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特開2023-1647242つの領域を含む応力プロファイルを含むガラス系物品および製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164724
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】2つの領域を含む応力プロファイルを含むガラス系物品および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20231102BHJP
   C03C 3/097 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C3/097
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023158257
(22)【出願日】2023-09-22
(62)【分割の表示】P 2021101484の分割
【原出願日】2017-04-07
(31)【優先権主張番号】62/320,109
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー マイケル グロス
(72)【発明者】
【氏名】シャオジュ グオ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル オラム
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン バリー レイマン
(72)【発明者】
【氏名】ロスチラフ ヴァチェフ ルセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィトール マリーノ シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】トレヴァー エドワード ヴィランテヴィチ
(57)【要約】
【課題】2種類の応力プロファイル領域を有するガラス系物品を提供する。
【解決手段】0.1mm~2mmの厚さ(t)を画定する第1の表面とその反対にある第2の表面と、応力プロファイルとを含み、0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、-200MPa/μm~-25MPa/μmまたは25MPa/μm~200MPa/μmの傾きを有する接線を含み、0.035・t~0.965・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの数式の全ての点は、-15MPa/μm~15MPa/μmの傾きを有する接線を含み、第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの数式は、1.2~3.2の冪指数を有する冪乗則プロファイルを形成し、応力プロファイルは、300MPa~1100MPaの表面圧縮応力と50MPa以上の最大中央張力を含む、ガラス系物品である。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面であって、0.1mm~2mmの範囲内の厚さ(t)を画定する第1の表面および第2の表面と、
厚さ(t)の関数である数式による厚さ(t)に沿って延在する応力プロファイルと
を含むガラス系物品であって、
0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの数式の全ての点は、-200MPa/マイクロメートル~-25MPa/マイクロメートルまたは25MPa/マイクロメートル~200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、
0.035・t~0.965・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの数式の全ての点は、-15MPa/マイクロメートル~15MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、
前記第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの数式は、冪指数を有する冪乗則プロファイルを形成し、該冪指数は、1.2~3.2であって、
前記応力プロファイルは、300MPa~1100MPaの表面圧縮応力と50MPa以上の最大中央張力を含む、ガラス系物品。
【請求項2】
前記応力プロファイルは、0.1・t~0.25・tの範囲の圧縮深さを含む、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項3】
最大中央張力は80MPa以下である、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項4】
前記第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、-2MPa/マイクロメートル~2MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項5】
前記第1の厚さ範囲は、0.02・tから最大0.025・tまでかつ0.975・t超から0.98・tまで拡大され、および拡大された前記第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの数式の全ての点は、-200MPa/マイクロメートル~-25MPa/マイクロメートルまたは25MPa/マイクロメートル~200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項6】
前記第1の厚さ範囲は、0.025・tから最大0.035・tまでかつ0.965・t超から最大0.975・tまでさらに拡大され、および前記第1の厚さ範囲のさらなる拡大における応力プロファイルの数式の全ての点は、-200MPa/マイクロメートル~-25MPa/マイクロメートルまたは25MPa/マイクロメートル~200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、請求項5に記載のガラス系物品。
【請求項7】
前記厚さ(t)は1mm以下であり、前記表面圧縮応力は500MPa以上であり、前記圧縮深さは0.14・t以上である、請求項1から6のいずれか1項に記載のガラス系物品。
【請求項8】
前記第1の厚さ範囲にわたって延在するカリウム層深さをさらに含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のガラス系物品。
【請求項9】
(i)強化ガラス系基材のヌープ引っ掻き側方亀裂閾値は、10Nを超え、かつ16N未満であること、
(ii)前記強化ガラス系基材は、180グリット研磨材を用いる表面衝突閾値試験に準拠して400N以上の力で前記第1の表面および前記第2の表面の一方に衝突された場合、40%~100%の残存率を有すること、および
(iii)前記強化ガラス系基材は、30グリット研磨材を用いる端部衝突閾値試験に準拠して300N超~500N未満の端部衝撃または0.68J超~1.58J未満の端部衝撃で残存し得ること
の少なくとも1つを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のガラス系物品。
【請求項10】
中心面は、2モル%~20モル%のLiOを含む組成をさらに含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のガラス系物品。
【請求項11】
前記中心面は、0.5モル%~20モル%のNaOを含む組成をさらに含む、請求項10に記載のガラス系物品。
【請求項12】
0.5モル%~10モル%のPを含む組成を含む、請求項11に記載のガラス系物品。
【請求項13】
前記表面圧縮応力は、690MPa~1100MPaの範囲である、請求項1から6のいずれか1項に記載のガラス系物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
米国特許法第119条の下で、2016年4月8日に出願された米国仮特許出願第62/320109号の優先権の利益を主張する国際出願の日本国へ国内移行された特願2018-540470(国際登録日:2017年4月7日)を親出願として、2021年6月18日出願された分割出願(特願2021-101484)が特許された。本出願は、この特願2021-101484を親出願とする分割出願である。
【技術分野】
【0002】
本開示は、改善された破壊抵抗を含む改善された損傷抵抗を示すガラス系物品に関し、特にゼロではない金属酸化物濃度勾配または厚さの実質的な部分に沿って変動する濃度を示すフュージョン成形可能なガラスおよびガラスセラミック物品に関する。本開示は、種々の接線を有する2つの領域を含む応力プロファイルを含むガラス系物品にも関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス系物品は、そのような物品の表面内に大きい傷を発生させ得る激しい衝撃を受けることが多い。このような傷は、表面から最大約200マイクロメートルの深さまで延在し得る。従来、ガラス中にこのような傷が導入されることによって生じる破壊を防止するために熱強化ガラスが使用されており、なぜなら、熱強化ガラスは、大きい圧縮応力(CS)層(例えば、ガラス全体の厚さの約21%)を示すことが多く、これによってガラス中への傷のさらなる伝播を防止することができ、したがって破壊を防止できるからである。熱強化によって得られる応力プロファイルの一例が図1に示される。図1では、熱処理されたガラス物品100は、第1の表面101、厚さtおよび表面CS110を含む。熱処理されたガラス物品100は、第1の表面101から、本明細書において定義されるように応力が圧縮応力から引張応力に変化する深さである圧縮深さ130(DOC)まで減少するCSを示し、最大中央張力(CT)120に到達する。
【0004】
熱強化は、現在、厚いガラス系物品(すなわち約3ミリメートル以上の厚さtを有するガラス系物品)に限定され、なぜなら、熱強化および所望の残留応力を実現するために、そのような物品の中心と表面との間で十分な温度勾配を形成する必要があるからである。ディスプレイ(例えば、消費者用エレクトロニクス、例えば携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなど)、建築物(例えば、窓、シャワーパネル、カウンタートップなど)、輸送(例えば、自動車、列車、航空機、航洋船など)、電化製品、または優れた破壊抵抗を必要とするが薄く軽量の物品を必要とするあらゆる用途などの多くの用途では、このような物品は、望ましくないかまたは実用的でない。
【0005】
化学強化は、熱強化と同じようにガラス系物品の厚さによって制限されないが、周知の化学強化ガラス系物品は、熱強化ガラス系物品の応力プロファイルを示さない。化学強化によって(例えば、イオン交換プロセスによって)得られる応力プロファイルの一例が図2に示される。図2では、化学強化ガラス系物品200は、第1の表面201、厚さtおよび表面CS210を含む。ガラス系物品200は、第1の表面201から、本明細書において定義されるように応力が圧縮応力から引張応力まで変化する深さにおけるDOC230まで減少するCSを示し、最大CT220に到達する。図2に示されるように、このようなプロファイルは、実質的に平坦なCT領域、すなわちCT領域の少なくとも一部に沿って一定またはほぼ一定の引張張力を有するCT領域を示す。多くの場合、周知の化学強化ガラス系物品は、図1に示される最大中央値と比較してより小さい最大CT値を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
物品の表面における比較的高い圧縮応力と、急な傾きまたは接線を有する第1の応力プロファイル領域と、あまり急ではないプロファイル領域を有する第2の応力プロファイル領域とを有するガラス系物品およびそのようなガラス物品を提供する方法が提供されることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面であって、厚さ(t)を画定する第1の表面および第2の表面と、ゼロではなく、かつ約0・t~約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度と、約80MPa未満の最大CTを含む中央張力(CT)領域とを含むガラス系物品に関する。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品が破壊されると、ガラス系物品は、1平方インチ(6.4516cm)当たり少なくとも2つの破片に破壊される。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品が破壊される場合、ガラス系物品は、1平方インチ(約6.4516cm)当たり少なくとも1個の破片~1平方インチ(約6.4516cm)当たり最大40個の破片に破壊される。
【0008】
1つ以上の実施形態では、金属酸化物の濃度は、ゼロではなく、かつ厚さ全体に沿って変動する。1つ以上の実施形態では、金属酸化物は、厚さ範囲に沿って応力を発生させる。金属酸化物の一価イオンは、ガラス系基材中の金属酸化物の一価イオンの全ての最大イオン直径を有することができる。金属酸化物の濃度は、第1の表面から、第1の表面と第2の表面との間の点の値まで減少することができ、かつその値から第2の表面まで増加する。例えば、第1の表面における金属酸化物の濃度は、約0.5・tに等しい深さにおける金属酸化物の濃度の約1.5倍であり得る。いくつかの場合、金属酸化物の濃度は、厚さ全体にわたって約0.05モル%以上(例えば、約1モル%~約15モル%の範囲内)である。金属酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、およびCsOのいずれか1つ以上を含むことができる。1つ以上の実施形態では、金属酸化物の濃度勾配は、ガラス系物品のCT領域内に存在することができる。
【0009】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、厚さに沿って延在する応力プロファイルを含み、約0・t~最大0.3・tおよび0.7・t超の厚さ範囲間の応力プロファイルの全ての点は、約-0.1MPa/マイクロメートル未満であるかまたは約0.1MPa/マイクロメートルを超える傾きを有する接線を含む。いくつかの実施形態では、応力プロファイルは、最大CSと、DOCと、約80MPa未満の最大CTとを含み、CSの最大絶対値に対する最大CTの比は、約0.01~約0.2の範囲内であり、DOCは約0.1・t以上である。1つ以上の実施形態のガラス系物品が破壊される場合、ガラス系物品は、1平方インチ(約6.4516cm)当たり少なくとも2つの破片に破壊される。
【0010】
1つ以上の実施形態のガラス系物品は、約300MPa以上または約500MPa以上の表面圧縮応力(CS)を含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス系物品は、約200MPa以上の表面CS、および約0.4・t以上の層の化学深さを含む。1つ以上の実施形態では、CSは、第1の表面からDOCまで延在することができ、DOCは、約0.1・t以上である。いくつかの実施形態のガラス系物品は、約0.01~約0.2の範囲内の、表面CSの絶対値(最大CSを含むことができる)に対する最大CTの比を示す。任意選択的に、表面CSの絶対値は、最大CTよりも大きい。
【0011】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、第1の金属酸化物濃度および第2の金属酸化物濃度を含み、第1の金属酸化物濃度は、約0・t~約0.5・tの第1の厚さ範囲から約0モル%~約15モル%の範囲内であり、第2の金属酸化物濃度は、約0マイクロメートル~約25マイクロメートルの第2の厚さ範囲から約0モル%~約10モル%の範囲内である。任意選択的に、ガラス系物品は、第3の金属酸化物を含む。
【0012】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、ゼロではなく、かつ約0・t~約0.3・t(または約0・t~約0.4・t、または約0・t~約0.45・t)の厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度と、約200MPa以上の表面圧縮応力と、約80MPa未満の最大CT(MPa)を有するCT領域とを含む。
【0013】
ガラス系物品は、約3ミリメートル以下または約1ミリメートル以下の厚さtを有することができる。ガラス系物品は、非晶質構造、結晶構造、または両方の組合せを有することができる。ガラス系物品は、約380nm~約780nmの範囲内の波長にわたって約88%以上の透過率を示すことができる。さらに、いくつかの実施形態では、ガラス系物品は、CIE光源F02下において、約88以上のL値、約-3~約+3の範囲内のa値、および約-6~約+6の範囲内のb値のCIELAB色空間座標を示すことができる。
【0014】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、80GPa未満のヤング率を含む。ガラス系物品は、約100キロポアズ(kP)(10kPa・s)以上の液相線粘度を含む。
【0015】
ガラス系物品は、約15モル%を超えるAlとNaOとの合計量を含む組成物と、約4モル%を超えるNaOを含む組成物と、B、ZnO、またはBとZnOとの両方を実質的に含まない組成物と、ゼロではない量のPを含む組成物とのいずれか1つ以上を有する組成物を含むことができる。
【0016】
ガラス系物品は、約460℃において約450μm/時以上の拡散率と、約0.15・tを超えるDOCとを含むことができ、表面CSの絶対値は、最大CTの1.5倍以上である。
【0017】
いくつかの実施形態では、ガラス系物品は、約0.7MPa・m1/2以上の破壊靱性(K1C)を含む。
【0018】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約0J/m2超~20J/m未満の貯蔵引張エネルギーを示す。
【0019】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、CS領域とCT領域とを含む応力プロファイルを含み、そのCT領域は、応力(x)=MaxCT-(((MaxCT・(n+1))/0.5)・|(x/t)-0.5|)の式によって概算され、式中、MaxCTは、最大CT値でありかつMPaの単位の正の値であり、xは、マイクロメートルの単位での厚さ(t)に沿った位置であり、およびnは、1.5~5である。いくつかの実施形態では、CT領域は、約50MPa~約250MPaの範囲内の最大CT値を含み、および最大CT値は、約0.4t~約0.6tの範囲内の深さに存在する。いくつかの場合、約0t~約0.1tマイクロメートルの範囲内の深さから、応力プロファイルは、約20MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの範囲内の傾きを含む。1つ以上の実施形態では、応力プロファイルは、0.5tから表面まで測定された場合の複数の誤差関数の組合せによって画定される。
【0020】
本開示の第2の態様は、(モル%単位で)約60~約75の範囲内の量のSiO、約12~約20の範囲内の量のAl、約0~約5の範囲内の量のB、約2~約8の範囲内の量のLiO、4を超える量のNaO、ゼロではない量のP、約0~約5の範囲内の量のMgO、約0~約3の範囲内の量のZnO、約0~約5の範囲内の量のCaOを含む、強化ガラス系物品中のガラス組成物の使用であって、ガラス組成物は、イオン交換可能でありかつ非晶質であり、AlおよびNaOの総量は、約15モル%を超え、ガラス組成物は、核形成剤を実質的に含まず、ガラス組成物は、約100kP(10kPa・s)以上の液相線粘度を含む、使用に関する。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、B、ZnO、またはBとZnOとの両方を実質的に含まない。
【0021】
本開示の第3の態様は、モル%単位で約60~約75の範囲内の量のSiO、約12~約20の範囲内の量のAl、約0~約5の範囲内の量のB、約2~約8の範囲内の量のLiO、約4を超える量のNaO、約0~約5の範囲内の量のMgO、約0~約3の範囲内の量のZnO、約0~約5の範囲内の量のCaO、およびゼロではない量のPを含む組成物を含むガラス基材であって、イオン交換可能でありかつ非晶質であり、組成物中のAlおよびNaOの総量は、約15モル%を超え、ガラス組成物は、核形成剤を実質的に含まず、かつ約100kP(10kPa・s)以上の液相線粘度を含む、ガラス基材に関する。
【0022】
いくつかの実施形態では、ガラス基材は、非晶質でありかつ強化され、NaO濃度は、変動し、組成物は、核形成剤を実質的に含まず、組成物中のAlおよびNaOの総量は、約15モル%を超え、かつ約100kP(10kPa・s)以上の液相線粘度を含む。いくつかの実施形態では、ガラス基材は、ゼロではない量のPを含む。
【0023】
本開示の第4の態様は、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面であって、0.1mm~2mmの範囲内の厚さ(t)を画定する第1の表面および第2の表面と、厚さ(t)に沿って延在する応力プロファイルとを含むガラス系物品であって、約0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、約0.035・t~0.965・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-15MPa/マイクロメートル~約15MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、応力プロファイルは、約200MPa~約1100MPaの表面CSを含み、応力プロファイルは、約0.1・t~0.25・tの範囲のDOCを含む、ガラス系物品に関する。いくつかの実施形態では、約0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0024】
1つ以上の実施形態では、第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-2MPa/マイクロメートル~約2MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0025】
1つ以上の実施形態では、約0.025・t~0.975・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-15MPa/マイクロメートル~約15MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。いくつかの実施形態では、第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-2MPa/マイクロメートル~約2MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0026】
1つ以上の実施形態では、約0.02・t~0.98・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-15MPa/マイクロメートル~約15MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。いくつかの実施形態では、第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-2MPa/マイクロメートル~約2MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0027】
1つ以上の実施形態では、第2の厚さ範囲内の応力プロファイルは、冪指数を有する冪乗則プロファイルを形成し、冪指数は、約1.2~3.2である。いくつかの実施形態では、冪指数は、約1.3~2.8である。
【0028】
1つ以上の実施形態では、表面CSは、約300、350、400、450、500、550、600、610、620MPa~約650、700、750、800、850、900、950、1000または1100MPaである。
【0029】
1つ以上の実施形態では、第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-170MPa/マイクロメートル~約-30MPa/マイクロメートルまたは約30MPa/マイクロメートル~約170MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。1つ以上の実施形態では、第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-170MPa/マイクロメートル~約-30MPa/マイクロメートルまたは約30MPa/マイクロメートル~約170MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。いくつかの実施形態では、第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-140MPa/マイクロメートル~約-35MPa/マイクロメートルまたは約35MPa/マイクロメートル~約140MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。いくつかの実施形態では、第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-140MPa/マイクロメートル~約-35MPa/マイクロメートルまたは約35MPa/マイクロメートル~約140MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0030】
1つ以上の実施形態では、約0・t~最大0.025・tおよび0.975・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。1つ以上の実施形態では、約0・t~最大0.025・tおよび0.975・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。いくつかの実施形態では、第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-170MPa/マイクロメートル~約-30MPa/マイクロメートルまたは約30MPa/マイクロメートル~約170MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、いくつかの実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-170MPa/マイクロメートル~約-30MPa/マイクロメートルまたは約30MPa/マイクロメートル~約170MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、いくつかの実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-140MPa/マイクロメートル~約-35MPa/マイクロメートルまたは約35MPa/マイクロメートル~約140MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0031】
約0・t~最大0.035・tおよび0.965・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、1つ以上の実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、いくつかの実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-170MPa/マイクロメートル~約-30MPa/マイクロメートルまたは約30MPa/マイクロメートル~約170MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、いくつかの実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-140MPa/マイクロメートル~約-35MPa/マイクロメートルまたは約35MPa/マイクロメートル~約140MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0032】
1つ以上の実施形態では、第1の厚さ範囲は、K含有塩中のイオン交換によって得られる。
【0033】
1つ以上の実施形態では、第2の厚さ範囲は、Na含有塩中のイオン交換によって得られる。
【0034】
1つ以上の実施形態では、応力プロファイルは、1つのイオン交換ステップを用いて得られる。
【0035】
1つ以上の実施形態では、応力プロファイルは、2つ以上のイオン交換ステップを用いて得られる。
【0036】
1つ以上の実施形態では、表面CSは、約690MPa~950MPaである。
【0037】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約0.5モル%のP~10モル%のPの組成を含む。
【0038】
本開示の第5の態様は、中心面を含むガラス系物品であって、中心面は、約2~約20モル%のLiOと、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面であって、0.1mm~2mmの範囲内の厚さ(t)を画定する第1の表面および第2の表面と、厚さ(t)に沿って延在する応力プロファイルとを含み、約0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、応力プロファイルは、約200MPa~約1100MPaの表面CSを含み、応力プロファイルは、約0.05・t~0.25・tの範囲のDOCを含む、ガラス系物品に関する。いくつかの実施形態では、約0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0039】
