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特開2023-164916一部の肉腫の治療に使用するためのIL-8阻害薬
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  • 特開-一部の肉腫の治療に使用するためのIL-8阻害薬 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164916
(43)【公開日】2023-11-14
(54)【発明の名称】一部の肉腫の治療に使用するためのIL-8阻害薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20231107BHJP
   A61K 31/18 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 31/255 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 31/426 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20231107BHJP
   A61K 38/15 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/18
A61K31/255
A61K31/426
A61K31/475
A61K31/4985
A61K31/519
A61K31/675
A61K31/704
A61K31/7048
A61K33/243
A61K38/15
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K45/06
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023141971
(22)【出願日】2023-09-01
(62)【分割の表示】P 2020543705の分割
【原出願日】2018-10-23
(31)【優先権主張番号】17198072.5
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】315012541
【氏名又は名称】ドムペ・ファルマチェウティチ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(71)【出願人】
【識別番号】520146112
【氏名又は名称】リサーチ・インスティチュート・アット・ネーションワイド・チルドレンズ・ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,ライアン・デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ブランドリーニ,ローラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫の予防及び/又は治療、さらに好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫に関連する肺転移の予防及び/又は治療に有効な医薬組成物を提供する。
【解決手段】IL-8阻害薬を含む医薬組成物を提供する。前記IL-8阻害薬が、1,3-チアゾール-2-イルアミノフェニルプロピオン酸誘導体、2-フェニル-プロピオン酸誘導体から選択されることが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫の予防及び/又は治療、さらに好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫に関連する肺転移の予防及び/又は治療に使用するためのIL-8阻害薬。
【請求項2】
小分子量分子及び抗体から選ばれ、好ましくは、前記IL-8阻害薬は、CXCR1受容体又はCXCR1及びCXCR2受容体の両方によって媒介されるIL-8の活性の阻害薬である、請求項1に記載の使用のためのIL-8阻害薬。
【請求項3】
1,3-チアゾール-2-イルアミノフェニルプロピオン酸誘導体、2-フェニル-プロピオン酸誘導体及びそれらの薬学的に許容可能な塩から選ばれる、請求項1又は2に記載の使用のためのIL-8阻害薬。
【請求項4】
前記1,3-チアゾール-2-イルアミノフェニルプロピオン酸誘導体が、式(I):
【化1】
[式中、
-R1は、水素又はCHであり;
-R2は、水素又は直鎖C-Cアルキルであり、好ましくはそれは水素であり;
-Yは、S、O及びNから選ばれるヘテロ原子であり;好ましくはそれはSであり;
-Zは、ハロゲン、直鎖又は分枝C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cアルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、C-Cアシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、C-Cアシルアミノ、ハロC-Cアルキル、ハロC-Cアルコキシ、ベンゾイル、直鎖又は分枝C-Cアルカンスルホネート、直鎖又は分枝C-Cアルカンスルホンアミド、直鎖又は分枝C-Cアルキルスルホニルメチルから選ばれ;好ましくはそれはトリフルオロメチルであり;
-Xは、OH又は式NHRの残基であり;ここで、Rは、
-水素、ヒドロキシル、直鎖又は分枝C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルコキシ、
又はC-Cフェニルアルキル(ここで、アルキル、シクロアルキル又はアルケニル基はCOOH残基で置換されていてもよい)、
-式SOR4の残基(ここで、R4は、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cハロアルキルである)から選ばれる]の化合物である、請求項3に記載の使用のためのIL-8阻害薬。
【請求項5】
R1が水素又はCHであり;
XがOHであり;
R2が水素又は直鎖C-Cアルキルであり;
Yが、S、O及びNから選ばれるヘテロ原子であり;
Zが、直鎖又は分枝C-Cアルキル、直鎖又は分枝C-Cアルコキシ、ハロC-Cアルキル及びハロC-Cアルコキシから選ばれる、請求項4に記載の使用の
ためのIL-8阻害薬。
【請求項6】
R1が水素であり、フェニルプロピオン酸基のキラル炭素原子がS配置である、請求項4に記載の使用のためのIL-8阻害薬。
【請求項7】
2-メチル-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸及びその薬学的に許容可能な塩、好ましくはそのナトリウム塩から選ばれる、請求項3、4又は5に記載の使用のためのIL-8阻害薬。
【請求項8】
前記化合物が、(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸及びその薬学的に許容可能な塩、好ましくはそのナトリウム塩である、請求項3~6のいずれかに記載の使用のためのIL-8阻害薬。
【請求項9】
前記2-フェニルプロピオン酸誘導体が、式(II):
【化2】
[式中、
は、直鎖又は分枝C-Cアルキル、ベンゾイル、フェノキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシであり;好ましくは、それは、ベンゾイル、イソブチル及びトリフルオロメタンスルホニルオキシから選ばれ、また、好適な態様によれば、Rは、フェニル環の3又は4位にあり、さらに好ましくは、それは、3-ベンゾイル、4-イソブチル又は4-トリフルオロメタンスルホニルオキシであり;
は、H又は直鎖もしくは分枝C-Cアルキルであり、好ましくは、それはHであり;
は、直鎖又は分枝C-Cアルキル又はトリフルオロメチルであり;好ましくは、それは直鎖又は分枝C-Cアルキルであり、さらに好ましくはそれはCHである]の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項3に記載の使用のためのIL-8阻害薬。
【請求項10】
前記2-フェニル-プロピオン酸誘導体が、式(III):
【化3】
[式中、
は水素であり;
Rは、式SORaの残基(ここで、Raは、直鎖又は分枝C-Cアルキル又はハロC-Cアルキルであり、好ましくはそれはCHである)である]の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項3に記載の使用のためのIL-8阻害薬。
【請求項11】
フェニルプロピオン酸基のキラル炭素原子がR配置である、請求項9又は10に記載の使用のためのIL-8阻害薬。
