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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164862
(43)【公開日】2023-11-14
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/193 20210101AFI20231107BHJP
   H01M 50/126 20210101ALI20231107BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20231107BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20231107BHJP
   H01M 50/197 20210101ALI20231107BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20231107BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20231107BHJP
【FI】
H01M50/193
H01M50/126
H01M50/119
H01M50/121
H01M50/197
H01G11/78
H01G11/80
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135404
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2022183321の分割
【原出願日】2016-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】吉野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】唐津 誠
(57)【要約】
【課題】成形時に良好なすべり性を確保できて成形性に優れると共に、表面に白粉が表出し難い、蓄電デバイス用外装材を提供する。
【解決手段】外側層としての耐熱性樹脂層2と、内側層としてのシーラント層3と、これら両層間に配置された金属箔層4と、を含み、シーラント層3は、1層ないし複数層からなり、シーラント層の最内層7が、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体と、粗面化材と、滑剤と、を含有し、粗面化材は、熱可塑性樹脂を含有する粒子からなり、最内層7の表面7aの中心線平均粗さRaが0.05μm~1μmである構成とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としてのシーラント層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む蓄電デバイス用外装材において、
前記シーラント層は、1層ないし複数層からなり、前記シーラント層の最内層が、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体と、粗面化材と、滑剤と、を含有し、
前記粗面化材は、熱可塑性樹脂を含有する粒子からなり、
共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有する前記ランダム共重合体の溶融密度と、前記粗面化材の溶融密度との差は、0.3g/cm3以下であることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記粗面化材を構成する熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂である請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記シーラント層の最内層における前記粗面化材の含有率が1質量%~30質量%であり、前記最内層における前記滑剤の含有率が0ppmを超えて1000ppm以下である請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記最内層の表面の中心線平均粗さRaが0.05μm~1μmである請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス外装材。
【請求項5】
前記シーラント層は、複数層からなる請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】
前記シーラント層は、前記最内層と、該最内層における前記金属箔層側の面に積層された第1中間層と、を含み、
前記第1中間層は、エラストマー変性オレフィン系樹脂を含有し、
前記エラストマー変性オレフィン系樹脂は、エラストマー変性ホモポリプロピレンまたは/およびエラストマー変性ランダム共重合体からなり、
前記エラストマー変性ランダム共重合体は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体のエラストマー変性体である請求項5に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項7】
前記シーラント層は、前記最内層と、該最内層における前記金属箔層側の面に積層された第1中間層と、該第1中間層における前記金属箔層側の面に積層された第2中間層と、を含み、
前記第1中間層は、エラストマー変性オレフィン系樹脂を含有し、
前記エラストマー変性オレフィン系樹脂は、エラストマー変性ホモポリプロピレンまたは/およびエラストマー変性ランダム共重合体からなり、
前記エラストマー変性ランダム共重合体は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体のエラストマー変性体であり、
前記第2中間層は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体を含有してなる請求項5に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材の成形体からなる蓄電デバイス用外装ケース。
【請求項9】
蓄電デバイス本体部と、
請求項1~7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材及び/又は請求項8に記載の蓄電デバイス用外装ケースからなる外装部材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装部材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン、タブレット等の携帯機器に使用される電池やコンデンサ、ハイブリッド自動車、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に使用される電池やコンデンサ等の蓄電デバイス用の外装材および該外装材で外装された蓄電デバイスに関する。
【0002】
なお、本願の特許請求の範囲及び明細書において、「中心線平均粗さ(Ra)」の語は、JIS B0601-2001に準拠して測定される中心線平均粗さ(Ra)を意味する。
【0003】
また、本願の特許請求の範囲及び明細書において、「密度」の語は、JIS K7112-1999 D法(密度こうばい管法)に準拠して測定される密度を意味する。
【0004】
また、本願の特許請求の範囲及び明細書において、「メルトフローレート(MFR)」の語は、JIS K7210-1-2014に準拠して測定されるメルトフローレートを意味する。
【0005】
また、本願の明細書において、「スウェル(パーセント)」の語は、JIS K7199-1999で規定されるキャピラリレオメターA法による室温ダイスウェルパーセント(%)を意味する。
【背景技術】
【0006】
近年、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル電気機器の薄型化、軽量化に伴い、これらに搭載されるリチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気2重層コンデンサ等の蓄電デバイスの外装材としては、従来の金属缶に代えて、耐熱性樹脂層/接着剤層/金属箔層/接着剤層/熱可塑性樹脂層(内側シーラント層)からなる積層体が用いられている。また、電気自動車等の電源、蓄電用途の大型電源、キャパシタ等も上記構成の積層体(外装材)で外装されることも増えてきている。前記積層体に対して張り出し成形や深絞り成形が行われることによって、略直方体形状等の立体形状に成形される。このような立体形状に成形することにより、蓄電デバイス本体部を収容するための収容空間を確保することができる。
