(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164704
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】抗MUC1抗体およびIL-15を含む融合タンパク質構築物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20231102BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231102BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231102BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231102BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231102BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231102BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231102BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20231102BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231102BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20231102BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20231102BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231102BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231102BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231102BHJP
A61P 33/14 20060101ALI20231102BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231102BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20231102BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20231102BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20231102BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/65
A61K39/395 Y
A61K39/395 N
A61K38/21
A61K47/64
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/10
A61P33/14
A61P37/02
C07K16/30
C07K14/54
C12N15/24
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023156280
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2020544404の分割
【原出願日】2019-03-01
(31)【優先権主張番号】18159449.0
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18194290.5
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509067887
【氏名又は名称】グリコトープ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンナ ゲレルト
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ケーラー
(72)【発明者】
【氏名】アニカ イェケル
(72)【発明者】
【氏名】ラウラ ディクス
(72)【発明者】
【氏名】アンチェ ダニエルチク
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ゴレッツ
(57)【要約】
【課題】高度に特異的な腫瘍標的化を提供する。
【解決手段】第1の態様では、本発明は、(i)MUC1に特異的に結合する抗体モジュールと、(ii)IL-15モジュールと、を含む融合タンパク質構築物に関する。第2の態様では、本発明は、本発明による融合タンパク質構築物をコードする核酸を提供する。さらに、第3の態様では、本発明による核酸および前記核酸と作用的に接続したプロモーターを含む発現カセットまたはベクターが提供され、第4の態様では、本発明による核酸または発現カセットもしくはベクターを含む宿主細胞が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の分野に関する。がん抗原に対する抗体とサイトカインの融合タンパク質が提供される。特に、融合タンパク質は、がん部位において、IL-15部分を介してがん抗原MUC1に結合することによってT細胞およびナチュラルキラー細胞を活性化するものである。融合タンパク質構築物の設計により、提供される特定の状況において別個の利点、特に、強力な抗原結合および高度な免疫細胞活性化を伴う、高度に特異的な腫瘍部位の標的化が示される。特定の実施形態では、本発明は、これらの融合タンパク質構築物の治療および診断への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインは、免疫応答をモジュレートするので、抗がん処置のための有望な薬物である。サイトカインは、免疫系の細胞が互いと情報伝達して標的抗原に対して調和された応答を生じさせることを可能にする分子メッセンジャーである。直接細胞間相互作用を通じて多くの形態の免疫系の情報伝達が生じるが、サイトカインの分泌により、多面的かつ効率的な様式での免疫シグナル伝達の迅速な伝播が可能になる。
【0003】
サイトカインは、腫瘍部位において免疫エフェクター細胞および間質細胞を直接刺激し、細胞傷害エフェクター細胞による腫瘍細胞の認識を増強する。多数の動物腫瘍モデル試験により、サイトカインが広範な抗腫瘍活性を有することが実証されており、これは、がん治療のためのサイトカインに基づくいくつもの手法に変換されている。近年、GM-CSF、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18およびIL-21を含めたいくつものサイトカインが進行がんを有する患者に対する臨床試験に入っている。抗腫瘍免疫の促進におけるIL-10およびTGF-βなどの抑制性サイトカインの中和を支持する前臨床的研究が進行中である。
【0004】
特に、インターロイキン-15(IL-15)は、がん治療に関して魅力的なサイトカインである。IL-15は、エフェクター免疫応答を刺激するサイトカインである。IL-15により、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の発生、活性化および増殖が誘導される。IL-15およびそのIL-15受容体α鎖は、単球、マクロファージおよび樹状細胞上に発現され、エフェクター免疫細胞上のIL-2受容体β-共通γ鎖(IL2Rβγc)複合体に結合する。IL-15は、in vitroおよびin vivoにおいて、一般的な腫瘍標的化抗体と組み合わせて使用した場合に、高レベルの抗腫瘍細胞傷害を誘導する。それにもかかわらず、サイトカインの投与は、多くの場合、サイトカインの有効なモジュレーターとしての使用を妨げる用量制限毒性によって妨害される。
【0005】
これを考慮して、IL-15などのサイトカインの腫瘍部位への有効な標的化が当技術分野において必要とされている。安全かつ有効な免疫サイトカインによる治療の必要条件として、高度に特異的な腫瘍標的化が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、インターロイキン15を、抗MUC1抗体と組み合わせることによって腫瘍部位に有効かつ特異的に標的化することができることを見いだした。TA-MUC1は、新規の、腫瘍マーカーMUC1上の炭水化物/タンパク質混合エピトープであり、これは、正常な細胞には事実上存在しない。TA-MUC1は、起源が異なる上皮がんの中で広範な分布を示し、また、転移およびがん幹細胞にも存在し、これにより、TA-MUC1の広範な治療的潜在性が補強される。抗がん抗原MUC1およびIL2Rβγcの同時結合により、腫瘍部位において直接NK細胞およびT細胞を活性化および増殖させることが可能になる。本発明者らはここで、MUC1に特異的な抗体とIL-15とを含む融合タンパク質により、がん細胞が有効に標的化され、前記がん細胞に対するNK細胞およびT細胞応答が誘導されることを証明することができる。
【0007】
したがって、第1の態様では、本発明は、
(i)MUC1に特異的に結合する抗体モジュールと、
(ii)IL-15モジュールと
を含む融合タンパク質構築物に関する。
【0008】
第2の態様では、本発明は、本発明による融合タンパク質構築物をコードする核酸を提供する。さらに、第3の態様では、本発明による核酸および前記核酸と作用的に接続したプロモーターを含む発現カセットまたはベクターが提供され、第4の態様では、本発明による核酸または発現カセットもしくはベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0009】
第5の態様では、本発明は、本発明による融合タンパク質構築物を含む医薬組成物に関する。
【0010】
第6の態様によると、本発明は、医療、特に、がんまたは感染症の処置において使用するための、本発明による融合タンパク質構築物または医薬組成物を提供する。
【0011】
以下の説明および添付の特許請求の範囲から、本発明の他の目的、特徴、利点および態様が当業者には明らかになる。しかし、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および適用の好ましい実施形態を示す特定の実施例は単に例示として示されていることが理解されるべきである。以下を読むことにより、開示されている発明の主旨および範囲内の種々の変化および改変が当業者には容易に明らかになる。
【0012】
定義
本明細書で使用される場合、以下の表現は、一般に、それらが使用されている文脈からそうでないことが示される場合を除き、好ましくは下記の意味を有するものとする。
【0013】
「含む(comprise)」という表現は、本明細書で使用される場合、その文字通りの意味に加えて、「から本質的になる」および「からなる」という表現も含み、具体的に指す。したがって、「含む」という表現は、具体的に列挙された要素を「含む」主題がさらなる要素を含まない実施形態、ならびに具体的に列挙された要素を「含む」主題がさらなる要素を包含し得るおよび/または実際に包含する実施形態を指す。同様に、「有する(have)」という表現は、「含む」という表現として理解されるべきであり、「から本質的になる」および「からなる」という表現も含み、具体的に指す。「から本質的になる」という用語は、可能であれば、特に、主題が、主題が本質的にそれからなる具体的に列挙された要素に加えて、20%もしくはそれ未満、特に、15%もしくはそれ未満、10%もしくはそれ未満、または特に、5%もしくはそれ未満のさらなる要素を含む実施形態を指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、ポリペプチド、または2つもしくはそれよりも多くのポリペプチドの組合せ、または1つもしくは複数のポリペプチドと1つもしくは複数の他の分子もしくはイオンとを含む複合体を指す。タンパク質は、天然に存在するアミノ酸ならびに人工的なアミノ酸のいずれを含有するものであってもよく、生物学的起源のものであっても合成起源のものであってもよい。タンパク質のポリペプチド(複数可)は、天然に修飾(翻訳後修飾)されたものであってもよく、例えばグリコシル化、アミド化、カルボキシル化、ヒドロキシル化および/またはリン酸化によって合成的に修飾されたものであってもよい。ポリペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含むが、いかなる特定の長さである必要はない;この用語は、いかなるサイズ制限も含まない。ポリペプチドは、少なくとも50アミノ酸、より好ましくは少なくとも100アミノ酸、最も好ましくは少なくとも150アミノ酸を含むことが好ましい。
【0015】
「融合タンパク質構築物」という用語は、異なる天然に存在するタンパク質に由来する2つまたはそれよりも多くのポリペプチドを人工的に組み合わせて1つのタンパク質を形成する場合のタンパク質を指す。異なるポリペプチドを、特に、前記異なるポリペプチドを含む1つのポリペプチド鎖が形成されるように互いと融合することができる。
【0016】
「タンパク質」および「タンパク質構築物」という用語は、本明細書で使用される場合、ある特定の実施形態では、それぞれ同じ種類のタンパク質またはタンパク質構築物の集団を指す。特に、集団の全てのタンパク質またはタンパク質構築物は、そのタンパク質またはタンパク質構築物を定義するために使用される特徴を示す。ある特定の実施形態では、集団内の全てのタンパク質またはタンパク質構築物が同じアミノ酸配列を有する。
【0017】
「抗体」という用語は、特に、ジスルフィド結合によって接続された少なくとも2つの重鎖と2つの軽鎖を含むタンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)で構成される。重鎖定常領域は、3つ、またはIgM型もしくはIgE型の抗体の場合では4つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、CH3およびCH4)を含み、第1の定常ドメインCH1は可変領域に隣接しており、第2の定常ドメインCH2とヒンジ領域によって接続し得る。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメインのみからなる。可変領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができ、各可変領域は3つのCDRと4つのFRを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。重鎖定常領域は、γ型重鎖、δ型重鎖、α型重鎖、μ型重鎖またはε型重鎖などの任意の型の重鎖であってよい。抗体の重鎖はγ鎖であることが好ましい。さらに、軽鎖定常領域も、κ型軽鎖またはλ型軽鎖などの任意の型の軽鎖であってよい。抗体の軽鎖はκ鎖であることが好ましい。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、種々の免疫系の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(C1q)を含めた、宿主組織または因子への結合を媒介し得る。抗体は、例えば、ヒト化抗体、ヒト抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0018】
抗体の抗原結合部分とは、通常、全長抗体、または抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つもしくは複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。抗体の結合断片の例としては、VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片;ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結した、それぞれが同じ抗原に結合する2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab)2断片;VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一の腕のVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片;ならびに、VHドメインからなるdAb断片が挙げられる。
【0019】
抗体の「Fab部分」は、特に、重鎖可変領域および軽鎖可変領域(VHおよびVL)ならびに重鎖定常領域および軽鎖定常領域の第1のドメイン(CH1およびCL)を含む抗体の一部分を指す。抗体がこれらの領域の全てを含まない場合には、「Fab部分」という用語は、領域VH、VL、CH1およびCLのうち抗体内に存在するものだけを指す。「Fab部分」は、抗体の抗原結合活性を含有する、天然の抗体をパパインで消化することによって得られる断片に対応する抗体のその部分を指すことが好ましい。特に、抗体のFab部分は、抗原結合部位またはその抗原結合能を包含する。Fab部分は、少なくとも抗体のVH領域を含むことが好ましい。
【0020】
抗体の「Fc部分」は、特に、重鎖定常領域2、3および適用可能な場合には4(CH2、CH3およびCH4)を含む抗体の一部分を指す。特にFc部分は、これらの領域のそれぞれを2つ含む。抗体がこれらの領域の全てを含まない場合には、「Fc部分」という用語は、領域CH2、CH3およびCH4の抗体内に存在するものだけを指す。Fc部分は、少なくとも抗体のCH2領域を含むことが好ましい。「Fc部分」は、抗体の抗原結合活性を含有しない、天然の抗体をパパインで消化することによって得られる断片に対応する抗体のその部分を指すことが好ましい。特に、抗体のFc部分は、Fc受容体に結合することができ、したがって、例えば、Fc受容体結合部位またはFc受容体結合能を含む。
【0021】
「抗体」および「抗体構築物」という用語は、本明細書で使用される場合、ある特定の実施形態では、それぞれ同じ種類の抗体または抗体構築物の集団を指す。特に、集団の全ての抗体または抗体構築物が、その抗体または抗体構築物を定義するために使用される特徴を示す。ある特定の実施形態では、集団内の全ての抗体または抗体構築物が同じアミノ酸配列を有する。
【0022】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、前記抗体の断片および誘導体も含む。抗体の「断片または誘導体」とは、特に、前記抗体に由来し、その抗体と同じ抗原、特に同じエピトープに結合することができるタンパク質または糖タンパク質である。したがって、抗体の断片または誘導体は、本明細書では、一般に、機能性断片または誘導体を指す。特に好ましい実施形態では、抗体の断片または誘導体は、重鎖可変領域を含む。抗体の抗原結合機能は全長抗体またはその誘導体の断片によって果たされ得ることが示されている。抗体の断片の例としては、(i)各重鎖および軽鎖の可変領域および第1の定常ドメインからなる一価の断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab)2断片;(iii)重鎖の可変領域および第1の定常ドメインCH1からなるFd断片;(iv)抗体の単一の腕の重鎖および軽鎖可変領域からなるFv断片;(v)単一のポリペプチド鎖からなるFv断片であるscFv断片;(vi)共有結合により連結した2つのFv断片からなる(Fv)2断片;(vii)重鎖可変ドメイン;ならびに(viii)重鎖可変領域と軽鎖可変領域の結合が分子間でのみ生じ得、分子内では生じないように共有結合により連結した重鎖可変領域と軽鎖可変領域からなるマルチボディ(multibody)が挙げられる。抗体の誘導体は、特に、それが由来する親抗体と同じ抗原に結合するが、親抗体とは異なるアミノ酸配列を有する抗体を含む。これらの抗体断片および誘導体は、当業者に公知の従来の技法を使用して得られる。
【0023】
標的アミノ酸配列がその全長にわたり、参照アミノ酸配列の対応する部分と、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性または同一性を共有する場合、標的アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列に「由来する」または「対応する」。「対応する部分」は、例えば、標的抗体の重鎖可変領域のフレームワーク領域1(FRH1)が、参照抗体の重鎖可変領域のフレームワーク領域1に対応することを意味する。特定の実施形態では、参照アミノ酸配列に「由来する」または「対応する」標的アミノ酸配列は、その全長にわたり、参照アミノ酸配列の対応する部分と100%相同である、または、特に100%同一である。アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の「相同性」または「同一性」は、本発明に従って、参照配列の全長にわたって、または、相同性もしくは同一性が規定される配列に対応する参照配列の対応する部分の全長にわたって決定することが好ましい。特定のCDR配列または特定の可変領域配列などの1つまたは複数のアミノ酸配列によって定義される、親抗体に由来する抗体は、特に、親抗体のそれぞれのアミノ酸配列と少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%相同または同一である、特に同一である、CDR配列または可変領域配列などのアミノ酸配列を有する抗体である。ある特定の実施形態では、親抗体に由来する抗体(すなわち、その誘導体)は、親抗体と同じCDR配列を含むが、可変領域の残りの配列が異なる。
【0024】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、多価および多重特異性抗体、すなわち、それぞれが同じエピトープに結合する2つよりも多くの結合部位を有する抗体構築物、ならびに、第1のエピトープに結合する1つまたは複数の結合部位および第2のエピトープに結合する1つまたは複数の結合部位を有し、必要に応じてさらなるエピトープに結合するさらなる結合部位をも有する抗体構築物も指す。
【0025】
「特異的結合」は、抗体などの作用物質が、それに対して特異的であるエピトープなどの標的に、別の標的への結合と比較してより強力に結合することを意味することが好ましい。作用物質が、第1の標的に、第2の標的に対する解離定数よりも低い解離定数(Kd)で結合する場合、作用物質は、第1の標的に、第2の標的と比較してより強力に結合する。作用物質が特異的に結合する標的に対する解離定数は、作用物質が特異的に結合しない標的に対する解離定数の100分の1よりも低い、200分の1よりも低い、500分の1よりも低いまたは1000分の1よりも低いことが好ましい。さらに、「特異的結合」という用語は、特に、親和定数Kaが少なくとも106M-1、好ましくは少なくとも107M-1、より好ましくは少なくとも108M-1である、結合パートナー間の結合親和性を示す。ある特定の抗原に特異的な抗体は、特に、前記抗原に、少なくとも106M-1、好ましくは少なくとも107M-1、より好ましくは少なくとも108M-1のKaの親和性で結合することができる抗体を指す。例えば、「抗MUC1抗体」という用語は、特に、MUC1に特異的に結合し、好ましくはMUC1に少なくとも106M-1、好ましくは少なくとも107M-1、より好ましくは少なくとも108M-1のKaの親和性で結合することができる抗体を指す。
【0026】
「抗体モジュール」は、本明細書で言及される場合、抗体に由来し、抗原に特異的に結合することができるポリペプチド構築物を指す。特に、抗体モジュールは、少なくとも1つ、特に2つの抗体重鎖、および必要に応じて少なくとも1つ、特に2つの抗体軽鎖を含む。
【0027】
「抗原結合断片」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体に由来し、抗原に特異的に結合することができるが、天然の抗体の全ての要素は含まないポリペプチド構築物を指す。特に、抗原結合断片は、抗体の定常ドメインの一部または全部を含まず、また、抗原結合部位を2つではなく1つしか含まない場合がある。
【0028】
「抗原結合部位」は、特に、少なくとも1つの抗体可変領域、例えば、抗体重鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含む。抗原結合部位の抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域は、抗原足場、特にCH1ドメインおよびCLドメインを使用して互いに配置することができ、かつ/または、ペプチドリンカーを介して互いと融合することができる。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、単鎖可変領域断片(scFv)である。
【0029】
「IL-15」は、サイトカインであるインターロイキン15、特に、ヒトインターロイキン15を指す。IL-15は、N末端シグナルペプチドと共に発現される4α-ヘリックスバンドルタンパク質である。成熟IL-15では、シグナルペプチドが切断され、タンパク質がグリコシル化され、質量は約14~15kDaである。IL-15は、IL-15受容体α鎖、特にそのsushiドメイン、およびIL-2受容体β鎖と共通インターロイキン受容体γ鎖(共通γ鎖)の複合体に結合する。
【0030】
「MUC1」という用語は、ムチン-1、多型上皮ムチン(PEM)またはがん抗原15-3としても公知のタンパク質であるMUC1、特にヒトMUC1を指す。MUC1は、ムチンファミリーのメンバーであり、膜結合グリコシル化リン酸化タンパク質をコードする。MUC1のコアタンパク質の質量は120~225kDaであり、これは、グリコシル化で250~500kDaまで増加する。MUC1は細胞の表面を越えて200~500nm伸長する。当該タンパク質は、多くの上皮細胞の頂端表面に膜貫通ドメインによって係留される。細胞外ドメインは、20アミノ酸の可変数タンデムリピート(VNTR)ドメインを含み、リピートの数は異なる個体において20から120まで様々である。これらのリピートは、セリン残基、トレオニン残基およびプロリン残基に富み、これにより重度のO-グリコシル化が可能になる。ある特定の実施形態では、「MUC1」という用語は、腫瘍関連MUC1(「TA-MUC1」)を指す。TA-MUC1は、がん細胞に存在するMUC1である。このMUC1は、非がん細胞に存在するMUC1とは、そのはるかに高い発現レベル、その局在化およびそのグリコシル化によって異なる。特に、TA-MUC1は、がん細胞の細胞表面全体にわたって無極性に存在するが、非がん細胞では、MUC1は厳密に頂端発現を有し、したがって、全身投与された抗体は接近できない。さらに、TA-MUC1は異常なO-グリコシル化を有し、これにより、MUC1タンパク質骨格上に新しいペプチドエピトープおよびトムゼン・フリーデンライヒ抗原アルファ(TFα)などの新しい炭水化物腫瘍抗原が露出する。
【0031】
「TFα」は、トムゼン・フリーデンライヒ抗原アルファまたはコア-1とも称され、癌細胞においてタンパク質のヒドロキシアミノ酸セリンまたはトレオニンにアルファ-アノマー立体配置でO-グリコシド連結した二糖Gal-β1,3-GalNAcを指す。
【0032】
「グリカンの相対量」は、本発明によると、それぞれ抗体調製物の抗体または抗体を含む組成物中の抗体に結合したグリカンの特定のパーセンテージまたはパーセンテージ範囲を指す。特に、グリカンの相対量は、抗体に含まれ、したがって抗体調製物中のまたは抗体を含む組成物中の抗体のポリペプチド鎖に結合した全てのグリカンの特定のパーセンテージまたはパーセンテージ範囲を指す。100%のグリカンは、それぞれ抗体調製物の抗体または抗体を含む組成物中の抗体に結合した全てのグリカンを指す。例えば、10%のフコースを有するグリカンの相対量は、抗体を含む組成物であって、抗体に含まれ、したがって前記組成物中の抗体ポリペプチド鎖に結合した全てのグリカンのうち10%はフコース残基を含むが、抗体に含まれ、したがって前記組成物中の抗体ポリペプチド鎖に結合した全てのグリカンのうち90%はフコース残基を含まない、組成物を指す。100%を表す対応するグリカンの参照量は、組成物中の抗体に結合した全てのグリカン構造、または全てのN-グリカン、すなわち、組成物中の抗体のアスパラギン残基に結合した全てのグリカン構造、または全ての複合体型グリカンのいずれかであり得る。グリカン構造の参照群は、一般に、当業者により明確に示されるまたはその環境から直接導き出せる。
