(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164931
(43)【公開日】2023-11-14
(54)【発明の名称】部品を選別するためのレーザ切断機用の把持具の設計
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20231107BHJP
【FI】
G06F30/10 100
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142921
(22)【出願日】2023-09-04
(62)【分割の表示】P 2022516771の分割
【原出願日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】19216793.0
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503168692
【氏名又は名称】バイストロニック レーザー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー アラン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコビ シュテファン
(57)【要約】
【課題】様々に異なる用途に対して把持具をプロセス信頼性の高い方法で使用することができるアプローチを提供する。
【解決手段】本発明は、設計部(KO)と、加工機(L)から又は加工機(L)へ運搬する必要のある部品(P)を把持する部品固有把持具(W)を設計するための設計データセット(kds)を計算するためのコンピュータ実装方法と、に関し、この方法は、部品固有把持具(W)による把持対象である少なくとも1つの部品(P)の部品パラメータ(pp)を提供する工程(S1)と、提供された部品パラメータ(pp)から部品固有把持具(W)を設計することによって把持具データセット(gds)を結果として出力する設計アルゴリズム(KA)を実行する工程(S3)と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機(L)から又は加工機(L)へ運搬する必要のある部品(P)を把持する部品固有把持具(W)を設計するための、コンピュータにより実行される方法であって、
前記部品固有把持具(W)による把持対象である少なくとも1つの部品(P)の部品パラメータ(pp)を提供する工程(S1)と、
提供された前記部品パラメータ(pp)に基づいて、前記部品固有把持具(W)の把持部タイプ、把持部サイズ、又は、把持部の数の少なくとも1つを含む、前記部品固有把持具(W)の特徴を表す把持具データセット(gds)を結果として提供する設計アルゴリズム(KA)を実行する工程(S3)と、
ユーザからの指示に応じて、前記把持具データセット(gds)が表す前記部品固有把持具(W)に必要な構成要素(K)を特定する工程と、
を含み、
前記把持具データセット(gds)が示す前記部品固有把持具(W)を構成する前記構成要素(K)の在庫が有る場合、前記部品固有把持具(W)が組み立てられ、前記把持具データセット(gds)が示す前記部品固有把持具(W)を構成する前記構成要素(K)の在庫が無い場合、前記部品固有把持具(W)の部品リストを含む、前記部品固有把持具(W)を設計するのに必要な仕様を示す設計データセット(kds)をユーザインターフェース上に出力する(S6)、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記部品パラメータ(pp)が、
前記部品(P)の重量及び/又は重心、
前記部品におけるカットアウト若しくは突起、及び/又は
曲げ関連パラメータ、及び/又は
他の設計パラメータ、及び/又は
前記部品(P)の材料に基づくパラメータを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記設計アルゴリズム(KA)が、2つの部分に分かれており、把持部のタイプ、サイズ、及び/又は必要最小限の数を決定するための把持部決定機能(GBF)と、各把持部の位置を決定するための位置計算機能(PBF)とを含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記部品固有把持具(W)の前記構成要素(K)の位置仕様を、前記位置計算機能(PBF)において構成することができる、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの加速度値が、前記位置計算機能(PBF)において入力変数として処理され、かつ/又は、
前記位置計算機能(PBF)が、ブルートフォースアルゴリズム、ランダム化アルゴリズム、及び/又は混合形式を実行する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記部品(P)に利用可能な前記部品固有把持具(W)を設計するのに必要な仕様を示す設計データセット(kds)が、設計された前記部品固有把持具(W)のための部品リストを、前記構成要素(K)及び接続部品と共に含んでいる、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記部品固有把持具(W)が、ある個数の前記構成要素(K)からなるモジュール構造を有し、かつ/又はピックアンドプレースアプリケーションの一部であるロボットによって操作される、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記設計アルゴリズム(KA)を実行するために、前記部品パラメータ(pp)に加えて、切断機として設計された前記加工機(L)の電子切断計画(sp)が提供される、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記設計アルゴリズム(KA)が、前記把持具データセット(gds)を提供できない場合、エラーメッセージが、生成され、出力される、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記部品固有把持具(W)の自動注文プロセスを、指示信号に応答してトリガーすることができるように、注文アプリケーションへのインターフェースが形成されている、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
