(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164821
(43)【公開日】2023-11-14
(54)【発明の名称】継手及び部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20231107BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20231107BHJP
E04B 1/61 20060101ALI20231107BHJP
F16B 21/04 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D21/00 B
E04B1/61 502D
F16B21/04 H
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131618
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2019165150の分割
【原出願日】2019-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2018236610
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019072756
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
(57)【要約】
【課題】簡易な構造によって、取付対象部材同士を接合させるときの相対的な位置決めを含めた作業性を向上させる手段を提供する。
【解決手段】対向する一対の取付対象部材にそれぞれ設けられる一対の被嵌入部と、上記被嵌入部に嵌入し得る一対の係合部及び該一対の係合部間を繋ぐ架橋部を設ける連結部材と、を有する継手であって、前記被嵌入部の開口縁部は、蓋部材を設置可能な設置部を有し、上記蓋部材は、上記設置部に設置されることで、前記被嵌入部の開口を閉塞する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の取付対象部材にそれぞれ設けられる一対の被嵌入部と、
上記被嵌入部に嵌入し得る一対の係合部及び該一対の係合部間を繋ぐ架橋部を設ける連結部材と、を有する継手であって、
前記被嵌入部の開口縁部は、蓋部材を設置可能な設置部を有し、
上記蓋部材は、上記設置部に設置されることで、前記被嵌入部の開口を閉塞することを特徴とする継手。
【請求項2】
前記蓋部材は、前記設置部に設置されることで、一端部が、前記被嵌入部に嵌入している前記係合部に対して当接乃至押圧することを特徴とする請求項1記載の継手。
【請求項3】
前記蓋設置部は、前記内周面よりも広く開口し、雌ねじ面を形成した雌ねじ領域を有し、
前記蓋部材は、表面に上記雌ねじ領域の雌ねじ面に螺合する雄ねじ面を形成した雄ねじ領域を有することを特徴とする請求項1又は2記載の継手。
【請求項4】
前記被嵌入部は、一端側の開口縁から他端側にかけて窄まる内周面を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の継手。
【請求項5】
前記連結部材は、前記架橋部に前記係合部の嵌入方向に沿って挿通する軸部と、該軸部の一端部に配置される当接部とを有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の継手。
【請求項6】
前記係合部と前記被嵌入部とを固定する固定部を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の継手。
【請求項7】
前記固定部は、雄ねじ体であり、
前記係合部は、上記雄ねじ体を挿通させる孔を有し、
前記被嵌入部は、上記雄ねじ体に螺合可能な雌ねじ孔を有することを特徴とする請求項6記載の継手。
【請求項8】
前記軸部は、所定以上のトルク及び/又は軸力の印加時に破断する様に構成されることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の継手。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の継手により、取付対象部材同士を接合することを特徴とする部材の接合方法。
【請求項10】
対向する一対の取付対象部材にそれぞれ設けられる一対の被嵌入部と、上記被嵌入部に嵌入し得る一対の係合部及び該一対の係合部間を繋ぐ架橋部を設ける連結部材と、を有し、
上記連結部材は、上記係合部の嵌入方向に摺動し得る軸部と、軸部に固定可能な当接体とを有し、
上記被嵌入部間に上記連結部材を配設する際、各上記被嵌入部に各上記係合部を嵌入し、上記軸部が上記架橋部に対し摺動することで上記当接体が上記被嵌入部に当接する箇所まで変位し、上記係合部と上記当接体とで上記被嵌入部を挟んで固定し、
互いに長さの異なる架橋部を有する複数種類の連結部材の内、何れかに組み替え可能な継手を設け、
上記複数種類の連結部材の内、仮組み用の連結部材を取り付けた後、当該仮組み用の連結部材を外して本組用の連結部材を取り付けることを特徴とする部材の接合方法。
【請求項11】
前記仮組み用の連結部材は、短尺の架橋部を有し、
前記本組み用の連結部材は、長尺の架橋部を有することを特徴とする請求項10記載の部材の接合方法。
【請求項12】
前記仮組み用の連結部材は、長尺の架橋部を有し、
前記本組み用の連結部材は、短尺の架橋部を有することを特徴とする請求項10記載の部材の接合方法。
【請求項13】
前記仮組み用の連結部材を取り付けた前記継手によって前記取付対象部材同士を連結している状態で硬化性流動体を前記取付対象部材間に配し、
上記硬化性流動体が一定以上の硬度のとき、前記継手における前記仮組み用の連結部材を前記本組み用の連結部材に組み替えることを特徴とする請求項11又は12に記載の部材の接合方法。
【請求項14】
前記取付対象部材を複数の前記継手によって連結し、
複数の前記継手の内、前記仮組み用の連結部材を取り付けた継手と、前記本組み用の連結部材を取付た継手とを配することで、前記本組み用の連結部材を弾性変形領域で伸ばし、
前記取付対象部材間に硬化性流動体を配し且つ上記硬化性流動体が一定以上の硬度のとき、前記仮組み用の連結部材を前記本組み用の連結部材に組み替え、前記硬化性流動体にプレストレスを加えることを特徴とする請求項11記載の部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部材を接合する継手等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル建物、住宅家屋を含む建築物や橋梁、セグメント、プレキャスト製品等の構造物、家具等において、部材同士を接合することで建築物、構造物、家具等が構成されている。部材同士を接合する方法、例えば橋梁のプレキャスト床版同士の接合方法としては、ループ鉄筋を用いた方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
また、床版同士を接合する面に凸部或いは凹部を設けて一方の床版の凸部を他方の床版の凹部内に配置させ、床版同士を接合する方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
また、他の部材同士を接合する方法として、一対の部材の各々の側面からC型継手金具を突出させて、該C型継手金具の被嵌合凹部内にH型継手金具の嵌合部を配置させる所謂コッター継手(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-303538号公報
【特許文献2】特許第5879452号
【特許文献3】特許第5787965号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された方法は、現地での鉄筋の曲げ加工、ループ鉄筋の輪の中にワイヤーを挿通させた後、コンクリートの打設を行うので、プレキャスト床版の設置工事に長い作業時間を要していた。また鉄筋のループ形状の曲げ内半径がある程度決定されるので、プレキャスト床版の版厚を薄くすることができず、所定の計画高に適用できないことや、プレキャスト床版の重量が増加するために反力や応力が増加し、下部構造等に対して構造的に不利となる等の問題がある。
【0005】
また、特許文献2に記載された方法では、部材同士が充填材を介して付着しているが、床版に橋軸方向の応力を作用させるような鋼棒或いはプレストレスが導入されておらず、温度変化による床版の伸縮の影響で床版間に隙間が生じることや、床版が橋軸直交方向に位置ずれする虞があり、接合した状態を維持できないという問題がある。
【0006】
また、特許文献3に記載された方法では、一対の部材が所定位置に配置されているときに各C型継手金具の被嵌合凹部内にH型継手金具の嵌合部が嵌合可能となり、これによって初めてボルトでC型継手金具とH型継手金具とが固定可能となる。従って、部材同士が所定位置から外れていると、H型継手金具の嵌合部を両C型継手金具の被嵌合凹部内に嵌合させ、ボルトで固定することができないという問題がある。また、特許文献3に記載のコッター継手では、C型継手金具に対するH型継手金具の嵌合操作による部材同士の位置決め動作をさせることが出来ないため、部材同士の接合作業の際には誤差の無い部材同士の位置決め作業を行う必要がある。なお、部材が橋梁に用いるプレキャスト床版等である場合は、複数のチェーンブロックをプレキャスト床版に掛けて橋梁の橋軸に沿った方向、橋軸に直交する方向、高さ方向の位置合わせや、橋面に対する傾斜の修正等の姿勢の調整作業が非常に困難となり作業時間が長くなってしまい、作業性が非常に悪くなるという問題がある。