【0007】
このような立体形状にピンホールや破断等なく良好状態に成形するには内側シーラント層の表面の滑り性を向上させることが求められる。内側シーラント層の表面の滑り性を向上させて良好な成形性を確保するものとして、外装樹脂フィルム、第1の接着剤層、化成処理アルミニウム箔、第2の接着剤層、シーラントフィルムを順次積層した積層材であって、前記シーラントフィルムはα-オレフィンの含有量が2~10重量%であるプロピレンとα-オレフィンのランダム共重合体から成り、これに滑剤を1000~5000ppm含有させたものである二次電池容器用積層材が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-288865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来技術では、外装材(積層材)の生産工程での加温保持時間や保管期間によって表面滑剤析出量のコントロールが難しく、成形時のすべり性は良いものの、滑剤が表面に過度に析出するために、外装材の成形時に成形金型の成形面に滑剤が付着堆積していって白粉(滑剤による白粉)が発生する。このような白粉が成形面に付着堆積した状態になると、良好な成形を行い難くなることから、白粉が付着堆積する毎に清掃して白粉の除去を行う必要が生じるが、このような白粉の清掃除去を行うことで外装材の生産性が低下するという問題があった。
【0010】
勿論、滑剤の添加量(滑剤含有率)を低減すれば、白粉の付着堆積を抑制することが可能になるが、この場合には表面滑剤析出量が不足して成形性が悪くなるという問題を生じる。このように従来では、優れた成形性と、外装材表面での白粉表出の抑制とを両立させることが難しかった。
【0011】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、成形時に良好なすべり性を確保できて成形性に優れると共に、表面に白粉が表出し難い、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装ケースおよび蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0013】
[1]外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としてのシーラント層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む蓄電デバイス用外装材において、
前記シーラント層は、1層ないし複数層からなり、前記シーラント層の最内層が、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体と、粗面化材と、滑剤と、を含有し、
前記粗面化材は、熱可塑性樹脂を含有する粒子からなり、
前記最内層の表面の中心線平均粗さRaが0.05μm~1μmであることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0014】
[2]前記粗面化材を構成する熱可塑性樹脂が、高密度ポリエチレン樹脂である前項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0015】
[3]前記高密度ポリエチレン樹脂の密度が0.935g/cm3~0.965g/cm3であり、前記高密度ポリエチレン樹脂の190℃でのメルトフローレートが0.01g/10分~2g/10分の範囲である前項2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0016】
[4]前記シーラント層の最内層における前記粗面化材の含有率が1質量%~30質量%であり、前記最内層における前記滑剤の含有率が0ppmを超えて1000ppm以下である前項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0017】
[5]前記滑剤は、脂肪酸アマイド、ワックス、シリコーン及びパラフィンからなる群より選ばれる1種または2種以上の滑剤である前項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0018】
[6]前記シーラント層は、複数層からなる前項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0019】
[7]前記シーラント層は、前記最内層と、該最内層における前記金属箔層側の面に積層された第1中間層と、を含み、
前記第1中間層は、エラストマー変性オレフィン系樹脂を含有し、
前記エラストマー変性オレフィン系樹脂は、エラストマー変性ホモポリプロピレンまたは/およびエラストマー変性ランダム共重合体からなり、
前記エラストマー変性ランダム共重合体は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体のエラストマー変性体である前項6に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0020】
[8]前記シーラント層は、前記最内層と、該最内層における前記金属箔層側の面に積層された第1中間層と、該第1中間層における前記金属箔層側の面に積層された第2中間層と、を含み、
前記第1中間層は、エラストマー変性オレフィン系樹脂を含有し、
前記エラストマー変性オレフィン系樹脂は、エラストマー変性ホモポリプロピレンまたは/およびエラストマー変性ランダム共重合体からなり、
前記エラストマー変性ランダム共重合体は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体のエラストマー変性体であり、
前記第2中間層は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体を含有してなる前項6に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0021】
[9]前項1~8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材の成形体からなる蓄電デバイス用外装ケース。
【0022】
[10]蓄電デバイス本体部と、
前項1~8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材及び/又は前項9に記載の蓄電デバイス用外装ケースからなる外装部材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装部材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0023】
[1]の発明では、シーラント層の最内層が、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体と、粗面化材と、滑剤と、を含有し、粗面化材は、熱可塑性樹脂を含有する粒子からなり、最内層の表面の中心線平均粗さRaが0.05μm~1μmであるから、成形時に良好なすべり性を確保できて成形性に優れる。更に、滑剤とともに粗面化材を併用することにより(粗面化材の併用により従来よりも滑剤使用量を少なくできることにより)最内層の表面の中心線平均粗さRaを0.05μm~1μmに設定しているので、外装材のシーラント層の最内層の表面7aに白粉が表出し難い。このように白粉が表出し難いので、外装材の生産性を向上させることができると共に、シーラント層同士をヒートシールした後の該ヒートシール部において十分な密封性を確保できる。また、このように粗面化材の併用により従来よりも滑剤使用量を少なくできることにより、例えばエージング工程を行う場合において滑剤のブリードアウト量の調整を行う必要がなくなり、エージング工程を不要にしたり、或いはエージング工程を短時間で済ませることが可能になるので、外装材の生産性を一層向上させることができる。また、粗面化材は、熱可塑性樹脂を含有する粒子からなるので、最内層用樹脂の加工時にフィルターが目詰まりすることを低減でき、生産性をより一層向上させることができる。更に、粗面化材は、熱可塑性樹脂を含有する粒子からなるので、シリカ粒子のように外から加圧した際に内部にめり込んだり、脱落するようなことがない。
