(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016486
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】伸縮性材料の伸張力制御方法
(51)【国際特許分類】
D06C 3/08 20060101AFI20230126BHJP
D06H 3/10 20060101ALI20230126BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
D06C3/08
D06H3/10
B65H37/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120828
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】516331889
【氏名又は名称】モーションリブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下地 広之
(72)【発明者】
【氏名】正岡 良典
(72)【発明者】
【氏名】竹林 昌大
(72)【発明者】
【氏名】大西 公平
(72)【発明者】
【氏名】溝口 貴弘
【テーマコード(参考)】
3B154
3F108
【Fターム(参考)】
3B154AB27
3B154BA31
3B154BA42
3B154BA53
3B154BB77
3B154BC03
3B154BC04
3B154BC21
3B154BC37
3B154CA08
3B154CA25
3B154CA38
3B154DA24
3F108GA09
3F108GB01
3F108HA06
3F108HA12
(57)【要約】
【課題】微小な力で変形しやすい生地などの伸縮性材料を、一定張力で所定位置にセットすることができる伸縮性材料の伸張力制御方法を提供する。
【解決手段】基準位置P1において伸縮性材料Mを固定する第一の固定ステップS10と、伸縮性材料Mの表面を滑らせながら、基準位置P1から離間する方向に張力付加手段4を移動させることで、伸縮性材料Mに伸張力を加える第一の移動ステップS20とを備え、第一の移動ステップS20において、張力付加手段4が移動方向に伸縮性材料Mを引っ張る力を測定し、当該力に基づいて、張力付加手段4が伸縮性材料Mの表面を滑る時の動摩擦力を制御することで、伸縮性材料Mの伸張力を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準位置において伸縮性材料を固定する第一の固定ステップと、
前記伸縮性材料の表面を滑らせながら、前記基準位置から離間する方向に張力付加手段を移動させることで、前記伸縮性材料に伸張力を加える第一の移動ステップとを備え、
前記第一の移動ステップにおいて、
前記張力付加手段が移動方向に前記伸縮性材料を引っ張る力を測定し、当該力に基づいて、前記張力付加手段が前記伸縮性材料の表面を滑る時の動摩擦力を制御することで、
前記伸縮性材料の伸張力を制御する、
ことを特徴とする伸縮性材料の伸張力制御方法。
【請求項2】
前記張力付加手段は、
前記伸縮性材料を狭持する挟持部を備え、
前記挟持部による狭持力を制御することで前記動摩擦力を制御する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の伸縮性材料の伸張力制御方法。
【請求項3】
前記挟持部は、
少なくとも1つの回転アームを備え、
前記回転アームを回転させることにより前記伸縮性材料を挟持し、
前記回転アームの回転トルクを制御することで、前記挟持部による狭持力を制御する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の伸縮性材料の伸張力制御方法。
【請求項4】
前記第一の移動ステップによって、前記張力付加手段が所定の停止位置まで移動されて停止した後、前記第一の移動ステップにおける前記張力付加手段の初期位置から前記停止位置までの区間内に位置する第二の基準位置において、前記伸縮性材料を固定する第二の固定ステップと、
前記伸縮性材料の表面を滑らせながら、前記第二の基準位置から離間する方向に張力付加手段を移動させることで、前記伸縮性材料に伸張力を加える第二の移動ステップとをさらに備える、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の伸縮性材料の伸張力制御方法。
【請求項5】
前記第一の移動ステップの動作完了後に、前記第二の基準位置が固定されるまでの間、前記停止位置まで移動された前記張力付加手段によって、当該停止位置にて前記伸縮性材料を一旦固定し、
