(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016488
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】回路遮断器及び分電盤
(51)【国際特許分類】
H01H 83/02 20060101AFI20230126BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
H01H83/02 E
H02B1/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120830
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東田 浩典
【テーマコード(参考)】
5G030
5G211
【Fターム(参考)】
5G030FC02
5G030FC04
5G030XX03
5G030XX08
5G030YY13
5G211AA01
5G211AA02
5G211BB04
5G211BB08
5G211DD14
5G211DD21
5G211FF02
(57)【要約】
【課題】近接する素子や配線からの外乱の影響を受けにくくする。
【解決手段】
回路遮断器1は、電路2に設けられたMIセンサ4と、MIセンサ4の検出結果に基づいて、電路2を遮断する回路遮断手段3とを備える。電路2は、第1方向に延びる第1電路241と、第1電路241と並行しかつ第1方向と逆方向の電流が流れる第2電路242とを含む。MIセンサ4は、第1電路241に流れる電流を検出する第1MI素子41と、第2電路242に流れる電流を検出する第2MI素子42とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路に介在された回路遮断器であって、
前記電路に設けられた電流検出手段と、
前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記電路を遮断する回路遮断手段とを備え、
前記電路は、第1方向に延びる第1電路と、前記第1電路と並行しかつ前記第1方向と逆方向の電流が流れる第2電路とを含み、
前記電流検出手段は、前記第1電路に流れる電流を検出する第1磁気インピーダンス素子と、前記第2電路に流れる電流を検出する第2磁気インピーダンス素子とを備える、回路遮断器。
【請求項2】
前記第1磁気インピーダンス素子と前記第2磁気インピーダンス素子は、同じパッケージに収容されている、請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回路遮断器を備える分電盤。
【請求項4】
主幹開閉器と、前記主幹開閉器の出力側に接続された複数の分岐開閉器とが筐体内に収納された分電盤であって、
前記主幹開閉器と前記分岐開閉器を接続する電路に設けられた電流検出手段と、
前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記電路を遮断する回路遮断手段とを備え、
前記電路は、第1方向に延びる第1電路と、前記第1電路と並行しかつ前記第1方向と逆方向の電流が流れる第2電路とを含み、
前記電流検出手段は、前記第1電路の電流を検出する第1磁気インピーダンス素子と、前記第2電路の電流を検出する第2磁気インピーダンス素子を含む、分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅や各種施設等において使用される回路遮断器及び分電盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等において使用される回路遮断器として種々の構成が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カレントトランス(CT)を用いた電流センサを用いて主幹ブレーカや開閉器に流れる電流を計測し、その計測した電流の値に基づいて主幹ブレーカや開閉器(分岐ブレーカに相当)を導通状態と遮断状態とを切り替える技術が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ホール素子と変流器とで電流センサを構成して電路の電流を計測し、その計測結果に基づいて電路を遮断する回路遮断器が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-065374号公報