【0024】
[2]の発明では、粗面化材を構成する熱可塑性樹脂が、高密度ポリエチレン樹脂であるので、該高密度ポリエチレン樹脂が前記ランダム共重合体との相溶性が適度に低いことにより効果的に粗面化することができて滑り性をより向上させることができる。
【0025】
[3]の発明では、成形時の滑り性をより向上させることができて成形性をさらに向上させることができる。
【0026】
[4]の発明では、最内層における粗面化材の含有率を1質量%~30質量%に設定することで、最内層における滑剤の含有率が1000ppm以下であっても優れた成形性を確保できるものとなる。また、最内層における滑剤の含有率が0ppmを超えて1000ppm以下であるから、外装材のシーラント層の最内層の表面に白粉がさらに表出し難いものとなる。更に、最内層における滑剤の含有率が0ppmを超えて1000ppm以下であるから、保管時においても外装材の最内層の表面に存在する滑剤量を安定化させることができて(例えば長期の保管による最内層の表面に存在する滑剤量の変動を抑制できて)、安定して優れた成形性を確保できる。
【0027】
[5]の発明では、上記滑剤として、脂肪酸アマイド、ワックス、シリコーン及びパラフィンからなる群より選ばれる1種または2種以上の滑剤を使用しているから、成形時にさらに良好なすべり性を確保できて更に優れた成形性を確保できる。
【0028】
[6]の発明では、シーラント層は、複数層からなる構成であり、前記最内層における金属箔層側の面に1ないし複数層を積層した構成とすることで、例えば、シーラント層と金属箔層との接着力をさらに向上させることが可能となる。
【0029】
[7]の発明では、シーラント層は、最内層と、該最内層における金属箔層側の面に積層された上記特定構成の第1中間層と、を含む構成であるから、成形時におけるシーラント層の白化を十分に抑制できると共に、ヒートシールした際の密封性を十分に確保できる。
【0030】
[8]の発明では、シーラント層は、最内層と、該最内層における金属箔層側の面に積層された上記特定構成の第1中間層と、該第1中間層における金属箔層側の面に積層された上記特定構成の第2中間層と、を含む構成であるから、[7]の発明による上記効果を享受できることに加えて、シーラント層と金属箔層との接着力をさらに向上させることができると共に十分な絶縁性を確保できる。
【0031】
[9]の発明では、良好な成形がなされると共に外装ケースの表面(シーラント層の最内層の表面)に白粉が表出し難い蓄電デバイス用外装ケースを提供できる。
【0032】
[10]の発明では、良好な成形がなされると共に表面(シーラント層の最内層の表面)に白粉が表出し難い蓄電デバイス用外装材及び/又は外装ケースで外装された蓄電デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る蓄電デバイス用外装材の第1実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る蓄電デバイス用外装材の第2実施形態を示す断面図である。
図3】本発明に係る蓄電デバイス用外装材の第3実施形態を示す断面図である。
図4】本発明に係る蓄電デバイスの一実施形態を示す断面図である。
図5図4の蓄電デバイスを構成する外装材(平面状のもの)、蓄電デバイス本体部及び外装ケース(立体形状に成形された成形体)をヒートシールする前の分離した状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1は、外側層としての耐熱性樹脂層2と、内側層としてのシーラント層3と、これら両層間に配置された金属箔層4と、を含み、前記シーラント層3は、1層ないし複数層からなり、前記シーラント層3の最内層7が、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体と、粗面化材と、滑剤と、を含有し、前記粗面化材は、熱可塑性樹脂を含有する粒子からなり、前記最内層7の表面7aの中心線平均粗さRaが0.05μm~1μmである。
【0035】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1について3つの実施形態をそれぞれ図1~3に示す。これら3つの実施形態は、代表的な実施形態を示したものに過ぎず、特にこのような構成に限定されるものではない。
【0036】
図1~3に示す蓄電デバイス用外装材1は、いずれも、金属箔層4の一方の面(上面)に第2接着剤層(外側接着剤層)5を介して耐熱性樹脂層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面(下面)に第1接着剤層(内側接着剤層)6を介してシーラント層(内側層)3が積層一体化された構成である。
【0037】
そして、図1に示す蓄電デバイス用外装材1では、前記シーラント層(内側層)3が、前記最内層7と、該最内層7における前記金属箔層4側の面に積層された第1中間層8とからなる。即ち、前記金属箔層4の他方の面(下面)に第1接着剤層(内側接着剤層)6を介して前記第1中間層8が積層され、該第1中間層8の表面(下面)に前記最内層7が積層されている。前記最内層7が外装材1の内側の表面に露出している(図1参照)。
【0038】
また、図2に示す蓄電デバイス用外装材1では、前記シーラント層(内側層)3が、前記最内層7と、該最内層7における前記金属箔層4側の面に積層された第1中間層8と、該第1中間層8における前記金属箔層4側の面に積層された第2中間層9とからなる。即ち、前記金属箔層4の他方の面(下面)に第1接着剤層(内側接着剤層)6を介して前記第2中間層9が積層され、該第2中間層9の表面(下面)に前記第1中間層8が積層され、該第1中間層8の表面(下面)に前記最内層7が積層されている。前記最内層7が外装材1の内側の表面に露出している(図2参照)。
【0039】
また、図3に示す蓄電デバイス用外装材1では、前記シーラント層(内側層)3が前記最内層7からなる。即ち、前記金属箔層4の他方の面(下面)に第1接着剤層(内側接着剤層)6を介して、前記最内層7からなるシーラント層3が積層されている。前記最内層7が外装材1の内側の表面に露出している(図3参照)。
【0040】
本発明において、前記シーラント層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液等に対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、外装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0041】
本発明では、前記シーラント層3の最内層7は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体と、粗面化材と、滑剤と、を含有する構成である。
【0042】
前記ランダム共重合体は、共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するランダム共重合体である。前記ランダム共重合体に関して、前記「プロピレンを除く他の共重合成分」としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4メチル-1-ペンテン等のオレフィン成分の他、ブタジエン等が挙げられる。
【0043】
前記ランダム共重合体(共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体)の230℃でのメルトフローレート(MFR)が、1g/10分~10g/10分の範囲であるのが好ましい。MFRが1g/10分~10g/10分の範囲である前記ランダム共重合体を用いることで、粗面化材を微細にかつ均一に分散させることができるし、また蓄電デバイス本体を外装材内に密封する際の密封性が向上し十分なヒートシール強度が得られると共に、ヒートシール後のシーラント層の厚みの低減を抑制できて絶縁性をより向上させることができる。前記ランダム共重合体として、エチレン-プロピレンランダム共重合体を用いる場合において該ランダム共重合体におけるエチレン含有率は3質量%~7質量%であるのが好ましく、この場合には200℃程度の比較的低いヒートシール温度でヒートシールを行っても高いヒートシール強度を得ることができる。また、前記ランダム共重合体の融点は140℃~155℃の範囲であるのが好ましい。