また、仮にH型継手金具の両嵌合部とC型継手金具とを締結するボルトの締結力を利用して、部材同士の位置決め作業を行った場合、即ち、部材同士の位置が僅かにずれ且つC型継手金具の嵌合凹部にH型継手金具の嵌合部が中途位置まで入った状態で、強引に各ボルトを締付け嵌合部が嵌合凹部内に嵌るようにH型継手金具をボルトの軸力で押し込みながら、C型継手金具と共に部材の位置合わせを行おうとした場合、ボルトを正確に締付けることができないという問題がある。即ち、各ボルトを同時に同程度の速度(又はトルク)で締付けていくことは極めて困難で、実際には片側ずつ徐々に締めている。ところがこの作業は容易ではなく作業者の感覚や技能による影響が非常に大きく、作業者によって固定状態が変わるという問題がある。具体的には、ボルトを片側ずつ締めると、H型継手金具は、締めた側が沈み込み、その反対側が相対的に浮き上がった様になって傾斜することになる。その結果、H型継手金具は、本来のあるべき位置であるべき姿勢で固定すべきところ、異なる位置で傾斜姿勢で固定されることになり得る。これは、締結力に異常を来たす上、疲労強度をも低下させ、目地圧縮力に対しても意図しない不具合をもたらし得ることになり、このことからも察せられる通り、H型継手金具は、常にその水平の姿勢が傾かないように設置されて固定されることが望まれる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、簡易な構造によって、取付対象部材同士を接合させるときの相対的な位置決めを含めた作業性を向上させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の継手は、対向する一対の取付対象部材にそれぞれ設けられる一対の被嵌入部と、上記被嵌入部に嵌入し得る一対の係合部及び該一対の係合部間を繋ぐ架橋部を設ける連結部材と、を有する継手であって、前記被嵌入部の開口縁部は、蓋部材を設置可能な設置部を有し、上記蓋部材は、上記設置部に設置されることで、前記被嵌入部の開口を閉塞することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の継手は、前記蓋部材が、前記設置部に設置されることで、一端部が、前記被嵌入部に嵌入している前記係合部に対して当接乃至押圧することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の継手は、前記蓋設置部が前記内周面よりも広く開口し、雌ねじ面を形成した雌ねじ領域を有し、前記蓋部材は、表面に上記雌ねじ領域の雌ねじ面に螺合する雄ねじ面を形成した雄ねじ領域を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の継手は、前記被嵌入部は、一端側の開口縁から他端側にかけて窄まる内周面を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の継手は、前記連結部材が前記架橋部に前記係合部の嵌入方向に沿って挿通する軸部と、該軸部の一端部に配置される当接部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の継手は、前記係合部と前記被嵌入部とを固定する固定部を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の継手は、前記固定部が雄ねじ体であり、前記係合部は、上記雄ねじ体を挿通させる孔を有し、前記被嵌入部は、上記雄ねじ体に螺合可能な雌ねじ孔を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の継手は、前記軸部が所定以上のトルク及び/又は軸力の印加時に破断する様に構成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の部材の接合方法は、本発明の継手により、取付対象部材同士を接合することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の部材の接合方法は、対向する一対の取付対象部材にそれぞれ設けられる一対の被嵌入部と、上記被嵌入部に嵌入し得る一対の係合部及び該一対の係合部間を繋ぐ架橋部を設ける連結部材と、を有し、上記連結部材は、上記係合部の嵌入方向に摺動し得る軸部と、軸部に固定可能な当接体とを有し、上記被嵌入部間に上記連結部材を配設する際、各上記被嵌入部に各上記係合部を嵌入し、上記軸部が上記架橋部に対し摺動することで上記当接体が上記被嵌入部に当接する箇所まで変位し、上記係合部と上記当接体とで上記被嵌入部を挟んで固定し、互いに長さの異なる架橋部を有する複数種類の連結部材の内、何れかに組み替え可能な継手を設け、上記複数種類の連結部材の内、仮組み用の連結部材を取り付けた後、当該仮組み用の連結部材を外して本組用の連結部材を取り付けることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の部材の接合方法は、前記仮組み用の連結部材が短尺の架橋部を有し、前記本組み用の連結部材が長尺の架橋部を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の部材の接合方法は、前記仮組み用の連結部材が長尺の架橋部を有し、前記本組み用の連結部材が短尺の架橋部を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の部材の接合方法は、前記仮組み用の連結部材を取り付けた前記継手によって前記取付対象部材同士を連結している状態で硬化性流動体を前記取付対象部材間に配し、上記硬化性流動体が一定以上の硬度のとき、前記継手における前記仮組み用の連結部材を前記本組み用の連結部材に組み替えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の部材の接合方法は、前記取付対象部材を複数の前記継手によって連結し、複数の前記継手の内、前記仮組み用の連結部材を取り付けた継手と、前記本組み用の連結部材を取付た継手とを配することで、前記本組み用の連結部材を弾性変形領域で伸ばし、前記取付対象部材間に硬化性流動体を配し且つ上記硬化性流動体が一定以上の硬度のとき、前記仮組み用の連結部材を前記本組み用の連結部材に組み替え、前記硬化性流動体にプレストレスを加えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡易な構造によって、取付対象部材同士を接合させるときの相対的な位置決めを含めた作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第一の実施形態に係る継手を適用したプレキャスト床版を示す平面図である。
【
図2】第一の実施形態に係る継手を適用したプレキャスト床版の断面図である。
【
図3】第一の実施形態に係る継手の受部材を示し、(a)は斜視図、(b)は左側面側から見た断面図、(c)は正面側から見た断面図である。
【
図4】第一の実施形態に係る継手の連結部材を示す斜視図である。
【
図5】受部材同士を連結部材によって連結する手順を示す図である。
【
図6】第一の実施形態に係る継手を適用したプレキャスト床版の位置決め過程を示す図である。
【
図7】プレキャスト床版同士を離間させて行う位置決めを示す図である。
【
図8】プレキャスト床版がY方向にずれている場合の位置決めを示す図である。
【
図9】係合部がY方向の一方の内周面に当接した状態を示す断面図である。
【
図10】軸部と架橋部との間の回転防止機構の例を示す図である。
【
図11】収容部の内周面及び係合部の外周面の他の形状を示す図である。
【
図13】第二の実施形態に係る継手を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【
図14】第二の実施形態に係る継手の受部材を示す斜視図である。
【
図20】継手の仮組み状態と本組み状態とを示す図である。
【
図21】連結部材の組み替えによりプレストレスを付与する手順を示す図である。
【
図23】プレキャスト床版同士の他の配置例を示す平面図である。
【
図25】複数の部分体によって構成した受部材を示す図である。
【
図26】複数の部分体によって構成した受部材を示す図である。
【
図27】複数の部分体によって構成した受部材を示す図である。
【
図28】受部材のアンカー配設溝の例を示す図である。
【
図32】連結部材を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【
図34】受部材がY方向にずれている場合の連結部材の向きを示す図である。
【
図36】高さの異なる受部材同士の連結を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の継手の実施形態を、図面を参照して説明する。本発明の継手は、種々の取付対象部材の連結或いは取付対象部材の接合に用いることができるが、ここでは橋梁、道路、あるいは鉄道の軌条基盤などの床版に使用されるプレキャスト床版に適用した場合を例に説明する。
【0025】
図1は、第一の実施形態に係る継手10を適用したプレキャスト床版1を示す平面図、
図2は、第一の実施形態に係る継手10を適用したプレキャスト床版1の
図1のA-A線断面図である。プレキャスト床版1は、橋幅方向(Y方向)に並べて設置された複数の主桁(不図示)上に架け渡され固定される。またプレキャスト床版1は、部材連結方向としての橋軸方向(X方向)に沿って隣り合うように配設され、対向するプレキャスト床版1、1は、継手10によって連結される。なお継手10で連結された後のプレキャスト床版1、1間には、目地を塞ぐためのグラウト材、生コンクリート、水ガラス、熱硬化性又は熱可塑性の流動状態にある合成樹脂等の硬化性流動体が注入され得る。
【0026】
継手10は、連結部材20、受部材30、30aを有し、連結部材20で受部材30、30a同士を連結させて構成される。
図3は、第一の実施形態に係る継手10の連結部材20を示す斜視図である。連結部材20は、断面略H形継手形状を成し、一対の係合部22と、一対の係合部22間を繋ぐ架橋部24と、架橋部24に挿通する軸部26と、軸部26に一体的に回転し得るように支持された押圧体(当接体)28とを有する。
【0027】