【請求項12】
前記化合物が、R-(-)-2-(4-イソブチルフェニル)プロピオニルメタンスルホンアミド及びその薬学的に許容可能な塩、好ましくは、リシンin situ塩から選ばれる、請求項9に記載の使用のためのIL-8阻害薬。
【請求項13】
前記化合物が、R(-)-2-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニルプロピオンアミド及びその薬学的に許容可能な塩、好ましくはそのナトリウム塩である、請求項9~11のいずれかに記載の使用のためのIL-8阻害薬。
【請求項14】
前記請求項のいずれかに記載の使用のためのIL-8阻害薬と、薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項15】
少なくとも一つのIL-6阻害薬及び/又は少なくとも一つのgp130阻害薬をさらに含む、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
少なくとも一つの化学療法薬、好ましくは、ドキソルビシン、シスプラチン、メトトレキサート、イホスファミド、エピルビシン、エトポシド、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びアクチノマイシンDを含む群から選ばれる化学療法薬をさらに含む、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
A)請求項1~13のいずれか1項に記載のIL-8阻害薬、又は請求項14に記載の医薬組成物、及び
B)少なくとも一つのIL-6阻害薬及び/又は少なくとも一つのgp130阻害薬
を含み、
A)及びB)は、同時、別個又は順次使用のために2つの別個の製剤となっている、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のための製品又はキット。
【請求項18】
A’)請求項1~13のいずれか1項に記載のIL-8阻害薬、又は請求項14に記載の医薬組成物、及び
B’)少なくとも一つの化学療法薬、好ましくは、ドキソルビシン、シスプラチン、メトトレキサート、イホスファミド、エピルビシン、エトポシド、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びアクチノマイシンDを含む群から選ばれる化学療法薬
を含み、
A’)及びB’)は、同時、別個又は順次使用のために2つの別個の製剤となっている、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のための製品又はキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、又はそれらに関連する肺転移の予防及び/又は治療のためのIL-8阻害薬に関する。また、本発明は、IL-8阻害薬と、IL-6阻害薬又は化学療法薬とを含む医薬組成物、製品/キットにも関する。
【背景技術】
【0002】
骨及び軟部組織の肉腫は、希少な不均一型のがんの一群であり、合わせて、診断された全悪性腫瘍のおよそ1%を占める。肉腫は、希少であることや診断が遅れることが多いため、臨床医にとって課題となっている。
【0003】
肉腫には100を超える様々な形態学的サブタイプがある。最も一般的な骨の肉腫のタイプは、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫及び脊索腫である。軟部組織の肉腫は、平滑筋細胞(平滑筋肉腫)、脂肪細胞(脂肪肉腫)、線維性結合組織(線維肉腫)、骨格筋(横紋筋肉腫)、滑膜(滑膜肉腫)、血管(血管肉腫)、乳管(葉状腫瘍)及び神経(神経鞘腫瘍)を含む軟部組織細胞から発生する。
【0004】
骨肉腫(OS)は、間葉起源(ゆえに肉腫と言う)の原始形質転換細胞から発生する攻撃的な(侵襲性の)悪性新生物で、骨芽細胞分化を示し、悪性の類骨を産生する。
それは原発性骨がんの最も一般的な組織学的形態で、10代の若者及び若年成人に好発する。
【0005】
がんの完全根治的外科的一括切除が骨肉腫の最適な治療である。約90%の患者が患肢救済手術を受けられるが、合併症、特に、感染症、人工装具の弛緩及び癒着不能、又は局所的な腫瘍再発によって、更なる手術又は切断が必要になることもある。
【0006】
標準療法は、可能であれば患肢救済整形外科手術(又は一部の症例では切断)と化学療法の併用である。
ユーイング肉腫(ES)は、非常に攻撃的な骨腫瘍で、発生率のピークは青年人口にある。高い転移傾向を有しており、それがおよそ25%という悲惨な生存率と関連する(Satterfield,L.ら,Int.J.Cancer,141:2062-2075;2017;Beverly A.Teicherら,Ann Saudi Med.,31(2):174-182;2011)。
【0007】
ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)のメンバーは、発がん性転写因子を生じる腫瘍関連転座を含有している。最も一般的なのはEWS/FLI1である。EWS/FLI1は、何百もの標的遺伝子の発現を調節することによって腫瘍進行に主要な役割を果たしている。ここでは、RNAi媒介ノックダウンによるEWS/FLI1阻害が細胞のシグナル伝達に及ぼす影響を、質量分析を基にしたリン酸化プロテオミクスを用いて調べ、リン酸化の全体的な変化を定量している。この偏りのない公平な手法により、細胞周期の調節及び細胞骨格の組織化などのプロセスに豊富な何百もの特異的ホスホペプチドが同定された。特に、ホスホチロシンのプロファイリングは、EWS/FLI1のノックダウンによりSTAT3のリン酸化が大きくアップレギュレートされることを明らかにした。しかしながら、単一細胞分析により、これはEWS/FLI1欠損の細胞自律的効果ではなく、むしろノックダウンが起きていない細胞で起こるシグナル伝達効果であることが示された。ノックダウン細胞由来の馴化培地は、対照細胞においてSTAT3のリン酸化を誘導するのに十分であり、STAT3を活性化できる可溶性因子の存在を立証した。サイト
カイン分析及びリガンド/受容体阻害実験で、この活性化は、一部はIL6依存性機序を通じて起こることが究明された。総合すれば、データは、EWS/FLI1欠損が、EWS/FLI1の発現を維持するバイスタンダー細胞でSTATのシグナル伝達を活性化するIL6などの可溶性因子の分泌をもたらすというモデルを支持している。さらに、これらの可溶性因子はアポトーシスから保護することも示された(Jennifer L.Andersonら;Mol Cancer Res;12(12);2014;Andrej Lissatら,BMC Cancer,15:552;2015)。
【0008】
横紋筋肉腫(RMS)は、十分に分化し損ねた骨格(横紋)筋細胞から発生する攻撃的で極めて悪性の形態のがんである。一般的に小児の疾患と考えられており、症例の大多数は18歳未満の子どもに発生する。
【0009】
比較的希少ながんであるにも関わらず、すべての記録された軟部組織肉腫のおよそ40%を占める。RMSは身体のどの部位にも発生しうるが、主に、頭部、頸部、眼窩、尿生殖路、生殖器、及び四肢に見られる。横紋筋肉腫の治療は、手術、化学療法、放射線、及びおそらくは免疫療法の使用を含む学際的なチーム医療(multidisciplinary practice)となる。手術は一般的に併用療法の第一段階である。切除可能性は腫瘍の部位によって変動するが、RMSは、重大な病的状態や機能の喪失をもたらすことなしに完全に外科的切除することができない部位に存在することが多い。断端陰性で十分に切除されるRMS腫瘍は20%未満である。幸運なことに、横紋筋肉腫は一般的に化学療法に感受性があり、症例のおよそ80%が化学療法に反応する。多剤併用化学療法がすべての横紋筋肉腫患者に適応される。化学療法薬を用いるアジュバント療法及びネオアジュバント療法が使用される前は、外科的手段だけによる治療の生存率は<20%であった。アジュバント療法を併用する現代の生存率はおよそ60~70%である。
【0010】
転移は固形腫瘍の患者を死に至らしめる。このことがどこよりも明らかなのは骨肉腫においてである。致命的な骨がんである骨肉腫(OS)は、主に肺への転移拡散を通じて死をもたらす。この肺への指向性を推進する機序は今も不明のままである。患者が診断時に肉眼で確認できる転移性疾患を呈していようと転移が治療の完了後何年もしてから生じようと、限局性疾患を有する患者は比較的良好な70%の5年全生存率を享受するが、肺転移を有する患者は15%という非常に悪い2年生存率に苦しむ(Allison D.C.ら;Sarcoma 2012,704872;2012)。