【特許文献2】特開2013-161752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に示されるように、カレントトランス(CT)やホール素子を用いた場合、コアやホール素子のサイズが非常に大きいという問題がある。例えば、電流を検出するために、CTのコアに被測定対象の電路を貫通させるため、電路の電線や母線の大きさ以上の大きさとなる。また、ホール素子の測定精度を向上させるために、シールド材などを付加する必要がある。その結果、取付構造が複雑になるなどの問題が生じる。
【0007】
一般的に、回路遮断器は、分電盤の中に並べて配置されている。そうすると、電路による発熱や外乱磁場による誤差が生じる恐れがあり、誤差防止のためにシールドを設けたり、電流の配線同士の間隔をあけたりするなどの対策が必要であり、回路遮断器やそれを用いた分電盤のサイズが大きくなるという問題がある。すなわち、同一電路に対し一つのコアやホール素子を設ける構造となるため回路遮断器のサイズと、外乱等の影響を受けにくくすることとの間に、トレードオフの関係がある。
【0008】
本発明は、上記の諸問題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、回路遮断器や分電盤のサイズが大きくなることを回避しつつ、近接する素子や配線からの外乱の影響を受けにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様は、電路に介在された回路遮断器を対象とし、回路遮断器は、前記電路に設けられた電流検出手段と、前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記電路を遮断する回路遮断手段とを備え、前記電路は、第1方向に延びる第1電路と、前記第1電路と並行しかつ前記第1方向と逆方向の電流が流れる第2電路とを含み、前記電流検出手段は、前記第1電路に流れる電流を検出する第1磁気インピーダンス素子と、前記第2電路に流れる電流を検出する第2磁気インピーダンス素子とを備える、ようにした。
【0010】
このように、本態様では、回路遮断器を介在させる電路について、互いに並行しかつ反対方向の電流が流れる第1電路及び第2電路を含ませ、第1電路及び第2電路についてそれぞれ別々の磁気インピーダンス素子による電流検出をしている。すなわち、同一電路に対し少なくとも2つの磁気インピーダンス素子による検出をしており、これにより、近接する素子や配線からの外乱の影響を受けにくくすることができる。また、シールドなどの外乱を遮断するための特別な部品や機構を設ける必要がないので、回路遮断器のサイズをよりコンパクトにすることができる。
【0011】
上記第1態様において、前記第1電流検出手段と前記第2電流検出手段は、同じパッケージに収容されている、としてもよい。
【0012】
これにより、例えば、第1電流検出手段と前記第2電流検出手段を基板等に取り付ける場合に、取付誤差等に起因する電流検出誤差を生じにくくすることができる。
【0013】
本発明の第2態様は、主幹開閉器と、前記主幹開閉器の出力側に接続された複数の分岐開閉器とが筐体内に収納された分電盤を対象とし、分電盤は、前記主幹開閉器と前記分岐開閉器を接続する電路の途中に設けられた電流検出手段と、前記電流検出段の検出結果に基づいて、前記電路を遮断する回路遮断手段とを備え、前記電路は、第1方向に延びる第1配線と、前記第1配線が折り返されて前記第1配線と同じ電流が前記第1方向と反対の第2方向に流れる第2配線とを含み、前記電流検出手段は、前記第1配線の電流を検出する第1磁気インピーダンス素子と、前記第2配線の電流を検出する第2磁気インピーダンス素子を含む。
【0014】
本態様の分電盤は、第1態様と同様に、反対方向かつ互いに同じ電流が流れる2つの電路を用意し、それぞれの電路に対して磁気インピーダンス素子を設けて、それぞれの電流を検出している。これにより、近接する素子や配線からの外乱の影響を受けにくくすることができる。また、シールドなどの外乱を遮断するための特別な機構や部品を設ける必要がないので、分電盤のサイズをよりコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回路遮断器のサイズが大きくなることを回避しつつ、近接する素子や配線からの外乱の影響を受けにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】
図1の往復配線付近を拡大した部分拡大図である。
【
図4】(a)は
図3のX1-X1線断面図であり、(b)~(e)は
図3(a)の他の例を示す断面図である。
【
図5】回路遮断器の構成例を示すブロック図である。
【
図7】分電盤の構成例を示すブロック構成図である。