1つ以上の実施形態では、第1の厚さ範囲は、K含有塩中のイオン交換によって得られる。
【0040】
1つ以上の実施形態では、第2の厚さ範囲は、NaまたはKを含有する塩中のイオン交換によって得られる。
【0041】
1つ以上の実施形態では、応力プロファイルは、1つのイオン交換ステップを用いて得られる。
【0042】
1つ以上の実施形態では、応力プロファイルは、2つ以上のイオン交換ステップを用いて得られる。
【0043】
1つ以上の実施形態では、表面CSは、約690MPa~950MPaの範囲である。
【0044】
1つ以上の実施形態では、第2の厚さ範囲内の応力プロファイルは、冪指数を有する冪乗則プロファイルを形成し、冪指数は、約1.2~3.4である。いくつかの実施形態では、冪指数は、約1.3~2.8である。
【0045】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約0.5モル%のP~10モル%のPを含む組成を含む。
【0046】
1つ以上の実施形態では、中心面は、約0.5モル%~20モル%のNaOを含む組成をさらに含む。いくつかの実施形態では、中心面は、約2モル%~10モル%のLiOを含む組成をさらに含む。いくつかの実施形態では、ガラス物品の中心面内のNaOの濃度は、約5モル%~16モル%である。いくつかの実施形態では、ガラス物品の中心面内のNaOの濃度は、約10モル%~15モル%である。いくつかの実施形態では、ガラス物品の中心面内のLiOの濃度は、約3モル%~10モル%である。
【0047】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載の応力プロファイルを得るための方法が提供される。このような方法は、1つのイオン交換または2つ以上のイオン交換のいずれかによる比較的長いイオン交換時間を要する。1つ以上の実施形態によると、イオン交換時間は、1時間を超え、1.5時間を超え、2時間を超え、2.5時間を超え、3時間を超え、3.5時間を超え、4時間を超え、4.5時間を超え、5時間を超え、5.5時間を超え、6時間を超え、6.5時間を超え、7時間を超え、7.5時間を超え、および8時間を超える。
【0048】
さらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、部分的に以下の説明から当業者に容易に明らかとなり、または以下の詳細な説明、請求項、および添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって理解されるであろう。
【0049】
以上の概要および以下の詳細な説明の両方は、単に例示的なものであり、請求項の性質および特性を理解するための概要または枠組みを提供することが意図されることを理解されたい。添付の図面は、さらなる理解を得るために含まれ、本明細書に含まれかつ本明細書の一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を示し、本明細書の記述とともに種々の実施形態の原理および操作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】周知の熱強化ガラス物品の厚さ全体にわたる断面図である。
図2】周知の化学強化ガラス物品の厚さ全体にわたる断面図である。
図3】本開示の1つ以上の実施形態による化学強化ガラス系物品の厚さ全体にわたる断面図である。
図4】リングオンリング装置の概略断面図である。
図5】イオン交換時間の関数としての実施例1A~1Gの最大CT値を示すグラフである。
図6】実施例1Eのガラス系物品の表面からガラス系物品中まで延在する深さの関数としての実施例1Eの測定応力を示すグラフである。
図7】種々の荷重または圧力において研磨した後の実施例2Aによるガラス系物品の破壊荷重値を示すグラフである。
図8】180グリット研磨紙上、次に30グリット研磨紙上に落下させた後に実施例2Aによるガラス系物品が破壊された高さを示すグラフである。
図9】30グリット研磨紙上に落下させた後に実施例3Aおよび比較例3Bによるガラス系物品が破壊された高さを示すグラフである。
図10】25psi(172kPa)の荷重または圧力において研磨した後の実施例3Aおよび比較例3Bによるガラス系物品の平均破壊荷重を比較するグラフである。
図11】45psi(310kPa)の荷重または圧力において研磨した後の実施例3Aおよび比較例3Bによるガラス系物品の平均破壊荷重を比較するグラフである。
図12】深さの関数としての実施例4A-1~4A-6の応力プロファイルを示すグラフである。
図13】イオン交換時間の関数としての実施例4A-1~4A-6の最大CTおよびDOC値を示すグラフである。
図14】深さの関数としての実施例4B-1~4B-6の応力プロファイルを示すグラフである。
図15】イオン交換時間の関数としての実施例4B-1~4B-6の最大CTおよびDOC値を示すグラフである。
図16】深さの関数としての実施例4C-1~4C-6の応力プロファイルを示すグラフである。
図17】イオン交換時間の関数としての実施例4C-1~4C-6の最大CTおよびDOC値を示すグラフである。
図18】深さの関数としての実施例4D-1~4D-6の応力プロファイルを示すグラフである。
図19】イオン交換時間の関数としての実施例4D-1~4D-6の最大CTおよびDOC値を示すグラフである。
図20】深さの関数としての比較例5Aおよび実施例5Bの応力プロファイルを示すグラフである。
図21】最大CTの関数としての比較例5Aおよび実施例5Bの貯蔵引張エネルギーを示すグラフである。
図22】最大CTの関数としての比較例5Cおよび実施例5Dの貯蔵引張エネルギーを示すグラフである。
図23】本開示の1つ以上の実施形態による4つの化学強化ガラス系物品の厚さ全体にわたる断面図である。
図24】本開示の1つ以上の実施形態による化学強化ガラス系物品のK、NaおよびLiの規格化されたマイクロプローブ濃度プロファイルを示すグラフである。
図25】本開示の1つ以上の実施形態による4つの化学強化ガラス系物品の引っ掻き試験結果の画像である。
図26】本開示の1つ以上の実施形態によるガラス系物品の平均破壊荷重を比較するグラフである。
図27A】モバイルまたは手持ち式の電子デバイスに使用されるガラス系物品中で典型的に生じる損傷導入および曲げによる破壊の主要機構の概略断面図である。
図27B】本開示に記載の研磨紙上反転球(IBoS)試験の実施に使用される装置の一実施形態の概略断面図である。
図28】本明細書に記載の装置でのIBoS試験の実施方法のフローチャートである。
図29】ガラス系物品のための試験装置の側面図である。
図30図29に示される試験装置の一部の側面図である。
図31図29に示される試験装置の後方斜視図である。
図32図29に示される試験装置の前方斜視図である。
図33】ガラス系物品のための試験装置の側面図である。
図34図29に示される試験装置の一部の側面図である。
図35図29に示される試験装置の一部の別の構成の概略図である。
図36】いくつかの実施形態による種々の応力プロファイルを示すグラフである。
図37】いくつかの実施形態による試料のIBoS試験結果を示すグラフである。
図38】いくつかの実施形態による試料およびいくつかの比較用試料の表面衝突閾値試験結果を示すグラフである。
図39】いくつかの実施形態による試料の端部衝突試験結果を示すグラフである。
図40A】本明細書に開示されるいずれかのガラス系物品が組み込まれる代表的な電子デバイスの平面図である。
図40B図40Aの代表的な電子デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
ここで、種々の実施形態を詳細に参照し、それらの例が付随する実施例および図面において例示される。
【0052】
以下の説明において、図面に示されるいくつかの図の全体にわたり、同様の参照文字は同様のまたは対応する部分を示す。他に明記されない限り、「上部」、「底部」、「外側」、「内側」などの用語は便宜上の単語であり、限定の用語として解釈すべきではないことも理解される。さらに、群が要素の群およびそれらの組合せの少なくとも1つを含むとして記載される場合には常に、その群は、個別または互いの組合せのいずれかで任意の数の記載の要素を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなることができると理解される。同様に、群が要素の群またはそれらの組合せの少なくとも1つからなると記載される場合には常に、その群は、個別または互いの組合せのいずれかで任意の数の記載の要素からなることができると理解される。他に明記されない限り、ある範囲の値が記載される場合、これは、その範囲の上限および下限と、それらの間のあらゆる範囲との両方を含む。本明細書において使用される場合、不定冠詞の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および対応する定冠詞の「その(the)」は、他に明記されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。本明細書および図面に開示される種々の特徴は、任意のおよびあらゆる組合せで使用できることも理解される。
【0053】
本明細書において使用される場合、「ガラス系物品」および「ガラス系基材」という用語は、全体的または部分的にガラスでできたあらゆる物体を含む最も広い意味で使用される。ガラス系物品としては、ガラスと非ガラス材料との積層体、ガラスと結晶性材料との積層体、およびガラスセラミック(非晶質相および結晶相を含む)が挙げられる。他に明記されない限り、全ての組成は、モルパーセント(モル%)において表される。
【0054】
「実質的に」および「約」という用語は、あらゆる定量的な比較、値、測定、または他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために本明細書において使用できることに留意されたい。これらの用語は、本明細書において、ある定量的表現が、対象となる主題の基本的機能に変化を生じさせることなく記載の基準から変動できる程度を表すためにも使用される。したがって、例えば、「MgOを実質的に含まない」ガラス系物品は、MgOがガラス系物品中に積極的に加えられるかまたはバッチとして処理されすることがなく、汚染物質として非常に少量で存在し得る、ガラス系物品である。
【0055】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、量、サイズ、処方、パラメーターならびに他の量および特性が、厳密でなくかつ厳密である必要がないが、許容範囲、換算率、丸め、測定誤差など、および当業者に周知の他の要因を反映して、必要に応じて近似でありかつ/またはより大きいかもしくはより小さいことがあり得ることを意味する。「約」という用語が、ある値またはある範囲の端点の記載に使用される場合、本開示は、言及されるその特定の値または端点を含むものと理解されるべきである。本明細書における数値またはある範囲の端点に「約」が記載される場合もされない場合も、その数値またはある範囲端点は、「約」によって修飾される実施形態および「約」によって修飾されない実施形態の2つの実施形態を含むことが意図される。それぞれの範囲の端点は、他方の端点と関連する場合および他方の端点とは独立する場合の両方で有効となることをさらに理解されたい。
【0056】
他に明記されない限り、全ての温度は摂氏温度(℃)で表される。本明細書において使用される場合、「軟化点」という用語は、ガラスの粘度が約107.6ポアズ(P)(10Pa・s)となる温度を意味し、「徐冷点」という用語は、ガラスの粘度が約1013.2ポアズ(1012.2Pa・s)となる温度を意味し、「200ポアズ温度(T200P)」という用語は、ガラスの粘度が約200ポアズ(20Pa・s)となる温度を意味し、「1011ポアズ温度」という用語は、ガラスの粘度が約1011ポアズ(1010Pa・s)となる温度を意味し、「35kP温度(T35kP)」という用語は、ガラスの粘度が約35キロポアズ(kP)(3.5kPa・s)となる温度を意味し、「160kP温度(T160kP)」は、ガラスの粘度が約160kP(16kPa・s)となる温度を意味する。
【0057】
一般に図面および特に図1~3を参照すると、これらの図は特定の実施形態を示すことを目的とし、本開示またはそれに添付される請求項の限定を意図するものではないことが理解されるであろう。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、図面の特定の特徴および特定の図は、縮尺が誇張されて示されるか、または明確さおよび簡潔さのために概略的に示される場合がある。
【0058】
本明細書において使用される場合、DOCは、ガラス系物品内の応力が圧縮応力から引張応力に変化する深さを意味する。DOCにおいて、応力は、正の(圧縮)応力から負の(引張)応力までを横切り(例えば、図1の130)、したがってゼロの応力値を示す。
【0059】
本明細書において使用される場合、「化学深さ」、「層の化学深さ」、および「化学層深さ」という用語は、同義で使用することができ、金属酸化物またはアルカリ金属酸化物のイオン(例えば、金属イオンまたはアルカリ金属イオン)がガラス系物品中に拡散する深さ、および電子プローブマイクロアナリシス(EPMA)またはグロー放電発光分光法(GD-OES)によって測定されてイオン濃度が最小値に到達する深さを意味する。特に、NaO拡散深さまたはNa+イオン濃度の評価は、EPMAおよび表面応力計を用いて決定され得る(以下により詳細に記載する)。
【0060】
当技術分野において一般に使用される慣習によると、他に明記されない限り、圧縮応力は、負(<0)として表され、引張応力は、正(>0)の応力として表される。しかし、本明細書の記述全体にわたり、CSは、正または絶対値で表され、すなわち本明細書に記載される場合にはCS=|CS|である。
【0061】
モバイル電子デバイスおよびタッチ可能なディスプレイのカバーガラスとして使用できる、アルカリ含有ガラス、およびガラスセラミックを含むケイ酸塩ガラスなどのガラスを含む薄い化学強化ガラス系物品が本明細書に記載される。ガラス系物品は、ディスプレイ(または表示装置として)(例えば、広告用掲示板、販売時点管理システム(point of sale system)、コンピュータ、ナビゲーションシステムなど)、建築物品(壁、建具、パネル、窓など)、輸送物品(例えば、自動車用途、列車、航空機、航洋船など)、電化製品(例えば、洗濯機、乾燥機、食器洗浄機、冷蔵庫など)、またはある程度の破壊抵抗を必要とするあらゆる物品に使用することもできる。
【0062】
特に、本明細書に記載のガラス系物品は、薄く、典型的に厚いガラス物品(例えば、約2mmまたは3mm以上の厚さを有する)の熱強化によってのみ実現可能な応力プロファイルを示す。ガラス系物品は、その厚さに沿って独特の応力プロファイルを示す。いくつかの場合、本明細書に記載のガラス系物品は、熱強化ガラス物品よりも大きい表面CSを示す。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、ガラス系物品内のより深くまで延在する圧縮応力層を有し(その中で、CSは、周知の化学強化ガラス系物品よりも段階的に減少し増加する)、それにより、ガラス系物品またはそれを含むデバイスが硬い表面(例えば、花崗岩)または硬く粗い表面(例えば、アスファルト)上に落下する場合でも、このようなガラス系物品は、実質的に改善された破壊抵抗を示す。1つ以上の実施形態のガラス系物品は、いくつかの周知の化学強化ガラス基材よりも大きい最大CT値を示す。
【0063】
CSおよびカリウムイオン侵入深さ(「カリウムDOL」)、または典型的にカリウムイオンによって生じる特に表面スパイクの圧縮応力の深さを典型的に示す化学層深さ「DOL」もしくは「化学DOL」は、当技術分野において周知の手段を用いて測定される。本明細書において使用される場合、DOCは、本明細書に記載の化学強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中の応力が圧縮から引張に変化する深さを意味する。DOCは、イオン交換処理に依存して、FSMまたは散乱光偏光器(SCALP)によって測定することができる。カリウムイオンのガラス物品中への交換によってガラス物品中の応力が生じる場合、DOCを測定するためにFSMが使用される。ナトリウムイオンのガラス物品中への交換によって応力が生じる場合、DOCを測定するためにSCALPが使用される。カリウムイオンおよびナトリウムイオンの両方の交換によってガラス物品中の応力が生じる場合、SCALPによってDOCが測定され、なぜなら、ナトリウムの交換深さがDOCを示し、カリウムイオンの交換深さが圧縮応力の大きさの変化を示す(しかし、圧縮から引張への応力の変化ではない)と考えられるからであり、このようなガラス物品中のカリウムイオンの交換深さは、FSMによって測定される。
【0064】
イオン交換プロセスの結果としてカリウム侵入深さが示されるため、カリウムDOLは、DOCとは区別される。本明細書に記載の物品の場合、カリウムDOLは、典型的にDOCよりも小さい。CSおよびカリウムDOLは、有限会社折原製作所(日本)製造のFSM-6000などの市販の機器を用いて表面応力計(FSM)によって測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光係数(SOC)を正確に測定することに依拠している。このSOCは、その全体の内容が参照により本明細書に援用される“Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient”という名称のASTM規格C770-98(2013)に記載のProcedure Cの修正版により測定される。この修正版は、5~10mmの厚さおよび12.7mmの直径を有する試験片としてのガラス円板の使用を含み、この円板は、等方性で均一であり、中心に穴が開けられ、両面は研磨されて平行である。この修正版は、加えられる最大の力Fmaxの計算も含む。この力は20MPa以上の圧縮応力を得るのに十分となるべきである。Fmaxは、以下のように計算される。
Fmax=7.854・D・h
式中、
Fmax=ニュートン単位の力
D=円板の直径
h=光路の厚さ
である。加えられるそれぞれの力の場合、応力は、以下のように計算される。
σMPa=8F/(π・D・h)
式中、
F=ニュートン単位の力
D=円板の直径
h=光路の厚さ
である。
【0065】
最大CT値は、散乱光偏光器(SCALP)を用いて測定される。屈折近視野(RNF)法またはSCALPを使用して応力プロファイルを測定することができる。RNF法が使用される場合、SCALPによって得られる最大CT値が利用される。特に、RNF法によって測定される応力プロファイルは、力平衡が形成され、SCALP測定によって得られる最大CT値に対して較正される。RNF法は、“Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample”という名称の米国特許第8,854,623号明細書に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。特に、RNF法は、ガラス系物品を基準ブロックに隣接して配置するステップと、1Hz~50Hzの速度で直交する偏光間で切り変えられる偏光スイッチされた光ビームを発生させるステップと、偏光スイッチされた光ビームの出力量を測定するステップと、偏光スイッチされた基準信号を発生させるステップとを含み、直交する偏光のそれぞれの測定出力量は、互いの50%の範囲内である。この方法は、ガラス試料中の種々の深さにおいて、偏光スイッチされた光ビームをガラス試料および基準ブロックに透過させるステップと、次に中継光学系を用いて、透過した偏光スイッチされた光ビームを信号光検出器に中継するステップとをさらに含み、信号光検出器は、偏光スイッチされた検出器信号を発生させる。この方法はまた、検出器信号を基準信号で除して、正規化された検出器信号を形成するステップと、正規化された検出器信号からガラス試料のプロファイル特性を求めるステップとを含む。RNFプロファイルは、次に平滑化され、CT領域のために使用される。前述のように、FSM技術は、表面CSおよび表面付近のCS領域中の応力プロファイルの傾きのために使用される。
【0066】
前述したように、本明細書に記載のガラス系物品は、イオン交換によって化学強化され、周知の強化ガラス物品が示すものとは区別される応力プロファイルを示す。本開示において、ガラス系基材は、一般に強化されておらず、ガラス系物品は、一般に、(例えば、イオン交換によって)強化されたガラス系基材を意味する。このプロセスでは、ガラス系物品の表面または表面付近のイオンは、同じ価数または酸化状態を有するより大きいイオンで置換または交換される。ガラス系物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む実施形態では、ガラスの表面層中のイオンおよびより大きいイオンは、Li(ガラス系物品中に存在する場合)、Na、K、Rb、およびCsなどの一価のアルカリ金属陽イオンである。代替的に、表面層中の一価陽イオンは、Agなどのアルカリ金属陽イオン以外の一価陽イオンで置換することができる。
【0067】
イオン交換プロセスは、典型的に、ガラス系基材中のより小さいイオンと交換されるより大きいイオンを含有する1つの溶融塩浴(または2つ以上の溶融塩浴)中にガラス系基材を浸漬することによって行われる。水性塩浴も使用できることに留意すべきである。さらに、浴の組成は、2種類以上のより大きいイオン(例えば、Na+およびK+)または1種類のより大きいイオンを含むことができる。限定するものではないが、浴の組成および温度、浸漬時間、ガラス系物品を1つの塩浴(または複数の浴)中に浸漬する回数、複数の塩浴の使用、アニール、洗浄などのさらなるステップなどのイオン交換プロセスのパラメーターが、ガラス系物品の組成(物品の構造および存在するあらゆる結晶相を含む)、ならびに強化によって得られるガラス系物品の所望のDOLまたはDOCおよびCSによって一般に決定されることを当業者は理解するであろう。例として、ガラス系基材のイオン交換は、限定するものではないが、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、および塩化物などの塩を含有する少なくとも1つの溶融浴中にガラス系基材を浸漬することによって行うことができる。典型的な硝酸塩としては、KNO、NaNO、LiNO、NaSO、およびそれらの組合せが挙げられる。溶融塩浴の温度は、典型的に約380℃~最大約450℃の範囲内であり、一方、浸漬時間は、ガラスの厚さ、浴温度、およびガラスの拡散率に依存して約15分~最大約100時間の範囲である。しかし、上記のものと異なる温度および浸漬時間を使用することもできる。
【0068】
1つ以上の実施形態では、ガラス系基材は、約370℃~約480℃の温度を有する100%NaNOの溶融塩浴中に浸漬することができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基材は、約5%~約90%のKNOおよび約10%~約95%のNaNOを含む溶融混合塩浴中に浸漬することができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基材は、NaSOおよびNaNOを含む溶融混合塩浴中に浸漬することができ、より広い温度範囲(例えば、最大約500℃)を有することができる。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、第1の浴中に浸漬した後に第2の浴中に浸漬することができる。第2の浴中の浸漬は、100%KNOを含む溶融塩浴中への15分~8時間の浸漬を含むことができる。
【0069】
1つ以上の実施形態では、ガラス系基材は、約420℃未満の温度(例えば、約400℃または約380℃)を有するNaNOおよびKNO(例えば、49%/51%、50%/50%、51%/49%)を含む混合溶融塩浴中に約5時間未満、またはさらには約4時間以下にわたって浸漬することができる。
【0070】
イオン交換条件は、「スパイク」が得られるように、または結果として得られるガラス系物品の表面もしくは表面付近の応力プロファイルの傾きが増加するように調整することができる。このスパイクは、本明細書に記載のガラス系物品中に使用されるガラス組成物の独自の性質のため、浴が1つの組成物または混合組成物を有する1つの浴または複数の浴によって実現することができる。
【0071】
図3に示されるように、1つ以上の実施形態のガラス系物品300は、第1の表面302および第1の表面の反対にある第2の表面304であって、厚さtを画定する第1の表面302および第2の表面304を含む。1つ以上の実施形態では、厚さtは、約3ミリメートル以下(例えば、約0.01ミリメートル~約3ミリメートル、約0.1ミリメートル~約3ミリメートル、約0.2ミリメートル~約3ミリメートル、約0.3ミリメートル~約3ミリメートル、約0.4ミリメートル~約3ミリメートル、約0.01ミリメートル~約2.5ミリメートル、約0.01ミリメートル~約2ミリメートル、約0.01ミリメートル~約1.5ミリメートル、約0.01ミリメートル~約1ミリメートル、約0.01ミリメートル~約0.9ミリメートル、約0.01ミリメートル~約0.8ミリメートル、約0.01ミリメートル~約0.7ミリメートル、約0.01ミリメートル~約0.6ミリメートル、約0.01ミリメートル~約0.5ミリメートル、約0.1ミリメートル~約0.5ミリメートル、または約0.3ミリメートル~約0.5ミリメートルの範囲内)であり得る。
【0072】
ガラス系物品は、第1の表面302から第2の表面304まで(または厚さtの長さ全体に沿って)延在する応力プロファイルを含む。図3に示される実施形態では、本明細書に記載の技術によって測定されたときの応力プロファイル312は、本明細書に記載のようなFSM技術によって概算される応力プロファイル340とともに示される。x軸は、応力値を表し、y軸は、ガラス系物品中の厚さまたは深さを表す。
【0073】
図3に示されるように、応力プロファイル312は、CS層315(表面CS310を有する)と、CT層325(最大CT320を有する)と、応力プロファイル312が330において圧縮から引張に変化するDOC317とを含む。CT層325は、関連する深さまたは長さ327(CT領域または層)も有する。概算される応力プロファイル340は、DOCよりも大きいDOLを含む。本明細書において使用される場合、DOCおよびDOLへの言及は、一方の表面(第1の表面302または第2の表面304のいずれか)からの深さに関するものであり、このようなDOCまたはDOLは、他方の表面からも存在し得ることが認識される。
【0074】
表面CS310は、約150MPa以上または約200MPa以上(例えば、約250MPa以上、約300MPa以上、約400MPa以上、約450MPa以上、約500MPa以上、または約550MPa以上)であり得る。表面CS310は、最大約900MPa、最大約1000MPa、最大約1100MPa、または最大約1200MPaであり得る。本明細書において提供される表面CS値は、最大CSを含むこともできる。いくつかの実施形態では、表面CSは最大CSよりも小さい。
【0075】
最大CT320は、約80MPa以下、約75MPa以下または約70MPa以下(例えば、約60MPa以下、約55MPa以下、50MPa以下、または約40MPa以下)であり得る。いくつかの実施形態では、最大CT320は、約25MPa~約80MPa(例えば、約25MPa~約75MPa、約25MPa~約70MPa、約25MPa~約65MPa、約45MPa~約80MPa、約50MPa~約80MPa、または約60MPa~約80MPa)の範囲内であり得る。
【0076】
最大CT320は、約0.3・t~約0.7・t、約0.4・t~約0.6・t、または約0.45・t~約0.55・tの範囲に位置することができる。表面CS310および最大CT320のいずれか1つ以上は、ガラス系物品の厚さによって決定され得ることに留意すべきである。例えば、約0.8mmの厚さを有するガラス系物品は、約75MPa以下の最大CTを有することができる。ガラス系物品の厚さが減少すると、最大CTが増加し得る。換言すると、最大CTは、厚さの減少とともに(すなわちガラス系物品がより薄くなると)増加する。
【0077】
いくつかの実施形態では、表面CS310に対する最大CT320の比は、約0.01~約0.2の範囲内(例えば、約0.01~約0.18、約0.01~約0.16、約0.01~約0.15、約0.01~約0.14、約0.01~約0.1、約0.02~約0.2、約0.04~約0.2、約0.05~約0.2、約0.06~約0.2、約0.08~約0.2、約0.1~約0.2、または約0.12~約0.2の範囲内)である。周知の化学強化ガラス系物品では、表面CS310の絶対値に対する最大CT320の比は、0.2以下または約0.15以下である。いくつかの実施形態では、表面CSの絶対値は、最大CTの1.5倍(または2倍または2.5倍)以上であり得る。いくつかの実施形態では、表面CSの絶対値は、最大CTの最大約48倍、最大CTの最大約40倍、最大CTの最大約20倍、最大CTの最大約10倍、または最大CTの最大約8倍であり得る。表面CSの絶対値は、CTの最大約5倍~約50倍の範囲内であり得る。
【0078】
