(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164935
(43)【公開日】2023-11-14
(54)【発明の名称】薬物送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
A61M5/32 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143296
(22)【出願日】2023-09-04
(62)【分割の表示】P 2021027858の分割
【原出願日】2014-07-25
(31)【優先権主張番号】1313782.3
(32)【優先日】2013-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】511185690
【氏名又は名称】オーバル メディカル テクノロジーズ リミテッド
【住所又は居所原語表記】PO Box 1386 Cambridge Cambridgeshire CB1 0JY United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリオ レリオ セレーダ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ジョージ ランブル
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ローソン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル チャールズ サヴィル
(72)【発明者】
【氏名】スザンナ エリザベス マクロバート ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ジェームズ ヤング
(72)【発明者】
【氏名】マッシュー エジャトン ヤング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、患者に薬物を投与する装置に関し、特に、自己注射器に関する。
【解決手段】針アセンブリであって、皮下注射針212と、前記針212の第一端が固定された針ハブ217と、前記針ハブ217に連結され、前記針の第二端を覆う、少なくとも前記針の一部の周囲に滅菌バリアを設ける剛体を有する針シールドと、前記剛体内に設けられ、前記針の第二端の周囲に液密封止を設ける従属要素とを備え、前記剛体は、前記針ハブ217との締まりばめを設け、これにより前記針ハブ217の周囲に封止を設けるよう構成される。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針アセンブリであって、
皮下注射針と、
前記針の第一端が固定された針ハブと、
前記針ハブに連結され、前記針の第二端を覆う、少なくとも前記針の一部の周囲に滅菌バリアを設ける剛体を有する針シールドと、
前記剛体内に設けられ、前記針の第二端の周囲に液密封止を設ける従属要素とを備え、
前記剛体は、前記針ハブとの締まりばめを設け、これにより前記針ハブの周囲に封止を設けるよう構成される、針アセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の針アセンブリであって、
前記剛体は、高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの成型プラスチック材料で形成される、針アセンブリ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の針アセンブリであって、
前記剛体の内表面または前記針ハブの外表面に、少なくとも1つの円周リブを備える、針アセンブリ。
【請求項4】
請求項3に記載の針アセンブリであって、
前記剛体の内表面に、少なくとも2つの円周リブを備える、針アセンブリ。
【請求項5】
請求項3または4に記載の針アセンブリであって、
前記剛体が前記針ハブに嵌る前の各リブの接点における曲率半径が0.6mm未満である、針アセンブリ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の針アセンブリであって、
前記針ハブの表面仕上げは、山部と谷部の間の最大距離が2μm以下である、針アセンブリ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の針アセンブリであって、
前記針ハブは、前記剛体が連結される円形円筒形状の外表面を有する、針アセンブリ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の針アセンブリであって、
前記針ハブは、環状オレフィン重合体などの成型プラスチック材料で形成される、針アセンブリ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の針アセンブリであって、
前記剛体は、少なくとも1つの突出部または凹部を有する外表面を含む、針アセンブリ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の針アセンブリであって、
前記剛体の少なくとも一部が透明である、針アセンブリ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の針アセンブリであって、
前記従属要素は、部分的にのみ前記剛体および針ハブに囲まれている、針アセンブリ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の針アセンブリであって、
前記従属要素は、前記剛体の少なくとも1つの突出部によって前記剛体に保持される、針アセンブリ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の針アセンブリであって、
さらに、前記従属要素または前記剛体に設けられた、前記従属要素の前記剛体への挿入中に前記剛体から空気を逃がすことができる、少なくとも1つの排出口を備える、針アセンブリ。
【請求項14】
自己注射器またはシリンジであって、
請求項1から13のいずれか1項にかかる針アセンブリを備える、自己注射器またはシリンジ。
【請求項15】
針アセンブリの製造方法であって、
針の第一端を針ハブに固定するステップと、
前記針の第二端を覆う針シールドを前記針ハブに連結するステップとを含み、
前記針シールドは、剛体と従属要素を含み、前記剛体は、前記針ハブとの締まりばめを設けて、これにより前記針ハブの周囲に封止を設けるよう構成され、前記剛体は、少なくとも前記針の一部の周囲に滅菌バリアを設け、前記連結ステップは、前記従属要素が前記針の第二端の周囲に液密封止を設けるよう前記針の第二端を前記従属要素へ挿入することを含む、針アセンブリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に薬物を投与する装置に関し、特に、自己注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
自己注射器は、投与前の医療用、治療用、診断用、医薬品用、または化粧品用の化合物(薬物)を収容する薬物送達装置であり、この化合物を中空針を経由して患者の皮膚から投与するために用いられる。自己注射器は、患者本人もしくは別のユーザによって使用されてもよく、動物に薬物を投与する際に用いられてもよい。
【0003】
一般に、自己注射器が用いられるのは、患者に対する針の挿入および薬物の針からの放出プロセスの一方または両方を自動化することにより、シリンジにおいて必要とされるような訓練や手間が低減されるからである。また、患者に針が見えないようにすることにより挿入に対する恐怖を低減することができ、患者を針刺し損傷から保護することもできる。
【0004】
通常、自己注射器は、薬物を収容する筐体と、自動メカニズムによって筐体内を移動して薬物を放出するよう駆動されるプランジャーとを有している。この自動メカニズムは、針を筐体に対して移動させて対象に挿入してもよい。このメカニズムの原動力は、1つ以上のバネ、または圧縮ガスなどそのほかの動力源によって与えられてもよい。
【0005】
自己注射器は、エピネフリンなどのいわゆるクライシスドラッグの送達に用いられ、この場合、患者は、アナフィラキシーショックによる重度のストレス下において、薬物を自己注射しなければならないことがある。また、関節リウマチなどの長期疾患用の薬物の送達にも用いられ、この場合、患者の器用さに制限があることがある。
【0006】
いずれにしても、患者が自己注射器を正しく操作して薬物投与を受けることができる可能性を最大限に高めるためには、自己注射器のユーザインターフェースが簡単で使いやすいことは有益である。また、薬物の送達が無事に完了したことを患者に対して音で示すことができることが望ましい。
【0007】