デジタルコンピュータの内部メモリにロードすることができる、コンピュータプログラムセクションを含むコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラムセクションが前記デジタルコンピュータ上で実行されると、請求項1~10に記載の方法が実行される、
ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項12】
加工機(L)から又は加工機(L)へ運搬する必要のある部品(P)を把持する部品固有把持具(W)を設計するための設計部(KO)であって、
前記加工機(L)によって加工される、把持対象である少なくとも1つの部品(P)の部品パラメータ(pp)を提供するためのインポートインターフェース(ES)と、
提供された前記部品パラメータ(pp)に応答して、設計アルゴリズム(KA)を実行することを目的とした処理部(CPU)であって、インポートされた前記部品パラメータ(pp)に基づいて、前記部品固有把持具(W)の把持部タイプ、把持部サイズ、又は、把持部の数の少なくとも1つを含む、前記部品固有把持具(W)の特徴を表す把持具データセット(gds)を結果として提供する処理部(CPU)と、を有し、
ユーザからの指示に応じて、前記把持具データセット(gds)が表す前記部品固有把持具(W)に必要な構成要素(K)を特定した上で、前記把持具データセット(gds)が示す前記部品固有把持具(W)を構成する前記構成要素(K)の在庫が有る場合、前記部品固有把持具(W)を組み立てるための組み立て指示を出力し、前記把持具データセット(gds)が示す前記部品固有把持具(W)を構成する前記構成要素(K)の在庫が無い場合、前記部品固有把持具(W)の部品リストを含む、前記部品(P)に利用可能な前記部品固有把持具(W)を設計するのに必要な仕様を示す設計データセット(kds)をユーザインターフェース上に出力する、
ことを特徴とする設計部(KO)。
【請求項13】
請求項12に記載の設計部(KO)を有する
ことを特徴とする加工機(L)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、レーザ切断機によって切断又は加工された、切断又は加工された片若しくは部品を把持する把持具の設計に関する。設計対象となる把持具は、当該の切断された部品のために専用に寸法決めされる必要がある。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機によって加工された部品は、通常、ロボットによる選別又は除去のために、例えば、テーブル(例えば、シャトルテーブル)の形式の装置上に提供される。
【0003】
この目的のために、従来技術において2つのタイプの把持具が知られている。1つは、それぞれの運搬タスク専用に又は運搬対象部品専用に設計された専用の把持具であり、もう1つは、様々に異なる運搬タスク又は様々に異なる部品(例えば、部品の重量、形状、及び/又はサイズが様々に異なる)に対して使用することができる多機能把持具である。
【0004】
専用の把持具は、プロセス信頼性は高いものの、従来技術の既知のシステムを用いてその把持部を発展させるためには複雑なプロセスを実行する必要があるという欠点がある。
【0005】
多機能把持具は、様々に異なる用途において使用することができるが、特定の部品についてはプロセス信頼性が高い方法で機能しないという欠点がある。米国特許出願公開第2016/288194(A1)号には、自動化プレス機内の支持体に手動で取り付けられるワークピース固有の構成要素をロボットで位置決めするための方法及びデバイスについて記載されている。米国特許出願公開第2016/082660(A1)号には、インターネットベースのアクセスポータルの範囲内でオブジェクトをクランプ及び/又は把持するための顧客固有の構成要素を設計及び製造する方法が記載されている。コンピュータサイエンステクノロジー及びアプリケーションに関する2009年国際フォーラム(IFCSTA 2009)の議事録:「航空機のフレキシブルアセンブリにおける真空吸盤ユニットのインテリジェントデザインアプローチ(Intelligent Design Approach for Vacuum Suction Cup Units in Aircraft Flexible Assembly)」には、CADに基づくいわゆるフレキシブル固定具機構で採用されているパラメトリック3Dセマンティックモデルを使用することによってフレキシブル航空機アセンブリで用いられる真空吸盤の構造及び特性について記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで本発明が役立つ。本発明の目的は、様々に異なる用途に対して(例えば、様々に異なる運搬タスク及び/又は片若しくは部品に対して)把持具をプロセス信頼性の高い方法で使用することができるアプローチを提供することである。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、部品固有の把持具、特にモジュール式の把持具(モジュール式構成要素からなる)を設計するための設計データセットを計算するためのコンピュータ実装方法によって達成され、この把持具は、完全自動の、特にロボットに基づく部品(すなわち、ロボットによって運搬される必要がある構成要素)把持のためのものである。部品とは、例えば、加工システム、例えばレーザ加工システム(例えば、レーザ切断システム)の加工された片若しくは加工対象となる片、又は曲げ加工機の曲げ加工された片であり得る。本方法は、以下の方法工程を含む。
