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特開2023-164883向上されたハーベスティング耐性を示すセキュリティデバイスが取り付けられたセキュリティ文書
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164883
(43)【公開日】2023-11-14
(54)【発明の名称】向上されたハーベスティング耐性を示すセキュリティデバイスが取り付けられたセキュリティ文書
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/346 20140101AFI20231107BHJP
   B42D 25/29 20140101ALI20231107BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B42D25/346
B42D25/29
G02B3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137939
(22)【出願日】2023-08-28
(62)【分割の表示】P 2020573196の分割
【原出願日】2019-07-03
(31)【優先権主張番号】62/693,661
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516166085
【氏名又は名称】クレイン アンド カンパニー、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】プレット、ジャイルズ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ブライガム、クレイグ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン、マニッシュ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】セキュリティデバイス(SD)のハーベスティング防止特性の向上。
【解決手段】セキュリティ文書(10)は、セキュリティ基板(16)と、セキュリティデバイス(14)と、構造的脆弱要素(12)と、を備え、セキュリティデバイスがセキュリティ基板に結合されており、構造的脆弱要素が、セキュリティ基板またはセキュリティデバイスの少なくとも1つに組み込まれており、構造的脆弱要素が、ハーベスティング防止エリア(17)及びバルクエリア(19)を規定し、ハーベスティング防止エリアが、バルクエリアとの構造的忠実性または光学的忠実性の1つまたは複数を有している。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティ基板(16)と、
ポリマ基板の上または中に配置されたマイクロサイズのイメージ要素のアレイを含む層であって、前記イメージ要素が第1のスライスと、積層方向で見て前記第1のスライスより幅が狭い第2のスライスとを含む、層と、焦点合わせ要素のアレイを含むマイクロ光学セキュリティデバイスであるセキュリティデバイス(14)と、
構造的脆弱要素(12)と、を備え、
前記セキュリティデバイスが前記セキュリティ基板に結合されており、
前記構造的脆弱要素が、前記セキュリティ基板または前記セキュリティデバイスの少なくとも1つに組み込まれており、前記構造的脆弱要素が、少なくとも前記第2のスライスを含むハーベスティング防止エリア(17)及び前記第1のスライスを含み前記第2のスライスを含まないバルクエリア(19)を画定し、
前記ハーベスティング防止エリアが、前記バルクエリアとの構造的連続性または光学的連続性の1つまたは複数を有し、
前記構造的脆弱要素は、前記セキュリティ基板に組み込まれる場合は、前記層の前記セキュリティ基板の側の面のうち前記第2のスライスを外れた位置で終端して形成され、前記セキュリティデバイスに組み込まれる場合は、前記第2のスライスを除去せずに形成される、セキュリティ文書(10)。
【請求項2】
前記構造的脆弱要素が打抜き穴(12)のセットを備えている、請求項1に記載のセキュリティ文書。
【請求項3】
前記構造的脆弱要素が、前記イメージ要素のアレイの一部を備えている、請求項1に記載のセキュリティ文書。
【請求項4】
前記打抜き穴のセットが、前記セキュリティデバイスの頂部表面に対して平行な平面に対し、直角であるか傾斜した角度のいずれかで延びる打抜き穴を備えている、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項5】
前記打抜き穴のセットが、前記セキュリティデバイスまたは前記セキュリティ基板の厚さ方向に延びる、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項6】
前記マイクロサイズのイメージ要素のアレイと前記焦点合わせ要素のアレイとが、前記マイクロサイズのイメージ要素のアレイが、前記焦点合わせ要素のアレイを通して見られる場合に、1つまたは複数の合成イメージが投影されるように構成されている、請求項5に記載のセキュリティ文書。
【請求項7】
前記打抜き穴のセットが、
前記セキュリティデバイス全体を通して延びるか、
前記焦点合わせ要素を通して延び、前記焦点合わせ要素を切除し、前記セキュリティデバイスを、これらエリアにおける合成イメージの投影を不可能にする、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項8】
前記打抜き穴のセットが、前記セキュリティ基板の厚さの50%以上を通って延びる、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項9】
前記ハーベスティング防止エリア内のすべての打抜き穴が、前記セキュリティ文書の表面に対して平行な、同じ形状及び同じ横方向の寸法、ならびに、前記セキュリティ基板の表面に対して垂直な同じ軸方向の寸法を実質的に有する、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項10】
前記ハーベスティング防止エリアの各々の打抜き穴が、異なる形状、または前記セキュリティ基板の表面に対して平行な異なる横方向の寸法、または前記セキュリティ基板の表面に対して垂直な異なる軸方向の寸法を有する、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項11】
前記打抜き穴のセット全体が、前記セキュリティデバイス内に配置されている、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項12】
前記打抜き穴のセットが、前記セキュリティデバイスの境界を越えて延びる、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項13】
前記セキュリティ文書が銀行券である、請求項1に記載のセキュリティ文書。
【請求項14】
前記セキュリティ文書が銀行券であり、前記打抜き穴のセットが、前記銀行券に関するシリアル番号を備え、かつ、前記セキュリティデバイスと前記セキュリティデバイスを備えていない領域との両方にわたって延びる、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項15】
前記打抜き穴のセットが可視パターンを形成する、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項16】
前記打抜き穴のセットが、ライン形状の打抜き穴(26)または多角形形状の打抜き穴(24)の1つまたは複数を備えている、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項17】
前記ハーベスティング防止エリアを形成する前記打抜き穴のセットが、前記セキュリティデバイスの幅全体にわたって延び、前記セキュリティデバイスをより小さいピースにカットしている、請求項2に記載のセキュリティ文書。
【請求項18】
ポリマ基板の上または中に配置されたマイクロサイズのイメージ要素のアレイを含む層であって、前記イメージ要素が第1のスライスと、積層方向で見て前記第1のスライスより幅が狭い第2のスライスとを含む、層と、焦点合わせ要素のアレイを含むマイクロ光学セキュリティデバイスであり、セキュリティ基板(16)に結合されたセキュリティデバイス(14)を提供することと、
構造的脆弱要素(12)を前記セキュリティデバイスまたは前記セキュリティ基板に組み込むことと、を含み、
前記セキュリティデバイスが、前記構造的脆弱要素を組み込む前に前記セキュリティ基板に結合されており、
前記構造的脆弱要素が、前記セキュリティデバイス内の少なくとも前記第2のスライスを含むハーベスティング防止エリア(17)及び前記セキュリティデバイス内の前記第1のスライスを含み前記第2のスライスを含まないバルクエリア(19)を画定し、
前記構造的脆弱要素は、前記セキュリティ基板に組み込まれる場合は、前記層の前記セキュリティ基板の側の面のうち前記第2のスライスを外れた位置で終端して形成され、前記セキュリティデバイスに組み込まれる場合は、前記第2のスライスを除去せずに形成される、セキュリティ文書の形成方法。
【請求項19】
前記ハーベスティング防止エリアが、前記バルクエリアとの光学的連続性または光学的連続性を有している、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法に従って形成されたセキュリティ文書。
【請求項21】
請求項20に記載の方法に従って形成されたセキュリティ文書(10)であって、前記セキュリティ文書が、
セキュリティ基板(16)と、
ポリマ基板の上または中に配置されたマイクロサイズのイメージ要素のアレイを含む層であって、前記イメージ要素が第1のスライスと、積層方向で見て前記第1のスライスより幅が狭い第2のスライスとを含む、層と、焦点合わせ要素のアレイを含むマイクロ光学セキュリティデバイスであるセキュリティデバイス(14)と、
構造的脆弱要素(12)と、を備え、
前記セキュリティデバイスが前記セキュリティ基板に結合されており、
前記構造的脆弱要素が、前記セキュリティ基板または前記セキュリティデバイスに組み込まれており、かつ、前記セキュリティデバイス内の少なくとも前記第2のスライスを含むハーベスティング防止エリア(17)及び前記セキュリティデバイス(19)内の前記第1のスライスを含み前記第2のスライスを含まないバルクエリアを画定し、
前記ハーベスティング防止エリアが、前記バルクエリアとの構造的連続性または光学的連続性を有し、
前記構造的脆弱要素は、前記セキュリティ基板に組み込まれる場合は、前記層の前記セキュリティ基板の側の面のうち前記第2のスライスを外れた位置で終端して形成され、前記セキュリティデバイスに組み込まれる場合は、前記第2のスライスを除去せずに形成される、前記セキュリティ文書(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、セキュリティ基板に結合されたセキュリティデバイスを有するとともに、内部に組み込まれた構造的脆弱要素を有するセキュリティ文書に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ文書は、セキュリティデバイスを組み込むことにより、改ざんまたは偽造がされにくいものとされる場合がある。セキュリティデバイスは、様々な安全性の特徴を有し、セキュリティ文書内に様々な形態で設けられている。文書または書類の安全性または完全性は概して、すべての他の事項が等しい状態で、この文書または書類に包含される別々の個別の安全性の特徴の複雑さ及び数とともに向上される。
【0003】
偽造者は、しばしば、本物のセキュリティ文書をコピーするために、同時代のプリント及びコピー技術の知識に依存する。近年、偽造防止セキュリティデバイス、具体的には、光学的に可変性の安全性の特徴を有するセキュリティスレッド及びパッチが、セキュリティ文書を安全にするための認証用の特徴としてますます使用されるようになっている。光学的に可変性の安全性の特徴は、異なる視認角度からの視認者には視覚的に異なって見える。したがって、もっとも発展されたプリント及びコピー技術であっても、光学的に可変性の特徴によって与えられる光学的可変性を模倣することは不可能である。