1つ以上の実施形態では、応力プロファイル312は、最大CSを含み、典型的に、これは表面CS310であり、第1の表面302および第2の表面304の一方または両方に見出すことができる。1つ以上の実施形態では、CS層または領域315は、厚さの一部からDOC317および最大CT320に沿って延在する。1つ以上の実施形態では、DOC317は、約0.1・t以上であり得る。例えば、DOC317は、約0.12・t以上、約0.14・t以上、約0.15・t以上、約0.16・t以上、0.17・t以上、0.18・t以上、0.19・t以上、0.20・t以上、約0.21・t以上、または最大約0.25・tであり得る。いくつかの実施形態では、DOC317は、化学深さ342未満である。化学深さ342は、約0.4・t以上、0.5・t以上、約.55・t以上、または約0.6・t以上であり得る。1つ以上の実施形態では、応力プロファイル312は、放物線状の形状として記載することができる。いくつかの実施形態では、引張応力を示すガラス系物品の領域または深さに沿った応力プロファイルは、放物線状の形状を示す。1つ以上の特定の実施形態では、応力プロファイル312は、平坦な応力(すなわち圧縮または引張)の部分または実質的に一定の応力(すなわち圧縮または引張)を示す部分を含まない。いくつかの実施形態では、CT領域は、平坦な応力を実質的に含まないかまたは実質的に一定の応力を含まない応力プロファイルを示す。1つ以上の実施形態では、約0t~最大約0.2・tおよび0.8・t超(または約0・t~約0.3・tおよび0.7・t超)の厚さ範囲の間の応力プロファイル312の全ての点は、約-0.1MPa/マイクロメートル未満または約0.1MPa/マイクロメートルを超える傾きを有する接線を含む。いくつかの実施形態では、傾きは、約-0.2MPa/マイクロメートル未満であるかまたは約0.2MPa/マイクロメートル超であり得る。いくつかの特定の実施形態では、傾きは、約-0.3MPa/マイクロメートル未満であるかまたは約0.3MPa/マイクロメートル超であり得る。さらなる特定の実施形態では、傾きは、約-0.5MPa/マイクロメートル未満または約0.5MPa/マイクロメートル超であり得る。換言すると、これらの厚さ範囲(すなわち0・t~最大約0.2・tおよび0.8t超、または約0t~約0.3・tおよび0.7・t以上)に沿った1つ以上の実施形態の応力プロファイルは、本明細書に記載のような傾きを有する接線を有する点を排除される。理論によって束縛されるものではないが、周知の誤差関数または準線形応力プロファイルは、約-0.1MPa/マイクロメートル~約0.1MPa/マイクロメートルの範囲内にある傾きを有する接線を有するこれらの厚さ範囲(すなわち約0・t~最大約0.2・tおよび0.8・t超、または約0・t~約0.3・tおよび0.7・t以上)に沿った点を有する(図2の220に示されるような、このような厚さ範囲に沿った平坦またはゼロの傾きの応力プロファイルを示す)。本開示の1つ以上の実施形態のガラス系物品は、図3に示されるように、これらの厚さ範囲に沿って平坦またはゼロの傾きの応力プロファイルを有するこのような応力プロファイルを示さない。
【0079】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、最大の傾きを有する接線および最小の傾きを有する接線を含む、約0.1・t~0.3・tおよび約0.7・t~0.9・tの厚さ範囲内の応力プロファイルを示す。いくつかの場合、最大の傾きと最小の傾きとの間の差は、約3.5MPa/マイクロメートル以下、約3MPa/マイクロメートル以下、約2.5MPa/マイクロメートル以下、または約2MPa/マイクロメートル以下である。別の実施形態では、最大の傾きと最小の傾きとの間の差が上記範囲内となるこの厚さ範囲は、最大約0.02・tおよび0.980・t超、例えば最大約0.0250・tおよび0.9750・t超、または最大約0.0275・tおよび0.9725・t超、または最大約0.030・tおよび0.970・t超、または最大約0.0350・tおよび0.9650・t超を含む。
【0080】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、深さ方向、またはガラス系物品の厚さtの少なくとも一部に沿って延在する任意の平坦部分を実質的に含まない応力プロファイル312を含む。換言すると、応力プロファイル312は、厚さtに沿って実質的に連続的に増加または減少する。いくつかの実施形態では、応力プロファイルは、約10マイクロメートル以上、約50マイクロメートル以上、または約100マイクロメートル以上、または約200マイクロメートル以上の長さを有する深さ方向において任意の平坦部分を実質的に含まない。本明細書において使用される場合、「平坦」という用語は、平坦部分に沿って約.5MPa/マイクロメートル未満、または約.2MPa/マイクロメートル未満の大きさを有する傾きを意味する。いくつかの実施形態では、深さ方向に平坦部分を実質的に含まない応力プロファイルの1つ以上の部分は、第1の表面または第2の表面のいずれかまたは両方から約5マイクロメートル以上(例えば、10マイクロメートル以上、または15マイクロメートル以上)のガラス系物品中の深さで存在する。例えば、第1の表面から約0マイクロメートル~約5マイクロメートル未満までの深さに沿って、応力プロファイルは直線部分を含むことができるが、第1の表面から約5マイクロメートル以上の深さでは、応力プロファイルは平坦部分を実質的に含まないことができる。本明細書において使用される場合、「直線」は、平坦な傾きを有する線分、および平坦な傾きを有さない線分を含み、後者の例は、表面から約12マイクロメートルの深さの範囲内の図6に見られる。
【0081】
いくつかの実施形態では、応力プロファイルは、約0t~最大約0.1tの深さで直線部分を含むことができ、約0.1t~約0.4tの深さで平坦部分を実質的に含まないことができる。いくつかの実施形態では、約0t~約0.1tの範囲内の厚さからの応力プロファイルは、傾きであって、約20MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの範囲内の傾きを有することができる。本明細書に記載されるように、このような実施形態は、浴が2種類以上のアルカリ塩を含むかまたは混合アルカリ塩浴である1つのイオン交換プロセス、または複数(例えば、2つ以上)のイオン交換プロセスを用いて形成することができる。
【0082】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、CT領域(図3の327)に沿った応力プロファイルの形状に関して記載することができる。例えば、いくつかの実施形態では、CT領域(応力が張力となる場所)に沿った応力プロファイルは、式によって概算することができる。いくつかの実施形態では、CT領域に沿った応力プロファイルは、式(1):
応力(x)=MaxCT-(((MaxCT・(n+1))/0.5)・|(x/t)-0.5|) (1)
によって概算することができる。式(1)中、応力(x)は、位置xにおける応力値である。ここで、応力は正(張力)である。MaxCTは、MPaの単位の正の値としての最大中央張力である。値xは、厚さ(t)に沿った位置であり、0~tの範囲であり、x=0は一方の表面(図3の302)であり、x=0.5tはガラス系物品の中央であり、応力(x)=MaxCTであり、x=tは反対にある表面(図3の304)である。式(1)に使用されるMaxCTは、約50MPa~約80MPa(例えば、約60MPa~約80MPa、約70MPa~約80MPa、約50MPa~約75MPa、約50MPa~約70MPa、または約50MPa~約65MPa)の範囲内であり得、nは1.5~5(例えば、2~4、2~3、または1.8~2.2)のフィッティングパラメーターであり、これにより、n=2では放物線の応力プロファイルを得ることができ、n=2から逸脱する指数では、ほぼ放物線応力プロファイルを有する応力プロファイルが得られる。
【0083】
いくつかの実施形態では、応力プロファイルは、熱処理によって調整することができる。このような実施形態では、熱処理は、任意のイオン交換プロセス前、イオン交換プロセス中または全てのイオン交換プロセス後に行うことができる。いくつかの実施形態では、熱処理により、表面または表面付近の応力プロファイルの傾きを減少させることができる。いくつかの実施形態では、表面においてより急勾配、すなわちより大きい傾きが望ましい場合、「スパイク」を得るため、または表面もしくは表面付近の応力プロファイルの傾きを増加させるために、熱処理後のイオン交換プロセスを利用することができる。
【0084】
1つ以上の実施形態では、応力プロファイル312(および/または概算された応力プロファイル340)は、厚さの一部に沿って、例えば約10マイクロメートル、100マイクロメートル、または厚さ全体の厚さ部分に沿って変動する、ゼロではない濃度の金属酸化物によって得られる。濃度の変動は、本明細書では勾配と記載される場合がある。いくつかの実施形態では、金属酸化物の濃度は、ゼロではなく、約0・t~約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する。いくつかの実施形態では、金属酸化物の濃度は、ゼロではなく、約0・t~約0.35・t、約0・t~約0.4・t、約0・t~約0.45・t、または約0・t~約0.48・tの厚さ範囲に沿って変動する。金属酸化物は、ガラス系物品中に応力を発生させると記載することができる。濃度の変動は、前述の厚さ範囲に沿って連続的であり得る。濃度の変動は、約100マイクロメートルの厚さ部分に沿って約0.2モル%の金属酸化物濃度の変化を含むことができる。この変化は、実施例1に示されるようなマイクロプローブなどの当技術分野において周知の方法によって測定することができる。濃度がゼロではなく、厚さの一部に沿って変動する金属酸化物は、ガラス系物品中に応力を発生させると記載することができる。
【0085】
濃度の変動は、前述の厚さ範囲に沿って連続であり得る。いくつかの実施形態では、濃度の変動は、約10マイクロメートル~約30マイクロメートルの範囲内の厚さ部分に沿って連続であり得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物の濃度は、第1の表面の値から第1の表面と第2の表面との間の点まで減少し、かつその値から第2の表面まで増加する。
【0086】
金属酸化物の濃度は、2種類以上の金属酸化物(例えば、NaOとKOとの組合せ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、2種類の金属酸化物が使用され、イオンの半径がいずれかと異なる場合、浅い深さでは、より大きい半径を有するイオンの濃度が、より小さい半径を有するイオンの濃度よりも高く、一方、より深い深さでは、より小さい半径を有するイオンの濃度が、より大きい半径を有するイオンの濃度よりも高い。例えば、NaおよびKを含有する1つの浴がイオン交換プロセスに使用される場合、より浅い深さでは、ガラス系物品中のK+イオンの濃度がNa+イオンの濃度よりも高く、一方、より深い深さでは、Na+の濃度がK+イオンの濃度よりも高い。これは、部分的には、イオンのサイズのためである。このようなガラス系物品では、表面または表面付近の領域は、表面または表面付近におけるより大きいイオン(すなわちK+イオン)の量がより多いため、より大きいCSを含む。このより大きいCSは、表面または表面付近においてより急勾配の傾き(すなわち表面における応力プロファイルのスパイク)を有する応力プロファイルによって示され得る。
【0087】
1つ以上の金属酸化物の濃度勾配または変動は、ガラス系基材中の複数の第1の金属イオンが複数の第2の金属イオンで交換される、本明細書で前述したようなガラス系基材の化学強化によって生じる。第1のイオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびルビジウムのイオンであり得る。第2の金属イオンは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムの1つのイオンであり得、但し、第2のアルカリ金属イオンは、第1のアルカリ金属イオンのイオン半径よりも大きいイオン半径を有する。第2の金属イオンは、その酸化物(例えば、NaO、KO、RbO、CsO、またはそれらの組合せ)としてガラス系基材中に存在する。
【0088】
1つ以上の実施形態では、金属酸化物の濃度勾配は、CT層327を含むガラス系物品の厚さtの実質的な部分または厚さt全体に延在する。1つ以上の実施形態では、金属酸化物の濃度は、CT層327中で約0.5モル%以上である。いくつかの実施形態では、金属酸化物の濃度は、ガラス系物品の厚さ全体に沿って約0.5モル%以上(例えば、約1モル%以上)であり得、第1の表面302および/または第2の表面304において最も高く、第1の表面302と第2の表面304との間の点の値まで実質的に減少し続ける。その点において、金属酸化物の濃度は、厚さt全体に沿って最低となるが、その点における濃度もゼロではない。換言すると、その特定の金属酸化物のゼロではない濃度は、(本明細書に記載のような)厚さtの実質的な部分または厚さt全体に沿って延在する。いくつかの実施形態では、特定の金属酸化物の最低濃度は、CT層327において存在する。ガラス系物品中の特定の金属酸化物の全濃度は、約1モル%~約20モル%の範囲内であり得る。
【0089】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、第1の金属酸化物濃度および第2の金属酸化物濃度を含み、第1の金属酸化物濃度は、約0t~約0.5tの第1の厚さ範囲に沿って約0モル%~約15モル%の範囲内であり、および第2の金属酸化物濃度は、約0マイクロメートル~約25マイクロメートル(または約0マイクロメートル~約12マイクロメートル)の第2の厚さ範囲から約0モル%~約10モル%の範囲内であるが、しかし、第1の金属酸化物および第2の金属酸化物の一方または両方の濃度は、ガラス系物品の厚さの実質的な部分または厚さ全体に沿ってゼロではない。ガラス系物品は、任意選択的な第3の金属酸化物の濃度を含むことができる。第1の金属酸化物はNaOを含むことができ、一方、第2の金属酸化物はKOを含むことができる。
【0090】
金属酸化物の濃度は、そのような金属酸化物の濃度勾配を含むように調整される前のガラス系物品中の金属酸化物のベースライン量から求めることができる。
【0091】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、それらがどのように破壊されるか、およびそのような破壊の結果として得られる破片に関して表すことができる。1つ以上の実施形態では、破壊されると、ガラス系物品は、ガラス系物品(破壊前)1平方インチ当たり(または6.4516平方センチメートル当たり)2個以上の破片に破壊され、ここで、使用された試料サイズは、5.08cm×5.08cm(2インチ×2インチ)の正方形であった。いくつかの場合、ガラス系物品は、ガラス系物品(破壊前)1平方インチ当たり(または6.4516平方センチメートル当たり)3個以上、4個以上、5個以上、または10個以上の破片に破壊され、ここで、使用された試料サイズは、5.08cm×5.08cm(2インチ×2インチ)の正方形であった。いくつかの場合、破壊されると、ガラス系物品は、50%以上の破片がガラス系物品(破壊前)の表面積の5%未満、2%未満または1%未満の表面積を有するような破片に破壊される。いくつかの実施形態では、破壊されると、ガラス系物品は、90%以上またはさらには100%の破片がガラス系物品(破壊前)の表面積の5%未満、2%未満または1%未満の表面積を有するような破片に破壊される。
【0092】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品の化学強化後、結果として得られるガラス系物品の応力プロファイル317(および概算された応力プロファイル340)によって改善された破壊抵抗が得られる。例えば、いくつかの実施形態では、破壊後、ガラス系物品は、約0.2・t以下(例えば、1.8・t、1.6・t、1.5・t、1.4・t、1.2・t、または1.・t以下)の平均最大断面寸法を有する破片を含む。
【0093】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約0.7MPa・m1/2以上の破壊靱性(K1C)を示すことができる。いくつかの場合、破壊靱性は、約0.8MPa・m1/2以上または約0.9MPa・m1/2以上であり得る。いくつかの実施形態では、破壊靱性は、約0.7MPa・m1/2~約1MPa・m1/2の範囲内であり得る。本開示に記載の破壊靱性値(K1C)は、Bubsey,R.T.et al.,“Closed-Form Expressions for Crack-Mouth Displacement and Stress Intensity Factors for Chevron-Notched Short Bar and Short Rod Specimens Based on Experimental Compliance Measurements,“NASA Technical Memorandum 83796,pp.1-30(October 1992)の式5を用いてY が計算されることを除いて、Reddy,K.P.R. et al,“Fracture Toughness Measurement of Glass and Ceramic Materials Using Chevron-Notched Specimens,”J.Am.Ceram.Soc.,71[6],C-310-C-313(1988)に開示されるシェブロンノッチ付きショートバー(CNSB)方法によって測定される値を意味する。
【0094】
いくつかの実施形態では、基材は、200gの荷重においてビッカース硬度試験によって測定して約500HVN~約800HVNの硬度を有するとして特徴付けることもできる。
【0095】
本明細書に記載のガラス系物品は、0J/m超~約20J/mの範囲内の貯蔵引張エネルギーを示すことができる。いくつかの場合、貯蔵引張エネルギーは、約1J/m~約20J/m、約2J/m~約20J/m、約3J/m~約20J/m、約4J/m~約20J/m、約1J/m~約19J/m、約1J/m~約18J/m、約1J/m~約16J/m、約4J/m~約20J/m、または約4J/m~約18J/mの範囲内であり得る。貯蔵引張エネルギーは、以下の式(2):
貯蔵引張エネルギー(J/m)=[(1-ν)/E]∫(σ^2)(dt) (2)
で計算され、式中、νは、ポアソン比であり、Eは、ヤング率(単位MPa)であり、σは、応力(単位MPa)であり、および積分は、引張領域のみの厚さ(単位マイクロメートル)にわたって計算される。
【0096】
本明細書に記載のガラス系物品は、一般に約80GPa未満の弾性率またはヤング率を有する。ガラス系物品の組成に固有のものである弾性率により、外因的性質である所望の高い硬度を、それから製造される最終的なガラス系物品に付与することができる。明確にするため、弾性率測定の具体的な種類が明示されるのでなければ、本明細書に記載の弾性率は、例えば、剛性率、体積弾性率、ポアソン比などではなく材料のヤング率である。
【0097】
いくつかの実施形態では、ガラス系物品は、高精度の表面平滑性を得ることが可能なダウンドロー技術(例えば、フュージョンドロー、スロットドロー、および他の同様の方法)によるガラス系物品の形成を可能にする高い液相線粘度を含む。本明細書において使用される場合、「液相線粘度」という用語は、液相線温度における溶融ガラスの粘度を意味し、ここで、「液相線温度」という用語は、溶融ガラスを溶融温度から冷却したときに結晶が最初に現れる温度(または温度を室温から上昇させるときに最後に結晶が融解する温度)を意味する。液相線粘度は、以下の方法によって求められる。最初に、“Standard Practice for Measurement of Liquidus Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method”という名称のASTM C829-81(2015)に準拠してガラスの液相線温度を測定する。次に、“Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point”という名称のASTM C965-96(2012)に準拠して液相線温度におけるガラスの粘度を測定する。一般に、本明細書に記載のガラス系物品(またはそのような物品の形成に使用される組成物)は、約100キロポアズ(kP)(10kPa・s)以上の液相線粘度を示す。ダウンドロー加工性のためにより高い液相線粘度が望ましい場合、ガラス系物品(またはそのような物品の形成に使用される組成物)は、200kP(20kPa・s)以上(例えば、約600kP(60kPa・s)以上)の液相線粘度を示す。
【0098】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約4N~約7N、約4.5N~約7N、約5N~約7N、約4N~約6.5N、約4N~約6N、または約5N~約6Nの範囲内のヌープ側方亀裂引っ掻き閾値(Knoop Lateral Cracking Scratch Threshold)を示す。本明細書において使用される場合、ヌープ引っ掻き側方亀裂閾値は、ヌープ圧子を用いて形成される微小延性引っ掻き溝の幅の2倍以上に延在する側方亀裂の開始である(5回の圧入事象のうちの3回以上)。いくつかの実施形態では、ヌープ側方亀裂引っ掻き閾値は、約10~約16ニュートンの範囲内であり得る。本明細書において使用される場合、ヌープ引っ掻き側方亀裂閾値は、側方亀裂の開始である(5回の圧入事象のうちの3回以上)。一連の増加する一定荷重の引っ掻き(各荷重で最低3回であるが、信頼水準を高めるために各荷重でより多くの回数を使用することができる)が行われて、ヌープ引っ掻き閾値が決定される。ヌープ引っ掻き側方亀裂閾値試験では、各荷重において、ガラス基材および/または物品の試料を0.25mm/sの速度で10mmの長さにわたってヌープ圧子で引っ掻いた。ヌープ引っ掻き閾値範囲は、試験片を以下の3つの破壊形式の1つと比較することによって求めることができる:1)溝の幅の2倍を超える持続的側面の亀裂、2)溝内に損傷が含まれるが、溝の幅の2倍未満の側面の亀裂が存在し、肉眼で確認可能な損傷が存在すること、または3)溝の幅の2倍を超える大きい表面下の側方亀裂が存在し、かつ/もしくは引っ掻きの頂点における中央の亀裂が存在すること。次に、引っ掻き閾値は、5回の事象のうちの3回以上で破壊が起こらない最大荷重である。
【0099】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約10kgf(約98N)以上、約12kgf(約118N)以上、または約15kgf(約147N)以上の範囲内のビッカース圧入破壊閾値を示す。本明細書において使用される場合、圧入破壊閾値(またはビッカース亀裂開始閾値)は、ビッカース圧子によって測定した。ビッカース圧入破壊閾値は、ガラスの圧入損傷抵抗の尺度の1つである。この試験は、ビッカース圧子と呼ばれる面間角度136°の正方形底面の角錐型ダイヤモンド圧子の使用を伴った。このビッカース圧子は、標準的なマイクロ硬度試験(参照ASTM-E384-11)に使用されるものと同じであった。対象となるガラスの種類および/または系統を代表するために最少で5つの試験片を選択した。各試験片について、複数の組の5回の圧痕を試験片表面に導入した。各組の5つの圧痕は、特定の荷重で導入し、それぞれの個別の圧痕は最小で5mmだけ離し、5mmよりも試験片端部に近づくことはなかった。50kg/分の圧子の荷重付加/荷重除去速度を試験荷重≧2kgの場合に使用した。試験荷重<2kgの場合、5kg/分の速度を使用した。目標荷重において10秒のドウェル(すなわち保持)時間を使用した。機械により、ドウェル時間中の荷重制御を維持した。少なくとも12時間の時間後、反射光下で複合顕微鏡を使用して500倍の倍率で圧痕を調べた。次に、中央/放射状の亀裂または試験片の破壊の存在もしくは非存在を各圧痕の場合に記録した。この試験の場合、中央/放射状の亀裂の形成または試験片の破壊が対象であったため、側方亀裂の形成は、閾値挙動を示すものと見なさなかったことに留意されたい。試験片の閾値は、個別の圧痕の50%超が適合する閾値を一括した最小連続圧入荷重の中点として定義される。例えば、個別の試験片において、5kgの荷重で誘導される5つの圧痕のうちの2つ(40%)が閾値を超え、6kgの荷重で誘導される5つの圧痕のうちの3つ(60%)が閾値を超える場合、試験片の閾値は5kgおよび6kgの中点、すなわち5.5kgと定義される。試料の平均閾値は、全ての個別の試験片の閾値の算術平均として定義される。平均とともに、全ての試験片の中点の範囲(最小値~最大値)を各試料で報告した。ガラス試験片の疲労(応力腐食)挙動のばらつきを最小限にするため、試験前環境、試験環境、および試験後環境は、23±2℃および50±5%RHに制御した。最初に未知の組成物または系統を試験する場合、必要な圧入荷重および階層の増分は、「反復調査」を行うことによって求めたことに留意されたい。試料の性能をよく知ることができれば、予想される閾値に近い荷重でのみ試験することにより、その後の試験を合理化することができ、次に、必要な場合にのみ、さらなる圧入荷重を「埋め込む」ことができる。
【0100】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、研磨時リングオンリング(AROR)試験を行った場合に改善された表面強度を示す。材料の強度は、破壊が生じるときの応力として定義される。AROR試験は、平坦なガラス試験片を試験するための表面強度測定であり、“Standard Test Method for Monotonic Equibiaxial Flexural Strength of Advanced Ceramics at Ambient Temperature”という名称のASTM C1499-09(2013)が、本明細書に記載のAROR試験方法の基礎となる。ASTM C1499-09の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。一実施形態では、“Standard Test Methods for Strength of Glass by Flexure(Determination of Modulus of Rupture)という名称のASTM C158-02(2012)”の「abrasion Procedures」という名称のAnnex A2に記載の方法および装置を使用して、ガラス試料に供給される90グリットの炭化ケイ素(SiC)粒子を用いてガラス試験片をリングオンリング試験前に研磨する。ASTM C158-02の内容および特にAnnex 2の内容は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0101】
リングオンリング試験前に、ガラス系物品の表面は、ASTM C158-02、Annex 2に記載されるように研磨することで、ASTM C158-02の図A2.1に示される装置を用いた試料の表面欠陥条件の正規化および/または制御が行われる。典型的に、研磨材料は、304kPa(44psi)の空気圧を用いて15psi(103kPa)の荷重でガラス系物品の表面110上にサンドブラストされるが、以下の実施例では、研磨材料は、別の荷重(例えば、25psi(172kPa)または45psi(310kPa))で表面110上にサンドブラストした。気流が安定した後、5cmの研磨材料を漏斗中に投入し、研磨材料導入後に試料のサンドブラストを5秒間行った。
【0102】
AROR試験の場合、図4に示されるような少なくとも1つの研磨された表面を有するガラス系物品410は、これも図4に示されるように、等二軸曲げ強度(すなわち、2つの同心円状のリング間で曲げが加えられるときに材料が耐えることができる最大応力)を求めるために異なるサイズの2つの同心円状のリング間に配置される。AROR構成400では、研磨されたガラス系物品410は、直径D2を有する支持リング420によって支持される。直径D1を有する荷重リング430によってガラス系物品の表面にロードセル(図示せず)による力Fが加えられる。
【0103】
荷重リングおよび支持リングの直径の比D1/D2は、約0.2~約0.5の範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、D1/D2は約0.5である。荷重リングおよび支持リング430、420は、支持リング直径D2の0.5%の範囲内で同心円状に配置すべきである。試験に使用されるロードセルは、選択される範囲内の任意の荷重において±1%の範囲内の精度となるべきである。いくつかの実施形態では、試験は、23±2℃の温度および40±10%の相対湿度で行われる。
【0104】
固定具の設計に関して、荷重リング430の突出面の半径rについて、h/2≦r≦3h/2であり、式中、hは、ガラス系物品410の厚さである。荷重リングおよび支持リング430、420は、典型的に、硬度HRc>40を有する硬化鋼でできている。AROR固定具は市販されている。
【0105】
AROR試験の意図される破壊機構は、荷重リング430内の表面430aから生じるガラス系物品410の破壊を観察することである。この領域外、すなわち荷重リング430と支持リング420との間で生じる破壊は、データ分析から除外される。しかし、ガラス系物品410の薄さおよび高強度のため、場合により試験片厚さhの1/2を超える大きいたわみが観察される。したがって、荷重リング430の下から発生する破壊が高パーセント値で観察されることは珍しくない。リングの内側と下との両方での応力発生(ひずみゲージ分析によって集められる)および各試験片の破壊の起点を知らなければ、応力を正確に計算することはできない。したがって、AROR試験は、測定される応答としての破壊時のピーク荷重に焦点を合わせている。
【0106】