係合部22は、XY平面に直交する方向に延伸する部材であり、テーパ状の外周面を有し架橋部24に固定されている基端(上端)側から先端(下端)側にかけて徐々に窄まる略四角錐形状を成す。即ち、係合部22の外周面の内、X方向に対向する外周面は、上端部から下端部にかけてX方向の間隔を狭めるように略対称的に傾斜し、Y方向に対向する外周面が上端部から下端部にかけてY方向の間隔を狭めるように略対称的に傾斜する。
【0028】
架橋部24は、係合部22よりもY方向の長さが短い、幅狭形状に形成される。また架橋部24のXY平面の中央部には、XY平面に直交する方向に延びる挿通孔を有し、該挿通孔に軸部26が挿入される。軸部26は、一端部に右ねじの雄ねじ螺旋溝を形成した雄ねじ部26aを具える。また軸部26は、他端部に架橋部24の挿通孔よりも大きい外周形状であって、頂面に六角穴を形成した頭部26bを具える。頭部26bは、架橋部24に当接し得る座面を有する。
【0029】
押圧体28は、短辺部分28aと長辺部分28bとを有する平面視略長方形状を成し、雄ねじ部26aに螺合し得る雌ねじ孔を有する。
【0030】
短辺部分28aは、連結部材20を受部材30、30a間に配設したときに受部材30、30aに干渉しない長さに設定される。即ち、短辺部分28aは、受部材30、30a間の間隔よりも短い長さに設定される。
【0031】
長辺部分28bは、連結部材20を受部材30、30a間に配設したときに受部材30、30aに干渉する長さに設定される。即ち、長辺部分28bは、受部材30、30a間の間隔を超える長さに設定される。
【0032】
図4は、第一の実施形態に係る継手10の受部材30、30aを示し、(a)は斜視図、(b)はプレキャスト床版1の端面側を正面側とした場合の左側面側から見た断面図、(c)は正面側から見た断面図である。受部材(被嵌入部)30、30aは、それぞれ同形状のC形継手金具であって、対向する一対のプレキャスト床版1、1の端部にそれぞれ配設される。受部材30、30aは、その一部が各プレキャスト床版1、1のY方向に沿って延びる端部に埋め込まれる。従ってプレキャスト床版1、1は、受部材30、30aがX方向に沿って対向するように配置される。
なお、ここで受部材30、30aは、それぞれC形継手金具であるとされるが、継手としての強度を有するものではあればよく、材質は金属であることに限定されるものではない。
【0033】
受部材30、30aは、プレキャスト床版1内でX方向に延びるアンカー部32と、連結部材20の係合部22を嵌入させ得る凹形状を成す収容部34と、押圧体28の長辺部分28bが当接し得る規制部36と、規制部36に対しY方向に対向する段部38とを有する。
【0034】
受部材30、30aは、収容部34の開口縁を上向きで且つXY平面に沿った向きでプレキャスト床版1に配設される。なお、収容部34の開口縁は、必ずしも上向きに配設されるものに限定されるものではなく、下向きにする等、配設する向きは適宜設定し得る。
また、受部材30、30aは、プレキャスト床版1の端部から収容部34を突出させるように設けても良く、また収容部34の一部をプレキャスト床版1内に埋め込むようにしても良い等、配設方法は適宜設定し得る。
【0035】
収容部34は、アンカー部32に対するX方向反対側の端部に架橋部24を嵌入させ得る切欠きを有し、該切欠きの縁部に沿ってリップ部分34aを有する。リップ部分34aは、係合部22とX方向に係合する。
【0036】
収容部34の内周形状は、係合部22の外形形状に略相当し、開口縁から底部にかけて徐々に窄まる略四角錐形状を成す。即ち、
図4(b)に示すように収容部34の内周面の内、X方向に対向する内周面40a、40bは、開口縁部から底部に沿ってX方向の中央に向かうように略対称的に傾斜する。また
図4(c)に示すようにY方向に対向する内周面40c、40dは、開口縁部から底部に沿ってY方向の中央に向かうように略対称的に傾斜する。
【0037】
規制部36は、収容部34の略直下で押圧体28の長辺部分28bに当接し得る位置に形成される。即ち、収容部34の下端面34bから直交方向に延伸し、
図4(a)に示す収容部34のリップ部分34a側を正面側とした場合、規制部36は、収容部34の下方右側に形成される。なお、下端面34bと規制部36とによって画成される空間は、押圧体28の長辺部分28bが進入して規制部36に当接し得る空間として機能する。
【0038】
次に、受部材30、30aを連結部材20によって連結し、プレキャスト床版1を連結する手順について説明する。プレキャスト床版1同士は、受部材30、30aを配設した端部同士を向かい合わせて配置される。また受部材30、30aは、互いのリップ部分34aが対向するように、所定間隔を存して配置される。
【0039】
連結部材20は、各係合部22をXY平面に直交する方向、即ち、
図5(a)の矢印Aで示す方向に沿って各収容部34に嵌入させる。これにより、各収容部34の内周面内に係合部22が嵌入して連結部材20が受部材30、30a間に配設される。ここで押圧体28は、受部材30、30aに干渉しないように、短辺部分28aがX方向と平行な向きで、且つ軸部26の先端側に位置しているものとする。
【0040】
係合部22が収容部34に嵌入したとき、押圧体28は、受部材30、30a間で、収容部34の下端面34bと規制部36とによって画成される空間に進入可能に配置される。従って押圧体28は、軸部26を略90°回転させたとき、長辺部分28bが規制部36に当接可能に受部材30、30a間に位置される。
【0041】
次に、
図5(b)に示すように、頭部26bの六角穴にスパナ等の器具を介して締結方向のトルクを付加したとき、軸部26に螺合している押圧体28が軸部26と共に回転する。押圧体28は、略90°(所定角度)回動して長辺部分28bがX方向に平行な向きになったとき、長辺部分28bが各受部材30、30aの規制部36に当接するので、それ以上の回転が規制される。このように押圧体28は、軸部26と共に所定角度回転した後、規制部36と周方向に係合し、回転が規制される。
【0042】
更に、締付方向にトルクを付加した場合、軸部26は、押圧体28に対して相対回転する。結果、押圧体28は、下端面34bに当接する位置まで軸方向に沿って上昇(変位)する。即ち、押圧体28は、規制部36に当接しながら軸部26の回転に伴って軸方向に沿って受部材30、30a及び架橋部24側に移動して下端面34bに当接する。
【0043】
押圧体28が
図5(c)に示すように下端面34bに当接して上昇不可となったとき、軸部26の締結方向の回転は、規制されて締結が完了する。これにより受部材30、30aは、連結部材20によって連結され、プレキャスト床版1が連結される。
【0044】
次に、収容部34と係合部22の形状に基づくプレキャスト床版1の位置決め機能について説明する。継手10は、収容部34に係合部22を嵌入させることでプレキャスト床版1を移動させる位置決め機能を具える。具体的には、係合部22と収容部34とが傾斜面同士で当接し、係合部22の外周面が収容部34の内周面を押圧することで、プレキャスト床版1を移動させるものである。
【0045】
プレキャスト床版1、1同士の連結において、一方のプレキャスト床版1を所定位置で固定し、他方のプレキャスト床版1を移動させることで互いの相対位置が所定範囲(所定位置)に収まるように位置決めする。ここでは、受部材30aを配設したプレキャス床版1を固定し、受部材30を配設したプレキャスト床版1を移動させる。
【0046】
プレキャスト床版1、1同士の相対位置が所定間隔よりもX方向に沿って離間する場合、受部材30、30a間に連結部材20を配置させると、
図6(a)に示すように係合部22が収容部34内における中途位置で係止される。即ち収容部34の一方の内周面40a及び係合部22の外周面が共に傾斜しており、係合部22は、外周面の先端部が内周面40aの中途位置に当接し、収容部34の底部側への嵌入が規制される。
【0047】
頭部26bを締結方向に回転させると、上述したように押圧体28が徐々に移動し、下端面34bに当接する位置に変位する。そして
図6(b)に示すように、受部材30及び連結部材20は、頭部26bと押圧体28とに挟まれて押圧される。従って更に軸部26を締結方向に回転させたとき、押圧体28が下端面34bによって位置が規制されているため、頭部26bが連結部材20を押圧体28側に押圧する。
【0048】
なお、係合部22の外周面と内周面40aとは互いに傾斜した面で接触しているので、頭部26bが連結部材20を押圧している押圧力は、係合部22の外周面を介して内周面40aに伝達して受部材30をX方向に押圧する力に変換される。従って、受部材30がプレキャスト床版1と共にX方向に沿って、受部材30a側に移動し、この移動に伴い係合部22が収容部34内に進入する。
【0049】
上記のように、受部材30及び受部材30が配されたプレキャスト床版1は、徐々にX方向に沿って受部材30a(他方のプレキャスト床版1)側に移動し、係合部22が収容部34内の最奥部に嵌入したとき、受部材30が受部材30aに対する相対位置が所定位置となり、これによってプレキャスト床版1、1の位置決めが成される。
【0050】
このように軸部26を締結方向に回転させ、受部材30、30aの各収容部34に連結部材20の各係合部22を嵌入することで、係合部22が収容部34の内周面を押圧し、プレキャスト床版1、1同士の相対位置を所定の配置に位置決めすることが出来る。
【0051】
なお、相対位置が所定間隔よりもX方向に沿って離間若しくはズレたプレキャスト床版1、1を所定の配置に位置決め固定する場合を例に説明したが、互いの相対位置がX方向に沿って所定位置よりも近接したプレキャスト床版1の所定位置への移動も同様にして行うことができる。即ち、
図7(a)に示すように係合部22の先端部が収容部34の他方の内周面40bの中途位置で当接した場合、頭部26bを締結方向に回転させれば、
図7(b)に示すように押圧体28が下端面34bに当接し、受部材30及び連結部材20は、頭部26bと押圧体28とに挟まれる。
【0052】