【0004】
例として、Steenblik et al.に対する米国特許第7,333,268号には、(a)ポリマ基板の上または中に配置されたマイクロサイズのイメージアイコンの配置と、(b)焦点合わせ要素(たとえばマイクロレンズ)の配置と、を概して含む、マイクロ光学フィルム材料が記載されている。イメージアイコン及び焦点合わせ要素の配置は、イメージアイコンの配置が、焦点合わせ要素の配置を通して視認される際に、1つまたは複数の合成イメージが投影されるように構成されている。これら合成イメージは、様々な視点から視認される際に、複数の異なる光学的効果(たとえば、色、サイズ、形状、数などの変化)を示すことから、光学的可変性を明確に示す場合がある。そのような効果を与えることが可能な材料の構成は、Steenblik et al.に対する米国特許第7,468,842号、Steenblik et al .に対する米国特許第7,738,175号、Commander et al.に対する米国特許第7,830,627号、Kaule et al.に対する米国特許第8,149,511号、Kaule et al.に対する米国特許第8,878,844号、Kaule et al.に対する米国特許第8,786,521号、Kaule et al.に対する欧州特許第2162294号、及びKaule.に対する欧州特許第2164713号にも記載されている。
【0005】
Commander et al.に対する国際特許出願第PCT/GB2005/001618号には、一方側にマイクロレンズのアレイを有し、他方側にマイクロイメージの1つまたは複数の対応するアレイを有する基板を備えているセキュリティデバイスが記載されている。マイクロレンズアレイとマイクロイメージアレイ(複数可)との間の距離は、マイクロレンズの焦点距離に実質的に等しい。基板は、光がマイクロレンズを通過して、マイクロイメージに達することを可能にするように十分に透過性である。各マイクロイメージは、基板上の反射防止構造(たとえば、モスアイ構造)によって規定される。この反射防止構造は、同一の構造的要素の周期的アレイと、少なくとも部分的な反射層とによって形成されている。マイクロイメージは、反射防止構造と少なくとも部分的な反射層との一方または両方によって形成されている。基板を通過し、マイクロイメージに衝突する光は、マイクロイメージに衝突しない光とは異なる範囲に反射され、それにより、マイクロイメージを視認可能としている。
【0006】
銀行券及び他のセキュリティ文書に関し、これらセキュリティスレッド及びパッチは、銀行券または文書内に部分的に埋め込まれているか、その表面に添付されている。パスポートまたは他の認証用(ID)文書に関し、これら材料は、完全にラミネートされたものとして使用することができる。
【0007】
セキュリティデバイスの複製に基づく偽造を防止することにおける、上述したものなど、セキュリティデバイスの概略的な有効性に部分的に起因して、偽造者は、偽造セキュリティ文書を作成するために、かなり多くの他の技術に頼らなければならなかった。そのような技術の1つがハーベスティングである。「ハーベスティング」との用語は、本開示の文脈では、偽造、模造、または代用のいずれかの目的のために、完全な状態でセキュリティデバイスをセキュリティ文書のセキュリティ基板から除去するか結合解除することを包含している。ハーベスティングは、従来の偽造(たとえば、写真コピー、または他の複製方法)が技術的に不可能であるか、別様にオプションではない場合の偽造方法である。
【発明の概要】
【0008】
驚くべきことに、本開示の発明者は、セキュリティデバイス(SD)のハーベスティング防止特性の向上は、セキュリティデバイスがハーベスティング防止エリア及びバルクエリアを備えるように、構造的脆弱要素(SWE)をセキュリティ文書に組み込むことによって達成できることを見出した。いくつかの実施形態によれば、ハーベスティング防止エリアは、セキュリティデバイスをセキュリティ文書からハーベスティングする試みがされた場合に、セキュリティデバイスに、構造的または視覚的変化を生じさせる。いくつかの実施形態では、ハーベスティング防止エリアは、セキュリティデバイスのすべてまたは一部が、セキュリティ文書から完全な状態で除去されることを防止する。特定の実施形態によれば、構造的脆弱要素は、ハーベスティング防止エリアがセキュリティ文書のバルクエリアとの構造的忠実性または光学的忠実性を示すような方法でセキュリティ文書の一部として組み込まれる。
【0009】
本開示に係る実施形態は、(i)セキュリティ文書と、(ii)セキュリティ文書を形成する方法と、(iii)製品が態様(ii)の方法によって規定されたプロセスによって形成されたセキュリティ文書であるプロダクトバイプロセスと、(iv)構造的脆弱要素の使用と、を含んでいる。
【0010】
第1の実施形態では、セキュリティ文書は、セキュリティ基板に結合されたセキュリティデバイス(SD)を備え、構造的脆弱要素(SWE)は、セキュリティ基板、セキュリティデバイス、または両方に組み込まれて、セキュリティデバイス内のハーベスティング防止エリア及びバルクエリアを規定する。ハーベスティング防止エリアは、バルクエリアとの構造的忠実性または光学的忠実性の少なくとも1つを有している。セキュリティデバイスと、その延長の、内部にセキュリティデバイスが組み込まれたセキュリティ文書とには、慣習的なセキュリティ文書(たとえば、Steenblik et al .に対する米国特許第7,333,268号に記載のマイクロ光学セキュリティデバイスを有する銀行券であるが、少なくとも構造的脆弱要素を伴わない)に比べ、向上されたハーベスティング耐性が提供されている。
【0011】
第2の実施形態では、セキュリティ文書を形成する方法が、添付された(たとえば、結合された)セキュリティデバイスを有するセキュリティ文書を供給することと、セキュリティデバイスまたはセキュリティ基板に構造的脆弱要素を組み込むことと、を含んでいる。セキュリティデバイスをセキュリティ基板から分離するための試みがなされた際に、構造的脆弱要素は、セキュリティデバイスまたはセキュリティ文書を欠損させるように構成されている。
【0012】
第3の実施形態では、セキュリティ文書は、セキュリティ基板に結合されたセキュリティデバイス(SD)と、セキュリティ基板、セキュリティデバイス、または両方に組み込まれて、セキュリティデバイス内のハーベスティング防止エリア及びバルクエリアを規定する構造的脆弱要素(SWE)と、を備えている。セキュリティ文書は、添付された(たとえば、結合された)セキュリティデバイスを有するセキュリティ文書を供給することと、セキュリティデバイスまたはセキュリティ基板に構造的脆弱要素を組み込むことと、によって形成される。
【0013】
第4の実施形態では、向上されたハーベスティング防止耐性を提供する構造的脆弱要素の使用は、本明細書に記載のセキュリティ文書を提供することを含んでいる。ここでセキュリティ文書は、セキュリティデバイスに結合されたセキュリティ基板と、ハーベスティング防止エリアがバルクエリアとの構造的忠実性または光学的忠実性の少なくとも1つを有するように、ハーベスティング防止エリア及びバルクエリアを規定するように、セキュリティ基板またはセキュリティデバイスに組み込まれた構造的脆弱要素と、を含んでいる。
【0014】
本開示に係る実施形態は、セキュリティデバイスのハーベスティングを思いとどまらせる装置及び方法を提供することを目的にしている。より重要には、本開示に係る特定の実施形態の目的は、内部に組み込まれたセキュリティデバイスによって提供される偽造防止性に影響することなく、向上されたハーベスティング耐性を示すセキュリティ文書を提供することである。たとえば、驚くべきことに、構造的脆弱要素をセキュリティ文書の一部として組み込むことにより、ハーベスティング耐性が向上され、いくつかの実施形態では、特定のスレッド、パッチなどに見られる光学的に可変性の特徴によって提供される偽造防止性に影響することなく、ハーベスティング耐性が向上されることが見出された。驚くべきことに、セキュリティデバイスがセキュリティ基板にしっかりと結合された後に構造的脆弱要素を組み込む特定の実施形態では、セキュリティデバイスのハーベスティング防止エリアとバルクエリアとの間の光学的忠実性及び構造的忠実性の少なくとも1つが提供される。本明細書で使用される場合、「光学的忠実性」との用語は、バルクエリアに見られる光学的に可変性のイメージに少なくとも実質的に類似の、ハーベスティング防止エリア内の光学的に可変性のイメージを提供するセキュリティデバイスを包含している。このことは、Steenblik et al.に対する米国特許第7,333,268号に提供されるものなど、マイクロ光学セキュリティデバイス(たとえば、スレッド)によって提供される合成イメージ(複数可)の文脈において、特に有利である場合がある。様々な実施形態によれば、特定のマイクロ光学セキュリティデバイス(ストライプまたはパッチなど)は、本明細書に開示の構造的脆弱要素との組合せに特に適している。この理由は、そのようなセキュリティデバイスが、焦点合わせ要素のアレイを含んでおり、このアレイを通して、構造的脆弱要素が、下にあるイメージアイコン(すなわち、イメージ要素)を破壊することなく、合成イメージを補足するように、形成され得るためである。本明細書で使用される場合、「構造的忠実性」との用語は、ハーベスティング防止エリア内のセキュリティスレッドが、バルクエリア内のスレッドの形状に対して変形されない特性を包含している。代替的には、構造的脆弱要素がハーベスティング防止エリアに組み込まれている場合、これら要素は、いずれの顕著な方法でも変形しない。出願人は、驚くべきことに、このことが、Steenblik et al.に対する米国特許第7,333,268号で提供されるものなど、セキュリティデバイス(たとえば、スレッド、ストライプ、パッチなど)を利用する製品の文脈において、有利である場合があることを見出した。ポリマのベース材料の構成である、そのようなセキュリティデバイスは、セキュリティ基板への結合の間に、セキュリティデバイスに印加される延びまたはテンションの可変性に起因して、ハーベスティング防止エリアにおける物理的変形の影響を受けやすくなり得る。たとえば、テンションの調整により、セキュリティデバイスが延び、また、バルクエリアとは別の、ハーベスティング防止エリアの恒久的または明らかな変形を生じることになる。たとえば、基板の延びは、スレッドの幅をハーベスティング防止エリアにおいて、より速く狭めることになり得る。代替的には、基板を延ばすことは、構造的脆弱要素に、セキュリティデバイスの周りのエリアで、バルクエリアよりも速く、光学的に可変性の効果を変形させることになり得る。このため、セキュリティデバイスが基板のバルクエリアにどのように組み込まれるかに応じて、基板上の引張り応力が、たとえば、バルクエリアには再現されないハーベスティング防止エリアのテーパを生じることにより、2つのエリア間の構造的忠実性を破壊し得る。しかし、本開示に係る特定の実施形態を参照して記載したように、最初にセキュリティデバイスをセキュリティ基板に結合することにより、セキュリティデバイスは、セキュリティ基板に留めることができ、それにより、構造的脆弱要素が、結合フェイズの間、セキュリティデバイスの構造的忠実性に影響しないようになっている。この理由は、セキュリティデバイスが、すでにセキュリティ基板に結合されていることになるためである。したがって、構造的脆弱要素は、ハーベスティング防止エリア内のセキュリティデバイスに、バルクエリアと一致する構造的または光学的忠実性を失わせることはない。むしろ、そのセキュリティデバイスがそのセキュリティ基板に結合されたセキュリティ文書は、テーパが付されていないか、別様に変形されていない。
【0015】
