(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164694
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】液状化対策地盤の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
E02D3/10 103
E02D3/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155635
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2019098192の分割
【原出願日】2019-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501232528
【氏名又は名称】株式会社複合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一
(72)【発明者】
【氏名】田中 卓也
(72)【発明者】
【氏名】増村 佳大
(72)【発明者】
【氏名】岡本 正広
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友輔
(57)【要約】
【課題】地盤の剛性を低下させることなく液状化対策が行えるうえに、施工性に優れた液状化対策地盤の施工方法を提供する。
【解決手段】液状化対策のために横方向に間隔を置いて地盤Gに複数のドレーン材1が埋設される液状化対策地盤の施工方法である。ドレーン材は、中心に配置される有孔管2と、有孔管の周囲に巻き付けられる排水シート3と、巻き付けられる排水シートの外周に配置される円筒状の外周フィルタとを備えている。
そして、ドレーン材をマンドレル61の下端開口から引き込む工程では、マンドレルの内空に通されたワイヤロープ63の下端を有孔管の端部に連結し、ワイヤロープを巻き上げることで地表と下端開口との隙間から撓んだ状態のドレーン材を引き込む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に配置される有孔管と、前記有孔管の周囲に巻き付けられるエンボス構造の高剛性ジオシンセティックス排水材によって形成された排水シートと、前記巻き付けられる排水シートの外周に配置される円筒状の外周フィルタとを備えた液状化対策用ドレーン材を使用した液状化対策地盤の施工方法であって、
打設機械に取り付けられたマンドレルの内空に、先端に円錐状のアンカー部が装着された前記液状化対策用ドレーン材を前記マンドレルの下端開口から引き込む工程と、
前記マンドレルとともに前記液状化対策用ドレーン材を地盤に押し込む工程と、
所定の深度まで前記アンカー部が到達したのちに、前記マンドレルを引き抜く工程とを備え、
前記液状化対策用ドレーン材を前記マンドレルの下端開口から引き込む工程では、前記マンドレルの内空に通されたワイヤロープの下端を前記液状化対策用ドレーン材の前記有孔管の端部に連結し、前記ワイヤロープを巻き上げることで地表と前記下端開口との隙間から撓んだ状態の前記液状化対策用ドレーン材を引き込むことを特徴とする液状化対策地盤の施工方法。
【請求項2】
前記打設機械は、振動機及び高圧水のジェット部の少なくとも一方を有しており、
前記液状化対策用ドレーン材を地盤に押し込む工程は、前記振動機による前記マンドレルへの振動の付与及び前記ジェット部からの高圧水の噴射の少なくとも一方を行いながら行われることを特徴とする請求項1に記載の液状化対策地盤の施工方法。
【請求項3】
前記排水シートは、形状保持バンドによって巻き付けられた形状が保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状化対策地盤の施工方法。
【請求項4】
前記高剛性ジオシンセティックス排水材と積層構造に形成される透水性の形状保持シートを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液状化対策地盤の施工方法。
【請求項5】
前記排水シートは、2周から4周巻き付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液状化対策地盤の施工方法。
【請求項6】
長尺状の前記有孔管に対して、それよりも短い前記排水シートが複数配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液状化対策地盤の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化対策のために地盤に埋設される液状化対策用ドレーン材を使用した液状化対策地盤の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模な地震時に地盤が液状化するのを防止するために、排水性能の高いドレーン材を液状化の可能性のある地盤内に所定の間隔で打設しておく工法が知られている(特許文献1-3など参照)。