- 把持具による把持対象である少なくとも1つの部品の部品パラメータを提供する工程。把持は、選別又は分離のため、運搬のため、追加及び/又は除去のため、及び/又は分離のために行うことができ、あるいは前述のプロセスの範囲内で実行することができる。
- 提供された部品パラメータ(pp)から部品固有把持具(W)を設計することによって把持具データセット(gds)を結果として提供する設計アルゴリズム(KA)を実行する又は使用する工程。
【0008】
本明細書で紹介する解決策には、より迅速に、より高いプロセス信頼性のある、又はそれぞれの把持タスクについてフィットの精度が向上した把持具を提供することができるという利点がある。したがって、ロボット(把持ロボット)に迅速に装填し、ロボットを操作することができる。したがって、全体的な処理時間を短縮することができる。知識ベース設計のおかげで、把持具をより良好に(より適切に)設計することもでき、手作業の不正確な設計によって引き起こされるエラーを回避することができる。設計アルゴリズムは、それぞれの把持タスク(部品、移動)に最適な把持部の形状を計算する。設計アルゴリズムは、その最適な把持部の形状が利用できない場合、又は加工機上でローカルに組み立てることができない場合、特に、その把持部の設計図(CADなど)を結果として自動的に作成することができる。この場合、必要な構成要素(吸着盤、磁石、接続具など)の部品リストもまた自動的に作成されることができる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、部品パラメータは、当該部品を把持するために、把持具の設計に関連する全てのパラメータを含むことができる。部品パラメータは、重量、部品の重心、部品におけるカットアウト又は突起、曲げ加工関連パラメータ、並びに部品の設計及び材料に基づくパラメータを含むグループから選択することができる。本方法をそれぞれの用途のために専用に計画するために、本方法の設定フェーズにおいて部品パラメータを好都合に設定することが可能である。これは、設計計算において考慮されることになる部品パラメータを設定することができることを意味する。本発明の好都合な発展例では、部品パラメータを、記録された切断計画から計算することができる。切断計画のみを提供し、次いで、その提供された切断計画からパラメータが計算され、設計アルゴリズム用にインポートされる。これにより、本コンピュータ実装方法をさらに正確に計画及び適合させることができる。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施形態では、把持具は、ある個数の把持具構成要素から作製されるモジュール構造を有することができる。どの把持具及び/又はどの把持具構成要素(例えば、吸着盤、磁石、アームなど)がローカルに現在利用可能であるかを表す可用性データを、データベースに保持することができる。この目的で、可用性ファイルを維持して継続的に更新することができるため、モジュール式構造キットの形式の把持具は、複数の構成要素から「選択可能」であるか又は組み合わせ可能である。データベース及び/又は可用性ファイルは、提供された把持具データセットを用いてアクセスされる。組み立て指示は、組み立てて把持具にするための構成要素を選択するための選択コマンドを自動的に備えることができる。
【0011】
「利用可能な把持具」とは、完全に設計された把持具か、又は利用可能な構成要素(例えば、吸着盤、ベースプレート、磁石、ホース、接続要素)から設計されることができる把持具のいずれかを意味する。把持具又はその構成要素がローカルに利用可能である場合、対応する可用性メッセージを(例えば、レポートの形式で)ユーザインターフェース上に出力することができる。
【0012】
把持具がローカルに利用可能ではない場合、又は全ての必要な構成要素が加工機上でローカルに利用可能ではない場合、把持具データセットを使用して設計データセットを作成し、この設計データセットを把持具の設計に使用する。設計データセットには、例えば、部品リストを含めることができる。また、設計データセットには、組み立て指示を含めることもできる。
【0013】
したがって、本発明のこの好都合な実施形態では、設計データセットは、把持具データセットから、例えば、STEPファイルの形式で作成することができる。STEPとは、STEP(STandard for the Exchange of Product model data)(製品モデルデータの交換のための基準)を表し、製品データを記述するための基準である。これには、把持具の物理的な側面に加えて、機能的な側面も含まれる。STEPは、ISO 10303に正式に定義されている。設計データセットは、設計された把持具がローカルに利用できない場合にのみ生成されることが好ましい。ここでの「ローカルに利用可能」とは、加工機上での又は加工機での可用性を意味する。この目的のために、ある個数の把持具をそれらの構成要素と共に格納した収納モジュールを設けることができる。これには、必要な場合にのみ設計データセットが作成されるという利点があり、したがって、把持具を次の運搬タスクに使用することはできない。
【0014】
本出願における「把持具データセット」という用語は、ある把持具を指定及び/又は識別するため、及び/又はある個数の様々に異なる把持具からその把持具を決定及び/又は選択するために使用される電子データセットに関する。把持具データセットには、少なくとも以下の3つのパラメータ、すなわち、
1.把持部タイプ(空気圧式、磁石式など)、
2.把持部サイズ、及び
3.把持部の数が含まれている。
【0015】
本発明の他の実施形態では、さらなる仕様を作成することができる。
【0016】
把持具がまだローカルに利用できない場合にのみ作成されることが好ましい設計データセットには、部品リストを含めることができる。設計データセットには、把持部ホルダを作製するための設計データを含めることが好ましく、この把持部ホルダ上に、様々に異なり、かつ少なくとも必要な把持部を取り付けることができる。
【0017】