ガラス系物品の強度は、表面の傷の存在に左右される。しかし、ガラスの強度は統計的な性質であるため、特定のサイズの傷が存在する可能性を正確に予測することはできない。したがって、得られたデータの統計的表現として確率分布を一般に使用することができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、表面を研磨するために25psi(172kPa)またはさらには45psi(310kPa)の荷重を使用してAROR試験によって測定すると、本明細書に記載のガラス系物品は、20kgf(約196N)以上および最大約30kgf(約294N)の表面または等二軸曲げ強度を有する。別の実施形態では、表面強度は25kgf以上(約245N)であり、さらに別の実施形態では30kgf以上(約294N)である。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラス系物品は、研磨紙上反転球(IBoS)試験における性能に関して記載することができる。IBoS試験は、図27Aに概略的に示されるように、モバイルまたは手持ち式の電子デバイスに使用されるガラス系物品に典型的に生じる損傷導入および曲げによる破壊の主要な機構を模倣する動的成分レベル試験である。この分野では、損傷導入(図27Aのa)は、ガラス系物品の上面上で行われる。ガラス系物品の上面上で破壊が開始し、損傷がガラス系物品(図27Aのb)を貫通するか、または上面上の曲げからもしくはガラス系物品の内部部分(図27Aのc)から破壊が伝播する。IBoS試験は、ガラスの表面への損傷導入と、動荷重下で曲げを加えることとが同時に行われるように計画される。いくつかの場合、ガラス系物品は、同じガラス系物品が圧縮応力を含まない場合よりも圧縮応力を含む場合に改善された落下性能を示す。
【0109】
IBoS試験装置を図27Bに概略的に示す。装置500は、試験スタンド510および球530を含む。球530は、例えば、ステンレス鋼球などの剛性または中実の球である。一実施形態では、球530は、10mmの直径を有する4.2グラムのステンレス鋼球である。球530は、あらかじめ決定された高さhからガラス系物品試料518上に直接落下させる。試験スタンド510は、花崗岩などの硬質剛性材料を含む固体土台512を含む。表面上に研磨材料が配置されたシート514を、研磨材料を有する面が上を向くように固体土台512の上面上に配置する。シート514は、いくつかの実施形態では30グリットの表面、別の実施形態では180グリットの表面を有する研磨紙である。ガラス系物品試料518とシート514との間に空隙516が存在するように、ガラス系物品試料518は、試料ホルダー515によってシート514の上に維持される。シート514とガラス系物品試料518との間の空隙516により、ガラス系物品試料518は、球530による衝撃でシート514の研磨面上まで曲がることができる。一実施形態では、ガラス系物品試料218は、全ての角にわたって固定することで、球が衝突する点でのみ曲げが含まれるように維持され、再現性が保証される。いくつかの実施形態では、試料ホルダー515および試験スタンド510は、最大約2mmの試料厚さを収容するように適合される。空隙516は約50μm~約100μmの範囲内である。空隙516は、材料の剛性(ヤング率、Emod)の違いに合わせて調節されるように適合されるが、試料の弾性率および厚さも含まれる。ガラス系物品試料の上面を覆って、球530の衝突時のガラス系物品試料518の破壊事象中の破片を収集するために、接着テープ520を使用することができる。
【0110】
研磨面として種々の材料を使用することができる。特定の一実施形態では、研磨面は、研磨紙、例えば炭化ケイ素もしくはアルミナの研磨紙、工業用研磨紙、または同等の硬度および/もしくは鋭さを有するとして当業者に周知のあらゆる研磨材料であり得る。いくつかの実施形態では、コンクリートまたはアスファルトのいずれよりも均一な表面トポロジーを有し、所望のレベルの試験片表面の損傷を生じさせる粒度および鋭さを有するため、30グリットを有する研磨紙を使用することができる。
【0111】
一態様では、本明細書で前述した装置500を使用するIBoS試験を実施する方法600が図28に示される。ステップ610では、ガラス系物品試料(図36の218)は、前述の試験スタンド510中に配置され、ガラス系物品試料518と、研磨面を有するシート514との間に空隙516が形成されるように試料ホルダー515中に固定される。方法600は、研磨面を有するシート514が既に試験スタンド510中に配置されていることを想定している。しかし、いくつかの実施形態では、この方法は、研磨材料を有する面が上向きになるようにシート514を試験スタンド510中に配置するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では(ステップ610a)、ガラス系物品試料518を試料ホルダー510中に固定する前に、ガラス系物品試料518の上面に接着テープ520が取り付けられる。
【0112】
ステップ620では、球530が上面のほぼ中心(すなわち中心の1mm以内、または3mm以内、または5mm以内、または10mm以内)で上面(または上面に貼り付けた接着テープ520)に衝突するように、あらかじめ決定された質量およびサイズの中実球530を、あらかじめ決定された高さhからガラス系物品試料518の上面上に落下させる。ステップ620における衝突後、ガラス系物品試料518の損傷の程度を測定する(ステップ630)。本明細書で前述したように、本明細書では、「破壊」という用語は、基材を落下させたときまたは物体を衝突させたときに基材の厚さ全体および/または全表面にわたって亀裂が伝播することを意味する。
【0113】
方法600では、別の種類(例えば、コンクリートまたはアスファルト)の落下試験面を繰り返し使用する際に確認されている「老化」効果を回避するために、各落下後、研磨面を有するシート518を取り替えることができる。
【0114】
典型的に、種々のあらかじめ決定された落下高さhおよび増分が方法600で使用される。この試験は、例えば、開始するために最低落下高さ(例えば、約10~20cm)を使用することができる。次に、高さは、設定された増分または可変の増分のいずれかだけ、連続する落下のために増加され得る。方法600に記載の試験は、ガラス系物品試料518が破断または破壊されたときに停止される(ステップ631)。代替的に、破壊されることなく、落下高さhが最大落下高さ(例えば、約100cm)に到達した場合、方法600の落下試験を停止することができ、または破壊が起こるまで最大高さでステップ620を繰り返すことができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、方法600のIBoS試験は、それぞれのあらかじめ決定された高さhにおいて、それぞれのガラス系物品試料518に対して1回のみ行われる。しかし、別の実施形態では、それぞれの試料は、それぞれの高さで複数の試験を行うことができる。
【0116】
ガラス系物品試料518の破壊が起こった場合(図28のステップ631)、方法600によるIBoS試験を終了する(ステップ640)。あらかじめ決定された落下高さにおいて球を落下させて破壊が確認されない場合(ステップ632)、例えば5、10、または20cmなど、あらかじめ決定された増分だけ落下高さを増加させ(ステップ634)、試料の破壊が観察される(631)か、または試料が破壊されずに最大試験高さに到達する(636)かのいずれかとなるまで、ステップ620および630を繰り返す。ステップ631または636に到達したときに方法600による試験を終了する。
【0117】
前述の研磨紙上反転球(IBoS)試験を行うと、100cmの高さからガラスの表面上に球を落下させたときに、本明細書に記載のガラス系物品の実施形態は、約60%以上の残存率を有する。例えば、5つの同一(またはほぼ同一)の試料(すなわち、ほぼ同じ組成を有し、本明細書に記載のように、強化した場合、ほぼ同じ圧縮応力および圧縮もしくは圧縮応力層の深さを有する)のうちの3つが規定の高さ(この場合には100cm)から落下させた場合に破壊されずにIBoS落下試験で残存する場合、特定の高さから落下させたときにガラス系物品は60%の残存率を有すると記載される。別の実施形態では、強化されるガラス系物品の100cmIBoS試験における残存率は、約70%以上、別の実施形態では約80%以上、さらに別の実施形態では約90%以上である。別の実施形態では、IBoS試験において100cmの高さから落下させた強化ガラス系物品の残存率は、約60%以上、別の実施形態では約70%以上、さらに別の実施形態では約80%以上、別の実施形態では約90%以上である。1つ以上の実施形態では、IBoS試験において150cmの高さから落下させた強化ガラス系物品の残存率は、約60%以上、別の実施形態では約70%以上、さらに別の実施形態では約80%以上、別の実施形態では約90%以上である。
【0118】
本明細書で前述したIBoS試験方法および装置を用いてあらかじめ決定された高さから落下させた場合のガラス系物品の残存率を求めるために、ガラス系物品の少なくとも5つの同一(またはほぼ同一)の試料(すなわち、ほぼ同じ組成を有し、強化した場合、ほぼ同じ圧縮応力および圧縮または層深さを有する)が試験されるが、試験結果の信頼水準を高めるためにより多い数(例えば、10、20、30など)の試料の試験を行うことができる。各試料は、あらかじめ決定された高さ(例えば、100cmまたは150cm)から1回落下させるか、または代替的に、あらかじめ決定された高さに到達するまで破壊されることなく徐々により高い高さから落下させ、視覚的に(すなわち肉眼で)破壊(亀裂の形成、ならびに試料の厚さ全体および/または表面全体にわたる伝播)の形跡を調べる。あらかじめ決定された高さから落下させた後に破壊が全く観察されない場合、試料は落下試験に「残存した」と見なされ、あらかじめ決定された高さ以下の高さから試料を落下させたときに破壊が観察される場合、試料は「不合格」(または「残存しなかった」)と見なされる。残存率は、落下試験で残存した試料群のパーセントであると判断される。例えば、10の群から7つの試料があらかじめ決定された高さから落下させたときに破壊されなかった場合、ガラスの残存率は70%となる。
【0119】
ここで、図29~33を参照すると、脆性基材の別の衝突試験のための装置1100の一実施形態が示されており、この装置は、試料の主面および試料の端部の「衝撃閾値試験」を行うために使用される。装置1100は、ピボット1106に取り付けられたおもり1104を含む振子1102を含む。振子上のおもりは、ピボットから吊り下げられ、アームによってピボットに接続されているウエイトである。したがって、図に示されるおもり1104は、ひも、または1つの棒、または図示されるような2つの棒などの複数の棒の形態であり得るアーム1108によってピボット1106に接続される。図33に最もよく示されるように、おもり1104は、角度βがゼロとなるような破線で示される平衡位置1105を有する。換言すると、アーム1108は、上昇した位置にはない。
【0120】
おもり1104は、脆性基材を収容するための台座1110を含む。より詳細に図34に示されるように、2つの末端1114、1116、内面1113、および外面1115を有する、脆性基材1112を収容するための台座1110である。台座1110は、第1の末端1120および第2の末端1122、ならびに第1の末端1120と第2の末端1122との間にある曲率半径を画定する曲面1124を有する。台座1110に適切な材料は金属である。曲面1124は頂点1125を有する。
【0121】
1つ以上の実施形態による装置1100は、脆性基材1112の2つの末端1114、1116を保持し、曲面1124に関して脆性基材1112を曲げる力を加え、脆性基材をその曲率半径に適合させるための第1の固定具1130および第2の固定具1132をさらに含む。脆性基材1112を曲げることにより、脆性基材は、曲面1124の頂点1125に適合する頂点1127を有する。1つ以上の特定の実施形態では、曲面1124および脆性基材1112の曲率は、一定の半径または複合的な半径を有することができる。第1の固定具1130および第2の固定具1132のそれぞれは、クランプであり、図34に示されるようなトグルクランプである。
【0122】
装置1100は、粗面をさらに含み、これは、基材1112の外面1115(または図35に示されるような角3501、3503など)に接触するように配置される研磨面を有する研磨シートである。研磨シートは、研磨シートの研磨面が、基材1112がその上に搭載される曲面1124に面するように(後述の衝突用物体1140の)衝突面1150に両面テープで取り付けられる。適切な研磨シートの1つは、Indasa Rhynowet(登録商標)Plus Line P180グリット研磨紙である。1つ以上の実施形態による研磨紙は、25mmの正方形の断片に切断され、切断プロセス中に断片が曲がる場合には研磨紙を平らにする。
【0123】
装置1100は、衝突用物体1140において、おもり1104が、平衡位置1105からゼロより大きい角度βにおける位置から放されるときに、おもり1104の曲面1124(または曲面1124上に搭載された基材1112)が衝突用物体1140の衝突面1150(または衝突面1150上に配置された研磨シートの研磨側)と接触するように配置される衝突用物体1140をさらに含む。図示される実施形態では、衝突用物体1140は、台1142に取り付けられるL字型のブラケットであり、衝突用物体1140は、ねじ1144によって台1142に取り付けられる。衝突用物体1140は、ボルト、リベット、クランプなどのあらゆる別の適切な機構によって取り付けることもできる。台1142は、作業台1148の末端に装置1100を保持できるようにするストッパー1146を含む。図示される実施形態では、衝突用物体1140は、固定され、おもり1104が衝突面1150で衝突用物体1140と接触するときに動かない。衝突面1150は、図32に最もよく示されるようにスロット1152内のx-y面内で移動可能な別個の要素であり得る。あるいは、衝突面1150は、衝突用物体1140に対して移動する必要はない。1つ以上の実施形態では、脆性基材が台座1110に取り付けられ、おもり1104が、平衡位置1105からゼロより大きい角度βにおける位置から放される場合、携帯電話またはタブレットデバイスの使用者が携帯電話またはタブレットデバイスを地面に落下させたときの、携帯電話またはタブレットデバイスの化学強化カバーガラスの曲げ半径を模倣する曲げ半径および衝撃力を脆性基材1112が受けるように、おもり1104および台座1110のサイズが決められかつ成形される。
【0124】
1つ以上の実施形態では、台座1110上の曲面1124の曲率半径は、基材が曲面1124の周囲で曲げられるときに100MPaの曲げ引張力が得られるように選択され、そのため、この引張力は、基材の曲げの応力の結果として得られる、外部から加えられる引張力である。したがって、基材が曲げられるとき、引張力は脆性基材の頂点1125に存在する。1つ以上の実施形態によると、曲率半径は、0.25m~1.5mの範囲、例えば0.5m~1mの範囲内である。
【0125】
1つ以上の実施形態では、第1の固定具1130および第2の固定具1132は、携帯電話またはタブレットのカバーガラスの長さの距離だけ離して配置される。特定の実施形態では、第1の固定具1130および第2の固定具1132は、50mm~500mmの範囲内の距離だけ離して配置される。
【0126】
本開示の別の一態様は、脆性シートの衝撃試験方法に関し、その表面衝突閾値試験方法は、接触面を有する脆性シートを曲げて、ある曲率半径および頂点を接触面上に有する曲がったシートを得るステップと、振子を使用して、曲がったシートの頂点に衝突用物体を衝突させるステップとを含む。一実施形態では、曲がったシートは、振子のおもりに取り付けられる。一実施形態では、振子のおもりに取り付けられた曲がったシートは、衝突用物体が接触面の頂点に接触するように配置される。1つ以上の実施形態では、脆性シートは、ガラスであり、および曲率半径は、携帯電話またはタブレットデバイスの使用者が携帯電話またはタブレットデバイスを地面に落下させたときの、携帯電話またはタブレットデバイスの化学または熱強化カバーガラスの曲げ半径を模倣する範囲内であり、落下事象は、デバイスの端部が最初に地面に接触するような落下である(接触面が地面とほぼ平行となるような向きでデバイスが全体的に地面に衝突する面が最初となる落下とは対照的である)。ガラス系物品の少なくとも5つの同一(またはほぼ同一)の試料(すなわち、ほぼ同じ組成物を有し、強化した場合にほぼ同じ圧縮応力および圧縮または層深さを有する)が試験されるが、試験結果の信頼水準を高めるためにより多い数(例えば、10、20、30など)の試料の試験を行うことができる。
【0127】
1つ以上の実施形態では、アーム1108のスイング運動によって脆性シートの頂点に接触するような位置で衝突面1150上に研磨シートが配置される。1つ以上の実施形態では、脆性シートは、両面テープで衝突用物体に固定される。
【0128】
別の一実施形態は、脆性シートの衝突試験方法であって、脆性シート上の接触面が露出するように脆性シートを振子のおもりに取り付けるステップと、振子のおもりに取り付けた脆性シートを有する振子のおもりを動かして、接触面を衝突物体に接触させるステップとを含む方法に関する。一実施形態では、この方法は、脆性シートを曲げて、ある曲率半径および頂点を接触面上に有する曲がったシートを得るステップを含む。一実施形態では、振子のおもりに取り付けられた曲がったシートは、衝突物体が接触面の頂点に接触するように配置される。1つ以上の実施形態では、脆性シートは、ガラスであり、および曲率半径は、携帯電話またはタブレットデバイスの使用者が携帯電話またはタブレットデバイスを地面に落下させたときの、携帯電話またはタブレットデバイスの化学または熱強化カバーガラスの曲げ半径を模倣する範囲内であり、落下事象は、デバイスの端部が最初に地面に接触するような落下である(接触面が地面とほぼ平行となるような向きでデバイスが全体的に地面に衝突する面が最初となる落下とは対照的である)。いくつかの実施形態では、脆性シートは、頂点が衝突用物体に衝突する前に曲面に固定される。
【0129】
ここで、図29および30を参照すると、装置の操作の特定の非限定的な詳細は、ピボット1106上にポインターノッチ1200を含み、これは、種々の試験位置1202、すなわちアーム1108が平衡位置1105に対して角度βで配置される位置、および振子の運動が開始する位置を指し得る。ポインターノッチ1200により、種々の試験位置1202との位置合わせが可能となり、種々の試験位置は、あらゆる適切な数の試験位置であり得、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など、最大50以上まで増加させることができる。装置1100は、ロックをさらに含むことができ、これは、台座1110が衝突用物体1140の衝突面1150と直角になるように、その中心の長手方向軸に対する所望の回転向きにアーム1108を固定するためのナット1204の形態であり得る。
【0130】
装置1100は、1つ以上の実施形態により実際の電話の落下事象をシミュレートする。入射衝突エネルギーEおよび平均衝撃力
【0131】
は、式
E=mgL{1-cosβ}
【0132】
【数1】
【0133】
によって得られる。
【0134】
式中、m=振子1102(スイングアーム1108、おもり1104、および台座1110を含む)の質量、L=アームの長さ、g=重力加速度であり、vfは、初期衝突速度(すなわち、ガラスが最初に衝突用物体1140の衝突面1150に接触するときの速度)であり、viは、最終衝突速度(すなわち、ガラスが衝突用物体1140の衝突面1150を離れる速度、または換言するとガラスが最初に衝突用物体1140の衝突面1150から離れるときの速度)であり、およびΔt=接触相互作用時間(すなわちガラスが衝突用物体1140の衝突面1150に接触している間の時間)である。接触相互作用時間は、高速度ビデオカメラによって測定され、ガラスが衝突面1150に接触している間のフレーム数を観察し、高速度ビデオカメラが単位時間当たりに撮影するフレーム数を乗じることによって測定される。平均力の式は、依然として破壊されていない試料の場合に有用であり、すなわち、試験前の装置1100に搭載された試料は、依然として破壊されていない試料である。スイングアームの質量および長さが既知であり、角度βが、選択された位置に設定される場合、特定の高さから落下するときのデバイス上の衝撃をシミュレートするために衝撃力を計算して使用することができる。例えば、130gの携帯電話デバイス上の基材カバーガラスが1メートルの高さから落下したときに受ける平均力は、800Nと計算される。質量、アームの長さ、および角度βを使用すると、この力は、図29~34に示される装置1110を使用して再現することができる。
【0135】
あるいは、図35に示されるように、端部衝撃閾値試験により、基材1112の端部に衝突用物体が衝突できるようにおもり1104を再配置することができる。この場合、衝突用物体1140の衝突面1150は、引き上げられないが、衝突用物体1140がおもり1104に面する平面位置に単に存在する。この向きでは、基材1112の角3501は、前述と同じ方法で、研磨シートが取り付けられる衝突用物体1140に接触する。例えば、この向きは、電子デバイスの端部上への落下を模倣しており、それにより、次に基材端部が耐えることができる衝撃エネルギーが前述と同様の方法で求められる。端部試験の場合、基材1112は、それぞれの角で1回のみ試験され、基材端部の上部が衝突用物体1140との衝突点となるように試験される。角3501が最初に試験され、次に高さが徐々に増加する振子の高さで反対にある角3503が試験される。損傷導入が積み重なることを回避するため、試料の同じ位置で2回以上の衝突試験を行わない。ガラス系物品の少なくとも5つの同一(またはほぼ同一)の試料(すなわち、ほぼ同じ組成を有し、強化した場合にほぼ同じ圧縮応力および圧縮または層深さを有する)が試験されるが、試験結果の信頼水準を高めるためにより多い数(例えば、10、20、30など)の試料の試験を行うことができる。
【0136】
本明細書に記載のガラス系物品は透明であり得る。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約1ミリメートル以下の厚さを有することができ、約380nm~約780nmの範囲内の波長にわたって約88%以上の透過率を示すことができる。
【0137】
ガラス系物品は、実質的に白色を示すことができる。例えば、ガラス系物品は、CIE光源F02下において、約88以上のL値、約-3~約+3の範囲内のa値、および約-6~約+6の範囲内のb値のCIELAB色空間座標を示すことができる。
【0138】
基材の選択は特に限定されない。いくつかの例では、ガラス系物品は、イオン交換の場合に高い陽イオン拡散率を有するとして記載することができる。1つ以上の実施形態では、ガラスまたはガラスセラミックは、速いイオン交換能力を有し、すなわち拡散率が500μm/時を超え、または460℃において450μm/時を超えると特徴付けることができる。
【0139】
ある温度において、拡散率は、式(4):
拡散率=DOL^2/5.6×T (4)
を用いて計算され、式中、DOLは、イオン交換層の深さであり、およびTは、そのDOLに到達するのに要するIOX時間である。
【0140】
ガラス系物品は、非晶質基材、結晶性基材、またはそれらの組合せ(例えば、ガラスセラミック基材)を含むことができる。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品基材(本明細書に記載のような化学強化が行われる前)は、モルパーセント(モル%)単位で約40~約80の範囲内のSiO、約10~約30の範囲内のAl、約0~約10の範囲内のB、約0~約20の範囲内のRO、および約0~約15の範囲内のROを含むガラス組成物を含むことができる。いくつかの場合、組成物は、約0モル%~約5モル%の範囲内のZrOおよび約0~約15モル%の範囲内のPのいずれか一方または両方を含むことができる。TiOは、約0モル%~約2モル%で存在することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、モル%単位で約45~約80、約45~約75、約45~約70、約45~約65、約45~約60、約45~約65、約45~約65、約50~約70、約55~約70、約60~約70、約70~約75、約70~約72、または約50~約65の範囲内の量のSiOを含むことができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、モル%単位で約5~約28、約5~約26、約5~約25、約5~約24、約5~約22、約5~約20、約6~約30、約8~約30、約10~約30、約12~約30、約14~約30、約16~約30、約18~約30、約18~約28、または約12~約15の範囲内の量のAlを含むことができる。
【0143】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、モル%の単位で約0~約8、約0~約6、約0~約4、約0.1~約8、約0.1~約6、約0.1~約4、約1~約10、約2~約10、約4~約10、約2~約8、約0.1~約5、または約1~約3の範囲内の量のBを含むことができる。いくつかの場合、ガラス組成物は、Bを実質的に含まなくてよい。本明細書において使用される場合、ガラス組成物の成分に関する「実質的に含まない」という語句は、その成分が、初期のバッチングまたは後のイオン交換中にガラス組成物に積極的または意図的には加えられないが、不純物として存在し得ることを意味する。例えば、ある成分が約0.1001モル%未満の量で存在する場合、ガラスは、その成分を実質的に含まないと記載され得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、MgO、CaO、およびZnOなどの1種類以上のアルカリ土類金属酸化物を含むことができる。いくつかの実施形態では、1種類以上のアルカリ土類金属酸化物の総量は、ゼロではない量~最大約15モル%であり得る。1つ以上の特定の実施形態では、任意のアルカリ土類金属酸化物の総量は、ゼロではない量~最大約14モル%、最大約12モル%、最大約10モル%、最大約8モル%、最大約6モル%、最大約4モル%、最大約2モル%、または最大約1.5モル%であり得る。いくつかの実施形態では、1種類以上のアルカリ土類金属酸化物の総量は、モル%単位で約0.1~10、約0.1~8、約0.1~6、約0.1~5、約1~10、約2~10、または約2.5~8の範囲内であり得る。MgOの量は、約0モル%~約5モル%(例えば、約2モル%~約4モル%、約0.01~約2、または約0.001~約1)の範囲内であり得る。ZnOの量は、約0~約2モル%(例えば、約1~約2)の範囲内であり得る。CaOの量は、約0モル%~約2モル%であり得る。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、MgOを含むことができ、CaOおよびZnOを実質的に含まなくてよい。一変形形態では、ガラス組成物は、CaOまたはZnOのいずれか1つを含むことができ、MgO、CaO、およびZnOの別のものを実質的に含まなくてよい。1つ以上の特定の実施形態では、ガラス組成物は、MgO、CaO、およびZnOのアルカリ土類金属酸化物の2種類のみを含むことができ、第3のアルカリ土類金属酸化物を実質的に含まなくてよい。
【0145】
ガラス組成物中のアルカリ金属酸化物ROの総量は、モル%単位で約5~約20、約5~約18、約5~約16、約5~約15、約5~約14、約5~約12、約5~約10、約5~約8、約5~約20、約6~約20、約7~約20、約8~約20、約9~約20、約10~約20、約11~約20、約12~約18、または約14~約18の範囲内であり得る。
【0146】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0モル%~約18モル%、約0モル%~約16モル%、または約0モル%~約14モル%、約0モル%~約12モル%、約2モル%~約18モル%、約4モル%~約18モル%、約6モル%~約18モル%、約8モル%~約18モル%、約8モル%~約14モル%、約8モル%~約12モル%、または約10モル%~約12モル%の範囲内の量のNaOを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約4モル%以上のNaOを含むことができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、成形性およびイオン交換性のバランスをとるために、LiOおよびNaOの量は、特定の量または比に制御される。例えば、LiOの量が増加すると、液相線粘度が減少することがあり、したがって一部の成形方法の使用が妨げられるが、そのようなガラス組成物は、本明細書に記載のようにより深いDOCレベルでイオン交換される。NaOの量により、液相線粘度を変化させることがあるが、より深いDOCレベルでのイオン交換を妨害することがある。
【0148】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約5モル%未満、約4モル%未満、約3モル%未満、約2モル%未満、または約1モル%未満の量のKOを含むことができる。1つ以上の別の実施形態では、ガラス組成物は、本明細書に規定のようにKOを実質的に含まなくてよい。
【0149】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0モル%~約18モル%、約0モル%~約15モル%、または約0モル%~約10モル%、約0モル%~約8モル%、約0モル%~約6モル%、約0モル%~約4モル%、または約0モル%~約2モル%の量のLiOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約2モル%~約10モル%、約4モル%~約10モル%、約6モル%~約10モル%、または約5モル%~約8モル%の量のLiOを含むことができる。1つ以上の別の実施形態では、ガラス組成物は、本明細書に規定のようにLiOを実質的に含まなくてよい。