【0003】
特許文献1-3に開示された液状化対策工法では、合成樹脂製のドレーン材を鉛直方向に向けて地盤に埋設させ、地震時に発生する過剰間隙水圧をドレーン材によって早期に消散させることで液状化を防止する。
【0004】
例えば特許文献1では、鉛直方向に向けた円筒状のドレーン材を、水平方向に間隔を置いて多数、配置することで、面的に広がる施工領域に対して液状化対策を施す。そして、円筒状ドレーン材としては、合成樹脂製のフィルタ材を円筒状に形成したもの、多数の透水孔が周壁に穿孔された塩化ビニル管などの中空管が使用される。
【0005】
また、特許文献2に開示されたドレーン材は、半硬質塩化ビニル樹脂などによって中空の矩形断面状に成形されており、ロール状に巻くことができないので、トラックによって輸送できる長さの定尺物を、打設現場で接続具によって繋ぎ合わせながら所定の深度まで埋設させる。
【0006】
一方、特許文献3の液状化対策工法では、帯状の合成樹脂板をネットなどの被覆材で覆った透水翼板を、例えば4枚つなげて平面視十文字状となるようにして、液状化対策が必要となる地盤に押し込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-169045号公報
【特許文献2】特開2012-241385号公報
【特許文献3】特許第2743031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、中空のドレーン材を地盤に多数、打設すると、打設範囲全体で地盤の剛性が低下するおそれがあり、大規模地震が発生した際に過剰間隙水圧を消散させることができても、剛性低下による地盤変形が起きるという課題がある。
【0009】
また、特許文献2に開示されたような矩形断面のドレーン材は、硬くて巻き取れないため、運搬コストが増加したり、接続作業に手間がかかったり、矩形断面の抵抗が大きいため地盤に埋設しにくかったりするなど、施工上の課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、地盤の剛性を低下させることなく液状化対策が行えるうえに、施工性に優れた液状化対策地盤の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の液状化対策地盤の施工方法では、液状化対策のために地盤に埋設される液状化対策用ドレーン材であって、中心に配置される有孔管と、前記有孔管の周囲に巻き付けられるエンボス構造の高剛性ジオシンセティックス排水材によって形成された排水シートと、前記巻き付けられる排水シートの外周に配置される円筒状の外周フィルタとを備えた液状化対策用ドレーン材を使用する。
【0012】
そして、打設機械に取り付けられたマンドレルの内空に、先端に円錐状のアンカー部が装着された前記液状化対策用ドレーン材を前記マンドレルの下端開口から引き込む工程と、前記マンドレルとともに前記液状化対策用ドレーン材を地盤に押し込む工程と、所定の深度まで前記アンカー部が到達したのちに、前記マンドレルを引き抜く工程とを備え、前記液状化対策用ドレーン材を前記マンドレルの下端開口から引き込む工程では、前記マンドレルの内空に通されたワイヤロープの下端を前記液状化対策用ドレーン材の前記有孔管の端部に連結し、前記ワイヤロープを巻き上げることで地表と前記下端開口との隙間から撓んだ状態の前記液状化対策用ドレーン材を引き込むことを特徴とする。
【0013】
ここで、前記打設機械は、振動機及び高圧水のジェット部の少なくとも一方を有しており、前記液状化対策用ドレーン材を地盤に押し込む工程は、前記振動機による前記マンドレルへの振動の付与及び前記ジェット部からの高圧水の噴射の少なくとも一方を行いながら行われる構成とすることができる。
【0014】
また、前記排水シートは、形状保持バンドによって巻き付けられた形状が保持されている構成とすることができる。さらに、前記高剛性ジオシンセティックス排水材と積層構造に形成される透水性の形状保持シートを有する構成とすることができる。
【0015】
また、前記排水シートは、2周から4周巻き付けられる構成とすることができる。さらに、長尺状の前記有孔管に対して、それよりも短い前記排水シートが複数配置される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