【0033】
「N-グリコシル化」という用語は、タンパク質のポリペプチド鎖のアスパラギン残基に結合した全てのグリカンを指す。これらのアスパラギン残基は、一般に、アミノ酸配列Asn-Xaa-Ser/Thr(配列中、Xaaはプロリン以外の任意のアミノ酸であってよい)を有するN-グリコシル化部位の一部である。同様に、「N-グリカン」は、ポリペプチド鎖のアスパラギン残基に結合したグリカンである。「グリカン」、「グリカン構造」、「炭水化物」、「炭水化物鎖」および「炭水化物構造」という用語は、一般に、本明細書では同義に使用される。N-グリカンは、一般に、2つのN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基および3つのマンノース残基からなる共通のコア構造を有し、構造Manα1,6-(Manα1,3-)Manβ1,4-GlcNAcβ1,4-GlcNAcβ1-Asnを有し、Asnはポリペプチド鎖のアスパラギン残基である。N-グリカンは、3つの異なる型、すなわち、複合体型グリカン、ハイブリッド型グリカンおよび高マンノース型グリカンに細分される。
【0034】
本明細書において示される数、特に、特異的なグリコシル化特性の相対量は、おおよその数と理解されることが好ましい。特に、数は、最大10%高いおよび/または低い、特に、最大9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%高いおよび/または低いことが好ましい場合がある。
【0035】
「核酸」という用語は、一本鎖および二本鎖の核酸およびリボ核酸ならびにデオキシリボ核酸を含む。核酸は、天然に存在するヌクレオチドならびに合成ヌクレオチドを含んでよく、また、例えば、メチル化、5’および/または3’キャップ形成によって天然にまたは合成的に修飾されていてよい。
【0036】
「発現カセット」という用語は、特に、その中に導入されるコード核酸配列の発現を可能にし、制御することができる核酸構築物を指す。発現カセットは、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサーおよび遺伝子の転写またはmRNAの翻訳を制御する他の調節エレメントを含み得る。発現カセットの正確な構造は、種または細胞型に応じて変動し得るが、一般に、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写配列ならびに5’非翻訳配列および3’非翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャップ形成配列、CAAT配列などを含む。より詳細には、5’非転写発現調節配列は、作用的に接続した核酸の転写調節のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。発現カセットはまた、エンハンサー配列または上流アクチベーター配列も含み得る。
【0037】
本発明によると、「プロモーター」という用語は、発現される核酸配列の(5’)側上流に位置し、RNAポリメラーゼの認識および結合部位を提供することによって当該配列の発現を調節する核酸配列を指す。「プロモーター」は、遺伝子の転写の制御に関与するさらなる因子のためのさらなる認識および結合部位を含み得る。プロモーターは、原核生物または真核生物の遺伝子の転写を調節し得る。さらに、プロモーターは、「誘導性」、すなわち、誘導性作用物質に応答して転写を開始するものであり得る、または、転写が誘導性作用物質によって調節されない場合には「構成的」であり得る。誘導性プロモーターの調節下にある遺伝子は、誘導性作用物質が存在しなければ、発現されないまたは小さな程度にしか発現されない。誘導性作用物質の存在下では、遺伝子のスイッチがオンになるまたは転写のレベルが上昇する。これは、一般に、特定の転写因子の結合によって媒介される。
【0038】
「ベクター」という用語は、本明細書では、その最も一般的な意味で使用され、核酸を、例えば、原核細胞および/または真核細胞に導入し、適切な場合には、ゲノム内に組み込むことを可能にする、前記核酸に対する任意の中間ビヒクルを含む。この種類のベクターは、細胞において複製および/または発現されることが好ましい。ベクターは、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージまたはウイルスゲノムを含む。「プラスミド」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、染色体外遺伝子材料の構築物、通常、染色体DNAとは独立して複製可能な環状DNA二重鎖に関する。
【0039】
本発明によると、「宿主細胞」という用語は、外因性核酸を用いて形質転換またはトランスフェクトすることができる任意の細胞に関する。「宿主細胞」という用語は、本発明によると、原核細胞(例えば、E.coli)または真核細胞(例えば、哺乳動物細胞、特に、ヒト細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、または霊長類に由来する細胞などの哺乳動物細胞が特に好まれる。細胞は、多様な組織型に由来し得、初代細胞および細胞株を含む。核酸は、宿主細胞中に、単一コピーの形態または2つもしくはそれよりも多くのコピーの形態で存在し得、一実施形態では、宿主細胞において発現される。
【0040】
「患者」という用語は、本発明によると、人間、非ヒト霊長類または別の動物、特に、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコもしくはマウスおよびラットなどの齧歯類などの哺乳動物を意味する。特に好ましい実施形態では、患者は、人間である。
【0041】
「がん」という用語は、本発明によると、特に、白血病、セミノーマ、黒色腫、癌、奇形腫、リンパ腫、肉腫、中皮腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸がん、子宮体がん、腎がん、副腎がん、甲状腺がん、血液がん、皮膚がん、脳がん、子宮頸がん、腸がん、肝がん、結腸がん、胃がん、腸管がん、頭頸部がん、胃腸がん、リンパ節がん、食道がん、結腸直腸がん、膵がん、耳鼻咽喉(ENT)がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、子宮がん、卵巣がんおよび肺がんならびにその転移を含む。がんという用語は、本発明によると、がん転移も含む。
【0042】
「腫瘍」とは、制御されない細胞増殖によって形成される細胞または組織の群を意味する。腫瘍は、構造的な組織化および正常な組織との機能的な協調の部分的なまたは完全な欠如を示し、通常、別個の組織塊を形成し、これは、良性または悪性であり得る。
【0043】
「転移」とは、がん細胞が元の部位から体の別の部分に拡散することを意味する。転移の形成は、非常に複雑なプロセスであり、通常、原発腫瘍からのがん細胞の脱離、体内循環への侵入および体内の他の場所の正常組織内で定着して成長することを伴う。腫瘍細胞が転移すると、新しい腫瘍は二次腫瘍または転移性腫瘍と称され、その細胞は、通常、元の腫瘍における細胞と似ている。これは、例えば、乳がんが肺に転移した場合、二次腫瘍は異常な肺細胞ではなく異常な乳房細胞で構成されることを意味する。そして、肺の腫瘍は肺がんではなく転移性乳がんと称される。
【0044】
「医薬組成物」という用語は、特に、ヒトまたは動物への投与に適した組成物、すなわち、薬学的に許容される構成成分を含有する組成物を指す。医薬組成物は、活性化合物またはその塩もしくはプロドラッグを緩衝剤、保存剤および張度調整剤などの担体、希釈剤または医薬賦形剤と共に含むことが好ましい。
【0045】
本明細書に記載の数値範囲は、範囲を規定する数を含めたものである。本明細書で提示される表題は、本明細書全体を参照することにより読み取ることができる本発明の種々の態様または実施形態を限定するものではない。一実施形態によると、方法の場合ではある特定のステップを含む、または組成物の場合ではある特定の成分を含むと本明細書に記載される主題は、主題がそれぞれのステップまたは成分からなることを指す。本明細書に記載の好ましい態様および実施形態を選択し、組み合わせることが好ましく、好ましい実施形態のそれぞれの組合せから生じる特定の主題も本開示に属する。
【0046】
発明の詳細な説明
本発明は、IL-15またはそのバリアントとMUC1を標的とする抗がん抗体とが融合した融合タンパク質構築物の開発に基づく。確立された抗MUC1抗体は、腫瘍関連MUC1に結合し、細胞傷害免疫細胞を動員し活性化することによってその抗がん活性を発揮する。免疫細胞、特にナチュラルキラー細胞(NK細胞)の結合および活性化は、抗体Fc部分と免疫細胞上のFcγ受容体、特にFcγRIIIaの相互作用によって実現される。活性化されると、抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellular cytotoxicity)(ADCC)が開始される。これを考慮して、本発明者らは、確立された抗MUC1抗体の有効性を、IL-15またはIL-15とIL-15受容体α鎖のsushiドメインの組合せをこれらの抗体に結合させることによってさらに改善した。IL-15は、NK細胞、NKT細胞およびT細胞の発生、活性化および増殖を誘導するサイトカインである。
【0047】
本発明者らは、抗MUC1抗体PankoMabとIL-15の融合構築物により、免疫細胞が有効に活性化および動員され、腫瘍細胞の溶解が誘導されることを実証することができた。天然のグリコシル化を有し、Fc受容体と相互作用することができるか、またはグリコシル化部位の欠失によって不活化される活性または不活性な抗体のFc部分を使用することにより、活性の微調整を実現することができる。さらに、IL-15の活性も、ネイティブなIL-15またはその受容体に対する結合親和性が低下した変異バージョンを使用することによって、ならびにIL-15受容体αサブユニットのsushiドメインと組み合わせることによって、調節することができる。一般に、sushiドメインを伴わないネイティブなIL-15と融合した機能性Fc部分を有する抗MUC1抗体により、標的結合親和性、頑強な機能性および安全性と、高い抗腫瘍活性、低いオフターゲット活性および長い循環半減期を伴う好都合な薬物動態学的挙動との最良のバランスがもたらされた。
【0048】
さらに、本発明者らは、IL-15を抗MUC1抗体と異なる位置で、例えば、重鎖C末端、軽鎖C末端および軽鎖N末端で融合することができ、これらの全てにより機能性融合構築物がもたらされることを示した。驚いたことに、IL-15を抗体重鎖のC末端と融合した場合に、最良の活性ならびに薬物動態および薬力学的パラメーターが得られた。
【0049】
このことを考慮して、本発明は、
(i)MUC1に特異的に結合する抗体モジュールと、
(ii)IL-15モジュールと
を含む融合タンパク質構築物を提供する。
【0050】
抗MUC1抗体モジュール
MUC1に特異的に結合する抗体モジュール(抗MUC1抗体モジュール)は、MUC1のエピトープに特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位を含む。ある特定の実施形態では、抗体モジュールは、MUC1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を少なくとも2つ、特に、正確に2つ含む。これらの抗原結合部位は、異なっても同一であってもよいが、特に、同じアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、抗体モジュールの抗原結合部位は、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含む。
【0051】
ある特定の実施形態では、抗MUC1抗体モジュールは、少なくとも1つの抗体重鎖を含む。ある特定の実施形態では、抗体モジュールは、2つの抗体重鎖を含む。抗体重鎖は、特に、VHドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。ある特定の他の実施形態では、抗体重鎖は、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含むが、CH1ドメインは含まない。さらなる実施形態では、重鎖の1つまたは複数の定常ドメインを他のドメイン、特に、例えばアルブミンなどの同様のドメインで置き換えることができる。抗体重鎖は、γ鎖、α鎖、ε鎖、δ鎖およびμ鎖を含めた任意の型のものであってよく、γ1鎖、γ2鎖、γ3鎖およびγ4鎖を含めたγ鎖、特にγ1鎖が好ましい。したがって、抗体モジュールは、IgG型抗体モジュール、特に、IgG1型抗体モジュールであることが好ましい。
【0052】
好ましい実施形態では、抗体モジュールは、Fc領域を含む。抗体モジュールは、特に、それぞれがドメインVH、CH1、ヒンジ領域、CH2およびCH3を含む2つの重鎖と、それぞれがドメインVLおよびCLを含む2つの軽鎖とを含む全抗体であり得る。抗体モジュールは、特に、1つまたは複数のヒトFcγ受容体、特に、ヒトFcγ受容体IIIAに結合することができるものである。ある特定の実施形態では、抗体モジュールは、ヒトFcγ受容体に結合しないまたは有意には結合しない。これらの実施形態では、抗体モジュールは、特に、CH2ドメイン内にグリコシル化部位を含まない。ある特定の実施形態では、抗体モジュールの重鎖は、γ1抗体重鎖のヒト遺伝子によってコードされるC末端リシン残基、例えば、C末端リシンを含まない。さらに、一部の実施形態では、重鎖のC末端の最後の3つのアミノ酸残基の1つまたは複数が欠失および/または置換されていてよい。例えば、最後の2つまたは最後の3つのアミノ酸が欠失していてもよく、C末端の配列PGKが、例えば、リシンがアラニンで置換される、グリシンがアラニンもしくはセリンで置換されるまたはプロリンがロイシンで置換される、あるいはこれらの組合せによって変異していてもよい。「重鎖」および「CH3」という用語は、本明細書で使用される場合、そのような欠失および/または変異を含むバージョンを含む。
【0053】
特に、抗体モジュールは、少なくとも1つの抗体軽鎖、特に、2つの抗体軽鎖をさらに含む。抗体軽鎖は、特に、VLドメインおよびCLドメインを含む。抗体軽鎖はκ鎖であってもλ鎖であってもよく、特に、κ鎖である。ある特定の実施形態では、抗体モジュールは、2つの抗体重鎖および2つの抗体軽鎖を含む。
【0054】
代替の実施形態では、抗体モジュールは、抗体軽鎖を含まない。これらの実施形態では、抗体モジュールの抗体重鎖は、軽鎖可変領域をさらに含み得る。特に、軽鎖可変領域は重鎖のN末端と融合しているまたは重鎖可変領域に対してC末端が挿入されている。軽鎖可変領域と重鎖の残りの部分を接続するためにペプチドリンカーが存在してよい。
【0055】
特定の実施形態では、抗体モジュールは、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含む。これらの可変領域は、互いと、例えばペプチドリンカーによって共有結合により付着していてよい。ある特定の実施形態では、抗体モジュールは、特に、N末端からC末端までの方向に、抗体重鎖可変領域、ペプチドリンカーおよび抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド鎖を含む。特に、抗体モジュールは、単鎖可変断片(scFv)であってよい。
【0056】
抗MUC1抗体モジュールは、MUC1のエピトープに特異的に結合する。エピトープは、MUC1に特異的なもの、すなわち、他の分子には存在しないものであり得る、または、他の分子でも見いだされるエピトープであり得る。
【0057】
ある特定の実施形態では、抗体モジュールは、MUC1にグリコシル化依存的に結合する。特に、抗体モジュールは、MUC1に、MUC1がグリコシル化されている場合、特に、細胞外タンデムリピートにおいてグリコシル化されている場合に、より強力に結合する。特定の実施形態では、抗体モジュールは、MUC1に、MUC1がN-アセチルガラクトサミン(Tn)、シアリルα2-6N-アセチルガラクトサミン(sTn)、ガラクトースβ1-3N-アセチルガラクトサミン(TF)またはガラクトースβ1-3(シアリルα2-6)N-アセチルガラクトサミン(sTF)で、好ましくはTnまたはTFでO-グリコシル化されている場合に、より強力に結合する。
【0058】
ある特定の実施形態では、抗体モジュールは、MUC1の細胞外タンデムリピート内のエピトープに特異的に結合する。特に、抗体モジュールは、前記タンデムリピートがトレオニン残基においてN-アセチルガラクトサミン(Tn)、シアリルα2-6N-アセチルガラクトサミン(sTn)、ガラクトースβ1-3N-アセチルガラクトサミン(TF)またはガラクトースβ1-3(シアリルα2-6)N-アセチルガラクトサミン(sTF)で、好ましくはTnまたはTFでグリコシル化されている場合に、より強力に結合する。炭水化物部分がトレオニン残基にα-O-グリコシド結合によって結合していることが好ましい。
【0059】
特定の実施形態では、抗体モジュールは、アミノ酸配列PDTR(配列番号19)またはPDTRP(配列番号20)を含むMUC1のタンデムリピートドメイン内のエピトープに特異的に結合することができる。このエピトープへの結合は、上記の通りグリコシル化依存的であることが好ましく、特に、上記の炭水化物部分がそれぞれ配列PDTRまたはPDTRP(配列番号19および20)のトレオニン残基に結合している場合、結合が増加する。
【0060】
ある特定の実施形態では、抗体モジュールは、腫瘍関連MUC1エピトープ(TA-MUC1)に特異的に結合する。TA-MUC1エピトープは、特に、腫瘍細胞には存在するが正常な細胞には存在しない、かつ/または腫瘍細胞に存在する場合にのみ宿主の循環中の抗体が接近できるが、正常な細胞に存在する場合には宿主の循環中の抗体が接近できないMUC1のエピトープを指す。上記のエピトープ、特にMUC1のタンデムリピートドメイン内に存在するエピトープは、腫瘍関連MUC1エピトープであり得る。ある特定の実施形態では、抗体モジュールの、TA-MUC1エピトープを発現する細胞への結合は、正常な非腫瘍MUC1を発現する細胞への結合よりも強力である。前記結合は、少なくとも1.5倍強力である、好ましくは少なくとも2倍強力である、少なくとも5倍強力である、少なくとも10倍強力であるまたは少なくとも100倍強力であることが好ましい。特に、TA-MUC1は、細胞外タンデムリピート領域内で少なくとも1つのN-アセチルガラクトサミン(Tn)またはガラクトースβ1-3N-アセチルガラクトサミン(TF)でグリコシル化されている。ある特定の実施形態では、抗体モジュールは、このエピトープに、N-アセチルガラクトサミン(Tn)またはガラクトースβ1-3N-アセチルガラクトサミン(TF)を含むTA-MUC1の細胞外タンデムリピート領域内で特異的に結合する。特に、前記エピトープは、MUC1タンデムリピートの少なくとも1つのPDTRまたはPDTRP(配列番号19または20)配列を含み、PDTRまたはPDTRP(配列番号19または20)配列のトレオニンにおいてN-アセチルガラクトサミン(Tn)またはガラクトースβ1-3N-アセチルガラクトサミン(TF)で、好ましくはα-O-グリコシド結合を介してグリコシル化されている。TA-MUC1結合に関しては、抗体モジュールは、グリコシル化されたMUC1腫瘍エピトープに特異的に結合し、したがって、長さが同一であり、ペプチド配列が同一である、グリコシル化されていないペプチドへの結合と比較して結合の強度が少なくとも2倍、好ましくは4倍または10倍、最も好ましくは20倍に増加することが好ましい。
【0061】
以下に、TA-MUC1に特異的に結合する抗体モジュールの特定の実施形態を記載する。
【0062】
ある特定の実施形態では、抗体モジュールは、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR-H3である相補性決定領域を含む、または配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR-H3である相補性決定領域を含む少なくとも1つの重鎖可変領域を含む。一実施形態によると、抗体モジュール内に存在する重鎖可変領域(複数可)は、配列番号7、8もしくは9のアミノ酸配列または前記配列の1つと少なくとも75%、特に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、抗体モジュールの重鎖可変領域は、(i)CDR-H1が配列番号1のアミノ酸配列を有し、CDR-H2が配列番号3のアミノ酸配列を有し、CDR-H3が配列番号5のアミノ酸配列を有する、またはCDR-H1が配列番号2のアミノ酸配列を有し、CDR-H2が配列番号4のアミノ酸配列を有し、CDR-H3が配列番号6のアミノ酸配列を有する一群のCDRを含み、かつ、(ii)配列番号7、8および9のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0063】
抗体モジュールは、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR-L2および配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-L3である相補性決定領域を含む、または配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号13のアミノ酸配列を有するCDR-L2および配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR-L3である相補性決定領域を含む少なくとも1つの軽鎖可変領域をさらに含み得る。一実施形態によると、抗体モジュール内に存在する軽鎖可変領域(複数可)は、配列番号16、17もしくは18のアミノ酸配列または前記配列の1つと少なくとも75%、特に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、抗体モジュールの軽鎖可変領域は、(i)CDR-L1が配列番号10のアミノ酸配列を有し、CDR-L2が配列番号12のアミノ酸配列を有し、CDR-L3が配列番号14のアミノ酸配列を有する、またはCDR-L1が配列番号11のアミノ酸配列を有し、CDR-L2が配列番号13のアミノ酸配列を有し、CDR-L3が配列番号15のアミノ酸配列を有する一群のCDRを含み、かつ、(ii)配列番号16、17および18のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0064】
特定の好ましい実施形態では、抗体モジュールは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を少なくとも1つ、特に2つ、および、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を少なくとも1つ、特に2つ含む。さらなる実施形態では、抗体モジュールは、上記の配列の1つまたは複数を含む抗体、特に、例えば、WO2004/065423およびWO2011/012309に記載されている抗体PankoMabのキメラもしくはヒト化バージョン、または抗体ガチポツズマブに由来する。
【0065】
CDR-H2が配列番号3のアミノ酸配列を有する、かつ/または重鎖可変領域が配列番号8もしくは9のアミノ酸配列を有する抗体モジュールは、重鎖可変領域内にN-グリコシル化部位を有する。ある特定の実施形態では、抗体分子は、重鎖可変領域内のこのN-グリコシル化部位が除去される変異を含む。特に、配列番号3の8位および/または配列番号9の57位のアミノ酸残基が、それぞれ、Asn以外の任意の他のアミノ酸残基、特にGlnまたはAlaによって置換されている。したがって、ある特定の実施形態では、抗体モジュール内に存在する重鎖可変領域(複数可)は、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号33のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR-H3である相補性決定領域を含む。特に、抗体モジュール内に存在する重鎖可変領域(複数可)は、配列番号34のアミノ酸配列または前記配列の1つと少なくとも75%、特に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、抗体モジュールの重鎖可変領域(複数可)は、(i)CDR-H1が配列番号1のアミノ酸配列を有し、CDR-H2が配列番号33のアミノ酸配列を有し、CDR-H3が配列番号5のアミノ酸配列を有する一群のCDRを含み、かつ、(ii)配列番号34のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。これらの実施形態では、配列番号33の8位および配列番号34の57位のアミノ酸残基は、特に、アスパラギン以外の任意のアミノ酸残基、特に、グルタミンまたはアラニンである。さらに、これらの実施形態では、抗体モジュール内に存在する軽鎖可変領域(複数可)は、特に、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR-L2および配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-L3である相補性決定領域を含む。特に、抗体モジュール内に存在する軽鎖可変領域(複数可)は、配列番号18のアミノ酸配列または前記配列の1つと少なくとも75%、特に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む。これらの実施形態では、抗体モジュールの軽鎖可変領域(複数可)は、特に、(i)CDR-L1が配列番号10のアミノ酸配列を有し、CDR-L2が配列番号12のアミノ酸配列を有し、CDR-L3が配列番号14のアミノ酸配列を有する一群のCDRを含み、かつ、(ii)配列番号18のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0066】
IL-15モジュール
融合タンパク質構築物のIL-15モジュールは、IL-15の活性の1つまたは複数を含む。特に、IL-15モジュールは、IL-2受容体β-共通γ鎖複合体および/またはIL-15受容体α鎖に特異的に結合することができる。ある特定の実施形態では、IL-15モジュールは、IL-15またはその断片、特に、ヒトIL-15またはその断片を含む。特定の実施形態では、IL-15モジュールは、ヒトIL-15を含む、特にそれからなる。
【0067】
特定の実施形態では、IL-15モジュールは、配列番号21の配列またはそれに由来する配列を含む。特に、IL-15モジュールは、配列番号21の配列と少なくとも75%、特に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、IL-15モジュールは、配列番号21のアミノ酸配列を含む、特にそれからなる。さらなる実施形態では、IL-15モジュールは、前記配列の断片、特に、少なくとも80アミノ酸、少なくとも90アミノ酸または少なくとも100アミノ酸の長さの断片を含む。断片は、特に、IL-2受容体β-共通γ鎖複合体および/またはIL-15受容体α鎖に特異的に結合する能力を保持する。
【0068】
IL-15モジュールは、受容体結合を増加させる変異を含み得る。例えば、IL-15モジュールは、配列番号21のAsn72に対応するアミノ酸位におけるアスパラギンのアスパラギン酸への置換を含み得る。IL-15モジュールが配列番号21の配列またはそれに由来する配列を含む実施形態では、受容体結合を増加させる変異は、N72Dである。代替の実施形態では、IL-15モジュールは、受容体結合を低下させる変異を含み得る。例えば、IL-15モジュールは、配列番号21のIle67に対応するアミノ酸位におけるイソロイシンのグルタミン酸への置換を含み得る。IL-15モジュールが配列番号21の配列またはそれに由来する配列を含む実施形態では、受容体結合を低下させる変異は、I67Eである。IL-15モジュールは、Asn79に対応するアミノ酸および/または配列番号21のAsn112に対応するアミノ酸においてグリコシル化されていてよい。