前記第二の移動ステップにおいては、
前記第二の固定ステップの動作完了後に、前記張力付加手段による前記伸縮性材料の固定を解除した後、前記伸縮性材料の表面を滑らせながら、前記第二の基準位置から離間する方向に張力付加手段を移動させることで、前記伸縮性材料に伸張力を加える、
ことを特徴とする請求項4に記載の伸縮性材料の伸張力制御方法。
【請求項6】
所定位置に配置された別材料に対して、
前記伸縮性材料の少なくとも一部を重ね合わせ、
前記伸縮性材料の伸張力を制御しつつ前記別材料と接合する接合ステップをさらに備える、
ことを特徴とする、請求項1~請求項5の何れか一項に記載の伸縮性材料の伸張力制御方法。
【請求項7】
前記接合ステップにおいて、
前記伸縮性材料及び前記別材料の少なくとも何れか一方には、他方と対向する面に接着層が形成されており、
前記伸縮性材料と前記別材料とが重ね合わされた所定区間をプレスして圧着することで接合する、
ことを特徴とする、請求項6に記載の伸縮性材料の伸張力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性材料の伸張力制御方法の技術に関し、より詳しくは、裁断された生地などの伸縮性材料を所定の伸張力で所定の位置に配置し、重ね合わせする伸縮性材料の伸張力制御方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、裁断された生地などの伸縮性材料を所定の伸張力で所定の位置に配置し、重ね合わせする伸縮性材料の伸張力制御方法が公知となっている。
【0003】
伸縮性のある生地の伸張力を適切に調整して、生地をシワや折れなど無い状態で任意の位置に配置する場合、人の手により配置が行われることが多かった。
【0004】
また、伸縮性のある生地を吸引ブロワなどの吸引手段によって複数位置で吸着把持し、ロボットなどにより位置決め配置する技術は従来から利用されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生地加工する装置などに生地を配置する場合には、人の手により生地の伸張力が一定になるように適切に伸びや張力を制御し、生地を所定の位置に配置している。
一定張力の状態(シワ、折れ等がない状態)で配置した生地を加工する工程において、カメラ等により生地形状や位置を検出し、それらのデータを活用し、生地へ接着剤を塗布する。また、所定位置に配置された生地を吸着把持し、所定位置に移載することもある。例えば、一定張力の状態を維持しながら加工する工程において、最初に配置された位置から生地を移載し、他の生地と重ね合わせ、接着することがある。
【0007】
しかし、最初の生地配置においては生地の微妙な伸張力の違いやシワなどを人が確認しながら人力により一定の伸張力になるように調整を行っているが、移載した際に伸張力が変化してシワが発生することがあった。また、当該調整動作を機械で行う場合、伸張力の調整が難しく、シワや折れなく、生地を一定張力で配置することは難しかった。
【0008】
そこで、本発明はかかる課題に鑑み、微小な力で変形しやすい生地などの伸縮性材料を、一定張力で所定位置にセットすることができる伸縮性材料の伸張力制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、本発明においては、基準位置において伸縮性材料を固定する第一の固定ステップと、
前記伸縮性材料の表面を滑らせながら、前記基準位置から離間する方向に張力付加手段を移動させることで、前記伸縮性材料に伸張力を加える第一の移動ステップとを備え、
前記第一の移動ステップにおいて、
前記張力付加手段が移動方向に前記伸縮性材料を引っ張る力を測定し、当該力に基づいて、前記張力付加手段が前記伸縮性材料の表面を滑る時の動摩擦力を制御することで、
前記伸縮性材料の伸張力を制御するものである。
【0011】
また、本発明においては、前記張力付加手段は、
前記伸縮性材料を狭持する挟持部を備え、
前記挟持部による狭持力を制御することで前記動摩擦力を制御するものであってもよい。
【0012】
また、本発明においては、前記挟持部は、
少なくとも1つの回転アームを備え、
前記回転アームを回転させることにより前記伸縮性材料を挟持し、
前記回転アームの回転トルクを制御することで、前記挟持部による狭持力を制御するものであってもよい。
【0013】
また、本発明においては、前記第一の移動ステップによって、前記張力付加手段が所定の停止位置まで移動されて停止した後、前記基準位置から前記停止位置までの区間内に位置する第二の基準位置において、前記伸縮性材料を固定する第二の固定ステップと、