【0150】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はFeを含むことができる。このような実施形態では、Feは、約1モル%未満、約0.9モル%未満、約0.8モル%未満、約0.7モル%未満、約0.6モル%未満、約0.5モル%未満、約0.4モル%未満、約0.3モル%未満、約0.2モル%未満、約0.1モル%未満、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分的範囲の量で存在することができる。1つ以上の別の実施形態では、ガラス組成物は、本明細書に規定のようにFeを実質的に含まなくてよい。
【0151】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はZrOを含むことができる。このような実施形態では、ZrOは、約1モル%未満、約0.9モル%未満、約0.8モル%未満、約0.7モル%未満、約0.6モル%未満、約0.5モル%未満、約0.4モル%未満、約0.3モル%未満、約0.2モル%未満、約0.1モル%未満、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分的範囲の量で存在することができる。1つ以上の別の実施形態では、ガラス組成物は、本明細書に規定のようにZrOを実質的に含まなくてよい。
【0152】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0モル%~約10モル%、約0モル%~約8モル%、約0モル%~約6モル%、約0モル%~約4モル%、約0.1モル%~約10モル%、約0.1モル%~約8モル%、約2モル%~約8モル%、約2モル%~約6モル%、または約2モル%~約4モル%の範囲内のPを含むことができる。いくつかの場合、ガラス組成物はPを実質的に含まなくてよい。
【0153】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はTiOを含むことができる。このような実施形態では、TiOは、約6モル%未満、約4モル%未満、約2モル%未満、または約1モル%未満の量で存在することができる。1つ以上の別の実施形態では、ガラス組成物は、本明細書に規定のようにTiOを実質的に含まなくてよい。いくつかの実施形態では、TiOは、約0.1モル%~約6モル%、または約0.1モル%~約4モル%の範囲内の量で存在する。
【0154】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、種々の組成関係を含むことができる。例えば、ガラス組成物は、約0~約1、約0~約0.5、約0~約0.4、約0.1~約0.5、または約0.2~約0.4の範囲内の、LiOの量(モル%単位)のROの総量(モル%単位)に対する比を含むことができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約0~約5(例えば、約0~約4、約0~約3、約0.1~約4、約0.1~約3、約0.1~約2、または約1~約2)の範囲内の、ROの総量(モル%単位)とAlの量(モル%単位)との間の差(RO-Al)を含むことができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約0~約5(例えば、約0~約4、約0~約3、約0.1~約4、約0.1~約3、約1~約3、または約2~約3)の範囲内の、ROの総量(モル%単位)とAlの量(モル%単位)との間の差(RO-Al)を含むことができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約0~約5(例えば、約0~約4、約0~約3、約1~約4、約1~約3、または約1~約2)の範囲内の、ROの総量(モル%単位)のAlの量(モル%単位)に対する比(RO/Al)を含むことができる。
【0158】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約15モル%を超える(例えば、18モル%を超え、約20モル%を超え、または約23モル%を超える)AlとNaOとの合計量を含む。AlとNaOとの合計量は、最大約30モル%、約32モル%、または約35モル%(これらの値を含む)であり得る。
【0159】
1つ以上の実施形態のガラス組成物は、約0~約2の範囲内のMgOの量(モル%単位)のROの総量(モル%単位)に対する比を示すことができる。
【0160】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、核形成剤を実質的に含まなくてよい。典型的な核形成剤の例は、TiO、ZrOなどである。核形成剤は、核形成剤がガラス中の微結晶の形成を開始することができるガラス中の構成要素という機能に関して記載することができる。
【0161】
いくつかの実施形態では、ガラス基材に使用される組成物は、NaSO、NaCl、NaF、NaBr、KSO、KCl、KF、KBr、およびSnOを含む群から選択される0~2モル%の少なくとも1種類の清澄剤とまとめることができる。1つ以上の実施形態によるガラス組成物は、約0~約2、約0~約1、約0.1~約2、約0.1~約1、または約1~約2の範囲内のSnOをさらに含むことができる。本明細書に開示されるガラス組成物は、Asおよび/またはSbを実質的に含まなくてよい。
【0162】
1つ以上の実施形態では、組成物は特に、62モル%~75モル%のSiO;10.5モル%~約17モル%のAl;5モル%~約13モル%のLiO;0モル%~約4モル%のZnO;0モル%~約8モル%のMgO;2モル%~約5モル%のTiO;0モル%~約4モル%のB;0モル%~約5モル%のNaO;0モル%~約4モル%のKO;0モル%~約2モル%のZrO;0モル%~約7モル%のP;0モル%~約0.3モル%のFe;0モル%~約2モル%のMnOx;および0.05モル%~約0.2モル%のSnOを含むことができる。
【0163】
1つ以上の実施形態では、組成物は、67モル%~約74モル%のSiO;11モル%~約15モル%のAl;5.5モル%~約9モル%のLiO;0.5モル%~約2モル%のZnO;2モル%~約4.5モル%のMgO;3モル%~約4.5モル%のTiO;0モル%~約2.2モル%のB;0モル%~約1モル%のNaO;0モル%~約1モル%のKO;0モル%~約1モル%のZrO;0モル%~約4モル%のP;0モル%~約0.1モル%のFe;0モル%~約1.5モル%のMnOx;および0.08モル%~約0.16モル%のSnOを含むことができる。
【0164】
1つ以上の実施形態では、組成物は、70モル%~75モル%のSiO;10モル%~約15モル%のAl;5モル%~約13モル%のLiO;0モル%~約4モル%のZnO;0.1モル%~約8モル%のMgO;0モル%~約5モル%のTiO;0.1モル%~約4モル%のB;0.1モル%~約5モル%のNaO;0モル%~約4モル%のKO;0モル%~約2モル%のZrO;0モル%~約7モル%のP;0モル%~約0.3モル%のFe;0モル%~約2モル%のMnOx;および0.05モル%~約0.2モル%のSnOを含むことができる。
【0165】
1つ以上の実施形態では、組成物は、52モル%~約65モル%のSiO;14モル%~約18モル%のAl;5.5モル%~約7モル%のLiO;1モル%~約2モル%のZnO;0.01モル%~約2モル%のMgO;4モル%~約12モル%のNaO;0.1モル%~約4モル%のP;および0.01モル%~約0.16モル%のSnOを含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、B、TiO、KO、およびZrOのいずれか1つ以上を実質的に含まなくてよい。
【0166】
1つ以上の実施形態では、組成物は、0.5モル%以上のP、NaO、および任意選択的にLiOを含むことができ、LiO(モル%)/NaO(モル%)<1である。さらに、これらの組成物はBおよびKOを実質的に含まなくてよい。いくつかの実施形態では、組成物は、ZnO、MgO、およびSnOを含むことができる。
【0167】
いくつかの実施形態では、組成物は、約58モル%~約65モル%のSiO;約11モル%~約19モル%のAl;約0.5モル%~約3モル%のP;約6モル%~約18モル%のNaO;0モル%~約6モル%のMgO;および0モル%~約6モル%のZnOを含むことができる。ある実施形態では、組成物は、約63モル%~約65モル%のSiO;11モル%~約17モル%のAl;約1モル%~約3モル%のP;約9モル%~約20モル%のNaO;0モル%~約6モル%のMgO;および0モル%~約6モル%のZnOを含むことができる。
【0168】
いくつかの実施形態では、組成物は、RO(モル%)/Al(モル%)<2の組成関係を含むことができ、ここで、RO=LiO+NaOである。いくつかの実施形態では、65モル%<SiO(モル%)+P(モル%)<67モル%である。ある実施形態では、RO(モル%)+R’O(モル%)-Al(モル%)+P(モル%)>-3モル%であり、ここで、RO=LiO+NaOであり、R’Oは、組成物中に存在する二価の金属酸化物の総量である。
【0169】
本明細書に記載のような化学強化前のガラス系物品の別の代表的な組成を表1Aに示す。表1Bは、表1Aに列挙される例に関して測定した選択された物理的性質を列挙する。表1Bに列挙される物理的性質は、密度;低温および高温CTE;ひずみ点、徐冷点、および軟化点;1011ポアズ温度、35k温度P、200kP温度、液相線温度、およびジルコン破壊温度;ジルコン破壊粘度および液相線粘度;ポアソン比;ヤング率;屈折率、ならびに応力光係数を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラス系物品およびガラス基材は、30ppm/℃以下の高温CTEおよび/または70GPa以上のヤング率を有し、いくつかの実施形態では最大80GPaのヤング率を有する。
【0170】
【表1A-1】
【0171】
【表1A-2】
【0172】
【表1A-3】
【0173】
【表1A-4】
【0174】
【表1A-5】
【0175】
【表1B-1】
【0176】
【表1B-2】
【0177】
【表1B-3】
【0178】
【表1B-4】
【0179】
【表1B-5】
【0180】
【表1B-6】
【0181】
【表1B-7】
【0182】
【表1B-8】
【0183】
【表1B-9】
【0184】
ガラス系物品がガラスセラミックを含む場合、その結晶相は、β-スポジュメン、ルチル、ガーナイト、もしくは別の周知の結晶相、およびそれらの組合せを含むことができる。
【0185】
ガラス系物品は、実質的に平坦であり得るが、別の実施形態は、湾曲した基材または別の成形もしくは造形された基材を使用することができる。いくつかの場合、ガラス系物品は、3Dまたは2.5Dの形状を有することができる。ガラス系物品は、実質的に光学的に透明で透過性であり得、かつ光散乱が起こらなくてよい。ガラス系物品は、約1.45~約1.55の範囲内の屈折率を有することができる。本明細書において使用される場合、屈折率値は550nmの波長に関するものである。
【0186】
さらにまたは代替的に、ガラス系物品の厚さは、1つ以上の寸法に沿って一定であり得、または美的および/もしくは機能的理由でその寸法の1つ以上に沿って変動し得る。例えば、ガラス系物品の端部は、ガラス系物品のより中央の領域よりも厚いことができる。ガラス系物品の長さ、幅、および厚さの寸法は、物品の用途または使用により変更することもできる。
【0187】
ガラス系物品は、形成時の方法によって特徴付けることができる。例えば、ガラス系物品は、フロート成形可能(すなわちフロート法によって形成される)、ダウンドロー可能、および特にフュージョン成形可能もしくはスロットドロー可能(すなわちフュージョンドロー法またはスロットドロー法などのダウンドロー法によって形成される)として特徴付けることができる。特定の実施形態では、ガラス系物品はフュージョン成形可能である。
【0188】
フロート成形可能なガラス系物品は、滑らかな表面によって特徴付けることができ、均一な厚さは、溶融金属、典型的にスズの床の上に溶融ガラスを浮遊させることによって形成される。例示的な方法の1つでは、溶融スズ床の表面上に供給される溶融ガラスは、浮遊するガラスリボンを形成する。ガラスリボンがスズ浴に沿って流れるとき、温度が徐々に低下し、ガラスリボンは固化して、スズからローラー上に引き上げ可能な固体ガラス系物品となる。浴を離れた後、ガラス系物品は、さらに冷却し、内部応力を減少させるために徐冷することができる。ガラス系物品がガラスセラミックである場合、フロート法によって形成されたガラス系物品は、1つ以上の結晶相が形成されるセラミック化プロセスを行うことができる。
【0189】
ダウンドロー法では、比較的無垢の表面を有し均一な厚さを有するガラス系物品が製造される。ガラス系物品の平均曲げ強度は、表面の傷の量およびサイズによって制御されるため、接触が最小限であった無垢の表面は、より高い初期強度を有する。この高強度のガラス系物品が次に(例えば、化学的に)さらに強化されると、得られる強度は、ラップ仕上げおよび研磨が行われた表面を有するガラス系物品の強度よりも高くなる場合がある。ダウンドローされたガラス系物品は、約2mm未満の厚さまで延伸することができる。さらに、ダウンドローされたガラス系物品は、費用のかかる研削および研磨を行わずにその最終用途に使用可能な非常に平坦で滑らかな表面を有する。ガラス系物品がガラスセラミックである場合、ダウンドロー法によって形成されたガラス系物品は、1つ以上の結晶相が形成されるセラミック化プロセスを行うことができる。
【0190】
フュージョンドロー法では、例えば、溶融ガラス原材料を受け入れるためのチャネルを有するドロー用タンクが使用される。チャネルは、チャネルの両側面上のチャネルの長さに沿った上部で開放された堰を有する。チャネルが溶融材料で満たされると、溶融ガラスが堰からあふれ出る。重力のために、溶融ガラスは、ドロー用タンクの外面を、2つの流動するガラス膜として流れ落ちる。ドロー用タンクのこれらの外面は、ドロー用タンクの下の端部でつながるように下方および内側に延在している。2つの流動するガラス膜は、この端部で合流して融合し、1つの流動するガラス系物品を形成する。フュージョンドロー法は、チャネルを越えて流れる2つのガラス膜が互いに融合するため、結果として得られるガラス系物品のいずれの外面も、装置のいずれの部分とも接触しないという利点が得られる。したがって、フュージョンドローされたガラス系物品の表面特性は、このような接触による影響を受けない。ガラス系物品がガラスセラミックである場合、フュージョン法によって形成されたガラス系物品は、1つ以上の結晶相が形成されるセラミック化プロセスを行うことができる。
【0191】
スロットドロー法は、フュージョンドロー方法と異なる。スロットドロー法では、溶融原材料ガラスがドロー用タンクに供給される。ドロー用タンクの底部は、開放スロットを有し、これはスロットの長さに沿って延在するノズルを有する。溶融ガラスはスロット/ノズルを通って流れ、連続ガラス系物品として下方に延伸され、徐冷領域中に入る。
【0192】
ガラス系物品は、表面の傷の影響をなくすかまたは軽減するために、酸磨きまたは別の処理を行うことができる。
【0193】
本開示の別の一態様は、破壊抵抗性ガラス系物品の形成方法に関する。この方法は、約1ミリメートル以下の厚さを画定する第1の表面および第2の表面を有するガラス系基材を提供するステップと、本明細書に記載のようにガラス系基材中に応力プロファイルを生じさせて、破壊抵抗性ガラス系物品を得るステップとを含む。1つ以上の実施形態では、応力プロファイルを生じさせるステップは、複数のアルカリイオンのイオン交換をガラス系基材中で行って、厚さの実質的な部分に沿って(本明細書に記載のように)または厚さ全体に沿って変動するゼロではないアルカリ金属酸化物濃度を形成するステップを含む。一例では、応力プロファイルを生じさせるステップは、Na+、K+、Rb+、Cs+、またはそれらの組合せの硝酸塩を含み、約350℃以上(例えば、約350℃~約500℃)の温度を有する溶融塩浴中にガラス系基材を浸漬するステップを含む。一例では、溶融浴は、NaNO、KNO、またはそれらの組合せを含むことができ、約485℃以下の温度を有することができる。別の一例では、浴は、NaNOとKNOとの混合物を含むことができ、約460℃の温度を有することができる。ガラス系基材は、浴中に約2時間以上、最大約48時間(例えば、約2時間~約10時間、約2時間~約8時間、約2時間~約6時間、約3時間~約10時間、または約3.5時間~約10時間)にわたって浸漬することができる。
【0194】
いくつかの実施形態では、方法は、1つの浴中または2つ以上の浴中での連続浸漬ステップを使用する2つ以上のステップにおいて、ガラス系基材の化学強化またはイオン交換を行うステップを含むことができる。例えば、2つ以上の浴を連続して使用することができる。1つ以上の浴の組成は、1種類の金属(例えば、Ag+、Na+、K+、Rb+、またはCs+)または複数の金属の組合せを同じ浴中に含むことができる。2つ以上の浴が利用される場合、浴は、互いに同じまたは異なる組成および/または温度を有することができる。そのような各浴中の浸漬時間は、同じであり得るか、または所望の応力プロファイルを得るために変更され得る。
【0195】
方法の1つ以上の実施形態では、より大きい表面CSを得るために、第2の浴またはそれに続く浴を利用することができる。いくつかの場合、この方法は、ガラス系基材を第2またはそれに続く浴中に浸漬して、層の化学深さおよび/またはDOCに顕著な影響を与えることなく、より大きい表面CSを得るステップを含む。このような実施形態では、第2またはそれに続く浴は、1種類の金属(例えば、KNOまたはNaNO)または金属の混合物(KNOおよびNaNO)を含むことができる。第2またはそれに続く浴の温度は、より大きい表面CSを得るために調節することができる。いくつかの実施形態では、第2またはそれに続く浴中のガラス系基材の浸漬時間も、層の化学深さおよび/またはDOCに影響を与えることなくより大きい表面CSを得るために調節することができる。例えば、第2またはそれに続く浴中の浸漬時間は、10時間未満(例えば、約8時間以下、約5時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分以下、約15分以下、または約10分以下)であり得る。
【0196】
1つ以上の別の実施形態では、方法は、本明細書に記載のイオン交換プロセスと組み合わせて使用できる1つ以上の熱処理ステップを含むことができる。熱処理は、所望の応力プロファイルを得るためにガラス系物品の熱処理を行うステップを含む。いくつかの実施形態では、熱処理は、約300℃~約600℃の範囲内の温度へのガラス系基材の徐冷、強化、または加熱を行うことを含む。熱処理は、1分~最大約18時間にわたって続けることができる。いくつかの実施形態では、熱処理は、1つ以上のイオン交換プロセス後または複数のイオン交換プロセスで使用することができる。
【0197】
本開示の別の一態様は、
第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面であって、0.1mm~2mmの範囲内の厚さ(t)を画定する第1の表面および第2の表面と、
厚さ(t)に沿って延在する応力プロファイルと
を含むガラス系物品であって、
約0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約200MPa/マイクロメートル~約25MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、
約0.035・t~0.965・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-15MPa/マイクロメートル~約15MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、
応力プロファイルは、約200MPa~約1100MPaの表面CSを含み、
応力プロファイルは、約0.1・t~0.25・tの範囲のDOCを含む、ガラス系物品に関する。いくつかの実施形態では、約0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約200MPa/マイクロメートル~約25MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。いくつかの実施形態では、第2の厚さ範囲の場合の言及される傾きは、約0.1・t~0.9・t、または0.15・t~0.85・t、または0.2・t~0.8・t、または0.22・t~0.78・t、または0.24・t~0.76・t、または0.26・t~0.74・t、または0.28・t~0.72・t、または0.3・t~0.7・t、または0.35・t~0.65・t、または0.4・t~0.6・t、または0.45・t~0.55・tの範囲内であり得る。
【0198】
本明細書に記載のガラス系物品の1つ以上の実施形態は、ガラス表面に向上した引っ掻き性能を付与することができる特定の応力プロファイルを含む。さらに、落下性能(例えば、180グリット研磨紙および30グリット研磨紙の両方の上で同時に)が低下せず、現場使用で妥当なレベルの性能が維持される。このような実験用粗面により、顕著であり現場性能に関連する一連の傷がガラス中に導入される。例えば、これらの応力プロファイルは、改善された引っ掻き抵抗を示し、落下試験における良好な破壊抵抗性は本開示の焦点である。これらの応力プロファイルは壊れやすいものでもない。
【0199】
1つ以上の実施形態によると、引っ掻き性能の驚くべき改善が得られる複数のイオンの拡散の場合の応力プロファイルが開示される。いくつかの応力プロファイルは、1つのイオン交換ステップで得ることができ、別のものは2つ以上のイオン交換ステップを用いて得られる。1つ以上の実施形態では、応力プロファイルは2つの領域、すなわちより大きい傾きのスパイク領域と、それに続いて実質的により小さい傾きの深いテールとを示し、それにより、ガラス内で応力が圧縮から引張に変化する点として定義される圧縮深さが非常に大きくなる。
【0200】
薄いガラス(すなわち0.05mm~2mmの範囲の厚さ)に関する実施形態では、厚さの2つの半分における深いプロファイルが、イオン交換されていない基材中の元のNa濃度に等しい実質的に一定のNa濃度の中央領域を有さない中間部分に接続されるように、拡散プロセスは、イオン交換浴からガラス中に交換されるNaイオンの少なくない部分がガラスの中心に到達可能となるのに十分な時間の長さである。1つ以上の実施形態では、イオン交換の時間は、1時間を超え、1.5時間を超え、2時間を超え、2.5時間を超え、3時間を超え、3.5時間を超え、4時間を超え、4.5時間を超え、5時間を超え、5.5時間を超え、6時間を超え、6.5時間を超え、7時間を超え、7.5時間を超え、および8時間を超える。
【0201】
1つ以上の実施形態では、応力プロファイルにより、壊れやすくない物品が得られる。本明細書において使用される場合、「壊れやすくない」は、ガラスが破壊される場合、ガラスが数個の比較的大きい破片に破壊されることを意味する。対照的に、壊れやすいガラスは、非常に小さい破片に破壊され、ガラス物品中に貯蔵される高い弾性エネルギーのためにガラス粒子が長距離で放出される可能性がある。
【0202】
1つ以上の実施形態のガラス系物品は、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面であって、厚さtを画定する第1の表面および第2の表面を含む。1つ以上の実施形態では、厚さtは、約2ミリメートル以下(例えば、約0.01ミリメートル~約2ミリメートル、約0.1ミリメートル~約2ミリメートル、約0.2ミリメートル~約2ミリメートル、約0.3ミリメートル~約2ミリメートル、約0.4ミリメートル~約2ミリメートル、約0.01ミリメートル~約1.75ミリメートル、約0.01ミリメートル~約1.5ミリメートル、約0.01ミリメートル~約1ミリメートル、約0.01ミリメートル~約0.9ミリメートル、約0.01ミリメートル~約0.8ミリメートル、約0.01ミリメートル~約0.7ミリメートル、約0.01ミリメートル~約0.6ミリメートル、約0.01ミリメートル~約0.5ミリメートル、約0.1ミリメートル~約0.5ミリメートル、または約0.3ミリメートル~約0.5ミリメートルの範囲内)であり得る。
【0203】
1つ以上の実施形態の応力プロファイルは、特定の範囲内にある傾きを有する接線を有する2つの別個の領域である、比較的急な傾きを有する領域および浅い傾きを有する領域が存在することを特徴とする。一般に、応力プロファイルは、2つの異なる方法で実現することができる。第1の方法は、2種類以上のイオンが同時に拡散される1つのイオン交換拡散を特徴とする。第2の方法は、2種類以上のイオンが同時に拡散される2つ以上のイオン交換拡散を特徴とする。それぞれの方法が特定の利点を有する。例えば、1つのイオン交換拡散ステップは、実施および/または制御がより単純およびより容易であり得る。しかし、複数のイオン交換拡散ステップは、応力プロファイルを調整するための自由度をより高めることができる。1つ以上の実施形態では、イオン交換の時間は、1時間を超え、1.5時間を超え、2時間を超え、2.5時間を超え、3時間を超え、3.5時間を超え、4時間を超え、4.5時間を超え、5時間を超え、5.5時間を超え、6時間を超え、6.5時間を超え、7時間を超え、7.5時間を超え、および8時間を超える。
【0204】
1つのステップで2つの領域を含む本明細書に記載の応力プロファイルでは、より大きいKイオンがより遅く拡散すると考えられる。対照的に、より小さいNaイオンはより速く拡散し、より深く浸透すると考えられる。より大きい比体積変化、したがってCSにおけるより浅いスパイクのため、より大きいKイオンによってより大きい応力が得られるとも考えられる。
【0205】
一般に、大きいDOCおよび高いCSスパイクを有する応力プロファイルは、前面の損傷導入による破壊の軽減に役立ち、過大応力破壊を許容できる比率に維持するのにも役立つ。これらのプロファイルにより、Li含有ガラスにおいて改善された結果を得ることができ、これにより、NaイオンおよびLiイオンの迅速なイオン交換相互拡散によって大きい圧縮深さを迅速に実現する性質が得られる。同時に、これらにより、5~15マイクロメートル程度の浅い深さまでカリウム(K)が拡散することで高圧縮(スパイク)表面層も実現できる。1つのイオン交換を用いると、一方では中~高のスパイクの層深さ(DOLsp)を伴う表面における圧縮応力CSと、応力の傾きが大きく変化する深さである、高圧縮表面層の底部で生じるニー応力CSとの間にトレードオフが存在する。
【0206】
強化されていない基材中にLiおよびNaの両方をかなりの量で有するLi含有ガラスの問題の1つは、比較的高いCSを有する1つのイオン交換(SIOX、すなわち1つの浴またはステップで行われるイオン交換であり、二重イオン交換、すなわち2つの浴またはステップで同じ基材またはガラス系物品に対して行われるイオン交換を意味する「DIOX」とは対照的である)のプロファイルが、強い非線形拡散から得られるプロファイルの深い部分の大きい正の曲率のため、制限された圧縮深さ(DOC)を有する傾向にあることである。
【0207】
本開示により、CSとCSとの間のトレードオフがなくなり、高いCSおよび比較的高いCSが同時に得られながら、依然として比較的高いDOLspが実現される組合せが実現される性質が得られる。さらに、本発明では、プロファイルの深い部分の正の曲率を実質的に減少させ、場合により圧縮領域の部分に負の曲率をさらに導入することによってDOCが実質的に増加する。
【0208】
いくつかの実施形態では、両方のステップがNaNOおよびKNOなどのNaイオンおよびKイオンを含有する塩の混合物を有する、イオン交換の2ステッププロセスが使用される。第1のステップの塩混合物は、第2のステップの塩混合物よりも多いNa含有量を有することができる。例えば、第1のステップの混合物は、塩混合物がNaNO+KNOである場合、38~90重量%のNaNOを有することができる。第1のステップの塩混合物により、KOスパイクを表面付近に形成して中間の表面濃度(例えば、<5モル%)を有することができ、Kスパイクが存在するにもかかわらず実質的なCSを形成することができる。第1のステップでは、典型的に60MPaを超える実質的な中央張力CTを形成することもできる。
【0209】
第2のステップは、Na含有塩が実質的により少ない(例えば、3~15重量%のNaNO)塩混合物中で行うことができる。さらに、第2のステップは、第1のステップよりも実質的に短いことができ(いくつかの実施形態では1/3以下の短さ)、または実質的により低い温度で行うことができる。
【0210】
このプロセスは、ガラス中の全アルカリ酸化物のモル含有量の約8%未満の非常に少ない量のKOをベースガラスが有する場合のKの非線形拡散を利用している。例えば、第2のステップのスパイクは、第1のステップよりも実質的に大きいKイオンの有効拡散係数により、CSをあまり犠牲にすることなく、高CSスパイクの全DOLを短い第2のステップで維持できることを特徴とする。第2のステップの塩混合物中の少量のNaは、スパイク中のNaの外への拡散を防止する目的を果たし、したがって、イオン交換温度または時間の比較的小さいばらつきでCSがあまり変化しない場合、比較的安定なプロセスを得る役割を果たす。
【0211】
結果として得られるプロファイルは、第2の混合物単独を使用して得られるCSと同様の高いCSを有する。さらに、これは、第2のステップの塩単独の典型的なCSよりも(10MPa超だけ)実質的に高いが、第1のステップのCSよりも(10MPa超だけ)実質的に低いCSを有する。短い第2のステップ後、比較的高いCTが維持されるか、場合によりわずかに増加する。このCTは、第2のステップの塩組成物のみを使用することによって得ることができる最大CTよりも実質的に高い。最後に、応力プロファイルは、多くの場合、約.2・t(基材の厚さ20%)であり、単独で使用される場合の第1の塩混合物または第2の塩混合物のいずれかで可能となる最大深さよりも大きいDOCを有することができる。
【0212】