【0069】
特定の実施形態では、IL-15モジュールは、IL-15受容体α鎖またはその断片をさらに含む。IL-15受容体α鎖は、特に、ヒトIL-15受容体α鎖である。ある特定の実施形態では、IL-15受容体α鎖またはその断片は、IL-15、特にヒトIL-15に特異的に結合する。特定の実施形態では、IL-15モジュールは、IL-15受容体α鎖、特にヒトIL-15受容体α鎖の細胞外ドメインまたはその一部のみを含む、またはそれからなるIL-15受容体α鎖の断片を含む。特に、IL-15受容体α鎖の断片は、IL-15受容体α鎖、特にヒトIL-15受容体α鎖のsushiドメインのみを含む、またはそれからなる。
【0070】
特定の実施形態では、IL-15モジュールは、配列番号22の配列またはそれに由来する配列を含む、IL-15受容体α鎖の断片を含む。特に、IL-15受容体α鎖の断片は、配列番号22の配列と少なくとも75%、特に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、IL-15受容体α鎖の断片は、前記配列の断片、特に、少なくとも50アミノ酸、少なくとも55アミノ酸または少なくとも60アミノ酸の長さの断片を含む。断片は、特に、IL-2受容体β-共通γ鎖複合体および/またはIL-15に特異的に結合する能力を保持する。
【0071】
IL-15受容体α鎖もしくはその断片は、IL-15もしくはその断片と同じポリペプチド鎖の一部であり得る、またはIL-15受容体α鎖もしくはその断片とIL-15もしくはその断片は異なるポリペプチド鎖の一部であり得る。好ましい実施形態では、IL-15受容体α鎖またはその断片とIL-15またはその断片は同じポリペプチド鎖の一部である。これらの実施形態では、IL-15受容体α鎖またはその断片をIL-15またはその断片のN末端またはC末端、特にそのN末端と融合することができる。ある特定の実施形態では、IL-15受容体α鎖またはその断片をIL-15またはその断片とペプチドリンカー、特に本明細書に記載のペプチドリンカーを介して融合する。
【0072】
特定の実施形態では、IL-15モジュールならびに融合タンパク質構築物全体は、IL-15に結合することができるIL-15受容体α鎖もその断片も含まない。
【0073】
ある特定の具体的な実施形態では、IL-15モジュールは、配列番号21のアミノ酸配列を有するヒトIL-15を含む、特にそれからなる。代替の実施形態では、IL-15モジュールは、配列番号21のアミノ酸配列を有するヒトIL-15を含む、特にそれからなり、67位のイソロイシン残基がグルタミン酸で置換されている。別の実施形態では、IL-15モジュールは、配列番号21のアミノ酸配列を有するヒトIL-15のN末端とペプチドリンカーを介して融合した、配列番号22のアミノ酸配列を有するヒトIL-15受容体α鎖断片を含む、特にそれからなる。別の実施形態では、IL-15モジュールは、ヒトIL-15が、参照配列の全長にわたって、配列番号21と少なくとも90%、特に、少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有し、かつ/または、ヒトIL-15受容体α鎖断片が、参照配列の全長にわたって、配列番号22と少なくとも90%、特に、少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有することを除いて、これらの設計のいずれかを有し、また、IL-15モジュールは、IL-2受容体β-共通γ鎖複合体に特異的に結合する。
【0074】
融合タンパク質構築物
融合タンパク質構築物は、少なくとも1つの抗MUC1抗体モジュールおよび少なくとも1つのIL-15モジュールを含む。ある特定の実施形態では、融合タンパク質構築物は、少なくとも2つ、特に、正確に2つのIL-15モジュールを含む。IL-15モジュールは同一であっても異なってもよいが、特に、同じアミノ酸配列を有する。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのIL-15モジュールが抗体モジュールの重鎖のC末端と融合している。さらにまたはこれの代わりに、少なくとも1つのIL-15モジュールが抗体モジュールの軽鎖のC末端と融合している。
【0075】
融合タンパク質構築物が2つのIL-15モジュールを含む特定の実施形態では、抗体モジュールは、重鎖も2つ含み、IL-15モジュールのそれぞれが、抗体モジュールの異なる重鎖のC末端と融合している。融合タンパク質構築物が2つのIL-15モジュールを含む代替の実施形態では、抗体モジュールは、軽鎖も2つ含み、IL-15モジュールのそれぞれが、抗体モジュールの異なる軽鎖のC末端と融合している。融合タンパク質構築物が2つのIL-15モジュールを含むさらなる代替的な実施形態では、抗体モジュールは、軽鎖も2つ含み、IL-15モジュールのそれぞれが、抗体モジュールの異なる軽鎖のN末端と融合している。
【0076】
IL-15モジュールは、抗体モジュールと、ペプチド結合を介して直接融合していてもよく、ペプチドリンカーを介して間接的に融合していてもよい。直接融合は、IL-15モジュールの配列が、これらの2つの配列間にいかなる中間のアミノ酸も伴わずに、抗体モジュールの配列に直接続く実施形態を指す。ペプチドリンカーを介した融合は、抗体モジュールの配列とIL-15モジュールの配列との間に1つまたは複数のアミノ酸が存在する実施形態を指す。これらの1つまたは複数のアミノ酸が抗体モジュールとIL-15モジュールの間のペプチドリンカーを形成する。
【0077】
ペプチドリンカーは、原理上は、抗体モジュールとIL-15モジュールの連結に適した任意の数のアミノ酸および任意のアミノ酸配列を有してよい。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも3アミノ酸、好ましくは少なくとも5アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも15アミノ酸または少なくとも20アミノ酸を含む。さらなる実施形態では、ペプチドリンカーは、50アミノ酸もしくはそれ未満、好ましくは45アミノ酸もしくはそれ未満、40アミノ酸もしくはそれ未満、35アミノ酸もしくはそれ未満、30アミノ酸もしくはそれ未満、25アミノ酸もしくはそれ未満または20アミノ酸もしくはそれ未満を含む。特に、ペプチドリンカーは、10アミノ酸から30アミノ酸まで、特に、20アミノ酸または30アミノ酸を含む。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、グリシン残基およびセリン残基からなる。グリシンおよびセリンは、ペプチドリンカー内に、2対1、3対1、4対1または5対1の比で存在し得る(グリシン残基の数対セリン残基の数)。例えば、ペプチドリンカーは、4つのグリシン残基の後に1つのセリン残基という配列、特に、この配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのリピートを含み得る。特定の例は、アミノ酸配列GGGGS(配列番号31)、アミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の2つのリピート、アミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の3つのリピート、アミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の4つのリピートおよびアミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の6つのリピートを含む、またはそれからなるペプチドリンカーである。特に、アミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の2つ、3つまたは4つのリピートからなるペプチドリンカーを使用することができる。特定の実施形態では、融合タンパク質構築物は、抗体モジュールのC末端とIL-15モジュールのN末端との間にアミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の2つ、3つもしくは4つのリピートを含むペプチドリンカー、および/または、IL-15もしくはその断片とIL-15モジュールのIL-15受容体α鎖もしくはその断片との間にアミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の4つもしくは6つのリピートを含むペプチドリンカーを含む。さらなる実施形態では、ペプチドリンカーは、配列PAPAP(配列番号32)、特に、この配列の3つまたは6つのリピートを含む。特定の実施形態では、融合タンパク質構築物は、抗体モジュールのC末端とIL-15モジュールのN末端との間にアミノ酸配列PAPAP(配列番号32)の3つまたは6つのリピートを含むペプチドリンカーを含む。
【0078】
他の実施形態では、ペプチドリンカーは、ヒトにおいて免疫原性の可能性を示さないまたは軽微にしか示さない配列、好ましくは、ヒト配列または天然に存在する配列である配列を含む。さらに好ましい実施形態では、ペプチドリンカーおよび隣接するアミノ酸は、免疫原性の可能性を示さないまたは軽微にしか示さない。上記のペプチドリンカーは、1つの抗原結合断片内に存在する重鎖可変領域および軽鎖可変領域などの融合タンパク質構築物の他のエレメントを連結するために使用することもできる。
【0079】
ある特定の実施形態では、IL-15モジュールは、抗体モジュールの重鎖のC末端とペプチドリンカーを介して融合している。これらの実施形態では、ペプチドリンカーは、N末端に追加的なアミノ酸残基、特に、プロリン残基、アスパラギン酸残基またはアラニン残基を含み得る。それに加えて、またはその代わりに、抗体重鎖の最後の1つ、2つまたは3つのアミノ酸残基が欠失および/または変異していてよい。特定の例としては、ペプチドリンカーがN末端に追加的なプロリン残基またはアスパラギン酸残基を含む融合タンパク質構築物;ペプチドリンカーがN末端に追加的なアラニン残基を含み、抗体重鎖の最後のアミノ酸残基が欠失している融合タンパク質構築物;および抗体重鎖の最後の2つのアミノ酸残基が欠失している融合タンパク質構築物が挙げられる。これらの実施形態では、ペプチドリンカーは、特に、アミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の2つ、3つもしくは4つのリピートまたはアミノ酸配列PAPAP(配列番号32)の3つもしくは6つのリピートを含む。
【0080】
融合タンパク質構築物は、特に、抗体構築物である。抗体構築物は、MUC1のエピトープに特異的に結合するが、別の抗原に特異的に結合するさらなる抗原結合部位は全く含まない。代替の実施形態では、融合タンパク質構築物は、他の抗原に特異的に結合する1つまたは複数の追加的な抗原結合部位を含む。これらの追加的な抗原結合部位は、融合タンパク質構築物のどこに存在していてもよい。ある特定の実施形態では、追加的な抗原結合部位は、抗体モジュールの抗体軽鎖または重鎖のC末端またはN末端と融合した抗原結合断片内に存在する。特に、抗体モジュールが2つの抗体軽鎖を含む場合、1つまたは複数の抗原結合断片、特に、1つの追加的な抗原結合断片が抗体モジュールの抗体軽鎖のそれぞれのC末端またはN末端、特にC末端と融合していてよい。これらの追加的な抗原結合断片は同一であっても異なってもよいが、特に、同じアミノ酸配列を有する。これらの実施形態では、IL-15モジュールは、抗体モジュールの抗体重鎖(複数可)のC末端と融合していることが好ましい。さらに、抗体モジュールが2つの抗体重鎖を含む場合、1つまたは複数の追加的な抗原結合断片、特に、1つの追加的な抗原結合断片が抗体モジュールの抗体重鎖のそれぞれのC末端と融合していてよい。これらの追加的な抗原結合断片は同一であっても異なってもよいが、特に、同じアミノ酸配列を有する。これらの実施形態では、IL-15モジュールは、抗体モジュールの抗体軽鎖(複数可)のC末端と融合していることが好ましい。
【0081】
特定の実施形態では、追加的な抗原結合断片は、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含む。これらの可変領域は、互いに、例えばペプチドリンカーによって共有結合により付着していてよい。ある特定の実施形態では、追加的な抗原結合断片は、特に、N末端からC末端までの方向に、抗体重鎖可変領域、ペプチドリンカーおよび抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド鎖を含む。特に、追加的な抗原結合断片は、単鎖可変断片(scFv)であってよい。
【0082】
追加的な抗原結合部位は、任意の抗原、特に、腫瘍関連抗原または免疫細胞のチェックポイント抗原に特異的に結合し得る。そのような抗原の適切な例は、CD3、EGFR、HER2、PD-1、PD-L1、CD40、CEA、EpCAM、CD7、CD28、GITR、ICOS、OX40、4-1BB、CTLA-4、TFa、LeY、CD160、ガレクチン-3、およびガレクチン-1からなる群から選択することができる。
【0083】
特定の実施形態では、追加的な抗原結合断片は、CD3に特異的に結合する。特に、追加的な抗原結合断片は、CD3に特異的に結合する単鎖可変領域断片(scFv)である。追加的な抗原結合断片は、CD3のエピトープに特異的に結合する。特に、追加的な抗原結合断片は、CD3εに特異的に結合する。特定の実施形態では、追加的な抗原結合断片は、CD3εにコンフォメーション依存的に、特に、CD3δと複合体を形成した場合にのみ特異的に結合する。
【0084】
ある特定の実施形態では、CD3に特異的に結合する追加的な抗原結合断片は、配列番号23のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号24のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号25のアミノ酸配列を有するCDR-H3である相補性決定領域を含む少なくとも1つの重鎖可変領域を含む。一実施形態によると、追加的な抗原結合断片内に存在する重鎖可変領域(複数可)は、配列番号26のアミノ酸配列または前記配列の1つと少なくとも75%、特に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、追加的な抗原結合断片の重鎖可変領域は、(i)CDR-H1が配列番号23のアミノ酸配列を有し、CDR-H2が配列番号24のアミノ酸配列を有し、CDR-H3が配列番号25のアミノ酸配列を有する一群のCDRを含み、かつ、(ii)配列番号26のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0085】
CD3に特異的に結合する追加的な抗原結合断片は、配列番号27のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号28のアミノ酸配列を有するCDR-L2および配列番号29のアミノ酸配列を有するCDR-L3である相補性決定領域を含む少なくとも1つの軽鎖可変領域をさらに含み得る。一実施形態によると、追加的な抗原結合断片内に存在する軽鎖可変領域(複数可)は、配列番号30のアミノ酸配列または前記配列の1つと少なくとも75%、特に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、追加的な抗原結合断片の軽鎖可変領域は、(i)CDR-L1が配列番号27のアミノ酸配列を有し、CDR-L2が配列番号28のアミノ酸配列を有し、CDR-L3が配列番号29のアミノ酸配列を有する一群のCDRを含み、かつ(ii)配列番号30のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0086】
特定の好ましい実施形態では、CD3に特異的に結合する追加的な抗原結合断片は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を少なくとも1つ、特に、1つ、および、配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を少なくとも1つ、特に、1つ含む。
【0087】
ある特定の実施形態では、融合タンパク質構築物は、それとコンジュゲートした1つまたは複数のさらなる作用物質を含む。さらなる作用物質は、融合タンパク質構築物とのコンジュゲーションに適した任意の作用物質であってよい。融合タンパク質構築物中に1つよりも多くのさらなる作用物質が存在する場合、これらのさらなる作用物質は、同一であっても異なってもよいが、特に、全て同一である。さらなる作用物質と融合タンパク質構築物のコンジュゲーションは、当技術分野で公知の任意の方法を使用して実現することができる。さらなる作用物質を融合タンパク質構築物に、共有結合により、特に、融合または化学的カップリングによって付着させることもでき、非共有結合により付着させることもできる。ある特定の実施形態では、さらなる作用物質を融合タンパク質構築物に共有結合により、特にリンカー部分を介して付着させる。リンカー部分は、さらなる作用物質を融合タンパク質構築物に結合させるために適した任意の化学的実体であってよい。
【0088】
ある特定の実施形態では、さらなる作用物質は、タンパク質のポリペプチドである。このポリペプチドまたはタンパク質は、特に、抗体モジュールのポリペプチド鎖またはIL-15モジュールのポリペプチド鎖と融合することができる。ある特定の実施形態では、ポリペプチドまたはタンパク質であるさらなる作用物質を抗体モジュールの抗体軽鎖または抗体重鎖のC末端またはN末端と融合することができる。抗体モジュールが2つの抗体軽鎖を含む実施形態では、ポリペプチドまたはタンパク質であるさらなる作用物質を2つの抗体軽鎖のそれぞれのC末端またはN末端、特にC末端と融合することができる。抗体モジュールが2つの抗体重鎖を含む実施形態では、ポリペプチドまたはタンパク質であるさらなる作用物質を2つの抗体重鎖のそれぞれのC末端と融合することができる。ポリペプチドまたはタンパク質は同一であっても異なってもよいが、特に、同じアミノ酸配列を有する。そのようなポリペプチドまたはタンパク質であるさらなる作用物質の適切な例は、サイトカイン、ケモカイン、抗体モジュール、抗原結合断片、酵素、および相互作用ドメインからなる群から選択することができる。
【0089】
さらなる作用物質は、疾患、特にがんの治療、診断、予後判定および/またはモニタリングにおいて有用であることが好ましい。例えば、さらなる作用物質は、放射性核種、化学療法剤、検出可能な標識、毒素、細胞溶解性構成成分、免疫モジュレーター、免疫エフェクター、およびリポソームからなる群から選択することができる。
【0090】
融合タンパク質構築物のグリコシル化
抗MUC1抗体モジュールは、1つまたは複数の抗体重鎖内にCH2ドメインを含み得る。IgG型の天然ヒト抗体は、CH2ドメイン内にN-グリコシル化部位を含む。抗体モジュール内に存在するCH2ドメインは、N-グリコシル化部位を含んでもよく含まなくてもよい。
【0091】
ある特定の実施形態では、抗体モジュール内に存在するCH2ドメインは、N-グリコシル化部位を含まない。特に、抗体モジュールは、IMGT/Eu番号付け系に従って297位に対応する重鎖内の位置にアスパラギン残基を含まない。例えば、抗体モジュールは、重鎖内にAla297変異を含み得る。これらの実施形態では、融合タンパク質構築物は、Fcγ受容体への結合を介して、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および/または抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導する能力が強力に低下しているかまたはその能力を完全に欠くことが好ましい。能力の強力な低下は、この点においては、特に、CH2ドメイン内にN-グリコシル化部位を含み、かつ、ヒト細胞株におけるまたはCHO細胞株もしくはSP2/0細胞株における産生によって入手可能なもの、例えば、本明細書に記載のグリコシル化パターンなどの共通の哺乳動物グリコシル化パターンを有する、同じ融合タンパク質構築物と比較して10%もしくはそれ未満、特に、3%もしくはそれ未満、1%もしくはそれ未満または0.1%もしくはそれ未満までの活性の低下を指す。
【0092】
CH2ドメインにおけるN-グリコシル化の存在または非存在およびグリコシル化パターンを介して、融合タンパク質構築物によるT細胞およびNK細胞の活性化ならびに融合タンパク質構築物の細胞傷害を調節することができる。CH2ドメインにグリコシル化を伴わない場合であっても、融合タンパク質構築物のIL-15モジュールによって免疫細胞が腫瘍部位において活性化される。CH2グリコシル化を伴うと、免疫細胞活性化が増加し、また、フコシル化が低減したグリコシル化パターンにより、免疫細胞活性化がさらにいっそう顕著なものになる。
【0093】
代替の実施形態では、抗体モジュール内に存在するCH2ドメインは、N-グリコシル化部位を含む。このグリコシル化部位は、特に、IMGT/Eu番号付け系に従って重鎖のアミノ酸位297に対応するアミノ酸位にあり、アミノ酸配列モチーフAsn Xaa Ser/Thrを有し、Xaaはプロリン以外の任意のアミノ酸であってよい。Asn297におけるN結合グリコシル化は哺乳動物IgGにおいてならびに他の抗体のアイソタイプの相同領域において保存されている。必要に応じて追加的なアミノ酸が可変領域または他の配列修飾に存在し得るので、抗体のアミノ酸配列におけるこの保存されたグリコシル化部位の実際の位置は変動し得る。抗体モジュールに結合したグリカンは、二分岐の複合体型N結合炭水化物構造であることが好ましく、少なくとも以下の構造を含むことが好ましい:
Asn-GlcNAc-GlcNAc-Man-(Man-GlcNAc)2
(式中、Asnは抗体モジュールのポリペプチド部分のアスパラギン残基であり、GlcNAcはN-アセチルグルコサミンであり、Manはマンノースである)。末端GlcNAc残基はさらにガラクトース残基を有し得、これは必要に応じてシアル酸残基を有し得る。さらなるGlcNAc残基(バイセクト型GlcNAcと称される)をポリペプチドに最も近いManに結合させることができる。Asnに結合したGlcNAcにフコースを結合させることができる。
【0094】
融合タンパク質構築物は、抗体モジュールのCH2ドメインにおいて大量のコアフコースまたは少量のコアフコースを有するグリコシル化パターンを有し得る。CH2ドメインのフコシル化の量の減少により、融合タンパク質構築物のADCCを誘導する能力が増加する。ある特定の実施形態では、コアフコース残基を有するグリカンの相対量は、組成物中の抗体モジュールのCH2ドメインに結合したグリカンの総量の40%もしくはそれ未満、特に、30%もしくはそれ未満または20%もしくはそれ未満である。代替の実施形態では、コアフコース残基を有するグリカンの相対量は、組成物中の抗体モジュールのCH2ドメインに結合したグリカンの総量の少なくとも60%、特に、少なくとも65%または少なくとも70%である。
【0095】
抗MUC1抗体モジュールのCH2ドメイン内のグリコシル化部位の存在または非存在、および前記グリコシル化部位におけるグリカン構造内のフコースの存在または非存在を介して、融合タンパク質構築物の抗体モジュールのFc部分を介してADCCを誘導する能力および前記ADCC誘導の強度を調節することができる。T細胞およびNK細胞によって媒介される細胞傷害は腫瘍部位における前記免疫細胞の増殖および活性化によってすでに開始されている。これは、腫瘍細胞に結合し、融合タンパク質構築物を腫瘍部位に位置付ける抗MUC1抗体モジュール、ならびにT細胞およびNK細胞の増殖および活性化を誘導するIL-15モジュールによって実現される。T細胞およびNK細胞によって媒介される全体的な細胞傷害活性は、抗体モジュールのFc部分のグリコシル化によって増加させることができ、前記グリコシル化におけるフコシル化の量を減少させることによってさらに増加させることができる。特に、低フコシル化を伴うFcグリコシル化により、NK細胞によって媒介されるADCCがさらに増強される。ある特定の適用では、ADCC活性の微調整が重要である。したがって、ある特定の状況では、抗体モジュールのCH2ドメイン内にグリコシル化部位を有さない融合タンパク質構築物、抗体モジュールのCH2ドメイン内にグリコシル化部位を有し、フコシル化の量が多い融合タンパク質構築物、または抗体モジュールのCH2ドメイン内にグリコシル化部位を有し、フコシル化の量が少ない融合タンパク質構築物が最も有利であり得る。
【0096】
ある特定の実施形態では、IL-15モジュールがグリコシル化されている。特に、IL-15モジュールは、配列番号21のAsn79および/またはAsn112に対応するアミノ酸においてグリコシル化されていてよい。
【0097】
融合タンパク質構築物は、宿主細胞において組換えによって産生させることが好ましい。融合タンパク質構築物の産生のために使用される宿主細胞は、抗体産生のために使用することができる任意の宿主細胞であってよい。適切な宿主細胞は、特に、真核生物宿主細胞、特に、哺乳動物宿主細胞である。例示的な宿主細胞としては、Pichia pastoris細胞株などの酵母細胞、SF9細胞株およびSF21細胞株などの昆虫細胞、植物細胞、EB66アヒル細胞株などの鳥類細胞、CHO細胞株、NS0細胞株、SP2/0細胞株およびYB2/0細胞株などの齧歯類細胞、ならびにHEK293細胞株、PER.C6細胞株、CAP細胞株、CAP-T細胞株、AGE1.HN細胞株、Mutz-3細胞株およびKG1細胞株などのヒト細胞が挙げられる。
【0098】
ある特定の実施形態では、融合タンパク質構築物を、ヒト血液細胞株、特に、ヒト骨髄性白血病細胞株において組換えによって産生させる。融合タンパク質構築物の産生のために使用することができる好ましいヒト細胞株ならびに適切な産生手順は、WO2008/028686 A2に記載されている。特定の実施形態では、融合タンパク質構築物を、NM-H9D8、NM-H9D8-E6およびNM-H9D8-E6Q12からなる群から選択されるヒト骨髄性白血病細胞株において発現させることによって得る。これらの細胞株は、Glycotope GmbH、Robert-Roessle-Str.10、13125 Berlin(DE)によって、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)、Inhoffenstrasse 7B、38124 Braunschweig(DE)においてブタペスト条約の要件に従った受託番号DSM ACC2806(NM-H9D8;2006年9月15日に寄託)、DSM ACC2807(NM-H9D8-E6;2006年10月5日に寄託)およびDSM ACC2856(NM-H9D8-E6Q12;2007年8月8日に寄託)の下で寄託された。NM-H9D8細胞では、高度のシアリル化、高度のバイセクト型GlycNAc、高度のガラクトシル化および高度のフコシル化を有するグリコシル化パターンがもたらされる。NM-H9D8-E6細胞およびNM-H9D8-E6Q12細胞では、フコシル化の度合いが非常に低い以外はNM-H9D8細胞のものと同様のグリコシル化パターンがもたらされる。他の適切な細胞株としては、American Type Culture Collectionに存在するヒト骨髄性白血病細胞株であるK562(ATCC CCL-243)、ならびに上述のものに由来する細胞株が挙げられる。
【0099】
さらなる実施形態では、融合タンパク質構築物を、CHO細胞株、特に、ATCC番号CRL-9096の細胞株などのCHO dhfr-細胞株において組換えによって産生させる。
【0100】
核酸、発現カセット、ベクター、細胞株および組成物
さらなる態様では、本発明は、融合タンパク質構築物をコードする核酸を提供する。前記核酸の核酸配列は、融合タンパク質構築物をコードするのに適した任意のヌクレオチド配列を有し得る。しかし、核酸配列は、核酸を発現させる宿主細胞または生物体の特定のコドン使用、特に、ヒトコドン使用に少なくとも部分的に適合させたものであることが好ましい。核酸は、二本鎖または一本鎖DNAまたはRNA、好ましくはcDNAなどの二本鎖DNAまたはmRNAなどの一本鎖RNAであってよい。核酸は、1つの連続した核酸分子であってもよく、それぞれが融合タンパク質構築物の異なる部分をコードするいくつかの核酸分子で構成されていてもよい。
【0101】