前記伸縮性材料の表面を滑らせながら、前記第二の基準位置から離間する方向に張力付加手段を移動させることで、前記伸縮性材料に伸張力を加える第二の移動ステップとをさらに備えるものであってもよい。
【0014】
また、本発明においては、前記第一の移動ステップの動作完了後に、前記停止位置まで移動された前記張力付加手段によって、当該停止位置にて前記伸縮性材料を一旦固定し、
前記第二の移動ステップにおいては、
前記第二の固定ステップの動作完了後に、前記張力付加手段による前記伸縮性材料の固定を解除した後、前記伸縮性材料の表面を滑らせながら、前記第二の基準位置から離間する方向に張力付加手段を移動させることで、前記伸縮性材料に伸張力を加えるものであってもよい。
【0015】
また、本発明においては、所定位置に配置された別材料に対して、
前記伸縮性材料の少なくとも一部を重ね合わせ、
前記伸縮性材料の伸張力を制御しつつ前記別材料と接合する接合ステップをさらに備えるものであってもよい。
【0016】
また、本発明においては、前記接合ステップにおいて、
前記伸縮性材料及び前記別材料の少なくとも何れか一方には、他方と対向する面に接着層が形成されており、
前記伸縮性材料と前記別材料とが重ね合わされた所定区間をプレスして圧着することで接合するものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
本発明においては、張力付加手段が移動方向に生地を引っ張る力に基づいて、伸縮性材料の伸張力を制御することができるので、手作業で微妙な調整をしなくとも、伸縮性材料に一定の伸張力をかけて伸張した状態で保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る伸張力制御装置を示す正面図。
【
図2】本発明の実施形態に係る伸張力制御方法を示すフロー図。
【
図3】本発明の実施形態に係る第一の固定ステップでの伸張力制御装置を示す正面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る第一の移動ステップでの伸張力制御装置を示す正面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る第一の移動ステップでの伸張力制御装置を示す正面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る制御手段を示すブロック図。
【
図7】本発明の実施形態に係る狭持部を有する伸張力制御装置を示す正面図。
【
図8】本発明の実施形態に係る回動機構を備えた狭持部を有する伸張力制御装置を示す正面図。
【
図9】本発明の実施形態に係る上側狭持板を上方へ移動した狭持部を有する伸張力制御装置を示す正面図。
【
図10】本発明の実施形態に係る伸張力制御方法を示すフロー図。
【
図11】本発明の実施形態に係る第二の固定ステップでの伸張力制御装置を示す正面図。
【
図12】本発明の実施形態に係る第二の移動ステップでの伸張力制御装置を示す正面図。
【
図13】本発明の実施形態に係る接合ステップを有する伸張力制御方法を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明の一実施形態にかかる伸張力制御装置1の全体構成について
図1を用いて説明する。
【0021】
伸張力制御装置1は、伸縮性材料Mの伸張力を制御する装置である。伸縮性材料Mは、平面状の伸縮可能な素材であり、例えば、裁断された生地で構成される。また、伸張力とは、伸縮性材料Mを伸張する方向へ変形させる力である。伸張力が働いていない状態では、伸縮性材料Mは復元力によりシワや捩れがある通常の状態に復元される。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る伸張力制御装置1は、伸縮性材料Mを載置するテーブル2と、テーブル2に載置された伸縮性材料Mの一つの箇所をテーブル2に対して移動不可能に固定する固定手段3と、伸縮性材料Mに伸張力を加える張力付加手段4と、を備える。
【0023】
テーブル2は、平面上の台面2aを有しており、伸縮性材料Mを平坦な状態で支持する。テーブル2は、通常の載置式の台面2aを有する構成である。なお、当該構成に限定されるものではなく、例えば、ブロワなどの吸引手段によって伸縮性材料Mを台面2aに吸着する吸着手段を備えた台面2aを有する構成であってもよい。
【0024】
固定手段3は、本実施形態においては、伸縮性材料Mの一つの箇所に当接することによって伸縮性材料Mをテーブル2に対して固定する固定部11と、固定部11を上下方向に摺動させる摺動部12とを備える。本実施形態においては、摺動部12はエアシリンダ12Aにより構成されている。エアシリンダ12Aは、制御手段5に接続されており、摺動部12の昇降動作を制御手段5によって制御可能に構成されている(