また、自己注射器は、小型で、確実かつ頑丈であり、製造が簡単であり、輸送中および意図された使用の前は保護されており、高粘度の薬物に適していることが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明は添付の請求項に定義されるものであり、これについて以下に説明する。有利な特徴については、従属請求項に定められる。
【0009】
第1の様態において、薬物送達装置であって、
薬物を収容する薬物容器と、
上記薬物容器内に設けられたプランジャーであって、上記薬物容器内における運動が上記薬物を上記薬物容器から送達するよう動作するプランジャーと、
圧縮状態から拡張することによりエネルギーを解放するよう構成された蓄積エネルギー源と、上記蓄積エネルギー源に連結された第1の駆動要素と、上記第1の駆動要素に連結され、上記第1の駆動要素と上記プランジャーとの間に配置された第2の駆動要素とを含む駆動メカニズムとを備え、
上記駆動メカニズムの第1の位置において、上記第1の駆動要素は、上記第2の駆動要素に対して軸方向への移動が抑制されているが、上記駆動メカニズムの第2の位置において、上記第1の駆動要素は、上記蓄積エネルギー源により上記第1の駆動要素の第1の表面が上記第2の駆動要素の第1の表面に対して駆動されて上記薬物容器からの薬物送達の完了を示す音による信号を生成するように、上記第2の駆動要素に対して上記軸方向へ自由に移動できる、薬物送達装置が提供される。
【0010】
薬物送達装置において薬物送達完了の音による指示を出すために用いられる従来のメカニズムには、この音による指示が十分に大きくないという問題があった。通常、この音は薬物を装置から押し出す駆動要素の一部が、装置筐体の静止部分を通過する際にこの静止部分にぶつかることによる。本発明の解決方法では、駆動メカニズムが装置内の所定の位置に到達するときに、複数のパーツを有する駆動メカニズムの2つのパーツを蓄積エネルギー源を用いて互いに向かって駆動している。これにより、これらのパーツを硬質なものとし互いに向って高速で駆動することができるため、はるかに大きい音が生じる。
【0011】
好都合には、上記蓄積エネルギー源の伸長は、上記駆動メカニズムが上記第1の位置から上記第2の位置へと移動させる。
【0012】
第1の駆動要素が第1の位置において第2の駆動要素に対して軸方向に移動することを抑制するために、駆動メカニズム内に、装置の外部要素と相互作用するさらなる要素を用いることができる。代替的に、駆動メカニズムが内部を移動する筐体の外部要素を、第1または第2の駆動要素と相互作用して第1および第2の駆動要素の間の相対的な軸方向の運動を抑制するために用いてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記駆動メカニズムは第3の駆動要素を含んで、上記第3の駆動要素は、上記駆動メカニズムが上記第1の位置にあるとき、上記第1の駆動要素と上記第2の駆動要素との間の相対運動を抑制してもよく、上記第3の駆動要素は、上記駆動メカニズムが上記第2の位置へ向かって移動すると、上記薬物容器または上記薬物送達装置の筐体の一部に係合するよう構成されている。
【0014】
上記第3の駆動要素は、上記駆動メカニズムの上記第1の位置と上記第2の位置との間の解放位置で、上記薬物容器または上記薬物送達装置の上記筐体の一部に係合するよう構成されてもよく、上記駆動メカニズムが上記解放位置から上記第2の位置へ向かって移動すると、上記第3の駆動要素は、上記薬物容器または筐体に対して静止状態で保持されて、上記第1または第2の駆動部材を上記第3の駆動部材から解放してもよい。上記第3の駆動要素は、上記第1および第2の駆動要素の間に配置されてもよい。
【0015】
第1の駆動要素の第1の表面が第2の駆動要素の第1の表面に向って確実に正しい時間で、すなわち薬物が駆動メカニズムによって完全に(またはほぼ完全に)薬物容器から放出されるときに、駆動されることは重要である。上記装置の構成部品の寸法は、どのような製造プロセスを取るにしても、装置によって多少のばらつきが不可避である。第3の要素を薬物容器に直接的に係合する構成の利点は、第1の駆動要素が第2の駆動要素の第1の表面に向って駆動されるタイミングの決定にかかわる独立した要素の数を比較的少数にすることができることにあり、そのため各要素に非常に小さな誤差が求められることが減り、音による指示のタイミングをよりぴったりと薬物送達終了に合わせることができる。
【0016】
駆動メカニズムの第1の位置では、第1の駆動要素および第2の駆動要素は、相対的な回転をすることが抑制される。駆動メカニズムの第2の位置においては、第1の駆動要素および第2の駆動要素は、互いに対して自由に回転することができ、この相対的な回転の後またはその最中に、互いに対して軸方向に移動することができる。
【0017】
上記第1の駆動要素は第1のベアリング面を含んでもよく、上記第2の駆動要素は、上記駆動メカニズムの上記第1の位置の上記第1のベアリング面と係合する第2のベアリング面を含んでもよく、上記第1の駆動要素の上記第2の駆動要素に対する回転は、上記第1のベアリング面を上記第2のベアリング面から離すように移動して、上記第1の駆動要素の上記第1の表面が上記第2の駆動要素の上記第1の表面に衝突可能なようにし、上記駆動メカニズムの上記第1の位置において、上記第3の駆動要素は、上記第1の駆動要素と上記第2の駆動要素との相対的な回転を抑制し、上記第2の位置において、上記第3の駆動要素は、上記第3の駆動要素が上記第1の駆動要素と上記第2の駆動要素との相対的な回転を抑制しない位置まで、上記第1および第2の駆動要素に対して軸方向に移動する。
【0018】
上記第2の駆動要素は、上記第1の位置において上記第3の駆動要素と係合して上記第2の駆動要素と上記第3の駆動要素との相対的な回転を防止する、第1の軸方向に延びる突出部またはスロットを含んでもよく、上記第1の駆動要素は、上記第1の位置において上記第3の駆動要素と係合して上記第3の駆動要素と上記第1の駆動要素との相対的な回転を防止する、軸方向に延びるスロットまたは突出部を含んでもよい。
【0019】
上記第3の駆動要素は、上記第2の駆動要素の少なくとも一部の周囲に延びてもよく、上記第1の駆動要素は、上記第3の駆動要素の少なくとも一部の周囲に延びてもよい。第1および第3の駆動要素は、概ね管状である。
【0020】
代替的に、あるいは追加的に、上記薬物送達装置は、さらに、上記薬物容器に連結または一体化された筐体要素であって、上記筐体要素は上記駆動メカニズムの上記第1の位置において上記第1の駆動要素が上記第2の駆動要素に対して移動することを抑制する筐体要素を備えてもよい。上記薬物送達装置は、さらに、外部筐体を備えてもよく、上記薬物容器は、上記装置の動作中、上記外部筐体内部を移動するよう構成され、上記筐体要素は、上記薬物容器とともに上記外部筐体内部を移動する。上記薬物送達装置は、皮下注射針を備えてもよく、筐体要素は、薬物容器を筐体で移動させて針を注射部位に挿入する針挿入メカニズムの一部であってもよい。
【0021】
上記薬物送達装置は、自己注射器であってもよい。
【0022】
第2の様態において、薬物送達装置であって、
筐体と、
薬物容器と、
上記薬物容器に連結されたパワーパックアセンブリであって、
圧縮状態から拡張することによりエネルギーを解放する蓄積エネルギー源と、
上記蓄積エネルギー源と係合し、上記蓄積エネルギー源と上記薬物容器との間に配置される挿入部材と、
第1の位置において上記蓄積エネルギー源および上記挿入部材と係合し、上記蓄積エネルギー源を第1の圧縮状態に保持する保持手段と、を含むパワーパックアセンブリであり、
上記保持手段および筐体が、上記パワーパックアセンブリと上記筐体とが係合すると、上記筐体により上記保持手段が第2の位置へ移動するよう構成され、上記第2の位置において、上記保持手段は上記蓄積エネルギー源または上記挿入部材から外れ、
上記薬物容器および筐体が、上記保持手段が上記第2の位置に移動されると、上記蓄積エネルギー源が上記薬物容器によって第2の圧縮状態に保持されるよう構成される、パワーパックアセンブリと、
上記自己注射器が使用されるときに、上記蓄積エネルギー源を上記第2の圧縮状態から解放するよう構成されるトリガーメカニズムとを備える、薬物送達装置を提供する。
【0023】
上記筐体は、上記保持手段の第2のカム面に係合するよう構成された第1のカム面を含んでもよい。上記保持手段および筐体は、上記パワーパックアセンブリが上記筐体へ係合すると、上記保持手段が上記筐体により上記第2の位置へ回転させられるよう構成されてもよい。
【0024】
蓄積エネルギー源は、例えば圧縮バネまたはガススプリングであってもよい。
【0025】
上記薬物送達装置は、さらに、上記薬物容器内でプランジャーを駆動するよう構成された駆動メカニズムであって、第2の蓄積エネルギー源と、上記第1の蓄積エネルギー源および上記第2の蓄積エネルギー源の解放シーケンスを制御するよう構成される解放メカニズムとを含む駆動メカニズムを備えて、上記保持手段は、上記解放メカニズムの一部を形成してもよい。
【0026】