これにより受部材30は、連結部材20の外周面に当接している内周面40bを介してX方向に沿って、他方のプレキャスト床版1側から離間する方向に押圧され、プレキャスト床版1及び受部材30は、X方向に沿って受部材30aから離間する向きに移動する。また受部材30の移動に伴って係合部22が収容部34内に進入し、受部材30が受部材30aに対して所定の位置に移動したとき、係合部22は収容部34に嵌入し、プレキャスト床版1、1同士の相対位置が所定の配置に位置決めされる。
【0053】
また、例えば、
図8(a)に示すようにプレキャスト床版1、1同士がY方向にずれた位置にある場合、受部材30、30a間に連結部材20を配置すると、係合部22の先端部が収容部34の内周面40cに当接して中途位置で係止される。即ち、係合部22は、先端部が内周面40cの中途位置に当接し収容部34の底部側への嵌入が規制される。
【0054】
ここで、
図9は係合部22が内周面40cに当接した状態を示すXY平面に対する直交方向の断面図である。係合部22が内周面40cの中途位置に当接しており、頭部26bが締結方向に回転した場合、上述したように押圧体28が下端面34bに当接する位置まで移動する。そして受部材30及び連結部材20は、頭部26bと押圧体28とに挟まれて押圧される。
【0055】
なお、係合部22の外周面と内周面40cとは互いに傾斜しているので、受部材30にかかる押圧力の一部は、内周面40cを介してY方向の力として作用する。そのため受部材30は、Y方向に押圧される。
【0056】
従ってプレキャスト床版1及び受部材30は、軸部26を締結方向に回転させる毎に、徐々に受部材30がY方向に移動し、結果、受部材30aに対してX方向に対向する所定位置に変位する。
【0057】
このように、プレキャスト床版1、1同士がX方向及び/又はY方向にずれていても、受部材30、30aを連結部材20によって連結させることで、受部材30と共にプレキャスト床版1をX方向及び/又はY方向に移動させ、所定位置に位置決めすることができる。即ち、受部材30の収容部34の内周面が係合部22によって押圧し、X方向及び/又はY方向に沿って受部材30と共にプレキャスト床版1を所定位置に向かって移動させることができる。
【0058】
また、プレキャスト床版1、1同士がXY方向に直交する高さ方向にずれている場合、係合部22を受部材30、30aの収容部34に嵌入させ軸部26を締結方向に回転させることで、プレキャスト床版1、1同士の高さ位置を合わせていくことができる。即ち、軸部26を締結方向に回転させたときに軸部26に作用する軸力は、頭部26bを介して連結部材20に伝達され、或いは押圧体28に伝達される。そして連結部材20が受部材30を押圧、或いは押圧体28が受部材30の下端面34bを押圧し、受部材30と共にプレキャスト床版1が所定の高さ位置に向かって移動する。これにより受部材30と受部材30aとの高さ位置を一致させてプレキャスト床版1、1を連結することができる。
なお、勿論プレキャスト床版1、1同士の相対位置が所定範囲内に存している場合には、上述した軸部26を回転させることによる位置決めの作業を行うことなく、係合部22が収容部34の略最奥まで嵌入可能なので、位置決め作業が不要となる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の継手10によれば、プレキャスト床版1、1同士の相対位置が所定位置からX方向、Y方向、XY平面に直交する方向(高さ方向)に交差レベルを大きく超えて(例えば、数十mm程度)ずれていても、受容部30、30aの収容部34内に係合部22を嵌入するように、連結部材20に受容部30、30a間に進入させる押圧力を作用させるだけで、プレキャスト床版1、1同士の相対位置が所定範囲に収まるように位置決めでき、プレキャスト床版1、1同士を接合させるときの相対的な位置決めを含めた作業が容易となり且つ作業時間が短縮されて作業性を向上させることができる。
また、頭部26bと押圧体28との間で受容部30、30aと連結部材20とを締結するだけで、頭部26bが連結部材20を押圧(又は押圧体28が受容部30を押圧)し、受容部30をX方向、Y方向及び/又は高さ方向に押圧することができる。
即ち、頭部26bと押圧体28との間で受容部30、30aと連結部材20とを締結するように、軸部26を締結方向に回転させるだけで、プレキャスト床版1、1同士の相対位置を所定範囲に収まるように位置決めすることができる上、その一連の操作によって最終的には適切な位置におけるプレキャスト床版同士の連結作業を完結させることができ、より作業性の向上を図ることができる。
【0060】
また、架橋部24に挿通する一本の軸部26と、この軸部26の先端側には配設される押圧体28とによって一対の受部材30、30aと連結部材20とを締結するので、一対の受部材30、30aと連結部材20とを強固に固定することができる。また一対の受部材30、30a同士の連結を強化することができる。従って本発明によれば受部材30、30a同士を連結させる際の作業性を向上させることができる。
【0061】
また、架橋部の中央部に挿通される一本の軸部26を締結方向に回転させるだけで、一対の受部材30、30aと連結部材20とを締付けて固定する構成から、連結部材20が水平を維持しながら、係合部22が収容部34内に進入して固定されるため、連結部材20と受部材30、30aとを極めて安定させて固定することができる。
【0062】
また、対向するプレキャスト床版1、1同士の相対位置が橋軸方向、橋軸直角方向にずれていても、収容部34内に係合部22に嵌入させることで、プレキャスト床版1及び受部材30が所定位置に移動するので、位置決めを容易に行うことができ、更に作業性を向上させることができる。
【0063】
なお、軸部26において、上述の構成に加えて回転防止機構を形成して、締結後に振動等による軸部26の緩み方向の回転を防止するようにしてもよい。具体的には、
図10に示すような頭部26bの座面に頭部側凹凸50を設け、架橋部24の表面に頭部側凹凸50に係合し得る架橋部側凹凸52を設ける。また両凹凸を鋸歯形状にして周方向に係合し得るように形成する。即ち頭部側凹凸50は軸部26が締結方向に回転しようとすると、両者の傾斜面が50a、52aが当接して、両者の距離を軸方向に離しながら、相対摺動を許容する。一方、軸部26が緩み方向に回転しようとすると、互いの垂直面(傾斜が強い側の面)50b、52bが当接して、軸部26の回転を防止する。
勿論、頭部26bの座面に設けられる頭部側凹凸50に対応する架橋部24側の架橋部凹凸52は、架橋部24と別体の座金状のものとして構成してもよい。
【0064】
このような回転防止機構を形成すれば、繰り返しの振動による軸部26の緩み方向の回転を防止することができ、また軸部26の緩み方向の回転によって押圧体28が外れて落ちてしまうことを防止することができる。
【0065】
また、収容部34の内部空間及び、係合部22の形状としては、略四角錐形状に構成するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、係合部22の概形としては、略三角錐形状、略五角錐形状、略六角錐形状等の略多角錐形状や
図11に示すような略円錐形状としてもよい。
同様に収容部34の内部空間は、略三角錐形状、略五角錐形状、略六角錐形状等の略多角錐形状や、
図11に示すように、円錐形状の係合部22に対応する略円錐形状であってもよい。
【0066】
また、収容部34の内周面及び係合部22の外周面は、X方向又はY方向に対向する面同士が対称的に傾斜しているものとして説明したが、勿論これに限定されるものではなく非対称的な傾斜であってもよく、対向する面の一方が傾斜して他方が傾斜していない形状であってもよい。
【0067】
例えば収容部34の内周面40a、40bの内、
図12(a)に示すように一方の内周面40aは傾斜させず、他方の内周面40bのみを傾斜させてもよい。また
図12(b)に示すように一方の内周面40aのみを傾斜させてもよく、また
図12(c)或いは
図12(d)に示すように内周面40a、40bを互いに傾斜角を異ならせて同じ向きに傾斜させてもよい。勿論上記と同様にして係合部22の外周面の傾斜を設定してもよい。
【0068】
また、頭部26bは、頂面に六角穴を有する形状としたが、これに限定されるものではなく、十字穴、スリ割り、矩形状の穴、星形の穴等であってもよい。また頂面に穴を設ける代わりに、外形形状を略四角形状、略六角形状等の異形状としてもよい。
【0069】
また、継手10によって連結されるプレキャスト床版1、1は、離間して対向配置されるものに限定されるものではなく、プレキャスト床版1、1間の目地が略無いように、プレキャスト床版1、1同士を接触させて配置してもよい。その場合、
図23に示すように受部材20(及び/又は受部材20a)が、対向する受部材20a(及び/又は受部材20)と接触し得るようにX方向の長さを設定してもよい。
【0070】
次に第二の実施形態に係る継手について説明する。
図13は第二の実施形態に係る継手60を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図である。以下の説明において、第一の実施形態に継手10の構成と同一の構成には同一の符号を用い、その説明を省略する。また各図においてアンカー部32は必ずしも必要なものではなく、ここでは省略するものとする。
【0071】
継手60は、第一の実施形態の継手10に対して受部材30、30a同士を嵌入方向に直接係合させる凹凸係合部62を有する点が相違する。凹凸係合部62は、リップ部分34aからX方向に沿って外側に突出し、その端面には上下方向に沿って配列された複数の凹凸が形成されている。
【0072】
凹凸係合部62は、受部材30、30aの相対位置が所定位置になったとき、互いに噛み合って係合する凹凸を有する。即ち、
図14に示すように、凹凸係合部62は、Y方向の一方側のリップ部分34aに形成される凹凸62aと、Y方向の他方側のリップ部分34aに形成される凹凸62bとをそれぞれ有する。凹凸62a、62bは、対向配置された際に凸部が相手側の凹部に嵌合するように、嵌入方向に沿って配置される互いの凸部と凹部の位置が互い違いになるように形成される。