【0044】
前記粗面化材としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂含有ペレット、熱可塑性樹脂含有パウダー等が使用される。これらの中でも、分散性の点で、熱可塑性樹脂含有パウダーが好適である。前記粗面化材を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-オレフィン(エチレンを除くオレフィン)共重合樹脂、エチレン-ビニルエステル共重合樹脂、ポリスチレン系樹脂等が挙げられる。中でも、前記粗面化材としては、高密度ポリエチレン樹脂を含有してなる粗面化材を用いるのが好ましく、この場合にはヒートシール性を損なうことなく、シーラント層の最内層7の表面7aを効果的に粗面化できて滑り性をより向上させることができる。
【0045】
前記最内層7を構成する前記ランダム共重合体のマトリックス中に該マトリックスに対して相溶性が低い前記粗面化材粒子が分散された状態で前記最内層7の表面7aに前記粗面化材粒子が一部露出(突出)した状態になっていることにより表面7aに凹凸が形成される(表面が粗面化される)。例えば、前記ランダム共重合体のペレットまたはパウダーに、粗面化材としての熱可塑性樹脂ペレットまたは熱可塑性樹脂パウダーを混合し、この混合物を押出機等で溶融混練して微細に分散させた後、冷却固化することによって前記最内層7の表面7aに凹凸が形成されたもの(表面が粗面化されたもの)が得られる。
【0046】
前記粗面化材の分散状態での平均粒径は、0.05μm~10μmの範囲であるのが好ましく、この場合には滑り性をさらに向上させることができる。
【0047】
前記粗面化材を構成する高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)の密度は、0.935g/cm3~0.965g/cm3の範囲であるのが好ましい。このような密度範囲である場合には、滑り性をより向上させることができて成形性をさらに向上させることができる。中でも、前記粗面化材を構成する高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)の密度は、0.945g/cm3~0.960g/cm3の範囲であるのがより好ましい。
【0048】
前記高密度ポリエチレン樹脂の密度は、コモノマー(共重合成分)の含有率を変えることで調整できる。このようなコモノマーとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等のエチレン以外の不飽和オレフィンを挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。前記コモノマーとしては、1-ブテン及び1-ヘキセンからなる群より選ばれる少なくとも1種のコモノマーを用いるのが好ましい。
【0049】
前記粗面化材を構成する高密度ポリエチレン樹脂の190℃でのメルトフローレート(MFR)が、0.01g/10分~2g/10分の範囲であるのが好ましい。MFRが「0.01g/10分」以上であることで、粗面化材を前記ランダム共重合体に微細にかつ均一に分散させることができると共に、MFRが「2g/10分」以下であることで表面の荒れを増大させることができて滑り性をより向上させることができる。中でも、前記粗面化材を構成する高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)の190℃でのメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分~1g/10分の範囲であるのが特に好ましい。
【0050】
前記高密度ポリエチレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、例えば次のようにして調整できる。前記高密度ポリエチレン樹脂をフィリップス触媒を用いて製造するものでは、重合する際にリアクター温度を変更することで高密度ポリエチレン樹脂のMFRを調整できるし、或いは微量の水素を添加した上でリアクター温度を変更することで高密度ポリエチレン樹脂のMFRを調整できる。また、前記高密度ポリエチレン樹脂をチーグラー触媒を用いて製造するものでは、重合する際にリアクターに供給する水素量を変更することで高密度ポリエチレン樹脂のMFRを調整できる。前記フィリップス触媒を用いる場合には溶媒としてイソブタンを用いてスラリー重合により前記高密度ポリエチレン樹脂を製造できるが、特にこのような手法に限定されるものではない。
【0051】
前記粗面化材を構成する高密度ポリエチレン樹脂の融点は、130℃~145℃の範囲であるのが好ましい。また、高密度ポリエチレン樹脂は、長鎖(炭素数が10以上)である分岐を有するものであるのが好ましい。長鎖である分岐を有する高密度ポリエチレン樹脂を用いた場合には、前記ランダム共重合体に粗面化材を溶融混練させる際に、粗面化材粒子を形成しやすいので、最内層の表面7aをより効果的に粗面化できて滑り性をさらに向上させることができる。
【0052】
前記粗面化材を構成する高密度ポリエチレン樹脂のスウェルは、25%~55%の範囲であるのが好ましく、この場合には粗面化材を構成する樹脂の溶融粘弾性が比較的高いため高密度ポリエチレン樹脂の粒子を形成しやすく、最内層の表面7aをより効果的に粗面化できて滑り性をさらに向上させることができる。中でも、前記粗面化材を構成する高密度ポリエチレン樹脂のスウェルは、35%~45%の範囲であるのがより好ましい。
【0053】
なお、前記「スウェル」は、JIS K7199-1999で規定されるキャピラリレオメターA法による室温ダイスウェルパーセント(%)を意味するものであり、JIS K7210-1-2014で規定される標準ダイ(孔径:2.095mm、長さ:8mm)を使用して、温度190℃、荷重2.16kgにおける、キャピラリダイから押し出される樹脂のストランド(ひも状の樹脂)が長さ2cmになった時にストランドをピンセットで採取し、自然冷却固化した後に、先端から1cm部分のストランドの直径をマイクロメーターで測定し、この測定値をD1(mm)としたとき、
スウェル(%)={(D1-D0)/D0)}×100
D1:押出樹脂の直径
D0:標準ダイ孔径(2.095mm)
上記計算式で求められる値(%)である。
【0054】
前記粗面化材を構成する高密度ポリエチレン樹脂のハイロードスウェル(荷重が21.6kgの時のスウェル)は、55%~90%の範囲であるのが好ましく、この場合には粗面化材を構成する樹脂の溶融粘弾性が比較的高いため高密度ポリエチレン樹脂の粒子を形成しやすく、最内層の表面7aをより効果的に粗面化できて滑り性をさらに向上させることができる。
【0055】
なお、前記ハイロードスウェルは、JIS K7199-1999に準拠して、JIS K7210-1-2014で規定される標準ダイ(孔径:2.095mm、長さ:8mm)を使用して、温度190℃、荷重21.6kgにおける、キャピラリダイから押し出される樹脂のストランド(ひも状の樹脂)が長さ2cmになった時にストランドをピンセットで採取し、自然冷却固化した後に、先端から1cm部分のストランドの直径をマイクロメーターで測定し、この測定値をD2(mm)としたとき、
ハイロードスウェル(%)={(D2-D0)/D0)}×100
D2:押出樹脂の直径
D0:標準ダイ孔径(2.095mm)
上記計算式で求められる値である。
【0056】
前記粗面化材を構成する高密度ポリエチレン樹脂の「ハイロードMFR(荷重21.6kgでのMFR)/MFR(荷重2.16kgでのMFR)」は、25~40の範囲であるのが好ましく、この場合には前記ランダム共重合体と粗面化材との相溶性をある程度確保できて、成形時のシーラント層3の白化を一層抑制することができる。
【0057】
前記粗面化材の溶融密度と前記粗面化材の密度との差は、0.15g/cm3~0.25g/cm3の範囲であるのが好ましく、この場合には混合樹脂が溶融状態から冷却固化する過程で粗面化材の体積収縮率が大きくなるので前記最内層7の表面7aを効率的に粗すことができて前記最内層7の表面7aの中心線平均粗さRaを0.05μm~1μmに容易に調整できる。