【
図8】(a)、(b)は分岐開閉器の概略構成を示す模式図であり、(c)、(d)は主幹開閉器の概略構成を示す模式図である。
【
図13】(a)は
図3の他の配線例を示す図であり、(b)は
図13(a)のX4-X4線断面図である。
【
図14】回路遮断器の他の構成例を示すブロック図である。
【
図15】回路遮断器の他の構成例を示すブロック図である。
【
図16】回路遮断器の他の構成例を示すブロック図である。
【
図17】回路遮断器の他の構成例を示すブロック図である。
【
図18】回路遮断器の他の構成例を示すブロック図である。
【
図19】
図14の構成を用いた主幹開閉器の構成例を示す正面図である。
【
図20】
図19の主幹開閉器の動作を説明するための図である。
【
図21】分電盤の他の構成例を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。また、発明の理解を容易にするために、実質的に同一または類似の事項についての説明を省略する場合がある。
【0018】
(回路遮断器)
図1及び
図2は実施形態に係る回路遮断器の構成例を示した図であり、
図1は正面図、
図2は側面図である。
【0019】
回路遮断器1は、住宅や各種施設等において使用される。回路遮断器1は、発変電所や分散電源等から負荷に供給される電流の経路である電路2に介在され、電路2の通電及び遮断を行うものである。回路遮断器1は、単独で用いてもよいし、後述するように、分電盤の主幹開閉器110や分電盤内に並べて配置される分岐開閉器130として使用してもよい。
【0020】
回路遮断器1は、電路2の途中に設けられた電流検出手段としてのMI(Magneto-Impedance)センサ4と、MIセンサ4の検出結果に基づいて電路2を遮断する回路遮断手段3とを備える。MIセンサ4及び回路遮断手段3は、例えば、回路遮断器1の矩形箱状の筐体11内に収容された基板12に実装される。
【0021】
図1及び
図2では、2つの入力端子及び2つの出力端子が設けられた2線式の回路遮断器1を示す。以下において、説明の便宜上、入力端子が設けられた方を「上」、出力端子が設けられた方を「下」と称し、上下を基準として左右を定義する。また、筐体11の開口部が設けられた方を「表」または「前」、壁等への取付面側を「裏」または「後」と称する。
【0022】
図1に示すように、入力端子P1,P2は、筐体11の上端部に左右に並べて配置され、出力端子Q1、Q2は、筐体11の下端部に左右に並べて配置される。また、入力端子P1と出力端子Q1の左右位置、及び、入力端子P2と出力端子Q2の左右位置がそれぞれ揃っている。
【0023】
入力端子P1、P2及び出力端子Q1、Q2の端子の構成は、特に限定されず、
図2に示すような「ねじ式」の端子であってもよいし、弾性体で電線の先端を挟む圧力を保持するような「差込式(速結式)」の端子(図示省略)であってもよい。
【0024】
なお、
図1では、回路遮断器1の左右の中心線A-Aに対して線対称の構造となっており、説明の便宜上、対応する構成に共通の符号を付してまとめて説明する場合がある。例えば、以下の説明において、入力端子P1、P2に共通の符号Pを付し、出力端子Q1,Q2に共通する符号Qを付して説明する場合がある。
【0025】
-電路-
電路2は、入力端子Pと出力端子Qとの間を接続する電路20を含む。電路20は、入力端子Pと回路遮断手段3との間を接続する電路21と、回路遮断手段3と出力端子Qとの間を接続する電路22とを含む。
【0026】
電路22は、上下方向に延びる電路23と、上下方向の中間位置において電路23を中心線A-Aの方向(以下、内方向という)に向かって略U字状に形成された往復電路24とを含む。
【0027】
図3は、
図1の領域Rを拡大した図面である。図面左側は、領域Rを表側から見た正面図であり、図面右側は、領域Rを裏面側から見た背面図である。また、
図4(a)は、
図3のX1-X1線断面図である。
【0028】
図3では、基板12の表面にMIセンサ4が実装され、基板12の裏側に電路22が設けられている。
図3の電路22は、基板12上に形成された配線パターンである。
【0029】
図3に示すように、往復電路24は、内方向(第1方向に相当)に延びる第1電路241と、内方向と反対の外方向(逆方向に相当)に延びる第2電路242とを含む。第1電路241と第2電路242は、互いに接続され、かつ、往復電路24の途中で他の配線とは接続されていない。
【0030】