このように構成された本発明で使用する液状化対策用ドレーン材は、中心に配置される有孔管と、その周囲に巻き付けられる高剛性排水材によって形成された排水シートと、その外周に配置される円筒状の外周フィルタとを備えている。
【0017】
このため、有孔管とその周囲に巻き付けられた排水シートとによって、複数の排水経路が形成されて、迅速に過剰間隙水圧を消散させて液状化を防止することができる。また、有孔管と周回される排水シートとによって剛性の高いドレーン材に形成されるため、多数を埋設しても地盤の剛性を低下させることがない。
【0018】
さらに、円柱状に形成されるドレーン材であれば、打設が容易で施工性に優れている。また、巻き付けられる排水シートの外周に円筒状の外周フィルタが配置されているので、ドレーン材の排水経路の目詰まりを起きにくくすることができる。
【0019】
さらに、排水シートを短尺にして運搬しやすくしたりドレーン材として撓ませやすくしたときにも、円筒状の外周フィルタ内に収容するのであれば、打設現場における作業中も、ドレーン材としての一体性を保持させることができる。
【0020】
このような液状化対策用ドレーン材は、横方向に間隔を置いて地盤に埋設することで、地盤の剛性を低下させることがない液状化対策地盤構造にすることができる。また、横方向に間隔を置いて配置された液状化対策用ドレーン材の有孔管の上端部間を、横方向に向けたドレーン材の有孔管によって連結していくことで、集水した間隙水を速やかに排水処理させることができる。
【0021】
そして、液状化対策地盤の施工方法の発明は、振動機によってマンドレルに振動を付与したり、ジェット部から高圧水を噴射させたりしながら液状化対策用ドレーン材を地盤に押し込む場合は、打設時に地盤の密度を増大させることができ、過剰間隙水圧消散後の残留沈下量を低減することができる。さらに、地表とマンドレルの下端開口との隙間から撓んだ状態の液状化対策用ドレーン材を引き込むことで、液状化対策用ドレーン材が長尺になったとしても、容易にマンドレルの内空に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態のドレーン材が埋設された液状化対策地盤構造の構成を説明する斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態のドレーン材の構成を説明する斜視図である。
【
図3】排水シートの製作方法を説明する工程図である。
【
図4】(a)は排水シートの荷姿を示した説明図、(b)は外周フィルタの外観を示した説明図である。
【
図5】ドレーン材の製作方法を説明する工程図である。
【
図6】打設機械にドレーン材をセットする作業を説明する工程図である。
【
図7】地盤にドレーン材を打設する作業を説明する工程図である。
【
図8】振動打設と高圧水噴射による密度増大効果を概念的に説明する図である。
【
図9】鉛直に埋設されたドレーン材に横引ドレーン材を連結した構成を説明する断面図である。
【
図10】実施例1の排水シートの構成を説明する斜視図である。
【
図11】実施例1のドレーン材の構成を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の液状化対策用ドレーン材であるドレーン材1が埋設された液状化対策地盤構造の構成を説明する図、
図2は、ドレーン材1の構成を詳細に説明するための斜視図である。
【0024】
本実施の形態のドレーン材1は、液状化対策のために地盤Gに埋設される。すなわち、ドレーン材1は、鉛直方向に向けて地盤Gに押し込まれるとともに(
図7参照)、水平方向に間隔を置いて施工領域に多数、配置される。
【0025】
ここで、ドレーン材1の長さは、液状化対策地盤の液状化層の深度に合わせて設定される。また、ドレーン材1の横方向の打設間隔は、想定する地震によって発生する過剰間隙水圧を効率的に消散可能な値に、設計によって設定される。
【0026】
本実施の形態のドレーン材1は、
図2に示すように、中心に配置される有孔管2と、有孔管2の周囲に巻き付けられる排水シート3と、巻き付けられる排水シート3の外周に配置される円筒状の外周フィルタ4とによって、主に構成される。
【0027】
有孔管2は、可撓性の円筒状の管材で、合成樹脂材(ジオシンセティックス)などによって形成される。例えば、CD管のように長尺で撓む管材が使用できる。そして、円筒状の管材の周壁に多数の穴が穿孔されることによって、有孔管2となる。例えば、直径3cm程度の有孔管2が使用できる。
【0028】
一方、排水シート3は、
図3に示すように、板状の高剛性排水材31と、透水性の形状保持シート32との積層構造に形成される。高剛性排水材31は、
図3の左端に拡大して示したように、高剛性を有するジオシンセティックスを凹凸面状部311に成形したシート状部材(高剛性ジオシンセティックス排水材)である。