【0058】
前記シーラント層の最内層7において、前記ランダム共重合体(共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体)の密度と、前記粗面化材の密度との差は、0.04g/cm3~0.07g/cm3の範囲であるのが好ましく、この場合には溶融状態での混合樹脂が冷却固化する過程で前記ランダム共重合体と粗面化材との体積収縮率の差が大きくなるので、最内層の表面7aの凹凸が大きくなり最内層の表面7aをより効果的に粗面化できて滑り性をさらに向上させることができる。
【0059】
また、前記ランダム共重合体(共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体)の溶融密度と、前記粗面化材の溶融密度との差は0.3g/cm3以下であるのが好ましい。
【0060】
前記シーラント層の最内層7における粗面化材の含有率は1質量%~30質量%に設定されるのが好ましく、この場合には前記最内層7における滑剤の含有率が1000ppm以下であっても優れた成形性を確保できるものとなる。また、このように最内層7における滑剤の含有率が0ppmを超えて1000ppm以下であることにより、外装材のシーラント層の最内層7の表面7aに白粉がさらに表出し難いものとなる。中でも、前記シーラント層の最内層7における粗面化材の含有率は1質量%~20質量%に設定されるのが特に好ましい。また、前記最内層7における滑剤の含有率は、0ppmを超えて900ppm以下に設定されるのが好ましく、10ppm~600ppmに設定されるのがより好ましい。
【0061】
前記滑剤としては、特に限定されるものではないが、脂肪酸アマイド、ワックス、シリコーン及びパラフィンからなる群より選ばれる1種または2種以上の滑剤を使用するのが好ましい。中でも、前記滑剤としては、脂肪酸アマイドを使用するのが特に好ましい。前記脂肪酸アマイドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。
【0062】
本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記最内層7にアンチブロッキング剤を含有せしめてもよい(実施例10参照)。
【0063】
本発明では、前記最内層7の表面7aの中心線平均粗さRaが0.05μm~1μmに設定されるが、中でも、前記最内層7の表面7aの中心線平均粗さRaが0.1μm~1μmに設定されるのが好ましい。また、前記最内層7の厚さは2μm~40μmに設定されるのが好ましい。
【0064】
前記シーラント層3が前記第1中間層8を備えた構成を採用する場合において、該第1中間層8を構成する樹脂としては、エラストマー変性オレフィン系樹脂を用いるのが好ましい。前記エラストマー変性オレフィン系樹脂(ポリプロピレンブロックコポリマー)は、エラストマー変性ホモポリプロピレンまたは/およびエラストマー変性ランダム共重合体からなるのが好ましい。前記エラストマー変性ランダム共重合体は、共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するランダム共重合体のエラストマー変性体であり、前記「プロピレンを除く他の共重合成分」としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4メチル-1-ペンテン等のオレフィン成分の他、ブタジエン等が挙げられる。前記エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いるのが好ましい。前記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、EPR(エチレンプロピレンラバー)、プロピレン-ブテンエラストマー、プロピレン-ブテン-エチレンエラストマー、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)等が挙げられ、中でも、EPR(エチレンプロピレンラバー)を用いるのが好ましい。
【0065】
前記エラストマー変性オレフィン系樹脂に関して、「エラストマー変性」の態様としては、エラストマーをグラフト重合したものであってもよいし、エラストマーをオレフィン系樹脂(ホモポリプロピレンまたは/および前記ランダム共重合体)に添加したものであってもよいし、或いは、その他の変性態様であってもよい。
【0066】
また、前記シーラント層3が前記第1中間層8を備えた構成を採用する場合において、該第1中間層8に滑剤を含有せしめるのが好ましい。この滑剤としては、前記最内層7に含有させる滑剤として例示したものと同様のものを例示できる。また、前記第1中間層8の厚さは10μm~60μmに設定されるのが好ましい。
【0067】
前記シーラント層3が前記第2中間層9を備えた構成を採用する場合において、該第2中間層9を構成する樹脂としては、共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するランダム共重合体を用いるのが好ましい。前記ランダム共重合体に関して、前記「プロピレンを除く他の共重合成分」としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4メチル-1-ペンテン等のオレフィン成分の他、ブタジエン等が挙げられる。
【0068】
また、前記シーラント層3が前記第2中間層9を備えた構成を採用する場合において、該第2中間層9に滑剤を含有せしめるのが好ましい。この滑剤としては、前記最内層7に含有させる滑剤として例示したものと同様のものを例示できる。また、前記第2中間層9の厚さは2μm~40μmに設定されるのが好ましい。
【0069】
本発明において、前記耐熱性樹脂層(外側層)2を構成する耐熱性樹脂としては、外装材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、シーラント層3の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、シーラント層3の融点より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。
【0070】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層2としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層2は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。なお、前記複層の場合、ポリエステルフィルム側を最外側に配置するのが良い。
【0071】
前記外側層2の厚さは、2μm~50μmであるのが好ましい。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは5μm~40μmであるのが好ましく、ナイロンフィルムを用いる場合には厚さは15μm~50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで外装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0072】
本発明において、前記金属箔層4は、外装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)、銅箔、ニッケル箔等が挙げられ、中でも、アルミニウム箔を用いるのが好ましい。前記金属箔層4の厚さは、15μm~100μmであるのが好ましい。15μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。中でも、前記金属箔層4の厚さは、15μm~45μmであるのがより好ましい。また、前記アルミニウム箔としては、JIS H4160:2006で規定されるA8079-O材、A8021-O材が好適である。
【0073】
前記金属箔層4は、少なくとも内側の面(第2接着剤層6側の面)に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。このような化成処理としては、例えば、クロメート処理等が挙げられる。
【0074】