例えば、レーザ加工機のローカルウエアハウス又は収納モジュールにおいて利用可能な全ての把持具が、可用性ファイルにおいて表される。把持具データセットが、今、それぞれの運搬タスク又は把持タスクのために、ある個数の把持具A、B、及びC(完全に組み立てられた構成要素A1、A2、B1、B3、B5、及びCを有する)が必要であると指定している場合、可用性ファイルへの単純なアクセス又は単純な読み取り機能を使用して、全ての把持具がローカルに使用可能かどうか、及び把持部が装填され、操作されることができるかどうかを確認することができる。この場合、設計データセットをさらに計算する必要はなく、計算負荷が節約される。そうでなければ、ローカルに利用可能な把持具を用いて把持タスクを実行することができず、設計データセットを計算する必要がある。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、設計アルゴリズムは、保存された部品及び把持具データを有するデータベースにアクセスすることができる。データベースには、例えば、把持具及びその構成要素の割り当てを保存することができ、それらはそれぞれ、把持タスクに必要となる。
【0019】
設計アルゴリズムは、2つの部分で設計することができる。設計アルゴリズムは、把持部のタイプ、サイズ、及び最低限必要な数を決定する把持部決定機能と、各把持部の位置を決定する位置計算機能と、を備えている。これらの2つの機能は、異なる時間フェーズにおいて、好ましくは連続して実行することができる。把持部決定機能は、位置計算機能の前に実行され、部品パラメータを入力変数としてインポートすることが好ましい。位置計算機能は、把持部決定機能の結果をインポートすることができる。位置計算機能はまた、部品を移動するための加速度値若しくは部品の運搬タスクを特徴付ける他の移動パラメータをインポートすることができ、かつ/又は部品の物理モデルからデータをインポートすることができ、例えば、部品パラメータに基づいて部品の重心を決定することができる。
【0020】
基本的に、設計アルゴリズムを使用して、形状、材料、材料の厚さ、及び/又はサイクルタイムに応じて、把持部(例えば、吸盤)の最適なサイズを計算し、きれいな取り外しを保証することができるように、最低限必要な把持部の数もまた計算する。加速度値の関数としてのこの情報(どの吸盤か及びその吸盤の数)は、把持部ヘッドの最適な位置を計算するための入力として使用される(位置計算機能)。例えば、必要な吸盤が1つだけの場合は、部品が正確に持ち上げられることを保証するために、把持部ヘッドの位置を重力軸にできるだけ近づけて配置する(物理モデルを用いて重心を計算する)。2つ以上の吸盤が必要な場合は、それらを互いにできるだけ離して配置する。
【0021】
位置計算機能を実行するために、把持具の各構成要素の位置仕様を設定することができる。位置計算機能は、ブルートフォースアルゴリズム、ランダム化アルゴリズム、及び/又は混合形式を実行することができる。これらのアプローチは、図面の詳細な説明においてより詳細に説明される。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態では、把持具を、ピックアンドプレースアプリケーションの一部であるロボットによって操作することができる。
【0023】
本発明の別の好ましい実施形態では、設計データセットは、設計された把持具の部品リストを(例えば、STEPファイルとして)含むことができる。設計データセットには、把持具の構成要素(吸着盤など)の位置仕様を含めることもできる。
【0024】
さらなる発展例では、この位置仕様は、設定可能とすることができる。例えば、設定フェーズでは、吸着盤が基本的に部品の重心に係合するように、位置仕様を設定することができる。これには、ユーザが特定の経験値を計算に取り入れることができるという利点がある(例えば、「先端に把持部Aを常に有していた構成要素Xは、確実に把持することができなかったので、把持部A’を使用する方がよい」)。
【0025】
本発明のさらに好都合な実施形態では、設計アルゴリズムは、切断機(例えば、レーザ切断機)の電子切断計画及び/又は曲げ加工機の曲げ加工計画を、累積的に若しくは部品パラメータの代替としてインポートすることができる。例えば、把持に関する形状及びサイズ、並びに他のパラメータは、切断計画から計算することができる。切断計画のみをインポートして、その計画から部品パラメータを計算することもできる。
【0026】
本発明のさらに好都合な実施形態では、設計アルゴリズムがペンディング中の把持タスクの結果を計算できない場合、又は把持対象部品用に把持具を設計することができない場合、エラーメッセージ(又はレポート)を生成及び出力することができる。
【0027】
本発明のさらに好都合な実施形態では、自動操作システム及び/又はレーザシステム及び/又は注文アプリケーションの、把持具及びそれらの構成要素のための収納部へのインターフェースを形成することができる。それぞれの収納部に指示するための適切な指示が提供される。例えば、指示信号に応答して、設計データセットに従って設計された把持具について自動注文プロセスをトリガーすることができる。同様に、設計部によって提供される組み立て指示に基づいて、収納部に対して指示し、位置計算機能によって計算された把持部の位置を考慮して必要な構成要素を選択し、キャリア又は把持具ホルダにそれを装填することができる。
【0028】
さらなる態様では、本発明は、加工システム用の把持具を設計するための設計データセットを計算する設計部に関し、加工システムは、
- 加工機の上で、加工機において、又は加工機によってアクセスされることになる、少なくとも1つの部品の部品パラメータをインポートするためのインポートインターフェースと、
- インポートされた部品パラメータに応答して、インポートされた部品パラメータを使用して部品固有把持具を設計し、把持具データセットを結果として出力する設計アルゴリズムを実行することを目的とした処理部と、を有する。
【0029】