使用中、同じカバーガラス部品は、前(外)側、裏(内)側、および端部の上に種々の使用応力(損耗作用を意味する)が生じる。破壊(破損)の最も一般的な原因としては、先端深さが、場合により化学強化で得ることができる圧縮深さ(DOC)をさらに超え得る深い傷(>10μm)の導入による破壊、および数百MPaの高い局所的張力を受けた比較的浅い傷(1~10μm)の過大応力(OS)による破壊が挙げられる。非常に多くの場合、DOCよりも幾分小さい先端深さを有する深い傷が使用中のカバーガラス部品の小さい曲げによる中程度の張力に曝露されると、破壊が開始し得る。したがって、化学強化の有益なパラメーターの中では、大きいDOC、および深い圧縮層中の比較的大きい深さにおける圧縮応力の値が挙げられる。このような深い傷は、粗い面またはとがった物体との接触中にガラス中に導入され得る。
【0213】
本開示によるような適切な方法で行われる場合、プロファイルの深い部分およびスパイクが実質的に独立に得られることが2ステッププロセスの利点の1つである。短い比較的低温の「スパイク」ステップ中のプロファイルの深い部分の変化は、ほとんど無視できる(典型的にDOLおよび深い部分の応力の1%未満の変化ならびにDOCの小さい変化)。
【0214】
Li含有ガラスは、非常に大きいDOCを有するスパイク付きプロファイルを得るためのある有用な性質が得られるが、いくつかの大きい問題も生じる。利点の1つは、ガラスの軟化点よりもはるかに低い温度における比較的短いイオン交換を使用して、非常に大きいDOCを得ることができることである。KおよびNaのそれぞれと比較すると、より小さいNaおよびLiは拡散率が高いため、KがNaと同様の深さまで交換可能であるよりもはるかに速く、Naはガラス中の深くのLiと交換できるため、大きいDOCが迅速に実現できる。この利点によって同時にある問題が生じ、なぜなら、Li含有ガラス中の高CSの表面スパイクの形成のために、通常、約10μmの所望の深さまでK+イオンが内部に拡散する必要があるからである。Naの拡散率に対してLi系ガラス中のKの拡散率が非常に低いことは、純NaNOのイオン交換またはNaNO-LiNO混合物中の交換の第1のステップ後に第2のステップを用いて公称上の純KNO浴中で表面圧縮スパイクを実施すると、DOLspを超える深さ(例えば、スパイク深さDOLspからDOCまで)における圧縮レベルが大きく低下することを一般に意味し、なぜなら、第1のイオン交換ステップ後に得られたNaイオンの勾配は、スパイク形成(第2のイオン交換)ステップ中に大きく減少するからである。
【0215】
さらに、いくつかの商業的に関心の高いLi含有ガラスは、ベースガラス中にLiOおよびNaOの両方をかなりの量および同等の量で含有する。一例では、Corning Incorporated(Corning、NY)から市販されるガラスの1つは、約6モル%のLiOおよび11モル%のNaOを含有する。同様に、Corning Incorporated(Corning、NY)の別の市販のガラスは、約6モル%のLiOおよび約9モル%のNaOを含有する。かなりの量のLiOおよびNaOの両方を有するこのような組成を有するガラスが、Liを犠牲にしてNaが実質的に多いガラスが得られるように設計された浴中でイオン交換されると、結果として得られるNa濃度プロファイルは、実質的に非線形の拡散の結果として非常に大きい正の曲率をもたらす傾向にある。結果として、スパイク深さを超える深さにおける応力プロファイルの深い部分も、120MPaを超えるなどで顕著である場合、大きい正の曲率を有する。例えば、以下にさらに詳細に議論される図36の曲線2801(比較例7B)および2802(比較例7C)を参照されたい。このようなプロファイルは、比較的小さく中間の深さにおいて顕著なレベルの圧縮応力をもたらし、圧縮深さに近い大きい深さでは比較的低い圧縮応力をもたらす傾向にある。曲線2801および2802が曲線2804(実施例7A)の下に下がる図36を参照されたい。さらに、これらは、スパイク深さDOLspおよびDOC間の領域の圧縮応力の同様のCSを有するが曲率を有さない(または負の曲率の部分を有する)曲線よりも小さい圧縮深さを有する傾向もある。特に、実質的に正の曲率を有するプロファイルにおいて、ほとんどの場合の圧縮応力は、表面からDOCの約1/3まで大きくなるが、DOCの1/3または1/2からDOCまでの領域ほど大きくない。例えば、曲線2801が、50マイクロメートル(約150マイクロメートルのDOCの1/3)における曲線2804とほぼ同じCSを有するが、100マイクロメートル(DOCの約2/3)だけ曲線2804のCSよりも低いCSを有する図36を参照されたい。同様に、再び図36において、曲線2802は、50マイクロメートル(約1/3DOC)だけ曲線2804のCSよりもすでに小さいCSを有し、75マイクロメートル(約1/2DOC)および100マイクロメートル(約2/3DOC)において曲線2802よりも依然として小さい。さらに、このようなプロファイル(曲線2801および2802など)は、圧縮領域の深い部分において小さい曲率を有し、同様のスパイクおよび同様のニー応力を有するプロファイル、例えば、非強化組成物中で多量のLi2Oを有するが、Na2Oをほとんどまたは全く有さないガラスで得ることができるプロファイルよりも幾分小さいDOCを有する傾向にある。
【0216】
化学強化されたLi含有カバーガラスでは、化学強化の利点の1つは、DOCが安定なレジームにある場合に実現される。DOCが厚さの20%程度で安定化され(DOCが約0.2tである)、より大きい正の曲率を有するプロファイルは、通常、幾分より小さい値を有するが、より小さい正の曲率を有するか、またはさらには負の曲率を有する部分を有するプロファイルは、幾分より大きい値のDOCを有する傾向にある。この安定なDOCレジームでは、野外での使用中、カバーガラスは、砂の粒子または小石などのとがった物体によって深い傷が形成されることがある。強度を制限する傷は、ほとんどの場合に最も深い傷であり、0.3DOC~DOCの範囲などの大きい深さでより大きい圧縮応力を有することは、鋭い接触の事象の結果としての破壊の可能性を低下させるために有益であり得る。これは、1mm以下、例えば0.8mm以下または0.6mm以下などのより小さい厚さの場合に特に重要となり、なぜなら、DOCは厚さに比例して減少し、圧縮応力によって阻止する必要がある傷の先端は、DOCの一層大きい部分に到達するからである。
【0217】
本開示は、特に、大きいスパイクDOL、大きいスパイクCS、深いDOC、大きいCS、および0.3DOC~DOCの大きい深さにおける大きい圧縮応力(いくつかの実施形態では、圧縮応力プロファイルの深い部分の小さい正の曲率の結果として)を同時に実現することができる二重イオン交換プロセスを説明する。
【0218】
いくつかの実施形態は、良好な深さのスパイクおよび高CSを同時に実現しながら、良好な破壊抵抗のための所望のレベルのCSを実現することの結果としての引っ掻き抵抗の改善を含むことができる。
【0219】
いくつかの実施形態では、リチウム含有ガラスの2ステップ(以上)のイオン交換によって得られる応力プロファイルは、NaおよびKを含有する塩の混合浴中の1ステップイオン交換、または従来の2ステップイオン交換のいずれかによって同じガラス中で得ることができるプロファイルよりも実質的な利点を有する。
【0220】
100%NaNO中の比較的長いステップと、続いてNaNOおよびKNOの混合物中のより短い第2のステップとを有するDIOXを使用して得られる応力プロファイルにより、DIOXの第2のステップと同じ塩混合物を使用するSIOXプロセスと比較すると、より高いCSおよび小さいDOLspとの間のトレードオフがほとんどの場合に得られる。イオン交換の第1のステップおよび第2のステップの両方がKNOおよびNaNOの混合物中で行われるが、DIOX(65%のNaを有するステップ1、40%のNaを有するステップ2を有する)と異なり、第2のステップの浴は、第1のステップの浴のNa:Kのモル比よりも実質的に小さい(例えば、1/3~1/10)のNa:Kのモル比を有する場合、より良好なDIOXプロファイルが得られる。
【0221】
いくつかの実施形態によるLi含有ガラス中の応力プロファイルは、イオン交換の両方のステップがNa含有塩およびK含有塩の両方を含む浴中で行われ、ガラス組成物中のNa:Li比に依存して、第1の浴中のKイオンに対するNaイオンの比が、第2の浴中のKイオンに対するNaイオンの比の2.5倍以上、例えば3倍以上、または5倍もしくは8倍以上であるが、800倍以下、例えば600倍以下、500倍以下、または400倍以下である2ステップイオン交換によって得られる。さらに、いくつかの実施形態では、第2の塩は、ガラス組成に依存して、0.03以上、例えば0.04以上、または0.047以上、いくつかの場合には0.06以上または0.07以上、および0.4以下、または0.35以下、または0.30以下、または0.21以下、0.16以下、または0.13以下であるKに対するNaの比を有する。一般に、Liよりも実質的に多いNaをガラス中に有する組成物は、浴中のNa:Kのより大きい比率、例えば0.21および0.16が第2の浴中で許容される。
いくつかの実施形態では、第2のステップの有効拡散時間は、第1のステップの拡散時間の1/20~1/2、例えば1/20~1/3、または1/20~1/4である。
【0222】
本明細書に記載のDIOXプロセスのいくつかの特徴は以下の通りである。
【0223】
いくつかの実施形態では、第2のステップの低Na組成物を用いて得られた高表面CSに非常に類似し、高Na第1のステップの浴を用いて通常得られる表面CSよりも実質的に高い高表面CSである。例えば、比較例7Bの70Na/30K浴によって得られる高表面CSを有する曲線2801、および比較される曲線2804の実施例7Aを参照されたい。DIOXプロファイルの表面CSは、600MPa以上、例えば650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、800MPa以上、または850MPa以上であり得る。
【0224】
いくつかの実施形態では、DOLspは、第1のステップのDOLspと同等であり、第2のステップ単独で得られるDOLspよりもはるかに大きい(多くの場合、2倍、さらにより大きい)。これは、第2のステップのみが塩浴中にKNOを有し、イオン交換によるスパイク形成のためのKイオンが供給される場合に得られるDOLspと比較すると、DOLspが比較的大きいことを意味する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるDIOXプロセスを用いて得られるDOLspは、5~16マイクロメートルの範囲内であり、厚さが1~1.3mmである場合に厚さの0.5~1.5%であり、厚さが0.8~1mmである場合に厚さの0.6~2%の範囲内であり、厚さが0.65~0.8mmである場合に0.7~2.5%の範囲内であり、厚さが0.5~0.65mmである場合に0.9~3%の範囲内であり、および厚さが0.3~0.5mmである場合に1~3%の範囲内である。
【0225】
いくつかの実施形態では、比較的高いCSは、第2のステップの浴の組成に典型的なCSよりも実質的に大きく、第1のステップのCSよりも小さい。例えば、実施例7Aでは、第1のステップのCSは約160MPaであり、DIOXのCSは125MPaであり、一方、7重量%のNaNO+93重量%のKNOの第2のステップの組成を有する浴では、安定なDOCが実現されると、75MPa未満のCSkが得られる。
【0226】
いくつかの実施形態では、第1のステップの塩での1ステップイオン交換によって得られるDOCよりも高い高DOCが実現される。例えば、0.8mmの試料の場合、実施例7AのDIOXのDOCは約160μmであり、すなわち厚さの20%である。
【0227】
いくつかの実施形態では、約1.5DOLsp~DOCの深さ範囲内の圧縮応力プロファイル中の正の曲率が最小限となるか、またはさらには正の曲率がなくなる。特に、その深さ範囲内の曲率は、好ましくは、基材中央を中心とし、本発明のDIOXプロファイルと同じCSを有する力のバランスが取れた放物線状プロファイルの曲率を超えない。この比較の目的で、圧縮応力は正であり、引張応力は負であるという符号規約が仮定されることに留意されたい。品質管理の目的であるが、スパイクを有する冪乗則プロファイルとしてのプロファイルの簡略化された表示を仮定し得ることにも留意すべきである。スパイクを有する放物線状プロファイルの深い部分は、2の冪係数を有する放物線に適合する。いくつかの実施形態では、プロファイルまたはCT領域の深い領域の形状の場合、冪係数は、1~3または1.7~2.6の範囲内であり得る。本発明のDIOXプロファイルは、DOLspとDOCとの間の領域内において、同じ深さ範囲にわたり、深さ=DOLspにおいて同じ応力を有する放物線状プロファイルの曲率を超えない曲率を示す。
【0228】
いくつかの実施形態では、DOC/3~DOCの深さ範囲内で比較的大きい圧縮を実現することができる。特に、DIOXプロファイルは、この深さ範囲内の第1のステップのプロファイルと同様のまたはより大きい圧縮を有する。例えば、図36の曲線2804を曲線2802および2803と約50~150マイクロメートルの範囲内で比較すると、この範囲内でより大きいCSが示される。このより大きいCSは、力のバランスと、約1.5DOLsp~DOCの深さ範囲内のプロファイルの正の曲率の減少または解消との複合効果の結果として得られる。
【0229】
いくつかの実施形態では、通常、第1のステップのCT±3MPaの範囲内であり、同等の全イオン交換時間の場合において、通常、ステップ2の塩組成物のみを用いて得られるCTよりも5~15MPa高い比較的高いCTを実現することができる。実施例7では、図36において、DIOXプロファイル(曲線2804)は、1ステップの曲線2801のプロファイル(70%Na、4時間、380℃)のCTとほぼ同じ約70MPaのCTを有し、4時間40分のDIOXの全時間と同等の時間での第2のステップの浴(7%Na)中でのイオン交換では、50~55MPaの範囲内のCTが得られる。DIOXプロファイルの高CTは、圧縮区域内の高応力-深さの積分を示し、これは圧縮区域内に導入された傷によって開始する破壊に対するガラス物品の抵抗性を得るのに役立つ。
【0230】
いくつかの実施形態では、同様の深い部分および同様の高CSkを有するが、実質的により低い表面CSまたはより小さいDOLspを有する他の破壊抵抗性プロファイルと比較してより良好な引っ掻き抵抗が実現される。例えば、40%NaNOおよび60%KNOを有する浴中で得られた図36の曲線2802のSIOXプロファイルを比較すると、DIOXプロファイルの曲線2804と125MPaにおける同様のCS、同様のDOC、およびDOLspを有するが、曲線2802の表面CSは、約250MPaだけ低い(曲線2804のDIOXプロファイルの場合の800~820MPaに対して550~570MPa)。
【0231】
いくつかの実施形態では、DIOXプロファイルおよびそれを作成する方法により、ガラス物品の厚さが端部に向かって徐々に減少する場合(「2.5Dカバーガラス」)にガラス物品の周辺領域の非常に優れた強化が行われる。従来の(「2D」)カバーガラスの場合、ガラス物品の厚さは、実質的にガラスシートのちょうど端部まで一定であり、または端部が面取りされる場合には端部先端の0.3t未満まで一定であり、ここで、tはシートの厚さである。本明細書に記載の実施形態によるプロファイルにより、端部周囲の任意の点から測定した圧縮深さがシート内部における大きい圧縮深さと類似しているため、従来技術のプロファイルと比較すると、この種類の端部の優れた強化が得られる。より顕著には、シートの厚さが端部に向かって徐々に減少し、通常、端部から1~3mmまたは端部から0.3t以上の距離であるが、ほとんどの場合に端部から0.5t以上または1.0t以上の距離で減少が開始する2.5Dカバーガラスの場合、ガラス物品の周囲(例えば、端部の接触の形成)で開始する傷が、従来技術のプロファイルと比較すると、通常よりも圧縮応力分布によって阻止または偏向されやすいという意味で主要な強化が存在する。この亀裂阻止効果は大きい利点であり、なぜなら、電子デバイスが誤って落下され、それらがより多くの場合に端部での接触事象を経験する場合、このような端部の強化は、実際の使用中の破壊に対する抵抗性を大きく改善するために有益となるからである。
【0232】
したがって、約0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、1つ以上の実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約200MPa/マイクロメートル~約25MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。第1の厚さ範囲は、約0・t~最大約0.020・t、0.025・t、0.0275・t、0.030・t、もしくは0.035・t、および0.98・t超、0.975・t超、0.9725・t超、0.97・t超、もしくは0.965・t超に及ぶことができる。傾きは、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約200MPa/マイクロメートル~約25MPa/マイクロメートルの範囲であり得る。さらなる実施形態では、傾きは、約-200、-190、-180、-170、-160、-150、もしくは-140MPa/マイクロメートル~約-25、-27、-30、-31、-32、-33、-34、もしくは-35MPa/マイクロメートルの範囲、または約25、27、30、31、32、33、34、または35~約140、150、160、170、180、190、もしくは200の範囲であり得る。したがって、例えば、第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、1つ以上の実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-170MPa/マイクロメートル~約-30MPa/マイクロメートルまたは約30MPa/マイクロメートル~約170MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、いくつかの実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-140MPa/マイクロメートル~約-35MPa/マイクロメートルまたは約35MPa/マイクロメートル~約140MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0233】
上記の傾きの範囲は、いずれかの第1の厚さ範囲と組み合わせることができる。したがって、例えば、約0・t~最大0.025・tおよび0.975・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、1つ以上の実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。約0・t~最大0.025・tおよび0.975・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、さらなる実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-170MPa/マイクロメートル~約-30MPa/マイクロメートルまたは約30MPa/マイクロメートル~約170MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。約0・t~最大0.025・tおよび0.975・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、さらなる実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-140MPa/マイクロメートル~約-35MPa/マイクロメートルまたは約35MPa/マイクロメートル~約140MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0234】
約0・t~最大0.035・tおよび0.965・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、いくつかの実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。約0・t~最大0.035・tおよび0.965・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、さらなる実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-170MPa/マイクロメートル~約-30MPa/マイクロメートルまたは約30MPa/マイクロメートル~約170MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。約0・t~最大0.035・tおよび0.965・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの、さらなる実施形態では少なくとも1つの点および別の実施形態では全ての点は、約-140MPa/マイクロメートル~約-35MPa/マイクロメートルまたは約35MPa/マイクロメートル~約140MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。いくつかの実施形態では、第1の厚さ範囲が狭くなると、第1の厚さにおける点の接線の傾きが急になることがある。
【0235】
この態様の1つ以上の実施形態では、約0.035・t~0.965・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-15MPa/マイクロメートル~約15MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。すなわち、0.035・t~0.965・tの範囲に沿って進むと、傾きは、負になり始め、ゼロに近づき、次に正になり、冪乗則関数に近づく。本明細書において使用される場合、「冪乗則関数」は、応力が深さまたは厚さに指数関数的に比例する曲線を意味する。1つ以上の実施形態では、指数は約1.2~約3.2の範囲である。さらなる実施形態では、指数は約1.2~約2.8の範囲である。いくつかの実施形態では、第2の厚さ範囲の場合に言及される傾きは、約0.1・t~0.9・t、または0.15・t~0.85・t、または0.2・t~0.8・t、または0.22・t~0.78・t、または0.24・t~0.76・t、または0.26・t~0.74・t、または0.28・t~0.72・t、または0.3・t~0.7・t、または0.35・t~0.65・t、または0.4・t~0.6・t、または0.45・t~0.55・tの範囲内であり得る。
【0236】
第2の厚さ範囲内の点は、傾きを有する接線を含むと記載することもできる。1つ以上の実施形態では、接線の傾きは、約-15、-10、-5、-4、-3、-2、または-1MPa/マイクロメートル~約1、2、3、4、5、10、または15MPa/マイクロメートルの範囲である。いくつかの実施形態では、第2の厚さ範囲の場合に言及される傾きは、約0.1・t~0.9・t、または0.15・t~0.85・t、または0.2・t~0.8・t、または0.22・t~0.78・t、または0.24・t~0.76・t、または0.26・t~0.74・t、または0.28・t~0.72・t、または0.3・t~0.7・t、または0.35・t~0.65・t、または0.4・t~0.6・t、または0.45・t~0.55・tの範囲内であり得る。
【0237】
上記の傾きの範囲は、いずれかの第2の厚さ範囲と組み合わせることができる。したがって、例えば、1つ以上の実施形態では、約0.035・t~0.965・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-2MPa/マイクロメートル~約2MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。いくつかの実施形態では、約0.025・t~0.975・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-15MPa/マイクロメートル~約15MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。さらなる実施形態では、約0.025・t~0.975・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの点は、約-2MPa/マイクロメートル~約2MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。1つ以上の実施形態では、約0.02・t~0.98・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-15MPa/マイクロメートル~約15MPa/マイクロメートルまたは約-2MPa/マイクロメートル~約2MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0238】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約200MPa~約1100MPaの表面CSを含む。さらなる実施形態では、表面CSは、約300を超え、350を超え、400を超え、450を超え、500を超え、550を超え、600を超え、610を超え、620を超え、650を超え、700を超え、750を超え、および/または約650未満、700未満、750未満、800未満、850未満、900未満、950未満、1000未満、もしくは1100未満である。
【0239】
この態様の1つ以上の実施形態に記載のガラス系物品は、応力プロファイルを含み、約0.1・t~0.25・tまたは0.3・tの範囲のDOCを含む。
【0240】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約0.5モル%のP~10モル%のPを含む組成を含む。
【0241】
この態様のガラス系物品の応力プロファイルは、1つのイオン交換ステップにより、または2つ以上のイオン交換ステップを使用してのいずれかで得ることができる。1つ以上の実施形態では、これらのイオン交換ステップは、前出の態様で前述したいずれかの特徴を含むかまたは備えることができる。1つ以上の実施形態では、第1の厚さ範囲は、カリウム含有塩中のイオン交換によって得られる。
【0242】
Li含有ガラスに対する1ステップイオン交換プロセスに関する1つ以上の実施形態では、主要制御パラメーターは、スパイクCSおよびプロファイルの深い部分の応力の相対的な大きさが得られるNaとKとの間の浴濃度比であると考えられる。その相対的な大きさに対する影響のより小さい第2のパラメーターは、イオン交換時間および温度であり、これらの両方は、プロファイル中のスパイクの深さおよび全体の応力の要求によって影響され得る。したがって、1つ以上の実施形態によると、本明細書に記載の応力プロファイルを実現するための時間中にNaとKとの間の濃度比が変動することを含む1つのイオン交換ステップを含む方法が提供される。
【0243】
2つ以上のイオン交換ステップを有する化学強化に関する1つ以上の実施形態では、これらの2つ以上のステップの異なるNa/K比および異なる相対時間を使用することによってプロファイルをさらに調整することが可能である。いくつかの実施形態では、プロファイルのテール領域のためのある範囲の冪係数は、KNO/NaNO比およびイオン交換時間を調整することによって実現できる。本開示において提供される実験用プロファイルは、プロファイルの深い領域の形状のために、1~3または1.7~2.6の範囲内となる冪関数を有することができる。より小さい冪係数を有するプロファイルは、一般に、深い領域で典型的に1MPa/マイクロメートル未満のより小さい傾きを有すると考えられる。したがって、1つ以上の実施形態によると、本明細書に記載の応力プロファイルを実現するための時間中にNaとKとの間の濃度比が変動することを含む2つ以上のイオン交換ステップを含む方法が提供される。
【0244】
本開示の別の一態様は、約2~約20モル%のLiOを含む中心面と、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面であって、0.1mm~2mmの範囲内の厚さ(t)を画定する第1の表面および第2の表面と、厚さ(t)に沿って延在する応力プロファイルとを含むガラス系物品であって、約0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、応力プロファイルは、約200MPa~約1100MPaの表面CSを含み、応力プロファイルは、約0.05・t~0.25・tの範囲のDOCを含む、ガラス系物品に関する。前述のいずれかの実施形態は、特に前の態様に関してこの態様に適用され得る。別の実施形態では、約0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む。
【0245】
1つ以上の実施形態では、第1の厚さ範囲は、K含有塩中でのイオン交換によって得られる。
【0246】
1つ以上の実施形態では、第2の厚さ範囲は、Na含有塩またはK含有塩中でのイオン交換によって得られる。
【0247】
1つ以上の実施形態では、応力プロファイルは、1つのイオン交換ステップを用いて得られる。
【0248】
1つ以上の実施形態では、応力プロファイルは、2つ以上のイオン交換ステップを用いて得られる。
【0249】
1つ以上の実施形態では、表面CSは、約690MPa~950MPaの範囲である。
【0250】
1つ以上の実施形態では、第2の深さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、冪指数を有する冪乗則プロファイルからの範囲にわたり、冪指数は、約1.2~3.4である。いくつかの実施形態では、冪指数は、約1.3~2.8である。