本開示に係る特定の実施形態では、構造的脆弱要素は、セキュリティデバイス、セキュリティ基板、セキュリティ文書の別の構成要素層、またはこれらの任意の組合せに形成された打抜き穴のセットを備えている。本明細書で使用される場合、「セット」との用語は、特定のタイプの1つまたは複数のアイテムを包含している。特定の実施形態では、打抜き穴のセットは、セキュリティデバイスのバルクエリアとは別のハーベスティング防止エリアを規定するように配置されている。複数の打抜き穴を備えた実施形態では、打抜き穴は、ランダムまたはあるパターンで配置されている場合があり、また、バルク及びハーベスティング防止エリアを規定する場合がある。
【0016】
本開示に係る特定の実施形態では、セキュリティ文書は、セキュリティ基板、セキュリティデバイス、及び構造的脆弱要素を備えた銀行券である。セキュリティデバイスは、いくつかの実施形態では、セキュリティ基板に結合された(すなわち、表面に固定されたか、埋め込まれたか、部分的に埋め込まれた)スレッド(すなわち、パッチまたはストライプ)であり、構造的脆弱要素は、互いに対する構造的及び光学的忠実性を有するセキュリティデバイス内のハーベスティング防止エリアとバルクエリアとを規定するように、セキュリティ基板及びセキュリティデバイスの少なくとも1つに組み込まれた打抜き穴のセットである。
【0017】
本開示のさらなる利点及び実施形態は、以下の詳細な説明に鑑み、当業者(PHOSITA)には容易に明らかとなるであろう。明らかとなるように、本明細書に記載の非限定的な実施例は変更することができ、そのような変更された実施形態が本開示の範囲内となる。本開示は、これら特定の詳細のいくつかまたはすべてを伴わずに実施され得る。他の例では、周知のプロセスの操作は、本開示を不必要に不明瞭にすることを避けるために、詳細に記載されない。したがって、図面及び詳細な説明は、その性質が、限定的ではなく説明的であるものと解されるものとする。
【0018】
他の技術的特徴は、以下の図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲から、当業者には容易に明らかとなる場合がある。
【0019】
以下の詳細な説明に着手する前に、本特許文献を通して使用される特定のワード及びフレーズの定義を説明することが有利であり得る。「結合」との用語、及びその派生形は、2つ以上の要素が互いに物理的に接触しているか否かに関わらず、それら要素間の任意の直接的または間接的通信に言及する。「含む(include)」及び「備える(comprise)」との用語、ならびにそれらの派生形は、限定することなく、包含を意味している。「または」との用語は、包括的であり、及び/または、を意味する。「関連する」とのフレーズ、及びその派生形は、含む、その中に含まれる、相互に接続される、包含する、その中に包含される、接続される、結合される、通信可能である、協同する、交互に挟まれる、並置される、近接する、束ねられる、有する、その性質を有する、関連性を有するなどを意味する。「少なくとも1つ」とのフレーズは、アイテムのリストとともに使用される場合、列挙されたアイテムの1つまたは複数の様々な組合せが使用され得ることを意味し、また、そのリスト内の1つのアイテムのみが必要である場合がある。たとえば、「A、B、及びCの少なくとも1つ」は、A、B、C、A及びB、A及びC、B及びC、ならびに、A及びB及びCの組合せのいずれかを含んでいる。
【0020】
他の特定のワード及びフレーズに関する定義は、本特許文献を通して提供される。当業者には、ほとんどの例ではない場合、複数において、そのような定義が、そのような定義されたワード及びフレーズの以前の使用及び将来の使用に適用されることを理解されたい。
【0021】
本開示及びその利点をより完全に理解するために、添付図面に関連して取られる以下の詳細な説明を参照する。添付図面では、同様の参照符号は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図であり、打抜き穴のセットが、マイクロ光学セキュリティデバイスと下にあるセキュリティ文書との両方の厚さ全体を通って垂直な角度で延びている。
図1B】本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図であり、打抜き穴のセットが、垂直な角度の代わりに傾斜した角度で延びている。
図2】本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図であり、打抜き穴のセットが、2つの焦点合わせ要素を切除する役割を果たすが、下にある光学スペーサ及びイメージアイコンは切除していない。
図3A】本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図であり、打抜き穴のセットが、マイクロ光学セキュリティデバイスのみの厚さ全体を通って垂直な角度で延びている。
図3B】本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図であり、打抜き穴のセットが、垂直な角度の代わりに傾斜した角度で延びている。
図4A】本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図であり、打抜き穴のセットが、下にあるセキュリティ文書のみの厚さ全体を通って垂直な角度で延びている。
図4B】本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図であり、打抜き穴のセットが、垂直な角度の代わりに傾斜した角度で延びている。
図5】本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図であり、打抜き穴があるパターンで適用されており、打抜き穴のセットは、(a)セキュリティスレッドの境界の内側に含まれるドル記号のシンボルを形成するドットのマトリクス、及び、(b)セキュリティスレッドにわたり、かつセキュリティ文書の本体へ外に延びる非線形のラインとして適用されている。
図6】本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図であり、台形及び線形の打抜き穴が、セキュリティデバイスをパッチに見えるものへとカットするために使用される。
図7】本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図であり、セキュリティ文書は銀行券であり、打抜き穴のセットは、銀行券にシリアル番号を付すために使用され、セキュリティデバイスに渡るとともに、銀行券の本体内に延びることにより、シリアル番号を付す。
図8】本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図であり、線形の打抜き穴がセキュリティデバイス内に形成されており、この打抜き穴のいくつかは、取り付けられたデバイスの縁部に向かって延びるとともに、この縁部を中断させている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示に係る特定の実施形態は、セキュリティデバイスによって提供される偽造防止性の、いずれの付随する性能低下をも伴わずに、向上されたハーベスティング耐性を提供するセキュリティ文書に関する。いくつかの実施形態では、セキュリティ文書は、セキュリティ文書の少なくとも1つの他の構成要素内に組み込まれた構造的脆弱要素を備えており、それにより、セキュリティデバイスのハーベスティングを行うことが試みられた際に、セキュリティ文書のセキュリティデバイスまたはセキュリティ基板が欠損するようになっている。驚くべきことに、さらに有利には、特定の実施形態では、構造的脆弱要素は、セキュリティデバイスまたはセキュリティ基板に損傷を生じることなく、セキュリティデバイスがセキュリティ基板に結合された後に組み込むことができる。構造的脆弱要素は、構造的脆弱要素がセキュリティ基板に適用される前にセキュリティデバイスに適用することができることが予期されるが、本出願人は、そのような条件下では、セキュリティデバイスが、セキュリティ基板への結合の際に変形されることになり得ることを見出した。そのような変形は、セキュリティデバイスのハーベスティング耐性のエリアと、セキュリティデバイスのバルクエリアとの間の構造的または光学的な忠実性を乱し得る。本開示に係る様々な実施形態では、セキュリティデバイスは、最初にセキュリティ基板に結合され、次いで、構造的脆弱要素は、セキュリティデバイスとセキュリティ基板との少なくとも1つに組み込まれる。したがって、いくつかの実施形態では、結果として得られるセキュリティ文書は、ハーベスティング防止エリアとバルクエリアとの間の構造的忠実性、またはハーベスティング防止エリアとバルクエリアとの間の光学的忠実性との少なくとも1つを有するセキュリティデバイスを含んでいる。
【0024】
本明細書ですでに述べたように、本開示に係る実施形態は、(i)セキュリティ文書と、(ii)セキュリティ文書を形成する方法と、(iii)製品が(ii)の方法によって規定されたプロセスによって形成されたセキュリティ文書であるプロダクトバイプロセスと、(iv)構造的脆弱要素の使用、より広範囲には、セキュリティ文書にハーベスティング防止特性を与えるための、(i)及び(iii)のセキュリティ文書の使用と、を含んでいる。
【0025】
セキュリティ基板
様々な適切なセキュリティ基板が、本開示に鑑み、当業者には明らかとなるであろう。これら実施形態は、本明細書に記載のものに対する代替的実施形態を形成するものとして理解されるものであり、したがって、本開示の範囲内にある。たとえば、本開示の範囲内にあると予期されるのは、セルロース、紙を含む材料、複合材料、紙とポリマとのハイブリッド、及びこれらの組合せなどの、紙または他の繊維性材料を包含する基板である。複合材料の実施例には、限定ではないが、紙と、少なくとも1つのプラスチックまたは高分子材料との複数層構造または積層がある。いくつかの実施形態では、セキュリティ基板は繊維性紙基板である。
【0026】
セキュリティデバイス
本開示の特定の実施形態に係るセキュリティ文書は、セキュリティ基板に結合されたセキュリティデバイスを含んでいる。本開示の洞察的観点では、様々な適切なセキュリティデバイスを含む本開示の様々な実施形態が、当業者には明らかとなるであろう。したがって、本明細書に記載の特定のセキュリティデバイスは、例示的ものに過ぎない。たとえば、マイクロ光学セキュリティデバイスが本明細書に記載されているが、光学的に可変性の特徴を有するセキュリティデバイス及び光学的に可変性の特徴を有していないセキュリティデバイスを含む、他のセキュリティデバイスも、本開示の範囲内にあることが予期される。
【0027】
本開示に係る特定の実施形態での使用に適切なセキュリティデバイスの実施例は、限定ではないが、Cape et al.に対する米国特許第9,873,281号に記載されている。これら単一層のシステムは、上側弧状表面と、下側表面と、上側弧状表面と下側表面とによって境界が定められた弧状エリアと、任意選択的に反射性の弧状要素の少なくともいくつかの上または中に配置されたイメージのレリーフの微細構造の任意選択的に反射性のパターンと、を有する、任意選択的に反射性の弧状要素の配置で形成されている。任意選択的に反射性の弧状要素と、イメージのレリーフの微細構造の任意選択的に反射性のパターンとの配置は、単一層内にあり、かつ、1つまたは複数のイメージを投影するように相互作用する。
【0028】
特定の単一層のセキュリティデバイス内の微細構造は、上側弧状表面から下側表面に延びることができるか、代わりにこれら表面間のポイントで始まるか終端することができる。これら表面間のポイントで始まるか終端する微細構造のカテゴリーに関し、凸状表面の湾曲を有する上側弧状表面については、イメージのレリーフの微細構造は、この表面から下方に延び、弧状エリアで終端する。凹状表面の湾曲を有する上側弧状表面については、イメージのレリーフの微細構造は、この表面から上方に延び、上側弧状表面の湾曲によって規定されたエリア内で終端する。システムを通しての光の伝達、システムからの光の反射、またはこれらの組合せにより、1つまたは複数のイメージが形成される。
【0029】