【0073】
継手60は、上述した第一の実施形態の場合と同様に、受部材30、30aを連結部材20を介して連結して構成される。即ち、上記第一の実施形態と同様に先ず連結部材20を受部材30、30a間に配設し、軸部26に締結方向のトルクを付加する。
【0074】
軸部26に螺合している押圧体28が軸部26と共に回転し、押圧体28の長辺部分28bがX方向に平行な向きとなったとき、各受部材30の規制部36に当接し回転が規制される。そして軸部26の締結方向の回転によって、押圧体28が徐々に頭部26b側に移動し、受部材30、30aの下端面34bに当接する。
【0075】
結果、受部材30、30aと連結部材20が締結される。またプレキャスト床版1、1同士の相対位置が所定位置よりも離間している場合は、収容部34内に係合部22が嵌入していくことで、プレキャスト床版1及び受部材30を所定位置に移動させ、位置決めを行うことができる。そしてプレキャスト床版1及び受部材30が所定位置に移動したとき、凹凸係合部62の凹凸が互いに噛み合って受部材30、30aが嵌入方向に係合する。
【0076】
このように、凹凸係合部62を形成したことで、プレキャスト床版1、1を嵌入方向即ち、XY平面に直交方向に沿う外力に対する接合強度が向上し、継手60自体の強度を向上させることができる。
【0077】
なお、凹凸係合部62の凹凸形状は、特に限定されるものではなく、例えば、
図15(a)に示す略三角形状、
図15(b)に示す略波形状、
図15(c)に示す凹凸の噛み合う側面(凹凸同士の接触面)がX方向に平行な凹凸形状、
図15(d)に示す先鋭状で且つ、凹凸同士の接触面が基端から中途部分までX方向に平行な凹凸形状等、適宜設定し得る。但し、受部材30同士の上下方向の位置が揃っていない場合には、凸部を凹部内に進入し易くさせるために、凹部の開口を広くし且つ凸部の先端を細くした形状に設定するのが好ましい。
【0078】
また、上述した各実施形態において、軸部26の頭部26bが架橋部24に当接するものとして説明したが、勿論これに限定するものではなく、頭部26bが収容部34の下端面34bに当接し得る向きに軸部26を配設してもよい。即ち、架橋部24に対して軸部26を上下逆向きに挿入してもよい。その場合、頭部26bは押圧体28に相当する形状となるように、短辺部分28a、長辺部分28bを有する略長方形状を成すように形成する。このようにすれば頭部26bが規制部36に当接し、締結方向の回転が規制され、更に押圧体28を架橋部24側で軸部26に螺合し、押圧体28を締結方向に回転させることで、受部材30、30aと連結部材20とを締結することができる。この場合は、押圧体28の代わりに六角ナット等の雌ねじ体を用いても好いことは言うまでもない。
【0079】
また、軸部26を上下逆向きに挿入する場合、頭部26bが下端面34bに当接し得る形状であれば、必ずしも規制部36に接触する形状でなくてもよい。その場合、例えば軸部26の先端部に十字穴やスリ割り等の工具が係合する溝等を形成する。そして軸部26に螺合させた雌ねじ体を架橋部24に当接させた状態で固定し、軸部26を工具等を介して締結方向に回転させることで、受部材30、30aと連結部材20とを締結する。
【0080】
また、軸部26の雄ねじ部26aに押圧体28を螺合させる場合を例に説明したが、勿論これに限定されるものではなく、軸部26と押圧体28とが一体となっていても好い。この場合、軸部26と共に押圧体28が所定角度回転可能で、且つ、押圧体28を軸方向に変位可能に構成することが好ましい。
【0081】
例えば
図16(a)に示すように軸部26を架橋部24の挿通孔に摺動可能に挿通させ、また頭部26bの端面が架橋部24から軸方向に離間するように付勢する付勢部材70を設ける。これによって押圧体28が段部38に干渉しない位置で、軸部26と共に回転し得、且つ、連結部材20に当接する。即ち、軸部26を押圧して、付勢部材70に抗する向きに摺動させつつ、長辺部分28bがX方向と平行となるように軸部26を回転させる。そして、軸部26の押圧を解放して、付勢部材70により軸部26を付勢させれば、
図16(b)に示すように押圧体28が下端面34bに当接する。
【0082】
また、連結部材20は、X方向の両側にそれぞれ一つずつ係合部22を配設、即ち架橋部24を境界に一対一で係合部22を配設した構成を例に説明したが、勿論係合部22の数は限定されるものではなく、架橋部24を境界に一対複数で配設してもよい。例えば、
図17(a)に示すように、X方向の一方の端部に一つの係合部22、他方の端部に二つの係合部22を配設してもよい。なお係合部22は、
図17(b)に示すように軸部26を中心とした放射状に形成してもよい。
【0083】
また、係合部22は、架橋部24を境界に複数対複数で配設してもよい。例えば、
図18(a)、(b)に示すようにX方向の一方の端部に二つの係合部22、他方の端部に二つの係合部22を配設してもよく、
図18(c)に示すようにX方向の一方の端部に三つの係合部22、他方の端部に二つの係合部22を配設してもよい。
【0084】
また、軸部26から係合部22までの距離はX方向の両側で等距離に設定してもよいが、
図19に示すように異なる距離に設定してもよいことは言うまでもない。
【0085】
また、上述の実施形態において、収容部34の内周に係合部22が密着するものとして説明したが、少なくとも、収容部34内で係合部22が係合し得るものであれば、収容部34の内周空間が係合部22よりも大きくなるように設定してもよい。そのようにすれば、収容部34の内周面40a~40dと係合部22との間に隙間が生じるので、受部材の取付対象部材同士の相対位置が所定範囲内に収まるような位置決めを行うことができる。
【0086】
また、位置決めの過程において、収容部34内に進入している係合部22の位置によって受部材30、30a間の距離が定まるので、これを利用して、プレキャスト床版1、1間に注入される硬化性流動体にプレストレスならぬポストストレスともいうべき加圧力を付与することができる。具体的には予めプレキャスト床版1、1同士が所定位置よりも離間し且つ連結部材20の係合部22を収容部34の最奥部まで嵌入しない状態を仮組み状態とする。また、連結部材20の係合部22を最奥部まで嵌入した状態を本組み状態とし、仮組み状態のときにプレキャスト床版1、1間に硬化性流動体を注入する。そして、一定以上の硬度まで硬化した後、本組み状態に移行させれば、連結部材20の係合部22が、
図20に示すように、内周面40aを押圧し、プレキャスト床版1、1間の硬化性流動体に圧縮向きの加圧力を付与することができる。
勿論、プレキャスト床版1、1同士を所定位置よりも近接させた状態を仮組み状態としてもよいことは言うまでもない。
【0087】
また、本発明においては、架橋部のX方向の長さに対応して受部材30、30a間の距離が定まるため、架橋部の長さが異なる複数の連結部材を付け替えることで、連結されているプレキャスト床版1、1間の空隙(目地代)に注入された硬化性流動体に対してプレストレスの付与が可能である。
【0088】
具体的には、短尺の連結部材(短尺連結部材82という。)と、長尺の本組み用の長尺の連結部材(長尺連結部材82という。)とを用いる。ここで長尺連結部材82は、短尺連結部材80の短尺架橋部80aよりもX方向の長さが長い長尺架橋部82aを有する。更に、長尺架橋部82aは、短尺架橋部80aが弾性変形域で伸長可能なX方向の伸び量分だけ短尺架橋部80aよりも長くなるように、X方向の長さが設定される。
【0089】
プレキャスト床版1、1同士を複数の継手10によって連結する。ここで
図21は、連結部材の組み替えによりプレストレスを与える手順を示す図であり、
図21(a)に示すプレキャスト床版1、1は、三つの継手10により連結される。即ち、各プレキャスト床版1は、Y方向に沿って略等間隔に三つの受部材30(又は受部材30a)を並列させて配置する。プレキャスト床版1、1は、短尺連結部材82を用いた受部材30、30aの連結により、位置決めされる。
【0090】
次に、複数の継手10の内、Y方向の両端に位置する継手10から短尺連結部材82を取り外し、長尺連結部材80に組み替える。従って
図21(b)に示すY方向の中間位置にある継手10の短尺連結部材82は、X方向に引張力を受けて弾性変形域で引き伸ばされた状態となり、これを仮組みの状態とする。
【0091】
この仮組みの状態で、プレキャスト床版1、1間の空隙に硬化性流動体を注入する。なお、硬化性流動体の長尺連結部材80への付着を防止するため、予め長尺連結部材80の周囲に被覆カバーや板材等の付着防止部材を配してもよい。
【0092】
そして、硬化性流動体が一定以上の硬度で硬化して硬化体となった後、
図21(c)に示す両端の継手10から長尺連結部材80を取外して短尺連結部材82に組み替えて本組みされる。これによって硬化体内部では、組み替え時に予め引き延ばされていた短尺連結部材82が元の長さに復帰しようとする力が作用し、硬化体に圧縮力を付与し、プレストレスを付与することができる。これによって硬化体を補強することができる。
【0093】
なお、プレストレスを付与した後は、短尺連結部材82を露出させたままにしてもよいが、硬化性流動体を注入してプレキャスト床版1、1と面一になるようにプレキャスト床版1、1間の目地を塞いでもよい。また、プレキャスト床版1、1同士を連結するための継手10の数は、特に限定されるものではなく、二つの継手10で連結してもよく、四つ以上の継手で連結してもよい。また、短尺連結部材82を仮組み用とし、長尺連結部材80を本組み用としてもよい。
【0094】
また複数の継手10と他の構造のコッター継手とでプレキャスト床版1、1を連結してもよい。少なくとも継手10によるプレキャスト床版1、1同士の位置決めが可能であれば、継手10及びコッター継手の各々の数量や配置は適宜設定し得る。例えば、継手10とコッター継手とを交互に配するような配置や、プレキャスト床版1のY方向の両端側に継手10を位置させて継手10間にコッター継手を配するような配置、継手10を中央部に位置させ、その両側にコッター継手を配するような配置等であってもよい。