図6参照)。
【0025】
固定手段3によってテーブル2に対して移動不能に固定された伸縮性材料Mは、当該箇所を基準として伸張可能となる。そこで、固定手段3によってテーブル2に対して移動不能に固定された位置を基準位置P1と定義する。
【0026】
張力付加手段4は、伸縮性材料Mに伸張力を加える手段である。張力付加手段4は、移動部21を有し、移動部21の作動によって、テーブル2の台面2aに対して平行な方向へ移動可能に構成されている。例えば、移動部21は、リニアモータ21Aによって構成されており、リニアモータ21Aを駆動することにより、基準位置P1から離間する方向もしくは接近する方向へ往復動可能に構成されている。リニアモータ21Aは、制御手段5に接続されており、移動部21の移動を制御手段5によって制御可能に構成されている。
移動部21の移動の制御は、移動部21の移動距離、移動トルク、移動速度などのパラメータを制御することにより行われる。移動部21はリニアモータ21Aで構成されることが好ましいが、これに限定されず、例えば、ボールスクリューナット機構によっても構成されてよい。
【0027】
張力付加手段4は、押圧部22を備える。押圧部22は、伸縮性材料Mに対して上から下方向へ力を加えることで動摩擦力を発生させる部分である。動摩擦力は、動摩擦係数と下方向の力である垂直抗力との積から算出される。押圧部22は、押圧板23と、押圧板23を上下方向へ移動させる上下移動部24と、を有する。上下移動部24は、サーボモータ24Aにより構成されている。サーボモータ24Aは、制御手段5に接続されており、サーボモータ24Aの駆動により押圧部22の上下移動を制御可能に構成されている。上下移動部24の上下移動の制御は、上下移動部24の移動距離、移動トルク、移動速度などのパラメータを制御することにより行われる。
【0028】
押圧部22は、移動部21のリニアモータ21Aの下面に取り付けられており、リニアモータ21Aの移動によってテーブル2の台面2aに対して平行な方向へ移動可能に構成されている。本実施形態においては、移動部21は直線上を往復動可能に構成されており、これにより、押圧部22は、基準位置P1から離間する方向もしくは接近する方向へ往復動可能に構成されている。
【0029】
張力付加手段4は、測定部27を有する(
図6参照)。測定部27は、伸張力を計測する装置である。伸張力は、動摩擦力とほぼ等しい。測定部27は、リニアモータ21Aのトルクを計測するトルクメータ27Aを備える。トルクメータ27Aにより計測された移動用モータ21Bのトルクに基づいて伸張力を算出することができる。なお、本実施形態においては、測定部27は、トルクメータ27Aを備え、トルクメータ27Aを用いて伸張力を算出しているが、これに限定するものではなく、トルクメータ27Aはリニアモータ21Aの負荷の状態を検出できればよく、特に限定されない。また伸長力を直接測定してもよい。
【0030】
次に、固定手段3および張力付加手段4を用いた伸張力制御方法について
図2から
図5を用いて説明する。
【0031】
まず、
図1に示すように、初期状態において、伸縮性材料Mをテーブル2の台面2aの上に載置する。この際、固定手段3は、伸縮性材料Mから離間した状態で位置しており、張力付加手段4は、固定手段3と隣接している。
【0032】
次に、第一の固定ステップS10を行う。第一の固定ステップS10においては、
図3に示すように、固定手段3によって伸縮性材料Mをテーブル2に対して移動不能に固定する。詳細には、制御手段5は、摺動部12のエアシリンダ12Aを駆動させて下方向へ移動させることにより、固定部11で伸縮性材料Mを固定する。伸縮性材料Mが固定手段3によってテーブル2に対して移動不能に固定された位置を基準位置P1と定義する。これにより、伸縮性材料Mは基準位置P1から移動不能に固定される。
【0033】
第一の固定ステップS10の後に、第一の移動ステップS20を行う。第一の移動ステップS20においては、制御手段5は、張力付加手段4を作動させて伸縮性材料に伸張力を付加する。詳細には、
図4に示すように、制御手段5は、上下移動部24の上下移動を制御することにより、伸縮性材料Mは、押圧板23によってテーブル2の台面2aへ押圧される。押圧板23は下方へ押圧することにより、伸縮性材料Mに垂直抗力を与える。
【0034】
第一の移動ステップS20において、
図5に示すように、制御手段5は、移動部21を作動させて、押圧板23を所定の方向へ移動させる。移動部21は、所定距離Q1を移動する。所定距離Q1は、張力付加手段4によって伸張力を与えることが可能な距離である。