上記駆動メカニズムは、上記筐体内で上記薬物容器を長手方向に駆動するよう構成されてもよく、上記保持手段は、長手方向に延び、上記駆動メカニズムの駆動要素を上記挿入部材に保持して、上記第2の蓄積エネルギー源の解放を防止する保持肢を有する。上記保持肢は、実質的に上記薬物容器の上記筐体内での移動の終点で、上記駆動要素を上記挿入部材から解放するよう構成されてもよい。上記保持手段および筐体は、上記保持手段が長手方向の軸を中心に上記筐体により上記第2の位置へ回転するよう構成されてもよい。上記保持手段は、上記筐体内に保持され、使用中は使用者の手が届かないよう構成することができる。本明細書において、軸方向、長手方向、および挿入方向は、同じ方向を意味する。
【0027】
上記装置の使用前は、上記第1の蓄積エネルギー源は、少なくとも部分的に上記第2の蓄積エネルギー源内に配置されてもよい。上記挿入要素は、上記第1の蓄積エネルギー源と係合するベアリング面を含む第1の部分と、上記第1の部分から延びる第2の部分とを含み、上記第2の部分は上記第2の蓄積エネルギー源が入る凹部を規定してもよい。
【0028】
挿入要素は、装置の製造および組み立てを簡便にするために、2つの要素から組み立てられてもよい。
【0029】
駆動部材は、本発明の第1の様態にかかる音による指示をあたえるメカニズムを含んでもよい。
【0030】
上記薬物容器は、上記筐体または上記筐体に連結された内部要素の1もしくは複数のラッチによって保持されて、上記蓄積エネルギー源を上記第2の圧縮状態に保持されてもよい。
【0031】
上記トリガーメカニズムは、注射部位に押し付けられると移動して上記駆動手段を上記第2の変形状態から解放するよう構成された可動スキンセンサー要素を含んでもよい。
【0032】
上記薬物送達装置は、自己注射器であってもよい。
【0033】
本発明の第3の様態において、本発明の第2の様態にかかる薬物送達装置の組み立て方法であって、
蓄積エネルギー源をパワーパック筐体を有するパワーパックアセンブリ内に配置または形成するステップと、
上記駆動部材および上記パワーパック筐体に第1の位置で連結された保持手段を用いて、上記蓄積エネルギー源を上記パワーパックアセンブリ内で第1の圧縮状態に保持するステップと、
パワーパックアセンブリを、上記自己注射器によって放出される薬物を収容する薬物容器アセンブリに連結するステップと、
上記パワーパックアセンブリおよび薬物容器アセンブリを外部筐体に連結するステップと、
上記蓄積エネルギー源を第2の圧縮状態へと解放するために、上記保持手段を第2の位置に移動するステップとを含み、
上記薬物容器アセンブリおよび外部筐体は、上記蓄積エネルギー源を上記第2の圧縮状態に保持し、上記第2の圧縮状態において、上記蓄積エネルギー源は、上記自己注射器が用いられる際の針挿入および/または薬物放出に十分なポテンシャルエネルギーを蓄積する、薬物送達装置の組み立て方法を提供する。
【0034】
上記保持手段を移動するステップは、上記外部筐体に連結するステップの結果として行われてもよい。
【0035】
上記保持手段を移動するステップは、上記保持手段の上記パワーパック筐体に対する回転を含んでもよい。
【0036】
第4の様態において、薬物送達装置であって、
装置筐体と、
上記筐体内に設けられた、薬物を収容する薬物容器であって、プランジャーが内部に配置され、上記薬物を放出する出口を有する薬物容器と、
上記薬物容器に固定または当接する挿入部材と、上記挿入部材および上記装置筐体の間に配置された第1の蓄積エネルギー源と、上記挿入部材および駆動部材の間に配置された第2の蓄積エネルギー源とを含むパワーパックアセンブリとを備え、
使用時において、上記駆動部材は、上記プランジャーに係合するよう構成され、初期位置では、上記第1の蓄積エネルギー源は少なくとも部分的に上記第2の蓄積エネルギー源内に配置される、薬物送達装置を提供する。
【0037】
上記挿入部材は、上記第1の蓄積エネルギー源によって駆動されて、上記薬物容器を上記筐体内で移動させてもよく、上記駆動部材は、上記第2の蓄積エネルギー源によって駆動されて、上記プランジャーを上記薬物容器内で移動させてもよい。
【0038】
上記第2の蓄積エネルギー源は、上記装置の動作前は上記挿入部材内に保持されてもよい。
【0039】
上記挿入部材は、上記第1の蓄積エネルギー源と係合する第1のベアリング面を含む第1の部分と、上記第1の部分から延びる第2の部分とを含んで、上記第2の部分は上記第2の蓄積エネルギー源が入る凹部を規定してもよい。挿入部材の第1または第2の部分は、駆動部材と係合する第2のベアリング面を含んでもよい。
【0040】
上記薬物送達装置は、さらに、上記装置筐体に連結され、上記第1の蓄積エネルギー源内に延び、上記駆動部材または上記挿入部材と係合して上記駆動部材が上記第2のベアリング面から外れることを防止する保持手段を備えてもよい。上記装置は、上記筐体内での上記挿入部材の挿入位置への移動が上記駆動部材を上記保持手段から解放するよう構成されてもよい。
【0041】
第1の蓄積エネルギー源は、拡張して装置筐体内で挿入部材を駆動するエネルギーを解放するよう構成されてもよく、第1の蓄積エネルギー源は、装置筐体の一部の薬物容器への係合により当初の拡張が防止されていてもよい。
【0042】
上記薬物送達装置は、自己注射器であってもよい。
【0043】
本発明の第5の様態において、薬物送達装置であって、
薬物容器と、
内部筐体と、
上記薬物容器に連結され、上記筐体内で上記薬物容器を挿入方向に移動させるよう構成された挿入メカニズムと、
使用時には注射部位に接触するよう構成されたスキンセンサー要素と、
上記スキンセンサーを上記挿入方向に付勢するスキンセンサー付勢要素とを備え、
上記スキンセンサー要素は、上記挿入メカニズムを作動させるために、初期位置から後退位置へ、上記挿入方向とは反対方向に動くことができ、
上記内部筐体は、上記スキンセンサー要素が上記挿入方向へ上記初期位置から移動することを抑制する第1のラッチ要素を含み、上記第1のラッチ要素は、上記スキンセンサー要素に係合するよう構成されたラッチ面と、第1のカム表面とを含み、
上記薬物容器または上記挿入メカニズムは、第2のカム表面を含み、上記第2のカム表面は、上記薬物容器が上記内部筐体内を移動すると上記第1のカム表面に係合して上記第1のラッチ要素を軸方向に移動し、これにより、上記スキンセンサー要素が上記初期位置を超えて伸長位置まで上記挿入方向に移動することが可能となるよう構成される、薬物送達装置を提供する。
伸長位置において、スキンセンサー要素は、針を覆う。
【0044】
上記第1のラッチ要素は、弾力性のあるカンチレバーアームを含んでもよく、上記ラッチ面および上記第1のカム表面は、上記カンチレバーアームの自由端に形成される。上記カンチレバーアームは、上記スキンセンサー要素が上記初期位置にあるとき、上記スキンセンサー要素および上記スキンセンサー付勢要素によって張力で保持されてもよい。
【0045】
上記内部筐体は、内部を上記薬物容器が移動する中央穴部を規定してもよく、上記第1および第2のカム表面は、上記穴部の外周に平行な方向に上記ラッチ要素を移動させるよう構成されてもよい。上記第1のカム表面は、上記ラッチ面の内側に位置してもよい。好都合には、上記第1のカム表面は、上記ラッチ面に平行ではない。この文脈で、内側とは、装置の外表面からさらに内側を意味する。
【0046】
上記スキンセンサー要素は、上記スキンセンサー要素が上記後退位置にあるとき上記内部筐体の薬物容器ラッチに揃う第1の開口を少なくとも含んでもよい。
【0047】
上記スキンセンサーは、上記初期位置または後退位置にあるときに、上記内部筐体の上記薬物容器を見る窓を塞がないよう構成されてもよい。
【0048】
上記薬物送達装置は、さらに、上記内部筐体に形成され、上記スキンセンサーが上記第1のラッチ要素から解放された後上記後退位置へ移動しないよう構成された第2のラッチ要素を備えてもよい。上記第2のラッチ要素は、第2の開口または上記スキンセンサー要素の突出部と係合してもよい。
【0049】
後退位置において、スキンセンサー要素は内部筐体に当接してもよく、スキンセンサー要素が内部筐体に対して挿入方向と反対の方向にさらに移動することを防止する。
【0050】
上記薬物送達装置は、自己注射器であってもよい。
【0051】
本発明の第6の様態において、針アセンブリであって、
皮下注射針と、
上記針の第一端が固定された針ハブと、
上記針ハブに連結され、上記針の第二端を覆う、少なくとも上記針の一部の周囲に滅菌バリアを設ける剛体を有する針シールドと、
上記剛体内に設けられ、上記針の第二端の周囲に液密封止を設ける従属要素とを備え、
上記剛体は、上記針ハブとの締まりばめを設け、これにより上記針ハブの周囲に封止を設けるよう構成される、針アセンブリが提供される。
【0052】
上記剛体は、高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの成型プラスチック材料で形成されてもよい。
【0053】
上記針アセンブリは、上記剛体の内表面または上記針ハブの外表面に、少なくとも1つの円周リブを備えてもよい。好ましくは、上記針アセンブリは、上記剛体の内表面に、少なくとも2つの円周リブを備えてもよい。剛体が針ハブに嵌る前の各リブの接点における曲率半径は、好ましくは0.6mm未満である。各リブの接点は、剛体が針ハブに嵌ると最初に針ハブに接触するよう構成された当該リブの表面上の点である。