融合タンパク質構築物が抗体モジュールの軽鎖および重鎖などの1つよりも多くの異なるアミノ酸の鎖で構成される場合、核酸は、例えば、別々のアミノ酸の鎖を生じさせるためにIRESエレメントなどの制御エレメントによって分離されていることが好ましい、それぞれが融合タンパク質構築物のアミノ酸の鎖の1つをコードするいくつかのコード領域を含有する単一の核酸分子であってもよく、または、核酸は、それぞれが融合タンパク質構築物のアミノ酸の鎖の1つをコードする1つまたは複数のコード領域を各核酸分子が含むいくつかの核酸分子で構成されていてもよい。融合タンパク質構築物をコードするコード領域に加えて、核酸は、例えば、他のタンパク質をコードし得る、コード領域(複数可)の転写および/または翻訳に影響を及ぼし得る、核酸の安定性または他の物理的もしくは化学的性質に影響を及ぼし得る、あるいは全く機能を有し得ない、さらなる核酸配列または他の改変も含み得る。
【0102】
さらなる態様では、本発明は、本発明による核酸および前記核酸と作用的に接続したプロモーターを含む発現カセットまたはベクターを提供する。さらに、発現カセットまたはベクターは、さらなるエレメント、特に、核酸の転写および/もしくは翻訳、発現カセットもしくはベクターの増幅および/もしくは再生、宿主細胞のゲノムへの発現カセットもしくはベクターの組込み、ならびに/または宿主細胞における発現カセットもしくはベクターのコピー数に影響を及ぼし、かつ/またはそれを制御することができるエレメントを含み得る。抗体を発現させるための適切な発現カセットおよびそれぞれの発現カセットを含むベクターは先行技術において周知であり、したがって、本明細書においてさらなる説明は必要ない。
【0103】
さらに、本発明は、本発明による核酸または本発明による発現カセットもしくはベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は任意の宿主細胞であってよい。宿主細胞は、単離された細胞であっても組織内に含まれる細胞であってもよい。宿主細胞は、培養細胞、特に、初代細胞または樹立細胞系の細胞、好ましくは腫瘍由来細胞であることが好ましい。宿主細胞は、E.coliなどの細菌細胞、Saccharomyces細胞、特に、S.cerevisiaeなどの酵母細胞、Sf9細胞などの昆虫細胞、または哺乳動物細胞、特に、腫瘍由来ヒト細胞などのヒト細胞、CHOなどのハムスター細胞、もしくは霊長類細胞であることが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、宿主細胞は、ヒト骨髄性白血病細胞に由来する。宿主細胞は、以下の細胞もしくは細胞株:K562、KG1、MUTZ-3またはそれらに由来する細胞もしくは細胞株、あるいは上述の細胞の少なくとも1つを含む細胞または細胞株の混合物から選択されることが好ましい。宿主細胞は、NM-H9D8、NM-H9D8-E6、NM H9D8-E6Q12、および前記宿主細胞のいずれか1つに由来する細胞もしくは細胞株、または上述の細胞の少なくとも1つを含む細胞もしくは細胞株の混合物からなる群から選択されることが好ましい。これらの細胞株およびそれらの性質は、PCT出願WO2008/028686 A2に詳しく記載されている。好ましい実施形態では、宿主細胞を、糖タンパク質、特に、特定のグリコシル化パターンを有する抗体の発現のために最適化する。本発明による核酸のコード領域のコドン使用ならびに/またはプロモーターおよび発現カセットもしくはベクターのさらなるエレメントは、使用される宿主細胞の型に適合する、より好ましくは、それに対して最適化されたものであることが好ましい。上記の宿主細胞または細胞株によって融合タンパク質構築物が産生されることが好ましい。
【0104】
別の態様では、本発明は、融合タンパク質構築物、核酸、発現カセットもしくはベクター、または宿主細胞を含む組成物を提供する。組成物は、これらの構成成分の1つよりも多くも含有し得る。さらに、組成物は、溶媒、希釈剤、および賦形剤からなる群から選択される1つまたは複数のさらなる構成成分を含み得る。組成物は、医薬組成物であることが好ましい。この実施形態では、組成物の構成成分は、全てが薬学的に許容されるものであることが好ましい。組成物は固体または流体組成物、特に、好ましくは水性の溶液、エマルションもしくは懸濁液または凍結乾燥粉末であり得る。
【0105】
医療における使用
融合タンパク質構築物は、特に、医療、特に、疾患、特に、本明細書に記載の疾患、好ましくはがん、感染症および免疫不全の治療、診断、予後判定および/またはモニタリングにおいて有用である。
【0106】
したがって、さらなる態様では、本発明は、医療に使用するための融合タンパク質構築物、核酸、発現カセットもしくはベクター、宿主細胞、または組成物を提供する。医療における使用は、例えば、がんなどの、異常な細胞成長に関連する疾患、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症または寄生虫感染症などの感染症、および、免疫不全などの、免疫活性の低下に関連する疾患などの疾患の処置、予後判定、診断および/またはモニタリングにおける使用であることが好ましい。好ましい実施形態では、疾患は、がんである。がんは、卵巣がん、トリプルネガティブ乳がんなどの乳がん、肺がんおよび膵がんからなる群から選択されることが好ましい。がんは、さらに、特に結腸がん、胃がん、肝がん、腎がん、膀胱がん、皮膚がん、子宮頸部がん、前立腺がん、胃腸がん、子宮体がん、甲状腺がんおよび血液がんから選択され得る。
【0107】
ある特定の実施形態では、ウイルス感染は、ヒト免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによって引き起こされるものである。ある特定の実施形態では、疾患は、MUC1を発現する細胞を含むまたはそれに関連する。例えば、処置されるがんは、MUC1陽性である、すなわち、MUC1を発現するがん細胞を含む。
【0108】
特定の実施形態では、融合タンパク質構築物を、別の治療剤、特に、別の抗がん剤と組み合わせて使用する。前記さらなる治療剤は、任意の公知の抗がん薬であってよい。融合タンパク質構築物と組み合わせることができる適切な抗がん治療剤は、化学療法剤、抗体、免疫賦活性剤、サイトカイン、ケモカイン、およびワクチンであり得る。さらに、融合タンパク質構築物を用いた治療を放射線療法、外科手術および/または漢方薬と組み合わせることができる。
【0109】
ある特定の実施形態では、融合タンパク質構築物は、がんの処置において以下の1つまたは複数と組み合わせて使用するためのものである:
(i)細胞療法、例えば、CAR-T、TCR、NK、またはCDに基づく細胞療法;
(ii)免疫活性化抗体、例えば、二重特異性TまたはNK細胞エンゲージャーまたは他の免疫サイトカイン;
(iii)チェックポイント抗体、例えば、アンタゴニストまたはアゴニストチェックポイント抗体、例えば、CD3に対する抗体、PD-1に対する抗体、PD-L1に対する抗体、CD40に対する抗体、CD7に対する抗体、CD28に対する抗体、GITRに対する抗体、ICOSに対する抗体、OX40に対する抗体、4-1BBに対する抗体、CTLA-4に対する抗体、CD160に対する抗体、ガレクチン-3に対する抗体、およびガレクチン-1に対する抗体;
(iv)ワクチン接種治療;
(v)化学療法;
(vi)これだけに限定されないが、EGFRに対する抗体、HER2に対する抗体、TFαに対する抗体、LeYに対する抗体、CEAに対する抗体およびEpCAMに対する抗体などのADCC媒介性モノクローナル抗体を含めた、腫瘍を標的とする抗体;
(vii)がん細胞の表面上のTA-MUC1を、例えばEGFRを阻害することによって上方制御する治療。
【0110】
特定の実施形態では、融合タンパク質構築物は、がんの処置においてMUC1およびCD3を標的とする二重特異性抗体、特に、MUC1に特異的に結合する抗体モジュールとCD3に特異的に結合する抗原結合断片とを含む二重特異性抗体と組み合わせて使用するためのものである。二重特異性抗体のMUC1に特異的に結合する抗体モジュールは、特に、融合タンパク質構築物に関して本明細書に記載されている通りであり、二重特異性抗体のCD3に特異的に結合する抗原結合断片は、特に、CD3に特異的に結合する追加的な抗原結合断片に関して本明細書に記載されている通りである。適切な二重特異性抗体は、例えば、WO2018/178047(PCT/EP2018/057721)に記載されている。
【0111】
さらなる実施形態では、融合タンパク質構築物は、がんの処置においてPD-L1に対する抗体と組み合わせて使用するためのものである。特に、融合タンパク質構築物とPD-L1に対する抗体の組合せは腫瘍細胞殺滅および/または免疫細胞活性化、特に、T細胞活性化において相乗効果を示す。例示的なPD-L1に対する抗体は、例えば、WO2018/178122(PCT/EP2018/057844)に記載されている。
【0112】
さらなる実施形態では、融合タンパク質構築物は、がんの処置においてEGFRに対する抗体と組み合わせて使用するためのものである。特に、融合タンパク質構築物とEGFRに対する抗体の組合せは、腫瘍細胞殺滅において相乗効果を示す。例示的なEGFRに対する抗体は、トムゾツキシマブおよびセツキシマブである。
【0113】
さらなる実施形態では、融合タンパク質構築物は、がんの処置においてCD40に対する抗体と組み合わせて使用するためのものである。抗CD40抗体を用いた処置により、患者の免疫細胞におけるIL-15受容体サブユニットの発現が上方制御される。それにより、抗CD40抗体を用いて処置された患者における融合タンパク質構築物を用いた免疫細胞活性化および腫瘍処置が増強される。例示的なCD40に対する抗体は、例えば、WO2018/178046(PCT/EP2018/057717)に記載されている。
特定の実施形態
【0114】
以下に、本発明の特定の実施形態を記載する。
【0115】
実施形態1.
(i)MUC1に特異的に結合する抗体モジュール(抗MUC1抗体モジュール)と、
(ii)IL-15モジュールと
を含む融合タンパク質構築物。
【0116】
実施形態2.抗MUC1抗体モジュールが、それぞれがVHドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む2つの重鎖を含む、実施形態1に記載の融合タンパク質構築物。
【0117】
実施形態3.抗MUC1抗体モジュールが、それぞれがVLドメインおよびCLドメインを含む2つの軽鎖を含む、実施形態1または2に記載の融合タンパク質構築物。
【0118】
実施形態4.抗MUC1抗体モジュールが、IgG型抗体モジュール、特に、IgG1型抗体モジュールである、実施形態1から3までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0119】
実施形態5.抗MUC1抗体モジュールが、κ鎖を有する、実施形態1から4までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0120】
実施形態6.抗MUC1抗体モジュールが、TA-MUC1エピトープに特異的に結合する、実施形態1から5までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0121】
実施形態7.抗MUC1抗体モジュールが、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR-H3、または配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR-H3を有する一群の重鎖CDR配列を含む、実施形態1から6までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0122】
実施形態8.抗MUC1抗体モジュールが、配列番号7、8および9のいずれか1つと少なくとも80%同一である抗体重鎖可変領域配列を含む、実施形態1から7までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0123】
実施形態9.抗MUC1抗体モジュールが、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR-H3を有する一群の重鎖CDR配列を含む、実施形態1から6までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0124】
実施形態10.抗MUC1抗体モジュールが、配列番号9と少なくとも80%同一である抗体重鎖可変領域配列を含む、実施形態1から6までおよび9のいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0125】
実施形態11.抗MUC1抗体モジュールが、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号33のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR-H3を有する一群の重鎖CDR配列を含む、実施形態1から6までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0126】
実施形態12.抗MUC1抗体モジュールが、配列番号34と少なくとも80%同一である抗体重鎖可変領域配列を含む、実施形態1から6までおよび11のいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0127】
実施形態13.抗MUC1抗体モジュールが、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR-L2および配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-L3を有する一群の軽鎖CDR配列を含む、実施形態1から12までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0128】
実施形態14.抗MUC1抗体モジュールが、配列番号18と少なくとも80%同一である抗体軽鎖可変領域配列を含む、実施形態1から13までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0129】
実施形態15.IL-15モジュールが、IL-15またはその断片、特に、ヒトIL-15またはその断片を含む、実施形態1から14までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0130】
実施形態16.IL-15モジュールが、全長ヒトIL-15を含む、実施形態15に記載の融合タンパク質構築物。
【0131】
実施形態17.ヒトIL-15が、配列番号21のアミノ酸配列を有する、実施形態15または16に記載の融合タンパク質構築物。
【0132】
実施形態18.IL-15モジュールが、受容体結合を低下させる変異を含む、実施形態1から17までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0133】
実施形態19.受容体結合を低下させる変異が、配列番号21のIle67に対応する位置におけるイソロイシンのグルタミン酸への置換である、実施形態18に記載の融合タンパク質構築物。
【0134】
実施形態20.IL-15モジュールが、IL-2受容体β鎖、共通γ鎖およびIL-15受容体α鎖を含むインターロイキン受容体に特異的に結合する、実施形態1から19までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0135】
実施形態21.IL-15モジュールが、ヒトIL-2受容体β鎖、ヒト共通γ鎖およびヒトIL-15受容体α鎖を含むインターロイキン受容体に特異的に結合する、実施形態1から20までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0136】
実施形態22.IL-15モジュールが、IL-15受容体α鎖またはその断片、特に、ヒトIL-15受容体α鎖またはその断片をさらに含む、実施形態15から21までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0137】
実施形態23.IL-15受容体α鎖の断片が、ヒトIL-15受容体α鎖の細胞外ドメインまたはその一部である、実施形態22に記載の融合タンパク質構築物。
【0138】
実施形態24.IL-15受容体α鎖の断片が、ヒトIL-15受容体α鎖のsushiドメインまたはその一部である、実施形態22に記載の融合タンパク質構築物。
【0139】
実施形態25.IL-15受容体α鎖またはその断片が、配列番号22の配列を含む、実施形態22から24までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0140】
実施形態26.IL-15受容体α鎖またはその断片が、ヒトIL-15に特異的に結合する、実施形態22から25までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0141】
実施形態27.IL-15受容体α鎖またはその断片が、ヒトIL-15またはその断片のN末端と融合している、実施形態22から26までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0142】
実施形態28.IL-15受容体α鎖またはその断片が、ヒトIL-15またはその断片とペプチドリンカーを介して融合している、実施形態22から27までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0143】
実施形態29.ペプチドリンカーが、配列番号31のアミノ酸配列、特に、配列番号31のアミノ酸配列の2つまたはそれよりも多く、特に、3つまたは4つのリピートを含む、実施形態28に記載の融合タンパク質構築物。
【0144】
実施形態30.ペプチドリンカーが、配列番号31のアミノ酸配列の2つ、3つまたは4つのリピートからなる、実施形態29に記載の融合タンパク質構築物。
【0145】
実施形態31.IL-15モジュールが、配列番号21のアミノ酸配列を有する、実施形態1から14までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0146】
実施形態32.IL-15モジュールが、配列番号22のアミノ酸配列および配列番号21のアミノ酸配列を含む、実施形態1から14までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0147】
実施形態33.配列番号22のアミノ酸配列が、配列番号21のアミノ酸配列のN末端である、実施形態32に記載の融合タンパク質構築物。
【0148】
実施形態34.IL-15モジュールが、N末端からC末端まで、配列番号22のアミノ酸配列、その後、配列番号31のアミノ酸配列の2つ、3つまたは4つのリピート、その後、配列番号21のアミノ酸配列を有する、実施形態1から14までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0149】
実施形態35.IL-15モジュールが、変異Ile67Gluを含む配列番号21のアミノ酸配列を有する、実施形態1から14までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0150】
実施形態36.IL-15モジュールが、抗体モジュールのC末端と融合している、実施形態1から35までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0151】
実施形態37.IL-15モジュールが、IL-15に結合することができるIL-15受容体α鎖およびその断片、特に、IL-15受容体α鎖の細胞外ドメインおよびIL-15受容体α鎖のsushiドメインおよびその断片を含まない、実施形態1から21までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0152】
実施形態38.融合タンパク質構築物が、それぞれが抗体モジュールの異なる重鎖のC末端と融合した2つのIL-15モジュール含む、実施形態1から37までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0153】
実施形態39.抗体モジュールの重鎖が、C末端リシン残基を含まない、実施形態38に記載の融合タンパク質構築物。
【0154】
実施形態40.抗体モジュールの重鎖が、2つのC末端残基、グリシンおよびリシンを含まない、実施形態38に記載の融合タンパク質構築物。
【0155】
実施形態41.抗体モジュールの重鎖が、3つのC末端残基、プロリン、グリシンおよびリシンを含まない、実施形態38に記載の融合タンパク質構築物。
【0156】
実施形態42.存在する場合、抗体モジュールの重鎖の3つのC末端残基、プロリン、グリシンおよびリシンの1つまたは複数が、特に、ロイシンまたはアラニンまたはセリンによって置換されている、実施形態38から41までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0157】
実施形態43.融合タンパク質構築物が、それぞれが抗体モジュールの異なる軽鎖のC末端と融合した2つのIL-15モジュールを含む、実施形態1から42までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0158】
実施形態44.融合タンパク質構築物が、それぞれが抗体モジュールの異なる軽鎖のN末端と融合した2つのIL-15モジュールを含む、実施形態1から42までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0159】
実施形態45.融合タンパク質構築物が、抗体モジュールとIL-15モジュールとの間にペプチドリンカーを含む、実施形態1から44までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0160】
実施形態46.ペプチドリンカーが、配列番号31のアミノ酸配列、特に、配列番号31のアミノ酸配列の2つまたはそれよりも多く、特に、2つ、3つまたは4つのリピートを含む、実施形態45に記載の融合タンパク質構築物。
【0161】
実施形態47.ペプチドリンカーが、配列番号31のアミノ酸配列の2つ、3つまたは4つのリピートからなる、実施形態46に記載の融合タンパク質構築物。
【0162】
実施形態48.ペプチドリンカーが、配列番号32のアミノ酸配列、特に、配列番号32のアミノ酸配列の2つまたはそれよりも多く、特に、3つまたは6つのリピートを含む、実施形態45に記載の融合タンパク質構築物。
【0163】
実施形態49.ペプチドリンカーが、配列番号32のアミノ酸配列の3つまたは6つのリピートからなる、実施形態48に記載の融合タンパク質構築物。
【0164】
実施形態50.ペプチドリンカーが、追加的なN末端プロリン、アスパラギン酸またはアラニン残基をさらに含む、実施形態45から49までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0165】
実施形態51.融合タンパク質構築物が、抗体モジュールとIL-15モジュールとの間にペプチドリンカーを含まない、実施形態1から44までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0166】
実施形態52.抗体モジュールが、CH2ドメイン内にN-グリコシル化部位を含まない、実施形態1から51までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0167】
実施形態53.抗体モジュールが、抗体重鎖のCH2ドメイン内にN-グリコシル化部位を含む、実施形態1から51までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0168】
実施形態54.抗体モジュールが、抗体重鎖のCH2ドメインにおいて、コアフコース残基を有するグリカンの相対量が組成物中の抗体モジュールのCH2ドメインに結合したグリカンの総量の少なくとも60%であるグリコシル化パターンを有する、実施形態53に記載の融合タンパク質構築物。
【0169】
実施形態55.抗体モジュールが、抗体重鎖のCH2ドメインにおいて、コアフコース残基を有するグリカンの相対量が組成物中の抗体モジュールのCH2ドメインに結合したグリカンの総量の40%またはそれ未満であるグリコシル化パターンを有する、実施形態53に記載の融合タンパク質構築物。
【0170】
実施形態56.それとコンジュゲートしたさらなる作用物質を含む、実施形態1から55までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0171】
実施形態57.さらなる作用物質が、抗体モジュールのポリペプチド鎖またはIL-15モジュールのポリペプチド鎖と融合したポリペプチドまたはタンパク質である、実施形態56に記載の融合タンパク質構築物。
【0172】
実施形態58.抗体モジュールが、2つの抗体重鎖および2つの抗体軽鎖を含み、IL-15モジュールが各抗体軽鎖のC末端と融合しており、ポリペプチドまたはタンパク質であるさらなる作用物質が各抗体重鎖のC末端と融合している、実施形態57に記載の融合タンパク質構築物。
【0173】
実施形態59.抗体モジュールが、2つの抗体重鎖および2つの抗体軽鎖を含み、IL-15モジュールが各抗体重鎖のC末端と融合しており、ポリペプチドまたはタンパク質であるさらなる作用物質が、各抗体軽鎖のC末端と融合している、実施形態57に記載の融合タンパク質構築物。
【0174】
実施形態60.さらなる作用物質が、サイトカイン、ケモカイン、抗体モジュール、抗原結合断片、酵素および結合ドメインからなる群から選択される、実施形態56から59までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0175】
実施形態61.実施形態1から60までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物をコードする核酸。
【0176】
実施形態62.実施形態61に記載の核酸および前記核酸と作用的に接続したプロモーターを含む発現カセットまたはベクター。
【0177】
実施形態63.実施形態61に記載の核酸または実施形態62に記載の発現カセットもしくはベクターを含む宿主細胞。
【0178】
実施形態64.実施形態1から60までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物ならびに溶媒、希釈剤、および賦形剤からなる群から選択される1つまたは複数のさらなる構成成分を含む医薬組成物。
【0179】
実施形態65.医療に使用するための、実施形態1から60までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物または実施形態64に記載の医薬組成物。
【0180】
実施形態66.がんなどの、異常な細胞成長に関連する疾患;細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症または寄生虫感染症などの感染症;および、免疫不全などの、免疫活性の低下に関連する疾患の処置、予後判定、診断および/またはモニタリングにおいて使用するための、実施形態1から60までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物または実施形態58に記載の医薬組成物。
【0181】
実施形態67.がんの処置において使用するための、実施形態66に記載の融合タンパク質構築物または医薬組成物であって、がんが、乳がん、結腸がん、胃がん、肝がん、膵がん、腎がん、血液がん、肺がん、子宮内膜がん、甲状腺がんおよび卵巣がんからなる群から選択される、実施形態66に記載の融合タンパク質構築物または医薬組成物。
【0182】
実施形態68.感染症の処置において使用するための、実施形態66に記載の融合タンパク質構築物または医薬組成物であって、感染症が、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症および寄生虫感染症からなる群から選択される、実施形態66に記載の融合タンパク質構築物または医薬組成物。
【0183】
実施形態69.