【0029】
硬質の合成樹脂材などによって凹凸面状部311のようなエンボス構造に形成された高剛性排水材31には、様々な面内方向に流路が形成されている。また、高剛性排水材31には、面材の表裏を貫通する複数の通水穴312,・・・が穿孔されている。この通水穴312を介して地下水などを透水させることができるようになる。
【0030】
そして、長方形に形成された高剛性排水材31には、平面視で同じ大きさとなる形状保持シート32が貼り付けられる。このため、高剛性排水材31の流路は、形状保持シート32に沿った流路となる。
【0031】
形状保持シート32は、高剛性排水材31の形状を保持するために貼り付けられる形状保持部である。すなわち、
図3の右端に示すように、排水シート3を鉛直に立てたときに、高剛性排水材31が撓まないようにするために、形状保持シート32を貼り付けて積層構造にする。また、形状保持シート32を積層させることによって、巻き付けられた排水シート3の形状を保持しやすくなる。このような形状保持シート32には、例えば不織布などのフィルタ機能も期待できる材料が使用できる。
【0032】
図3では、鉛直方向の長さが1mとなる長方形の排水シート3を図示しているが、これに限定されるものではなく、任意の長さのものが使用できる。後述するように短尺の排水シート3を使用する場合は、例えば1.0mから1.5m程度の長さのものが使用できる。
【0033】
このような帯板状の排水シート3は、製作時には円柱状の芯材33の周囲に巻き付けられる。排水シート3を巻き付ける回数は、2周から4周程度で任意に設定することができる。
図4(a)は、中心の芯材33を抜き取った3周巻きの排水シート3の荷姿を示している。
【0034】
一方、
図4(b)は、円筒状に成形された排水シート3を中空部41に収容させる円筒状の外周フィルタ4の外観を示している。外周フィルタ4は、透水性のある不織布などによって形成することができる。この外周フィルタ4は、底のある袋状にすることもできる。
【0035】
外周フィルタ4は、ドレーン材1として地盤Gに埋設する長さと同程度の連続した長さに形成される。
図4(b)では、長さ10mの外周フィルタ4が図示されているが、これに限定されるものではなく、設計された必要な長さに形成される。また、外周フィルタ4の直径も、0.1mに限定されるものではなく、0.09mから0.11m程度など、任意に設定することができる。
【0036】
図2に示すように、外周フィルタ4は、ドレーン材1の外周面を形成することになる。そして、外周フィルタ4に収容された2周から4周程度に巻き取られた排水シート3と、有孔管2とによって、鉛直方向の2系統の排水経路が形成される。
【0037】
要するに、地震によってドレーン材1の周囲に過剰間隙水圧が発生すると、外周フィルタ4から排水シート3に向けて間隙水が浸透し、周回する排水シート3の間では通水穴312を通って水が移動する。そして、形状保持シート32に沿って形成された排水シート3の流路によって、鉛直方向の排水処理がされる。
【0038】
さらに、排水シート3に流れ込んだ間隙水は、有孔管2の下端開口から流れ込んで有孔管2を上昇して鉛直方向の排水処理がされる。また、排水シート3に隣接する有孔管2の周壁の穴から管内に流れ込み、有孔管2によって排水処理されることもある。このように、2系統の広い断面の排水経路によって排水処理を行うことで、過剰間隙水圧を迅速に消散させることができる。
【0039】
そして、2系統の排水経路が確保されたことによって、従来の円筒状のドレーン材だけを配置する場合と比較して、有孔管2の直径を小さくすることができる。例えば従来の円筒状のドレーン材の直径が8cm程度は必要であるとすると、有孔管2の直径を3cm程度に小さくすることができる。
【0040】
さらに、周回される排水シート3は高剛性排水材31によって形成されているので、直径の比較的小さい有孔管2と剛性の高い排水シート3とによって構成されたドレーン材1は、地盤Gの土と置換して配置したとしても、剛性を低下させることがない。
【0041】
次に、本実施の形態のドレーン材1の製作方法について、
図4,5を参照しながら説明する。まず、短尺の巻き取られた形状の排水シート3を複数、製作する。この排水シート3は、
図3の中央に示すような展開された状態の排水シート3を、有孔管2と同じ外径の芯材33に所定の回数(例えば3周)、巻き付けることによって製作できる。
【0042】
巻き取られた排水シート3は、勝手に広がらないように形状保持シート32の縁部が接着剤などで接合され、芯材33が抜き取られる。ロール状に巻き取られた排水シート3は、高さ1.0mから1.5m程度の短尺の円柱状の荷姿になるので、トラックなどで効率的に打設現場まで運ぶことができる。
【0043】