【0054】
針ハブは、環状オレフィン重合体などの成型プラスチック材料で形成されてもよい。上記針ハブの表面仕上げは、山部と谷部の間の最大距離が2μm以下であってもよい。好ましくは、針ハブの表面仕上げは、0.2Ra以下である。針ハブは、剛体が連結される円形円筒形状の外表面を有してもよい。剛体の内表面の表面仕上げは、好ましくは0.2Ra以下である。剛体の内表面の表面仕上げは、山部と谷部の間の最大距離が2μm以下であってもよい。
【0055】
上記剛体は、少なくとも1つの突出部または凹部を有する外表面を含んでもよい。上記剛体の少なくとも一部が透明であってもよい。
【0056】
従属要素は、剛体および針ハブにより、完全に囲まれていてもよく、または部分的に囲まれていてもよい。上記従属要素は、上記剛体の少なくとも1つの突出部によって上記剛体に保持されてもよい。
【0057】
上記針アセンブリは、さらに、上記従属要素または上記剛体に設けられた、上記従属要素の上記剛体への挿入中に上記剛体から空気を逃がすことができる、少なくとも1つの排出口を備えてもよい。また、剛体は従属要素上に成型されてもよく、従属要素が剛体の内部に成型されてもよい。
【0058】
本発明の第7の様態において、第6の様態にかかる針アセンブリを備える、自己注射器またはシリンジを提供する。
【0059】
本発明の第8の様態において、針アセンブリの製造方法であって、
針の第一端を針ハブに固定するステップと、
上記針の第二端を覆う針シールドを上記針ハブに連結するステップとを含み、
上記針シールドは、剛体と従属要素を含み、上記剛体は、上記針ハブとの締まりばめを設けて、これにより上記針ハブの周囲に封止を設けるよう構成され、上記剛体は、少なくとも上記針の一部の周囲に滅菌バリアを設け、上記連結ステップは、上記従属要素が上記針の第二端の周囲に液密封止を設けるよう上記針の第二端を上記従属要素へ挿入することを含む、針アセンブリの製造方法を提供する。
【0060】
本発明の第9の様態において、薬物送達装置であって、
薬物を収容する薬物容器と、上記薬物容器に連結され、これを通して上記薬物を放出することができる皮下注射針と、上記薬物容器内部に設けられたプランジャーとを備える薬物容器アセンブリと、
内部に上記薬物容器が移動可能に配置された内部筐体と、
少なくとも1つの蓄積エネルギー源を含み、上記薬物容器に連結されたパワーパックアセンブリと、
上記内部筐体に固定された下部筐体と、
上記下部筐体に固定され、上記パワーパックアセンブリを囲む上部筐体と、
上記下部筐体と上記内部筐体との間に延びて、上記内部筐体および上記下部筐体に対して可動であるスキンセンサー要素と、
上記スキンセンサー要素を覆い、上記下部筐体に連結されたキャップとを備える、薬物送達装置を提供する。
【0061】
上部筐体は、1または複数の機械的固定具を用いて下部筐体に固定されてもよい。
【0062】
上記装置は、上記スキンセンサー要素の初期位置から後退位置への上記内部筐体に対する移動が、上記パワーパックアセンブリ内の上記蓄積エネルギー源を解放するよう構成されてもよい。
【0063】
上記内部筐体は、上記スキンセンサー要素が上記初期位置にあるとき、上記薬物容器と係合し、上記薬物容器を上記薬物容器の初期位置に保持して上記蓄積エネルギー源を保持する保持ラッチを含んでもよく、上記スキンセンサー要素の上記後退位置への移動が、上記保持ラッチが上記薬物容器から外れることができるようにし、これにより上記蓄積エネルギー源が解放される。
【0064】
上記内部筐体は、上記スキンセンサー要素の上記初期位置からの移動を抑制する第1のラッチ要素を含んでもよい。第1のラッチ要素は、自由端でスキンセンサー要素と係合する弾力性のあるアームであってもよい。
【0065】
上記下部筐体または内部筐体は、上記スキンセンサーが上記伸長位置に移動した後、上記スキンセンサー要素を伸長位置にロックする第2のラッチ要素を含んでもよい。
【0066】
上記パワーパックアセンブリは、第1および第2の蓄積エネルギー源を含んでもよく、
上記第1の蓄積エネルギー源は、上記薬物容器を上記薬物容器の初期位置から上記薬物容器の挿入位置へ移動させるエネルギーを与え、
上記第2の蓄積エネルギー源は、上記薬物容器内の上記プランジャーを移動させて上記薬物を放出するエネルギーを与える。上記パワーパックアセンブリは上記薬物容器に固定されてもよい。蓄積エネルギー源は、圧縮バネであってもよい。
【0067】
パワーパックアセンブリは、本発明の第2の様態にかかる保持手段を含んでもよい。パワーパックは、本発明の第1の様態にかかる駆動メカニズムを含んでもよい。
【0068】
上記内部筐体は、上記薬物容器が挿入位置に移動すると上記薬物容器と係合するよう構成されたストップ面を含んでもよい。ストップ面は、薬物容器が挿入位置へ移動すると薬物容器により変形される1または複数の弾力性のある片持ち梁を含んでもよい。
【0069】
キャップは、直接または間接的にスキンセンサー要素に係合して、スキンセンサー要素が初期位置から後退位置へ移動することを防止してもよい。
【0070】
上部筐体または下部筐体は、薬物を見ることができる開口を含んでもよい。上記内部筐体または上記下部筐体は、透明であってもよく、上部筐体の上記開口と係合するよう構成されてもよい。
【0071】
上記上部筐体は、それぞれが上記薬物を見ることができる開口を含む2つの主面と、2つの副面とを含んでもよい。上記第1および第2のラッチ要素は、上記上部筐体の副面に隣接して配置されてもよい。
【0072】
上記薬物送達装置は、自己注射器であってもよい。
【0073】
本発明の第10の様態において、第9の様態にかかる薬物送達装置の組み立て方法であって、
上記パワーパックアセンブリを設けるステップと、
上記薬物容器アセンブリを設けるステップと、
上記内部筐体と、上記下部筐体と、上記スキンセンサーとを有する前端部アセンブリと、キャップとを設けるステップと、
上記上部筐体を設けるステップと、
上記パワーパックアセンブリを上記薬物容器アセンブリに連結するステップと、
上記薬物容器アセンブリを上記前端部アセンブリに連結するステップと、
上記パワーパックアセンブリ、薬物容器アセンブリ、および前端部アセンブリを、上記上部筐体に連結するステップとを含む、薬物送達装置の組み立て方法を提供する。
【0074】
パワーパックアセンブリを薬物容器アセンブリに連結するステップは、薬物容器アセンブリを前端部アセンブリに連結するステップの前に行われても後に行われてもよい。同様に、キャップは、前端部アセンブリのその他の要素に方法のどの時点で連結されてもよい。
【0075】
発明の第11の様態において、薬物送達装置であって、
筐体と、
上記筐体内に設けられた薬物容器と、
上記薬物容器を上記筐体内で初期位置から挿入位置へ軸方向に移動させるよう構成されたパワーパックアセンブリとを備え、
上記筐体は、上記薬物容器が上記挿入位置に到達すると上記薬物容器と係合するよう構成されたストップ面を含み、
上記ストップ面は、上記筐体の少なくとも1つの、弾力性があり、上記軸方向に屈折可能である梁に設けられる、薬物送達装置を提供する。
【0076】
上記ストップ面は、一対の片持ち梁に設けられてもよい。上記装置は、外部筐体と内部筐体とを備えてもよく、上記ストップ面は、上記内部筐体に設けられる。
【0077】
上記薬物容器は、皮下注射針を含んでもよい。
【0078】
上記薬物送達装置は、自己注射器であってもよい。
【0079】
本発明の第12の様態において、薬物送達装置であって、
筐体と、
上記筐体に設けられ、放出対象の薬物を収容する薬物容器であって、第1の開口部を規定する第一端を有する薬物容器と、
上記薬物容器内に配置され、上記薬物と接触するプランジャーと、
上記薬物容器の上記第1の開口部に第1の閉鎖封止を設ける第1の封止要素と、
最初は上記プランジャーに対して上記第1の閉鎖封止の反対側に位置する押し込み部であって、上記第1の閉鎖封止を破り、上記プランジャーを上記薬物容器内で移動させて上記薬物を放出する押し込み部と、
上記薬物容器を上記筐体内で移動させるよう構成された挿入メカニズムとを備え、
上記押し込み部および上記挿入メカニズムは、使用前には、上記第1の封止要素とは接触しないよう保持される、薬物送達装置を提供する。
【0080】
封止要素は、積層ホイルであってもよく、薬物容器に溶接されても接着されてもよい。本明細書の請求項および説明において用いられる「閉鎖封止」という用語は、保管中に予測可能な外的要素による容器内の薬物の劣化や汚染を防止する封止を指すものである。閉鎖封止は、公式または認定された必須要件に従って、容器内の薬物の安全性、識別性、強度、品質、無菌状態および/または純度を維持する。
【0081】
上記薬物容器は、上記薬物が放出される第2の開口部と、上記第1の開口部と上記第2の開口部との間に延びる少なくとも1つの側壁とを含んでもよく、上記駆動メカニズムは、上記少なくとも1つの側壁と係合する。
