に応じて振動することにより吸音する吸音板等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 建物
12 ベランダ
14 ガラス窓(窓)
30 天井部材(天井)
34 傾斜部
40 隔板部材(側壁)
46 傾斜部
50 パンチングメタル(吸音機構)
54 多孔質材料(吸音機構)
60 音響管(吸音機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8