【0011】
転移性疾患のための療法を増強する又は新規治療法を発見するために無数の試みがなされてきたにも関わらず、40年にわたっても、著しい転帰の改善をもたらした治療法はない。転移性骨肉腫の治療に参入するためには、明らかに新規のアプローチが必要であろう(Luetke A.ら;Cancer Treat.Rev.40,523-32;2014)。当該分野の大きな研究者団体は、骨肉腫の治療における更なる進展は、転移の生物学の理解の改善なくして、及びそのような経路を標的にする薬物の開発なくしては実現しそうもないことを示唆している(Khanna C.ら;Clin Cancer Res;20(16);1-10;2014)。一部の先行技術では、転移性横紋筋肉腫を有する小児の転帰に関連するリスク因子の特定(Oberlin O.ら;Journal of Clinical Oncology,2008 May 10;26(14):2384-2389)及び横紋筋肉腫(RMS)と肺のみへの転移性疾患を有する小児の転帰(J.Pediatr.Surg.,2005 Jan.;40(1):256-62)について言及している。
【0012】
骨肉腫の小児及び青年における肺転移の出現を防止する療法があれば、現在その疾患で死亡する患者の70%を超える命を救えるであろう。
インターロイキン-8(IL-8;CXCL8)は、PMN(多形核好中球)動員の主
要メディエーターと考えられ、乾癬、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患及び移植臓器での再潅流傷害を含むいくつかの病理に関与している(Griffinら,Arch Dermatol 1988,124:216;Finchamら,J Immunol 1988,140:4294;Takematsuら,Arch Dermatol 1993,129:74;Liuら 1997,100:1256;Jeffery,Thorax 1998,53:129;Pesciら,Eur Respir J.1998,12:380;Laferら,Br J Pharmacol.1991,103:1153;Romsonら,Circulation 1993,67:1016;Welbournら,Br J Surg.1991,78:651;Sekidoら,Nature 1993,365,654)。IL-8の生物活性は、ヒトPMNの表面に発現されている、7TM-GPCRファミリーに属する2つの受容体CXCR1及びCXCR2との相互作用によって媒介される。CXCR1は選択的で、2つのケモカインCXCL6及びIL-8のみと高親和性で結合し、IL-8に対してはるかに高い親和性を示すが(Wolfら,Eur J Immunol 1998,28:164)、ヒトCXCR2はより無差別な受容体で、いくつかの異なるサイトカイン及びケモカインと結合する。従って、CXCR2は、いくつかの異なる生物学的分子の活性を媒介する。インターロイキン-6(IL-6)は、免疫調節、炎症、及び発がんに多機能を有する多機能性サイトカインである。IL-6のIL-6受容体(IL-6R)への結合は、糖タンパク質130(gp130)のホモ二量体化と動員を誘導し、これが下流のシグナル伝達の活性化をもたらす。
【0013】
gp130は、少なくとも8つのサイトカイン(IL-6、IL-11、IL-27、LIF、CNTF、OSM、CT-1、及びCLC)の受容体シグナル伝達複合体の一部である。リガンド結合は、gp130とサイトカイン特異的受容体a鎖との会合と、次いでJAK/STAT、RAS/RAF/MAPK、及びPI3K/AKT経路を含む下流シグナル伝達カスケードの活性化を誘導する。Ser782でのgp130のリン酸化は、gp130の細胞表面発現をダウンレギュレートすることが示されている。普遍的に発現した受容体として、gp130は、炎症、自己免疫、がん、幹細胞維持、及び胚発生を含む広範囲の重要な生物学的プロセスに関与している(Mol Cancer Ther;12(6);937-49;2013)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Satterfield,L.ら,Int.J.Cancer,141:2062-2075;2017
【非特許文献2】Beverly A.Teicherら,Ann Saudi Med.,31(2):174-182;2011
【非特許文献3】Jennifer L.Andersonら;Mol Cancer Res;12(12);2014
【非特許文献4】Andrej Lissatら,BMC Cancer,15:552;2015
【非特許文献5】Allison D.C.ら;Sarcoma 2012,704872;2012
【非特許文献6】Luetke A.ら;Cancer Treat.Rev.40,523-32;2014
【非特許文献7】Khanna C.ら;Clin Cancer Res;20(16);1-10;2014
【非特許文献8】Oberlin O.ら;Journal of Clinical Oncology,2008 May 10;26(14):2384-2389
【非特許文献9】J.Pediatr.Surg.,2005 Jan.;40(1):256-62
【非特許文献10】Griffinら,Arch Dermatol 1988,124:216
【非特許文献11】Finchamら,J Immunol 1988,140:4294
【非特許文献12】Takematsuら,Arch Dermatol 1993,129:74
【非特許文献13】Liuら 1997,100:1256
【非特許文献14】Jeffery,Thorax 1998,53:129
【非特許文献15】Pesciら,Eur Respir J.1998,12:380
【非特許文献16】Laferら,Br J Pharmacol.1991,103:1153
【非特許文献17】Romsonら,Circulation 1993,67:1016
【非特許文献18】Welbournら,Br J Surg.1991,78:651
【非特許文献19】Sekidoら,Nature 1993,365,654
【非特許文献20】Wolfら,Eur J Immunol 1998,28:164
【非特許文献21】Mol Cancer Ther;12(6);937-49;2013
【発明の概要】
【0015】
本発明者らは、驚くべきことに、IL-8の阻害が、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫に関連する肺転移の発生を削減又は防止できることを見出した。特に、IL-8阻害薬とIL-6阻害薬の組合せがより有効な結果をもたらす。
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、IL-8阻害薬は、原発腫瘍の骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫の予防及び/又は治療にも有用であることも見出した。好ましくは、IL-8阻害薬を化学療法薬と併用した場合である。
【0017】
従って、本発明の第一の目的は、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移の予防及び/又は治療に使用するためのIL-8阻害薬、好ましくは抗体又は小分子量分子、好ましくはCXCR1阻害薬、さらに好ましくは二重CXCR1/CXCR2阻害薬である。
【0018】
本発明の第二の目的は、上に定義された前記IL-8阻害薬を、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移の予防及び/又は治療のための医薬の製造に使用することである。
【0019】
本発明の第三の目的は、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移を予防及び/又は治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療上有効量の前記IL-8阻害薬を投与する手順を含む方法である。
【0020】
本発明の第四の目的は、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、本発明によるIL-8阻害薬と薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は希釈剤とを含む医薬組成物である。
【0021】
一つの好適な態様に従って、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移、さらに好ましくは肺転移を予防及び/又は治療するための前記医薬組成物は、少なくとも一つのIL-6阻害薬及び/又は少なくとも一つのgp130阻害薬をさらに含む。