本開示に係る実施形態で使用することができる複数層のセキュリティデバイスの実施例は、限定ではないが、国際特許出願公開であるWO2005/052650、WO2006/125224、WO2008/008635、WO2011/019912、WO2011/163298、WO/2013/028534、WO2014/143980、WO2009/017824、WO2016/044372、WO2016/011249、WO2013/163287、WO2007/133613、WO2012/103441、WO2015/148878、WO2005/106601、及びWO2006/087138に記載されている。これら出願はこれにより、すべて、その全体が本明細書に組み込まれる。そのようなセキュリティデバイスは、基板の表面上または表面内のイメージ要素(すなわち、イメージアイコン)の1つまたは複数の配置と、焦点合わせ要素(たとえばマイクロレンズ)の1つまたは複数の配置と、を含むことができる。焦点合わせ要素は、イメージ要素の配置(複数可)に対して実質的に平行に、かつ、イメージアイコン内のイメージ要素の、1つまたは複数の合成的に拡大されたイメージをマイクロレンズが投影するのに十分であるイメージ要素からの距離で配置されている。関連付けられた焦点合わせ要素(たとえば、マイクロレンズ)とイメージ要素(たとえば、アイコン構造)とのグループは、イメージセキュリティデバイスの長さまたは幅にわたって繰り返される場合があるか、繰り返されない場合があり、合成イメージ(すなわち、光学的に可変性の特徴)を集合的に形成し、拡大し、投影する場合があるか、しない場合がある。実施例として、マイクロレンズ/アイコン構造は、システムが傾けられるか、視認角度が変化した際に、1つまたは複数の合成的に拡大されたイメージを投影する。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のマイクロ光学セキュリティデバイスは、光透過性であるデバイス基板を備えている。一実施形態では、そのようなデバイス基板は、光透過性ポリマフィルムである。そのようなマイクロ光学セキュリティデバイスでは、光透過性ポリマフィルムは、光学的スペーサとして機能する。特定の実施形態に係る光透過性ポリマフィルムは、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリビニルカーボネート、ポリ塩化ビニリデン、及びこれらの組合せなどの、1つまたは複数の基本的に無色のポリマで形成されている場合がある。
【0031】
様々な実施形態によれば、光透過性ポリマフィルムの厚さは、約12ミクロンから約26ミクロンの範囲にある(いくつかの実施形態では、約13ミクロンから約17ミクロン)。適切な焦点合わせ要素には、限定ではないが、(i)筒状であるか筒状ではないレンズの1つまたは複数の配置と、(ii)焦点合わせ反射器の1つまたは複数の配置と、(iii)複数のアパーチャを含む1つまたは複数の不透明層と、(iv)1つまたは複数の反射層と、などのマイクロレンズが含まれる。
【0032】
本開示の様々な実施形態に係る焦点合わせ要素は、筒状ではないレンズ、特に、球面または非球面を有するレンズとすることができる。非球面には、円錐形、楕円形、パラボラ形、及び他のプロファイルが含まれる。これらレンズは、円形、卵形、多角形のベース幾何学形状を有する場合があり、また、規則的であるかランダムな、1次元または2次元のアレイに配置される場合がある。特定の実施形態では、マイクロレンズは、基板または光透過性ポリマフィルム上に規則的な2次元のアレイで配置される多角形(たとえば六角形)のベース幾何学形状を有する非球面のレンズである。
【0033】
本開示の様々な実施形態に係るマイクロレンズ焦点合わせ要素は、約50ミクロン未満の幅及びベース直径を有する。特定の実施形態では、約45ミクロン未満であるか、約10ミクロンから約45ミクロンの間の幅が有利であり得る。様々な実施形態では、これら焦点合わせ要素のための焦点距離は、約50ミクロン未満であり、約45ミクロン未満または約10ミクロンから約30ミクロンの間の焦点距離が、いくつかの実施形態では特に有利である。本開示の特定の実施形態に係る焦点合わせ要素は、2以下のf数を有し、特定の実施形態では1以下のf数が有利である。
【0034】
本開示の様々な実施形態に係るイメージ要素(すなわち、アイコン)は、1つまたは複数のアイコンのデザインを含んでいる。さらに、イメージ要素は、1つまたは複数のイメージ要素のデザインからの1つまたは複数のスライス(すなわち、狭いバンドまたはストリップ)を含む場合があり、各スライスは、隣接するスライス(複数可)からわずかに離間して配置されているか、隣接するスライス(複数可)に当接している(すなわち、縁部または境界で触れているか結合している)か、隣接するスライス(複数可)にわずかに重なっている。スライスは、最終的に投影されるイメージ(複数可)を調整するか良好に調節するために、内容物、間隔、または重なっている程度に関して操作される場合がある。
【0035】
第1のタイプのイメージアイコン(すなわち、1つまたは複数のアイコンデザインで形成された完全なイメージアイコン)を準備するために使用されるアイコンデザイン、または第2のタイプ(すなわち、いわゆる縫合されたアイコン)は、限定ではないが、正または負のシンボル、形状、文字、数字、テキスト、及びこれらの組合せを含む、決まっているか流動的なグラフィックデザインの任意のタイプである場合がある。決まっているアイコンデザインの実施例には、星、箱、ベル、数字と組み合わせられたベルなどが含まれる。一方、流動的なアイコンデザインの実施例には、まばたきする目、及び収縮するか回転する通貨のシンボルが含まれる。
【0036】
縫合されたアイコンを形成するために、縫合されたアイコンを形成することになるアイコンデザインは、バンドまたはストリップに分解される。各アイコンデザインからのバンドまたはストリップは、こうして、スライスが離間しているか、当接しているか、わずかに重なった状態で、互い違いであるか交互に挟み込まれた方式で配置されて、縫合されたアイコンを形成する場合がある。縫合されたアイコン内の各スライスは、1つまたは複数のレンズの後方で、このレンズの焦点(複数可)において整列されている。本開示に係る特定の実施形態では、コンピュータプログラムが、これらスライスを準備するために使用される。Coteに対する米国特許第8,739,711号には、本開示に係る実施形態で使用するために適切な縫合されたアイコンの実施例の非限定的な選択肢が提供されている。
【0037】
本開示に係る特定の実施形態が、光学的に可変性の特徴を有するセキュリティデバイスの文脈で基本的に記載されているが、本開示の範囲はそのように限定されないことを理解されたい。また、セキュリティデバイスが光学的に可変性の特徴を含まないか、静的な特徴と光学的に可変性の特徴との組合せを使用する場合にも適用可能であるものとして理解されたい。さらに、セキュリティデバイスは、金属、金属で被覆され、選択的に金属の被覆が除去された蛍光発光要素及び磁気要素、色シフト、ホログラフ、3D効果、格子、ならびにこれらの組合せを採用する、単一層または複数層のフィルム材料などの様々な形態を取り得る。
【0038】
結合
本開示に係る特定の実施形態には、セキュリティ基板に結合されたセキュリティデバイスを備えたセキュリティ文書が含まれている。本明細書では、いくつかの実施形態では、セキュリティデバイスがセキュリティ基板に直接結合されているが、セキュリティデバイスが間接的にセキュリティ基板に結合されていることも本明細書では予想されることを理解されたい。したがって、セキュリティデバイスをセキュリティ基板に結合することの言及は、この文脈で理解され、読まれるものとする。たとえば、一実施形態では、セキュリティデバイスは、セキュリティ基板の表面に直接接着剤によって結合されている。代替的実施形態では、セキュリティデバイスは、拘束層、マスキング層、反射層、インク層、または他の機械が検出可能(たとえば、IR、蛍光発光など)な材料層などの、交互に挟み込まれた構成要素に結合されている。これら構成要素は次いで、セキュリティ基板に直接的または間接的に結合されている。さらに、セキュリティ基板へのセキュリティデバイスの結合は、直接的か間接的かに関わらず、セキュリティ基板の頂部表面または底部表面でされるか、内部に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、セキュリティデバイスがストリップまたはパッチの形態であることも、本明細書で予期される。セキュリティデバイスがストリップ/ストライプであるケースでは、ストリップを表面に添付するか、埋め込むか、紙内に編み込むことが予期される。セキュリティデバイスが表面に添付される場合、セキュリティデバイスの表面全体が露出される一方、編み込まれるセキュリティデバイスに関し、セキュリティデバイスの1つの表面の一部が、セキュリティ基板の一部の下に隠れる。たとえば、編み込まれたセキュリティデバイスは、ウインドウを形成し、この中で、セキュリティデバイスがアクセス可能/視認可能であり、ブリッジを形成する。このブリッジの下では、セキュリティデバイスはアクセス不可能である/隠れている。セキュリティデバイスが埋め込まれている場合、セキュリティ基板の内部に、下に埋め込むことができ、一実施形態では、透過光を通して視覚的に検出可能である。
【0039】
当業者に明らかである場合があるものなど、直接的または間接的に、セキュリティデバイスを結合するためのさらなる方法は、本開示の予期される範囲内にある。たとえば、熱、水、または放射によって活性化される接着剤がもっとも適している。代替的には、セキュリティデバイスは、セキュリティ基板の形成中または形成後に、セキュリティ基板に直接結合される場合がある。たとえば、例示的な一実施形態では、セキュリティデバイスは、セキュリティ基板を形成するために使用される繊維スラリーに編み込むことにより、セキュリティ基板に結合され、また、紙の製造プロセス中にこのスラリーとともに編み込まれる。いくつかの実施形態では、圧力、熱、水、または他の放射で活性化される接着剤が、セキュリティ文書の2つの構成要素を結合するために、セキュリティデバイスとセキュリティ基板との間に添付されることが、さらに予期される。いくつかの実施形態では、熱または水で活性化される接着剤を使用することが有利であり得る。
【0040】
本明細書に記載のように、特定の実施形態では、セキュリティデバイスは、スレッド(すなわち、パッチまたはストライプ)である場合がある。セキュリティ基板の製造プロセス中にセキュリティデバイスをセキュリティ基板に結合することは、しばしば、製造中のセキュリティデバイス上のテンションをプロセス中に調整することを必要とする。このようなプロセス中の調整の一部として、セキュリティデバイスが、延ばされるか、圧縮されるか、解放される。そのようなプロセス中の調整により、セキュリティデバイスは、光学的欠損または構造的欠損の少なくとも1つを発生させることにより、変形される。ここで、セキュリティデバイスのハーベスティング防止エリアは、セキュリティデバイスのバルクエリアとのその光学的忠実性または構造的忠実性の少なくとも1つを失い得る。セキュリティデバイスがストライプである場合、本開示はもっとも適している。この理由は、セキュリティデバイスをセキュリティ基板に結合する際に、セキュリティデバイスの最大の延び(テンションの変化)が発生するためである。
【0041】
様々な実施形態によれば、単一層または複数層のマイクロ光学セキュリティデバイスがセキュリティスレッドとして設けられる場合、銀行券に編み込まれる場合があり(すなわち、部分的に埋め込まれる)、明確に規定されたウインドウにおいてのみ視認可能であり、銀行券の表面の特定のセクションでは隠されている。これらウインドウは、特定の実施形態では、長さが約6ミリメートル(mm)から約21mmの大きさであり、幅が約3.5mmから約4.5mmであるが、そのようなウインドウのいずれにおいても、約1/2から約5の数値の範囲のイメージンググループが物理的に存在することを許容する。セキュリティデバイスは、各ウインドウ内のイメージンググループが、同じであるか異なる光学的効果を有するイメージを投影するように、設計される場合がある。銀行券の偽造防止性をさらに向上させるために、セキュリティデバイスは、セキュリティ基板に結合されている場合があり、それにより、これら投影されたイメージが、セキュリティデバイスまたはセキュリティ基板上にプリントされたイメージと等位である場合があるようになっている。