【0095】
また、上述した各実施形態において、軸部26を締結方向に回転させることで発生した軸力によって係合部22が収容部34に嵌入するように連結部材20を押圧したが、勿論、連結部材20から軸部26を省略し、ハンマー等の工具によって連結部材20を直接押圧し得るようにしても好い。
【0096】
また、上述した各実施形態において、架橋部24に形成される挿通孔は、軸部26が挿入し得る孔であれば、貫通孔に限定するものではない。例えば、
図22(a)に示すように、非貫通の挿通孔86を架橋部24の下端面に穿孔させてもよい。その場合、軸部としての雄ねじピン88を架橋部24の下側から挿通孔86に挿入して固定する。具体的には、挿通孔86の内周面に雌ねじ螺旋条を設け、更に雄ねじピン88に雌ねじ螺旋条に螺合する雄ねじ螺旋溝を形成した雄ねじ部88aと、雄ねじ部88aの基端に設けた頭部88bを設ける。そして
図22(b)に示すように雄ねじピン88を挿通孔86に螺合させ、頭部88bを下端面34bに当接させて連結部材20と受部材30、30aとを締結して継手を構成する。
【0097】
また、受部材30、30aの形状は、特に限定されるものではない。例えば、
図24に示すように平面視外形が略楔形を成していてもよい。即ち、X方向におけるリップ部分34a及び内周面40aが設けられたX方向の一端側の幅a1が、X方向の他端側(内周面40b側)の幅a2よりも狭まる楔形状としてもよい。このような楔形状の受部材30、30aを採用すれば、プレキャスト床版内において、プレキャスト床版との間において、X方向の引張りに対する引張抵抗力が向上する。従って受部材30、30aとプレキャスト床版とが更に強固に固定される。
【0098】
また、受部材30、30aに設けられるアンカー部32は、受部材30、30aと一体的に設けられたものであっても、別体のものであっても好い。別体のアンカー部32の形状は、特に限定されるものではなく、異形棒鋼、ねじ節鉄筋、丸棒、U字鉄筋、板状等、素材や形状は適宜設定し得る。
勿論、一体的なアンカー部32とする場合であっても、その形状は特に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0099】
別体のアンカー部32を、受部材30、30aに配設する場合、受部材30、30aにアンカー配設溝を設けてアンカー部32を嵌合させて固定することが好ましい。勿論、アンカー部32及び受部材30、30a間に溶接、溶着、接着等の他の固定手段を施してもよい。また、アンカー部32の挿入端を雄ねじ形状にし、受部材30、30aのアンカー配設溝の内周面を雌ねじ形状にしてアンカー部32を受部材30、30aに螺合させることで、アンカー部32を固定してもよい。
【0100】
また、受部材30、30aは、互いに別体に形成された複数の部分体によって構成し、当該部分体間でアンカー部32を挟持して固定してもよい。例えば、
図25に示すように、受部材30を互いに別体の二つの部分体100、102によって構成する。ここでは受部材30について説明するが、受部材30aについても同様に構成し得ることは言うまでもない。受部材30は、リップ部分34aに対してX方向の反対側の面の中央部にアンカー配設溝104を有する。
【0101】
部分体100、102は、XY平面に直交し、X方向に平行な結合面106をそれぞれ有し、結合面106を合わせ面にして互いに結合する。また部分体100、102には、各々の係合面106にアンカー配設溝104を構成する凹部及び/又は溝の内周面が形成される。従ってアンカー配設溝104は、複数の部分体100、102の結合によって構成される。
【0102】
部分体100、102の結合は、ボルト締結により行う。従って部分体100、102に各々に形成されたY方向に貫通する貫通孔(不図示)を連通し、連通する貫通孔にボルトを挿通させて該ボルトにナットを締結することで、部分体100、102を結合させる。
【0103】
なお、部分体100、102の結合手段は、ボルト締結に限定されるものではなく、カシメやリベット締結であってもよい。また接着、溶着、溶接、嵌合又はこれらを組み合わせた結合手段を用いてもよい。
また、結合面106は、略平面状に限定するものではなく、
図26(a)に示す略凹凸面状、
図26(b)に示す凹凸が山形となっている略山形形状、
図26(c)に示す凹凸が湾曲した略波形形状等、何れの形状であってもよい。
【0104】
結合面106に凹凸を形成した場合、互いの凹凸を嵌合させれば結合面106間の摩擦力及び/又は嵌合力が増加するので、部分体100、102は、XY平面に直交する方向に沿って摺動したり、ずれたりするのを抑止することができる。また部分体100、102の結合前に、各結合面106の凹凸を嵌合させ、位置合わせを容易に行うことができる。
【0105】
また、結合面106にはローレット等の微小凹凸や、粗面等の微小凹凸面状に形成してもよく、これによっても結合面106間の摩擦力及び/又は嵌合力が増加するので、部分体100、102は、XY平面に直交する方向に沿って摺動したり、ずれたりするのを抑止することができる。
また、部分体100の結合面106に一つ又は複数の凹部を設け、部分体102の結合面106に一つ又は複数の凸部を設け、凹部に凸部を嵌合させて位置合わせを行ってもよい。また、結合面106は、一部を平面状、その他の部分を微小凹凸面状や、
図26(a)~(c)等に示す凹凸面状とした面形状であってもよい。
【0106】
また、受部材30における結合面106の位置は、
図25に示すような、Y方向における略中心位置
に限定されるものではなく、
図27(a)に示すようにアンカー配設溝104のY方向の一方の端面に沿う位置であってもよい。また、
図27(b)に示すように結合面106をXY平面と平行面を成すように設定してもよいことは言うまでもない。
【0107】
また、アンカー配設溝104の内部形状は、適宜設定し得るものであるが、アンカー部32が嵌る形状であることが好ましい。即ちアンカー部32が外周面に節やリブ等の突起を有する所謂異形棒鋼である場合は、
図28(a)に示すようにアンカー配設溝104の内周面には、アンカー部32の突起を嵌合させて該突起に係合する凹部を設ける。またアンカー部32がU字に湾曲した鉄筋の場合は、
図28(b)に示すようにアンカー配設溝104をU字に形成する。またアンカー部32の挿入端が拡幅形状である場合は、
図28(c)に示すようにアンカー配設溝104の開口を開口縁からX方向の奥側に向かって拡がるように形成する。このように受部材30を部分体100、102によって構成した場合、アンカー配設溝104の形状を適宜設定することができる。
【0108】
また、受部材30に対して配設するアンカー部32の数は、一本に限定されるものではなく、複数本としても好く、その場合にはアンカー配設溝104は、アンカー部32の本数に応じて複数形成する。
【0109】
また、複数の部分体100、102によりアンカー配設溝104を構成するものとして説明したが、これに限定するものではなく、例えば一つの部分体100にアンカー配設溝104を設けるようにしてもよい。勿論アンカー部32が複数の場合は、部分体100、102毎にアンカー配設溝104を設けてもよい。
また、上述した各実施形態において、収容部34を凹形状として説明したが、勿論、収容部34を受部材30、30aを貫通する穴形状としてもよい。
【0110】
また、連結部材20と受部材30、30aとの固定を軸部26の締結によって行ったが、更に受部材30、30a内の係合部22を収容部34の底部側に押圧する別部材を配して連結部材20と受部材30、30aとの強固な固定を図っても好い。例えば、収容部34の開口に嵌合する別部材としての蓋部材を配置する。
図29に示すように、蓋部材120は、収容部34の開口縁部(設置部)に嵌る概形で、且つ嵌入方向の一端部が係合部22を押圧し得るように収容部34内に突出する。このように蓋部材120を、収容部34の開口縁部に嵌着させることで、収容部34を閉塞しつつ、係合部22を押さえることができる。
【0111】
蓋部材120をより強固に収容部34に固定するため、蓋部材120と収容部34とを締結させてもよい。即ち、蓋部材120の外周面に雄ねじ領域を形成し、収容部34の開口縁部側の内周面に雌ねじ領域を形成し、蓋部材120を収容部34に螺合させて固定してもよい。
【0112】
例えば、
図30(a)に示すように、収容部34には、開口端(上端部)に形成された、円形状の内周を有し、周面に雌ねじ螺旋条を具える雌ねじ領域130を形成する。なお、雌ねじ領域130は、収容部34に嵌入される係合部22に干渉しないように、収容部34における係合部22が嵌る領域よりも拡径した孔形状を有する。
【0113】
一方で蓋部材120の雄ねじ領域は、円柱形状を成す雄ねじ領域122と、軸方向に突出する突部124とを有する。雄ねじ領域122は、外周に雌ねじ領域130の雌ねじ螺旋条と螺合する雄ねじ螺旋溝を有する。突部124は、雄ねじ領域122よりも先端側に配され、軸方向に突出する。
従って
図30(b)に示すように雄ねじ領域122を雌ねじ領域130に締結させることで、突部124が係合部22に当接するので、蓋部材120は、収容部34を閉塞しつつ、係合部22に対して下向きの押圧力を付与することができる。なお、雄ねじ領域122及び雌ねじ領域130の長さは適宜設定し得る。
【0114】
なお、突部124の突出長さは、特に限定されるものではないが、蓋部材120を収容部34に締結させ固定した際に、突部124が係合部22を圧迫するように設定すれば、蓋部材120の締め付けによって係合部22に付与する押圧力を制御することが可能である。
また、上記においては蓋部材120と収容部34とを締結し固定したが、接着、溶接、溶着等の他の固定手段を用いても好い。
また、蓋部材120が収容部34に対して水密又は液密に嵌合し得るように、蓋部材120にシール部材を設けても好い。