さらなる態様では、本発明は、加工機に関し、例えば、上記のような設計部を備えた切断機又は曲げ加工機に関する。
【0030】
加工機は、金属加工機、特にレーザ切断機や曲げ加工機などのレーザシステムであることが好ましい。加工機によって加工された片(ここでは部品と呼ぶ)は運搬する必要がある。これを行うためには、部品のサイズ、形状、重量、材料、及び/又はその他のパラメータに応じて、それらの部品を他と区別して把持する必要がある。
【0031】
レーザ切断システムは、様々に異なる板金片に対して、別々の又は対応する切断計画を順次実行することができる。切断の結果、切断された部品が得られ、それらは、常に運搬され、特に廃棄される必要がある。本明細書で提案される設計アルゴリズムを使用すれば、把持具を、複数の切断計画に適するような方法、ひいては切断された部品の複数のシーケンスに適するような方法で、設計及び考案することが好都合に可能である。例えば、第1の切断計画を使用して第1のシートを切断し、次に第2の切断計画を使用して第2のシートを切断する(よって、別の切断された部品を伴う)場合、把持具を、切断機の複数の切断計画のために都合良く設計することができ、これらの切断計画は、切断機上で次々に実行される。これは、把持具への装填のためのセットアップ時間を回避することができ、全体的なプロセス時間を短縮できることを意味する。
【0032】
部品は、加工機によって加工された又はすでに加工済みの形態である部品又は構成要素であり、例えば、レーザ切断機でワークピース又はスクラップスケルトンから切り出され、スクラップスケルトンから取り外す必要があるカットアウト部品である。部品は、実質的に二次元形状(切断された板金部品)又は三次元形状(曲げられた部品)を有することができる。部品の形状は対称又は非対称にすることができる。小さくて平らな片又は部品を、大きくて厚い金属部品とは異なる把持具で把持可能であることは明らかであり、大きくて厚い金属部品は、把持タスクのために複数の把持具を必要とする場合もある。本発明の好ましい実施形態では、部品は金属で作製され、切断計画によって定義される。部品は、様々に異なる形状、サイズ、及び/又は重量を有することができる。部品の材料及び/又は密度が異なることもあり得る。
【0033】
把持具を使用して、1つ又は複数の部品を掴み、その部品を運搬して、例えば、シャトルテーブル若しくは切断テーブルからの部品を選別する、又はシャトルテーブルからスクラップスケルトンを運搬する、その他の運搬を行う、分離、取り外し、追加、積み重ね、曲げを行う。把持タスクは、例えば、ピックアンドプレースアプリケーションの直交座標系の状況下ではロボットを使用して実行することができる。1つの把持具が、例えば空気圧式又は磁石式の吸着盤を使用して、厳密に1つの部品を把持するように設計することができる。しかし、1つの把持具が、複数の部品を同時に把持するように設計することもでき、例えば、1つの把持具を使用して隣接する部品同士を外すこともできる。複雑な部品の場合、部品を運搬するために、1つの部品に対して複数の把持具を提供する必要がある場合もある。これは、例えば、部品が非常に重い及び/又は大きい場合に、及び/又は把持又は運搬タスクに、部品が完全に水平な状態でのみ移動することができるなどの特別な要件又は前提条件がある場合に、重要になり得る。
【0034】
把持具はモジュール構造を有することができる。把持具は、少なくとも1つの空気圧式、機械式、磁石式及び/又は接着式の把持構成要素を備えることができる。把持具は、例えばロボットアームの形式のアクチュエータ/駆動要素と(機械的及び電子的に)接続するための接続要素を備えることができる。接続要素(例えば、ブラケット)上に、ベースプレート又はホルダを受け入れるのに役立つことができるさらなる機械的構成要素を配置することができる。少なくとも1つの把持構成要素が、(好ましくは脱着可能に)ベースプレートに取り付けられる。本発明の実施形態及び構成に応じて、複数の異なる又は同一の把持構成要素をベースプレートに取り付けることもできる。把持タスク及び部品に応じて、把持構成要素を計算し、計算された把持構成要素を把持具に装填することができる。
【0035】
「部品パラメータ」という用語は、サイズ、形状、重量、材料など、物理的、機械的、及び/又は他の技術的特性に関して把持対象部品を特徴付ける、ある個数のパラメータに関する。本発明の好ましいさらなる発展例において、少なくとも1つの部品パラメータは、他の部品パラメータ及び/又は他の特性値から計算することができる。
【0036】
設計アルゴリズムは、インポートされた部品パラメータから部品固有把持具を設計し、把持具データセットを結果として出力する計算仕様である。
【0037】
以下の図面の詳細な説明では、特徴及びそのさらなる利点を備えた非限定的な例示的実施形態を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】シャトルテーブルを備えたレーザ切断機の図であり、切断された部品が、このシャトルテーブルの上に配置されており、ロボット型把持装置によって分類される必要がある、レーザ切断機の図である。
【
図2】設計部KOとして設計され、設計データセットを計算するための部品パラメータに基づいて決定されるコンピュータ部の概略図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態による方法のフローチャートである。
【
図4a】本発明の好ましい実施形態による、2要素からなる把持具を備えた把持装置の側面図である。
【
図4b】本発明の好ましい実施形態による、1要素からなる把持具を備えた把持装置の側面図である。
【
図5】把持部の配置を計算するためのカットアウトを有する板金部品の例である。
【
図6】把持部の配置を計算するためのカットアウトを有する板金部品のさらなる例である。
【
図7】把持部の配置を計算するためのカットアウトを有する板金部品のさらなる例である。
【