【0042】
様々な実施形態によれば、単一層または複数層のマイクロ光学セキュリティデバイスがパッチの形態である場合、このセキュリティデバイスは、接着剤によって銀行券の表面に添付される場合がある。予期される一実施形態では、約3ミクロンから約12ミクロンの範囲の厚さを有する接着剤層がパッチの表面に添付される。適切な接着剤は限定されず、また、限定ではないが、アクリル系(たとえば、ポリ(メチルメタクリレート))、及びポリウレタン、ならびに、熱で活性化される接着剤(すなわち、ホットメルトまたはヒートシール接着剤)を含む熱可塑性接着剤の系を含んでいる。
【0043】
構造的脆弱要素
本開示の別の箇所で論じたように、ハーベスティングは、偽造されたか本物ではないセキュリティ文書を形成するための実用的なメカニズムであり、したがって、ハーベスティングを防止することには、技術的課題の根源と、セキュリティデバイス及びセキュリティ文書の性能を向上させるための動機とが残っている。さらに、セキュリティデバイスの偽造防止特性を損なうか消失させることなく、セキュリティ文書に、このハーベスティング防止特性を組み込むことができることも望ましい。セキュリティ文書のセキュリティ基板へのセキュリティデバイスの結合に影響することなく、ハーベスティング防止特性をセキュリティ文書に組み込むことができることも望ましい。したがって、本開示に係る実施形態の目的は、ハーベスティング耐性に関するユーザの関心に訴えるセキュリティデバイスを提供することである。「構造的脆弱性」との用語は、本開示で使用される場合、セキュリティデバイス内に構造的または光学的な欠損を引き起こし、セキュリティ文書からセキュリティデバイスをハーベスティングする試みに応じて、(たとえば、本物であることの印を提供する光学的可変性を与えることを止めることにより)デバイスを機能不全にする、印加された欠陥を含むセキュリティデバイスまたはセキュリティ文書の部分を包含している。
【0044】
本開示に係る特定の実施形態では、セキュリティデバイスまたはセキュリティ基板内に脆弱性のポイント(ハーベスティング防止エリア)を形成することにより、セキュリティデバイス/セキュリティ文書のハーベスティング耐性が、セキュリティデバイス/セキュリティ文書の偽造防止に負の影響を与えることなく、向上される。構造的脆弱要素により、セキュリティ文書またはセキュリティデバイスに向上されたハーベスティング耐性が与えられる。特定の実施形態では、セキュリティデバイスをセキュリティ文書から分離する(たとえば、強制的に除去する)ための試みがされた際に、構造的脆弱要素は、デバイスまたは文書を欠損させる(すなわち、破れる、割れる、変形する、または分離する)。選択された実施形態では、構造的脆弱要素は、セキュリティデバイス、セキュリティ基板、またはセキュリティ文書を永続的または視覚的に変形または破損させることなく、セキュリティデバイスをセキュリティ基板から分離する(すなわち、結合解除する)ことを防止する。たとえば、特定の実施形態では、構造的脆弱要素は、単一の、再使用可能なピースとしてセキュリティデバイスが結合解除されることを防止し、それにより、そのハーベスティング及び偽造セキュリティ文書上での再使用を防止する。特定の実施形態では、本開示は、身分証明書(たとえば、パスポート、行政上のIDなど)、通貨の文書(たとえば、チェック、銀行券など)、または消費者製品の文書(たとえば、ラベル、サイン、タグなど)などのセキュリティ文書を安全なものにし、本物であることを証明するために適切である。
【0045】
本開示に係る特定の実施形態では、構造的脆弱要素がデバイスに追加される場合であっても、セキュリティデバイスの光学的可変性が、たとえば、損なわれず、かつ機能的であるままであり、それにより、たとえば向上された印刷/コピー技術に依存する偽造の試みを妨害するその能力を維持している。しかし、構造的脆弱要素が、いくつかの実施形態では、セキュリティ文書の少なくとも1つの構造的要素に戦略的に組み込まれていることから、セキュリティデバイスをハーベスティングすることの試みにより、セキュリティデバイスを識別可能に変形させる。そのような識別可能な変形は、セキュリティデバイスを危うくし、このため、偽造文書のセキュリティデバイスがセキュリティデバイスによって与えられる、本物であることの視覚的証印を有することになる、偽造文書での使用には不適切となる。これら識別可能な変形は、セキュリティデバイスの構造的または光学的な欠損としてより容易に理解され得る。本明細書で使用される場合、「構造的欠損」との用語は、セキュリティデバイスの少なくとも一部が、破れている、千切れている、破損している、くしゃくしゃになっている、または分裂していることを包含している。このことは、セキュリティデバイスが完全な状態で本物の文書から偽造文書に移動されることを防止する。本明細書で使用される場合、「光学的欠損」との用語は、セキュリティデバイスの光学的に可変性の特徴の視覚的劣化を包含する。光学的欠損の実施例には、限定ではないが、動的な(たとえば、移動する)光学的に可変性の特徴を静的にすること、光学的に可変性の特徴を見えなくすること、または、光学的に可変性の特徴の品質(たとえば、透明度)を下げることが含まれる。
【0046】
本開示の特定の実施形態によれば、構造的脆弱要素は、セキュリティ文書の任意の層または構成要素に組み込まれている場合があることが本明細書で予期される。特定の実施形態では、構造的脆弱要素をセキュリティ基板またはセキュリティデバイスに組み込むことが有利であり得る。この理由は、いくつかの実施形態では、セキュリティデバイスとセキュリティ基板との少なくとも1つが、しばしば、セキュリティ文書の表面(複数可)に配置され、したがって、偽造者/ハーベスターとなることになる者による攻撃のポイントである。構造的脆弱要素をセキュリティ基板に組み込むことは、ハーベスティングの間に基板を欠損させる(すなわち、分裂させるか、ばらばらにする)ことにより、ハーベスティング耐性を向上させることができる。さらに、構造的脆弱要素をセキュリティ基板に組み込むことにより、セキュリティデバイスを、構造的脆弱要素を有するセキュリティ基板内のエリアから分離することの困難性を向上させることができる。代替的には、いくつかの実施形態では、構造的脆弱要素は、少なくともセキュリティデバイスに組み込まれている。具体的には、構造的脆弱要素をセキュリティデバイスに戦略的に組み込むことにより、セキュリティデバイス内に欠損ポイント/エリアを形成し、それにより、不可能でなければ、セキュリティデバイスの識別可能な変形を伴わずにセキュリティデバイスをハーベスティングすることは、ますます困難になり、結果として構造的または光学的欠損となる。当業者には、いくつかのセキュリティ文書がウインドウ状のセキュリティデバイスを含んでいることを理解されたい。このウインドウ状のセキュリティデバイスには、セキュリティ基板の製造の間にセキュリティデバイスがセキュリティ基板内に埋め込まれ、ウインドウ状のエリア及びブリッジを形成する。そのような実施例では、ブリッジにわたって構造的脆弱要素を含むことが有利であることがわかっている。これにより、ブリッジの下に埋まっているセキュリティデバイスの部分をハーベスティングする試みに対する構造的な妨害を形成する。このブリッジの下に埋まっているセキュリティデバイスの部分は、構造的脆弱要素が備えられている場合、識別可能に変形することになる。
【0047】
構造的脆弱要素は、いくつかの実施形態では、これら要素が、ハーベスティングの試みの間に構造的または光学的欠損の少なくとも1つを促すような方式で構成される(たとえば、サイズ、形状、数、分布、または配置が設定される)ように、戦略的に組み込まれている。いくつかの実施形態では、構造的脆弱要素は、打抜き穴のセットを含んでいる。本明細書で使用される場合、「打抜き穴」または「複数の打抜き穴」との用語は、セキュリティ文書の特定の構成要素または構成要素の組合せの深さ/厚さの少なくとも一部を通して延びる穴を包含する。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態に係る打抜き穴は、様々な形状及びサイズを取る場合があり、また、ハーベスティング防止エリアに様々なパターンまたはランダムに分布されて配置される場合がある。特定の実施形態では、打抜き穴は、残りのバルクエリアとは別のハーベスティング防止エリアを規定するように配置されている。本明細書で使用される場合、「ハーベスティング防止エリア」との用語は、セキュリティ基板内、セキュリティデバイス内、またはセキュリティ文書の任意の他の構成要素内などの、打抜き穴のセットが配置されるセキュリティデバイスの内、下、または上のエリアを包含している。換言すると、いくつかの実施形態では、ハーベスティング防止エリアは、打抜き穴のセット(複数可)の配置がセキュリティデバイスと重なっている位置(複数可)を含んでいる。打抜き穴は、特定の実施形態では、境界領域がバルクエリアとハーベスティング防止エリアとの間に形成されるように配置されている。いくつかの実施形態では、打抜き穴を所定のパターンで配置することが有利であり得る。驚くべきことに、打抜き穴が、セキュリティデバイスのいずれかの縁部から中心に向かってテーパが付されているパターン、または、1つの側部から反対側の側部に向かってテーパが付されたパターンで配置された実施形態は、ハーベスティングの試みに応じて構造的または光学的な欠損を促すことに有効であることが証明されている。
【0049】
本開示の範囲内にあることが予期されている打抜き穴は、ハーベスティング防止エリアにわたって一様なサイズ、形状、または深さを取る場合があるか、これら打抜き穴は、ハーベスティング防止エリアにわたってそれらが変化している場合がある。特定の実施形態では、ハーベスティングの事象において、打抜き穴が構造的または光学的欠損を生じるのに十分な幅であるが、特に反射光において、視覚的に検出不可能であることが有利であり得る。打抜き穴は、光が抜けることを可能にする(すなわち、入射光の波長の少なくとも1/2)が、反射光または透過光の少なくとも1つで視覚的に検出不可能とすることができる。様々な実施形態では、打抜き穴のセットが、好ましくは、打抜き穴の少なくとも1つが100ミクロン未満、50ミクロン未満、または35ミクロン未満であるような寸法である。本開示の文脈内での反射光の見え方には、セキュリティ文書またはセキュリティデバイスを一方側から照らし、同じ側からセキュリティデバイスを見ることが含まれる。代替的には、透過光の見え方には、セキュリティ文書またはセキュリティデバイスを一方側から照らし、反対側からセキュリティデバイスを見ることが含まれる。
【0050】
ハーベスティング防止エリアを規定する打抜き穴は、本開示の様々な実施形態によれば、ハーベスティング防止エリアにおいて、直角もしくは斜めの角度、またはこれらの組合せで延びる場合がある。特定の実施形態では、斜めの角度で延びる打抜き穴を有することの性能の背景から、打抜き穴が視覚的に検出しにくいことを有利とすることができる。特定の実施形態では、角度が付けられた打抜き穴は、打抜き穴のセットがセキュリティデバイスに組み込まれている場合に使用される。本明細書で使用される場合、「視覚的に検出可能」との用語は、裸眼によって分析可能な特徴の特性を包含し、一方、「視覚的に検出不可能」との用語は、裸眼によって分析不可能な特徴を包含している。たとえば、一実施形態では、ハーベスティング防止エリアが反射光で見られる場合、打抜き穴のセットは、視覚的に検出不可能である。特定の実施形態では、打抜き穴のセットが、視覚的に検出不可能であるのみならず、それら打抜き穴のセットがバルクエリアにおける光学的に可変性の特徴の忠実性に一致するハーベスティング防止エリアにおける光学的に可変性の特徴の忠実性を実質的に妨げないように、光学的に可変性の特徴に対して配置もされる。斜めの打抜き穴が、いくつかの実施形態では好ましい。この理由は、これら打抜き穴が、ハーベスティング防止エリアが検出のために打抜き穴の斜めの角度で見られることが検出に必要とされる場合、反射光のみならず、透過光においても、検出を低減するためである。本明細書で参照される角度は、セキュリティデバイスの上方表面に平行な平面に対して形成される。
【0051】