【0082】
上記薬物送達装置は、自己注射器であってもよい。
【0083】
第13の様態において、薬物送達装置であって、
筐体と、
上記筐体に設けられ、放出対象の薬物を収容する薬物容器であって、第1の開口部を規定する第一端を有する薬物容器と、
上記薬物容器内に配置され、上記薬物と接触するプランジャーと、
上記薬物容器の上記第1の開口部に第1の閉鎖封止を設ける第1の封止要素と、
最初は上記プランジャーに対して上記第1の閉鎖封止の反対側に位置する押し込み部であって、上記第1の閉鎖封止を破り、上記プランジャーを上記薬物容器内で移動させて上記薬物を放出する押し込み部と、
上記押し込み部が動作して上記第1の閉鎖封止が破られる前に、上記薬物容器を上記筐体内で移動させるよう構成された挿入メカニズムとを備え、
上記薬物容器が上記筐体内を移動する際、上記挿入メカニズムおよび筐体のいずれの要素も上記第1の封止要素に接触しない、薬物送達装置を提供する。
【0084】
上記薬物送達装置は、自己注射器であってもよい。
【0085】
本発明のある様態に関して説明された特徴は、本発明の他のいずれの様態にも等しく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
本発明の実施形態を、一例として以下のような添付の図面を参照し説明する。
【0087】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる使用前の自己注射器の斜視図である。
【
図4a】
図4aは、薬物容器アセンブリの斜視図である。
【
図4b】
図4bは、薬物容器アセンブリの断面図である。
【
図5】
図5は、針シールドと薬物容器の針ハブとを示す断面である。
【
図6a】
図6aは、パワーパック筐体の第1の部分断面である。
【
図6b】
図6bは、パワーパック筐体の第2の部分断面である。
【
図7】
図7は、パワーパックアセンブリの上面斜視図である。
【
図8】
図8は、初期構成の駆動部材の斜視図である。
【
図9】
図9は、薬物送達後の、最終構成の駆動部材の斜視図である。
【
図13a】
図13aは、上部筐体およびキャップが取り外された本装置の側面図であり、初期位置にあるスキンセンサー要素を示す図である。
【
図13b】
図13bは、上部筐体およびキャップが取り外された本装置の側面図であり、後退位置にあるスキンセンサー要素を示す図である。
【
図13c】
図13cは、上部筐体およびキャップが取り外された本装置の側面図であり、後退位置にあるスキンセンサー要素と、パワーパックアセンブリにより屈折させられたスキンセンサーラッチ要素とを示す図である。
【
図13d】
図13dは、上部筐体およびキャップが取り外された本装置の側面図であり、最終位置にあるスキンセンサー要素とパワーパックアセンブリとを示す図である。
【
図15】
図15は、キャップを取り外す前の本装置の前端部の断面図である。
【
図16a】
図16aは、動作シーケンスを説明する第1の実施形態における断面図である。
【
図16b】
図16bは、動作シーケンスを説明する第1の実施形態における断面図である。
【
図16c】
図16cは、動作シーケンスを説明する第1の実施形態における断面図である。
【
図16d】
図16dは、動作シーケンスを説明する第1の実施形態における断面図である。
【
図16e】
図16eは、動作シーケンスを説明する第1の実施形態における断面図である。
【
図16f】
図16fは、動作シーケンスを説明する第1の実施形態における断面図である。
【
図16g】
図16gは、動作シーケンスを説明する第1の実施形態における断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の第1の実施形態にかかる自己注射器の組み立てプロセスを説明する模式図である。
【
図18】
図18は、本発明の第2の実施形態にかかる使用前の自己注射器の斜視図である。
【
図21】
図21は、第2の実施形態の薬物容器アセンブリの斜視図である。
【
図22】
図22は、第2の実施形態のパワーパック筐体の斜視図である。
【
図23】
図23は、第2の実施形態のスキンセンサー要素の斜視図である。
【
図24】
図24は、第2の実施形態のシャーシの斜視図である。
【
図25a】
図25aは、スキンセンサー要素、シャーシ、パワーパック筐体の側面図であり、使用中のスキンセンサー要素の動きのシーケンスを示す図である。
【
図25b】
図25bは、スキンセンサー要素、シャーシ、パワーパック筐体の側面図であり、使用中のスキンセンサー要素の動きのシーケンスを示す図である。
【
図25c】
図25cは、スキンセンサー要素、シャーシ、パワーパック筐体の側面図であり、使用中のスキンセンサー要素の動きのシーケンスを示す図である。
【
図26】
図26は、第2の実施形態の下部筐体の斜視図である。
【
図27】
図27は、第2の実施形態のキャップの斜視図である。
【
図28a】
図28aは、第2の実施形態の断面図であり、動作シーケンスを説明する図である。
【
図28b】
図28bは、第2の実施形態の断面図であり、動作シーケンスを説明する図である。
【
図28c】
図28cは、第2の実施形態の断面図であり、動作シーケンスを説明する図である。
【
図28d】
図28dは、第2の実施形態の断面図であり、動作シーケンスを説明する図である。
【
図28e】
図28eは、第2の実施形態の断面図であり、動作シーケンスを説明する図である。
【
図29】
図29は、本発明の第2の実施形態にかかる自己注射器の組み立てプロセスを説明する模式図である。
【
図30】
図30は、パワーパックがシャーシと係合する際に外部筐体から外れるメカニズムを説明する図である
【発明を実施するための形態】
【0088】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる使用前の自己注射器1の斜視図である。この自己注射器は、自己注射器内部の薬物を調べることができるのぞき窓22を有する外部筐体20を備える。キャップ30が設けられて、装置の動作時に針が通る端部を覆い、また不注意による装置の作動を防止する。この自己注射器は、長さが約10cmと小型で使用者の手に容易になじむ。
【0089】
図2は、
図1の自己注射器1の断面図である。
図3は、
図2の断面に対して90度の、
図1の自己注射器の第2の断面図である。
【0090】
図1、
図2、
図3に示す自己注射器1は、薬物容器アセンブリ(
図4aおよび
図4bに示す)と、送達音発生メカニズム(
図8および
図9に示す)の端部を含むパワーパックアセンブリ(
図6a、
図6b、および
図7に一部を示す)と、ここではシャーシと呼ぶ内部筐体(
図11に示す)と、スキンセンサー要素(
図10に示す)およびスキンセンサーバネを含むスキンセンサーアセンブリと、下部筐体(
図12に示す)と、外部筐体と、キャップ(
図14に示す)とを備える。
【0091】
薬物容器アセンブリ10は、シャーシ120内に保持され、動作時にはシャーシ内部を移動する。薬物容器アセンブリ10は、シャーシのラッチ122によって初期位置に保持され、これらは薬物容器の突出部13と係合してスキンセンサーアセンブリによる薬物容器の解放を防止する。スキンセンサーアセンブリは、スキンセンサー要素112と、スキンセンサーバネ114とを備える。スキンセンサー要素は、シャーシ120のラッチ要素124によって保持され、シャーシ120とスキンセンサー要素112との間に保持されるスキンセンサーバネ114によって薬物容器アセンブリ10から離れる方向に付勢される。下部筐体140は、シャーシの窓部130を留めることによりシャーシ120に係合する。下部筐体の突起148は、外部筐体に形成された凹部24と係合する。キャップ30は、下部筐体の凹部142と係合し、スキンセンサー要素112を覆う。
【0092】
図4aに、薬物容器アセンブリのみを示す。
図4bは、
図4aの断面図である。薬物容器アセンブリは、患者に注射して送達することになる薬物を収容する薬物容器10を備え、この薬物容器は前端部に皮下注射針12を有している。薬物容器は環状オレフィンで形成されており、環状オレフィンは薬物に対する接触特性が優れている。プラスチック製薬物容器の使用は、ガラスによりも有利な点がいくつかある。プラスチック製容器は、以下の実施形態に関連して説明されるように、自己注射および薬物送達のメカニズムの一部をなす機能部とともに成型することができ、またガラスに比べてはるかに高い精度で形成することができる。また、プラスチック製容器は、より高い衝撃力や圧力に耐えることができるため、自己注射器メカニズム内により強いバネを用いることや、太く短い薬物容器に用いることが可能となる。
【0093】