一方、円筒状の外周フィルタ4は、長尺にはなるが、不織布などによって形成されていて巻き取ったり折り畳んだりできるので、トラックなどで効率的に打設現場まで運ぶことができる。また、外周フィルタ4と同程度の長さの有孔管2も、可撓性であるため、巻き取られた状態で打設現場まで搬送される。
【0044】
続いて打設現場では、
図5(a)に示すように、アンカー部となる鋼板などによって形成された円錐状のアンカープレート5に、有孔管2の先端を取り付ける。そして、有孔管2の周囲を覆うように外周フィルタ4を被せて、アンカープレート5に外周フィルタ4の先端を接着剤などで接合させる。
【0045】
有孔管2が中心に配置された外周フィルタ4の中空部41には、
図5(b)に示すように、打設現場に搬送されたロール状の短尺の排水シート3を入れ込む。排水シート3は、ロールの中央の孔に有孔管2を通して、アンカープレート5の位置まで移動させる。
【0046】
同様にして、順次、短尺の排水シート3を外周フィルタ4の中空部41に挿入していき、
図5(c)に示すように、アンカープレート5側から順番に排水シート3を並べていく。この作業は、
図5(d)に示すように、外周フィルタ4の中空部41が排水シート3,・・・で満たされるまで続けられる。
【0047】
次に、
図6-
図8を参照しながら、製作されたドレーン材1を地盤Gに打設する本実施の形態の液状化対策地盤の施工方法について説明する。ドレーン材1の打設には、
図6又は
図8に示すような打設機械6,6Aを使用するが、公知の機械であるため、簡略な説明とする。
【0048】
図6(a)に示した打設機械6は、クローラで移動可能で、リーダ62と、リーダ62に沿って昇降可能なスライダ621とを備えている。リーダ62は、鉛直に向けて起立させることができ、スライダ621によってマンドレル61が支持される。
【0049】
マンドレル61は、ドレーン材1の外径よりもわずかに大きい内径を有する円筒状のロッド管で、内空にはリーダ62の上端から吊り下げられたワイヤロープ63が通される。そして、ワイヤロープ63の下端を、打設現場に運び込まれたドレーン材1の有孔管2の端部に連結する。
【0050】
マンドレル61の内空にドレーン材1を挿入する際には、まず地表との間に1m程度の隙間ができるようにマンドレル61を引き上げる。続いて、ワイヤロープ63を巻き上げて、
図6(b)に示すように、マンドレル61の下端開口にドレーン材1の上部を引き込む。
【0051】
ここで、ドレーン材1は、可撓性のある有孔管2及び外周フィルタ4と、短尺の複数の排水シート3,・・・とによって構成されているため、マンドレル61に挿入する際に、撓んだ状態にして引き込むことができる。すなわち、排水シート3のそれぞれが硬くて撓まなくても、排水シート3,3間の隙間で屈曲させることができる。
【0052】
ドレーン材1の先端に装着されたアンカープレート5は、円錐の最大径となる部分がマンドレル61の内径よりも大きく形成されているため、アンカープレート5がマンドレル61の下端に引っ掛かることによって、ドレーン材1のマンドレル61への挿入は停止する。
【0053】
続いて、
図7の左端に示したように、アンカープレート5を地盤Gに突き立て、マンドレル61をスライダ621によって押し下げることで、マンドレル61とともにドレーン材1を地盤Gに押し込む。すなわち、マンドレル61が押し下げれられると、その下端がアンカープレート5を押して、マンドレル61とともにドレーン材1が押し下げられる。
【0054】
ここで、
図8に示すような振動機64とジェット部65とを備えた打設機械6Aを使用する場合は、マンドレル61を地盤Gに押し込む際に、振動機64によって振動64aを地盤Gに与えることができる。
【0055】
地盤Gにバイブロ(振動64a)が付与されると、飽和した緩い砂層であれば土粒子が水中落下のように沈降し、堆積構造が再構築されて密度が増大して、液状化に抵抗する地盤Gの非排水強度を増大させることができる。
【0056】
さらに、マンドレル61の先端に設けられたジェット部65から高圧水65aを噴射させることを併用することもできる。また、ジェット部65による高圧水65aの噴射のみを実施することもできる。
【0057】
このようにバイブロやウォータジェット(高圧水噴射)などによって振動締固めが行われると、
図8の下部に示すように、地盤Gに体積変化(体積減少分G1)が起きて、地盤Gの密度が増大するので、残留沈下を抑制できる地盤構造にすることができる。
【0058】
マンドレル61の地盤Gへの押し込みは、アンカープレート5が設計などで決められた所定の深度に到達するまで続けられる。このようにしてドレーン材1が地盤Gに押し込まれたのちに、スライダ621を上昇させることによってマンドレル61のみを地盤Gから引き抜く。