(i)抗MUC1抗体モジュールであって、2つの抗体重鎖および2つの抗体軽鎖を含み、各重鎖がVHドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、各軽鎖がVLドメインおよびCLドメインを含む、抗体モジュールと、
(ii)それぞれがヒトIL-15を含む2つのIL-15モジュールと
を含む融合タンパク質構築物。
【0184】
実施形態70.抗体重鎖がそれぞれ、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号33のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR-H3を有する一群の重鎖CDR配列を含む、実施形態69に記載の融合タンパク質構築物。
【0185】
実施形態71.抗MUC1抗体モジュールの各VHドメインが、配列番号34と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態70に記載の融合タンパク質構築物。
【0186】
実施形態72.配列番号33の8位および配列番号34の57位のアミノ酸残基が、アスパラギン以外の任意のアミノ酸残基、特に、グルタミンまたはアラニンである、実施形態70または71に記載の融合タンパク質構築物。
【0187】
実施形態73.抗体重鎖がそれぞれ、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR-H3を有する一群の重鎖CDR配列を含む、実施形態69に記載の融合タンパク質構築物。
【0188】
実施形態74.抗MUC1抗体モジュールの各VHドメインが、配列番号8または9と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態73に記載の融合タンパク質構築物。
【0189】
実施形態75.抗体軽鎖がそれぞれ、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR-L2および配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-L3を有する一群の軽鎖CDR配列を含む、実施形態70から74までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0190】
実施形態76.抗MUC1抗体モジュールの各VLドメインが、配列番号17または18、特に、18と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態75に記載の融合タンパク質構築物。
【0191】
実施形態77.抗体重鎖がそれぞれ、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR-H3を有する一群の重鎖CDR配列を含む、実施形態69に記載の融合タンパク質構築物。
【0192】
実施形態78.抗MUC1抗体モジュールの各VHドメインが、配列番号7と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態77に記載の融合タンパク質構築物。
【0193】
実施形態79.抗体軽鎖がそれぞれ、配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号13のアミノ酸配列を有するCDR-L2および配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR-L3を有する一群の軽鎖CDR配列を含む、実施形態77または78に記載の融合タンパク質構築物。
【0194】
実施形態80.抗MUC1抗体モジュールの各VLドメインが、配列番号16と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態79に記載の融合タンパク質構築物。
【0195】
実施形態81.抗MUC1抗体モジュールの各VHドメインが、配列番号9と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列、ならびに配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR-H3を有する一群の重鎖CDR配列を含む、実施形態69に記載の融合タンパク質構築物。
【0196】
実施形態82.抗MUC1抗体モジュールの各VHドメインが、配列番号9と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列、ならびに配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR-H2および配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR-H3を有する一群の重鎖CDR配列を含み、抗体分子が、配列番号9の57位のアミノ酸残基に対応する配列番号3の8位のアミノ酸残基がAsn以外の任意の他のアミノ酸残基、特にGlnまたはAla、特にGlnによって置換されているという変異を含む、実施形態69に記載の融合タンパク質構築物。
【0197】
実施形態83.抗MUC1抗体モジュールの各VLドメインが、配列番号18と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列、ならびに配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR-L2および配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-L3を有する一群の軽鎖CDR配列を含む、実施形態81または82に記載の融合タンパク質構築物。
【0198】
実施形態84.IL-15モジュールが、配列番号21と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態69から83までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0199】
実施形態85.IL-15モジュールが、配列番号22と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列をさらに含む、実施形態84に記載の融合タンパク質構築物。
【0200】
実施形態86.配列番号22と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列のC末端と、配列番号21と少なくとも80%同一である、特に、100%同一であるアミノ酸配列のN末端との間に、アミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の2つ、3つまたは4つのリピートを含むペプチドリンカーを含む、実施形態85に記載の融合タンパク質構築物。
【0201】
実施形態87.IL-15モジュールが、IL-15に結合することができるIL-15受容体α鎖およびその断片、特に、IL-15受容体α鎖の細胞外ドメインおよびIL-15受容体α鎖のsushiドメインおよびその断片を含まない、実施形態69から84までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0202】
実施形態88.IL-15モジュールと抗体モジュールとの間にペプチドリンカーが存在する、実施形態69から87までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0203】
実施形態89.IL-15モジュールが、抗体モジュールの重鎖のC末端と融合している、実施形態69から88までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0204】
実施形態90.抗体モジュールの重鎖のC末端とIL-15モジュールのN末端との間にアミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の4つのリピートを含むペプチドリンカーを含む、実施形態89に記載の融合タンパク質構築物。
【0205】
実施形態91.抗体モジュールの重鎖のC末端とIL-15モジュールのN末端との間にアミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の3つのリピートを含むペプチドリンカーを含む、実施形態89に記載の融合タンパク質構築物。
【0206】
実施形態92.抗体モジュールの重鎖のC末端とIL-15モジュールのN末端との間にアミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の2つのリピートを含むペプチドリンカーを含む、実施形態89に記載の融合タンパク質構築物。
【0207】
実施形態93.抗体モジュールの重鎖のC末端とIL-15モジュールのN末端との間にアミノ酸配列PAPAP(配列番号32)の3つのリピートを含むペプチドリンカーを含む、実施形態89に記載の融合タンパク質構築物。
【0208】
実施形態94.抗体モジュールの重鎖のC末端とIL-15モジュールのN末端との間にアミノ酸配列PAPAP(配列番号32)の6つのリピートを含むペプチドリンカーを含む、実施形態89に記載の融合タンパク質構築物。
【0209】
実施形態95.ペプチドリンカーが、追加的なN末端プロリン、アスパラギン酸またはアラニン残基をさらに含む、実施形態90から94までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0210】
実施形態96.抗体モジュールの重鎖が、C末端リシン残基を含まない、実施形態89から95までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0211】
実施形態97.抗体モジュールの重鎖が、2つのC末端残基、グリシンおよびリシンを含まない、実施形態89から95までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0212】
実施形態98.抗体モジュールの重鎖が、3つのC末端残基、プロリン、グリシンおよびリシンを含まない、実施形態89から95までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0213】
実施形態99.存在する場合、抗体モジュールの重鎖の3つのC末端残基、プロリン、グリシンおよびリシンの1つまたは複数が別のアミノ酸残基、特に、アラニンまたはロイシンで置換されている、実施形態89から98までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0214】
実施形態100.IL-15モジュールが抗体モジュールの軽鎖のC末端と融合している、実施形態69から88までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0215】
実施形態101.抗体モジュールの軽鎖のC末端とIL-15モジュールのN末端との間にアミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の2つ、3つまたは4つのリピートを含むペプチドリンカーを含む、実施形態100に記載の融合タンパク質構築物。
【0216】
実施形態102.抗体モジュールの軽鎖のC末端とIL-15モジュールのN末端との間にアミノ酸配列PAPAP(配列番号32)の3つまたは6つのリピートを含むペプチドリンカーを含む、実施形態100に記載の融合タンパク質構築物。
【0217】
実施形態103.IL-15モジュールが抗体モジュールの軽鎖のN末端と融合している、実施形態69から88までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0218】
実施形態104.抗体モジュールの軽鎖のN末端とIL-15モジュールのC末端との間にアミノ酸配列GGGGS(配列番号31)の2つ、3つまたは4つのリピートを含むペプチドリンカーを含む、実施形態103に記載の融合タンパク質構築物。
【0219】
実施形態105.各IL-15モジュールが、ヒトIL-15を含み、N末端がペプチドリンカーを介して異なる重鎖のC末端と融合している、実施形態69から99までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0220】
実施形態106.各IL-15モジュールが、ヒトIL-15を含み、N末端がペプチドリンカーを介して異なる軽鎖のC末端と融合している、実施形態69から88までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0221】
実施形態107.各IL-15モジュールが、ヒトIL-15を含み、C末端がペプチドリンカーを介して異なる軽鎖のN末端と融合している、実施形態69から88までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0222】
実施形態108.各IL-15モジュールが、ヒトIL-15を含み、N末端がペプチドリンカーを介して異なる重鎖のC末端と融合しており、重鎖が、C末端リシン残基を含まない、実施形態69から99までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0223】
実施形態109.各IL-15モジュールが、ヒトIL-15を含み、N末端が異なる重鎖のC末端と直接融合しており、重鎖が、C末端リシン残基を含まない、実施形態69から87までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0224】
実施形態110.IL-15モジュールが、ヒトIL-15からなる、実施形態69から84までおよび87から109までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0225】
実施形態111.ヒトIL-15が、配列番号21のアミノ酸配列を有する、実施形態110に記載の融合タンパク質構築物。
【0226】
実施形態112.抗体モジュールが、各抗体重鎖のCH2ドメイン内にN-グリコシル化部位を含まない、実施形態69から111までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0227】
実施形態113.抗体モジュールが、IMGT/Eu番号付け系に従って297位に対応する重鎖内の位置にアスパラギン残基を含まない、特に、重鎖にAla297変異を含む、実施形態112に記載の融合タンパク質構築物。
【0228】
実施形態114.抗体モジュールが、各抗体重鎖のCH2ドメイン内にN-グリコシル化部位を含む、実施形態69から111までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0229】
実施形態115.抗体モジュールが、抗体重鎖のCH2ドメインにおいて、グリコシル化パターンを有し、コアフコース残基を有するグリカンの相対量が、融合タンパク質構築物の組成物中の抗体モジュールのCH2ドメインに結合したグリカンの総量の少なくとも60%、特に、少なくとも65%または少なくとも70%である、実施形態114に記載の融合タンパク質構築物。
【0230】
実施形態116.抗体モジュールが、抗体重鎖のCH2ドメインにおいて、グリコシル化パターンを有し、コアフコース残基を有するグリカンの相対量が、融合タンパク質構築物の組成物中の抗体モジュールのCH2ドメインに結合したグリカンの総量の40%もしくはそれ未満、特に、30%もしくはそれ未満または20%もしくはそれ未満である、実施形態114に記載の融合タンパク質構築物。
【0231】
実施形態117.がんなどの、異常な細胞成長に関連する疾患、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症または寄生虫感染症などの感染症および免疫不全の処置における使用のための、実施形態69から116までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0232】
実施形態118.卵巣がん、トリプルネガティブ乳がんなどの乳がん、肺がんまたは膵がんの処置における使用のための、実施形態69から116までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0233】
実施形態119.がんの処置においてMUC1およびCD3を標的とする二重特異性抗体と組み合わせて使用するための、実施形態1から60までおよび69から116までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0234】
実施形態120.がんの処置においてPD-L1に対する抗体と組み合わせて使用するための、実施形態1から60までおよび69から116までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0235】
実施形態121.がんの処置においてトムゾツキシマブまたはセツキシマブなどのEGFRに対する抗体と組み合わせて使用するための、実施形態1から60までおよび69から116までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
【0236】
実施形態122.がんの処置においてCD40に対する抗体と組み合わせて使用するための、実施形態1から60までおよび69から116までのいずれか1つに記載の融合タンパク質構築物。
特定の態様では、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
(i)MUC1に特異的に結合する抗体モジュールと、
(ii)IL-15モジュールと
を含む融合タンパク質構築物。
(項目2)
前記抗体モジュールが、以下の特性
(a)重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む;
(c)2つの抗体重鎖および2つの抗体軽鎖を含む;
(d)IgG型抗体モジュール、特に、IgG1型抗体モジュールである;
(e)TA-MUC1エピトープに特異的に結合する;
(f)配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR-H2、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR-H3、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR-L2および配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-L3を有する一群のCDR配列を含む;
(g)配列番号1のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号33のアミノ酸配列を有するCDR-H2、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR-H3、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR-L2および配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-L3を有する一群のCDR配列を含む;
(h)配列番号9もしくは34のアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を少なくとも1つ、特に2つ、および配列番号18のアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を少なくとも1つ、特に2つ含む
の1つまたは複数を有する、項目1に記載の融合タンパク質構築物。
(項目3)
前記IL-15モジュールが、ヒトIL-15またはその断片を含む、項目1または2に記載の融合タンパク質構築物。
(項目4)
前記ヒトIL-15またはその断片が、以下の特性
(a)IL-2受容体β鎖、共通γ鎖およびIL-15受容体α鎖を含むインターロイキン受容体に特異的に結合する;
(b)配列番号21の配列を含む;
(c)I67Eなどの、受容体結合を低下させる変異を含む
の1つまたは複数を有する、項目3に記載の融合タンパク質構築物。
(項目5)
前記IL-15モジュールが、ヒトIL-15に特異的に結合するヒトIL-15受容体α鎖またはその断片をさらに含む、項目3または4に記載の融合タンパク質構築物。
(項目6)
前記IL-15モジュールが、IL-15に特異的に結合するIL-15受容体α鎖もその断片も含まない、項目1から4までのいずれか一項に記載の融合タンパク質構築物。
(項目7)
前記抗体モジュールが、前記抗体重鎖内の任意のCH2ドメイン内にN-グリコシル化部位を含む、項目1から6までのいずれか一項に記載の融合タンパク質構築物。
(項目8)
(i)2つの抗体重鎖および2つの抗体軽鎖を含む1つの抗体モジュールと、
(ii)2つのIL-15モジュールであって、一方のIL-15モジュールが、各抗体重鎖のC末端にペプチドリンカーを介して融合している、2つのIL-15モジュールと
を含む、項目1から7までのいずれか一項に記載の融合タンパク質構築物。
(項目9)
(i)2つの抗体重鎖および2つの抗体軽鎖を含む1つの抗体モジュールと、
(ii)2つのIL-15モジュールであって、一方のIL-15モジュールが、各抗体軽鎖のC末端にペプチドリンカーを介して融合している、2つのIL-15モジュールと
を含む、項目1から7までのいずれか一項に記載の融合タンパク質構築物。
(項目10)
それとコンジュゲートしたさらなる作用物質を含む、項目1から9までのいずれか一項に記載の融合タンパク質構築物。
(項目11)
項目1から10までのいずれか一項に記載の融合タンパク質構築物をコードする核酸。
(項目12)
項目11に記載の核酸および前記核酸と作用的に接続したプロモーターを含む発現カセットまたはベクター。
(項目13)
項目11に記載の核酸または項目12に記載の発現カセットもしくはベクターを含む宿主細胞。
(項目14)
項目1から10までのいずれか一項に記載の融合タンパク質構築物、ならびに溶媒、希釈剤、および賦形剤からなる群から選択される1つまたは複数のさらなる構成成分を含む医薬組成物。
(項目15)
医療に使用するための、項目1から10までのいずれか一項に記載の融合タンパク質構築物または項目14に記載の医薬組成物。
(項目16)
がんなどの、異常な細胞成長に関連する疾患、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症または寄生虫感染症などの感染症、および、免疫不全などの、免疫活性の低下に関連する疾患の処置、予後判定、診断および/またはモニタリングにおいて使用するための、項目1から10までのいずれか一項に記載の融合タンパク質構築物または項目14に記載の医薬組成物。
(項目17)
前記がんが、乳がん、結腸がん、胃がん、肝がん、膵がん、腎がん、血液がん、肺がん、子宮内膜がん、甲状腺がんおよび卵巣がんからなる群から選択される、項目16に記載の、がんの処置、予後判定、診断および/またはモニタリングにおいて使用するための融合タンパク質構築物または医薬組成物。
(項目18)
前記融合タンパク質構築物が、さらなる作用物質と組み合わせて使用される、項目15から17までのいずれか一項に記載の、医療に使用するための融合タンパク質構築物または医薬組成物。
(項目19)
前記さらなる作用物質が、MUC1およびCD3を標的とする二重特異性抗体、PD-L1に対する抗体、EGFRに対する抗体、ならびにCD40に対する抗体からなる群から選択される、項目18に記載の、医療に使用するための融合タンパク質構築物または医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【
図1】
図1は、抗MUC1抗体(αMUC1)の重鎖のC末端または軽鎖のC末端もしくはN末端に結合させた、野生型IL-15(IL-15wt)、受容体結合を低下させる変異を有するIL-15(IL-15mut)またはIL-15Rα sushiドメインとIL-15の組合せ(IL-15sushi)を含む、種々の融合タンパク質構築物を示す図である。
【0238】
【
図2】
図2は、ELISAによって分析される腫瘍特異性の評価基準として、グリコシル化されたMUC1ペプチドおよびグリコシル化されていないMUC1ペプチドへのPM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtの抗原結合特性を例示するグラフである。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)を対照として使用した。
【0239】
【
図3】
図3は、フローサイトメトリーによって分析された、TA-MUC1を発現する腫瘍細胞株T-47DへのPM-IL-15免疫サイトカインの結合を示すグラフである。αMUC1-IL-15構築物を、標的細胞に結合しない抗体を伴う同様の融合構築物(MOPC-IL-15wt/sushi)と比較した。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)を参照として使用した。
【0240】
【
図4】
図4は、フローサイトメトリーによって分析された、PANC-1における腫瘍細胞により発現されたTA-MUC1へのPM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtの結合を示すグラフである。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)および無関係のヒトIgG1をそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。
【0241】
【
図5】
図5は、PM-IL-15免疫サイトカインのIL-15受容体ドメインIL-15Rα(A)およびIL-2/IL-15Rβ(B)への結合を示すグラフである。結合をELISAによって分析した。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)を対照として使用した。
【0242】
【
図6】
図6は、ELISAによって分析された、PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtのIL15受容体サブユニットIL15RαおよびIL15Rβへの結合を示すグラフである。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)を対照として使用した。
【0243】
【
図7】
図7は、競合Alphascreenアッセイによって分析された、機能性Fc部分を有する、および有さないPM-IL-15免疫サイトカインのFcガンマ受容体IIIaへの結合を示すグラフである。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)を対照として使用した。