図8】本発明の好ましい実施形態による、Uレールの形式の把持部ホルダの代替形態である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、レーザ加工機、特にレーザ切断システムLのシャトルテーブルWTの例示的な図を示している。このシャトルテーブルWTの上に切断された部品Pが配置される。切断された部品Pは、ロボット型把持装置によってそこから把持及び運搬される必要があり、具体的には、部品Pは、スクラップスケルトンから取り外され、例えばパレット上に積み重ねられる必要がある。切断計画に応じて、様々に異なるタイプ(形状、サイズ)の部品Pを運搬することができ、したがって把持することもできる。
【0040】
把持タスクを遂行できるようにするために、部品Pのサイズ、形状、及びその他のパラメータに応じて、様々に異なる把持具Wが必要になる。例えば、大きくて重い部品Pは、小さくて軽い部品と比較して、より強力な把持部構成要素(例えば、機械式、磁石式、又は空気圧式吸着盤)を相応して備えた、より強力な把持具Wを必要とする。本発明によれば、把持具Wの設計は、部品固有であるのが好都合である。したがって、第1の個数の部品P1が、第1の把持具W1によって把持される一方、第2の個数の部品P2が、第2の把持具W2によって把持される。個数は、それぞれの部品パラメータPによって特徴付けられる。部品パラメータPは、レーザ加工機の切断計画から部分的に又は完全に計算することができる。
【0041】
把持具Wは、いわゆる把持部ホルダ又は把持部プレートなどの接続要素を介してロボットアームに取り付けることができる。3つの空間軸内で移動可能な把持具Wを備えたロボットアームは、把持装置を形成する。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、標準的な部品(例えば、吸着盤80)が、利用できない、又はペンディング中の把持タスクに使用できない場合、把持部プレート30(
図4a)又は把持部ホルダ(レール)40(
図4b)、10(
図8)が、自動的に設計される。把持部プレート30、40は、必要な部品Kを(位置計算機能PBFによって)計算された位置に取り付けることができるように、設計されている。
【0043】
基本的に、レーザ切断システムのエンドユーザは、広範かつ予測不能なバリエーションの板金部品を製造している。切断された部品Pは、(例えば、真空式及び/又は磁気式)把持具によって選別装置から取り出され、パレット上に置かれる。この目的のために、既知のシステムでは、限られた数の調製された把持装置を提供することが可能である。従来技術において知られているこのシステムの問題点は、これらの把持装置が可能性のある全ての部品にフィットするわけではないことである(例えば、吸盤が穴を覆うように配置されることがあり得るため、又は把持部が部品の形状をカバーしないため)。もう1つの問題点は、必要な設計知識を、新しい適切な把持装置の設計のために利用できないことが多いことである。ここで本発明が役立ち、本発明は、適切な把持部を自動的に設計し、最後にそれを部品リストと共に3Dファイルとして出力する方法(使用法又はアプリケーションとして)及び設計部KOを提供する。板金部品の電子記述(例えば、STEPファイル)がアプリケーションにロードされる。アプリケーションは、既存の把持部が利用可能かどうか、又は現場に提供されているかどうかを確認する。既存の把持部がフィットしない場合は、適切な把持具Gが自動的に設計される。本方法は、把持部を自動的に設計するために、特にモジュール原理に基づいた構成要素のデータベースを利用する。例えば、様々な吸着盤、磁石、ホース、ベースプレートなどが格納されている。設計アルゴリズムでは、片の寸法、重量、重心、カットアウト、及び/又は曲げの問題などの要因が、計算され、考慮される。把持部が設計された後、完成したアセンブリは、部品リストを含む電子記述(例えば、STEPファイル)として出力される。
【0044】
1つの切断計画spの複数の部品P又は複数の切断計画さえも、把持具の設計において考慮されるのが好都合である。したがって、本方法は、可能な場合に、時々、1つの把持具だけを計算して、ある個数の様々に異なる切断計画に対して提供するだけでよいという点で、非常に効率的に実行されることができる。したがって、把持ロボットを変更する必要はなく、別々の部品P及び/又は別々の切断計画に対して同じ把持具で把持タスクを実行することもできる。
【0045】
この目的のために、本発明は、コンピュータ部CPU(例えば、コンピュータ、コンピュータネットワーク、プロセッサ、マイクロプロセッサ、又は埋め込みデバイス)上で設計アルゴリズムKAを実行する。
【0046】
図2は、本方法を実行するための電子ユニットとして意図される設計部KOをブロック図の形式で示している。設計部KOは、加工機Lによって加工される少なくとも1つの把持対象の部品Pの部品パラメータppをインポートするためのインポートインターフェースESと、インポートされた部品パラメータppに応じて、インポートされた部品パラメータppから部品固有把持具Wを設計することができる設計アルゴリズムKAを実行し、把持具データセットgdsを(具体的には、ユーザインターフェースUI上で)結果として提供するか、さらなる計算工程を実行する処理部(CPU)と、を備える。必要な把持タスクのための把持具を設計することができない場合、ユーザインターフェースUI上にエラーメッセージを出力することができる。
図2に概略的に示されるように、計算された把持具データセットgdsは、設計部KOでさらに処理されることができる。この目的のために、可用性データ又は可用性データセットvdsをデータベースDBからインポートすることもでき、これらは、レーザL上での又はレーザLでの又はレーザLに対する把持具Wとその構成要素Kのローカル可用性を表す。これらの2つのデータセット、すなわち、把持具データセットgds及び可用性データセットvdsは、さらなるアルゴリズムを使用して計算され、設計データセットkdsの形式の結果を生成する。設計データセットkdsは、把持具Wを設計するのに必要な仕様を指定する。この目的のために、設計データセットkdsには、設計指示及び選択された必要な把持構成要素K、並びにその必要な把持構成要素Kの配置情報が含まれている。これには、把持具Wの必要な仕様が利用できない場合には、設計データセットkdsを計算するだけでよいという利点がある。したがって、計算リソースを節約することができる。