【0022】
別の好適な態様に従って、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移、さらに好ましくは原発腫瘍を予防及び/又は治療するための前記医薬組成物は、少なくとも一つの化学療法薬をさらに含む。
【0023】
本発明の第五及び第六の目的は、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移の治療及び/又は予防に使用するための製品又はキットであって、上に定義されたIL-8阻害薬と、同時、別個又は順次使用のための一つ又は複数の薬学的活性化合物とを含む製品又はキットである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、IL-6及びIL-8の発現が転移の異種移植モデルにおける転移効率及び転移挙動と相関していることを示す。1×10個のOS細胞を接種されたCB17-SCIDマウスを接種の49日後に安楽死させた。a)これらのマウスから採取された肺ブロックの肉眼的外観は、OS-17によるコロニー形成の効率が他の細胞株と比べて著しく大きいことを示唆している。b)パラフィン包埋左葉切片のH&E染色をカウントして切片あたりの転移の数を定量した。c)定量により、OS-17切片中の転移数がOHSと比べて著しく多いことが明らかである。d)各細胞株の培養物の72時間上清中のIL-6及びIL-8の濃度の測定から、転移性OS-17細胞における両サイトカインの発現が、非転移性細胞株と比べて顕著であることが明らかである。e)~f)IL-6及びIL-8シグナルに応答する能力をトランスウェル遊走アッセイを用いて評価。
図2図2は、OS-17細胞で血清に対する走化性応答を低減するDF2156A単独の効果又はsc144と組み合わせた効果を示す。OS細胞をトランスウェルチャンバ膜上で培養した後、RPMIと2.5%FBS(陽性対照)又はRPMI単独(陰性対照)を含有するチャンバに移行させた。下部チャンバに2.5%FBSを含有する他のウェルを、1uMのsc144、10nMのDF2156A、又はその両方で処理した。24時間後、上部チャンバをこすり落としてきれいにし、膜を染色し、細胞をカウントした。
図3図3は、転移性肺コロニー形成に対するIL-6及びIL-8経路阻害の効果を示す。1×10個のOS-17-luc(ルシフェラーゼ)細胞を接種されたマウスを、IL-6(sc144)、IL-8(DF2156A)、又はその両方の薬理学的阻害薬で処置した。A)接種後28日時点で完了した生物発光画像。B)A)に示されたマウスの生存分析。
図4図4は、DF2156A及びsc144で処置されたマウスの肺組織におけるPD(薬力学)分析を示す。毎日DF2156A又はsc144いずれかの注射により処置されたマウスを14回目の薬物投与の24時間後に安楽死させた。それらのマウスから採取された肺を標準的FFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)を用いて加工し、次いで切片化して、IHCでpFAK(IL-8の下流)又はpSTAT3(IL-6の下流)を染色した。受容体の遮断は、トラフ濃度でも、見られる活性化の量及び浸潤細胞の数を減少させた。
図5図5は、OSの多重モデルにおける肺転移防止のDF2156Aとsc144の併用効果を示す。OS細胞の接種後、マウスは42日間、ビヒクル処置又はsc144とDF2156A両方による処置のいずれかを受けた。各群の1匹のマウスがエンドポイント基準を満たした時点で、その研究内の全マウスを安楽死させ、肺を採取し、転移性病変をカウントした。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実験の項において詳細に開示されているとおり、本発明者らは、IL-8活性の阻害薬として作用する分子が、肉腫の動物モデルで治療効果を有することを見出した。さらに、本発明者らは、IL-8阻害が肺転移の発症を抑制できることも見出した。特に、IL-8とIL-6の阻害の組合せが転移を防止する。
【0026】
従って、本発明の第一の目的は、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫の治療及び/又は予防に使用するためのIL-8阻害薬である。
好適な態様に従って、前記IL-8阻害薬は、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫に関連する肺転移の予防及び/又は治療に使用するためのものである。
【0027】
本願による「IL-8阻害薬」という用語は、IL-8の生物活性を部分的に又は全体的に阻害できる全ての化合物を指す。そのような化合物は、IL-8の発現又は活性を低下させることによって、又はIL-8受容体によって活性化される細胞内シグナル伝達の発動を阻害することによって作用することができる。前記IL-8阻害薬は、500nM以下、好ましくは100nM未満の濃度で、PMNにおいてIL-8によって誘導される走化性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%を阻害できるのが好適である。
【0028】
好適な態様に従って、本発明のすべての目的のIL-8阻害薬は、CXCR1受容体によって媒介される、又はCXCR1とCXCR2受容体の両方によって媒介されるIL-8の活性を阻害する。
【0029】
好ましくは、この態様に従って、前記IL-8阻害薬は、CXCR1受容体の又はCXCR1及びCXCR2受容体両方のアロステリック阻害薬又はオルソステリックアンタゴニスト(orthosteric antagonist)のいずれかである。
【0030】
好ましくは、前記IL-8阻害薬はCXCR1受容体に対して選択的であるか又はCXCR1及びCXCR2受容体に対して等しく効力がある。
本発明による「CXCR1に対して選択的」とは、CXCR2に対してよりもCXCR1に対して少なくとも2、好ましくは3対数高いIC50値を示す化合物を意味する(Bertini R.ら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA(2004),101(32),pp.11791-11796)。
【0031】
「CXCR1及びCXCR2に対して等しく効力がある」とは、CXCR1及びCXCR2に対して10ピコモル(10-11M)~1マイクロモル(10-6M)の範囲のIC50値を示す化合物を意味する(Bertini R.ら,Br.J.Pharm.(2012),165,pp.436-454)。
【0032】
さらに好ましくは、本発明によるIL-8阻害薬は、CXCR1受容体に対して低ナノモル範囲、好ましくは0.02~5ナノモルの範囲のIC50値を有する。
好適な態様に従って、また前出の態様との組合せにおいても、前記IL-8阻害薬は、小分子量分子及び抗体から選ばれ、さらに好ましくは、それは小分子量分子である。
【0033】
CXCR1受容体によって媒介される又はCXCR1とCXCR2受容体の両方によって媒介されるIL-8の活性を阻害できる、上記定義によるIL-8阻害薬は、当該技術分野で公知である。
【0034】
本発明による好適なIL-8阻害薬は、1,3-チアゾール-2-イルアミノフェニルプロピオン酸誘導体、2-フェニル-プロピオン酸誘導体及びそれらの薬学的に許容可能
な塩から選ばれる。
【0035】
上記化合物のうち、前記1,3-チアゾール-2-イルアミノフェニルプロピオン酸誘導体は、好ましくは、式(I):
【0036】
【化1】
【0037】
の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、
-R1は、水素又はCHであり;
-R2は、水素又は直鎖C-Cアルキルであり、好ましくはそれは水素であり;
-Yは、S、O及びNから選ばれるヘテロ原子であり;好ましくはそれはSであり;
-Zは、ハロゲン、直鎖又は分枝C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cアルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、C-Cアシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、C-Cアシルアミノ、ハロC-Cアルキル、ハロC-Cアルコキシ、ベンゾイル、直鎖又は分枝C-Cアルカンスルホネート、直鎖又は分枝C-Cアルカンスルホンアミド、直鎖又は分枝C-Cアルキルスルホニルメチルから選ばれ;好ましくはそれはトリフルオロメチルであり;