【0244】
【
図8】
図8は、PBMCの存在下でのTA-MUC1陰性ジャーカット細胞株に対するPM-IL-15免疫サイトカインによる天然の細胞傷害の誘導を示すグラフである。5時間後に細胞傷害をユウロピウム放出アッセイによって分析した。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)を対照として使用した。
【0245】
【
図9】
図9は、融合タンパク質構築物によって開始された標的細胞に対する免疫細胞媒介性抗体媒介性細胞傷害(ADCC)を示すグラフである。NK細胞およびT細胞を含有するPBMCを、MUC1
+T47D標的細胞の存在下で、異なるαMUC1-IL-15構築物と一緒にインキュベートした。融合タンパク質構築物の濃度に応じた標的細胞の特異的溶解を決定した。IL-15を伴わないαMUC1を対照として使用した。
【0246】
【
図10】
図10は、融合タンパク質構築物によって開始された標的細胞に対する免疫細胞媒介性ADCCを示すグラフである。NK細胞およびT細胞を含有するPBMCを、MUC1
+Ovcar-3標的細胞の存在下で、異なるαMUC1-IL-15構築物と一緒にインキュベートした。融合タンパク質構築物の濃度に応じた標的細胞の特異的溶解を決定した。αMUC1-IL-15構築物を、等価の標的とされない対照構築物(MOPC-IL-15wt/sushi)と比較した。IL-15を伴わないαMUC1を対照として使用した。
【0247】
【
図11】
図11は、PBMCの存在下での、TA-MUC1陽性MCF-7乳がん細胞に対するPM-IL-15免疫サイトカインによるADCCの誘導を示すグラフである。細胞傷害を24時間後にLDH放出アッセイによって分析した。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)を対照として使用した。
【0248】
【
図12】
図12は、PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtによるTA-MUC1を発現するCaOV-3腫瘍細胞に対する細胞傷害の誘導を示すグラフである。異なるドナー由来のPBMCをエフェクター細胞として使用した。殺滅をLDH放出アッセイによって決定した。
【0249】
【
図13】
図13は、PM-IL-15免疫サイトカインにより、免疫抑制性腫瘍環境を模倣する、TA-MUC1を発現する3D腫瘍スフェロイドへの免疫細胞の浸潤が誘導されることを示すグラフである。PBMCおよび免疫サイトカインまたは緩衝液対照としてPBSと2日間共培養したスフェロイドを免疫組織化学的検査によって分析して、処置後の腫瘍内のCD45またはCD3陽性免疫細胞の数を決定した。
【0250】
【
図14】
図14は、PM-IL-15wtおよびPM-IL-15-wt NAによるTA-MUC1を発現する3D腫瘍スフェロイドへの免疫細胞の浸潤の誘導を例示するグラフである。PBMCおよび免疫サイトカイン、IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)または緩衝液対照としてPBSと2日間共培養したスフェロイドを免疫組織化学的検査によって分析して、処置後の腫瘍内のCD45またはCD8陽性免疫細胞の数を決定した。
【0251】
【
図15】
図15は、融合タンパク質構築物によるNK細胞(A)およびNKT細胞(B)の活性化を示すグラフである。NK細胞およびNKT細胞を含有するPBMCを、αMUC1-IL-15構築物の存在下でインキュベートした。NK細胞およびNKT細胞の活性化をCD69発現によって決定した。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)を対照として使用した。
【0252】
【
図16-1】
図16は、融合タンパク質構築物によるNK細胞(A)、NKT細胞(B)およびCD8
+T細胞(C)の増殖を示すグラフである。NK細胞、NKT細胞およびCD8
+T細胞を含有するPBMCを、αMUC1-IL-15構築物の存在下でインキュベートした。免疫細胞の増殖を、分裂した細胞のパーセンテージによって決定した。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)を対照として使用した。
【0253】
【
図17】
図17は、異なる免疫細胞集団に対するPM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtの刺激特性を実証するグラフである。NK細胞およびCD4+細胞およびCD8+T細胞における活性化マーカーCD25およびCD69をフローサイトメトリーによって分析した。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)および抗体を添加していない培地を対照として使用した。
【0254】
【
図18】
図18は、フローサイトメトリーにより活性化マーカー発現を検出することによって分析された、PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtによるナイーブCD4+T細胞およびCD8+T細胞を含むメモリーT細胞サブセットおよびエフェクターT細胞サブセットの活性化を示すグラフである。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)および抗体を添加していない培地を対照として使用した。
【0255】
【
図19】
図19は、フローサイトメトリーによって分析された、PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtによるCD4+T細胞およびCD8+T細胞およびNK細胞の増殖の誘導を示すグラフである。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)および抗体を添加していない培地を対照として使用した。
【0256】
【
図20】
図20は、健康ドナーのPBMCによる、PM-IL-15免疫サイトカインと一緒にインキュベートした後のサイトカイン放出の誘導を示すグラフである。培地、IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)およびOKT3は、サイトカイン放出なし、ほんの中程度のサイトカイン放出または高いサイトカイン放出についての対照としての機能を果たした。IFN-γおよびGM-CSFの分泌を電気化学発光によって分析した。
【0257】
【
図21】
図21は、腫瘍微小環境における免疫抑制状態を模倣するためにNK細胞およびT細胞をサイトカインTGF-βで予め処理した後の、PM IL15wt NAおよびPM-IL15wtによるこれらの免疫細胞の再活性化を示すグラフである。免疫サイトカインまたは培地対照を用いた処理後のNK細胞およびT細胞の再活性化を、フローサイトメトリーにより活性化マーカーを分析することによって決定した。
【0258】
【
図22-1】
図22は、トランスウェルに基づく走化性アッセイで分析された、免疫細胞サブセットにおけるPM IL15wt NAおよびPM-IL15wtの走化特性を示すグラフである。上側チャンバーから刺激性免疫サイトカインまたは標的とされないIL-15を含有する下側チャンバーに遊走するNK細胞(A)、NKT細胞(B)およびCD8+T細胞(C)の数をフローサイトメトリーによって決定した。結果は無処理の対照に関連する走化性指数として表される。
【0259】
【
図23】
図23は、種々の融合タンパク質構築物の循環半減期を示すグラフである。αMUC1-IL-15wt NAおよびαMUC1-IL-15sushi NAをマウスに注射し、これらの構築物の血漿中濃度を8日間モニタリングした。構築物の算出された循環半減期が示されている。
【0260】
【
図24】
図24は、マウスモデルにおけるT細胞の数に対する種々の融合タンパク質構築物の効果を示すグラフである。αMUC1-IL-15wt NAおよびαMUC1-IL-15sushi NAをマウスに注射し、血液試料を投与前および注射の8日後に分析した。マウスの血液中のCD8+T細胞の数を、PBMCをCD45、CD3、CD4およびCD8について染色することによって決定した。
【0261】
【
図25】
図25は、PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtの、C57BL/6マウスへの単回用量i.v.注射後のin vivoにおける薬物動態(PK)挙動を示すグラフである。マウス3匹の群からの、異なる時点でELISAによって決定された血清中濃度(A)、ならびに、算出されたPKパラメーターである終末血清中半減期(t
1/2)および曲線下面積(AUC)(B)がプロットされている。
【0262】
【
図26-1】
図26は、C57BL/6マウスにおける、免疫サイトカインPM-IL-15wt NAおよびPM-IL-15wtまたは緩衝液対照としてPBSを単回用量i.v.投与した後のin vivoにおける薬力学的(PD)効果を示すグラフである。リンパ器官である脾臓および鼠径リンパ節(ingLN)における、処置により誘導されたPD効果をフローサイトメトリーによって分析した。これらの器官における総細胞の増加はA+Dで示され、異なる免疫細胞集団の相対的な割合はB+Eで示され、一方、CD8+T細胞、NK細胞およびNKT細胞の最終的な選択的増加はC+Fで示される。
【0263】
【
図27】
図27(A)は、
図26について記載されているものと同じモデルにおいてフローサイトメトリーによって分析された、PBS対照と比較した、PM-IL-15wt NAおよびPM-IL-15wtを用いた単回投与処置によるCD8+/CD4+Treg比の増加を示すグラフである。(B)は、CD8+集団における異なるT細胞サブセットの相対的な割合に対する処置の影響を示すグラフである。脾臓におけるCD8+T細胞(C)およびNK細胞(D)におけるICOS、NKG2DおよびCD122(IL-2/15Rβ)の発現を処置後にフローサイトメトリーによって決定した。
【0264】
【
図28】
図28は、免疫サイトカインまたは緩衝液対照としてPBSを用いた処置後のこれらのマウスの血清試料中のELISAによって決定されたサイトカインTNF-αおよびIFN-γの濃度を示すグラフである。
【0265】
【
図29】
図29は、PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAを用いた処置の、末梢血中の免疫細胞に対する長期のPD効果を示すグラフである。NK細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、NKT細胞、顆粒球および単球の相対的な割合を、免疫サイトカインを用いた処置前(0日目)および免疫サイトカインを用いた処置後(11日目)にフローサイトメトリーによって決定した。
【0266】
【
図30】
図30は、フローサイトメトリーによって分析された、種々のPM-IL-15wt構築物のZR-75-1において腫瘍細胞により発現されたTA-MUC1への結合を示すグラフである。IL-15を伴わないαMUC1(PankoMab)を陽性対照として使用した。
【0267】
【
図31】
図31は、ELISAによって分析された、種々のPM-IL-15wt構築物のIL-15Rαサブユニット(CD215)への結合を示すグラフである。
【0268】
【
図32】
図32は、組換えIL-15と比較した、PM-IL-15-CH34GSおよび-Cκ4GSに応答したCTLL-2およびKHyG-1 mCD16の増殖を示すグラフである。
【0269】
【
図33】
図33は、組換えIL-15と比較した、異なる免疫細胞集団に対するPM-IL-15-CH34GSおよび-Ck4GSの刺激特性を実証するグラフである。活性化マーカーCD25をNK細胞およびCD8+T細胞においてフローサイトメトリーによって分析した。抗体を添加していない培地を対照として使用した。
【0270】
【
図34】
図34は、組換えIL-15と比較した、PM-IL-15-CH34GSおよびCκ4GSによるTA-MUC1を発現するCaOV-3腫瘍細胞に対する細胞傷害の誘導を示すグラフである。腫瘍細胞殺滅をLDH放出アッセイによって決定した。
【0271】
【
図35】
図35は、C57BL/6への単回用量i.v.注射後のPM-IL-15-CH34GSおよび-Cκ4GSのin vivoにおける薬物動態(PK)挙動を示すグラフである。マウス3匹の群から算出されたPKパラメーターが示されている(終末血清中半減期(t
1/2)および曲線下面積(AUC))。
【0272】
【
図36】
図36は、免疫サイトカインPM-IL-15-CH34GSおよびPM-IL-15-Cκ4GSの単回用量i.v.投与後のC57BL/6マウスにおけるin vivoにおける薬力学的(PD)効果を示すグラフである。免疫サイトカインを用いた処置前(0日目)および免疫サイトカインを用いた処置後(11日目)に、血液中のNK細胞およびCD8+T細胞の相対的な割合ならびに両方の細胞サブセットにおけるCD122(IL15Rβサブユニット)発現の相対的な割合をフローサイトメトリーによって決定した。
【0273】
【
図37】
図37は、PM-IL-15-CH34GSおよび-Cκ4GSをi.v.およびs.c.で用いた処置の、in vivoでのCD4+T細胞集団およびCD8+T細胞集団における異なるエフェクターおよびメモリーT細胞サブセットの相対的な割合に対する影響を示すグラフである。
【0274】
【
図38】
図38は、PM-IL-15-CH34GSの、腫瘍体積およびTA-MUC1陽性4T1マウス腫瘍細胞を生着させたマウスの生存に対する治療効果を示すグラフである。
【0275】
【
図39】
図39は、CaOV-3標的細胞の存在下で免疫サイトカインPM-IL-15-CH34GSと、TA-MUC1を標的とするT細胞誘導二重特異性(PM-CD3)とを組み合わせた場合に、免疫細胞活性化に対して見いだされた相乗効果を示すグラフである。CD4+T細胞(A)およびCD8+T細胞(B)における活性化マーカーCD25の処置により誘導された発現を2日後にフローサイトメトリーによって決定した。
【0276】
【
図40】
図40は、CaOV-3標的細胞の存在下で免疫サイトカインPM-IL-15wt NAおよびPM-IL-15wtと、TA-MUC1を標的とするT細胞誘導二重特異性(PM-CD3)とを組み合わせた場合に、T細胞増殖に対して見いだされた相乗効果を示すグラフである。CD4+T細胞(A)およびCD8+T細胞(B)の処置により誘導された増殖を5日後にフローサイトメトリーによって決定した。
【0277】
【
図41-1】
図41は、免疫サイトカインPM-IL-15wt NAまたはPM-IL-15wtと、TA-MUC1を標的とするT細胞誘導二重特異性(PM-CD3)とを組み合わせた処置後に、CaOV-3腫瘍細胞に対するPBMC媒介性細胞傷害に対して見いだされた相乗効果を示すグラフである。細胞傷害を24時間後にLDH放出アッセイによって決定した。(A)は、絶対的な特異的溶解を示し、(B)は、免疫サイトカイン自体によって誘導される溶解を差し引いた後の相乗作用をさらに強調するものであり、(C)は、1μg/mLまたは5μg/mLの免疫サイトカインを組み合わせた処置後の効果を示す。
【0278】
【
図42】
図42は、20nMのPM-IL-15-CH34GSと一緒に2日間インキュベートした後の、対照と比較したHSC-4腫瘍細胞および単球におけるPD-L1の発現を示すグラフである。
【0279】
【
図43】
図43は、PM-IL-15-CH34GSと、PD-L1を標的とする抗体Bavencio(登録商標)とを組み合わせた処置後に、HSC-4腫瘍細胞に対するPBMC媒介性細胞傷害に対して見いだされた相乗効果を示すグラフである。細胞傷害を24時間後にLDH放出アッセイによって決定した。
【0280】
【
図44】
図44は、PM-IL-15-CH34GSと、PD-L1を標的とする抗体Bavencio(登録商標)とを組み合わせた処置後に、混合リンパ球反応におけるT細胞活性化に対して見いだされた相乗効果を示すグラフである。
【0281】
【
図45】
図45は、PM-IL-15-CH34GSと、EGFRを標的とする抗体Erbitux(登録商標)およびCetuGEX(登録商標)とを組み合わせた処置後の、HSC-4腫瘍細胞に対するPBMC媒介性細胞傷害に対して見いだされた相乗効果を示すグラフである。細胞傷害を24時間後にLDH放出アッセイによって決定した。
【0282】
【
図46】
図46は、糖最適化(glyco-optimized)抗CD40 hIgG1抗体を用いた処置後のNK細胞、NKT細胞、CD4+T細胞、およびCD8+T細胞におけるCD215の発現を示すグラフである。
【実施例0283】
(実施例1)
MUC1およびIL-15に特異的に結合する融合タンパク質構築物の産生。
MUC1特異的結合部分およびIL-15機能部分からなる融合タンパク質構築物を創製した。MUC1結合部分は、典型的な抗体Y形状を有するヒト化全長IgG1抗体分子PankoMab(ガチポツズマブ)である。抗MUC1抗体は、CH2ドメイン内に天然のグリコシル化部位(PM)を含むか、または、重鎖内に、グリコシル化を消滅させるN297A変異を有する(PM NA)。CH2ドメイン内にグリコシル化がないと、抗体は、Fcγ受容体に結合せず、ADCCを誘導することができない(Fcサイレンシングバリアント)。IL-15機能は、野生型配列(IL-15wt)または受容体結合を低下させる変異I67E(IL-15mut)を有する全長ヒトIL-15を融合することによって実現される。1つの構築物では、IL-15wtにはIL-15受容体α鎖のsushiドメインが付随する(IL-15sushi)。構築物の一般構造を
図1に示す。
【表1】
【0284】
これらの構築物では、各抗体重鎖のC末端に1つのIL-15が(Gly
4Ser)
4リンカーを介して融合している。IL-15Rα sushiドメインが存在する場合、これは、抗体重鎖のC末端とIL-15のN末端との間に、融合パートナー間の(Gly
4Ser)
4リンカーで融合している。
【表2】
【0285】
これらの構築物では、各抗体軽鎖のC末端もしくはN末端に1つのIL-15wtが(Gly4Ser)4もしくは(Gly4Ser)1リンカーを介して融合している;または各抗体重鎖のC末端に1つのIL-15が(Gly4Ser)4リンカーを介して融合している、もしくはいかなるリンカーもなしに直接融合しており、重鎖の末端リシン残基は欠失していた。PankoMabはCH2ドメインにおいてグリコシル化されている。PM-IL-15-CH34GSは表1のPM-IL-15wtに対応する。
【0286】
構築物をヒト骨髄性白血病由来細胞株NM-H9D8(DSM ACC2806)において発現させ、それにより、PankoMab CH2ドメイン内に約90%フコシル化グリカンを有するヒトグリコシル化パターンを有する構築物を産生させた。さらに、構築物を関連する細胞株NM-H9D8-E6Q12(DSM ACC2856)において産生させ、それにより、wt構築物のPankoMab CH2ドメイン内に約10%というフコシル化の量が少ないグリコシル化された構築物をもたらすこともできる。
【表3-1】
【表3-2】
【0287】
構築物をヒト骨髄性白血病由来細胞株NM-H9D8(DSM ACC2806)および酵素ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)を欠くチャイニーズハムスター卵巣細胞株CHO/dhFr-において発現させた。さらに、構築物を、NM-H9D8関連細胞株NM-H9D8-E6Q12(DSM ACC2856)において産生させ、それにより、wt構築物のPankoMab CH2ドメイン内に約10%というフコシル化の量が少ないグリコシル化された構築物をもたらすこともできる。
【0288】
異なるPankoMabおよびIL-15バリアントの分析
(実施例2)
抗原結合
グリコシル化されたMUC1ペプチドおよびグリコシル化されていないMUC1ペプチドへのPM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtの抗原結合特性を、ELISAを使用してPankoMabと比較した。PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtはどちらもグリコシル化されたMUC1ペプチドにPankoMabと同程度に結合するが、グリコシル化されていないMUC1ペプチドへの有意な結合はない(
図2)。これにより、両方のPM-IL15構築物の十分な腫瘍特異性が示される。
【0289】
PM-IL15免疫サイトカインの種々のバリアントの細胞表面TA-MUC1への結合特性を、TA-MUC1を強力に発現する乳がん細胞株T-47Dを使用して分析した。腫瘍細胞を、示されている抗体の段階希釈物と一緒にインキュベートし、結合した抗体を、フィコエリトリンとコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG(重鎖および軽鎖)抗体を使用して検出した。結合をフローサイトメトリーによって分析した。全てのPM-IL15免疫サイトカインが、IL15バリアントの結合またはFcドメインのグリコシル化(
図3AのFc機能的バリアント、
図3BのFcサイレンシングバリアント)とは関係なく、T-47D細胞への強力な結合を示す。結合特性(EC50、%最大結合)はPankoMabと同一であった。さらに、TA-MUC1に対して、対照構築物MOPC-IL15(無関係のFabドメイン)の結合は検出されなかったので、PM-IL15免疫サイトカインの結合は高度に特異的であった。
【0290】
PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtの細胞表面TA-MUC1への結合を、TA-MUC1を強力に発現する腫瘍細胞株Panc-1を使用したフローサイトメトリーによってさらに評価した。Panc-1細胞を、異なる濃度のPM-IL15wtおよびPM-IL15wt NAと一緒にインキュベートし、PankoMabと比較した。ヒトIgG対照を、バックグラウンド染色に対する対照のために含めた。結合した抗体を、フィコエリトリンとコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG(重鎖および軽鎖)抗体を使用して検出した。PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtの両方がTA-MUC1を発現するPanc-1細胞への強力かつ特異的な結合を示し、結合特性(EC50、%最大)はPankoMabと完全に同一であった(
図4)。
(実施例3)
IL-15受容体結合
【0291】
IL-15受容体への結合特性を、具体例としてFcサイレンシングNAバリアントを用いてELISAによって分析した。IL-15RαまたはIL-15Rβ(IL-2rβ、CD122)のいずれかを96ウェルMaxisorpプレートにコーティングした。段階希釈したPM-IL15免疫サイトカインをインキュベートし、結合した免疫サイトカインを、ペルオキシダーゼで標識した抗ヒトIgG F(ab’)2断片特異的抗体と一緒にインキュベートすることによって検出した。PM-IL15sushi NAに関してはIL-15Rαへの結合は検出可能でなく、PM-IL15wt NAは、IL-15RαにPM-IL15mut NAと比較して高い親和性で結合する(
図5A)。IL-15Rβへの結合を分析することにより、PM-IL15mut NAがIL-15受容体のIL-15Rβ鎖に結合することができないことが明らかになった(
図5B)。PM-IL15sushi NAバリアントはIL-15Rβに対してPM-IL15wt NAよりも強力な結合を示した。
【0292】
PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAのIL-15Rα(CD215)およびIL-15Rβ(IL-2rβ、CD122)に結合する能力を、上記の通り、IL-15RαまたはIL-15Rβのいずれかのコーティング後にELISAによって比較した。IL-15Rβへの結合を分析することにより、PM-IL15wtがCD122に対してPM-IL15wt NAよりも明白に強力な結合を有することが明らかになり、これにより、特にNK細胞に対してPM-IL15wtの活性がより高いことを説明することができた(
図6A)。IL-15Rαへの結合は両方の構築物間で同等であった(
図6B)。
【0293】
(実施例4)
FcγRIIIa結合
PM-IL15免疫サイトカインの、抗体FcドメインのFcγRIIIaへの結合を分子レベルで特徴付けるために、PerkinElmerのAlphaScreen(登録商標)技術に基づくFcγRIIIa(CD16a)についてのFcγR結合アッセイを使用した。AlphaScreen(登録商標)プラットフォームは、PerkinElmerのシンプルビーズに基づく技術に依拠し、従来のELISAに対するより効率的な代替である。
【0294】
Hisタグが付されたFcγRIIIa(Glycotope GmbH)をNi-キレートドナービーズによって捕捉する。試験PM-IL15免疫サイトカインとウサギ抗マウスカップリングアクセプタービーズはFcγIIIaへの結合について競合する。FcγRIIIaとウサギ抗マウスアクセプタービーズとの相互作用の場合、ドナービーズおよびアクセプタービーズは極めて近傍になり、これにより、680nmでレーザー励起されると、化学発光による光の放出がもたらされる。競合剤がなければ最大シグナルが実現される。試験抗体がFcγRIIIaに結合する競合の場合、最大シグナルは濃度依存的に低下する。化学発光を、EnSpire 2300マルチラベルリーダー(PerkinElmer)を使用した520~620nmにおける測定によって定量した。全ての結果を2連の試料の平均±標準偏差として表した。結果として、上部プラトー、下部プラトー、傾き、およびEC50によって定義される濃度依存的なS字状の用量反応曲線を受け取った。
【0295】
図7に示されている通り、PM-IL-15wtは、PankoMab-GEXと同等のFcγRIIIa結合を示すが、Fc変異N297AバリアントPM-IL-15wt NAはいかなるFcγRIIIa結合も示さない。
【0296】
(実施例5)
天然の細胞傷害の誘導