打抜き穴のセットは、本開示に係る様々な実施形態では、任意の所定のパターンでハーベスティング防止エリア内に分配されている場合がある。たとえば、打抜き穴が、いくつかの実施形態では、セキュリティ文書の認証のさらなる要素として機能し得る印のセットに配置されていることが予期される。より具体的には、打抜き穴のセットは、文字、数字、またはシンボルを形成するように配置されている場合がある。たとえば、セキュリティ文書が銀行券である実施形態では、打抜き穴のセットは、銀行券の金種を示す数字の形態で配置されている。さらに、いくつかの実施形態では、打抜き穴のセットが、セキュリティ文書の単一の構成要素を通してか、複数の構成要素を通してか、単一の構成要素の深さの一部のみを通してか、複数の構成要素の深さの一部を通してか、これらの任意の組合せで延びることも予期される。たとえば、少なくとも1つの実施形態では、打抜き穴は、セキュリティデバイスの深さの一部のみを通って延びる。特定の実施形態では、ハーベスティング防止エリアにおける打抜き穴のセットは、セキュリティデバイスの厚さ全体を通し、かつセキュリティ基板の厚さ全体を通して延びる。優れたハーベスティング防止耐性を見せることが示されている特定の実施形態では、ハーベスティング防止エリアにおける打抜き穴のセットには、セキュリティデバイスの深さ全体の少なくとも85%を通って延びる打抜き穴が含まれており、セキュリティデバイスの深さ/厚さの少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の深さである。
【0052】
少なくとも1つの実施形態では、セキュリティデバイスが、焦点合わせ要素のアレイ及びマイクロイメージ要素のアレイを少なくとも備えたマイクロ光学セキュリティデバイスである場合、打抜き穴のセットが、視覚的に検出可能な本物であることの印を提供するようなサイズまたは配置にされていることが予期される。たとえば、特定の実施形態では、打抜き穴のセットが、焦点合わせ要素の深さ全体に延び、これら焦点合わせ要素を切除するか除去する役割を果たすが、セキュリティデバイスの一部を形成する、下にあるマイクロイメージ要素または他の構成要素は除去しない。たとえば、少なくとも1つの実施形態では、打抜き穴のセットには、100ミクロンより大、125ミクロンより大、または135ミクロンより大である、少なくとも1つの横方向の寸法を有し、かつ明白な特徴を有する少なくとも1つの打抜き穴が含まれている。ここで、打抜き穴のセットは、ハーベスティング防止エリアにおいて、セキュリティデバイスを、合成イメージ(たとえば、光学的に可変性の特徴)の投影が不可能であるようにする。特定の実施形態では、打抜き穴は、切除されたものとして特徴付けることができ、かつ、イメージ、文字のストリング、エンコーディング、またはパターンなど、様々な印の形態で組み合わせられるか配置され得る。必要ではないが、様々な実施形態では、切除された領域は、ハーベスティング防止エリアまたはバルクエリアにおける1つまたは複数の合成イメージと整合されている。少なくとも1つの実施形態では、切除された領域は、上述の打抜き穴より大であるが、それら領域が、反射光において個別に視覚的に検出不可能であるが、透過光においては視覚的に検出可能であるように、依然として十分に小さい。様々な実施形態によれば、セキュリティデバイスが反射光で見られる場合、切除された領域は、本実施形態では、個別と、組み合わせてとの両方で視覚的に検出可能である。
【0053】
本明細書では、本開示に係る特定の実施形態では、切除された領域が、セキュリティ文書の他のアーチファクトと組み合わせられることも予期される。たとえば、少なくとも1つの実施形態では、ハーベスティング防止エリアを形成する切除部は、セキュリティ基板上に配置されたインク層または効果層と積層される。
【0054】
打抜き穴のセットは、セキュリティ文書、またはセキュリティ文書の任意の構成要素、またはそれらの組合せの深さの小部分または大部分を通って延びる場合がある。本明細書で使用される場合、「大部分」との用語には、参照されるセキュリティ文書またはセキュリティ文書の構成要素の厚さの50%より大(厚さの100%までを含む)である厚さの深さが包含されている。反対に、本開示の文脈では、「小部分」との用語には、参照されるセキュリティ文書またはセキュリティ文書の構成要素の厚さの50%以下である厚さの深さが包含されていることを理解されたい。たとえば、打抜き穴のセットは、セキュリティデバイスの大部分または小部分か、基板の大部分または小部分か、セキュリティデバイス、セキュリティ基板、及び任意の他の交互に挟み込まれたもの(たとえば、セキュリティ基板とセキュリティデバイスとの間の接着剤)の組合せもしくは別様に結合されたセキュリティ文書の構成要素の厚さの大部分または小部分を通って延びる場合がある。そのような部分的な深さの打抜き穴は、本開示に係る特定の実施形態では、ハーベスティング防止エリアの外観を偽装することにおいて良好に作用することがわかっている。この理由は、透過光においてさえも、打抜き穴が依然として視覚的に検出可能ではない場合があるためである。そのような部分的な深さの打抜き穴は、セキュリティ文書、セキュリティ基板、またはセキュリティデバイスの一方側から、反対側に向かって、特に、偽造防止の特徴が観測されることになるセキュリティデバイスの側部から、テーパが付された打抜き穴を有することによって近似させることもできる。さらに、そのような実施形態は、製造可能性のために特に適している場合がある。この理由は、あり得るケースとして、セキュリティデバイスまたはセキュリティ基板の深さ/厚さの内で打抜き穴を終端させるために必要な製造の制御を実施することが、必要とされない場合があるためである。
【0055】
論じたように、打抜き穴のセットは、いくつかの実施形態では、ハーベスティング防止エリアにわたって、寸法が一様であるか、それらの寸法(たとえば、内周、直径、テーパ、深さなど)が可変である場合がある。さらに、打抜き穴のセットの分布、サイズ、形状(たとえば、ライン、円、台形、三角形、星形、偏菱形、卵形など)が、いくつかの実施形態では、ハーベスティング防止エリアにわたって一様であるか可変である場合がある。少なくとも1つの実施形態では、ハーベスティング防止エリアの各々の内のすべての打抜き穴が、これらエリアにわたって一様であるが、セキュリティデバイス内の様々なハーベスティング防止エリア内では別々であり、それにより、第1のハーベスティング防止エリアは、打抜き穴の第1のセットを有し、第2のハーベスティング防止エリアは、形状、サイズ、深さ、または配置に関して異なる打抜き穴の第2のセットを有するようになっている。
【0056】
セキュリティ文書が複数のセキュリティデバイスを有する場合があることと、セキュリティデバイスが、複数のハーベスティング防止エリアを有する場合があることと、を理解されたい。また、単一のセキュリティデバイスの単一のハーベスティング防止エリアに対する本明細書での参照が、複数の同じものを包含するものとして理解されるべきである。
【0057】
ハーベスティング防止エリアが、本開示に係る様々な実施形態では、セキュリティデバイスの境界内に限られているが、本明細書では、ハーベスティング防止エリアを規定する打抜き穴のセットが、セキュリティデバイスの縁部を越えて延びる場合もあることも予期される。たとえば、特定の実施形態では、ハーベスティング防止エリアを形成する打抜き穴のセットが、セキュリティデバイスが重なっていないセキュリティ基板の部分上のハーベスティング防止エリアを越えて延びる打抜き穴のセットによって補完される。いくつかの実施形態では、打抜き穴がセキュリティデバイスの境界を越えてランダムに延びることも予期される。本明細書では、打抜き穴に、ユーザにとって容易に検出可能であるか、機械によって容易に検出可能である、触感があるか触覚に基づく特徴が備えられていることも予期される。代替的には、一実施形態では、打抜き穴のセットの配置は、この配置がオーセンチケーションの触感のある特徴を提供するように、予め規定された周期で配置されている場合がある。
【0058】
本開示の様々な実施形態に係る打抜き穴のセットは、様々な方法で構成することができる。本開示に係る特定の実施形態では、有効な打抜き穴は、セキュリティデバイスがセキュリティ基板に結合された後のセキュリティ文書の構成要素の選択において形成される。さらに、セキュリティデバイス、セキュリティ基板、または他のセキュリティ文書構成要素のいずれかに打抜き穴のセットを形成するためにレーザー照射を使用することがもっとも適切であることがわかっている。たとえば、一実施形態では、打抜き穴は、CO2レーザーなどの赤外レーザーを使用して生成される。具体的には、打抜き穴にテーパが付されていることが望ましい場合、打抜き穴の形成のためにレーザーを使用することが適切である。本明細書に記載の切除部は、例示的実施形態では、CO2レーザーなどのレーザーを使用することによっても形成される。
【0059】
特定の実施形態では、レーザー、特に高周波数で励起される、高速変調CO2レーザーは、優れた出力安定性及び制御を提供することが示されており、また、本開示の実施形態、具体的には、テーパが付された打抜き穴を使用する実施形態に係るセキュリティ文書を構築するために適切である。いくつかの実施形態によれば、レーザーで形成された打抜き穴は、そのもっとも幅広な開口において、打抜き穴の直径のサイズが約50ミクロンから約400ミクロンの範囲であり、また、たとえば毎秒420000の穴もの穴開け速度を達成することができる。
【0060】
セキュリティ文書
セキュリティ文書の様々な代替的使用が、本開示の後の考察で、当業者には明らかとなるであろう。たとえば、本開示の範囲にあると予期されるセキュリティ文書には、限定ではないが、身分証明書(たとえば、パスポート、行政上のIDなど)、通貨の文書(たとえば、チェック、銀行券など)、または消費者製品の文書(たとえば、ラベル、サイン、タグなど)などのセキュリティ文書が含まれる。
【0061】
少なくとも1つの実施形態では、セキュリティ文書は、ポリマ基板の上または中に配置されたマイクロサイズのイメージ要素(すなわち、イメージアイコン)のアレイ、及び焦点合わせ要素の配置を備えた、マイクロ光学セキュリティデバイスであるセキュリティデバイスを備えている。イメージ要素及び焦点合わせ要素の配置は、光学的スペーサによって分離されている場合がある。いずれのケースでも、イメージアイコン及び焦点合わせ要素の配置は、イメージアイコンの配置が、焦点合わせ要素の配置を通して視認され、1つまたは複数の合成イメージ(すなわち、光学的に可変性の特徴)が投影されるように構成されている。この実施形態では、マイクロ光学セキュリティデバイスは、セキュリティ基板の上方表面に添付され、1つまたは複数の打抜き穴が、マイクロ光学セキュリティデバイスと、下にあるセキュリティ基板との両方の厚さ全体を通して延びている。セキュリティ基板/文書の下側表面には、シンプルなインク層または効果層(たとえば、冷光を発するか光学的に可変である粒子を包含する層)がそのような層がセキュリティデバイスによって生成される光学的影響を妨げない場合に設けられている場合がある。効果層は、公共的または機械的に検出可能であり、かつ、任意選択的に、機械可読である安全性の特徴としての役割を果たす場合がある。
【0062】
セキュリティ文書の形成方法
本開示の別の態様では、セキュリティ文書の形成方法が提供される。本開示に係る特定の実施形態では、本方法は、セキュリティ基板に結合されたセキュリティデバイスを供給することと、構造的脆弱要素をセキュリティデバイス及びセキュリティ基板の少なくとも1つに組み込むことと、を含んでいる。構造的脆弱要素は、特定の実施形態では、ハーベスティング防止エリア及びバルクエリアがセキュリティデバイス内に規定されるように、組み込まれている。ハーベスティング防止エリアは、セキュリティデバイスまたはセキュリティ基板に、構造的欠損または光学的欠損の少なくとも1つを受けさせるように構成されている。
【0063】
特定の実施形態では、セキュリティ文書またはセキュリティデバイスのハーベスティング耐性を増大させるか向上させるために方法が提供される。本方法は、1つまたは複数の構造的脆弱要素をセキュリティ基板またはセキュリティデバイスの少なくとも1つに添付することを含んでいる。構造的脆弱要素は、ハーベスティングの試みがされた際に、光学的欠損または構造的欠損を印加するように構成されている。