電路23は、回路遮断手段3と第1電路241の外側端とを接続する電路231と、第2電路242の外側端と出力端子Qとを接続する電路232とを含む。これにより、第1電路241と第2電路242には、互いに同じかつ反対方向の電流が流れる。第1電路241は、第1電路の一例であり、第2電路242は、第2電路の一例である。ここで、本開示において「同じ」とは、実質的に同じであることを意味する。例えば、本開示において「同じ電流」とは、互いに等しい電流に加えて、電路2での電圧降下などによって相互間の電流に若干(数%程度)の差異がある場合を含むものとする。以下において、同様とする。
【0031】
図5は、回路遮断器1の構成例を示すブロック図である。
【0032】
回路遮断器1は、回路遮断手段3及びMIセンサ4に加えて、操作部5と、表示部6と、演算出力部7と、電源部8と、通信部9とを備える。操作部5、表示部6、演算出力部7、電源部8及び通信部9は、例えば、前述の基板12に実装される。
【0033】
-回路遮断手段-
図5では、回路遮断手段3を半導体スイッチ38で構成した例を示す。半導体スイッチ38は、演算出力部7からの切替信号に基づいて、電路2の通電/遮断を切り替える機能を有する。
【0034】
半導体スイッチ38は、上記の通電/遮断の切り替え機能が実現できればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、半導体スイッチ38を、
図5に示すようにトライアックで構成してもよいし、他の半導体素子、例えば、2つのサイリスタを組み合わせた構成としてもよい。また、半導体スイッチ38として、半導体リレーを用いてもよいし、その他、電界効果トランジスタ(FET)や、入力側にFETと備え出力側にバイポーラトランジスタを備えたパワー半導体として用いられる絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、制御信号や増幅回路、保護回路などが一体化したインテリジェントパワーモジュール(IPM)を用いてもよい。
【0035】
また、回路遮断手段3として、半導体スイッチ38に変えて、機械式の電路遮断機構30を用いてもよいし、半導体スイッチ38と上記の電路遮断機構30とを組み合わせたハイブリッド構造としてもよい。回路遮断手段3の他の構成例(電路遮断機構30を含む)については、後ほど説明する。
【0036】
-MIセンサ-
MIセンサ4は、第1電路241に流れる電流を検出する第1磁気インピーダンス素子41(以下、第1MI素子41という)と、前記第2電路に流れる電流を検出する第2磁気インピーダンス素子42(以下、第2MI素子42という)とを含む。このように往復電路24を用い、往復電路24を構成する第1電路241及び第2電路242に流れるそれぞれの電流を測定することで、外部からのノイズに対する外乱磁場の影響をキャンセルすることができる。これにより、測定感度を高めることができる。
【0037】
なお、第1MI素子41と第2MI素子42とは、同じ特性の素子を用いるのが好ましい。また、第1電路241と第1MI素子41との間の距離D1(以下、単に距離D1ともいう)と、第2電路242と第2MI素子42との間の距離D2(以下、単に距離D2ともいう)とは、互いに等しくなるように設定されるのが好ましい。そうすることで、ノイズに対する外乱磁場の影響をより確実にキャンセルし、測定感度をさらに高めることができる。
【0038】
また、
図4(a)の例では、第1電路241と第1MI素子41は、前後方向に重なるように配置され、第2電路242と第2MI素子42は、前後方向に重なるように配置されている。ただし、第1電路241と第1MI素子41及び第2電路242と第2MI素子42は、重ねて配置しなくてもよい。具体例については、後ほど説明する。
【0039】
-操作部、表示部-
操作部5は、ユーザーからの操作を受け付ける。操作部5は、ユーザーからの操作入力内容を示す操作信号を演算出力部7に出力する。
【0040】
図1の例では、電路2の通電/遮断を切り替える押ボタン式の操作部5の例を示している。
【0041】
表示部6は、電路2の通電状況や、操作部5の操作状況等を表示する。表示部6の表示形式は特に限定されない。例えば、LEDランプのような発光部で構成されていてもよいし、液晶パネルなどで構成されていてもよい。
【0042】
なお、タッチパネルのように、操作部5と表示部6とが一体に構成されていてもよい。操作部5と表示部6とが一体になった構成例は、後ほど分電盤100の例を用いて説明する。
【0043】
-演算出力部-