【0047】
図2に模式的に示すように、切断計画spをインポートすることもできる。部品パラメータppは、さらなるアルゴリズムを使用して切断計画spから計算することができる。部品パラメータpp及び切断計画spの両方をインポートして、例えば、切断計画spからのデータを使用して、インポートされた部品パラメータppの正確性を検証することができる。あるいは、切断計画sp又は部品パラメータppのみをインポートすることができる。インポートされたデータ(部品パラメータpp及び/又は切断計画sp)は、STEPファイルとしてインポートすることもできる。
【0048】
データベースDBは、
図2に示す例のように、適切なデータ接続(LAN、WLAN)を介して外部の別個のエンティティとして設計部KOに接続されることができ、また、例えば、一元的に提供されることができる。しかし、データベースDBは、設計部KOの内部でローカルに設計することもできる。同じことがユーザインターフェースUIにも当てはまる。ユーザインターフェースUIは、設計部KO上、又は別の電子エンティティ(例えば、対応するデータ接続を有するモバイルユニット(スマートフォンなど))上で、ローカルに形成することができる。
【0049】
図2に示すように、設計部KOはモデルMとやり取りすることができる。モデルMには、重心、重量、長さ、幅、及び/又は特定の把持タスクのための特定の把持具を指定する他の部品固有パラメータなど、それぞれの部品Pの機械的特性を特徴付ける電子データセットが含まれている。モデルMは、自己学習するように設計することができ、計算された把持具データセットgds及び/又はフィードバック変数としての設計データセットkdsを供給されることができる。さらに、自動設計の品質に関するユーザによる評価など、他のフィードバック変数を考慮に入れることができる。
【0050】
図3は、本発明の好ましい実施形態による本方法のシーケンスを示している。本方法の開始後、工程S1において、部品パラメータが、インポートインターフェースESを介してインポートされる。追加又は代替として、工程S2において、切断計画spをインポートすることができる。切断計画又は少なくとも切断計画の一部が、部品パラメータに含まれ、したがって、切断計画spのみが、場合によっては選択された部品パラメータppと共に、工程S1においてインポートされることも可能である。工程S3において、設計アルゴリズムKAが、インポートされたデータを用いて実行され、把持具データセットgdsが提供される。最も単純な場合では、把持具データセットgdsは、ロボットアーム用に在庫しているある個数の標準部品で構成することができる。そして、ロボットが、それらの標準部品を倉庫から選択して、それらを正確な位置に配置するだけでよく、この配置は、計算された位置に基づいて行われる。工程S4において、設計された把持具Wとその構成要素Kの局所的な可用性が確認される。これを、把持対象部品Pの把持具Wのそれぞれの把持タスクについて利用できる場合、設計データセットkdsを作成する必要はない。工程S5では、例えば、ロボット又は別のアクチュエータが、把持具W若しくはその部品又は構成要素Kを倉庫から選択して取り出すコマンドを生成するだけでよい。そうではなく、必要な構成要素Kの在庫がなく、把持具Wを専用に設計する必要がある場合は、工程S6において、設計データセットkdsを計算して、ユーザインターフェースUI上に出力する、及び/又はファイル(具体的には、STEPファイル)として他の電子エンティティに送ることができる。それぞれの部品Pのための把持具を把持タスク用に設計できない可能性もある(例えば、重すぎる、大きすぎるなど)。この場合、エラーメッセージが、工程S7で(例えばUI上に)出力されるか、他のエンティティで利用できるようになる。
【0051】
図4a及び
図4bは、把持装置の構造を示している。これには、連結器50を介して把持装置に接続されたロボット型アクチュエータ(例えば、ロボットアームであり、図示しない)が含まれる。把持装置には、本明細書では吸着盤80として設計される把持具Wが含まれる。把持装置はまた、フランジ20、空気圧分配器100、空気圧接続部90、及びばねプランジャ70を含む。把持装置は、把持部プレート又は異なる形状の把持部ホルダ(例えば、U字形のレール)を含み、その上に(この例では2つの)吸着盤80が配置され、締結されている。
図4bは、U字形の取り付けブラケット40を有する把持装置を示しており、この場合、ブラケット40は、把持部ホルダとして設計され、吸着盤を受け入れて取り付けるのに役立つ。取り付けブラケット40は、ワッシャ110及びリング120を介して連結器50に接続することができる。この例では、把持装置は、ストッパ10、ねじ160、及び取り付けブラケット40の下部に部品固有吸着盤を締結するためのさらなるワッシャ130及びナット140を含む。さらなる接続モジュールを使用して、モジュール式把持構成要素K(例えば、吸着盤80)を保持することができる。把持構成要素Kには、基本的に、異なるタイプの吸着盤80(空気圧式、磁石式、接着式など)及び/又は他の(例えば、機械式)把持構成要素Kを含むことができる。構成要素Kは、把持対象部品Pに関するそれぞれの把持タスクに対して専用に選択される。
【0052】
まとめると、入力設計(例えば、部品又は板金部品のSTEP)を使用して、既存の把持構成要素(例えば、把持ヘッド)うちのどれがその部品にフィットするかを決定する方法(及び対応する装置)が提供される。既存の構成要素がフィットしない場合、ソフトウェアは、提供された片のデータベースを使用して、適切な把持部ヘッドを自動的に設計する。これは、本方法が、完成したアセンブリを結果として(例えば、部品リストを含むSTEPファイルとして)出力することを意味する。設計アルゴリズムを使用して計算する場合、片の寸法、重量、及び/又は曲げ加工固有のパラメータ及び問題などの要因が考慮される。この手順では、特定の場合に自動設計が不可能な理由も伝えられる。