【0064】
様々な実施形態によれば、レーザーが、セキュリティデバイス(たとえば、セキュリティスレッドまたはパッチ)がセキュリティ基板に添付された後に、ペーパーマシン上、または、LEONHARD KURZ Stiftung & Co. KG and Pasaban SAによって販売されるシステムなどの、オフラインのストライプまたはパッチ添付システムを使用する箔敷きプロセスのより早い段階で、打抜き穴を形成するために使用される。様々な実施形態では、デバイスが用紙に添付されると、セキュリティデバイスまたは安全性用紙の、レーザーでの打抜き、切除、またはカットにより、用紙にデバイスを添付するために必要とされる光学的忠実性または構造的忠実性の少なくとも1つを維持することができる。ハーベスティング防止エリアが付加された後は、セキュリティデバイスまたはセキュリティ基板が、ハーベスティングの試みに応じて、光学的欠損または構造的欠損を被り、それにより、単一の、再使用可能なピースでのデバイスの除去を防止している。
【0065】
構造的/光学的忠実性
本明細書で使用される場合、光学的忠実性は、ハーベスティング防止エリアに観測される光学的に可変の効果と、セキュリティデバイスのバルクエリアに観測される光学的に可変の効果との類似性を包含している。本明細書全体で使用される場合、「構造的忠実性」との用語は、セキュリティデバイスのバルクエリアまたは基板に対するセキュリティデバイスのハーベスティング防止エリアの整列を包含する。構造的忠実性は、いくつかの実施形態では、セキュリティデバイスのバルクエリアまたは基板に対するセキュリティデバイスのハーベスティング防止エリアの実質的な整列によって示される。実質的な整列は、本開示で使用される場合、最小で、(i)セキュリティデバイスのハーベスティング防止エリアが、セキュリティデバイスのバルクエリアの幅の約75%から、バルクエリアの幅の約125%までの範囲の幅、より好ましくは、約80%から約120%、さらに好ましくは、約90%から約110%の範囲の幅を有する場合、または、(ii)セキュリティデバイスのハーベスティング防止エリアの打抜き穴が、セキュリティデバイスの境界を越えて延び、それにより、ハーベスティング防止エリア内の打抜き穴の形状が、基板内に延びる打抜き穴の形状と同一であるか、全体が基板内にあるようになっている場合を包含する。たとえば、少なくとも1つの実施形態では、セキュリティデバイスのハーベスティング防止エリアが、セキュリティ文書のバルクエリアとの構造的忠実性を有し、それにより、ハーベスティング防止エリアを横切るセキュリティデバイスの縁部が、構造的欠損(すなわち、バルクエリアからのハーベスティング防止エリアのテーパ)が存在しないように、セキュリティデバイスのすぐ横に接続されたセキュリティデバイスのバルクエリアと実質的に整列するようになっている。少なくとも1つの実施形態では、構造的忠実性は、セキュリティデバイスの境界を越えて延びる打抜き穴によって例示されている。ここで、ハーベスティング防止エリア内の打抜き穴の形状は、バルクエリア内、または、ハーベスティング防止エリアに隣接する基板のエリア内の打抜き穴と形状及びサイズが同一である。
【0066】
本開示に係る様々な実施形態では、セキュリティデバイスのハーベスティング防止エリアは、隣接するバルクエリアと一致した光学的忠実性を有し、それにより、ハーベスティング防止エリアに存在する光学的に可変性の特徴が、視覚的に観測可能なゆがみを伴わずに、バルクエリアにも存在するようになっている。本開示で使用される場合、「観測可能なゆがみ」との用語は、イメージの効果、形状、サイズ、色、または透明度の少なくとも1つの変化を包含している。光学的忠実性または構造的忠実性は、様々な実施形態では、セキュリティデバイスが結合された(たとえば、セキュリティ基板に直接、しっかりと添付された)後に、構造的脆弱要素(たとえば、打抜き穴のセット)をセキュリティデバイスに組み込むことによって確実にされる。セキュリティデバイスがセキュリティ基板に結合された後に構造的脆弱要素を組み込むことにより、打抜き穴がすでにセキュリティデバイスに形成されている場合、セキュリティデバイスのテンションを調整するプロセスステップが回避される。打抜き穴は、セキュリティデバイスの不均一な変形を生じ得、それにより、バルクエリアに比べ、ハーベスティング防止エリア内に、さらなる変形及び不可逆的な変形が生じるようになる。
【0067】
本開示に係る特定の実施形態は、セキュリティデバイス内に欠損を生じ、セキュリティデバイスをセキュリティ文書からハーベスティングするあらゆる試みがされた際にデバイスを欠損させる、セキュリティデバイスまたはセキュリティ文書に添付された1つまたは複数の構造的脆弱性を使用するための方法を含んでいる。
【0068】
実施例
本発明は、ここで、銀行券の形態のセキュリティ文書を参照することによって説明される。図1Aに示す例示的実施例では、セキュリティ文書10(たとえば、銀行券)10が提供され、セキュリティ文書は、セキュリティ基板16に結合されたマイクロ光学フィルム材料(すなわちセキュリティデバイス)14を備えている。図1Aの非限定的な実施例を参照すると、ハーベスティング耐性が、ハーベスティング防止エリア17及びバルクエリア19を規定する打抜き穴12のセットによって提供され、打抜き穴12のセットは、マイクロ光学セキュリティデバイス14の表面14aに対して直角に延びる。様々な実施形態によれば、打抜き穴12のセットの打抜き穴は、マイクロ光学セキュリティデバイス14とセキュリティ基板16との両方を通って延びる。この例示的な実施例では、マイクロ光学セキュリティデバイス14は、イメージ要素14cのアレイにわたって配置された、筒状ではないマイクロレンズ14bのアレイを備えている。本開示に係る様々な実施形態では、光学的スペーサ14dが、マイクロレンズ14bのアレイとイメージ要素14cのアレイとの間に配置されており、それにより、セキュリティデバイス14が1つまたは複数の合成イメージ(図示せず)を投影するようになっている。
【0069】
図1Bは、本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図である。図1Bの非限定的な実施例を参照すると、図1Aに記載の例示的実施形態の変形例が示されており、打抜き穴12のセットが、直角の代わりに斜めの角度に延びている。図1Bの非限定的な実施例では、セキュリティ文書10は、ストライプの形態のマイクロ光学フィルム14を備えている。マイクロ光学フィルム14は、打抜き穴12が適用される前にセキュリティ基板16に結合され、それにより、セキュリティデバイスのハーベスティング防止エリア17とセキュリティデバイス19のバルクエリアとの間に構造的な忠実性を提供する。
【0070】
前述のように、セキュリティデバイスが反射光で見られる場合、打抜き穴12は、視覚的に検出不可能となる。しかし、透過光で見られる場合、打抜き穴が延びる角度と同じ角度で、打抜き穴が視覚的に検出可能になる。特定の実施形態によれば、打抜き穴12の視認性のオン-オフの品質が、打抜き穴が斜めの角度で延びる場合に特に主張される。いくつかの実施形態によれば、マイクロ光学セキュリティデバイス14のハーベスティング防止エリア17は、セキュリティデバイスのバルクエリア19との光学的忠実性及び構造的忠実性を有している。
【0071】
図2は、本開示の特定の実施形態に係るセキュリティ文書の実施例を示す図である。打抜き穴12は、かなり広くかつ、焦点合わせ用のマイクロレンズ18を通して全体に延び、光学的スペーサ20及びイメージアイコン22などの、下にあるセキュリティ文書10の構成要素を切除または打抜きすることなく、これら焦点合わせ要素18を切除するか除去する役割を果たす。特定の実施形態によれば、打抜き穴12は、これら打抜き穴12が、これらエリアにおいて合成イメージを投影するためのマイクロ光学セキュリティデバイス14の能力に影響しないように形成されている。打抜き穴12のセットは、マイクロレンズ18と組み合わせて、これら打抜き穴12のセットが、視覚的に検出可能な印の形態でさらなる認証を提供するように構成されている。様々な実施形態によれば、マイクロ光学セキュリティデバイス14が反射光で見られる場合、切除された領域は、視覚的に検出可能である場合があるか、検出可能ではない場合がある。透過光で見られた場合、切除された領域は、視覚的に検出可能となる。重要には、マイクロ光学セキュリティデバイス14のハーベスティング防止エリア17は、セキュリティデバイスのバルクエリア19との光学的忠実性及び構造的忠実性を有している。
【0072】
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書10の実施例を示す図であり、打抜き穴のセットが傾斜した角度で延びている。図3Aの非限定的な実施例を参照すると、図1Aのセキュリティ文書10の代替的実施形態が示されている。特定の実施形態によれば、打抜き穴12のセットの打抜き穴は、直角に延びているが、マイクロ光学セキュリティデバイス14の厚さのみを通して、下にある銀行券構成要素に影響することなく延びている。
【0073】
図3Bは、本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書10のさらなる実施例を示す図である。図3Bの非限定的な実施例を参照すると、セキュリティ文書10の変形形態が示されている。この変形形態では、打抜き穴12のセットの打抜き穴が、デバイス14を通して斜めの角度に延びているが、下にあるセキュリティ文書10の構成要素には延びていない。特定の実施形態によれば、レーザー強度及び焦点の正確な制御により、セキュリティデバイス14のみを通しての打抜きまたはカットが可能であり、下にあるセキュリティ文書10の構成要素16は打抜きまたはカットしない。同様に、レーザー強度及び焦点の正確な制御により、反対側からカットした際の、より深い層内への望ましくないカットを防止することができる。様々な実施形態によれば、マイクロ光学セキュリティデバイス14が反射光で見られる場合、打抜き穴12のセットの打抜き穴が視覚的に検出不可能となる。しかし、透過光で見られる場合、打抜き穴12のセットの打抜き穴が延びる角度と同じ角度で、打抜き穴が視覚的に検出可能になる。重要には、セキュリティデバイスのハーベスティング防止エリアは、セキュリティデバイスのバルクエリアとの光学的忠実性及び構造的忠実性を有している。
【0074】
図4Aは、本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書10の実施例を示す図であり、打抜き穴12のセットの打抜き穴が、下にあるセキュリティ文書10の構成要素16のみの厚さ全体を通って垂直な角度で延びている。図4Aの非限定的な実施例を参照すると、打抜き穴12のセットの打抜き穴が、下にあるセキュリティデバイス10の構成要素16(たとえば、繊維状であるかポリマのセキュリティ基板)の厚さのみを通して直角に延びている。
【0075】
図4Bは、本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書10の実施例を示す図である。図4Bの非限定的な実施例を参照すると、打抜き穴12のセットの打抜き穴が、下にあるセキュリティ文書10の構造16を通して斜めの角度で延びている。いくつかの実施形態では、打抜き穴12のセットの打抜き穴(たとえば、図4A及び図4Bの実施例に示すような実施形態)は、これらがマイクロ光学セキュリティデバイス14との界面で広く、かつ、下にある構造16の反対側に向かうにつれて狭くなるように、テーパが付されている。重要には、マイクロ光学セキュリティデバイス14のハーベスティング防止エリア17は、マイクロ光学セキュリティデバイス14のバルクエリア19との光学的忠実性及び構造的忠実性を有している。
【0076】