プランジャー14は、薬物容器の内部に設けられている。薬物容器10でのプランジャー14の移動により、薬物が針12を通って外に押し出される。プランジャーは、薬物容器の壁部との摩擦を低くし、プランジャーと薬物容器との間の配置位置を最小限に抑えるよう設計されている。このプランジャーはカップシール式プランジャーであり、プランジャーが薬物容器内を移動する際にプランジャーにかかる薬物の流体圧力の成分が、プランジャーと薬物容器の内表面との間の封止接触面に向うよう構成されている。この種のプランジャーは、GB2467904に記載されている。薬物容器の壁部と接触するプランジャー14の周辺部は、実質的に非エラストマー材料を含む。薬物容器10の前端部の内表面は、使用中に薬物容器から押し出される薬物の量が最大となるよう、プランジャー14の前端部の形状に合う形状をしている。
【0094】
封止ホイル16は、薬物容器10の後端部に設けられており、薬物が確実に滅菌および手付かずの状態で保持および維持されるようにする。封止ホイル16は、薬物容器10の後端部に溶接または接着されたアルミニウム層を含む積層ホイルであってもよい。
【0095】
本実施形態において、皮下注射針12は薬物容器10の針ハブ部11に接着される。ただし、薬物容器は針の周囲に成型されてもよい。この針は、針12を滅菌状態に保つ針シールド50によって覆われている。
図4bに示すように、針シールド50は、針ハブ部11つきの封止を形成する硬質な外部筐体52を備える。弾性プラグ54の形をとる従属要素が、針12の前端部が挿入される針シールド内に設けられている。弾性プラグは、針を封止し、針シールドを取り外す前に針から薬物が漏れないようにする。針シールドの硬質な外部筐体52は、自己注射器の組み立て中に針の検査ができるように、透明であってもよい。硬質な外部筐体52の前端部は、
図2aに示すように、キャップ30の中のフック32と係合するよう構成された球状部56を備える。これにより、キャップ30が取り外されるときに、針シールドが確実に一緒に取り外されるようになる。
【0096】
針シールドによる針ハブ11の封止を、
図4bの部分拡大図である
図5に詳細に示す。針ハブ11は、針シールドに囲まれた部分では円筒形状をしている。針シールドの剛体52は、針シールドの内表面に沿って延びる一対のリブ57,58を有する。リブは、針ハブ11に締まりばめされて、針の滅菌状態を維持する封止となる。本実施例では、ハブは、直径が2.4mmであり、表面仕上げの品質は山部と谷部の間の最大距離が2μm以下である。針ハブは、環状オレフィン重合体など、成型プラスチック材料から形成されてもよい。針ハブの表面仕上げは、0.2Raに指定される。針ハブは、剛体が連結された円形円筒形状の外表面を有してもよい。剛体の内表面は、表面仕上げが0.2Ra以下となるよう指定される。剛体の内表面は、山部と谷部の間の最大距離が2μm以下の表面仕上げであってもよい。リブは、名目上の封止直径が2.2mmである。したがって、針ハブ11と針シールド50との間には、0.2mmの名目上の直径干渉がある。
【0097】
針シールドの剛体は、ポリエチレン製であり、針ハブと同じ表面仕上げが施されている。リブ57,58は、互いに3mm離間している。最小の力でリブと針ハブの間の接触圧力を最大にするために、すなわち最小の取り外し力で最大の密封性を得るために、リブと針ハブの間の接触領域をできるだけ小さくする必要がある。しかしながら、この接触領域には、針シールドの製造プロセスおよび用いられる材料による限界がある。本実施例では、剛体を針ハブに嵌める前の接点における各リブの曲率半径は、0.6mm未満であることが好ましい。各リブの接点は、当該リブの表面上の、剛体が針ハブに嵌まるときに最初に針ハブに接触するよう構成された点である。しかしながら、最終的な接触半径は、特に干渉によってプラスチックが変形するならば、これよりも大きくてもよい。
【0098】
また、
図1~
図3に示す自己注射器は、針を注射部位に挿入し、薬物を針から注射部位へ放出する自動メカニズムを備える。本明細書では、この自動メカニズムをパワーパックアセンブリと呼ぶ。パワーパックアセンブリは、圧縮バネ61,62の形をとる蓄積エネルギー源を備える。挿入バネと呼ばれる第1のバネ61が解放されると、このバネにより薬物容器10が自己注射器の筐体内を移動して針12を注射部位に挿入する。その後、送達バネと呼ばれる第2のバネ62が解放されると、プランジャー14が薬物容器10内を移動して薬物を注射する。バネ61,62およびパワーパックアセンブリ内でバネを解放するシーケンスを制御するメカニズムは、薬物容器の後方に位置している。
【0099】
パワーパックは、薬物容器10に連結されたパワーパック筐体64を備える。本実施形態のパワーパック筐体は、下部パワーパック筐体65と上部パワーパック筐体66という、2つの部分を含む。パワーパック筐体は、自己注射器の組み立てが簡単になるように2つの部分に分かれているが、使用時には、これら2つの部分は互いに固定されて単一の要素として作用する。下部パワーパック筐体65は薬物容器10に留められている。下部パワーパック筐体65は、薬物容器の凹部17に係合する。
図2および
図3では自己注射器の使用前の圧縮状態で図示される挿入バネ61は、上部パワーパック筐体66と保持手段100との間に位置している。保持手段100は、上部パワーパック筐体66に連結されて、
図7を参照して説明するように挿入バネ61を第1の圧縮状態に維持する。
【0100】
送達バネ62は、上部パワーパック筐体66と複数要素駆動部材70との間に位置する。以下に詳述するように、送達バネ62は、解放されると、パワーパック筐体64に対して前方に駆動部材70を駆動し、プランジャー14を薬物容器10内で駆動して薬物を放出する。
【0101】
自己注射器の使用前は、送達バネ62は挿入バネ61の周りに位置している。このように入れ子になった二重バネメカニズムには、利点がある。まず、一方のバネを他方に入れ子にすることにより、自己注射器の長さを最小限にすることができる。次に、送達バネを挿入バネよりも大きくすることができる。薬物を針から放出するために必要な力は、通常、針を注射部位に挿入するために必要な力よりもずっと大きい。したがって、針挿入に小さいバネを用いることは有益である。
【0102】
図6aおよび
図6bに、パワーパックアセンブリの後端部を詳細に示す。
図6aは、パワーパックアセンブリの第1の断面であり、上部パワーパック筐体66に形成された第1の突起67に配置された挿入バネを示す。
図6bは、
図6aの断面から90度でのパワーパックアセンブリの第2の断面であり、上部パワーパック筐体に形成された第2の突起69により保持される駆動部材70を示す。
【0103】
パワーパックアセンブリは、薬物容器および自己注射器の残りの部分に連結される前に、独立した要素として組み立てられる。挿入バネおよび送達バネを圧縮状態に保持するために、パワーパック筐体は保持手段100と係合する。この保持手段は、頭部106と、パワーパック筐体64および駆動部材70の内部で頭部から延びる軸部108とを備える。軸部108は、駆動部材70、特に第2の駆動要素80の突起部86が、駆動部材から軸部108が取り除かれるまではパワーパック筐体の突起69から外れないようにする。
【0104】
図7は、パワーパックアセンブリの部分斜視上面図であり、上部パワーパック筐体66に係合した保持手段100を示す。挿入バネ61は、保持手段100とは反対方向にパワーパック筐体を付勢するが、上部パワーパック筐体に形成された棚部68の下方にある保持手段の表面102との係合によって保持される。パワーパック筐体は、パワーパック筐体と保持手段とを相対的に回転させることにより保持手段100から解放される。特に、保持手段には、カム面104が形成されており、このカム面は、パワーパックアセンブリが外部筐体に挿入されると、カム面、または外部筐体内の突出部25が保持手段のカム面に係合して保持手段を回転させる。パワーパック筐体は、パワーパック筐体がシャーシに、またシャーシが外部筐体に係合することによっては外部筐体に対して回転しないようになっている。保持手段100の回転により、表面102が棚部68と係合した状態から外されて、パワーパック筐体が保持手段から外れる。
【0105】
パワーパック筐体が保持手段100から解放されると、外部筐体20と下部筐体140との係合、下部筐体140とシャーシ120との係合、シャーシ120と薬物容器10との係合、および薬物容器10とパワーパック筐体64との係合により、完全に拡張しないようにされる。外部筐体20は、保持手段を回転することによって保持手段100がパワーパック筐体から外れるよう駆動されると下部筐体140と係合するよう構成される。
【0106】
上述のように、挿入バネ61は、拡張の際に、上部パワーパック筐体66の突起67と係合して、パワーパック筐体および薬物容器アセンブリをシャーシ内で前方に駆動する。駆動バネ62は、パワーパック筐体64および駆動部材70と係合して、駆動部材およびプランジャーを薬物容器内で駆動する。駆動部材70は、3つの要素を含む。具体的には、駆動バネは、第1の駆動要素71のバネベアリング面72と係合する。第1の駆動要素71は、第2の駆動要素80と第3の駆動要素90とに連結される。
図8および
図9に、複数要素駆動部材70を示す。
【0107】