【0053】
設計アルゴリズムKAは、少なくとも2つの機能で構成される。すなわち、
1.把持部決定機能GBF、及び
2.位置計算機能PBFである。
【0054】
位置計算機能PBFは、ブルートフォースアルゴリズムを使用して実装することができる。ブルートフォースアルゴリズムは、
図5の概略図に関して説明される次の態様に基づく。
【0055】
1.把持部ヘッドの板金部品上での最適な位置を計算するために、真空把持部が取る可能性のある位置を連続的に確認する。
図5に真空把持部の位置の検索のシミュレーションを示す。
【0056】
2.可能性のある位置を検索するときの円同士の間の距離は、パラメータ化することができる。例えば、
図5では、左上の2つの円は、右側に続く円よりも間隔が広くなっている。円同士の間の距離が大きいほど、検索は速くなるが、良好な解答が見つかる可能性は低くなる。
【0057】
3.解答が全く見つからない又は良好な解答が見つからない場合(例えば、
図5では、一番上の円の列が破線で表されている)、より多くの可能性のある位置を見つけるために、このプロセスをより短い距離で繰り返すことができる。
【0058】
4.可能性のある位置が取得された後(
図5の点線の円を参照、この例では3つの位置)、見つかった真空把持部の位置と一致するヘッドベースを検索する。
【0059】
5.既存の把持部ヘッドがない場合は、システムによって最適な解答が選択され、新しい把持部ヘッドが生成される。
【0060】
位置計算機能を実装するためのさらなる第2の選択肢は、ランダム化されたアルゴリズムから構成され、これは、
図6を参照して以下に説明される。
【0061】
この2番目の案(
図6を参照)では、吸盤の位置はランダム原理(あらゆる円)に従って生成される。モンテカルロシミュレーションと同様に、多数のランダム値が生成され、それらを比較して可能な候補であるかどうかを確認する。
【0062】
1.可能性のある吸着盤位置のために多数のランダム値を生成する。
図6では、破線の細い円は要件を満たしていない位置を表している。太字の一点鎖線の円は、要件を満たしている位置(この例では3つの位置)である。
【0063】
2.可能性のある位置が取得された後(
図6の太字の一点鎖線の円を参照)、見つかった真空位置のうちの1つに一致する把持部ヘッドが求められる。
【0064】
3.可能性のある解答がない場合は、最適な解答が選択され、これが新しい把持部ヘッドとなる。
【0065】
位置計算機能を実装するためのさらなる第3の選択肢は、混合アルゴリズムから構成され、これは、
図7を参照して以下に説明される。
【0066】
上述のアルゴリズムの主な欠点の1つは、(ほぼ)最適な解答を得るために、システムが非常に多数の、可能性のある位置を決定する必要があることである。したがって、このシステムには一定の割合の不正確さがある。3番目のバージョンは、上記の2つのバージョンの両方の利点を取ろうとする、それらの2つのバージョンの混合である。
【0067】
このプロセスは、2番目に提案したバージョン(位置の計算-ランダム原理)から開始する。最初に、(上記で説明したように)真空把持部の可能性のある位置をランダムに検索する。ブルートフォースアルゴリズムが、板金部品を持ち上げるための最も良好な可能性のある位置を見つけるために、見つかった、可能性のある位置から、見つかったポイントの近傍にある、可能性のある位置を計算する。これにより、より良好な位置を見つける可能性が高まるだけでなく、プロセスが大幅に高速化される。
【0068】
加えて、人工知能、深層学習などの方法の適用における位置計算機能のために他の実装オプションもある。さらに、物理モデルを使用して、部品のたわみや標準式を計算し、取り外し時にたわみが発生しない又はほとんど発生しないように、吸着盤を配置することができる。
【0069】
図8は、交換可能なフレームの形態の把持部ホルダのさらなる例を示しており、この把持部ホルダは、ここでは参照番号10で識別される。
図4a及び
図4bに関して上記で説明したようにさらなる接続要素を受け入れるために、ボア50を交換可能なフレーム内に形成することができる。
【0070】
最後に、本発明の説明及び例示的な実施形態は、本発明の特定の物理的実現に関して限定的であると理解されるべきではないことに留意されたい。本発明の個々の実施形態に関して説明及び図示される全ての特徴は、それらの好都合な効果を同時に実現するために、本発明による主題において異なる組み合わせで提供することができる。
【0071】
本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲によって付与されるものであり、本明細書に示されている又は図に示されている特徴によって限定されない。
【0072】
本発明がレーザ切断システムだけでなく、部品又は構成要素を把持することを必要とする生産における他の機械及びシステムにも使用することができることは、当業者には特に明らかである。さらに、装置又は設計部の構成要素は、複数の物理的な製品に分散されるように製造することができる。
【符号の説明】
【0073】
L 加工機(特に、レーザ切断機)
P 部品又は構成要素
WT シャトルテーブル
W 把持具
K 把持具の構成要素
KO 設計部
CPU コンピュータ部
KA 設計アルゴリズム
ES インポートインターフェース
pp 部品パラメータ
gds 把持具データセット
kds 設計データセット
vds 可用性データセット
fn エラーメッセージ
UI ユーザインターフェース
S1 部品パラメータの提供
S2 切断計画からのインポート
S3 把持具データを計算するための設計アルゴリズムの実行
S4 全ての構成要素K/把持具Wのローカルな可用性の確認
S5 組み立て指示の生成
S6 設計データセットの生成
S7 エラーメッセージの生成