押圧板23は、伸縮性材料Mの表面を滑りながら移動する。この際押圧板23と伸縮性材料Mの表面との間に動摩擦力が働き、当該動摩擦力が、伸縮性材料Mを引っ張る力F1とほぼ等しくなる。押圧板23は、テーブル2の台面2aに対して平行な方向へ移動可能に構成されている。
【0035】
第一の移動ステップS20において、制御手段5は、測定部27を用いて、伸縮性材料Mを引っ張る力F1を測定する。本実施形態においては、トルクメータ27Aによって、移動部21にかかるトルクから伸縮性材料Mを引っ張る力F1を測定し、動摩擦力を制御する。
【0036】
上述した様に、トルクメータ27Aによる計測値から動摩擦力を制御することで、伸縮性材料を引っ張る力F1を制御している。また、別の方法として、所定速度における動摩擦力(垂直抗力)の変化に対するトルクメータ27Aによる計測値の変化の関係をあらかじめ制御手段5や外部記憶装置などに記憶させておき、トルクメータ27Aによる計測値から、所望の引っ張る力Fを得られるように上下移動部24の上下移動、すなわち押圧板23の垂直抗力を制御することで、引っ張る力F1を制御することもできる。但し、伸縮性材料を引っ張る力F1の測定方法や、動摩擦力の制御方法については、構成される各機器や制御対象となる伸縮性材料の特性に合わせて適宜決めればよく、特に限定されない。
【0037】
また、
図7に示すように、張力付加手段4の押圧部22の代わりに狭持部31を備える構成とすることも可能である。狭持部31は、上側狭持板32と、上側狭持板32を上下方向へ移動させる上下移動部33と、下側から伸縮性材料Mを支える下側狭持板34と、を有する。上下移動部33は、サーボモータ33Aにより構成されている。サーボモータ33Aは、制御手段5に接続されており、サーボモータ33Aの駆動により上下移動を制御可能に構成されている。下側挟持板34は台面2aより少し上に離れた状態で配置されている。
【0038】
狭持部31は、移動部21のリニアモータ21Aの下面に取り付けられており、リニアモータ21Aの移動によってテーブル2の台面2aに対して平行な方向へ移動可能に構成されている。本実施形態においては、移動部21は直線上を往復動可能に構成されており、これにより、狭持部31は、基準位置P1から離間する方向もしくは接近する方向へ往復動可能に構成されている。狭持部31の上側狭持板32と下側狭持板34との間の伸縮性材料Mを狭持しながら伸縮性材料Mを引っ張ることができるので、伸縮性材料Mを引っ張る力F1を一定にし易い。
【0039】
また、
図8および
図9に示すように、狭持部31の上下移動部33をサーボモータ33Cと回転アーム33Dとで構成された回動機構33Bで構成することも可能である。サーボモータ33Cは上下方向と直交するように延びる回動軸33Caを有する。回転アーム33Dは回動軸33Caを軸心として上下方向へ回動可能に構成されており、その先端に上側狭持板32を接続している。
【0040】
狭持部31は、上側狭持板32と下側狭持板34で伸縮性材料Mを狭持するように構成されており、回動機構33Bによって回転アーム33Dの回動トルクを制御することで上側狭持板32の回動を制御可能に構成されている。このように構成することにより、回転アーム33Dをサーボモータ33Cで回転させることで細かい力の制御を行うことができるので、伸縮性材料Mを引っ張る力F1を制御する精度を向上させることができる。
上述の様に、トルクメータ27Aによる計測値から動摩擦力を制御することで、伸縮性材料を引っ張る力F1を制御している。また、別の方法として、所定速度における動摩擦力(垂直抗力)の変化に対するトルクメータ27Aによる計測値の変化の関係をあらかじめ制御手段5や外部記憶装置などに記憶させておき、トルクメータ27Aによる計測値から、所望の引っ張る力Fを得るように上下移動部24の上下移動、すなわち押圧板23の垂直抗力を制御することで、引っ張る力F1を制御することもできる。
【0041】
また、
図10から
図12に示すように、固定手段3および張力付加手段4を用いた伸張力制御方法において、第一の移動ステップS20の後に、第二の固定ステップS30および第二の移動ステップS40を設ける方法もある。
【0042】
伸張力制御装置1は、第二固定手段6をさらに備える。第二固定手段6は、本実施形態においては、伸縮性材料Mの一つの箇所に当接することによって伸縮性材料Mをテーブル2に対して固定する固定部41と、固定部41を上下方向に摺動させる摺動部42とを備える。本実施形態においては、摺動部42はエアシリンダ42Aにより構成されている。エアシリンダ42Aは、制御手段5に接続されており、摺動部42の昇降動作を制御手段5によって制御可能に構成されている。