IL-15により免疫細胞による天然の細胞傷害を増強することできることが記載されている。PM-IL-15免疫サイトカインにより天然の細胞傷害を誘導することができるかどうかを試験するために、白血病ジャーカットT細胞株を標的細胞として使用し、健康ドナーのPBMCをエフェクターとして使用した。ジャーカット細胞は、天然の細胞傷害に対して感受性であることが記載されており、TA-MUC1を発現しない。天然の細胞傷害アッセイをユウロピウム(Eu)放出アッセイとして実施した。ジャーカット細胞にユウロピウムを電気穿孔によってロードし、アッセイプレートに播種した。エフェクター対標的細胞比80:1のPBMC、および試験免疫サイトカインの希釈物を添加した。全ての試料を3連で分析した。最大ユウロピウム放出対照(MR)として、標的細胞をトリトン(登録商標)X-100に溶解させた。基礎ユウロピウム放出(BR)を、標的細胞上清を含有するウェルから測定した。最後に、標的細胞による自然ユウロピウム放出(SR)に標的細胞のみを含有する対照によって対処した。全ての対照を6連で分析した。5時間インキュベートした後、上清を回収し、DELFIA Enhancement Solutionと一緒にインキュベートした後、Tecan Infinite F200マイクロプレートリーダーにおいて340nmでの励起(extinction)および61nmでの放出を測定し、放出されたユウロピウムを決定した。
【0297】
特異的な細胞傷害を以下の通り算出した:
%特異的溶解=(実験放出-自然放出)/(最大放出-基礎放出)×100。
【0298】
図8に示されている通り、試験したPM-IL-15免疫サイトカインの全てにより、ジャーカットT細胞に対する免疫細胞による天然の細胞傷害がPankoMabと比較して増加する。天然の細胞傷害の誘導の強度は、IL-15モジュールに依存し(IL-15sushi>IL-15wt>IL-15mut)、機能性Fcドメインを有するバリアントはFcサイレンシングバリアントと比較して高い効力を有する。
【0299】
(実施例6)
ADCCアッセイ1
免疫細胞媒介性抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、抗腫瘍抗体の主要な機構である。抗体構築物は、TA-MUC1を介して腫瘍細胞に結合した後、NK細胞およびT細胞を2つの異なる機構によって活性化する。一方では、抗体のFc領域が免疫細胞の表面上のFcγ受容体IIIaに結合し、他方では、構築物のIL-15部分がIL-2受容体β鎖および共通γ鎖によって形成されるインターロイキン受容体に結合する。活性化された免疫細胞により、TA-MUC1+腫瘍細胞の細胞死を促進するパーフォリンおよびグランザイムを含有する細胞傷害顆粒が放出される。
【0300】
末梢血単核細胞(PBMC)ADCCアッセイをユウロピウム(Eu)放出アッセイとして実施した。生存率が80%を超える、MUC-1を発現するT47D標的細胞3×106個を回収し、PBSで2回洗浄し、低温ユウロピウム緩衝液100μLに再懸濁させた。氷上で10分間インキュベートした後、細胞にAmaxa Nucleofector(Lonza)を用いて電気穿孔した。電気穿孔された細胞を再度氷上で10分間インキュベートした後、アッセイ培地(RPMI1640+5%(v/v)熱失活FCS)で6回洗浄した。標的細胞を計数し、アッセイ培地中に1mL当たり細胞5×104個まで希釈し、100μL/ウェルで抗体希釈物または培地対照に添加した。アッセイ培地中、10倍濃縮した抗体希釈物を調製し、20μL/ウェルで96ウェル丸底プレートに移した。PBMCを単離し、アッセイ培地中に1mL当たり細胞5×106個の密度まで再懸濁させた。80μL/ウェルのエフェクター細胞を、標的細胞および抗体希釈物または培地を含有するアッセイプレートに移した。全ての試料を3連で分析した。
【0301】
最大ユウロピウム放出対照(MR)として、100μL/ウェルの標的細胞に、80μL/ウェルの培地および20μL/ウェルの10%(v/v)トリトン(登録商標)X-100を補充した。基礎ユウロピウム放出(BR)を100μLのアッセイ培地および100μLの標的細胞上清を含有するウェルから測定した。最後に、標的細胞による自然ユウロピウム放出(SR)に100μLのアッセイ培地および100μLの標的細胞を含有する対照によって処理した(addressed my controls)。全ての対照を6連で分析した。
【0302】
プレートを300×gで短時間遠心分離し、標準の細胞培養条件で4~5時間インキュベートした。アッセイウェルの上清のユウロピウムレベルを測定するために、プレートを300×gで5分間遠心分離し、25μL/ウェルの上清を、200μL/ウェルのDELFIA Enhancement Solutionを供給した白色96ウェル平底プレートに移した。プレートを暗闇中で10分間インキュベートした後、Tecan Infinite F200マイクロプレートリーダーを用い、340nmでの励起および61nmでの放出で蛍光を測定した。
【0303】
特異的な細胞傷害を以下の通り算出した:
%特異的溶解=(実験放出-自然放出)/(最大放出-基礎放出)×100。
%自然溶解=(自然放出-基礎放出)/(最大放出-基礎放出)×100。
【0304】
PBMCをエフェクター細胞として使用して、種々の融合タンパク質構築物によりMUC-1を発現する腫瘍細胞株T47Dの標的細胞溶解が示された。異なる構築物の活性は異なるEC50値(最大半量の溶解を実現するために必要な構築物の濃度)によって示される。予測通り、IL-15に加えてIL-15Rα sushiドメインを含む構築物は、IL-15wtを単独で有する構築物よりも活性が高く、IL-15wtを単独で有する構築物は、変異したIL-15 I67Eを有する構築物よりも活性が高い(
図9参照)。抗体のFc領域の効果は、PankoMab wtとPankoMab NA構築物を比較することによって示される。驚いたことに、抗体Fc領域を介した免疫細胞活性化を伴わない場合であっても、非常に強力な溶解活性を観察することができた(PM-IL-15wt NAおよびPM-IL-15sushi NA)。変異したIL-15を有するPankoMab NA構築物以外は、全ての構築物がネイキッドPankoMab抗体よりも活性が高かった。
【0305】
構築物を腫瘍細胞に結合しない抗体を有する同様の構築物(MOPC)と比較することによって実証された通り、融合タンパク質構築物の抗原結合がADCC効果のために重要である。MUC-1を発現するOvcar-3腫瘍細胞株を標的細胞として使用した。MOPC構築物は強力に低下したADCC活性を示す(
図10参照)。
【0306】
さらなるADCCアッセイにおいて、MCF-7細胞を標的細胞として使用した。TA-MUC1陽性MCF-7腫瘍細胞をアッセイプレート中で24時間成長させた後、刺激していないPBMCをエフェクター対標的細胞比10:1で添加した。示されている濃度の免疫サイトカインを添加し、24時間後に、細胞の上清中に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を定量することによって腫瘍細胞殺滅を評価した(Cytotoxicity Detection Kit(LDH)、Roche)。標的細胞をトリトン(登録商標)-X-100と一緒にインキュベートすることによって最大放出を実現し、また、標的細胞およびPBMCのみを含有し、抗体を含有しない試料において抗体に依存しない細胞死を測定した。
【0307】
予測通り、IL-15/IL-15Rα sushiドメインを含む構築物は、IL-15wtを単独で有する構築物よりも活性が高い(
図11参照)。驚いたことに、抗体Fc領域を介した免疫細胞活性化を伴わない場合であっても強力な溶解活性を観察することができた(PM-IL-15wt NAおよびPM-IL-15sushi NA)。試験した免疫サイトカインの全てが、10:1という低E:T比でほんの中程度のADCC活性しか示さないネイキッドPankoMab抗体よりも活性が高かった。
【0308】
(実施例7)
ADCCアッセイ2
腫瘍細胞に対する細胞傷害は、免疫治療薬によって誘導されるべき主要な機構の1つである。TA-MUC1を標的とするIL-15に基づく免疫サイトカインを使用することによってIL-15を腫瘍細胞に向けることにより、免疫細胞の活性化がもたらされ、グランザイムBおよびパーフォリンによる腫瘍細胞の直接殺滅がさらにもたらされるはずである。PM-IL15免疫サイトカインの細胞傷害潜在性を評価するために、TA-MUC1陽性CaOV-3腫瘍細胞をアッセイプレート中で24時間成長させた後、PM-IL15免疫サイトカインおよび刺激していないPBMCをエフェクター対標的細胞比10:1で添加した。24時間後に、細胞の上清中に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を定量することによって腫瘍細胞殺滅を評価した(Cytotoxicity Detection Kit(LDH)、Roche)。標的細胞をトリトン(登録商標)-X-100と一緒にインキュベートすることによって最大放出を実現し、また、標的細胞およびPBMCのみを含有し、抗体を含有しない試料において抗体に依存しない細胞死を測定した。
図12に示されている通り、PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtのどちらによっても有効な腫瘍細胞の溶解が用量依存的に誘導された。いくつかのドナーPBMCの分析から、PM-IL15wtの腫瘍細胞溶解を誘導する効力がPM-IL15wt NAと比較して高い(EC50がより低く、最大溶解がより高い)ことが明らかになった。
(実施例8)
3Dスフェロイドモデルにおける免疫細胞の動員
【0309】
腫瘍を標的とするPM-IL15免疫サイトカインの主要な利点は、腫瘍部位における局所的な免疫細胞の活性化を媒介して、免疫抑制性環境を共有免疫応答が実行可能な場所に変えることである。しかし、さらに、IL-15は、その走化特性によって免疫細胞を誘引することが記載されている。PM-IL15免疫サイトカインの、免疫細胞を誘引する潜在性を分析するために、3D腫瘍スフェロイドを用いたPBMCの共培養アッセイを確立した。
【0310】
がん幹細胞(CSC)表現型を有する細胞に富む(MCF-7CSC-富化と称される)MCF-7乳がん細胞株を使用した。「古典的な」MCF-7細胞株とは対照的に、CSC-富化細胞株は、正常な接着性2D培養物においてCD44+/CD24-およびサイドポピュレーションの割合の有意な増加を示し、3D球体を形成する能力を有する。TA-MUC1+MCF-7CSC-富化細胞をCorning Spheroidマイクロプレートに播種し、その後、5%CO2の加湿雰囲気中、37℃で3日間のインキュベーション相を行うことにより、3Dスフェロイドを生成した。スフェロイドの圧縮および成長を顕微鏡下で観察することによって確認した。3日目にスフェロイドが形成された後、健康ドナーのヒトPBMCならびに20ng/mlのPM-IL-15wt NAおよびPM-IL-15sushi NAを添加し、さらに2日間インキュベートした。免疫細胞の3Dスフェロイドへの浸潤を免疫組織化学的検査によって分析した。したがって、スフェロイドを収集し、洗浄し、ホルマリンを用いて固定した。次いで、固定されたスフェロイドをHistoGel(商標)(Thermo Fisher)で成形し、組織マーキング色素(Thermo Fisher)で染色し、脱水し、パラフィンに包埋した。3~4μmの厚さの連続切片に対し、CD3に対する抗体およびCD45に対する抗体を使用し、標準の方法に従って染色を実施した。ペルオキシダーゼとカップリングした検出抗体および基質として液体ジアミノベンジジン(DAB)を使用することにより、結合した一次抗体を検出した。核をヘマトキシリンで対比染色した。
【0311】
図13に示されている通り、PM-IL-15wt NAおよびPM-IL-15sushi NAを添加することにより、スフェロイド内のCD45+免疫およびCD3+T細胞の有意な増加がもたらされる。PM-IL-15wt NAとPM-IL-15sushi NAの間でCD45+免疫細胞の浸潤を増加させるそれらの効力に差異はなかったが、PM-IL-15sushi NAはCD3+T細胞を動員する効力がより高かった。
【0312】
さらに、PM-IL-15wtおよびPM-IL-15-wt NAの免疫細胞を誘引する潜在性を、3D腫瘍スフェロイドを用いたPBMCの共培養アッセイにおいて比較した(上記の方法)。
【0313】
3日目にスフェロイドが形成された後、健康ドナーのヒトPBMCならびに示されている量のPM-IL-15免疫サイトカインまたはPankoMabを添加し、さらに2日間インキュベートした。パラフィン包埋スフェロイドをCD8およびCD45で染色した後、免疫細胞の3Dスフェロイドへの浸潤を分析した。ペルオキシダーゼとカップリングした検出抗体および基質として液体ジアミノベンジジン(DAB)を使用することにより、結合した一次抗体を検出した。核をヘマトキシリンで対比染色した。
【0314】
図14に示されている通り、PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAを添加することにより、スフェロイド内のCD45+免疫およびCD8+T細胞の有意な増加がもたらされるが、PankoMabの使用では効果はなかった。PM-IL-15wtとPM-IL-15wt NAとの間に差異はなかった。
【0315】
(実施例9)
免疫細胞活性化および増殖
融合タンパク質構築物による免疫細胞の活性化を調査するために、NK細胞およびNKT細胞における48時間後の活性化マーカーCD69の発現をフローサイトメトリーによって分析した。この目的のために、健康ドナー由来のヒトPBMCを、示されている濃度の種々の融合タンパク質構築物と一緒に48時間インキュベートした。48時間後にPBMCを回収し、それぞれ、蛍光標識されたαCD4抗体、αCD8抗体、αCD25抗体、αCD69抗体、αCD56抗体、αCD14抗体、およびαCD19抗体を用いて染色した。生存細胞を単独で分析するためにDAPI(Sigma-Aldrich)を使用した。細胞をAttune NxT(Thermo Fisher)フローサイトメーターで分析した。免疫細胞活性化に加えて、PankoMab-IL-15構築物の別の作用機構は、NK細胞およびT細胞増殖の誘導である。免疫細胞増殖を測定するために、健康ドナー由来のPBMCを、CellTrace(商標)Violet(Thermo Fisher)で標識し、種々の融合タンパク質構築物と一緒に5日間インキュベートした。免疫細胞が増殖する場合、CellTrace(商標)色素は増殖している細胞の各世代にわたって希釈される。5日後にPBMCを回収し、それぞれ、蛍光標識されたαCD4抗体、αCD8抗体、αCD56抗体、αCD14抗体、およびαCD19抗体を用いて染色した。生存細胞を単独で分析するために、7-AAD(Calbiochem)を使用した。細胞をAttune NxT(Thermo Fisher)フローサイトメーターで分析した。
【0316】
結果から、全ての融合タンパク質構築物によりNK細胞およびNKT細胞の活性化ならびにNK細胞、NKT細胞およびCD8
+T細胞の増殖を誘導することができることが実証される(
図15および16参照)。活性化および増殖の誘導の強度は、IL-15モジュールに依存し(IL-15sushi>IL-15wt>IL-15mut)、NK細胞に関しては、抗体Fc部分のグリコシル化に依存する(グリコシル化されている>グリコシル化されていない)。
【0317】
Fcグリコシル化を伴う、および伴わないPM-IL15免疫サイトカイン(Fc wtおよびFcサイレンシング(NA)バリアント)の免疫賦活特性も詳細に調査した。PBMCを示されている分子と一緒に5日間インキュベートした後、NK細胞、CD8+T細胞およびCD4+T細胞の活性化を分析した。刺激されたPBMCを、蛍光標識されたαCD3抗体、αCD4抗体、αCD8抗体、αCD14抗体、αCD19抗体、αCD25抗体、αCD45RA抗体、αCD56抗体、αCD69抗体、およびαCD197抗体を用いて染色した。分析前に、DAPIを添加することによって死細胞を排除した。
図17に示されている通り、PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtによりNK細胞、CD4+T細胞およびCD8+T細胞におけるCD25およびCD69の発現が誘導されたが、PankoMabではこのアッセイの設定においてこれらの細胞サブセットを活性化することはできなかった。興味深いことに、FcγRを誘導することができる構築物PM-IL15wtは、FcγR活性の引き金になることができないPM-IL15wt NAよりも高い、NK細胞を活性化する効力を示した。しかし、PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtによって誘導されるT細胞におけるCD25およびCD69の発現は両方の構築物間で同一であった。
【0318】
興味深いことに、メモリーT細胞サブセットおよびエフェクターT細胞サブセットの分析により、PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtにより古典的なエフェクター集団を活性化することができるだけでなく、ナイーブ(CD45RA+およびCCR7+)CD4+T細胞およびCD8+T細胞も、この特定の細胞サブセットにおけるCD69の誘導によって示される通り、活性化することができることが明らかになった(
図18)。さらに、PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtのどちらと一緒にインキュベートしても、CCR7-エフェクターT細胞の増加がもたらされ、これにより、PM-IL15免疫サイトカインによりエフェクター細胞集団を強化することができることが示される。
【0319】
NK細胞およびT細胞の十分な活性化により、頑強な増殖がもたらされる。増殖を媒介するPM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtの能力を評価するために、CellTrace(商標)Violet(Thermo Fisher)で標識されたPBMCを、示されている分子と一緒に5日間インキュベートした。刺激されたPBMCを、蛍光標識されたαCD3抗体、αCD4抗体、αCD8抗体、αCD14抗体、αCD19抗体、αCD45抗体およびαCD56抗体を用いて染色した。フローサイトメトリーによる分析前に7-AAD(Sigma-Aldrich)を用いた染色によって死細胞を排除した。PM-IL15wt NAおよびPM-IL15wtのどちらによってもNK細胞、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の増殖が誘導されたが、PankoMab単独では効果がなかった(
図19)。免疫細胞活性化アッセイの結果と同様に、PM-IL15wt NAとPM-IL15wtの間でT細胞増殖を誘導する効力に差異はなかった。しかし、PM-IL15wtではPM-IL15wt NAよりも低濃度でNK細胞増殖が再現性よく誘導された。
【0320】
(実施例10)
サイトカイン放出
IL-15は、強力なサイトカインであり、IL-15による処置によって媒介される潜在的なサイトカイン放出は、前臨床的試験において検討すべき問題である。特に、IL-15による刺激後の免疫細胞によるIFN-γ、GM-CSFおよびMIP1-αの分泌が記載されている。健康ドナー8体のPBMCを、アッセイウェルの溶液相に添加した示されているPM-IL-15免疫サイトカインと一緒に72時間インキュベートした。上清を、UPLEXアッセイプラットフォーム(MSD)を使用して分析した。IFN-γ(
図20A)およびGM-CSF(
図20B)の分泌が示されている。
【0321】
予測通り、試験したPM-IL-15免疫サイトカインの全てにより、サイトカイン放出が誘導され、IL-15/IL-15Rα sushiドメインを含む構築物ではIL-15wtを単独で有する構築物よりも高度なIFN-γ(
図20A)およびGM-CSF(
図20B)の分泌が誘導された。驚いたことに、試験したサイトカインの放出に対するFcドメインの明らかな影響はなかった。
【0322】
(実施例11)
免疫抑制細胞の活性化
固形腫瘍における微小環境は、一般に、高度に抑制性であり、これは、極めて多くの免疫治療薬が実施されるための主要な問題の1つである。PM-IL15免疫サイトカインが、抑制性環境を克服し、抑制された免疫細胞を活性化する能力を有するかどうかを調査するために、健康ドナーのPBMCを、50ng/mlの免疫抑制性サイトカインTGF-βと一緒にインキュベートした。48時間後に、PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAを等モル濃度(572nM)で添加し、さらに5日間インキュベートした後、NK細胞、CD8+T細胞およびCD4+T細胞の活性化を分析した。PBMCを、蛍光標識されたαCD3、αCD4、αCD8、αCD25、αCD56およびαCD69を用いて染色した。分析前に、DAPIを添加することによって死細胞を排除した。
【0323】
NK細胞(CD25)の活性化が
図21Aに示されており、CD8+T細胞(CD69)の活性化が
図21Bに示されている。予測通り、および以前に記載されている通り、PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAにより、抑制されていないT細胞は同程度に活性化されるが、NK細胞は、PM-IL-15wtによってPM-IL-15wt NAよりも強力に活性化される。興味深いことに、どちらのPM-IL-15免疫サイトカインでもTGF-βによって抑制された免疫細胞を活性化することができた。TGF-βによる免疫抑制は、分析した細胞サブセットの全てにおいて、TGF-βを用いた処置後にCD25およびCD69の発現が低減したので、目に見ることができた。重ねて、PM-IL-15wtとPM-IL-15wt NAが示すT細胞を活性化する効力は同様であり、また、抑制されたNK細胞を刺激する効力は機能性Fcドメインを有するPM-IL-15wt構築物の方がFcサイレンシングバリアントPM-IL-15wt NAと比較して高かった。
【0324】
(実施例12)
走化性
IL-15は、その走化特性によって免疫細胞を誘引することが記載されている。PM-IL-15免疫サイトカインがなお走化性をなすことを確認するために、古典的な走化性アッセイをセットアップした。健康なPBMCを96ウェルTranswellシステム(5μm孔径のポリカーボネート膜、Corning Costar)の上部チャンバーに入れた。下部チャンバーにはPM-IL-15免疫サイトカインを添加した培地を満たした。5%CO2中、37℃で4時間インキュベートした後、遊走した免疫細胞の数を、フローサイトメーターを使用して下部チャンバー内の細胞を計数することによって決定した。分析前に、細胞を、蛍光標識されたαCD3、αCD4、αCD8、αCD14、αCD19、αCD56、およびDAPIを用いてで染色した。
【0325】
いかなる刺激物の添加も無しの、対照ウェルと比べた、示されているPM-IL-15免疫サイトカインへのNK細胞(
図22A)、NKT細胞(
図22B)およびCD8+T細胞(
図22C)の遊走(走化性指数)が示されている。PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAはどちらも、NK細胞、NKT細胞およびCD8+T細胞を誘引する高い潜在性を有した。興味深いことに、機能性Fcドメインを有するバリアントPM-IL-15wtによりNK細胞の遊走がPM-IL-15wt NAよりも強力に誘導されたが、NKT細胞およびCD8+T細胞に関しては明白な差異はなかった。
【0326】
(実施例13)
in vivoにおける薬物動態
PM-IL-15sushi NAおよびPM-IL-15wt NAの薬物動態を分析するために、C57BL/6マウスに、200pmolの抗体をi.v.注射した。注射の5分後、1時間後、6時間後、1日後、2日後、3日後、4日後、5日後および8日後に血清を採取した。血清試料の抗体価を決定するために、Maxisorp F96 ELISAプレートに、0.1Mの炭酸緩衝液、pH9.6中2μg/mlのマウス抗ヒトIgκ軽鎖抗体を終夜コーティングした。PBS中5%(v/v)ウシ血清アルブミン(BSA)(BSA/PBS)を用いて非特異的結合を遮断した。血清試料および標準物質を1%(v/v)BSA/PBS中に希釈した。試料をインキュベートした後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたヤギ抗ヒト(IgG、Fcγ断片特異的)抗体を1%(v/v)BSA/PBS中、1:30.000の希釈度で使用した。呈色のために、TMB One Component HRP Microwell SubstrateをELISAプレートに添加した。反応を1.25Mの硫酸で停止させ、Tecan Infinite F200マイクロプレートリーダーを使用し、450nmおよび620nmにおいてシグナルを測定した。
【0327】
さらに、血液試料を投与前および注射の8日後に分析した。PBMCを、フルオロフォアとコンジュゲートした抗マウスCD45、CD3、CD4、CD8を用いて染色し、細胞をAttune(登録商標)NxT Acoustic Focusing Cytometerで分析した。
【0328】
結果から、PM-IL-15sushi NAの半減期がPM-IL-15wt NAと比較して短いことが実証される(
図23参照)。さらに、どちらの構築物を用いた処置でもCD8+T細胞の増加がもたらされ、効果はPM-IL-15sushi NAを使用した場合に、より顕著である(
図24参照)。
【0329】
PM-IL-15wtのFcγR結合ドメインが、PM-IL-15wt NAと比較してPM-IL-15wtの薬物動態プロファイルに影響を及ぼすかどうかを調査するために、C57BL/6マウスに、2mg/kgの構築物をi.v.注射した(n=3)。注射の5分後、6時間後、1日後、2日後、4日後、7日後および11日後血清を採取し、抗体価を上記の通りELISAによって決定した。
【0330】
図25に示されている通り、PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAはC57BL/6マウスにおいて同一のt
1/2および同様の総曝露(AUC)を示す。
【0331】
(実施例14)
in vivoにおける薬力学
PM-IL-15免疫サイトカインの薬力学的効果をin vivoにおいてさらに調査した。マウス(C57BL/6、n=3)に2mg/kgのPM-IL-15wt NAまたはPM-IL-15wtのいずれかをi.v.注射し、3日目に屠殺して、血液、血清、鼠径リンパ節(ingLN)および脾臓を採取した。血清を調査して、サイトカイン分泌に対する効果を分析し、血液およびリンパ器官由来の免疫細胞を免疫細胞サブセットの表現型および頻度について特徴付けた。
【0332】
3日間にわたるPM-IL-15免疫サイトカインを用いた処置により、脾臓(
図26A)および鼠径リンパ節(
図26D)内の細胞の総数の増加がもたらされる。さらに、CD8+T細胞、NK細胞およびNKT細胞の相対的な増加が観察されたが、CD4+T細胞およびB細胞はむしろ減少した(