演算出力部7は、MIセンサ4の電流検知結果を受信し、その電流検知結果に基づいて、過電流(長限時、短限時、瞬時)及び漏電をそれぞれ計算する。そして、それぞれの計算結果に基づいて、電路2の通電/遮断を切り替える切替信号を回路遮断手段3に出力する。例えば、所定の閾値以上の過電流または漏電が検出されると、演算出力部7は、電路2を遮断させることを示す切替信号を回路遮断手段3に出力する。そうすると、回路遮断手段3は、その切替信号に基づいて電路2を遮断させる。
【0044】
また、演算出力部7は、操作部5から受信した操作信号に基づいて、通電/遮断を切り替える切替信号を回路遮断手段3に出力する。
【0045】
-電源部-
電源部8は、演算出力部7に電源を供給する。電源部8の具体的構成は、特に限定されない。例えば、
図5に示すように、電源部8が電路2からの電力供給を受け、その電力に基づいて、演算出力部7に電源を供給してもよい。また、図示しないが、バックアップ用のコンデンサや蓄電池を用いて電源部8を構成してもよい。
【0046】
-通信部-
通信部9は、MIセンサ4で検出された測定電流データや電流波形データを外部に出力したり、電路の遮断情報を外部と通信したりするのに用いられる。通信部9から出力された電流波形は、例えば、外部の計算機(PC、スマートフォン、測定機器(図示省略)等に)送られ、モニタ等で電流波形が確認できるようになっている。また、回路遮断手段3を開閉させることを指示する切替信号を外部から受信するようにしてもよい。
【0047】
(分電盤)
図6は分電盤100の斜視図であり、
図7は分電盤100の回路構成例を示した図である。
【0048】
図6及び
図7では、上記の回路遮断器1を分電盤100の分岐開閉器130に適用した例を示す。また、
図6及び
図7では、後述する
図14に示す回路遮断器1を主幹開閉器110に適用している。主幹開閉器110については、後ほど
図14及び
図19を参照しつつ説明する。
【0049】
分電盤100は、外部の電源からの電力の供給を受ける主幹開閉器110と、主幹開閉器110の負荷装置側に接続された複数の分岐開閉器130と、これらを収納する矩形箱状の筐体101とを備える。
【0050】
筐体101は、主幹開閉器110および分岐開閉器130等が配設され、かつ前面が開口した矩形箱状のボックス102と、ボックス102の開口を覆うカバー103とを備えている。ボックス102は、ねじやフック(図示しない)等によって壁面等に取り付けされる。
【0051】
カバー103の前面には、上端から下端までの間において、右側端部からカバー103の左右中間の左側寄りまで広がるタッチパネル200が設けられている。カバー103前面においてタッチパネル200左側の上下方向の中間部分には、タッチパネル200を初期表示状態に戻すためのホームボタン104が設けられている。タッチパネル200は、前述の操作部5と表示部6とを一体的に構成した例である。
【0052】
また、ホームボタン104の左側の上下方向の中間部分には、後述する主幹開閉器110の主幹突状部112の大きさよりも若干大きくて、前後方向に貫通する矩形の貫通孔105が設けられている。これにより、ボックス102にカバー103が取り付けされた際に、主幹開閉器110の主幹突状部112および後述する操作レバー113がカバー103の外側に露出する。
【0053】
図7に示すように、分電盤100には、分岐開閉器130として、2種類の分岐開閉器131,132を搭載している。分岐開閉器131は左右の電路ともにMIセンサ4を取り付けたものであり、分岐開閉器132は左右の電線の一方にMIセンサ4を取り付けたものである。また、主幹開閉器110として、
図14及び
図19の回路遮断器1の構成をベースに、2線から3線に電路数を増やして搭載している。
【0054】
分岐開閉器131は、上記実施形態の回路遮断器1とほぼ同じ構成である。ただし、
図8(a)に模式的に示すように、左右の電路20でMIセンサ4の取り付け位置を上下にずらしている。すなわち、左右の電路20で往復電路24の位置を上下にずらしている。このような構成にすることで、左右の電路20の間隔を狭くすることができ、
図1の配線形態と比較して、基板12のサイズを小さくすることができ、ひいては、分岐開閉器131のサイズを小型化することができる。
【0055】
分岐開閉器132は、
図8(a)に模式的に示すように、左右の電路20の一方にはMIセンサ4を取り付け、他方には、MIセンサ4を取り付けていない。それ以外の構成は、上記実施形態と同じである。
【0056】
分岐開閉器131は、漏電と過電流の両方を検出するのに適した構成であり、分岐開閉器132は、過電流を検出するのに適した構成である。分岐開閉器131及び分岐開閉器132の動作は、上記の実施形態における回路遮断器1と同様であり、ここではその詳細説明を省略する。
【0057】