図8に、薬物容器から薬物が送達される前の初期構成の駆動部材70を示す。第1の駆動要素71は、基本的に円形円筒形状の管であり、その内部に第2の駆動要素80が配置される。第1の駆動要素の第1の衝撃面75は、第1の駆動要素と第2の駆動要素の第1の衝撃面から第1の駆動要素へ向かって延びる歯部84との係合により、第2の駆動要素の第1の衝撃面85から離間して保持される。第2の駆動要素は、薬物容器10の封止ホイル16に接触して貫通するよう構成されるホイル接触面82を備える。ホイル接触面82は、ホイルシールの貫通を支援する複数の鋸歯を備える。第2の駆動要素80は、第1の衝撃面85から第1の駆動要素の内部を延びる。
【0108】
第2の駆動要素は、成型プラスチック材料から形成され、その後端部が一対の柔軟な脚部87に分かれており、各脚部の後端部にパワーパック筐体と係合する突起部86が形成されている。脚部の間には穴部88が規定されており、この中に保持手段の軸部108が入る。保持手段の軸部は、脚部87が内側に屈折して上部パワーパック筐体の突起69から外れることを防止する。
【0109】
第1の駆動要素71は、第1の駆動要素の第1の衝撃面75が第2の駆動要素の第1の衝撃面85に接触するように、第2の駆動要素の歯部84に嵌る寸法の切り欠け部73を備える。歯部84が切り欠け部73に嵌るように、第1の駆動要素は第2の駆動要素に対して回転しなければならない。しかしながら、初期位置では、第3の駆動要素90によって回転できないようになっている。第3の駆動要素90は、初期位置では第1の駆動要素および第2の駆動要素の双方と係合している。本実施形態における第3の駆動要素は、概ね管状で、第1の駆動要素と第2の駆動要素との間に位置している。第3の駆動要素の突出部92は、第1の駆動要素に形成されたスロット74に係合して、第1の駆動要素と第3の駆動要素とが相対的に回転しないようにする。このスロットは、軸方向の運動、すなわち、第1の駆動要素と第3の駆動要素との間において駆動バネの伸長で駆動部材が移動する方向への運動が可能となる寸法となっている。第3の駆動要素の切り欠け部94は、第2の駆動要素の歯部84と係合して、第2の駆動要素と第3の駆動要素とが相対的に回転しないようにする。しかしながら、第3の駆動要素は、第2の駆動要素に対して軸方向に自由に動くことができる。
【0110】
駆動部材が薬物容器内でその前方移動の終点に到達すると、第3の駆動要素の突出部92が薬物容器10の背面に係合する。駆動バネ62の影響で第1および第2の駆動要素が前方に動き続けるため、第3の駆動要素はこのように薬物容器に保持されている。この第3の駆動要素と第2の駆動要素との相対的な軸方向の運動の結果、第3の駆動要素の切り欠け部94が歯部84からはずれると、第1の駆動要素71は第2の駆動要素80に対して自由に回転するようになる。歯部84は、第1の駆動要素71の駆動バネの作用で歯部が第2の駆動要素に対して回転するよう、角度のついた面76の第1の駆動要素に係合する。歯部84が自由に切り欠け部73に嵌るようになると、前方への運動に対するそれほど大きな抵抗がなくなるため、第1の駆動要素は第2の駆動要素に対して急速に前方に移動する。そして、第1の駆動要素の第1の衝撃面が高速で第2の駆動要素の第1の衝撃面に衝突し、駆動部材が移動の終点に到達したことを示す音による信号を生み出す。
図9に、最終位置を示す。
【0111】
この「送達終了」指示の動作の原理は、2つの部分を有する駆動部材を用いることであり、2つの部分は駆動部材の移動の終点まで、または、その近くまで一緒に移動し、ここで蓄積エネルギー源の作用で互いに相対的に自由に運動して音による信号を生み出す。薬物容器で駆動部材を駆動するために用いられるものと同じエネルギー源を用いることが有利である。しかしながら、駆動部材の2つの部分をロック・解放するメカニズムにはいくつかの選択肢があることは明らかであり、
図8および
図9の実施形態においては第3の駆動部材を用いて実現されている。例えば、このパワーパック筐体内の機能部は、第1の駆動要素がパワーパック筐体内の特定の位置に到達したときに第1の駆動要素を第2の駆動要素に対して回転させるために設けられてもよい。
【0112】
スキンセンサーアセンブリは、薬物容器の前方に設けられており、使用の前後に針を覆い、またキャップを取り外して注射部位に自己注射器を押し付けるだけで作動できるようにするものである。
【0113】
スキンセンサーアセンブリは、
図10に示すスキンセンサー要素112と、スキンセンサー要素とシャーシとの間に保持されるスキンセンサーバネ114とを備える。これは、
図3から明らかである。動作時には、このスキンセンサー要素は、
図11のシャーシ120および
図12の下部筐体140と相互作用する。
【0114】
図11は、シャーシ120の斜視図である。シャーシは、透明なプラスチック材料から形成されており、外部筐体20に形成された窓22に合った2つの窓部120を含む。下部筐体140は、
図13aに示すように、窓部130の周りのシャーシを挟んで留める。ラッチ122は、外側に屈曲して薬物容器10から外れることができるよう形成されている。シャーシは、直径が小さくなった前端部132を有し、この前端部は薬物容器が挿入位置を超えて移動することを防止する。ベアリング面133が設けられ、これに対向してスキンセンサーバネ114が配置される。
【0115】
また、シャーシ120は、窓部130の下方に形成された柔軟性のあるアーム部121を有する。柔軟性のあるアーム部121は、それぞれ、その自由端にスキンセンサー要素112の後端部に当接する球状部123を備える。球状部123は(キャップおよび/または上部筐体と組み合わせて)、
図15を参照して説明したように、ラッチ122が薬物容器10を解放する位置までスキンセンサー要素が後ろ方向に移動することを防止する。
【0116】
また、シャーシはラッチ要素124を含む。ラッチ要素124は、それぞれ、シャーシ本体から本装置の前端部へと延びる柔軟性のあるアーム部125と、柔軟性のあるアーム部の端部に設けられたフック126およびカムヘッド128とを備える。フック126は、スキンセンサー要素112と係合するよう構成されている。カムヘッド128は、フックの内側に位置し、パワーパック筐体64と係合するよう構成されている。ここで、内側とは、外部筐体に対しての内側を指す。シャーシのラッチ要素124は、パワーパックまたはスキンセンサー要素と係合するため、シャーシの取り囲む部分より内側には延びない。これは、成型の点から好都合である。
【0117】
図12は、下部筐体140の斜視図である。下部筐体は、シャーシの窓部130の周囲の部分146を挟み込むことによりシャーシに固定されている。下部筐体140は、初期位置ではスキンセンサー要素112の開口部115に入る一対の第2のラッチ要素144を含む。下部筐体は、キャップ30と係合するための凹部142を含む。表面145は、後述するように、スキンセンサーが完全に延びた位置以上に移動することを制限するよう作用する。また、下部筐体は、シャーシの柔軟性のあるアーム部121が入るスロット141を含む。下部筐体の突起148は、外部筐体に形成された凹部24と係合する。
【0118】
使用前の初期位置においては、
図2および
図3に示すように、スキンセンサー要素112はスキンセンサーバネ114によってシャーシと反対方向に付勢されている。表面116とラッチ要素124との係合によってシャーシに保持されている。下部筐体の第2のラッチ要素144は、初期位置において、スキンセンサー要素112の開口部115に入っている。
【0119】
図13a~
図13dは、スキンセンサーアセンブリの動作シーケンスを示す図であり、外部筐体とキャップとが取り外された本装置の側面図である。
図13aは、キャップが取り外されているが、使用前の本装置を示す。スキンセンサー要素112は、ラッチ要素124によりスキンセンサーバネの作用に対抗して保持されている。具体的には、ラッチ要素124のフック126は、スキンセンサー要素の表面114と係合している。
【0120】
図13bは、スキンセンサー要素が注射部位に押し付けられた場合になるように、押し戻されたスキンセンサー要素112を示す。この位置では、フック126は表面116から離れている。第2のラッチ要素144は、まだスキンセンサー要素の開口部115に入っている。しかしながら、ここでは、開口部115のより広い部分がシャーシのラッチ122の位置に合わさっている。
図13bに示す位置において、ラッチ122は、スキンセンサー要素の開口部115に押し出されるため、もはや薬物容器10を保持していない。したがって、薬物容器は前方に自由に移動することができ、
図13cに示すように、挿入バネ61が拡張してパワーパックアセンブリと薬物容器を挿入位置に移動させる。
【0121】
図13cでは、薬物容器は挿入位置にあり、針12は、はっきりとスキンセンサー要素112を超えて延びている。この位置において、
図2ではその上端部のみが示されているパワーパック筐体64の突出部63がカムヘッド128に押し付けられてアーム124を変形させるように、パワーパックアセンブリが前方に移動している。アーム124の変形により、表面116が前方に移動する際の経路からフック126が外れる。