前記第1接着剤層(外側接着剤層)5としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタンポリオレフィン接着剤層、ポリウレタン接着剤層、ポリエステルポリウレタン接着剤層、ポリエーテルポリウレタン接着剤層等が挙げられる。前記第1接着剤層5の厚さは、1μm~6μmに設定されるのが好ましい。
【0075】
前記第2接着剤層(内側接着剤層)6としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記第1接着剤層5として例示したものも使用できるが、電解液による膨潤の少ないポリオレフィン系接着剤を使用するのが好ましい。中でも、酸変性ポリオレフィン系接着剤を使用するのが特に好ましい。前記酸変性ポリオレフィン系接着剤としては、例えば、マレイン酸変性ポリプロピレン接着剤、フマル酸変性ポリプロピレン接着剤等が挙げられる。前記第2接着剤層6の厚さは、1μm~5μmに設定されるのが好ましい。
【0076】
本発明では、上記の構成を備えていることによって、シーラント層3の最内層7の表面7aに存在する(付着している)滑剤量が0.1μg/cm2~0.6μg/cm2の範囲になっているのが好ましい。中でも、最内層7の表面7aに存在する滑剤量は0.1μg/cm2~0.3μg/cm2の範囲であるのがより好ましい。
【0077】
また、本発明では、上記の構成を備えていることによって、外側層2の表面(外面)に存在する(付着している)滑剤量が0.1μg/cm2~0.6μg/cm2の範囲になっているのが好ましい。中でも、外側層2の表面に存在する滑剤量は0.1μg/cm2~0.3μg/cm2の範囲であるのがより好ましい。
【0078】
また、本発明では、上記の構成を備えていることによって、シーラント層3の最内層7の表面7aの動摩擦係数は、0.3以下になっているのが好ましい。
【0079】
本発明の蓄電デバイス用外装材1を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、蓄電デバイス用外装ケース10を得ることができる(図5参照)。なお、本発明の外装材1は、成形に供されずにそのまま使用することもできる(図5参照)。
【0080】
本発明の外装材1を用いて構成された蓄電デバイス30の一実施形態を図4に示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。本実施形態では、図4、5に示すように、外装材1を成形して得られたケース10と、成形に供されなかった平面状の外装材1とにより、外装部材15が構成されている。しかして、本発明の外装材1を成形して得られた外装ケース10の収容凹部内に、略直方体形状の蓄電デバイス本体部(電気化学素子等)31が収容され、該蓄電デバイス本体部31の上に、本発明の外装材1が成形されることなくその内側層3側を内方(下側)にして配置され、該平面状外装材1の内側層3の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29の内側層3とがヒートシールによりシール接合されて封止されることによって、本発明の蓄電デバイス30が構成されている(図4、5参照)。なお、前記外装ケース10の収容凹部の内側の表面は、内側層(シーラント層)3になっており、収容凹部の外面が外側層(耐熱性樹脂層)2になっている(図5参照)。
【0081】
図4において、39は、前記外装材1の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29とが接合(融着)されたヒートシール部である。なお、前記蓄電デバイス30において、蓄電デバイス本体部31に接続されたタブリードの先端部が、外装部材15の外部に導出されているが、図示は省略している。
【0082】
前記蓄電デバイス本体部31としては、特に限定されるものではないが、例えば、電池本体部、キャパシタ本体部、コンデンサ本体部等が挙げられる。
【0083】
前記ヒートシール部39の幅は、0.5mm以上に設定するのが好ましい。0.5mm以上とすることで封止を確実に行うことができる。中でも、前記ヒートシール部39の幅は、3mm~15mmに設定するのが好ましい。
【0084】
上記実施形態では、外装部材15が、外装材1を成形して得られた外装ケース10と、平面状の外装材1と、からなる構成であったが(図4、5参照)、特にこのような組み合わせに限定されるものではなく、例えば、外装部材15が、一対の外装材1からなる構成であってもよいし、或いは、一対の外装ケース10からなる構成であってもよい。
【実施例0085】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0086】
<実施例1>
厚さ40μmのアルミニウム箔4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2であった。
【0087】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、2液硬化型のウレタン系接着剤5を介して厚さ25μmの二軸延伸6ナイロンフィルム2をドライラミネートした(貼り合わせた)。
【0088】
次に、エチレン-プロピレンランダム共重合体、500ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ6μmの第2中間層フィルム(第2中間層)9、エラストマー変性オレフィン系樹脂(ブロックPP)、500ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ28μmの第1中間層フィルム(第1中間層)8、エチレン-プロピレンランダム共重合体、1.0質量%の高密度ポリエチレン樹脂パウダー(粗面化材)および500ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ6μmの最内層フィルム(最内層)7がこの順で3層積層されるようにTダイを用いて共押出することにより、これら3層が積層されてなる厚さ40μmのシーラントフィルム(第2中間層フィルム9/第1中間層フィルム8/最内層フィルム7)3を得た後、該シーラントフィルム3の第2中間層フィルム9面を、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤6を介して、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、40℃で10日間エージングする(加熱する)ことによって、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。得られた蓄電デバイス用外装材1のシーラント層3の最内層7の表面7aの中心線平均粗さRaは0.13μmであった。
【0089】
なお、前記2液硬化型マレイン酸変性ポリプロピレン接着剤として、主剤としてのマレイン酸変性ポリプロピレン(融点80℃、酸価10mgKOH/g)100質量部、硬化剤としてのヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌレート体(NCO含有率:20質量%)8質量部、さらに溶剤が混合されてなる接着剤溶液を用い、該接着剤溶液を固形分塗布量が2g/m2になるように、前記アルミニウム箔4の他方の面に塗布して、加熱乾燥させた後、前記シーラントフィルム3の第2中間層フィルム9面に重ね合わせた。
【0090】
上記高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)は、190℃でのMFRが0.2g/10分、密度が0.963g/cm3、スウェルが40%であり、上記高密度ポリエチレン樹脂は、フィリップス触媒を使用してスラリーループ法で製造されたものである。
【0091】
<実施例2>
最内層フィルム(最内層)7中の高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)の含有率1.0質量%を5.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0092】
<実施例3>
第2中間層フィルム9、第1中間層フィルム8および最内層フィルム7に含有せしめる滑剤として、エルカ酸アミドに代えて、ベヘン酸アミドを用いた以外は、実施例2と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0093】
<実施例4>