【0115】
図31は、他の継手の構成を示す斜視図であり、ここで継手200は、略円錐形状の収容部212を有する受部材210、210aと、略円錐形状の係合部222を有する連結部材220を具える。受部材210、210aは、X方向に沿って外側に突出する凹凸係合部214、214aを有し、凹凸係合部214、214aは、互いに噛み合うことでZ方向に係合可能な凹凸を有する。従って受部材210、210aは、凹凸係合部214、214aが噛み合って係合したとき、互いの相対位置が所定位置となる。収容部212は、上部が開口しており、開口部近傍の内周面には蓋部材230を設置するための雌ねじ螺旋条が配されている。即ち、収容部212は、雄ねじ螺旋溝を外周面に有する蓋部材230が螺合、固定し得るように内周面の形状が設定される。
【0116】
なお、受部材210、210aにおいて、架橋部220を嵌入させ得る切欠き216は、X方向に沿ってハの字状に拡がる形状を成している。即ち、収容部212側からX方向の外側に向かって徐々に拡がるように形成される。
【0117】
図32は、連結部材220を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図であり、連結部材220は、一対の係合部222が架橋部224により連結されることで成る。ここで架橋部224は、切欠き216の形状に対応するように係合部222に接続する基部がハの字状に拡幅した形状を有する。即ち、架橋部224は、Y方向に沿った幅が基部側(係合部222側)から中央部に向かって徐々に拡がる形状を有する。
【0118】
また、連結部材220の下端面には、Z方向に突出する少なくとも一対の連結部側係止部224aが形成される。連結部側係止部224aは、軸部26にX方向側で対向する位置に配設し、ここでは軸部26を挟んでX方向の両側に配設する。連結部側係止部224aは、後述する押圧体226の回転防止機構の一部として機能する。
【0119】
架橋部224には、中央の挿通孔に軸部26が挿通され、該軸部26に形成されている雄ねじ部26aには、押圧体226が配される。押圧体226は、短辺部分と長辺部分とを有する平面視略長方形状の本体部分と、本体部分における架橋部224に対向する面に配設された平面視長円状又は長方形状の筒状突起である押圧体側係止部226aを有する。また上述した押圧体28と同様に押圧体226にも雄ねじ部26aに螺合し且つ軸部26が挿通し得る雌ねじ孔が形成される。押圧体側係止部226aは、その平面視における長辺部分が押圧体226の長辺部分と平行で、且つ一対の連結部側係止部224a間の間隔よりも長めに設定され、短辺部分が一対の連結部側係止部224a間に位置し得るように幅が設定される。
従って押圧体側係止部226aの短辺部分が連結部側係止部224a間に位置することで、押圧体226の回転防止機構が構成される。即ち、押圧体側係止部226aが連結部側係止部224a間に位置した状態から押圧体226が回転した場合、押圧体側係止部226aの長辺部分が連結部側係止部224a間の間隔よりも長いため、押圧体側係止部226aが連結部側係止部224aに当接し周方向に係止される。結果、押圧体226の回転を防止するように機能する。
【0120】
上述した構成の継手200によれば、頭部26bを摘んだ状態で連結部材220を受部材210、210aに設置する際に押圧体226が所定の状態から回転するのを防止できる。具体的には
図33に示す押圧体226を短辺部分がX方向と平行な向きにして、頭部26bを摘んで連結部材220を持ち上げた場合、軸部26が架橋部224に対して相対的に持ち上がって押圧体側係止部226aが一対の連結側係止部224a間で架橋部224の下端面に当接する。このとき、押圧体226に軸部26に対して相対回転し得る外力が作用しても、押圧体側係止部226aが連結体側係止部224aに当接して回転が規制される。従って頭部26bを摘みながら係合部222を収容部212に嵌入させている途中で、押圧体226が受部材210、210aに接触してしまうことを防止できる。
勿論、ここでは連結部材220側に設けられた連結側係止部224aによって押圧体226との相対回転を防止するように構成しているが、これに限らず押圧体226側、例えば押圧体226の上面部に連結部材220に対して係止可能な係止部を設ける構成としてもよい。
【0121】
また、継手200を用いることで、上述した四角錐状の係合部22を収容部34に嵌入する場合と比較して、位置合わせ可能なY方向に沿った受部材同士の位置ずれ等の範囲を広げることができる。具体的には、
図34に示すように連結部材220をXY平面上でX軸及びY軸に対して傾斜させても、係合部222を収容部212に収容し得る。従ってより広い範囲でのY方向に沿う位置ずれの大きさに対応することができる。
【0122】
また、切欠き216の形状及び架橋部224の基部をハの字状としたことによって、円錐状の収容部212と係合部222とのX方向に沿った係合強度を向上させることができる。
なお、凹凸係合部214、214aは、切欠き216のY方向両側に位置していることから、受部材210、210a同士のY方向の位置ずれによって凹凸係合部214、214a間のY方向に沿う押圧体226が通過するための隙間が狭まってしまう。そこで凹凸係合部214、214aの設置位置、Y方向に沿う幅は、少なくとも受部材210、210aがY方向にズレていても、確実に押圧体226を通過させるための隙間を確保し得るように設定される。
【0123】
また、蓋部材と収容部との螺合構造は、上記に限定されるものではなく、例えば、収容部側に雄ねじ螺旋溝を形成し、蓋部材側に雌ねじ螺旋条を形成することで螺合構造を構成してもよい。即ち、係合部の上面には、収容部の開口を囲む略円筒状の筒部を配設し、且つ筒部の外周面に雄ねじ螺旋溝を形成し、一方で蓋部材を断面凹状とし内周面に雌ねじ螺旋条を形成し、筒部の雄ねじ螺旋溝に蓋部材の雌ねじ螺旋条を螺合させることで、収容部上部の開口を蓋部材によって塞ぐようにしてもよい。
【0124】
また、係合部22と収容部34とが互いの傾斜面同士を当接し、係合部22の外周面が収容部34の内周面を押圧することで、プレキャスト床版1を移動させるものとして説明したが、係合部22の外周面と収容部34の内周面の少なくとも何れか一方が傾斜面となっていれば、プレキャスト床版1を移動させることができる。例えば、
図38(a)に示すように係合部22の外周面が嵌入方向に平行な鉛直面400(非傾斜面)を有し、傾斜している内周面40a(或いは内周面40b)と鉛直面400とが当接乃至押圧したときにプレキャスト床版1を移動させてもよい。また、
図38(b)に示すように係合部22が傾斜した外周面を有し、収容部34が開口側の内周面に鉛直面410(非傾斜面)を有し、係合部22の傾斜した外周面と、収容部34の鉛直面410とが当接乃至押圧したときにプレキャスト床版1を移動させてもよい。なお、鉛直面400、410は、角部から傾斜面に接触することから、傾斜面を痛めないように面取りによって角面や丸面を設けてもよい。
【0125】
また、軸部26は、所定以上のトルク及び/又は軸力の印加で破断し、一部が雄ねじ部26aに螺合された押圧体と共に切り離されて落下可能に構成しても好い。例えば、軸部26の雄ねじ部26aの周面に、周方向にV溝を刻設した脆弱部310(
図35参照)を設ける。そして軸部26に所定以上のトルクを印加したとき、脆弱部310において軸部26が破断すれば、架橋部24下に延在する雄ねじ部26aを除去することが可能となる。脆弱部310を設けるための刻設は、切削加工や塑性加工等の適宜方法によって行い、その方法が限定されるものではない。また、破断により切り離される雄ねじ部26aには、孔を形成したり吊具等を設けたりしてその孔や吊具等に紐、鎖、ワイヤ等を連結してもよい。このように雄ねじ部26aに紐、鎖、ワイヤ等を連結すれば、切り離され落下した雄ねじ部26a及びこれに螺合する押圧体28を引き上げて容易に回収することができる。また、雄ねじ部26aの代わりに押圧体28側に孔や吊具等を設けて紐、鎖、ワイヤ等を連結してもよく、これによっても落下した後の雄ねじ部26a及び押圧体28を引き上げて容易に回収することができる。
【0126】
また、連結部材20と受部材30、30aとの固定は、軸部26と押圧体28とによる締結により行ったが、更にボルトを用いて係合部22と受部材30(30a)とを固定してもよい。例えば、係合部22に穿孔して軸方向に平行な貫通孔240(
図35参照)を設け、収容部34の底部に雌ねじ孔(
図35参照)を設けておく。そして、ボルト250(
図35参照)を係合部22の貫通孔240に挿通させ、雌ねじ孔260に螺合させることで係合部22を受部材30(30a)に固定してもよい。
【0127】
図35は他の継手の構成を示し、(a)は平面図、(b)はA-A線断面図、(c)はB-B線断面図である。係合部22には、貫通孔240が設けられ、貫通孔240は、係合部22の略中央部が穿孔されることで形成される。また貫通孔240は、係合部22を収容部34に嵌入する方向に沿って設けられている。受部材30、30aは、底部に雌ねじ孔260を有する。
更に、係合部22と受部材30、30aとの固定にボルト250を設ける。ボルト250は、貫通孔240に挿通し得、且つ雌ねじ孔260に螺合し得るものであり、一端部に雄ねじ部250aが形成された軸部252と、外周形状が六角形状の頭部254とを有する。頭部254は、軸部252と比較し軸心に直交する軸直交方向の長さ(幅)が大きい外形形状を有する。
【0128】
ボルト250の締め付けは、係合部22の収容部34への嵌入後に行う。具体的には、先ず収容部34内に係合部22を嵌入する。そして、係合部22の貫通孔240にボルト250を挿通させ、雄ねじ部250aを雌ねじ孔260に螺合させて締め付ける。
【0129】
また、収容部34の内周面は、例えば、断面形状が略すり鉢状、略円錐状、略円錐台形状等、少なくとも、開口縁から最奥部に向かって次第に窄まるテーパ状面を含む形状であれば、