【0251】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約0.5モル%のP~約10モル%のPを含む組成を含む。
【0252】
1つ以上の実施形態では、中心面は、約0.5モル%~約20モル%のNaOを含む組成をさらに含む。いくつかの実施形態では、中心面は、約2モル%~約10モル%のLiOを含む組成をさらに含む。いくつかの実施形態では、ガラス物品の中心面内のNaOの濃度は、約5モル%~16モル%である。いくつかの実施形態では、ガラス物品の中心面内のNaOの濃度は、約10モル%~15モル%である。いくつかの実施形態では、ガラス物品の中心面内のLiOの濃度は、約3モル%~10モル%である。
【0253】
本明細書に記載の開示の1つ以上の実施形態によるガラス系物品は、特にLiを主成分として含むガラス系物品の場合、落下性能を犠牲にすることなく引っ掻き抵抗のレベルが改善される。本明細書に記載の開示の1つ以上の実施形態によるガラス系物品は、30グリットおよび180グリットの両方の研磨紙で示されるように優れた落下性能が得られる。本明細書に記載の開示の1つ以上の実施形態によるガラス系物品は、壊れやすくない方法を提供し、ガラスの破壊は、主として準均一である。本明細書に記載の開示の1つ以上の実施形態によるガラス系物品は、イオン交換プロセスに使用される温度および組成に関するガラス形状のひずみが許容されるレベルとなる。本明細書に記載の開示の1つ以上の実施形態によるガラス系物品は、製造プロセスが複雑になることなく実現可能な応力プロファイルを含む。
【0254】
1つ以上の実施形態では、本開示によるガラス中の濃度プロファイルは、線形拡散近似を用いて計算できる相補誤差関数に基づくプロファイルと異なることが確認された。したがって、本明細書に記載の1つ以上の実施形態によるガラスは、線形拡散近似を用いて計算できる相補誤差関数に基づくプロファイルを示さない。
【0255】
1つ以上の実施形態によると、1つ以上の実施形態によるガラス中のNa/Li、K/(Na+Li)相互拡散を表すために使用できる相互拡散率は、Li、Na、およびKの局所濃度に依存する。化学強化されるLi含有ガラスが文献に記載されている。しかし、文献に記載のこのようなガラスは、応力プロファイルの曲率に対する濃度依存性拡散率の効果を無視しており、このようなガラスは、線形拡散近似に一致するプロファイルを示し(すなわち2セグメントプロファイルの相補誤差関数型の浅いおよび深い分岐)、本開示の1つ以上の実施形態のガラスは文献のガラスとは区別される。本開示の1つ以上の実施形態により記載されるガラスと、文献のガラスとの間の別の差は、周知の強化された基材中の強化用イオン種(例えば、Na+またはK+またはそれらの組合せ)の拡散が基材のより深い深さまで及ばず、またはいくつかの場合、基材の中央(すなわち約0.4t~約0.6tの範囲内)まで及ばないことである。さらに、文献は、本明細書に記載の応力プロファイルが結果として得られるガラス拡散率、基材厚さ、およびイオン交換条件の組合せを開示していない。特に、文献には、より厚い基材(例えば、2.5mmを超える厚さを有する基材)が記載されている。特に、本開示の1つ以上の実施形態によるガラスと、文献に記載のガラスとの間のこれらの差により、プロファイル全体の形状の差、特に1つ以上の実施形態による冪乗則近似の差も結果として得られる。
【実施例0256】
以下の実施例によって種々の実施形態をさらに明らかにする。実施例において、強化前に実施例は「基材」と呼ばれる。強化された後、実施例は「物品」または「ガラス系物品」と呼ばれる。
実施例1
実施例1A~1Gは、約63.46モル%のSiO、15.71モル%のAl、6.37モル%のLiO、10.69モル%のNaO、0.06モル%のMgO、1.15モル%のZnO、2.45モル%のP、および0.04モル%のSnOの公称組成を有するガラス基材を含んだ。ガラス基材は0.8mmの厚さを有する。実施例1A~1Gのガラス基材は、100%NaNOを含み、約390℃の温度を有する溶融塩浴中において、表2に示される条件によりイオン交換した。結果として得られたガラス系物品は、図5のイオン交換時間の関数としてプロットされる最大CT値を示した。
【0257】
【表2】
【0258】
“Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample”という名称の、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8,854,623号明細書に記載されるような屈折近接場(RNF)測定を用いて、実施例1Eの応力プロファイルを測定した。図6は、実施例1Eのガラス系物品の表面からガラス系物品中に延在する深さの関数として測定した応力を示す。ニーを含む特定の深さにおける応力を表3に示す。図6では、正の数は圧縮応力に使用され、負の数は引張応力を示す。この同じ規約(圧縮応力はy軸上の正の値として示され、引張応力はy軸上の負の値によって示される)が図1~3、23、および27にも使用される。しかし、残りの図では、圧縮応力はy軸上の負の値として示され、引張応力はy軸上の正の値として示される。
【0259】
【表3】
【0260】
実施例2
実施例2Aは、実施例1と同じ組成および0.8mmの厚さを有するガラス基材を含んだ。ガラス基材は、51%のKNO3および49%のNaNOを含み、約380℃の温度を有する1つの溶融塩浴中で3.75時間のイオン交換を行った。結果として得られたガラス系物品は、表4に記載の応力プロファイルを示した。
【0261】
【表4】
【0262】
実施例2Aによるガラス系物品に対して、本明細書に記載のAROR試験を行った。第1の組のガラス系物品は、5psi(34.5kPa)の荷重または圧力を用いて研磨し、第2の組のガラス系物品は、25psi(172kPa)の荷重または圧力を用いて研磨し、第3の組のガラス系物品は、45psi(310kPa)の荷重または圧力を用いて研磨した。ARORデータを図7に示す。図7に示されるように、実施例2Aによる全てのガラス系物品は、約20kgf(約196N))を超える平均破壊荷重を示した。
【0263】
実施例2Aによるガラス系物品を同一の携帯電話デバイス上に後付けした。20センチメートルから出発して徐々に増加する高さから、これらの電話デバイスを180グリット研磨紙上に落下させた。ガラス系物品がある高さ(例えば、20cm)からの落下に残存した場合、携帯電話を、より高い高さ(例えば、30cm、40cm、50cmなど)で最大225cmの高さから再び落下させた。残存したガラス系物品は、次に30グリット研磨紙上に落下させた(同じ電話デバイス中)。180グリットの研磨紙および30グリットの研磨紙の両方の上でガラス系物品が破壊される高さを図8にプロットしている。図8に示されるように、実施例2Aの2つのガラス系物品を除いた全ては、180グリット研磨紙上に最大約225cmの高さからの落下で残存した(約216cmの平均残存落下高さが得られた)。30グリット研磨紙上への平均残存落下高さは66cmであり、一部は100cmを超える落下高さで残存した。
【0264】
実施例2Aによるガラス系物品は、約480mHz~約3000mHzの周波数範囲にわたって約6.9~約7.05の誘電率を示した。実施例2Aによるガラス系物品は、約480mHz~約3000mHzの周波数範囲にわたって約0.012~約0.015の範囲内の誘電正接を示した。
【0265】
実施例2Aによるガラス系物品の屈折率は、約380nm~約1550nmの範囲にわたって約1.158~約1.49の範囲内であり、約380nm~約800nmの波長範囲にわたって約1.518~約1.497の範囲内である。
【0266】
実施例2Aによるガラス系物品に対して、表5に示されるような種々の化学処理を行った。ガラス系物品の化学耐久性を比較例2E、2F、および2Gと比較した。比較例2Eは、64.3モル%のSiO、7.02モル%のB、14モル%のAl、14モル%のNaO、0.5モル%のKO、0.03モル%のFe、および0.1モル%のSnOの公称組成を有するガラス基材であった。比較例2Fは、64.75モル%のSiO、5モル%のB、14モル%のAl、13.75モル%のNaO、2.4モル%のMgO、および0.08モル%のSnOの公称組成を有するガラス基材であった。比較例2Gは、57.5モル%のSiO、16.5モル%のAl、16.71モル%のNaO、2.8モル%のMgO、および0.05モル%のSnOの公称組成を有するガラス基材を含んだ。
【0267】
【表5】
【0268】
実施例3
実施例3Aは、実施例1と同じ組成および0.8mmの厚さを有するガラス基材を含んだ。比較例3Bは、比較例2Gと同じ組成および0.8mmの厚さを有するガラス基材を含んだ。実施例3Aのガラス基材は、表6に記載されるように1つの浴を用いる1ステップで化学強化した。比較例3Bのガラス基材は、表6に記載されるように2ステッププロセスでイオン交換した。
【0269】
【表6】
【0270】
実施例3Aおよび比較例3Bによるガラス系物品を同一の携帯電話デバイス上に後付けした。20センチメートルから出発して徐々に増加する高さから、これらの電話デバイスを30グリット研磨紙上に落下させた。30グリット研磨紙上でガラス系物品が破壊される高さを図9にプロットしている。図9に示されるように、実施例3Aのガラス系物品は、比較例3Bの平均残存落下高さ(すなわち38cm)の2倍を超える平均残存落下高さ(すなわち91cm)を示した。
【0271】
実施例3Aおよび比較例3Bによるガラス系物品に対して、25psi(172kPa)の荷重または圧力を用いて本明細書に記載のAROR試験を行った。図10に示されるように、実施例3Aのガラス系基材は約30kgf(約294N)の平均破壊荷重を示し、一方、比較例3Bのガラス系基材は約27kgfの平均破壊荷重を示した。研磨荷重または圧力を45psi(310kPa)まで増加させると、実施例3Aおよび比較例3Bの平均破壊荷重の差が増加した。特に、45psi(310kPa)の荷重または圧力下では、図11に示されるように、実施例3Aは約25.9kgf(約254N)の平均破壊荷重を示し、一方、比較例3Bは約19.6kgf(約192N)の平均破壊荷重を示した。
【0272】
実施例4
57.5モル%のSiO、16.5モル%のAl、16.7モル%のNaO、2.5モル%のMgO、および6.5モル%のPの公称組成、および約0.4mm、0.55mm、または1mmの厚さを有するガラス基材に対して化学強化を行った。厚さおよび化学強化の条件を表7に示す。
【0273】
【表7】
【0274】
実施例4Aは、表7に示される溶融塩浴中に4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間浸漬した(実施例4A-1~4A-6)。実施例4Bは、表7に示される溶融塩浴中に4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間浸漬した(実施例4B-1~4B-6)。実施例4Cは、表7に示される溶融塩浴中に1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、および32時間浸漬した(実施例4C-1~4C-6)。実施例4Dは、表7に示される溶融塩浴中に4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間浸漬した(実施例4D-1~4D-6)。実施例4A-1~4A-6、4B-1~4B-6、6C-1~4C-6、および4D-1~4D-6の応力プロファイルをそれぞれ図12、14、16、および18に示す。図12、14、16、および18では、ガラス物品の深さまたは厚さをx軸上にプロットし、応力をy軸上にプロットしている。正の応力値はCT値であり、負の応力値はCS値である。
【0275】
実施例4A-1~4A-6、実施例4B-1~4B-6、実施例4C-1~4C-6および4D-1~4D-6の溶融塩浴中に浸漬した時間の関数としてのCT値およびDOC値をそれぞれ図13、15、17、および19に示す。
【0276】
実施例5
表8に示される公称組成および約0.8mmの厚さを有するガラス基材について、それぞれNaNOとNaSOとの混合物および500℃の温度を含む溶融塩浴中で15分(比較例5A)および16時間(実施例5B)の化学強化を行った。
【0277】
【表8】
【0278】
実施例5Aおよび5Bのガラス系物品の応力プロファイルを図20に示す。図20に示されるように、比較例5Aは、周知の応力プロファイルを示し、一方、実施例5Bは、本開示の1つ以上の実施形態による応力プロファイルを示した。実施例5Aおよび5Bのガラス系物品の貯蔵引張エネルギーを、測定SCALP応力プロファイルデータから前述の式(3)を用いて計算した。図21に示されるように、計算した貯蔵引張エネルギーを測定CT(MPa)の関数としてプロットしている。
【0279】
図21に示されるように、比較例5Aは、特定のCT値の場合、(同じCT値の場合の)実施例5Bよりもはるかに大きい貯蔵引張エネルギー値を示した。この図では、CTは試料中の最大CTである。特に約55MPaのCTにおいて、比較例5Aは約12J/mの貯蔵引張エネルギーを示し、一方、実施例5Bは約9J/mの貯蔵引張エネルギーを示した。比較例5Aおよび実施例5Bが破壊されると、実施例5Bは、比較例5Aよりも少ない数の破片に破壊され、比較例5Aは、はるかに多数の破片に破壊された。したがって、理論によって束縛しようとするものではないが、貯蔵引張エネルギーを制御することで、破壊によって生じる断片化パターンまたは破片数を制御または予測する方法を得ることができると考えられる。これらの例では、同じ浴の温度および組成を使用しながら、より長時間イオン交換浴中に試料を維持することによってCTが変化した。図21では、0,0の点は実験的なものではなく、それが該当する場合、すなわち0CTが存在する場合、貯蔵引張エネルギーが0となると当業者が予測する点である。
【0280】
表8に示す公称組成および約1mmの厚さを有するガラス基材について、それぞれNaNOおよび430℃の温度を含む溶融塩浴中で4時間(比較例5C)および61.5時間(実施例5D)の化学強化を行った。比較例5Cは、周知の応力プロファイルを示し、一方、実施例5Dは、本開示の1つ以上の実施形態による応力プロファイルを示した。実施例5A~5Bに用いた方法と同じ方法を用いて実施例5Cおよび5Dの貯蔵引張エネルギーを計算し、図22に示されるように測定CT(MPa)の関数としてプロットしている。
【0281】
図22に示されるように、比較例5Cは、特定のCT値(この場合も図21と同様に、これらは最大CT値であり、この場合もこれらの値は、同じイオン交換浴の温度および組成を使用するがより長い時間を使用することで変化した)の場合、(同じCT値の場合の)実施例5Dよりもはるかに大きい貯蔵引張エネルギー値を示した。比較例5Cおよび実施例5Dが破壊されると、実施例5Dは、比較例5Cよりも少ない数の破片に破壊され、比較例5Cは、はるかに多数の破片に破壊された。
【0282】
実施例6
実施例6A~6Dは、本開示の1つ以上の実施形態による、ベースガラス中に約10モル%のNaOおよび6モル%のLiOを有するガラス基材を含んだ。例えば、公称組成は、約63.46モル%のSiO、15.71モル%のAl、6.37モル%のLiO、10.69モル%のNaO、0.06モル%のMgO、1.15モル%のZnO、2.45モル%のP、および0.04モル%のSnOを有する。これらのガラス基材は0.8mmの厚さを有する。実施例6A~6Dのガラス基材は、溶融塩浴中において、表9に示される条件を含むイオン交換を行い、「SIOX」は1つのイオン交換を意味し、「DIOX」は二重イオン交換を意味する。
【0283】
ガラス基材中で応力プロファイルの種々の試験を実施した。ガラス基材は、ベースガラス中にNaおよびLiを含有する組成を有する。主としてNaおよびKなどの2種類以上のイオンをLiと同時に交換することが可能である。典型的に、ガラスの中心に向かう長いテールおよびその表面内のスパイクを有するプロファイルを実現するために、その組成中にNaなどの1種類のみの遊離のイオンを有するガラス中において、異なるKNO/NaNO混合物を用いる2ステップIOXプロセスが行われる。
【0284】
【表9】
【0285】
表9は、異なるイオン交換方法で直接的な外面における応力のための点ごとの方法およびプリズム結合基測定(FSM測定器)によるパラメーターおよび測定値も示す。表9に示されるパラメーターは、プロファイルの深い領域の冪係数、表面圧縮応力(CS)、スパイクが深いテールに接続されるニーにおける応力、およびニーが生じるスパイクの層深さを含む。実施例6A~Dから分かるように、スパイクのDOLは、約.01・t~約.035・t(例えば、約.015・t、.02・t、.025・t、.30・t、または.35・t、およびそれらの間の任意および全ての部分的範囲)、すなわち厚さ800マイクロメートルの試料の約7.3マイクロメートル~約24マイクロメートルであり得る。スパイクDOLは、一般にカリウムDOLに対応する。Li含有ガラスでは、1つのIOX拡散でさえも応力プロファイル中にスパイクおよびテールが形成される。これは、異なる量のLi、Na、およびKを含有するガラスが、異なる拡散速度で同時に交換されることが理由であると考えられる。実際の深い応力プロファイルと冪乗則近似との間のわずかな局所的なずれ、および点間の応力プロファイル測定における精度の制限のために、スパイクの底部における実際の応力と、モデルのスパイクを有する冪乗プロファイルのニー応力との間で最大10~15MPaの差が生じ得る。
【0286】
図23は、TEおよびTM偏光における点ごとの屈折率測定によって測定した応力プロファイルを示す。測定技術の分解能の限界のため、表面における応力は、上部5マイクロメートルにおいて実際よりも低く示されていることに留意されたい。実際の表面応力値は、ここに示されるよりも高く、プリズム結合技術によって別に測定される。より十分な範囲の特性が表9に示されている。Li含有ガラスがKおよびNaの両方を有する浴中に浸漬される場合、1つのイオン交換(SIOX)拡散でさえも応力プロファイル中にスパイクおよびテールが形成されることに留意されたい。何らかの特定の理論に束縛されることと望むものではないが、このスパイクおよびテールは、異なる拡散速度で同時に交換される異なる量のLi、Na、およびKを含有するためであると考えられる。
【0287】
応力プロファイルの例は、図23に見ることができる。この図から分かるように、実施例6Aの場合、スパイク領域はカリウムの非線形拡散によって得られ、一方、プロファイルのテールはNaおよびLiの非線形拡散によって得られる。イオン交換浴からのNaが厚さの中央に到達しない短い拡散時間の場合でも、この場合のプロファイルのテールは、実質的に線形の拡散にのみ適用できる相補誤差関数で表されない。
【0288】
再び図23において、TEおよびTM偏光における点ごとの屈折率測定によって試験した種々の応力プロファイルの測定応力プロファイルを確認することができる。ここで、表面における応力は、測定の制限された分解能とスパイクプロファイルの大きい傾きとのために、実際よりも低く示されている。実際の表面応力値は、この図に示されるよりも高い場合があり、プリズム結合(FSM-6000)を用いて得られるモードスペクトルの分析を用いて別に測定される。2種類以上のイオンが同時に拡散するため、1つのイオン交換拡散で応力プロファイル中にスパイクおよびテールが形成されることに留意されたい。
【0289】
図24は、本開示の1つ以上の実施形態による、ベースガラス中に約10モル%のNaOおよび6モル%のLiOを有するガラス中において、51重量%K/49重量%Naの処方を380℃で3.75時間にわたって用いて(6A)拡散させたK、Na、およびLiの測定し規格化したマイクロプローブデータを示す。図から分かるように、カリウムの拡散はガラス表面付近に限定されて、応力プロファイル中に表面ピークが形成される。しかし、Naプロファイルは、非常に深くガラスの中央まで浸透している。内部拡散したNaの2つのプロファイルが中央で合流した結果として、中央のNa濃度が実質的な方法で増加し始めると、Naプロファイルの形状は、冪乗則で適度に近似できるようになり、この条件に適合する前の形状と実質的に異なる。さらに圧縮深さが安定となり、さらなる拡散時間とともに変化は非常に小さくなる。
【0290】
図24では、本来NaおよびLiのみを含有するガラス中において、51重量%K/49重量%Naの処方を380℃で3.75時間わたって用いるイオン交換拡散後(実施例6A)が示されている。カリウムは、表面付近の領域でのみ拡散して、応力プロファイル中に表面ピーク(スパイク)を形成していることを確認できる。しかし、NaおよびLiは、ガラスの中心まで比較的深く交換し、厚さ全体にわたって実質的に湾曲した応力プロファイルが得られる。本発明者らは、所望の曲率のプロファイルを得ることができ、冪乗則モデルを用いて定量できるイオン交換のレジームを得た。
【0291】
図25は、円錐角で76.5度の角度において半径30マイクロメートルを有するダイヤモンドチップを用いた、図の上から下まで0ニュートンから4ニュートンまで直線的に増加する増加モードでの6A~6Dの増加引っ掻き試験の一例を示す。
【0292】
以下の表10は、図25で例示されるような増加引っ掻き試験を光学顕微鏡により評価した場合の亀裂を有する引っ掻きのパーセント値を示す。
【0293】
【表10】
【0294】
表11~18は、顕微鏡評価によるいくつかの試験における引っ掻きの重大性の等級付けを示す。
【0295】
【表11】
【0296】
【表12】
【0297】
【表13】
【0298】
【表14】
【0299】
【表15】
【0300】
【表16】
【0301】
【表17】
【0302】
【表18】
【0303】
異なる応力プロファイルは、特定の条件下での異なるレベルの引っ掻き感受性を示す。図25には、半径30マイクロメートルおよび76.5度の支持円錐角度を有するダイヤモンドチップを用いた増加引っ掻き試験の一例が示されている。加えた引っ掻き力は、0ニュートン~4ニュートンの範囲にわたって直線的に増加させた。ここで、表9の実施例6Aの方法と比較すると、スパイクCSを増加させるために修正した実施例6B~6Dの方法は、より狭くおよびより目に見えにくい引っ掻き欠陥として確認可能な引っ掻き性能の改善が得られることが分かる。それぞれの方法の場合に示される画像は、その方法で行った5回の過酷な試験のものである。引っ掻き性能の観察により、引っ掻きの過程で生じた幅により重大性の等級を付ける場合、ある潜在的な傾向が明らかとなった。さらに、亀裂を示す引っ掻きのパーセント値は、表11~18に示されるように、ある差を示した。ニー応力は、修正した方法において表面CSとともに変化することに留意されたい。何らかの特定の理論に束縛されることを望むものではないが、この実施例の引っ掻き試験では、表面における応力、ニーの位置、およびニーにおける応力、ならびに場合によりさらにはプロファイルの指数の組合せが、ある種の引っ掻き事象、および引っ掻きの可視性においてある役割を果たし得ることが示された。図23に示されるプロファイルに対して種々の引っ掻き試験を行い、より高いCSが得られるように修正した実施例6B~Dは、実施例6Aと比較した場合、引っ掻きに対して平均でより良好な性能を示した。
【0304】
図26は、実施例6A~Dにおいて種々の条件からの30グリット研磨紙における試料の落下性能を示し、57.5モル%のSiO2、16.5モル%のAl2O3、16.5モル%のNa2O、2.8モル%のMgO、6.5モル%のP2O5、および0.05モル%のSnO2の公称値を有する基準ガラスと比較した。実施例6A~Dは、類似の性能を有し、基準ガラスと比較すると落下性能の改善を示すことが分かる。いくつかの実施形態では、望ましい応力プロファイルは、粗面上への面の落下後の破壊に対する抵抗性である。図26には、本発明のガラスにおいて種々の条件から30グリッド研磨上への試料の制御された落下試験が示されており、最近市場に出されている製品上のカバーガラス中でこの試験の場合に最も破壊抵抗性であるプロファイルを有する基準ガラスと比較している。>130μmの大きい圧縮深さDOCを有する試験された全てのプロファイルは、この試験で類似の性能を有し、基準ガラスと比較すると落下性能の実質的な改善を示すことが分かる。このことから、本発明者らは、スパイクおよび大きいDOCを有するこれらの非線形拡散湾曲プロファイルにより、落下性能の顕著な改善、およびいくつかの場合に改善された引っ掻き抵抗を得ることができると考えている。
【0305】
実施例7
実施例7A、および比較例7B~7Dは、本開示の1つ以上の実施形態による、0.8mmの厚さを有し、64モル%のSiO、15モル%のAl、2.4モル%のB、9.2モル%のNaO、5.9モル%のLiO、1.2モル%のZnO、2.5モル%のP2O5、0.05モル%のSnOの公称組成を有し、NaNOおよびKNO3の3つの異なる混合物を使用するガラス基材を含んだ。実施例7A~7Dのガラス基材は、表19に示される条件を含む溶融塩浴中でイオン交換され、結果として得られた性質もその表に列挙している。
【0306】
【表19】
【0307】
図36は、比較例7B~Dに対応し、RNF(屈折近接場スキャン)によって測定された3つの応力プロファイル、すなわち曲線2801、2802、および2803を示す。RNFの制限された分解能のため、スパイクの表面CSは十分に示されていない(スパイクは、RNFプロファイル中で丸められ、実際のCSよりも小さい最大応力を有する)。塩混合物は、70、40、および28重量%のNaNOを有し、質量の残りはKNOであり、塩の汚染をなくす効果のため、最大0.5重量%のケイ酸を有する。これは、それぞれ2.78、0.79、および0.46の塩中のNa:Kモル比に対応する。3つ全てのプロファイルは、390Cにおける約3.5時間のイオン交換(曲線2802)、または380Cにおける約4時間(曲線2801および2803)によって得られる安定なDOC、および高CTのレジームが得られるイオン交換条件を用いて得られた。図から分かるように、Na:Kモル比が減少すると、スパイクの表面CSが実質的に増加するが、これはスパイクの底部における応力CSの大幅な減少を犠牲にして実現され、したがってスパイクを超える圧縮応力領域(スパイクの底部からDOCまでの圧縮応力の深さでの積分)が大幅に減少する。図36の第1のSIOXプロファイル(70%NaNO、曲線2801)と同様の応力プロファルを有するカバーガラスを有する電話は、粗い面上に落下させた場合の深い損傷導入による破壊に対して良好な抵抗性を有するが、比較的低い表面CSのために端部周辺または裏側上の浅い傷の過大応力により破壊する傾向を有し得る(例えば、その端部状に落下した場合またはとがっていない物体に衝突した場合)。第3の応力プロファイル(28%NaNO3、曲線2803)を有する応力プロファイルを有するカバーガラスを有する電話は、浅い傷の顕著な過大応力による破壊に対して良好な抵抗性を有するが、激しい接触からの深い損傷導入による破壊に対する抵抗性がより低い。中間のプロファイル(40重量%NaNO3、曲線2802)は、2つの主要な破壊方式間の妥協点を示す。しかし、第3のプロファイル(28%NaNO3、曲線2803)よりも高いCSを有するスパイクを有し、同時に全圧縮区域にわたって同様の圧縮積分を有する(例えば、曲線2801、70%NaNO3の第1のプロファイルと類似)と有益となる。深さ>0.3DOCにおける圧縮応力を増加させ、DOCをさらに増加させることがさらに有益となる。本明細書に開示されるいくつかの実施形態により得られる曲線2804によってこれらの目的が達成される。
【0308】
図36は、64モル%のSiO、15モル%のAl、2.4モル%のB、9.2モル%のNaO、5.9モル%のLiO、1.2モル%のZnO、2.5モル%のP2O5、0.05モル%のSnOの公称組成を有する厚さ0.8mmの同じCorning Incorporatedのガラス場合の、本発明のいくつかの実施形態によるDIOX応力プロファイルの曲線2804(実施例7A)を3つのSIOXプロファイル(比較例7B~7Dの曲線2801~2803)とともに示す。DIOXプロファイルは、70重量%のNaNOおよび30重量%のKNO(Na:Kの比は2.78である)を有する塩中において380Cで4時間のイオン交換の第1のステップと、7重量%のNaNOおよび93重量%のKNO(Na:Kの比は約0.09である)を有する塩中において380Cで40分間のイオン交換の第2のステップとによって得た。理解されるように、第2の浴中のNa:Kの比は、第1の浴中の比の約1/31であり、第2の浴の有効イオン交換時間は、第1のステップイオン交換時間の約1/6である。第1のステップでは、Kの濃縮により、約400MPaの表面CSおよび約9.4μmのDOLspを有する表面スパイクが形成された。第2のステップにより、スパイクのCSが約800MPaまで増加し、約8.7μmの有効DOLspも得られた。この特定の実施例におけるDOLspの見掛けの減少は、ステップ1後のほぼ線形の形状から、ステップ2後の正の曲率を有する幾分湾曲した形状へのスパイクの経常の変化によって生じるアーティファクトであることに留意されたい。両方の場合のDOLspは、線形スパイクを仮定して計算されるため、DOLspは、ステップ2後に幾分小さくなるように見える。これは、主として、ステップ2中に生じるスパイクの高圧縮部分がステップ1後のスパイクの元の深さよりも幾分浅くなることを意味する。別の実施例、特に第2のステップの有効拡散時間が第1のステップのわずかに1/3~1/5の短さである場合、およびステップ1からステップ2へのCSの変化があまり顕著でない場合のより薄いガラス(例えば、0.5mm)では、ステップ2後の有効DOLspは、第1のステップのDOLspと類似しており、多くの場合にそれよりも幾分大きい。
【0309】
実施例7Aにより試料を作製し、前述のようにヌープ引っ掻き閾値(KST)を測定した。KSTは、10を超えかつ16未満であった。
【0310】