最内層フィルム(最内層)7中のエルカ酸アミドの含有率500ppmを1000ppmに変更した以外は、実施例2と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0094】
<実施例5>
最内層フィルム(最内層)7中の高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)の含有率1.0質量%を10.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0095】
<実施例6>
最内層フィルム(最内層)7中の高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)の含有率1.0質量%を15.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0096】
<実施例7>
最内層フィルム(最内層)7中の高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)の含有率1.0質量%を20.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0097】
<実施例8>
最内層フィルム(最内層)7中の高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)の含有率1.0質量%を30.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0098】
<実施例9>
最内層フィルム(最内層)7中の高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)の含有率1.0質量%を35.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0099】
<実施例10>
最内層フィルム(最内層)7中にさらにアンチブロッキング剤(AB剤)としてアクリルビーズを2500ppm含有せしめた以外は、実施例3と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0100】
<実施例11>
最内層フィルム(最内層)7中に含有せしめる高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)として、MFRが0.2g/10分、密度が0.945g/cm3、スウェル比が35であって、フィリップス触媒を使用してスラリーループ法で製造された高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)を用いた以外は、実施例4と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0101】
<実施例12>
最内層フィルム(最内層)7中に含有せしめる高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)として、MFRが0.2g/10分、密度が0.955g/cm3、スウェル比が45であって、フィリップス触媒を使用してスラリーループ法で製造された高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)を用いた以外は、実施例5と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0102】
<実施例13>
最内層フィルム(最内層)7中に含有せしめる高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)として、190℃でのMFRが2g/10分、密度が0.954g/cm3、スウェル比が30であって、チーグラー触媒を使用してスラリーループ法で製造された高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)を用いた以外は、実施例6と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0103】
<実施例14>
最内層フィルム(最内層)7中に含有せしめる高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)として、190℃でのMFRが3g/10分、密度が0.955g/cm3、スウェル比が20であって、チーグラー触媒を使用してスラリーループ法で製造された高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)を用いた以外は、実施例7と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0104】
<実施例15>
最内層フィルム(最内層)7中に含有せしめる粗面化材として、高密度ポリエチレン樹脂に代えて、190℃でのMFRが2g/10分、密度が0.921g/cm3、スウェル比が20の低密度ポリエチレン樹脂であって、チーグラー触媒を使用して気相法流動床で製造された低密度ポリエチレン樹脂を用いた以外は、実施例5と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0105】
<実施例16>
最内層フィルム(最内層)7中に含有せしめる粗面化材として、高密度ポリエチレン樹脂に代えて、190℃でのMFRが3g/10分、密度が0.915g/cm3、スウェル比が35の低密度ポリエチレン樹脂であって、パーオキサイド触媒を使用して高圧法オートクレーブで製造された低密度ポリエチレン樹脂を用いた以外は、実施例5と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0106】
<実施例17>
シーラントフィルムとして、エラストマー変性オレフィン系樹脂(ブロックPP)、500ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ32μmの第1中間層フィルム(第1中間層)8、エチレン-プロピレンランダム共重合体、10.0質量%の高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)および500ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ8μmの最内層フィルム(最内層)7がこの順で2層積層されるようにTダイを用いて共押出することにより、これら2層が積層されてなる厚さ40μmのシーラントフィルム(第1中間層フィルム8/最内層フィルム7)3を用いると共に、このシーラントフィルム3の第1中間層フィルム8面を、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤6を介して、ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に重ね合わせるようにした以外は、実施例1と同様にして図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0107】
<実施例18>
シーラントフィルムとして、エチレン-プロピレンランダム共重合体、10.0質量%の高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)および500ppmのエルカ酸アミドを含有してなる組成物をTダイを用いて押出することにより得た厚さ40μmのシーラントフィルム(最内層フィルム7のみからなるシーラントフィルム)3を用いると共に、このシーラントフィルム3を、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤6を介して、ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に重ね合わせるようにした以外は、実施例1と同様にして図3に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0108】
<比較例1>
最内層フィルム(最内層)7中に粗面化材(高密度ポリエチレン樹脂)を含有せしめない構成とした以外は、実施例3と同様にして蓄電デバイス用外装材を得た。
【0109】
<参考例1>