【0043】
第二固定手段6によってテーブル2に対して移動不能に固定された伸縮性材料Mは、当該箇所を基準として伸張可能となる。第二固定手段6で固定する位置は、基準位置P1とは異なる位置である。そこで、第二固定手段6によってテーブル2に対して移動不能に固定された位置を第二の基準位置P2と定義する。
【0044】
第一の移動ステップS20において、張力付加手段4が所定距離Q1を移動して停止位置R1に停止すると、第二の固定ステップS30を行う。第二の固定ステップS30においては、
図11に示すように、第二固定手段6を用いて第一の移動ステップS20における押圧部22の初期位置から所定距離Q1までの区間内に位置する伸縮性材料Mの第二の基準位置P2を固定する。第二の基準位置P2は、第一の移動ステップS20における押圧部22の初期位置から所定距離Q1までの区間内であれば任意の位置でよいが、本実施形態においては、基準位置P1から所定距離Q1だけ離れた位置の近傍にあるのがよい。
【0045】
このように構成することにより、基準位置P1から第二の基準位置P2までの間の伸張力を一定に保つことができる。
【0046】
第二の固定ステップS30が終了すると、第二の移動ステップS40を行う。第二の移動ステップS40においては、
図12に示すように、張力付加手段4を第二の固定ステップS30で固定した第二の基準位置P2から離間する方向に伸縮性材料Mの表面を滑らせながら移動する。詳細には、制御手段5が上下移動部24の上下移動を制御することにより、伸縮性材料Mは押圧板23によってテーブル2の台面2aへ押圧される。押圧板23は下方へ押圧することにより、伸縮性材料Mに垂直抗力を与える。
【0047】
第二の移動ステップS40において、制御手段5は、移動部21を作動させて、押圧板23を所定の方向へ移動させて、第二の停止位置R2に停止する。移動部21は、第二の所定距離Q2を移動する。第二の所定距離Q2は、張力付加手段4によって伸張力を与えることが可能な距離である。所定距離Q1と第二の所定距離Q2は同一の距離であってもよい。
押圧板23は、伸縮性材料Mの表面を滑りながら移動する。この際押圧板23と伸縮性材料Mの表面との間に動摩擦力が働き、当該動摩擦力が、伸縮性材料Mを引っ張る力F1とほぼ等しくなる。押圧板23は、テーブル2の台面2aに対して平行な方向へ移動可能に構成されている。
【0048】
第二の移動ステップS40において、制御手段5は、測定部27を用いて、伸縮性材料Mを引っ張る力F1を測定する。本実施形態においては、トルクメータ27Aによって、移動部21にかかるトルクから、伸縮性材料を引っ張る力F1を測定し、動摩擦力を制御する。
【0049】
このように構成することにより、トルクメータ27Aによる計測値から動摩擦力を制御し、伸縮性材料を引っ張る力F1を制御している。また、別の方法として、所定速度における動摩擦力(垂直抗力)の変化に対するトルクメータ27Aによる計測値の変化の関係をあらかじめ制御手段5や外部記憶装置などに記憶させておき、トルクメータ27Aによる計測値から、所望の引っ張る力Fを得るように上下移動部24の上下移動、すなわち押圧板23の垂直抗力を制御することで、引っ張る力F1を制御することもできる。
【0050】
また、第一の移動ステップS20の動作完了後に、第二の基準位置P2が固定されるまで停止位置R1まで移動された張力付加手段4によって、停止位置R1にて伸縮性材料Mを一旦固定しても良い。これにより、第一の移動ステップS20完了から第二の固定ステップS30が完了までの間の伸縮性材料Mの伸張力はより安定する。
【0051】
上述では、第二の固定ステップS30では第二固定手段6により、第二の基準位置P2を固定したが、第二固定手段を設けることなく、固定手段3の固定を解除し、第二の基準位置P2まで移動させて固定してもよく、各基準位置における固定手段の構成については限定されない。
【0052】
第二の固定ステップS30の動作完了後に、第二の移動ステップS40において、張力付加手段4による伸縮性材料Mの固定を解除した後、伸縮性材料Mの表面を滑らせながら、第二の基準位置P2から離間する方向に張力付加手段4を移動させることで、伸縮性材料Mに伸張力を加える。
【0053】
第二の移動ステップS40において、制御手段5は、測定部27を用いて、伸縮性材料Mを引っ張る力F1を測定する。本実施形態においては、トルクメータ27Aによって、移動部21にかかるトルクから、伸縮性材料を引っ張る力F1を測定し、動摩擦力を制御する。第二の移動ステップS40は第一の移動ステップS20と同様の制御を行う為、詳細な説明は省略する。