図14の回路遮断手段3は、電路21と電路23との間に、電路20を遮断する電路遮断機構30を備える。回路遮断手段3以外の構成は、
図5と同様であり、ここではその詳細説明を省略する。
【0058】
電路遮断機構30の構成は、特に限定されないが、例えば、電磁式の瞬時引外し装置、バイメタル式の時延形引外し装置、トリップコイル39等によって構成されている。電路遮断機構30は、過電流、短絡電流、漏電、過電圧等の電路における通電状態に異常があるとき、電路20を機械的に自動遮断する(以下、トリップ動作ともいう)機構である。
【0059】
図19は、電路遮断機構30の具体的構成例を示す。また、
図20は、電路遮断機構30の動作例を示す。なお、
図19及び
図20での図示を省略しているが、これらの構成例には、前述の電源部8、演算出力部7、通信部9が設けられている。また、
図19において、
図1及び
図14と対応する構成には、共通の符号を付している。
【0060】
図20に示すように、電路遮断機構30は、操作部5の操作レバー113がオン操作されている際には、押さえ板92が開閉駆動する可動接点板31を貫装し駆動可能に支持するクロスバー33を可動接点板31に対向配置する固定接点板32の方向に押さえつけて可動接点板31の端部に設けた可動接点311と固定接点板32の端部に設けた固定接点321とを接触させている。そして、演算出力部7において、MIセンサ4の測定結果に基づいて、通電状態に異常が検知されると、トリップコイル39に切替信号が通電され、コイルに電磁吸引力が発生することにより磁性体を含んで構成した軸がコイル内に引き込まれ前記軸が下方向に移動する。前記軸と係合される作動棒91は前記軸の移動とともに作動棒91が下方向に向かって回動することで、押さえ板92と作動棒91との係合が外れ、ばねSP3の作用により、可動接点板31が右方向に移動させられ接点同士の接触が解除され、電路20が遮断される。その後、ばねSP1の作用により、操作レバー113がOFF位置に回動されるとともに、作動棒91を常時上方向(押さえ板92との係合方向)に付勢する、バネSP2の作用により、作動棒91は元の位置に戻る。
【0061】
以上のように、本実施形態の回路遮断器1は、電路2に設けられたMIセンサ4と、MIセンサ4の検出結果に基づいて、電路2を遮断する回路遮断手段3とを備える。電路2は、略U字状に形成された往復電路24を有する。往復電路24は、互いに並行しかつ逆方向の電流が流れる第1電路241及び第2電路242を含む。MIセンサ4は、第1電路241に流れる電流を検出する第1MI素子41と、第2電路242に流れる電流を検出する第2MI素子42とを含む、という構成とした。
【0062】
すなわち、本実施形態では、電路2の途中に互いに逆方向の電流が流れる第1電路241及び第2電路242を並行させ、夫々第1電路241の電流を第1MI素子41で検出し、第2電路242の電流を第2MI素子42で検出している。これにより、近接する素子や配線からの外乱の影響を受けにくくすることができる。また、シールドなどの外乱を遮断するための特別な機構や部品を設ける必要がないので、シールドなどを設ける場合と比較して回路遮断器のサイズをコンパクトにすることができる。
【0063】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、種々の改変が可能である。なお、以下に説明する各変形例及び上記実施形態の構成は、適宜組み合わせて用いてもよく、同様の効果が得られる。
【0064】
-分電盤の変形例-
図21は、分電盤100の変形例を示す。
【0065】
図7の分電盤100では、主幹開閉器110及び分岐開閉器130の内部に往復電路24とMIセンサ4を設けていたのに対し、
図21では、往復電路24及びMIセンサ4を、主幹開閉器110と複数の分岐開閉器133との間を接続する途中の電路2(2A~2C)に設けている。
【0066】
より具体的には、
図21において、単相3線式の主幹開閉器110と単相2線式の各分岐開閉器133とは、分岐開閉器接続部123を介して接続されている。そして、主幹開閉器110と分岐開閉器接続部123との間に設けられた基板121には、主幹開閉器110から引き出された各電路2A~2Cのそれぞれに途中が略U字状に形成された往復電路24が設けられ、それぞれの往復電路24に対応してMIセンサ4が設けられる。各電路2A~2Cに設けられる往復電路24及びMIセンサ4は、それぞれ、前述の実施形態または後述する電路の変形例で説明するような形態で配置される。そして、それぞれのMIセンサ4の出力は、基板121の領域10に設けられた演算出力部7に入力され、演算出力部7は、MIセンサ4からの電流検出信号に基づいて、主幹開閉器110の通電状態に異常があるときには、切替信号を主幹開閉器に設けられた回路遮断手段に出力することにより電路2を遮断する。なお、領域10内の回路構成については、