-Xは、OH又は式NHRの残基であり;ここで、Rは、
-水素、ヒドロキシル、直鎖又は分枝C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルコキシ、
又はC-Cフェニルアルキル(ここで、アルキル、シクロアルキル又はアルケニル基はCOOH残基で置換されていてもよい)、
-式SOR4の残基(ここで、R4は、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cハロアルキルである)
から選ばれる。
【0038】
好ましくは、上記化合物において、XはOHである。
上記化合物のうち、特に好適なのは、前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩において、
R1がCHであり;
R2が水素又は直鎖C-Cアルキルであり、好ましくはそれは水素であり;
Yが、S、O及びNから選ばれるヘテロ原子であり;好ましくはそれはSであり;
Zが、ハロゲン、直鎖又は分枝C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cアルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、C-Cアシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、C-Cアシルアミノ、ハロC-Cアルキル、ハロC-Cアルコキシ、ベンゾイル、直鎖又は分枝C-Cアルカンスルホネート、直鎖又は分枝C-Cアルカンスルホンアミド、直鎖又は分枝C-Cアルキルスルホニルメチルから選ばれ;好ましくはそれはトリフルオロメチルであり;
XがOH又は式NHRの残基であり;ここで、Rは、
-水素、ヒドロキシル、直鎖又は分枝C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルコキシ、
又はC-Cフェニルアルキル(ここで、アルキル、シクロアルキル又はアルケニル基はCOOH残基で置換されていてもよい)、
-式SOR4の残基(ここで、R4は、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cハロアルキルである)
から選ばれる、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0039】
好ましくは、これらの化合物において、XはOHである。
上記化合物のうち、特に好適なのは、前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩において、
R1が水素であり;
R2が水素又は直鎖C-Cアルキルであり、好ましくはそれは水素であり;
Yが、S、O及びNから選ばれるヘテロ原子であり;好ましくはそれはSであり;
Zが、ハロゲン、直鎖又は分枝C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cアルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、C-Cアシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、C-Cアシルアミノ、ハロC-Cアルキル、ハロC-Cアルコキシ、ベンゾイル、直鎖又は分枝C-Cアルカンスルホネート、直鎖又は分枝C-Cアルカンスルホンアミド、直鎖又は分枝C-Cアルキルスルホニルメチルから選ばれ;好ましくはそれはトリフルオロメチルから選ばれ;
XがOH又は式NHRの残基であり;ここで、Rは、
-水素、ヒドロキシル、直鎖又は分枝C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルコキシ、
又はC-Cフェニルアルキル(ここで、アルキル、シクロアルキル又はアルケニル基はCOOH残基で置換されていてもよい);
-式SOR4の残基(ここで、R4は、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cハロアルキルである)
から選ばれ、さらに好ましくはXがNHである、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩でもある。
【0040】
好ましくは、上記化合物において、XはOHである。
上記化合物のうち、特に好適なのは、前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩において、
R1が水素又はCHであり;
R2が水素又は直鎖C-Cアルキルであり、好ましくはそれは水素であり;
Yが、S、O及びNから選ばれるヘテロ原子であり;好ましくはそれはSであり;
Zが、直鎖又は分枝C-Cアルキル、直鎖又は分枝C-Cアルコキシ、ハロC-Cアルキル及びハロC-Cアルコキシから選ばれ;好ましくはそれはメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルから選ばれ、さらに好ましくはそれはトリフルオロメチルであり;
XがOHである、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩でもある。
【0041】
上記化合物のうち、特に好適なのは、前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩において、
R1がCHであり;
R2が水素又は直鎖C-Cアルキルであり、好ましくはそれは水素であり;
Yが、S、O及びNから選ばれるヘテロ原子であり;好ましくはそれはSであり;
Zが、直鎖又は分枝C-Cアルキル、直鎖又は分枝C-Cアルコキシ、ハロC-Cアルキル及びハロC-Cアルコキシから選ばれ;好ましくはそれはメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルから選ばれ、さらに好ましくはそれはトリフルオロメチルである、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩でもあ
る。
【0042】
上記化合物のうち、特に好適なのは、前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩において、
R1が水素であり;
XがOHであり;
R2が水素又は直鎖C-Cアルキルであり、好ましくはそれは水素であり;
Yが、S、O及びNから選ばれるヘテロ原子であり;好ましくはそれはSであり;
Zが、直鎖又は分枝C-Cアルキル、直鎖又は分枝C-Cアルコキシ、ハロC-Cアルキル及びハロC-Cアルコキシから選ばれ;好ましくはそれはトリフルオロメチルである、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩でもある。
【0043】
好ましくは、R1が水素であるすべての上記式(I)の化合物において、フェニルプロピオン酸基のキラル炭素原子はS配置である。
特に好適なのは、2-メチル-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(本明細書においてはDF2726Yとしても示される)及びその薬学的に許容可能な塩、好ましくはそのナトリウム塩(本明細書においてはDF2726Aとしても示される)及び2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸及びその薬学的に許容可能な塩、好ましくは(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(DF2755Yとしても知られる)及びそのナトリウム塩(DF2755Aとしても知られる)から選ばれる、本発明による式(I)の化合物である。
【0044】
式(I)の化合物はWO2010/031835に開示されており、そこにはそれらの合成法、IL-8阻害薬としてのそれらの活性のほか、IL-8依存性病変、例えば、一過性脳虚血、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、特発性線維症、糸球体腎炎及び虚血と再潅流によって引き起こされる損傷の治療におけるそれらの使用も開示されている。
【0045】
上記IL-8阻害薬のうち、前記2-フェニルプロピオン酸誘導体は、好ましくは、式(II):
【0046】
【化2】
【0047】
の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、
式中、