【0059】
マンドレル61が引き抜かれると、
図7の右端に示すように、先端にアンカープレート5が取り付けられたドレーン材1が、地盤Gに鉛直に埋設された状態になる。
図1は、打設機械6(6A)を横方向に移動させながらドレーン材1,・・・の打設を繰り返した施工後の状態を示している。
【0060】
液状化対策工事が行われた地盤Gから突出したドレーン材1の上端部間は、横引きのパイプ(図示省略)などによって連結される。すなわち、有孔管2を上昇した水は、横引きのパイプを通して速やかに排水処理される。
【0061】
一方、
図9に示すように、横引きのパイプとして、ドレーン材1と同じ構造の液状化対策用ドレーン材である横引ドレーン材1Aを使用することができる。横引ドレーン材1Aは、鉛直に打設されたドレーン材1の上端部間を通水可能に連結するために、例えば水平方向に向けて配置される。
【0062】
横引ドレーン材1Aは、鉛直のドレーン材1よりも太径のものが使用される。例えばドレーン材1の直径が100mm程度とすると、150mm程度の直径の横引ドレーン材1Aが使用される。
【0063】
そして、ドレーン材1の上端部に突出した有孔管2と、横引ドレーン材1Aの側方から突出した有孔管2Aとは、T型やL型や十字型などの継手材21によって連結される。このようにして配置された横引ドレーン材1Aの周囲には、単粒砕石などが充填されて、厚さ300mm程度の砕石層R1が形成される。また、砕石層R1の上には、用途に応じて、路盤層R2やアスファルト層R3などが設けられる。
【0064】
次に、本実施の形態のドレーン材1を使用した液状化対策地盤の施工方法の作用について説明する。
このように構成されたドレーン材1は、中心に配置される有孔管2と、その周囲に巻き付けられる高剛性排水材31によって形成された排水シート3と、その外周に配置される円筒状の外周フィルタ4とを備えている。
【0065】
このため、有孔管2とその周囲に巻き付けられた排水シート3とによって、複数の排水経路が形成されて、大規模地震時などに発生する過剰間隙水圧を、大きな断面の流路で迅速に消散させて液状化を防止することができる。
【0066】
また、有孔管2と周回される排水シート3とによって剛性の高いドレーン材1に形成されるため、多数を埋設しても地盤Gの剛性を低下させることがない。すなわち、過剰間隙水圧を消散させるためだけの中空のドレーン材では、土が除去された多くの孔が地盤Gに形成されることになるため、剛性が低下して地盤Gが変形しやすくなるおそれがある。これに対して、剛性の高いドレーン材1を土の代わりに埋設するのであれば、地盤Gの剛性が維持又は高められて、大規模地震時などの地盤変形の発生を防ぐことができる。
【0067】
さらに、円柱状に形成されるドレーン材1であれば、先端に円錐状のアンカープレート5を取り付けるなどして、少ない抵抗で効率的に地盤Gに押し込むことができる。このため、施工性に優れている。
【0068】
また、ロール状の排水シート3の外周に円筒状の外周フィルタ4が配置されることで、排水シート3の流路に土粒子が入り込むことを防ぐことができ、ドレーン材1の鉛直方向の排水経路の目詰まりを起きにくくすることができる。
【0069】
また、短尺にして運搬しやすくした排水シート3を打設現場でドレーン材1となるように製作する際に、筒状の外周フィルタ4の中空部41にロール状の排水シート3を収容していくのであれば、簡単に組付け作業を行うことができる。
【0070】
さらに、打設現場において、搬送したり、マンドレル61の内空に挿入する際に撓ませたりする作業中も、円筒状の外周フィルタ4の中空部41に排水シート3,・・・が収容されているのであれば、それぞれの動きが制限されてドレーン材1としての一体性を保持させることができる。
【0071】
また、液状化対策地盤構造では、複数のドレーン材1,・・・を横方向に間隔を置いて地盤Gに埋設することで、地盤Gの剛性を低下させることなく排水性能に優れた地盤構造にすることができる。
【0072】
また、横方向に間隔を置いて鉛直に配置されたドレーン材1,・・・の有孔管2,・・・の上端部間を、水平方向に向けた横引ドレーン材1Aの有孔管2Aによって連結していくことで、ドレーン材1で集水した間隙水を速やかに排水処理させることができる。
【0073】
そして、本実施の形態の液状化対策地盤の施工方法では、地表とマンドレル61の下端開口との隙間から撓んだ状態のドレーン材1を引き込むことで、ドレーン材1が長尺になったとしても、容易にマンドレル61の内空に挿入することができる。
【0074】
また、振動機64によってマンドレル61に振動(バイブロ)を付与しながらドレーン材1を地盤Gに押し込むことで、打設時に地盤Gの密度を増大させることができる。この結果、過剰間隙水圧消散後に発生する残留沈下量を低減することができる。