図5で説明した内容と同様である。なお、
図8(d)に示すように、3つの電路2A~2Cのうちの2つの電路(例えば、電路2A、2C)に往復電路24とMIセンサ4を設けてもよい。この場合の電路は単相3線式であるので、両端の各電圧相におけるそれぞれの貫装電流を検出することができる。
【0067】
同様に、分岐開閉器接続部123と各分岐開閉器133との間に設けられた基板122には、分岐開閉器接続部123と各分岐開閉器133とを接続する電路2のそれぞれに略U字状の往復電路24が設けられ、それぞれの往復電路24に対応してMIセンサ4が設けられる。各電路2に設けられる往復電路24及びMIセンサ4は、それぞれ、前述の実施形態または後述する電路の変形例で説明するような形態で配置される。そして、それぞれのMIセンサ4の出力は、基板122の領域10に設けられた演算出力部7に出力され、演算出力部7のは、MIセンサ4からの電流検出信号に基づいて、それぞれの分岐開閉器133の通電状態に異常があるときには、切替信号を主幹開閉器に設けられた回路遮断手段に出力することによりその異常が検知された分岐開閉器133に接続された電路2を遮断する。なお、領域10内の回路構成については、
図5で説明した内容と同様である。
【0068】
-電路の変形例-
MIセンサ4は、磁器インピーダンス素子であるため、測定対象の電路とMI素子自身との距離の大小にともない、電流検出感度が変化する。そこで、
図4(b)、(c)に示すように、距離D1及び距離D2を調整することで、MIセンサ4での電流検出感度を調整してもよい。
【0069】
例えば、
図4(b)では、
図4(a)と比較して基板12の厚さを薄くすることより距離D1及び距離D2を狭くした例を示す。これにより、
図4(a)よりもMIセンサ4が電流が流れることによる磁気の変化を感受しやすくなる。これは、検出対象の電流が相対的に小電流である場合に有効な配置である。図示しないが、
図4(b)と反対に、
図4(a)より基板の厚さを厚くすることにより距離D1及び距離D2を広くし、
図4(a)よりもMIセンサ4の検出感度を低くしてもよい。これは、検出対象の電流が相対的に大電流である場合に有効な配置である。
【0070】
また、
図4(c)には、
図4(a)と同じ厚さの積層基板等を用いて、その中間層(前後方向の中間位置)に第1電路241及び第2電路242を形成した例を示す。これにより、
図4(a)より距離D1及び距離D2を狭くすることができ、
図4(a)よりMIセンサ4の電流検出感度を高めることができる。MIセンサ4の電流検出感度は、流す電流の大きさや、測定対象電流の大きさ、必要な精度等に基づいて任意に設定され得る。
【0071】
図4(d)には、
図4(a)と比較して第1電路241及び第2電路242の厚さを厚くした例を示している。このように、配線厚を厚くすることで、より多くの電流を流すことができる。
【0072】
図4(e)では、電路20を基板12から離して構成した例を示す。このように、MIセンサ4が取り付けられた基板12と、電路2(往復電路24)とが離れていても、同様の効果が得られる。例えば、従来構成の回路遮断器において、電路20が銅バーで構成されているような場合に、従前の電流検出手段に代えて、MIセンサ4が搭載された基板12を取り付けるようなときに、このような構成をとることができる。
【0073】
図13のような構成についても同様である。具体的に、
図13では、基板12の表面にMIセンサ4を取り付けて、さらに、そのMIセンサ4の前側に離して電路20(第1電路241、242)を設けている。この場合においても、
図4(e)と同様であり、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
また、図示しないが、第1電路241と第2電路242との間の位置する基板を切り欠いて、スリットを設けてもよい。前記スリットは、基板を固定する指示部として利用してもよい。スリットは、電路の間に通風ができるよう発熱を防止する効果を奏するものである。
【0075】
図9及び
図10は、電路23及び往復電路24の配線幅が、
図4(a)~(e)よりも広い例を示している。また、第1電路241と第2電路242との間隔も広くなっている。このような構成にした場合においても、第1電路241と第1MI素子41との距離D1、及び、第2電路242と第2MI素子42との距離D2に基づいて、電流検出感度が規定されるので、必要な電流検出感度が得られるように、距離D1及び距離D2が設定される。それ以外の構成は、前述の実施形態と同様であり、同様の効果が得られる。