図5は、本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書50の実施例を示す図である。図5の非限定的な実施例を参照すると、打抜き穴12、12’のセットの打抜き穴は、ドルサインのシンボルの形状の、「ドットマトリクス」の形態である。この打抜き穴は、セキュリティデバイス14の境界に包含されており、また、セキュリティデバイス14にわたり、かつセキュリティデバイス14の境界の外で下の構造16のバルクに向かって延びる非線形のラインの形態である。特定の実施形態によれば、打抜き穴12及び12’のセットのドットマトリクスの形態により、セキュリティデバイス14の外側で、セキュリティデバイス14の境界内の打抜き穴のセットに直接相関する、相補的な打抜き穴のパターンを有することにより、さらなる偽造防止の特徴が付加される。この非限定的な実施例に示すように、セキュリティデバイス14は、セキュリティデバイスのハーベスティング防止エリア17内の打抜き穴12と、セキュリティデバイスのバルクエリア19との間に構造的忠実性を有している。ハーベスティング防止エリア17’の打抜き穴12’と、基板のバルクエリア19’の打抜き穴12’との間にも構造的な忠実性が存在する。特定の実施形態によれば、セキュリティデバイス内の打抜き穴のセットは反射光では視覚的に検出不可能であるが、透過光では視覚的に検出可能であり、一方、ハーベスティング防止エリアの外側(すなわち、セキュリティ基板内)の打抜き穴は、反射光と透過光との両方で視覚的に検出可能である。
【0077】
図6は、本開示のいくつかの実施形態に係るセキュリティ文書60の実施例を示す図である。図6の非限定的な実施例を参照すると、セキュリティデバイス10の打抜き穴24、26は、ハーベスティングに対する耐性を向上させるために、変化する形状で形成されている。特に、打抜き穴24は、台形形状を有している。この形状は、セキュリティデバイス14をハーベスティングするわずかな試みがされた際にさえ、特に、ハーベスティング防止エリアに力が印加された場合に、セキュリティデバイスが恒久的かつ容易に変形されることになることから、ハーベスティング耐性を向上させる。ライン形状の打抜き穴26も、セキュリティデバイスに設けられている。このライン形状の打抜き穴26は、セキュリティデバイスの一方の縁部を通り、他方の縁部を通って延び、それにより、ハーベスターとなることになる者が、単一のスレッドを首尾良くハーベスティングするために、セキュリティデバイスの複数のピースを除去することを必要とする。打抜き穴は、(a)複雑であるかシンプルなデザインを形成するドットマトリクス、及び、(b)線形または非線形であり得る、1つまたは複数のラインの形態のシンプルな形状のグループから選択されるパターンの形態である場合がある。セキュリティデバイス14の幅全体にわたって延びることにより、このラインは、セキュリティデバイス14を、パッチなどのより小さいピースにカットする役割を果たす。特定の実施形態によれば、打抜き穴24及び26などの形状が付された打抜き穴は、本開示の図1Aから図5の実施例を参照して記載されたものなど、他のハーベスティング防止の構造と組み合わせて設けられ得る。本開示に係る特定の実施形態では、セキュリティデバイス60のハーベスティング防止エリアは、セキュリティデバイスのバルクエリアとの光学的忠実性及び構造的忠実性を有している。
【0078】
図7は、本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書(このケースでは、銀行券28)の実施例を示す図である。図7の非限定的な実施例を参照すると、打抜き穴12a及び12bは、銀行券28にシリアル番号を付すためにも使用され得る。この非限定的な実施例に示されるように、打抜き穴12a及び12bは、添付されたセキュリティデバイス14にわたって、銀行券28の本体内に延びている。このことは、ハーベスティングの試みの間に作用する欠損ポイントをデバイス14及び銀行券28に付加するのみならず、デバイス及び銀行券に特有のパターンをも付加する。重要には、セキュリティデバイス14のハーベスティング防止エリアは、セキュリティデバイスのバルクエリアとの光学的忠実性及び構造的忠実性を有している。
【0079】
図8は、本開示の特定の実施形態に係るセキュリティ文書80の実施例を示す図である。図8の非限定的な実施例を参照すると、ライン形状の打抜き穴30a、30b、32、及び34は、セキュリティデバイス14に形成されている。図8の説明的実施例に示すように、打抜き穴30a、30b、32、及び34は、下にある構造16に対する方向を有している。打抜き穴のいくつか(30a、30b)は、水平に向いており(すなわち、第1の軸xに沿う)、一方、打抜き穴32は、垂直に向いており(すなわち、第2の軸yに沿う)、打抜き穴34は、第1の軸に対して鋭角である。打抜き穴のいくつか(30a、32)は、デバイスの限界に含まれており、一方、他のもの(30b、34)は、デバイスの縁部に延び、縁部を破断する。特定の実施形態によれば、打抜き穴の向きを斜めに向け、これら打抜き穴をセキュリティデバイス14に対する様々な位置に配置することにより、何者かがデバイスを除去することを試みた場合に、引き裂きの伝播の可能性を向上させることができ、また、添付された特徴の視覚的影響及び視認性を、その形状またはパターンの複雑さを増大させることによって向上させることができる。重要には、セキュリティデバイス14のハーベスティング防止エリアは、セキュリティデバイスのバルクエリアとの光学的忠実性及び構造的忠実性を有している。
【0080】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、セキュリティ基板と、セキュリティデバイスと、構造的脆弱要素と、を有し、セキュリティデバイスがセキュリティ基板に結合されており、構造的脆弱要素が、セキュリティ基板またはセキュリティデバイスの少なくとも1つに組み込まれており、構造的脆弱要素が、ハーベスティング防止エリア及びバルクエリアを規定し、ハーベスティング防止エリアが、バルクエリアとの構造的忠実性または光学的忠実性の1つまたは複数を有している、セキュリティ文書を含んでいる。
【0081】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、セキュリティデバイスが、イメージ要素のアレイを備えたマイクロ光学セキュリティデバイスであり、構造的脆弱要素が、イメージ要素のアレイの一部を備えている、セキュリティ文書を含んでいる。
【0082】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、構造的脆弱要素が打抜き穴のセットを含んでいる、セキュリティ文書を含んでいる。
【0083】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、打抜き穴のセットが、セキュリティデバイスの頂部表面に対して平行な平面に対し、直角であるか傾斜した角度のいずれかで延びる打抜き穴を備えている、セキュリティ文書を含んでいる。
【0084】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、打抜き穴のセットが、セキュリティデバイスまたはセキュリティ基板の深さの少なくとも一部を通して延びる、セキュリティ文書を含んでいる。
【0085】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、セキュリティデバイスが、ポリマ基板の上または中に配置されたマイクロサイズのイメージ要素のアレイ、及び焦点合わせ要素のアレイを備えた、マイクロ光学セキュリティデバイスであり、マイクロサイズのイメージ要素のアレイと焦点合わせ要素のアレイとが、マイクロサイズのイメージ要素のアレイが、焦点合わせ要素のアレイを通して見られる場合に、1つまたは複数の合成イメージが投影されるように構成されている、セキュリティ文書を含んでいる。
【0086】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、打抜き穴のセットが、セキュリティデバイス全体を通して延びるか、焦点合わせ要素のサブセットを通して延び、焦点合わせ要素のサブセットの焦点合わせ要素を切除し、セキュリティデバイスを、これらエリアにおける合成イメージの投影を不可能にする、セキュリティ文書を含んでいる。
【0087】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、打抜き穴のセットが、セキュリティ基板の大部分を通って延びる、セキュリティ文書を含んでいる。
【0088】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、ハーベスティング防止エリア内のすべての打抜き穴が、セキュリティ文書の表面に対して平行な、同じ形状及び同じ横方向の寸法、ならびに、セキュリティ基板の表面に対して垂直な同じ軸方向の寸法を実質的に有する、セキュリティ文書を含んでいる。
【0089】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、ハーベスティング防止エリアの各々の打抜き穴が、異なる形状、またはセキュリティ基板の表面に対して平行な異なる横方向の寸法、またはセキュリティ基板の表面に対して垂直な異なる軸方向の寸法を実質的に有する、セキュリティ文書を含んでいる。
【0090】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、打抜き穴のセット全体が、セキュリティデバイス内に配置されている、セキュリティ文書を含んでいる。
【0091】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、打抜き穴のセットが、セキュリティデバイスの境界を越えて延びる、セキュリティ文書を含んでいる。
【0092】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、セキュリティ文書が銀行券である、セキュリティ文書を含んでいる。
【0093】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、セキュリティ文書が銀行券であり、打抜き穴のセットが、銀行券に関するシリアル番号を備え、かつ、セキュリティデバイスのハーベスティング防止エリアとセキュリティデバイスの境界との両方にわたって延びる、セキュリティ文書を含んでいる。
【0094】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、打抜き穴のセットが可視パターンを形成する、セキュリティ文書を含んでいる。
【0095】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、打抜き穴のセットが、ライン形状の打抜き穴または多角形形状の打抜き穴の1つまたは複数を備えている、セキュリティ文書を含んでいる。
【0096】
本開示の様々な実施形態に係るセキュリティ文書の実施例は、ハーベスティング防止エリアを形成する打抜き穴のセットが、セキュリティデバイスの幅全体にわたって延び、セキュリティデバイスをより小さいピースにカットしている、セキュリティ文書を含んでいる。
【0097】
本開示の様々な実施形態を上で記載してきたが、これら記載が、もっぱら例としてのみ提供されたものであり、限定するものではないことを理解されたい。このため、本開示の幅及び範囲は、例示的実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。
【0098】
本開示が、様々な実施形態に関して記載されてきたが、様々な変更または変形が、当業者に提案される場合がある。本開示が、そのような変更または変形を、特許請求の範囲の範囲内にあるものとして包含することが意図されている。
【0099】
本開示は、任意の特定の要素、ステップ、または機能が、特許請求の範囲の範囲内に含まれなければならない必須の要素、ステップ、または機能であることを暗示するものとしては読まれるべきではない。さらに、特許請求の範囲は、「~のための手段(means for)」の明確なワードの後に分詞が続かない限り、35 U.S.C. § 112(f)に訴えることは意図していない。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8