図26B、E)。最終的に、これにより、脾臓およびingLNにおけるCD8+T細胞、NK細胞およびNKT細胞の選択的増加がもたらされたが(
図26C、F)、B細胞およびCD4+T細胞の総細胞数は影響を受けなかったか(脾臓)またはほんのわずかだけ影響を受けた(ingLN)。一般に、PM-IL-15wt NAとPM-IL-15wtとの間で、NK細胞増加を刺激する効力がPM-IL-15wtの方が高い以外の差異はなかった。
【0333】
3日間にわたるPM-IL-15による処置によって誘導されるCD8
+T細胞の選択的増加により、脾臓におけるCD8
+T細胞とCD4
+制御性T細胞(Treg)との比が、最初の7:1から10:1まで変化し、CD8+T細胞の優勢が増した(
図27A)。CD8+T細胞集団内では、PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAを用いた処置によりナイーブ細胞の相対的減少がもたらされ、併せて、セントラルメモリー(TCM)およびエフェクター(Teff)表現型を有する細胞の増加がもたらされる(
図27B)。PM-IL-15wtとPM-IL-15wt NAの間で差異はなかった。ingLNにおいても同様の効果が観察された(図示せず)。
【0334】
マウス免疫細胞の表現型特徴付けから、PM-IL-15免疫サイトカインを用いて3日間刺激することにより、ICOS、NKG2Dの上方制御がもたらされ、驚いたことに、CD8+T細胞においてCD122(IL-2/15Rβ)の上方制御も導もたらされることが明らかになった(
図27C)。同様に、NK細胞においてNKG2DおよびCD122が上方制御された(
図27D)。どちらの効果も脾臓(ここに示す)およびing LN(図示せず)において目に見えるものであった。PM-IL-15wtとPM-IL-15wt NAの間で差異は観察されなかった。
【0335】
3日目にマウスの血清をサイトカイン含有量についてさらに分析した。PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAの注射により、TNF-αおよびIFN-γのサイトカインレベルが上昇し、どちらのサイトカインの分泌もPM-IL-15wtによりPM-IL-15wt NAと比較してわずかにより強力に誘導された(
図28)。
【0336】
最後に、in vivoにおけるPM-IL-15免疫サイトカインの長期の効果を、11日目の血液中の免疫細胞を分析することによって分析した。PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAの注射後の血液中でより高頻度のCD8+T細胞およびNKT細胞をなお観察することができたが、より高頻度のNK細胞はPM-IL15wtを用いた場合のみで観察された(
図29)。CD4+T細胞の頻度は影響を受けず、顆粒球および単球のパーセンテージは処置によりむしろ低下した。これにより、PM-IL-15免疫サイトカインの単回注射によりCD8+T細胞、NK細胞およびNKT細胞に対する長期の効果を誘導することができることが示される。
【0337】
種々のPM-IL-15構築物設計の分析
(実施例15)
抗原結合
PM-IL15免疫サイトカインの異なるバリアントの細胞表面TA-MUC1への結合特性を、TA-MUC1を強力に発現する乳がん細胞株ZR-75-1を使用して分析した。腫瘍細胞を、示されている抗体の段階希釈物と一緒にインキュベートし、結合した抗体を、フィコエリトリンとコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG(重鎖および軽鎖)抗体を使用して検出した。結合をフローサイトメトリーによって分析した。抗体のCκまたはCH3ドメイン(構築物CH34GS、CH3oLi-oK、Cκ4GS、Cκ1GS)へのIL-15の結合は、親抗体PankoMabと比較した場合TA-MUC1に対する結合特性に影響を及ぼさなかった。抗体のVL領域(構築物VL4GS)へのIL-15の結合により、TA-MUC1に結合する能力が低下した(
図30)。
【0338】
(実施例16)
IL-15受容体結合
種々のPM-IL-15wt構築物のIL-15受容体サブユニットへの結合特性をELISAによって分析した。IL-15Rα(CD215)を96ウェルMaxisorpプレートにコーティングした。段階希釈したPM-IL15免疫サイトカインをインキュベートし、結合した免疫サイトカインを、ペルオキシダーゼで標識した抗ヒトIgG F(ab’)2断片特異的抗体と一緒にインキュベートすることによって検出した。試験した構築物の全てがCD215に結合することができた(
図31)。PM-IL-15-CH34GSはCD215に対して軽鎖融合構築物PM-IL-15-Cκ4GSおよびPM-IL-15-Cκ1GSと比較して優れた結合を示した。
【0339】
(実施例17)
細胞増殖の誘導
IL-15は、NK細胞およびメモリーCD8+T細胞の生存のために重要であり、また、増殖に関してこのサイトカインに同等に依存性であるNK細胞またはT細胞起源の細胞株がいくつか存在する。マウスCTLL-2 T細胞株は、組換えIL-15の生物活性を増殖アッセイによって試験するために常套的に使用され、また、ナチュラルキラー細胞白血病細胞株KHYG-1 mCD16(マウスCD16がトランスフェクトされたKHYG-1)も増殖と共にIL-15に応答する。これらの2つの細胞株を使用して、PM-IL15構築物のCH3ドメインまたはCκドメインのいずれかに融合したIL-15の生物活性を組換えIL-15(Miltenyi)と比較して試験した。組換えIL-15の、CTLL-2細胞(
図32A)およびKHYG-1 mCD16細胞(
図32B)の増殖を誘導する効力は、適用したIL-15のモル濃度に対して正規化した場合、PM-IL-15-CH34GSおよびPM-IL-15-Cκ4GSと比較して高かった。さらに、PM-IL-15-CH34GSとPM-IL-15-Cκ4GSのKHYG-1 mCD16細胞の増殖を誘導する活性は等しかったが(
図32B)、PM-IL-15-CH34GSにより、PM-IL-15-Cκ4GSと比較してCTLL-2細胞のより強力な増殖が誘導され(
図32A)、これはおそらくこれらの細胞株におけるIL-15R鎖の差次的発現に起因する。
【0340】
(実施例18)
免疫細胞活性化の誘導
PM-IL-15 CH3またはCκ融合構築物を、一次免疫細胞を活性化するそれらの効力について組換えIL-15と比較した。健康ドナーのPBMCを、示されている分子と一緒に5日間インキュベートした。刺激されたPBMCを、蛍光標識されたαCD3抗体、αCD4抗体、αCD8抗体、αCD14抗体、αCD25抗体、αCD45抗体、およびαCD56抗体を用いて染色した。分析前に、DAPIを添加することによって死細胞を排除した。
図33に示されている通り、試験した分子の全てがNK細胞(
図33A)およびCD8+T細胞(
図33B)におけるCD25の発現を誘導することができた。重ねて、アッセイ中に存在したIL-15のモル濃度に対して正規化した場合、組換えIL-15は免疫細胞の活性化に関してどちらのPM-IL-15構築物と比較しても優れていた。さらに、PM-IL-15-CH34GSの免疫エフェクター細胞の活性化を誘導する効力がPM-IL-15-Cκ4GSと比較してわずかに高かった。
【0341】
(実施例19)
抗腫瘍細胞傷害の誘導
次に、腫瘍細胞殺滅アッセイにおいて組換えIL-15とPM-IL-15 CH3またはCκ融合構築物との間で同様の差異を観察することができるかどうかを調査した。この目的のために、TA-MUC1陽性CaOV-3腫瘍細胞をアッセイプレート中で24時間成長させた後、PM-IL-15-CH34GS、PM-IL-15-Cκ4GSまたは組換えIL-15および刺激していないPBMCをエフェクター対標的細胞比10:1で添加した。24時間後に、細胞の上清中に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を定量することによって腫瘍細胞殺滅を評価した(Cytotoxicity Detection Kit(LDH)、Roche)。標的細胞をトリトン(登録商標)-X-100と一緒にインキュベートすることによって最大放出を実現し、また、標的細胞およびPBMCのみを含有し、抗体を含有しない試料において抗体に依存しない細胞死を測定した。
図34に示されている通り、PM-IL-15-CH34GSおよび-Cκ4GSのどちらによってもCaOV-3腫瘍細胞の特異的溶解が誘導され、前に観察された通り融合CH3融合構築物はCκ融合構築物と比較してより高い活性を示した。重要なことに、組換えIL-15はNK細胞およびCD8+T細胞の活性化の誘導に関して優れているが(
図33)、これは、PM-IL-15-CH34GSおよび-Cκ4GSに関して観察される有効な免疫細胞媒介性腫瘍細胞溶解には相当しなかった(
図34、組換えIL-15を使用した最大溶解は、約20%であり、比較して、PM-IL-15を使用すると40%である)。
【0342】
(実施例20)
in vivoにおける薬物動態に対する構築物設計の影響
抗体のCH3またはCκドメインへのIL-15の融合がその薬物動態プロファイルに影響を及ぼすかどうかを調査するために、C57BL/6マウスに、2mg/kgの構築物をi.v.注射した(n=3)。注射の5分後、6時間後、1日後、2日後、4日後、7日後、および11日後に血清を採取し、抗体価をELISAによって決定した。Maxisorp F96 ELISAプレートに、0.1Mの炭酸緩衝液、pH9.6中2μg/mlのマウス抗ヒトIgκ軽鎖抗体を終夜コーティングした。PBS中5%(v/v)ウシ血清アルブミン(BSA)(BSA/PBS)を用いて非特異的結合を遮断した。血清試料および標準物質を1%(v/v)BSA/5%(v/v)マウス血清/PBS中に希釈し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたヤギ抗ヒト(IgG、Fcγ断片特異的)を使用して検出した。呈色のために、TMB One Component HRP Microwell SubstrateをELISAプレートに添加した。反応を1.25Mの硫酸で停止させ、Tecan Infinite F200マイクロプレートリーダーを使用し、450nmおよび620nmにおいてシグナルを測定した。
【0343】
図35に示されている通り、PM-IL-15-CH34GSは、PM-IL-15-Cκ4GSと比較して、C57BL/6マウスにおいて、より長いt
1/2およびより大きな総曝露(AUC)を示した。両方の構築物のs.c.注射後にも同じ結果が観察された。
【0344】
(実施例21)
in vivoにおける薬力学に対する構築物設計の影響
次に、PM-IL-15-CH34GSおよびPM-IL-15-Cκ4GSのin vivoにおける薬力学的プロファイルにも差異があるかどうかを調査した。マウス(C57BL/6、n=3)に2mg/kgのPM-IL-15wt CH34GSまたはCk4GSのいずれかをi.v.注射およびs.c.注射し、11日目に屠殺して血液を採取した。血液由来の免疫細胞を表現型および頻度について、蛍光標識されたαCD3抗体、αCD4抗体、αCD8抗体、αCD44抗体、αCD45抗体、αCD45R抗体、αCD62L抗体、αCD122抗体、およびαNK1.1抗体を使用したフローサイトメトリーによって特徴付けた。PM-IL-15-CH34GSの適用により、i.v.注射後およびs.c.注射後にNK細胞の増加(2倍)がもたらされたが、PM-IL-15-Cκ4GSを使用すると、この時点でNK細胞区画に対する有意な効果はなかった(
図36A)。しかし、どちらの構築物の注射によっても、NK細胞におけるCD122の上方制御が同様にもたらされ、これは、Cκ4GS構築物によってもNK細胞を誘導することができることを意味する(
図36C)。CD8+T細胞を分析し、どちらの構築物でもこのサブセットの総頻度およびCD122発現を増加させることができたが、重ねて、PM-IL-15-CH34GSではPM-IL-15-Cκ4GS(1.3倍の増加)よりも強力な増加(1.5倍)およびCD122上方制御が誘導された(
図36BおよびD)。
【0345】
CD4+T細胞集団およびCD8+T細胞集団内では、PM-IL-15-CH34GSおよびPM-IL-15-Cκ4GSを用いた処置により、i.v.注射後(
図37AおよびC)およびs.c.注射後(
図37BおよびD)にナイーブ細胞の相対的減少がもたらされ、併せて、セントラルメモリー(TCM)およびエフェクター(Teff)表現型を有する細胞の増加がもたらされる。さらに、使用した注射経路に関係なく、PM-IL-15-CH34GSは、CD4+およびCD8+エフェクターおよびメモリーT細胞の動員に関してPM-IL-15-Cκ4GS構築物よりも優れていた。
【0346】
(実施例22)
in vivo腫瘍モデルにおける治療有効性
次に、TA-MUC1を標的とするIL-15免疫サイトカインが、腫瘍を有するマウスの転帰を改善する潜在性を有するかどうかを分析した。糖鎖特異的エピトープTA-MUC1はマウスでは見いだされないので、マウス乳癌細胞株4T1にMUC1をトランスフェクトし、TA-MUC1を発現するトランスフェクタントMUC1-4T1をin vivo試験のための腫瘍モデルとして使用した。4T1細胞に由来する腫瘍は、高度に免疫抑制性を含有する主に骨髄系由来のサプレッサー細胞であることが記載されている。MUC1-4T1細胞を乳房脂肪体(mfp)に注射し、1日目、8日目、および15日目に0.25mg/kgのPM-IL-15-CH34GSを用いて処置した。腫瘍体積をモニタリングし、州(state)のガイドラインに従って腫瘍量が1cm
3に達したらマウスを屠殺した。
図38Aは、PBSで処置したマウスおよびPM-IL-15-CH34GSで処置したマウスの経時的な腫瘍体積を示し、矢印は投与日を示す。
図38Bは、マウスの生存を示す。PM-IL-15-CH34GSの適用により、この高度に抑制性のモデルにおいてマウス6匹のうち3匹において腫瘍成長遅延がもたらされ(
図38A)、これは、PM-IL-15-CH34GSで処置したマウスの生存がPBS群と比較して長いことにも反映された(
図38B)。
【0347】
PM-IL-15と他の治療薬との組合せ
(実施例23)
PM-IL-15とPM-CD3の組合せを使用した免疫細胞の活性化
PM-IL-15免疫サイトカインを用いた治療の背景にある観念は、PM-IL-15免疫サイトカインがそれ自体で免疫細胞を活性化するだけでなく、NK細胞およびT細胞が刺激されることにより、進行中の免疫応答もさらに増強されるというものである。この仮説を試験するために、TA-MUC1を標的とするT細胞エンゲージャー(PM-CD3;CD3に対するscFv断片が抗TA-MUC1抗体Pankomabの重鎖のC末端と融合した二重特異性抗体)をPM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAと組み合わせ、T細胞活性化、T細胞増殖および細胞傷害を分析した。
【0348】
T細胞活性化を分析するために、健康ドナーのPBMCを、PM-IL-15-CH34GSと一緒に、最適以下の濃度(それぞれ0.4μg/mlおよび2μg/ml)のPM-CD3の非存在下または存在下でインキュベートした。2日後に、刺激されたPBMCを蛍光標識されたαCD4抗体、αCD8抗体、αCD14抗体、αCD19抗体、αCD25抗体、αCD45抗体、αCD56抗体、およびαCD69抗体を用いて染色することによってT細胞の活性化を分析した。フローサイトメトリーによる分析前に、DAPIを添加することによって死細胞を排除した。
【0349】
図39は、最適以下の濃度での単一の治療としてのPM-CD3により、CD4+T細胞およびCD8+T細胞におけるCD25のわずかな発現が誘導されたことを示す。PM-IL-15wtでは、どちらのT細胞サブセットにおいてもCD25の濃度依存性の増加が誘導され、CD4+T細胞ではCaOV-3腫瘍細胞の存在下でさらに増強された。興味深いことに、PM-IL-15wtとたった0.4μg/ml(2nM)のPM-CD3の組合せにより、CD4+T細胞およびCD8+T細胞におけるCD25の発現が強力に増強された。重要なことに、観察された効果は、相加的なだけでなく、高度に相乗的でもあり、また、PM-CD3の量を2μg/ml(10nM)まで増加させることによってさらに増強することができた。
【0350】
(実施例24)
PM-IL-15とPM-CD3の組合せを使用した免疫細胞の増殖
PM-CD3により誘導されるT細胞増殖におけるPM-IL-15免疫サイトカインの効果を分析するために、健康ドナーのPBMCを、PM-CD3と一緒に、1μg/mlのPM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAの非存在下または存在下でインキュベートした。CellTrace(商標)Violet(Thermo Fisher)で標識されたPBMCを、示されている分子およびTA-MUC1陽性CaOV-3腫瘍細胞と一緒に5日間インキュベートした。刺激されたPBMCを、蛍光標識されたαCD4抗体、αCD8抗体、αCD14抗体、αCD19抗体、αCD45抗体およびαCD56抗体を用いて染色した。フローサイトメトリーによる分析前に7-AAD(Sigma-Aldrich)を用いた染色によって死細胞を排除した。
【0351】
CaOV-3腫瘍細胞の存在下、PM-CD3単独でCD4+T細胞(
図40A)およびCD8+T細胞(
図40B)の増殖を誘導することができた。驚いたことに、PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NA自体ではこの濃度でCD4+T細胞およびCD8+T細胞の増殖を誘導することができなかったが、PM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAにより、PM-CD3に媒介される増殖が高度に相乗的に強力に増強された。PM-IL-15wtとPM-IL-15wt NAのPM-CD3に誘導される増殖を刺激する効力は同等であった。
【0352】
(実施例25)
PM-CD3と組合せたPM-IL-15の細胞傷害
PM-IL-15免疫サイトカインとPM-CD3の組合せの腫瘍細胞殺滅における潜在性も評価した。TA-MUC1陽性CaOV-3腫瘍細胞をアッセイプレート中で24時間成長させた後、刺激していないPBMCをエフェクター対標的細胞比10:1で添加した。PM-CD3を単独で、または示されている濃度のPM-IL-15wtおよびPM-IL-15wt NAと組み合わせて添加した。24時間後に、細胞の上清中に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を定量することによって腫瘍細胞殺滅を評価した(Cytotoxicity Detection Kit(LDH)、Roche)。標的細胞をトリトン(登録商標)-X-100と一緒にインキュベートすることによって最大放出を実現し、また、標的細胞およびPBMCのみを含有し、抗体を含有しない試料において抗体に依存しない細胞死を測定した。
【0353】
単一の治療として、PM-CD3およびPM-IL-15免疫サイトカインにより、CaOV-3腫瘍細胞のわずか~中程度の溶解を誘導することができた(
図41)。驚いたことに、PM-IL-15wtまたはPM-IL-15wt NAの添加により、腫瘍細胞の特異的溶解が、再度相加的にだけでなく相乗的にも増強された(
図41AおよびB)。たった1μg/mlのPM-IL-15wtを200nMのPM-CD3に添加することにより、CaOV-3腫瘍細胞の特異的溶解が34%から75%まで増加した。PM-IL-15wt NA構築物の効力はわずかに低かった(最大溶解62%)。
図41Cは、組合せ効果が使用するPM-IL-15免疫サイトカインの濃度にも依存することを示す。PM-IL-15wt NAの濃度を1μg/mlから5μg/mlまで上昇させることにより、さらにEC50値を低減し、腫瘍細胞の最大溶解を増加させることができた。
【0354】
(実施例26)
PM-IL-15免疫サイトカインとPD-L1またはPD-1標的化治療との組合せ
以前に記載されている通り、PM-IL-15免疫サイトカインはそれ自体で免疫細胞の活性化を媒介するが、別の薬物(例えば、二重特異性T細胞エンゲージャー)によって誘導されるNK細胞およびT細胞の応答を増強することもできる。PD-1/PD-L1を標的とするチェックポイント阻害剤は診療所において広く使用されており、したがって、in vitro試験を実施して、これらの薬剤とTA-MUC1を標的とするIL-15免疫サイトカインの組合せについての理論的根拠があるかどうかを分析した。まず、PM-IL-15-CH34GSと一緒にインキュベートした後に腫瘍細胞および単球におけるPD-L1発現が変更されるかどうかを分析した。TA-MUC1陽性HSC-4舌扁平上皮癌細胞をアッセイプレート中で24時間成長させた後、新しく単離したPBMCをエフェクター対標的細胞比10:1で添加した。PM-IL-15-CH34GS(20nM)またはPBSを添加し、プレートを48時間培養した。腫瘍細胞およびPBMCを回収し、PD-L1の発現について分析した。
図42に示されている通り、PM-IL-15-CH34GSの添加により、HSC-4腫瘍細胞(
図42A)および単球(
図42B)におけるPD-L1の発現が有意に増加した。
【0355】
次に、腫瘍細胞殺滅アッセイにおけるPM-IL-15免疫サイトカインとPD-L1を標的とする抗体アベルマブ(Bavencio(登録商標))の組合せの潜在性を調査した。TA-MUC1陽性HSC-4腫瘍細胞をアッセイプレート中で24時間成長させた後、刺激していないPBMCをエフェクター対標的細胞比10:1で添加した。PM-IL-15-CH34GSを、単独で、または示されている濃度のアベルマブもしくは対照としてhIgG1と組み合わせて添加した。24時間後に、以前に記載されている通り、細胞の上清中に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を定量することによって腫瘍細胞殺滅を評価した。
【0356】
単一の治療として、PM-IL-15-CH34GSおよびアベルマブにより、HSC-4腫瘍細胞のわずかな溶解(約9%)を誘導することができた(
図43)。驚いたことに、PM-IL-15-CH34GSとアベルマブの組合せにより、腫瘍細胞の特異的溶解が、相加的にだけでなく相乗的にも有意に増加した。たった0.8nMという濃度のPM-IL-15-CH34GSが、アベルマブ単独によって誘導される腫瘍細胞溶解を3倍にするのに十分であった(8.9%から26.5%)。PM-IL-15-CH34GSの濃度を上昇させることにより、この効果をさらに増強することができた(最大の観察された溶解54%)。
【0357】
PD-1/PD-L1チェックポイント阻害剤のin vitroにおいてT細胞を活性化する能力を調査するための別の許容される方法は、異なるドナー由来の単球由来樹状細胞(moDC)とT細胞とを共インキュベートして、PD-L1およびPD-1の相互作用による免疫抑制効果を模倣する、同種異系混合リンパ球反応(MLR)である。単球を健康ドナーのPBMCから単離し、馴化培地、GM-CSF、およびIL-4を補充した培地で単球を培養することによってmoDCを生成した。7日後、moDCを回収し、96ウェルプレート中、同種異系T細胞と1:10の比で、1μg/mlの各試験抗体の存在下で培養した。5日後に細胞を回収し、CD8+T細胞におけるCD25の発現についてフローサイトメトリーによって分析した。PM-IL-15-CH34GSおよびアベルマブのいずれの添加によっても、対照と比較して、CD25の上方制御によって決定されるCD8 T細胞活性化の増加がもたらされる(それぞれ5.4%および3.9%の増加;
図44)。しかし、PM-IL-15-CH34GSとアベルマブの組合せでは、CD25の発現が7.1%から24.3%まで増加し(17.2%の増加)、これは、両方の抗体の相乗作用を意味する。
【0358】
(実施例27)
PM-IL-15免疫サイトカインと抗EGFR治療薬との組合せ
次に、EGFRを標的とする治療薬を増強することができるかどうかを調査した。Erbitux(登録商標)(古典的なhIgG1セツキシマブ)およびCetuGEX(登録商標)(トムゾツキシマブ、Glycotopeの糖最適化第2世代セツキシマブ)を、実施例19に記載の腫瘍細胞殺滅アッセイにおいてPM-IL-15-CH34GSと組み合わせて試験した。同様の量のTA-MUC1およびEGFR(内部分析)を発現するHSC-4腫瘍細胞を標的細胞として使用した。
図45に示されている通り、CetuGEX(登録商標)単独により、LDHの濃度依存性放出が誘導され、これは、Erbitux(登録商標)を単独で使用した場合よりも高かった。たった20nM(3.5μg/ml)のPM-IL-15-CH34GSを添加することにより、Erbitux(登録商標)およびCetuGEX(登録商標)と、ある特定の閾値濃度(CetuGEX(登録商標)については>0.1ng/ml、およびErbitux(登録商標)については>1ng/ml)で組み合わせると、LDHの放出が有意に増加した。これにより、PM-IL-15免疫サイトカインが抗EGFR処置に対する応答を相乗的に増幅する潜在性を有することが示される。
【0359】
(実施例28)
CD40アゴニストによるIL-15R発現の上方制御
PM-IL-15免疫サイトカインに対するさらに興味深い組合せパートナーは、抗CD40抗体のような他の免疫賦活性薬物である。
図46は、PBMCを漸増濃度の糖最適化抗CD40 IgG1(Glycotope GmbH)と一緒に3日間インキュベートした後の、無処理の細胞と比較した、フローサイトメトリーによって分析されたNK細胞、NKT細胞、CD4+T細胞、およびCD8+T細胞におけるIL-15Rα(CD215)の発現を示す。抗CD40を用いた処置により、NK細胞、NKT細胞、およびCD8+T細胞におけるCD215の上方制御がもたらされたが、CD4+T細胞おけるCD215の上方制御はもたらされなかった(
図46)。これらのデータは、IL-15の交差提示を抗CD40 mAbの存在下で改善し、それにより、IL-15に基づく免疫サイトカインの活性を強化することができたことを意味する。
【0360】
寄託された生物材料の識別
細胞株DSM ACC 2806、DSM ACC 2807およびDSM ACC 2856は、Glycotope GmbH、Robert-Roessle-Str.10、13125 Berlin(DE)によって、DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstrasse 7B、38124 Braunschweig(DE)に以下の表に示されている日に寄託された。
【表4】