さらに、4.2グラムの重量および10mmの直径を有するステンレス鋼球および30グリットの非積層研磨紙を使用して、試料に対するIBoS試験を行った。IBoS試験の結果を図37に示す。特に、残存した平均落下高さは76cmであった。60パーセント(5つのうちの3つ)の試料は、80cmを超える落下高さで残存した。特に、強化ガラス物品は、10mmの直径を有する4.2gのステンレス鋼球を約80cmの高さから、研磨紙とガラス表面との間に100μmの空隙が存在するようにガラス表面上に配置した30グリット研磨紙上に使用するIBoS試験を行った場合に少なくとも60%の残存率を有し、ここで、残存率は、少なくとも5つの試料の試験に基づくものであった。
【0311】
次に、図29~35に示されるような装置を用いて、すなわち試料の両方の主面上およびその端部上で衝撃閾値試験を行った。結果を面衝突について図38に、および端部衝突について図39に示す。
【0312】
特に面衝突試験の場合、180グリット研磨紙を使用し、ブルノーズ仕上げされた端部を有する110mm×56mm×0.8mmの基材を、図34による0.4mの曲げ半径の状態にした。図38から分かるように、実施例7による試料は、200Nを超える、例えば250N以上、300N以上、350N以上、400N以上、450N以上、500N以上、550N以上、600N以上、650N以上、700N以上、750N以上、800N以上、およびさらには850N以上の衝撃力に対して残存することができた。実際、実施例7Aの試料は、851Nの最高衝撃荷重に到達し、破壊されなかった。
【0313】
実施例7Aの試料の結果は、図38に「比較」と示される、必ずしも比較例7B~Dではない別のガラスと比較される。特に比較用試料の組は、同一の組成(公称組成は、約65モル%のSiO、約8モル%のAl、約12モル%のNaO、約4モル%のKO、約0.3モル%のCaO、約10モル%のMgO、および約0.5モル%のZrOである)および厚さ(0.8mm)の市販のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス(Dragontrail(登録商標)ガラス、Asahi Glass Companyによって製造)からなる。比較用試料の組のガラスは、24μmの層の圧縮深さDOLおよび804MPaの表面圧縮応力CSを有するようにイオン交換した。対照的に、比較用の組の試料は、わずか約152Nの平均衝撃力に到達し、10のうちのわずか3つ(または30%)の試料が200Nを超える衝撃力で残存した。したがって、本開示による、特に実施例7による強化ガラスは、落下の可能性があるモバイルデバイスへの使用に適している。
【0314】
次に、ガラス端部が激しい接触により衝突する場合の残存を評価するために、図35の構成で実施例7Aによる試料の試験を行った。結果を図39に示す。実施例7Aのガラスに示される矢印は、ガラスの破壊の開始が確認された衝撃力(N)または衝撃エネルギー(J)を強調しており、このようなより大きい値によって改善された性能が得られる。実施例7Aの試料の場合、試験した全ての試料が1.28Jの条件で残存したが、次に1.58Jにおいて全て破壊された。このプロットを作成するために使用した全ての試料は、イオン交換が行われ、中央で約0.8mmの厚さおよび端部で約0.3mmを有する2.5D形状を有した。したがって、いくつかの実施形態によると、実施例7Aにより作製したガラス系物品は、400N以上(例えば、450N)の端部衝撃力または1.28J以上の衝撃エネルギーで残存し得る。
【0315】
本開示の意図または範囲から逸脱することなく種々の修正形態および変形形態がなされ得ることは当業者に明らかであろう。
【0316】
例えば、本明細書に開示されるガラス系物品は、ディスプレイを有する物品(すなわちディスプレイ物品)(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステム、着用可能な装置(例えば、時計)などを含む消費者用エレクトロニクス)、建築物品、輸送物品(例えば、自動車、列車、航空機、航洋船など)、電化製品、またはある程度の透明性、引っ掻き抵抗、耐摩耗性もしくはそれらの組合せが有益となるあらゆる物品などの別の物品中に組み込むことができる。本明細書に開示されるガラス系物品のいずれかが組み込まれる代表的な物品を図40Aおよび40Bに示す。特に、図40Aおよび40Bは、前面4104、裏面4106、および側面4108を有するハウジング4102と、ハウジング内に少なくとも部分的または完全に存在し、少なくともコントローラ、メモリ、およびハウジングの前面またはその付近にディスプレイ4110を含む電気部品(図示せず)と、ディスプレイを覆うようにハウジングの前面またはその上のカバー基材4112とを含む消費者用電子デバイス4100を示す。いくつかの実施形態では、カバー基材4112は、本明細書に開示されるいずれかのガラス系物品を含むことができる。いくつかの実施形態では、ハウジングの一部またはカバーガラスの少なくとも1つは、本明細書に開示されるガラス系物品を含む。
【0317】
さらに、例えば、種々の特徴は、以下の代表的な実施形態により組み合わせることができる。
【0318】
実施形態1。第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面であって、0.1mm~2mmの範囲内の厚さ(t)を画定する第1の表面および第2の表面と、
厚さ(t)に沿って延在する応力プロファイルと
を含むガラス系物品であって、
約0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、
約0.035・t~0.965・t未満の第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-15MPa/マイクロメートル~約15MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、
応力プロファイルは、約200MPa~約1100MPaの表面CSを含み、
応力プロファイルは、約0.1・t~0.25・tの範囲のDOCを含む、ガラス系物品。
【0319】
実施形態2。第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-2MPa/マイクロメートル~約2MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態1のガラス系物品。
【0320】
実施形態3。第2の厚さ範囲は、0.025・tから0.035・tまでかつ0.965・tから0.975・tまで拡大され、および第2の厚さ範囲の拡大における応力プロファイルの全ての点は、約-15MPa/マイクロメートル~約15MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態1のガラス系物品。
【0321】
実施形態4。第2の厚さ範囲内の応力プロファイルの全ての点は、約-2MPa/マイクロメートル~約2MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態3のガラス系物品。
【0322】
実施形態5。第2の厚さ範囲は、0.02・tから0.025・tまでかつ0.975・tから0.98・tまでさらに拡大され、および第2の厚さ範囲のさらなる拡大における応力プロファイルの全ての点は、約-15MPa/マイクロメートル~約15MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態1または実施形態3のガラス系物品。
【0323】
実施形態6。第2の厚さ範囲のさらなる拡大における応力プロファイルの全ての点は、約-2MPa/マイクロメートル~約2MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態5のガラス系物品。
【0324】
実施形態7。第2の厚さ範囲内の応力プロファイルは、冪指数を有する冪乗則プロファイルを形成し、冪指数は、約1.2~3.2である、実施形態1~6のいずれか1つのガラス系物品。
【0325】
実施形態8。冪指数は、約1.3~2.8である、実施形態7のガラス系物品。
【0326】
実施形態9。表面CSは、約300、350、400、450、500、550、600、610、620MPa~約650、700、750、800、850、900、950、1000または1100MPaである、実施形態1~8のいずれか1つのガラス系物品。
【0327】
実施形態10。第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-170MPa/マイクロメートル~約-30MPa/マイクロメートルまたは約30MPa/マイクロメートル~約170MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態1~9のいずれか1つのガラス系物品。
【0328】
実施形態11。第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-140MPa/マイクロメートル~約-35MPa/マイクロメートルまたは約35MPa/マイクロメートル~約140MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態10のガラス系物品。
【0329】
実施形態12。第1の厚さ範囲は、約0.02・tから最大0.025・tまでかつ0.975・t超から0.98・tまで拡大され、および拡大された第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態1のガラス系物品。
【0330】
実施形態13。拡大された第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-170MPa/マイクロメートル~約-30MPa/マイクロメートルまたは約30MPa/マイクロメートル~約170MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態12のガラス系物品。
【0331】
実施形態14。拡大された第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-140MPa/マイクロメートル~約-35MPa/マイクロメートルまたは約35MPa/マイクロメートル~約140MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態13のガラス系物品。
【0332】
実施形態15。第1の厚さ範囲は、約0.025・tから最大0.035・tまでかつ0.965・t超から最大約0.975・tまでさらに拡大され、および第1の厚さ範囲のさらなる拡大における応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態1または実施形態12~14のガラス系物品。
【0333】
実施形態16。第1の厚さ範囲のさらなる拡大における応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-170MPa/マイクロメートル~約-30MPa/マイクロメートルまたは約30MPa/マイクロメートル~約170MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態15のガラス系物品。
【0334】
実施形態17。第1の厚さ範囲のさらなる拡大における応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-140MPa/マイクロメートル~約-35MPa/マイクロメートルまたは約35MPa/マイクロメートル~約140MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含む、実施形態16のガラス系物品。
【0335】
実施形態18。第1の厚さ範囲は、カリウム含有塩中のイオン交換によって得られる、実施形態1~17のいずれか1つのガラス系物品。
【0336】
実施形態19。第2の厚さ範囲は、Na含有塩中のイオン交換によって得られる、実施形態1~18のいずれか1つのガラス系物品。
【0337】
実施形態20。応力プロファイルは、1つのイオン交換ステップを用いて得られる、実施形態1~19のいずれか1つのガラス系物品。
【0338】
実施形態21。応力プロファイルは、2つ以上のイオン交換ステップを用いて得られる、実施形態1~19のいずれか1つのガラス系物品。
【0339】
実施形態22。表面CSは、約690MPa~950MPaである、実施形態1~21のいずれか1つのガラス系物品。
【0340】
実施形態23。約0.5モル%~約10モル%のP2O5を含む組成を含む、実施形態1~22のいずれか1つのガラス系物品。
【0341】
実施形態24。約2~約20モル%のLi2Oを含む中心面と、
厚さ(t)に沿って延在する応力プロファイルと
を含むガラス系物品であって、
約0・t~最大0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの少なくとも1つの点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、
応力プロファイルは、約200MPa~約1100MPaの表面CSを含み、
応力プロファイルは、約0.05・t~0.25・tの範囲のDOCを含む、ガラス系物品。
【0342】
実施形態25。第1の厚さ範囲は、カリウム含有塩中のイオン交換によって得られる、実施形態24のガラス系物品。
【0343】
実施形態26。第2の厚さ範囲は、Na含有塩またはK含有塩中のイオン交換によって得られる、実施形態24のガラス系物品。
【0344】
実施形態27。応力プロファイルは、1つのイオン交換ステップを用いて得られる、実施形態24~26のいずれか1つのガラス系物品。
【0345】
実施形態28。応力プロファイルは、2つ以上のイオン交換ステップを用いて得られる、実施形態24~26の1つのガラス系物品。
【0346】
実施形態29。表面CSは、約690MPa~950MPaの範囲である、実施形態24~28の1つのガラス系物品。
【0347】
実施形態30。第2の厚さ範囲内の応力プロファイルは、冪指数を有する冪乗則プロファイルを形成し、冪指数は、約1.2~3.4である、実施形態24~29の1つのガラス系物品。
【0348】
実施形態31。冪指数は、約1.3~2.8である、実施形態30のガラス系物品。
【0349】
実施形態32。約0.5モル%~約10モル%のP2O5を含む組成を含む、実施形態24~31の1つのガラス系物品。
【0350】
実施形態33。中心面は、約0.5モル%~約20モル%のNa2Oを含む組成をさらに含む、実施形態24~32の1つのガラス系物品。
【0351】
実施形態34。中心面は、約2モル%~約10モル%のLi2Oを含む組成をさらに含む、実施形態24~33の1つのガラス系物品。
【0352】
実施形態35。ガラス物品の中心面内のNa2Oの濃度は、約5モル%~約16モル%である、実施形態33または実施形態34のガラス系物品。
【0353】
実施形態36。ガラス物品の中心面内のNa2Oの濃度は、約10モル%~15モル%である、実施形態33または実施形態34のガラス系物品。
【0354】
実施形態37。ガラス物品の中心面内のLi2Oの濃度は、約3モル%~10モル%である、実施形態36のガラス系物品。
【0355】
実施形態38。0・t~最大0.3・tの厚さにわたり、応力プロファイルは、最小の傾きを含む接線および最大の傾きを含む接線をさらに含み、最大の傾きと最小の傾きとの間の差は、3.5MPa/マイクロメートル以下である、実施形態24~37のいずれか1つのガラス系物品。
【0356】
実施形態39。約0・t~約0.3・tおよび0.7・t超の厚さ間の応力プロファイルの全ての点は、約-0.1MPa/マイクロメートル未満であるかまたは約0.1MPa/マイクロメートルを超える接線を含む、実施形態24~38のいずれか1つのガラス系物品。
【0357】
実施形態40。第1の厚さ範囲にわたって延在するカリウムDOLをさらに含む、実施形態24~39のいずれか1つのガラス系物品。
【0358】
実施形態41。第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面であって、0.1mm~2mmの範囲内の厚さ(t)を画定する第1の表面および第2の表面をさらに含む、実施形態24~40のいずれか1つのガラス系物品。
【0359】
実施形態42。0・t~最大0.3・tの厚さにわたり、応力プロファイルは、最小の傾きを含む接線および最大の傾きを含む接線をさらに含み、最大の傾きと最小の傾きとの間の差は、3.5MPa/マイクロメートル以下である、実施形態1~23のいずれか1つのガラス系物品。
【0360】
実施形態43。約0・t~約0.3・tおよび0.7・t超の厚さ間の応力プロファイルの全ての点は、約-0.1MPa/マイクロメートル未満であるかまたは約0.1MPa/マイクロメートルを超える接線を含む、実施形態1~23、または42のいずれか1つのガラス系物品。
【0361】
実施形態44。第1の厚さ範囲にわたって延在するカリウムDOLをさらに含む、実施形態1~23、または42~43のいずれか1つのガラス系物品。
【0362】
実施形態45。第1の表面から、第1の表面と第2の表面との間の点における値まで減少し、かつその値から第2の表面まで増加する金属酸化物の濃度をさらに含む、実施形態1~23または41~44のいずれか1つのガラス系物品。
【0363】
実施形態46。第1の主面と、第2の主面と、第1および第2の主面間に垂直に延在する平均厚さtと、第1および第2の主面間に延在する端部とを含むガラス系基材を化学強化する方法であって、
ガラス系基材を、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンの混合物を含む第1の浴中に第1の時間にわたって保持することにより、第1のIOXステップを行うステップと、
第1のIOXステップ後、ガラス系基材を、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンの混合物を含む第2の浴中に第2の時間にわたって保持することにより、第2のIOXステップを行って、ガラス系基材中に応力プロファイルを形成するステップであって、応力プロファイルは、CS領域およびCT領域を有する、ステップと
を含み、
第2の浴は、第1の浴のNa:Kモル比の1/3~1/10であるNa:Kのモルを有する、方法。
【0364】
実施形態47。イオン交換の両方のステップは、Na含有塩およびK含有塩の両方を含む浴中で完了され、第1の浴中のKイオンに対するNaイオンの比は、(i)第2の浴中のKイオンに対するNaイオンの比の2.5倍以上、(ii)3倍以上、(iii)5倍以上、または(iv)8倍以上の1つであり、かつ(i)800倍以下、(ii)600倍以下、(iii)500倍以下、および(iv)400倍以下の1つである、実施形態46の方法。
【0365】
実施形態48。第2の浴は、(i)0.03以上、(ii)0.04以上、(iii)0.047以上、(iv)0.06以上、および(v)0.07以上の1つであり、かつ(i)0.4以下、(ii)0.35以下、(ii)0.30以下、(iii)0.21以下、(iv)0.16以下、または(v)0.13以下の1つである、Kに対するNaのモル比を有する、実施形態46~47のいずれか1つの方法。
【0366】
実施形態49。第2のIOXステップの有効拡散時間は、(i)第1のステップの1/20~1/2、(ii)第1のステップの1/20~1/3、および(iii)第1のステップの1/20~1/4の1つである、実施形態46~48のいずれか1つの方法。
【0367】
実施形態50。第2のIOXステップ後のガラス系物品の表面CSは、(i)600MPa以上、(ii)650MPa以上、(iii)700MPa以上、(iv)750MPa以上、(v)800MPa以上、(vi)850MPa以上の1つである、実施形態46~49のいずれか1つの方法。
【0368】
実施形態51。DOLspは、(i)厚さが1~1.3mmである場合に厚さの0.5~1.5%であり、(ii)厚さが0.8~1mmである場合に厚さの0.6~2%の範囲内であり、(iii)厚さが0.65~0.8mmである場合に厚さの0.7~2.5%の範囲内であり、(iv)厚さが0.5~0.65mmである場合に厚さの0.9~3%の範囲内であり、および(v)厚さが0.3~0.5mmである場合に1~3%の範囲内である、実施形態46~50のいずれか1つの方法。
【0369】
実施形態52。DOCは、(i)0.1t以上、(ii)0.15t以上、(iii)0.2t以上の1つである、実施形態46~51のいずれか1つの方法。
【0370】
実施形態53。CT領域内の応力プロファイルは、冪指数を有する冪乗則プロファイルを含み、冪指数は、(i)1~3.4、(ii)1.2~3.0、および(iii)1.7~2.6の1つである、実施形態46~52のいずれか1つの方法。
【0371】
実施形態54。強化ガラス系基材のヌープ引っ掻き閾値は、10Nを超える、実施形態46~53のいずれか1つの方法。
【0372】
実施形態55。強化ガラス系基材のヌープ引っ掻き閾値は、16N未満である、実施形態54の方法。
【0373】
実施形態56。10mmの直径を有する4.2gのステンレス鋼球を約80cmの高さから、研磨紙とガラス表面との間に100μmの空隙が存在するようにガラス表面上に配置した30グリット研磨紙上に使用する反転球落下試験を行った場合、強化ガラス系基材は、少なくとも60%の残存率を有し、残存率は、少なくとも5つの試料の試験に基づく、実施形態46~55のいずれか1つの方法。
【0374】
実施形態57。強化ガラス系基材は、180グリット研磨材を用いた表面衝突閾値試験に準拠して(i)200N以上、(ii)250N以上、(iii)300N以上、(iv)350N以上、(v)400N以上、(vi)450N以上、(vii)500N以上、(viii)550N以上、(ix)600N以上、(x)650N以上、(xi)700N以上、(xii)750N以上、(xiii)800N以上、(xiv)850N以上の1つの力で第1および第2の主面の一方に衝突された場合、(i)60%以上、(ii)70%以上、(iii)80%以上、(iv)90%以上、(v)100%以下の1つの残存率を有する、実施形態46~56のいずれか1つの方法。
【0375】
実施形態58。強化ガラス系基材は、180グリット研磨材を用いた表面衝突閾値試験に準拠して900N以下の力で第1および第2の主面の一方に衝突された場合、100%以下の残存率を有する、実施形態57の方法。
【0376】
実施形態59。強化ガラス系基材は、(i)300Nを超える、(ii)400N以上、(iii)450N以上の端部衝撃または(i)0.68Jを超える、(ii)0.97J以上、(iii)1.28J以上の端部衝撃で残存し得る、実施形態46~56のいずれか1つの方法。
【0377】
実施形態60。強化ガラス系基材は、500N未満の端部衝撃または1.58J未満の端部衝撃で残存し得る、実施形態59の方法。
【0378】
実施形態61。強化ガラス系基材のヌープ引っ掻き閾値は、10Nを超える、実施形態1~45のいずれか1つのガラス系物品。
【0379】
実施形態62。強化ガラス系基材のヌープ引っ掻き閾値は、16N未満である、実施形態61のガラス系物品。
【0380】
実施形態63。10mmの直径を有する4.2gのステンレス鋼球を約80cmの高さから、研磨紙とガラス表面との間に100μmの空隙が存在するようにガラス表面上に配置した30グリット研磨紙上に使用する反転球落下試験を行った場合、強化ガラス系基材は、少なくとも60%の残存率を有し、残存率は、少なくとも5つの試料の試験に基づく、実施形態1~45のいずれか1つのガラス系物品。
【0381】
実施形態64。強化ガラス系基材は、180グリット研磨材を用いた表面衝突閾値試験に準拠して(i)200N以上、(ii)250N以上、(iii)300N以上、(iv)350N以上、(v)400N以上、(vi)450N以上、(vii)500N以上、(viii)550N以上、(ix)600N以上、(x)650N以上、(xi)700N以上、(xii)750N以上、(xiii)800N以上、(xiv)850N以上の1つの力で第1および第2の主面の一方に衝突された場合、(i)60%以上、(ii)70%以上、(iii)80%以上、(iv)90%以上、(v)100%以下の1つの残存率を有する、実施形態1~45のいずれか1つのガラス系物品。
【0382】
実施形態65。強化ガラス系基材は、180グリット研磨材を用いた表面衝突閾値試験に準拠して900N以下の力で第1および第2の主面の一方に衝突された場合、100%以下の残存率を有する、実施形態64のガラス系物品。
【0383】
実施形態66。強化ガラス系基材は、(i)300Nを超える、(ii)400N以上、(iii)450N以上の端部衝撃または(i)0.68Jを超える、(ii)0.97J以上、(iii)1.28J以上の端部衝撃で残存し得る、実施形態1~45のいずれか1つのガラス系物品。
【0384】
実施形態67。強化ガラス系基材は、500N未満の端部衝撃または1.58J未満の端部衝撃で残存し得る、実施形態66のガラス系物品。
【0385】
実施形態68。消費者用電子製品であって、
前面、背面、および側面を有するハウジングと、
ハウジング内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくともコントローラ、メモリおよびディスプレイを含み、ディスプレイは、ハウジングの前面またはその付近に設けられる、電気部品と、
ディスプレイの上に配置されるカバー基材と
を含み、
ハウジングの一部またはカバー基材の少なくとも1つは、実施形態1~45または61~67のいずれか1つのガラス系物品を含む、消費者用電子製品。
実施形態69
第1の主面と、第2の主面と、前記第1および第2の主面間に垂直に延在する平均厚さtと、前記第1および第2の主面間に延在する端部とを含むガラス系基材を化学強化する方法において、
前記ガラス系基材を、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンの混合物を含む第1の浴中に第1の時間にわたって保持することにより、第1のIOXステップを行うステップを含み、
第1のIOXステップ後、ガラス系基材を、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンの混合物を含む第2の浴中に第2の時間にわたって保持することにより、第2のIOXステップを行って、ガラス系基材中に応力プロファイルを形成するステップであって、前記応力プロファイルは圧縮応力CT領域と中央張力CS領域を有し、厚さ(t)の関数である数式による前記厚さ(t)に沿って延在する応力プロファイルを含み、
約0・t~0.020・tおよび0.98・t超の第1の厚さ範囲内の応力プロファイルの数式の少なくとも1つの点は、約-200MPa/マイクロメートル~約-25MPa/マイクロメートルまたは約25MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、
約0.035・t~約0.965・t以下の第2の厚さ範囲内の前記応力プロファイルの数式の全ての点は、約-15MPa/マイクロメートル~約15MPa/マイクロメートルの傾きを有する接線を含み、
前記第2の厚さ範囲内の前記応力プロファイルの数式は、冪指数を有する冪乗則プロファイルを形成し、前記冪指数は、約1.2~約3.4であり、
約200MPa~約1100MPaの最大表面圧縮応力CSを含み、
前記応力プロファイルは、約0.05・t~0.25・tの範囲の圧縮深さDOCを含み、
前記第2の浴は、前記第1の浴のNa:Kモル比の1/3~1/10であるNa:Kのモル比を有することを特徴とする方法。
実施形態70
前記第2のIOXステップ後の前記ガラス系物品の前記最大表面圧縮応力CSは600MPa以上、前記圧縮深さDOCは0.14・t以上、さらに最大中央張力CTは80MPa以下である、実施形態69に記載の方法。
実施形態71
イオン交換の両方のステップは、Na含有塩およびK含有塩の両方を含む浴中で完了され、前記第1の浴中のKイオンに対するNaイオンの比は、前記第2の浴中のKイオンに対するNaイオンの比の3倍~8倍以上である、実施形態70に記載の方法。
実施形態72
前記第2の浴は、Kに対するNaのモル比が0.03~0.4を有する、実施形態70に記載の方法。
実施形態73
前記第2のIOXステップの有効拡散時間は、前記第1のステップの1/20~1/2である、実施形態70に記載の方法。
実施形態74
層深さDOLspは、(i)厚さが1~1.3mmである場合に厚さの0.5~1.5%であり、(ii)厚さが0.8~1mmである場合に厚さの0.6~2%の範囲内であり、(iii)厚さが0.65~0.8mmである場合に厚さの0.7~2.5%の範囲内であり、(iv)厚さが0.5~0.65mmである場合に厚さの0.9~3%の範囲内であり、および(v)厚さが0.3~0.5mmである場合に1~3%の範囲内である、実施形態70に記載の方法。
実施形態75
前記中央張力CT領域内の前記数式は、前記冪指数を有する冪乗則プロファイルを含み、前記冪指数は1~3.4である、実施形態70に記載の方法。
実施形態76
(i)強化ガラス系基材のヌープ引っ掻き側方亀裂閾値は、10Nを超え、かつ16N未満であること;
(ii)前記強化ガラス系基材は、180グリット研磨材を用いる表面衝突閾値試験に準拠して400N以上の力で前記第1および第2の主面の一方に衝突された場合、40%~100%の残存率を有すること;および
(iii)前記強化ガラス系基材は、30グリット研磨材を用いる端部衝突閾値試験に準拠して300N超~500N未満の端部衝撃または0.68J超~1.58J未満の端部衝撃で残存し得ること:
の少なくとも1つを特徴とする、実施形態70に記載の方法。
実施形態77
前記厚さ(t)は1mm以下である、実施形態70に記載の方法。
図1
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