【0076】
図11及び
図12は、
図4(a)~(e)と同等の線幅で、第1電路241と第2電路242との間隔を
図9及び
図10よりもさらに広げた例を示している。また、電路20を基板12の表面に形成し、かつ、MIセンサ4を基板12の表面かつ第1電路241と第2電路242との間に取り付けている。このように、基板12の一方の面に、第1電路241及び第2電路242と、MIセンサ4の両方を設けてもよく、前述の実施形態と同様の同様の効果が得られる。さらに、このような構成にすることで、相対的に大きな電流を流すことによる温度上昇を低減することができる。
【0077】
-回路遮断手段の変形例-
以下、回路遮断手段の変形例について説明する。
【0078】
図15では、回路遮断手段3として、電路21と電路23との間において、
図14で説明した電路遮断機構30に電磁コイル33を直列に接続した構成例を示す。それ以外の構成は、前述の実施形態と同様である。
【0079】
このような構成にすることで、瞬時動作を電磁コイルで実施できるので、演算出力からの出力タイミングに依存せず、過大な電流が流れた瞬間に電磁引外式機構が作動することにより瞬時動作にも対応した回路遮断手段3とすることができる。
【0080】
図16では、回路遮断手段3として、電路21と電路23との間において、前述の実施形態で説明した半導体スイッチ38と、
図14で説明した電路遮断機構30とを直列に接続した構成例を示す。それ以外の構成は、前述の実施形態と同様である。
【0081】
この構成では、電路遮断機構30により、電路上の接点を物理的に開放し、固定接点と可動接点との空間距離を確保することができるので、より安全性を高めることができる。また、半導体スイッチ38を遮断させてから、電路遮断機構30を遮断させるように制御することで、電路遮断機構30の接点の摩耗を防ぐことができる。
【0082】
図17では、回路遮断手段3として、電路21と電路23との間において、
図16の構成に電磁コイル33を直列に設けた構成例を示す。それ以外の構成は、前述の実施形態と同様である。このような構成にすることで、瞬時動作にも対応できるとともに、より安全性を高めることができる。
【0083】
ここまでの回路遮断手段3は、AC用の構成例を示している。
【0084】
これに対し、
図18では、DC用の回路遮断手段3の構成例を示している。具体的には、
図18では、回路遮断手段3として、電路21と電路23との間にサイリスタ34を設けている。それ以外の構成は、前述の実施形態と同様である。
【0085】
-MIセンサの変形例-
なお、上記実施形態において、第1MI素子41と第2MI素子42は、同じパッケージ内部に実装されているものとしたが、これに限定されない。例えば、第1MI素子41と第2MI素子42とを互いに異なるパッケージに内蔵するようにしてもよい。この場合においても、第1電路241と第1MI素子41との間の距離と、第2電路242と第2MI素子42との間の距離とは、互いに等しくなるように設定されるのが好ましい。
【0086】
ただし、上記実施形態で説明したように第1MI素子41と第2MI素子42を同じパッケージに実装することにより、それぞれのMI素子41,42を基板に取り付ける際の取付誤差等に起因する電流検出誤差を生じにくくすることができる。
【0087】
また、図示しないが、主幹開閉器に引き込まれる単相3線式の電路において、第1の電圧相L1と中間相N、第2の電圧相L2と中間相Nが互いに並行に配置される電路とみなしてもよい。この場合、第1の電圧相L1と中間相Nの間に第1MI素子を、第2の電圧相L2L2と中間相Nの間に第2MI素子を配置するとよい。そして、演算出力部7により、第1MI素子及び第2MI素子の合成出力または差分出力を演算処理することにより、過電流や漏電などの異常電流を検出を行なうようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示に係る回路遮断器は、住居や店舗等の施設の屋内外で単体で使用したり、そのような施設で使用される分電盤に採用することができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0089】
1 回路遮断器
2 電路
3 回路遮断手段
4 MIセンサ(電流検出手段)
41 第1磁気インピーダンス素子
42 第2磁気インピーダンス素子
100 分電盤
101 筐体
241 第1電路
242 第2電路