は、直鎖又は分枝C-Cアルキル、ベンゾイル、フェノキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシであり;好ましくは、それは、ベンゾイル、イソブチル及びトリフルオロメタンスルホニルオキシから選ばれ、また、好適な態様によれば、Rは、フェニ
ル環の3又は4位にあり、さらに好ましくは、それは、3-ベンゾイル、4-イソブチル又は4-トリフルオロメタンスルホニルオキシであり、
は、H又は直鎖もしくは分枝C-Cアルキルであり、好ましくは、それはHであり、
は、直鎖又は分枝C-Cアルキル又はトリフルオロメチルであり;好ましくは、それは直鎖又は分枝C-Cアルキルであり、さらに好ましくはそれはCHである。
【0048】
上記化合物のうち、好適なのは、式(II)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩において、
がC-Cアルキル又はベンゾイルであり;好ましくはそれは3又は4位にあり、さらに好ましくはそれは3-ベンゾイル又は4-イソブチルであり、
がH又は直鎖もしくは分枝C-Cアルキルであり、好ましくはそれはHであり、
が直鎖又は分枝C-Cアルキル又はトリフルオロメチルであり;好ましくはそれは直鎖又は分枝C-Cアルキルであり、さらに好ましくはそれはCHである、式(II)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0049】
上記化合物のうち、好適なのは、式(II)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩において、
がトリフルオロメタンスルホニルオキシ、好ましくは4-トリフルオロメタンスルホニルオキシであり、
がH又は直鎖もしくは分枝C-Cアルキルであり、好ましくはそれはHであり、
が直鎖又は分枝C-Cアルキル又はトリフルオロメチルであり;好ましくはそれは直鎖又は分枝C-C16アルキル、さらに好ましくはそれはCHである、式(II)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0050】
上記化合物のうち、好適なのは、式(III):
【0051】
【化3】
【0052】
の化合物又はその薬学的に許容可能な塩でもあり、
式中、
は水素であり;
Rは、式SORaの残基(ここで、Raは、直鎖又は分枝C-Cアルキル又はハロC-Cアルキルであり、好ましくはそれはCHである)である。
【0053】
好ましくは、上記式(II)又は(III)の化合物において、フェニルプロピオン酸基の
キラル炭素原子はR配置である。
本発明に従って特に好適な式(II)の化合物は、R-(-)-2-(4-イソブチルフェニル)プロピオニルメタンスルホンアミド(レパリキシン(Reparixin)としても知られ
る)及びその薬学的に許容可能な塩から選ばれる。好ましくは、前記化合物は、R(-)-2-(4-イソブチルフェニル)プロピオニルメタンスルホンアミドのリシンin situ塩(本明細書においてはDF1681Bとしても示される)である。
【0054】
さらに本発明に従って特に好適な式(II)又は(III)の化合物は、2-(4-トリフ
ルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニルプロピオンアミド及びその薬学的に許容可能な塩、好ましくはそのナトリウム塩、好ましくは、R(-)-2-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニルプロピオンアミド(DF2156Yとしても知られる)及びそのナトリウム塩(ラダリキシン(Ladarixin)又はDF2156Aとしても知られる)である。
【0055】
式(II)及び(III)のIL-8阻害薬は、WO0024710及びWO2005/0
90295に開示されており、そこにはそれらの合成法、IL-8阻害薬としてのそれらの活性のほか、IL-8によって誘導される好中球の走化性及び脱顆粒の阻害薬としてのそれらの使用ならびにIL-8依存性病変、例えば、乾癬、潰瘍性大腸炎、メラノーマ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、特発性線維症、糸球体腎炎及び虚血と再潅流によって引き起こされる損傷の治療におけるそれらの使用も開示されている。
【0056】
本発明の第二の目的は、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためにIL-8阻害薬を使用することである。
【0057】
本発明の好適な態様によれば、前記医薬は、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫に関連する肺転移を治療及び/又は予防するためのものである。
【0058】
本発明の第三の目的は、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫の治療及び/又は予防法であって、それを必要とする対象に治療上有効量の上記定義のIL-8阻害薬を投与する手順を含む方法である。
【0059】
本発明の好適な態様によれば、前記方法は、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫に関連する肺転移を治療及び/又は予防するためのものである。
【0060】
本明細書において「治療上有効量」とは、疾患の治療又は予防を達成するのに足る量を指す。有効量の決定は、所望効果の達成を基にして十分当業者の能力の範囲内である。有効量は、これらの因子に限定されないが、対象の体重及び/又は対象が苦しんでいる疾患又は望まざる状態の程度を含む因子に依存する。
【0061】
本明細書中で使用されている用語「治療」及び「予防」とは、それぞれ、治療される疾患又はそれに付随する症状の一つ又は複数の根絶/改善又は発症の予防/遅延を指し、患者が依然としてその基礎疾患に苦しんでいるかもしれないという事実には関係しない。
【0062】
本発明の第四の目的は、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移の治療及び/又は予防に使用するための、上記定義のIL-8阻害薬を薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は希釈剤と共に含む医薬組成物である。
【0063】
一つの好適な態様に従って、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング
肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移、さらに好ましくは肺転移の予防及び/又は治療のための前記医薬組成物は、少なくとも一つのIL-6阻害薬及び/又は少なくとも一つのgp130阻害薬をさらに含む。
【0064】
本願による用語「IL-6阻害薬」とは、IL-6の生物活性を部分的に又は全体的に阻害できる全ての化合物を指す。
本願による用語「gp130阻害薬」とは、gp130の生物活性を部分的に又は全体的に阻害できる全ての化合物を指す。
【0065】
別の好適な態様に従って、骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移、さらに好ましくは原発腫瘍の予防及び/又は治療のための前記医薬組成物は、少なくとも一つの化学療法薬をさらに含む。
【0066】
本発明の第五の目的は、A)骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移の治療及び/又は予防に使用するための上記定義のIL-8阻害薬又は上記定義の医薬組成物、及びB)少なくとも一つのIL-6阻害薬及び/又は少なくとも一つのgp130阻害薬を含む製品又はキットであり、A)及びB)は、同時、別個又は順次使用のために2つの別個の製剤となっている。好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫に関連する肺転移の治療及び/又は予防に使用するためのものである。
【0067】
一つの好適な態様に従って、前記gp130阻害薬は、2-(7-フルオロピロロ[1,2-a]キノキサリン-4-イル) 2-ピラジンカルボン酸ヒドラジド(SC144)、ラロキシフェン(Raloxifene)及び(4R)-3-((2S,3S)-3-ヒドロキシ-2-メチル-4-メチレンノナノイル)-4-イソプロピルジヒドロフラン-2(3H)-オン(LMT-28)を含む群から選ばれる(Tae-Hwe Heoら;Oncotarget,Vol.7,No.13,15460-15473;2016)。
【0068】