第2中間層フィルム(第2中間層)9中のエルカ酸アミドの含有率500ppmを1000ppmに変更し、第1中間層フィルム(第1中間層)8中のエルカ酸アミドの含有率500ppmを1000ppmに変更し、最内層フィルム(最内層)7として、エチレン-プロピレンランダム共重合体、1000ppmのエルカ酸アミドおよび2500ppmのシリカ粒子(アンチブロッキング剤)を含有してなるフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして蓄電デバイス用外装材を得た。
【0110】
<参考例2>
第1中間層フィルム(第1中間層)8中のエルカ酸アミドの含有率1000ppmを2500ppmに変更した以外は、参考例1と同様にして蓄電デバイス用外装材を得た。
【0111】
<参考例3>
第1中間層フィルム(第1中間層)8中のエルカ酸アミドの含有率1000ppmを5000ppmに変更した以外は、参考例1と同様にして蓄電デバイス用外装材を得た。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
なお、実施例1~18、比較例1および参考例1~3において、前記エラストマー変性オレフィン系樹脂は、EPR変性ホモポリプロピレンおよびエチレン-プロピレンランダム共重合体のEPR変性体からなる。前記EPRは、エチレン-プロピレンラバーを意味する。
【0117】
また、表中において、下記略号は、それぞれ次の樹脂を示す。
「ランダムPP」…エチレン-プロピレンランダム共重合体
「ブロックPP」…前記エラストマー変性オレフィン系樹脂(ポリプロピレンブロックコポリマー)
「AB剤」…アンチブロッキング剤
「フィリップス」…フィリップス触媒
「チーグラー」…チーグラー触媒
「パーオキサイド」…パーオキサイド触媒
「スラリー」…スラリーループ法。
【0118】
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材について下記評価法に基づいて評価を行った。その結果を表1~4に示す。なお、表1~4に記載の最内層表面の動摩擦係数は、JIS K7125-1995に準拠して各外装材の最内層の表面7aについて測定した動摩擦係数である。
【0119】
<外装材の最内層の表面の中心線平均粗さRaの測定法>
JIS B0601-2001に準拠して、各蓄電デバイス用外装材の最内層の表面の中心線平均粗さRaを株式会社ミツトヨ製「SURFTEST SV600」を用いて測定した。
【0120】
<外装材の最内層の表面に存在する滑剤量の評価法>
各蓄電デバイス用外装材から縦100mm×横100mmの矩形状の試験片を2枚切り出した後、これら2枚の試験片を重ね合わせて互いのシーラント層の周縁部同士をヒートシール温度200℃でヒートシールして袋体を作製した。この袋体の内部空間内にシリンジを用いてアセトン1mLを注入し、シーラント層の最内層7の表面7aとアセトンとが接触した状態で3分間放置した後、袋体内のアセトンを抜き取った。この抜き取った液中に含まれる滑剤量をガスクロマトグラフを用いて測定、分析することにより、外装材の最内層の表面に存在する滑剤量(μg/cm2)を求めた。即ち、最内層の表面1cm2あたりの滑剤量を求めた。
【0121】
<外装材の外側層の表面に存在する滑剤量の評価法>
外側層が袋体の内側になるように袋体を作製して外側層の表面とアセトンとが接触するようにした以外は、上記「最内層の表面に存在する滑剤量の評価法」と同様にして、外装材の外側層の表面に存在する滑剤量(μg/cm2)を求めた。即ち、外側層の表面1cm2あたりの滑剤量を求めた。
【0122】
<成形性評価法>
成形深さフリーのストレート金型を用いて外装材に対し下記成形条件で深絞り1段成形を行い、各成形深さ(9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm)毎に成形性を評価し、コーナー部にピンホールが全く発生しない良好な成形を行うことができる最大成形深さ(mm)を調べた。判定は、最大成形深さが6mm以上であるものを「◎」とし、最大成形深さが4mm以上6mm未満であるものを「○」とし、最大成形深さが4mm未満であるものを「×」とした。なお、ピンホールの有無は、ピンホールを透過してくる透過光の有無を目視により観察することにより調べた。
(成形条件)
成形型…パンチ:33.3mm×53.9mm、ダイ:80mm×120mm、コーナーR:2mm、パンチR:1.3mm、ダイR:1mm
しわ押さえ圧…ゲージ圧:0.475MPa、実圧(計算値):0.7MPa
材質…SC(炭素鋼)材、パンチRのみクロムメッキ。
【0123】
<白粉の有無評価法>
各蓄電デバイス用外装材から縦600mm×横100mmの矩形状の試験片を切り出した後、得られた試験片を内側シーラント層3面(即ち最内層の表面7a)を上側にして試験台の上に載置し、この試験片の上面に、黒色のウェスが巻き付けられて表面が黒色を呈しているSUS製錘(質量1.3kg、接地面の大きさが55mm×50mm)を載せた状態で、該錘を試験片の上面と平行な水平方向に引張速度4cm/秒で引っ張ることによって錘を試験片の上面に接触状態で長さ400mmにわたって引張移動させた。引張移動後の錘の接触面のウェス(黒色)を目視で観察し、ウェス(黒色)の表面に白粉が顕著に生じていたものを「×」とし、白粉が僅かに生じていたに過ぎないものを「△」とし、白粉が殆どないか又は白粉が認められなかったものを「○」とした。なお、上記黒色のウェスとしては、TRUSCO社製「静電気除去シートS SD2525 3100」を使用した。
【0124】
<成形時の白化の有無評価法>
株式会社アマダ製の深絞り成形具を用いて下記成形条件で外装材に深さ5mmの直方体形状に深絞り成形を行った後、得られた成形体の収容凹部の内側の表面(シーラント層3面)を目視により観察し、白化の有無や程度を下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
成形を行った後の成形体を目視で観察して、白化が認められないか又は白化が殆どなかったものを「◎」、白化が少なかったものを「○」、白化がある程度生じていたものを「△」、白化が顕著に生じていたものを「×」とした。
(成形条件)
成形型…パンチ:33.3mm×53.9mm、ダイ:80mm×120mm、コーナーR:2mm、パンチR:1.3mm、ダイR:1mm
しわ押さえ圧…ゲージ圧:0.475MPa、実圧(計算値):0.7MPa
材質…SC(炭素鋼)材、パンチRのみクロムメッキ。
【0125】
表から明らかなように、本発明の実施例1~18の蓄電デバイス用外装材は、成形性に優れていると共に、外装材の表面に白粉が表出し難いものであり、さらに成形時の白化も生じ難い。
【0126】
これに対し、粗面化材を含有せしめていない比較例1は、成形性に劣っていた。また、粗面化材を含有せしめない構成で評価良好なものを得るには、参考例1~3のようにシーラント層における滑剤含有率を大きくすると共に最内層においてアンチブロッキング剤(AB剤)を大きな含有率で含有せしめる必要があり、このように最内層にアンチブロッキング剤を多く含有させた場合には、外装材を巻き取り状態にした際にアンチブロッキング剤が内部側に押し込まれて滑り性が低下しやすいし、アンチブロッキング剤は脱落しやすい。また、シーラント層における滑剤含有率が最も大きい参考例3では外装材の表面に白粉が顕著に表出していた。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明に係るシーラントフィルムを用いて製作された蓄電デバイス用外装材および本発明に係る蓄電デバイス用外装材は、具体例として、例えば、
・リチウム2次電池(リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等)等の蓄電デバイス・リチウムイオンキャパシタ
・電気2重層コンデンサ
・全固体電池
等の各種蓄電デバイスの外装材として用いられる。また、本発明に係る蓄電デバイスとしては、例えば上記例示した各種蓄電デバイス等が挙げられる。
【符号の説明】
【0128】
1…蓄電デバイス用外装材
2…耐熱性樹脂層(外側層)
3…シーラント層(内側層)
4…金属箔層
5…第2接着剤層(外側接着剤層)
6…第1接着剤層(内側接着剤層)
7…最内層
7a…シーラント層の最内層の表面
8…第1中間層
9…第2中間層
10…蓄電デバイス用外装ケース(成形体)
15…外装部材
30…蓄電デバイス
31…蓄電デバイス本体部
図1
図2
図3
図4
図5