さらに、バイブロによる振動打設だけでなく、ウォータジェットによる高圧水の噴射を併用することにより、密度増大効果をより高めることができる。この密度増大効果は、バイブロのみ、ウォータジェットのみ又は併用時のいずれの打設方法でも得ることができる。そして、この結果、地震時に発揮される非排水せん断強度も増大させることができる。
【実施例0075】
以下、前記実施の形態で説明したドレーン材1とは別の形態の液状化対策用ドレーン材であるドレーン材1Bを使用する実施例1について、
図10及び
図11を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を用いて説明する。
【0076】
前記実施の形態では、短尺の排水シート3を使用する場合について説明したが、本実施例1では、それよりも長尺の排水シート3Bを使用する場合について説明する。この排水シート3Bは、板状の高剛性排水材31のみによって形成される。すなわち、前記実施の形態で説明した形状保持シート32の貼り付けは行われない。
【0077】
そして、
図10に示すように、この排水シート3Bは、1.5m以上、例えば5mから7m程度の長さの中尺状に形成される。周回させる巻き数や縦横比にもよるが、この程度の長さであれば、マンドレル61に挿入する際に撓ませることができる。
【0078】
また、巻き付けられた排水シート3Bの形状を保持させる形状保持部としては、形状保持バンド34が使用される。形状保持バンド34は、プラスチックやジオシンセティックスなどの合成樹脂材、不織布などの材料によって、帯状、ひも状又は環状に形成される。
【0079】
形状保持バンド34は、円柱状に巻き取られた排水シート3Bの軸方向に間隔を置いて取り付けられる。例えば50cmから100cm程度の間隔で配置される。このようにして製作される排水シート3Bは、外周面に凹凸面状部311と形状保持バンド34とが露出した状態になる。
【0080】
そこで
図11に示すように、排水シート3Bを円筒状の外周フィルタ4Bに収容する。この外周フィルタ4Bは、透水性のある不織布などによって排水シート3Bと同程度の長さに形成される。
【0081】
実施例1のドレーン材1Bは、1本でも複数本を繋ぐことによっても形成できる。説明上、上側に配置されるドレーン材を上側ドレーン材1Baとし、下側に配置されるドレーン材を下側ドレーン材1Bbとする。
【0082】
外周フィルタ4Bに収容された排水シート3Bの中央の孔には、同程度の長さの有孔管2Bを挿し込む。要するに、上側ドレーン材1Ba及び下側ドレーン材1Bbは、ドレーン材1Bの単位長さの構成をすべて備えている。
【0083】
上側ドレーン材1Baと下側ドレーン材1Bbとを接続するに際しては、下側ドレーン材1Bbの有孔管2Bの上端部22に上側ドレーン材1Baの有孔管2Bの下端部23を挿し込むとともに、下側ドレーン材1Bbの外周フィルタ4Bの上端部42の開口に、上側ドレーン材1Baの外周フィルタ4Bの下端部43を挿し込む。
【0084】
下側ドレーン材1Bbの外周フィルタ4Bの上端部42の上縁は、上側ドレーン材1Baの外周フィルタ4Bの外周面に対して、溶着や接着剤などによって接合部44を設けることで接合させる。
【0085】
このように構成された実施例1のドレーン材1Bは、形状保持シート32を貼り合わせないため、前記実施の形態で説明したドレーン材1と比較して、材料費を削減することができる。例えば形状保持シート32と同じ材質の形状保持バンド34を使用する場合、大幅に使用する量を減らすことができる。
【0086】
また、前記実施の形態で説明した排水シート3と比べて長尺の排水シート3Bを使用することで、ドレーン材1Bを製作する際の手間を低減することができる。さらに工場で、外周フィルタ4Bの中空部41に排水シート3B及び有孔管2Bを収容した単位長さのドレーン材(1Ba,1Bb)を製作することで、打設現場では、下側ドレーン材1Bbに上側ドレーン材1Baを接続するだけで、短時間で所望する長さのドレーン材1Bを製作することができる。
なお、実施例1のこの他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【0087】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0088】
例えば、前記実施例1では、排水シート3Bと同程度の長さの有孔管2Bを使用する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、埋設するドレーン材1Bと同程度の長さの有孔管2を使用して、その長尺の有孔管2に対して、複数の排水シート3Bが収容された外周フィルタ4Bを組み付けていくこともできる。