一つの好適な態様に従って、前記IL-6阻害薬は、SC144、ボバリリズマブ(Vobarilizumab)、シルツキシマブ(Siltuximab)、シルクマブ(Sirukumab)、オロキズマブ(Olokizumab)、クラザキズマブ(Clazakizumab)、MAb 1339、トシリズマブ(Tocilizumab)及びサリルマブ(Sarilumab)を含む群から選ばれる(Tae-Hwe Heoら;Oncotarget,Vol.7,No.13,15460-15473;2016)。
【0069】
好ましくは、前記IL-6阻害薬はSC144である。
本発明の第六の目的は、A’)骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫又はそれらに関連する肺転移の治療及び/又は予防に使用するための上記定義のIL-8阻害薬又は上記定義の医薬組成物、及びB’)少なくとも一つの化学療法薬を含む製品又はキットであり、A’)及びB’)は、同時、別個又は順次使用のために2つの別個の製剤となっている。好ましくは、原発腫瘍の骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫の治療及び/又は予防に使用するためのものである。
【0070】
好ましくは、前記化学療法薬は、ドキソルビシン、シスプラチン、メトトレキサート、イホスファミド、エピルビシン、エトポシド、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びアクチノマイシンDを含む群から選ばれる。
【0071】
本発明の目的のために、本発明によるIL-8の阻害薬は、錠剤、カプセル、シロップなどの経口製剤(好ましくは制御放出製剤の形態で)によって、又は非経口投与(好ましくは静脈内もしくは筋肉内投与に適切な無菌溶液の形態で)によって使用するのに適切な医薬組成物に製剤化される。医薬組成物は、例えばRemingtonの“The Sc
ience and Practice of Pharmacy”,第21版(Lippincott Williams and Wilkins)に開示されているような従来法に従って製造できる。
【0072】
平均の日用量は、疾患の重症度、患者の状態、年齢、性別及び体重などのいくつかの因子に依存する。用量は、一般的に、1日あたり式(I)の化合物1~1500mgの間で変動する。前記用量は任意に複数回の投与用に分割されてもよい。
【0073】
本発明を以下の実験の項でさらに詳細に説明する。
【実施例0074】
実験の項
方法
細胞株と初代細胞培養。OS-17はOS-17異種移植由来であり、イタリア・ボローニャのIstituti Ortopedici Rizzoliから入手した。OS-25とOHSは、オスロのラジウム病院(Radium Hospital)の Dr.Fodstad研究室からの寄贈であった。すべて、10%FBS(Atlanta Biologicals #S11150H)を補充したRPMI(Corning #10-040-CV)中で維持された。143B及びK7M2細胞は、ATCCから入手し(ATCC #CRL-8303及び#CRL2836)、10%FBSを補充したDMEM(Corning #10-013-CV)中で増殖させた。OSCA-8及びOSCA-16は、Jamie Modiano及びミネソタ大学から提供され、10%FBS入りRPMI中で増殖させた。肺平滑筋細胞(ATCC #PCS-130-10)は、血管平滑筋細胞増殖キット(ATCC #PCS-100-042)を補充した血管細胞基本培地(ATCC #PCS-100-030)中で増殖させた。HUVEC細胞(Lonza CC-2517)は、EGM-plus single quote(Lonza #CC-4542)を補充した内皮細胞基本培地(Lonza #CC-5036)中で増殖させた。ヒト肺線維芽細胞(ATCC #PCS-201-013)は、10%FBSを補充したEMEM(ATCC #30-2003)中で増殖させた。HBEC3-KT細胞(ATCC #CRL-4051)は、気管支上皮細胞増殖キット(ATCC #PCS-300-040)を補充した気道上皮細胞基本培地(ATCC #PCS-300-030)中で増殖させた。マクロファージは、全血(新鮮ヒト血液を調達するための施設内IRB承認プロトコルを通じて得た)から、CD14磁気ビーズ分離システム(Miltenyi #130-050-201)とその後の20ng/mlの組換えヒトM-CSF(BioLegend #574802)を毎日補充したXVIVO無血清培地(Lonza #04-380Q)中での72時間の培養を用いて単離された単球から誘導された。共培養実験の場合、各群内の培養(共培養及び関連する単独培養)は、培地成分の相違を調整するために二つの対応する増殖培地の1:1混合物を用いて実施した。
【0075】
IL-6とIL-8のELISA。24ウェルプレートで実施された各細胞株の72時間培養物の無細胞上清のIL-6及びIL-8の濃度を、R&D DuoSet ELISA Development Kits(#DY206及び#DY208)を製造業者の推奨に従って使用して評価した。
【0076】
スクラッチ(「創傷治癒」)アッセイ。OS-17又はOHS細胞株の単層培養物をEssen Incucyte WoundMaker(Essen Cell Migration Kit #4493)を用いて分断した(傷つけた)。次に、個々のウェルをEssen Incucyte Zoomを用いて連続的に画像化した。分析を実施し、創傷幅をEssen’s Integrated Cell Migration Analysis Module(Essen #9600-0012)を用いて定量した
【0077】
トランスウェル遊走/浸潤アッセイ。1×10個のOS細胞を、適切な走化性因子を含有するトランスウェルインサート(遊走の場合Falcon #353097、又はマトリゲル(Matrigel)浸潤アッセイの場合Corning #354483のいずれか)に播種した。24時間のインキュベーション後、トランスウェルを排水し、上部チャンバ/膜の上面をポリエステルスワブでこすり落とした。膜をDif-Quik染色セット(Siemens #B4132-1A)で染色し、乾燥させた後、倒立顕微鏡で画像化した。細胞をAdobe Photoshop計数ツールを用いて定量した。IL-6及びIL-8の走化性を含む実験の場合、培地は両チャンバとも1%FBSを含有し、組換えタンパク質を下部チャンバに加えて、50ng/mlのIL6(BioLegend #570804)又は100ng/mlのIL-8(BioLegend #574204)とした。血清を化学誘引物質として使用する実験の場合、上部チャンバはRPMIしか含有しないが、下部チャンバは1%又は2.5%血清を含有していた。注記されている場合(where noted)、IL6(Abcam #AB6672)、IL-8(Abcam #A
B18672)、又はその両方のいずれかに対する中和抗体20ug/mlを上部及び下部チャンバの両方に加えた。血清誘導遊走/浸潤を遮断する小分子の能力を試験する実験では、1μMのsc144(Sigma #SML0763)及び/又は100nMのDF2156A(Dompe Pharmaceuticals,イタリア・ミラノ)を培地に加えた。
【0078】
OS細胞増殖。20%コンフルエンスで播種された細胞を各図面に記載された阻害薬を含有する上記の増殖培地で培養した。増殖は、Essen Biosciences Incucyte Zoomを用いて、各図面に記載の期間にわたって連続的に定量した。
【0079】
コロニー形成。1×10個のOS細胞を、6ウェルプレート中1%軟寒天床1.5ml上の0.5%軟寒天1.5ml中に播種した後、500mlのRPMIで覆った(軟寒天:Lonza SeaPlaque GTG Agarose,#50111、Gibcoの粉末RPMI #430-1800中)。注記されている場合、培地と寒天の両方全体に拡散した場合に規定濃度を生じるのに十分な薬物をRPMI層に加えた。
【0080】