図35(b)に示すように開口縁部と底部の間に略鉛直に延びる鉛直面300を含んでもよい。即ち、開口縁が係合部22の嵌入の誘い込みのための傾斜を有し、該傾斜から係合部22の嵌入方向に略平行な鉛直面(第一の面)300、鉛直面300から底部側に向かって徐々に窄まるテーパ面(第二の面)302を有した内周面であってもよい。その場合に係合部22の外周形状は、収容部34の内周形状に沿った形状であってもよい。即ち、係合部22は、収容部34に収容されているとき、鉛直面300に平行に略摺接し得る鉛直面22aと、傾斜面302に平行な傾斜であって傾斜面302に当接し得る傾斜面22bとを含んだ外周面を有してもよい。
【0130】
また、上述した実施形態においては、プレキャスト床版1、1同士が高さ方向にずれていても高さ位置を合わせることができるものとして説明したが、プレキャスト床版1、1同士が高さ方向に所定量だけずれた状態で、床版同士を継手10を用いて固定することも可能である。その場合は、受容部30、30aの内、設定高さが低い方の収容部34における、係合部22を嵌入する深さ方向の奥部にスペーサ(介在部)270を介在させて係合部22を嵌入する。
【0131】
ここで、
図36は高さの異なる受部材30、30a同士の連結を示し、(a)は高さ位置が異なる受部材30、30aを示す断面図、(b)は継手により固定されている受部材30、30aを示す断面図である。スペーサ270は、略円環状を成す座金状の部材であって中央部にボルト250が挿通可能な孔を有する。またスペーサ270は、係合部22の嵌入可能な深さを規制し、最奥部から深さhだけ浅い位置で係合部22を収容部34内に位置させる。即ち、収容部34内でスペーサ270が係合部22に当接し、係合部22の嵌入方向の移動を規制する。
【0132】
具体的には、対向するプレキャスト床版(図示せず)同士の高さ位置を異ならせ、受部材30が受部材30aと比較して
図36(a)に示す長さhの分だけ高い位置に設定する場合、連結部材20の設置前に、受部材30、30a同士の高低差(長さh)に合った厚みのスペーサ270を配してから連結部材20を配する。連結部材20を配する際、架橋部24に挿通している軸部26に締結方向のトルクを印加する。結果、
図36(b)に示すように、押圧体28が受部材30aの下端面に当接し、軸部26は締結方向の回転が不可となる。そして、
図36(c)に示すように係合部22の貫通孔240にボルト250を挿通させ、雄ねじ部250aを雌ねじ孔260に螺合させてボルト250を締結方向に回転させる。
この状態で、更に軸部26に締結方向のトルクを印加して脆弱部310に過負荷を入力することで、
図36(d)に示すように、脆弱部310で軸部26を破断させて、押圧体28ごと雄ねじ部26aを切り離して落下させる。勿論、落下した部分は拾い上げて除去するのが望ましい。また破断後に残った軸部26の一部は、架橋部24から引き抜いて除去してもよい。
【0133】
このように、スペーサ270を配することで、受部材30aに嵌入される係合部22の位置が最奥部よりも長さhだけ浅い位置となり、受部材30、30aを所定の高低差に設定しつつ、架橋部24を受部材30、30aの間で略水平な姿勢で且つ両係合部22が略水平に保持されるように、連結部材20を配設することが出来る。
【0134】
また、スペーサ270を配設する以外の方法によって係合部22が嵌入可能な深さを規制するようにしてもよい。例えば、
図37(a)に示す、深さ方向に変位可能な介在部材280を設けることで係合部22が嵌入可能な深さを規制してもよい。介在部材280は、雌ねじ孔260とボルト250との間に介在する、略円筒形部材である。また、介在部材280には、外周面に雌ねじ孔260に螺合し得る外周雄ねじ部280aが形成され、内周面に雄ねじ部250aを螺合させ得る内周雌ねじ部280bが形成される。
【0135】
介在部材280は、受部材30aに対して相対回転することで、収容部34内に突出し得る。即ち、介在部材280は、外周雄ねじ部280aが雌ねじ孔260に対して螺進し得るので、軸方向に沿って収容部34内に進入可能となる。従って、進行方向に沿った介在部材280の先端部が収容部34内に存するように、介在部材280の位置決めを行うことで係合部22の嵌入可能な深さを規制することができる。例えば、
図37(b)に示すように、対向するプレキャスト床版(図示せず)同士の高さ位置が異なっており、受部材30aが受部材30と比較して長さh´の分だけ高い位置にある場合、連結部材20の設置前に、受部材30、30a同士の高低差(長さh´)に合わせた長さで収容部34内に突出するように介在部材280の位置決めを行う。そして連結部材20を配する。
【0136】
従って、係合部22は、介在部材280に当接することで、嵌入可能な深さが規制される。そのため、スペーサ270を配する場合と同様に受部材30、30aの間に所望の高低差を設定し、架橋部24を受部材30、30aの間で略水平な姿勢で且つ両係合部22が略水平に配置されるように、連結部材20を配設することが出来る。
また、介在部材280は、雌ねじ孔260に対して螺進させることで収容部34内への突出長さを変更することが可能である為、スペーサ270を配設するよりも、受部材30、30a同士の高低差に柔軟に対応可能となる。即ち、スペーサ270の場合は、種々の高低差に対応可能とするために様々な厚みの異なるスペーサを複数用意する必要があるのに対し、介在部材280の場合は、回転数を管理するだけなので、スペーサの場合と比べ高低差への対応が容易となる。勿論スペーサ270を用いる場合には、単位厚を設定すれば、積重ね枚数を変更することで段階的な高低差対応が容易に実現できる。
【0137】
また、上述した各実施形態においては、軸部26が頭部26bを有するものとして説明したが、軸部26は、頭部26bを省略した略棒形状を有するものであってもよい。但し、架橋部24に対して軸方向に係合し得るように外周形状を設定する。具体的には、
図39(a)に示すように軸部430は、一端部に雄ねじ部432を有し、架橋部24は、中央部に雄ねじ部432に螺合する雌ねじ孔440を有するように構成してもよい。
【0138】
また、軸部430は、他端部に雄ねじ部434を有し、雄ねじ部434には別体の雌ねじ部材450が螺合し得、押圧体28が雌ねじ部材450により支持されることで、軸部430に対して遊嵌自在に配される。雌ねじ部材450は、中心部が開口した略円板状部材であり、開口した内周面に雄ねじ部434に螺合する雌ねじ部が形成されている。従って、軸部430に押圧体28を遊嵌させ、雄ねじ部434に雌ねじ部材450を螺合させて軸部430に押圧体28を取り付けるように構成することも可能である。
【0139】
また、雄ねじ部432と雄ねじ部434は互いにねじの向きを逆向きに設定してもよい。例えば、雄ねじ部432及び雌ねじ孔440を右ねじ、一方で雄ねじ部434及び雌ねじ部材450を左ねじとすれば、軸部430を左回転させることで、雌ねじ部材450(及び押圧体28)と架橋部24とが相対的に近接する向きに移動させることができる。
即ち、軸部430が左向きに回転したとき、雌ねじ部材450は、軸部430に対して相対的に締め付け方向(
図39(b)に示す架橋部24等が存する一端側)に進行し、押圧体28は雌ねじ部材450に押されて軸方向に移動する。一方で架橋部24は、軸部430に対して相対的に緩み方向(
図39(b)に示す雌ねじ部450等が存する他端側)に進行する。従って押圧体28と架橋部24とは互いに押圧し合う位置に移動し、第一の実施形態と同様にプレキャスト床版1、1の位置決めを成すことが可能である。
【0140】
なお、上記のように軸部430を配する場合、雌ねじ孔440を設ける代わりに別体の雌ねじ部材460を設け、
図39(c)に示すように、雌ねじ部材460を雄ねじ部432に螺合させて架橋部24の軸部430に対する相対位置を規制してもよい。
【0141】
また、軸部430は、一端側と他端側で異なる向きの雄ねじ部432、434を有するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、右ねじの螺旋溝と左ねじの螺旋溝の二種類の螺旋溝を同一領域上に重複して形成したものであってもよい。なお、このような二種類の螺旋溝が形成された雄ねじの詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。このような二種対の螺旋溝が形成された軸部を用いる場合は、軸部の軸方向全域に螺旋溝を形成することも可能である。
【0142】
各実施形態の継手の受部材の取付対象部材は、プレキャスト床版に限定されるものではない。取付対象部材は、材質、形状に限定がなく、受部材同士を連結部材で連結することで取付対象部材同士を接合することができれば、どのような部材にも適用することができる。取付対象部材の材質としては、例えば、コンクリート、セラミックス、ガラス、金属、合成樹脂、天然樹脂、木材等や或いは各種の複合材に適用することができる。取付対象部材の形状としては、例えば、板状、柱状、ブロック状等の同種のもの同士或いは異なる種類の部材の接合に適用することができる。またプレキャストコンクリート部材一般、家具一般、建材、住宅フレーム材、各種機械等のあらゆる物品に適用することができる。
【符号の説明】
【0143】
1…プレキャスト床版、10,60…継手、20…連結部材、22…係合部、24…架橋部、26…軸部、26a…雄ねじ部、26b…頭部、28…押圧体、28a…短辺部分、28b…長辺部分、30,30a…受部材、32…アンカー部、34…収容部、34a…リップ部分、34b…下端面、36…規制部、38…段部、40a,40b,40c,40d…内周面、50…頭部側凹凸、52…架橋部側凹凸、50a,52a…傾斜面、50b,52b…垂直面、62…凹凸係合部、62a,62b…凹凸、70…付勢部材、80…長尺連結部材、80a…長尺架橋部、82…短尺連結部材、82a…短尺架橋部、86…挿通孔、88…雄ねじピン、88a…雄ねじ部、88b…頭部、100,102…部分体、104…アンカー配設溝、106…結合面、120…蓋部材、122…雄ねじ領域、124…突部、130…雌ねじ領域。