【0054】
便宜上、各図において、第一の移動ステップS20の移動部21の移動方向1と、第二の移動ステップS40の移動部21の移動方向2は同一方向(同一直線上)になっているが、第二の移動ステップS40の移動方向2は、移動方向1と交差する方向に移動するようにしてもよい。例えば、伸張力制御装置1をXYロボット等により制御することで、移動方向1と交差する方向に移動することが可能となる。また、上述では第一の移動ステップS20と第二の移動ステップS40は伸縮性材料Mの伸張力を連続的に制御する説明を行ったが、非連続的に伸張力を制御してもよく、伸縮性材料Mの形状や、伸張力を制御した位置に合わせて、移動量、移動方向、制御位置を決めればよく、各ステップの制御方法については特に限定されない。
【0055】
また所定位置に配置された別材料に対して伸縮性材料Mの少なくとも一部を重ね合わせて、伸縮性材料と前記別材料とを接合する接合ステップS110をさらに備えてもよい。
ステップS110は、
図13に示すように、第一の移動ステップS20の後に行われるのが好ましい。
接合ステップS110において、伸張されてシワ等をのばした伸縮性材料Mの少なくとも一部は、別材料に対して重ね合わされる。伸張された状態の伸縮性材料Mをテーブル2に載置した状態で、別材料を重ね合わせて載置する。なお、別材料は、伸縮性を有しない材料の他、異なる伸縮性のある材料、もしくは伸縮性材料と同一の材料であってもよい。
【0056】
別材料との接合において、伸縮性材料M及び別材料の少なくとも何れか一方には、他方と対向する面に接着層が形成されている。特に限定されないが、接着層は、例えば、ホットメルト接着剤で構成されており、熱プレスによって伸縮性材料および別の材料を接合する。接着層は、各材料の全面に形成されていてもよいし、接着部分のみに形成されていてもよい。接着剤に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、湿気硬化型ホットメルト樹脂、反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。中でも湿気硬化型ホットメルト樹脂は、接着強度が高く、しかも短時間での接着が可能な点で特に好ましい。
【0057】
また、
図13に示すように、第二の移動ステップS40後に第二の接合ステップS120が行われてもよい。第二の移動ステップS40において、移動部21を作動させて、押圧板23を所定の方向へ移動させて、第二の停止位置R2に停止させた後、第二の所定距離Q2について接合する。接合ステップS110及び第二の接合ステップS120を行う場合、張力付加手段4により、伸縮性材料Mを引っ張る力F1が変わらないように、伸縮性材料Mを固定、狭持した状態でプレスをすることが好ましい。このように部分的(伸張力を制御する単位長さ(所定距離Q1、Q2)又はその単位長さよりも短い長さ)に接合することにより、伸縮性材料Mが伸張した状態で別の材料と重ね合わせることができる。単位長さの接合については、1回でプレスしてもよく、複数回に分けてもよく、特に限定されない。
【0058】
なお、接合ステップS110を行わずに、第二の接合ステップS120のみを行ってもよい。このように構成することにより、プレス工程を一度で完成することができ、工程を細かく分けるよりも時間を短縮することができる。ここでは、簡易的に第二の接合ステップS120までしか記載していないが、接合ステップの回数に制限はなく、接合する範囲に合わせて適宜設定すればよく、限定されない。同様に、接合する範囲の伸張力を全て制御した後に、接合ステップを1回だけ行ってもよい。また、接合する範囲を任意のエリアに分け、そのエリア単位で接合ステップを行ってもよい。
【0059】
以上のように、基準位置P1において伸縮性材料Mを固定する第一の固定ステップS10と、伸縮性材料Mの表面を滑らせながら、基準位置P1から離間する方向に張力付加手段4を移動させることで、伸縮性材料Mに伸張力を加える第一の移動ステップS20とを備え、第一の移動ステップS20において、張力付加手段4が移動方向に伸縮性材料Mを引っ張る力を測定し、当該力に基づいて、張力付加手段4が伸縮性材料Mの表面を滑る時の動摩擦力を制御することで、伸縮性材料Mの伸張力を制御するものである。
このように構成することにより、張力付加手段4が移動方向に生地を引っ張る力F1に基づいて、伸縮性材料Mの伸張力を制御することができるので、手作業で微妙な調整をしなくとも、伸縮性材料Mに一定の伸張力をかけて伸張した状態で保つことができるのである。
【0060】