異種移植生存試験。1×10個のOS-17細胞を尾静脈から接種された(0日)6~8週齢のCB17-SCID(Envigo C.B-17/IcrHsd-Prkdcscid)マウスに、毎日、sc144(10mg/kg SC 1日1回、Sigma #SML0763)、DF2156A(30mg/kg IP 1日1回)、又はその両方の注射を接種24時間後から開始した。sc144は、温めながらDMSO中に溶解して40mg/kg溶液にすることによって調製され、これを水中40%プロピレングリコール/1%Tween-20を用いて直ちに2mg/kgに希釈した。平均20gのマウスに100ul/用量を投与した。sc144の用量は毎日新たに調製された。DF2156Aは、20gのマウスに同様の100ul用量を投与するために、PBS中に溶解して6mg/ml溶液にすることによって調製された。処置は42日間継続され、その後停止された。マウスは、週2回、体重と増強されたボディ・コンディション・スコアリング(eBCS(28))についてモニタされた。>10%の体重減少又はeBCS<8を示すマウスは安楽死させ、組織を採取し、肺に通気し、10%中性緩衝ホルマリン中に固定し、次いで上記のように包埋及び加工した。転移性疾患負荷を示さないマウス(おそらくは他の原因で死亡する)は、生存分析から脱落する。これに含まれるのは、併用療法を受けた2匹のマウス、sc144を投与された1匹、及び1匹の対照マウスである。
【0081】
時点処置試験。6~8週齢のCB17-SCIDマウスに、1×10個の143B、OSCA-8、OSCA-16、又はK7M2細胞を接種した(K7M2細胞については
、免疫応答性(正常の免疫反応を引き起こす)Balb/cマウスが使用された)。接種24時間後、マウスに対し、毎日のsc144及び/又はDF2156Aによる処置を開始し、上記のように42日間継続した。次に、任意の所与の細胞株群の1匹のマウスがエンドポイントに到達するまでマウスを上記のように観察した。このセンチネルマウスから採取した肺に転移性疾患の徴候が認められた場合、その群の全マウスを安楽死させ、肺を採取し、通気し、固定し、包埋し、そして染色した。H&Eで染色された左葉の中央切片を顕微鏡検査を用いて検査し、経験を積んだ盲検検査者(blinded reviewer)が転移性病変をカウントした。
【0082】
統計分析。データは、Graphpad Prism 7を用いてグラフ化及び分析された。使用された具体的な統計的検定及び行われた比較は各図面の説明文中に特定されている。必要な場合、多重比較の調整は、0.05の偽発見率を制御するBenjamini-Hochberg法を用いて実施された。
【0083】
実施例1
IL-6及びIL-8の産生は、肺コロニー形成のマウス異種移植モデルにおける転移能と相関する
本発明者らは、骨肉腫細胞株集団がマウス肺にコロニーを形成する能力について試験した。本発明者らは、OS-17細胞は尾静脈から循環に導入されると非常に高い効率で転移巣を形成したが、OHS細胞株ははるかに低い転移効率しか示さないことを見出した(図1)。この効果は、多数回の細胞継代及び多数のアッセイにわたって一貫していた。本発明者らは、これらの細胞株のIL-6及びIL-8産生について、無細胞上清をELISAに付すことによって調べた(図1d)。その結果、腫瘍細胞のこれら二つのサイトカインの産生と、細胞株のマウス肺へのコロニー形成能力との間に強い相関があることが判明した。
【0084】
IL-6及びIL-8は、転移能に関わらず、OS細胞において化学運動性と指向性遊走を刺激する
これらの高転移性及び低転移性の細胞株がこれらのサイトカインに応答する特徴を維持しているかどうかを示すために、我々は、スクラッチアッセイ(創傷治癒アッセイ)とトランスウェル遊走アッセイの両方を実施し、応答を評価した。OS-17及びOHS両方の細胞単層に作製された標準化創傷は、IL-6及び/又はIL-8を補充した培地中で培養された場合に、より効果的に閉じ、いずれのサイトカインも、そのサイトカインの何らかの基本的産生に関わらず、いずれの細胞株においても化学運動性を刺激できること(細胞運動性の増大)を示していた。これらの細胞は、指向性遊走を試験するアッセイでも同様の結果を示す。トランスウェル系の上部チャンバで増殖させたOS-17及びOHS細胞とも、IL-6か又はIL-8の走化性勾配に応答して強い指向性遊走を示す。
【0085】
OS細胞の指向性遊走及び浸潤を防止するDF2156A単独の又はsc144と組み合わせた効果
考えられる走化性因子のずっと広い環境内でのOS細胞遊走に対するこれらのサイトカインの重要性を決定するために、本発明者らは、血清を化学誘引物質として使用した場合にIL-6及び/又はIL-8遮断が持つであろう効果を調べた。どちらの細胞株も、血清の走化性勾配に応答して、マトリゲル障壁を通過する非常に強いトランスウェル遊走及び浸潤を示した(図1e-f)。IL-6又はIL-8遮断抗体を培地に添加すると、走化性応答に一定の低下が明らかであったが、抗体を組み合わせた場合にはるかに大きい効果が見られた。より大きい効果は、IL-6及びIL-8の受容体の小分子阻害薬[sc144(これは新規機序を通じてgp130の劣化を刺激する)及びDF2156A(CXCR1及びCXCR2のアロステリック阻害薬)]を使用する同様の実験で見られた。受容体レベルでの阻害で、いずれの経路の遮断も指向性遊走及び浸潤を防止するのに十分
であり(図2)、これらの経路の一定レベルの活性化(おそらくは非IL-6及び非IL-8サイトカインによる)が、OS細胞がこれらの挙動を生じるのに必要であることを示唆している。どちらの阻害薬もOS細胞の遊走量を著しく減少させた。
【0086】
実施例2
肺転移の防止におけるDF2156A単独の又はsc144と組み合わせた効果
OS肺転移に対するIL-6及びIL-8経路の機能的重要性を評価するために、本発明者らは異種移植モデルを使用した。尾静脈から1×10個のルシフェラーゼ標識OS-17細胞を接種されたBalb-SCIDマウスを、sc144(gp130阻害薬)、DF2156A(CXCR1/2阻害薬)、又はその両方で処置した。マウスは42日間処置を受け続け、その後処置は停止された。腫瘍量をインビボ評価するための生体内イメージングを14日及び24日に標準的生物発光技術を用いて実施した。生物発光イメージングから、併用療法を受けたマウスの肺における腫瘍量が、処置を受けなかったか又は単剤療法を受けたマウスと比べて著しく減少していることが示唆された(図3A)。重要なことに、イメージングで腫瘍細胞の他の臓器への遊走は示されなかったが、生物発光が総体的に失われていることから、循環腫瘍細胞の総体的な生存が減少していることが示唆された。各単剤処置群からの2匹のマウスを14回目の薬物投与の24時間後に安楽死させ、標的阻害の薬力学(PD)評価を実施した。IHCでpFAK(DF2156A)又はpSTAT3(gp130)を染色したマウスの肺は、投与のトラフ(次の投与直前の最低血中濃度)でも標的阻害の持続(すなわち薬物活性の持続)を示していた(図4)。
【0087】
処置後、マウスを、臨床的悪化の徴候、すなわち我々の規定のエンドポイントである体重減少>10%又は増強されたボディ・コンディション・スコア(eBCS)<8のいずれかを示すまで観察した。エンドポイント時点で、マウスを認可された方法を用いて安楽死させ、肺を採取、通気、固定、包埋、切片化、及び染色した。生存分析(図3B)から、薬物療法を受けていないか又は単剤療法を受けていたほぼすべてのマウスは60日までに致死的肺転移を起こしたことが示された。特に、薬物を投与されなかったマウスは、単剤投与されたマウスより早く致死的肺転移を起こした。ところが、併用療法(gp130阻害薬+CXCR1/2阻害薬)を受けた大部分のマウスは>100日でも健康状態を保っていた。肺切片上に明白な肺転移を示さなかったマウスは、生存分析から脱落した(n=2)。
【0088】
実施例3
OSの多重モデルにおける肺転移防止のDF2156Aとsc144の併用の効果
これらの研究で得られた結果が広く適用可能であること及び免疫不全の異種移植又はOS-17細胞に特異的でないことを保証するために、本発明者らはいくつかの異なるモデルを用いて処置関連の実験を繰り返した。これらには、Balb/cマウスに自然発生するOSから誘導された細胞株を用いる同系免疫応答性モデル(K7M2)、イヌOSの異種移植モデル(OSCA-8及びOSCA-16)、及びヒトOSの追加の異種移植モデル(143B)が含まれた。腫瘍細胞を接種されたマウスを薬物なし又はsc144とDF2156Aの併用のいずれかで42日間処置した。いずれかの群(いずれかの細胞株)の少なくとも1匹のマウスが肺転移の確認によりエンドポイントに到達した時点で、その群の全マウスを安楽死させ、肺を採取し、転移性病変を定量化した。転移性肺病変の発生を防止する二重gp130-CXCR1/2阻害の能力は全モデルで一貫していた(図5)。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨及び軟部組織の肉腫、好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫の予防及び/又は治療、さらに好ましくは、骨肉腫、ユーイング肉腫又は横紋筋肉腫に関連する肺転移の予防及び/又は治療に使用するためのIL-8阻害薬。
【外国語明細書】