また、張力付加手段4は、伸縮性材料Mを狭持する挟持部31を備え、挟持部31による狭持力を制御することで動摩擦力を制御するものであってもよい。
このように構成することにより、狭持部31の上側狭持板32と下側狭持板34との間の伸縮性材料Mを狭持しながら伸縮性材料Mを引っ張ることができるので、伸縮性材料Mを引っ張る力F1を一定とし易くなる。
【0061】
また、挟持部31は、少なくとも1つの回転アーム33Dを備え、回転アーム33Dを回転させることにより伸縮性材料Mを挟持し、回転アーム33Dの回転トルクを制御することで、挟持部31による狭持力を制御するであってもよい。
このように構成することにより、回転アーム33Dをサーボモータ33Cで回転させることで細かい力の制御を行うことができるので、伸縮性材料Mを引っ張る力F1を制御しやすくなる。
【0062】
また、第一の移動ステップS20によって、張力付加手段4が所定の停止位置まで移動されて停止した後、第一の移動ステップS20における押圧部22の初期位置から停止位置R1までの区間内に位置する第二の基準位置P2において、伸縮性材料Mを固定する第二の固定ステップS30と、伸縮性材料Mの表面を滑らせながら、第二の基準位置P2から離間する方向に張力付加手段4を移動させることで、伸縮性材料Mに伸張力を加える第二の移動ステップS40とをさらに備えるであってもよい。
このように構成することにより、第二の固定ステップS30において、伸縮性材料Mを第二の基準位置P2に固定することで、基準位置P1から第二の基準位置P2までの間の伸張力を一定に保つことができ、さらに、第二の移動ステップS40において、張力付加手段4によって伸張力を与えながら第二の所定距離Q2を移動させることができる。上述では、第一、第二の各ステップの動作について説明したが、第二のステップ以降については、伸縮性材料Mにおける伸張力を制御したい範囲に合わせて、各ステップを繰り返し(第三のステップ、第四のステップ~、第nのステップ)伸縮性材料Mの任意の範囲の伸張力を制御することができる。
【0063】
また、第一の移動ステップS20の動作完了後に、第二の基準位置P2が固定されるまでの間、停止位置R1まで移動された張力付加手段4によって、停止位置R1にて伸縮性材料M2を一旦固定し、第二の移動ステップS40においては、第二の固定ステップS30の動作完了後に、張力付加手段4による伸縮性材料Mの固定を解除した後、伸縮性材料Mの表面を滑らせながら、第二の基準位置P2から離間する方向に張力付加手段を移動させることで、伸縮性材料Mに伸張力を加えるものであってもよい。これにより、第一の移動ステップS20完了から第二の固定ステップS30が完了までの間の伸縮性材料Mの伸張力はより安定する。第二の固定ステップS30については、第二固定手段6で第二の基準位置P2を固定すると説明したが、第一の移動ステップS20の動作が完了後、固定手段3の固定を解除し、第二の基準位置P2まで移動させて固定してもよく、各基準位置における固定方法については限定されない。但し、所定区間の伸張力を制御した後に、伸張力を制御した所定区間の伸張力が変化しないように伸縮性材料Mが動かないようにする方が好ましい。
【0064】
また、所定位置に配置された別材料に対して、伸縮性材料Mの少なくとも一部を重ね合わせ、伸縮性材料Mの伸張力を制御しつつ別材料と接合する接合ステップS110をさらに備えるものであってもよい。
このように構成することにより、伸縮性材料Mを一部ごとに接合することにより、伸縮性材料Mが伸張した状態で別の材料と重ね合わせることができる。
【0065】
また、接合ステップS110において、伸縮性材料M及び別材料の少なくとも何れか一方には、他方と対向する面に接着層が形成されており、伸縮性材料Mと別材料とが重ね合わされた所定区間をプレスして圧着することで接合するものであってもよい。
このように構成することにより、接着層が設けられているため、伸縮性材料Mと別材料が重ね合わされた所定区間をプレスするだけで、容易に所望の箇所のみ接合することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 伸張力制御装置
2 テーブル
2a 台面
3 固定手段
4 張力付加手段
5 制御手段
6 第二固定手段
11 固定部
12 摺動部
12A エアシリンダ
21 移動部
21A リニアモータ
22 押圧部
23 押圧板
24 上下移動部
24A サーボモータ
27 測定部
27A トルクメータ
31 狭持部
31 上側狭持板
33 上下移動部
33A サーボモータ
33B 回動機構
33C サーボモータ
33Ca 回動軸
33D 回転アーム
34 下側狭持板
41 固定部
42 摺動部
42A エアシリンダ