【0122】
装置が注射部位から取り外されると、スキンセンサーバネはスキンセンサー要素を前方に付勢する。アームが変形しているので、表面116はフック126を超えて移動することができる。そこで、スキンセンサー要素は、
図13dに示すように完全に延びた位置まで移動することができる。この位置で、スキンセンサー要素は再び針を覆う。スキンセンサー要素は、シャーシに保持されて、下部筐体の表面145に当接するスキンセンサー要素の表面117によって、さらに前方に移動しないようにされる。第2のラッチ要素144は、スキンセンサー要素112の開口118に係合して、スキンセンサー要素がスキンセンサーバネで後退しないようにする。第2のラッチ要素は、完全に延びた位置に移動すると、スキンセンサー要素の傾きのある表面119に乗り上げて開口118にはまり込むことができ、ここでスキンセンサー要素は完全に延びた位置にロックされる。
【0123】
薬物容器を保持解放するスキンセンサーのラッチメカニズムは、全て装置の対向する両側に配置される。これにより、装置の動作中に窓22が暗くならないようにすることができる。これにより、使用前に薬物を簡単に点検することができ、薬物送達の進行を窓22から観察することができる。
【0124】
図1~
図13に示す装置は、キャップが取り外される前の作動を防止するメカニズムを含む。
図14は、キャップ30の斜視図である。キャップは、成型プラスチック材料で形成されており、
図2に示すように下部本体の凹部142と係合するよう構成された突出部34を備える。直立した中央管は、
図2に示す針シールドを保持するフック32を備える。また、キャップは、
図3に示すように、キャップが装置に嵌ると外部筐体とシャーシとの間の空間に延びる舌部36を含む。
【0125】
図15は、
図3に示す装置の前端部の詳細図である。キャップの舌部36は、シャーシに形成された柔軟性のあるアーム部121に隣接していることがわかり、
図11によりはっきりと図示されている。柔軟性のあるアーム部121は、スキンセンサー要素112の後端部に当接する球状部123を備える。球状部123は、ラッチ122が薬物容器10を解放可能となる位置にスキンセンサー要素が後退しないようにする。そのため、キャップが下部筐体140に係合していると、本装置を作動させることができない。
【0126】
キャップが取り外されると、アーム121はスキンセンサー要素によって外側に押し出されて、スキンセンサーが後退する際に舌部36が開けた空間に押し込まれる。スキンセンサー要素および球状部123は、これがスムーズに行われるような形状をしている。下部筐体は、中にアーム123が屈折させられる開口141を含む。
【0127】
図16a~
図16gは、第1の実施形態の装置の動作シーケンスを示す。
図16a~
図16gは、
図2に類似であるがキャップが取り外された状態の断面図である。
【0128】
図16aは、キャップを取り外した直後でスキンセンサー要素を注射部位に押し付ける前の装置を示す。針シールドアセンブリが、キャップと一緒に取り外されていることがわかる。
【0129】
図16bは、スキンセンサー要素が押し戻された状態の装置を示す。下部筐体の第2のラッチ要素144は、スキンセンサーのさらに後方への移動を防止している。この位置では、シャーシのラッチ122は窓115の中に自由に屈曲できるが、屈曲していない。
【0130】
図16cは、挿入バネ61の伸長によって挿入位置に移動させられた薬物容器10とパワーパック筐体64とを示す。この位置では、針12が注射部位に挿入されている。第2の駆動要素80は、保持手段100の軸部108から離れている。これは、脚部87を押し付け合って、突起86をパワーパック筐体64の表面69から外すことができることを意味する。パワーパック筐体の突出部63は、注射部位から取り外されるとスキンセンサー要素112が完全に延びた位置まで前方に自由に移動できるように、ラッチアーム124を屈折させている。
【0131】
図16dは、パワーパック筐体から外れた状態の、駆動部材の第1の接点に封止ホイルを有する駆動部材を示す。駆動バネは、拡張して駆動部材を前方に付勢する。
【0132】
図16eに、さらに拡張した駆動バネと、さらに前に出た駆動部材とを示す。ホイルは破れており、プランジャーが薬物容器を移動してほとんどすべての薬物が放出されている。この時点では、第3の駆動要素は、薬物容器の後端部と係合し、第2の駆動要素に対して後退している。この位置において、駆動要素はもはや第2の駆動要素と係合しておらず、
図8および
図9を参照して説明したように、第2の駆動要素は第1の駆動要素に対して回転することができる。
【0133】
図16fは、前方の第2の駆動要素の方に駆動された第1の駆動要素を示し、第2の駆動要素が回転して薬物送達終了が音で示された状態を示している。プランジャーは、完全に前方位置にあり、意図された体積の薬物が放出されている。この時点では、ユーザは注射部位から装置を外すことができる。
【0134】
図16gは、注射部位から取り外された後の装置を示し、スキンセンサー要素が完全に延びた位置でロックされ針を覆っている状態を示している。
図13dを参照して説明したように、スキンセンサー要素は、シャーシに保持されて、下部筐体の表面145に当接するスキンセンサー要素の表面117によって、さらに前方に移動しないようにされる。第2のラッチ要素144は、スキンセンサー要素112の開口118に係合して、スキンセンサー要素がスキンセンサーバネで後退しないようにする。
【0135】
図2および
図16a~
図16cから、本装置の駆動部材70およびそのほかすべての要素が、封止ホイルが破れるときまで封止ホイル16から離れて保持される。使用前、駆動部材70は、封止ホイル16から所定の距離で保持される。パワーパック筐体64は薬物容器の両側に固定されて、封止ホイルには接触しない。動作の針挿入段階の間、封止ホイル16には触れられることがない。このような配置により、薬物容器が自己注射器の残りの部分に組み付けられる前に封止ホイルの試験を確実に行うことができ、その後封止ホイルは薬物送達まで触れられないことになる。これにより、送達前に薬物が汚染されるまたは損失する可能性が低減される。
【0136】
図17は、第1の実施形態の自己注射器の組み立てシーケンスを示す模式図である。ステップ150において、針12および針シールド50を含む薬物容器アセンブリ10に一回分の薬物とプランジャー14とが充填され、その後、封止ホイル16によって封止される。これは滅菌環境において行われる。これとは別に、ステップ152において、パワーパックアセンブリが駆動バネおよび挿入バネを圧縮状態で保持する保持手段に組みつけられる。ステップ154において、充填された薬物容器アセンブリがパワーパックアセンブリに嵌められ、下部パワーパック筐体が薬物容器10を挟み込む。ステップ156において、シャーシ、スキンセンサー要素、スキンセンサーバネ、および下部筐体を含む装置の前端部が組み立てられる。通常、キャップは、この段階で前端部アセンブリに連結されるが、これは独立したステップ157として示される。ステップ158において、前端部アセンブリは、薬物容器アセンブリおよびパワーパックアセンブリに連結される。薬物容器アセンブリは、シャーシのラッチアームにより保持される。ステップ160において、外部筐体がパワーパックアセンブリの上に配置され下部筐体140と係合する。外部筐体20のカム面25は、下部筐体の突起148が外部筐体に形成された凹部24と係合する直前に、保持手段100と係合して、保持手段を回転させてパワーパック筐体64との係合状態をはずす。挿入バネ61は、パワーパック筐体が保持手段から外れると少し拡張することができるようになるが、薬物容器10に係合するシャーシのラッチ122の作用により第2の圧縮状態で保持される。第2の圧縮状態においても、挿入バネは、薬物容器を挿入位置に押し付けることにより、針12の注射部位への挿入に十分なエネルギーを蓄積している。
【0137】
キャップ30は、通常、前端部アセンブリの組み立て中に下部筐体140に組み付けられるが、パワーパックと前部アセンブリとが組み合わされた後、または外部筐体が下部筐体に嵌った後に追加されてもよい。
図17のステップ157に、これらの選択肢を示す。
【0138】
ステップ162において、自己注射器は完全に組み立てられて使用の準備ができる。この製造シーケンスは、パワーパックアセンブリを他の要素から独立して製造可能であり、個別に輸送および保管することができるという利点がある。ステップ156,157,158,160は、非常に単純かつ簡単に自動化される。
【0139】
上記の第1の実施形態は、さらに、同じパワーパックアセンブリで、様々な薬物用の長さと形状が異なる外部筐体を使用することができるという利点を有する。保持手段を回転させてパワーパック筐体64から外す機能部25の製造には、保持手段の軸部108に要求されるものと同じ厳しい寸法上の許容誤差が必要とされない。したがって、特定の薬物用に独特な外見をもつ装置、または特定のブランドに関連付けられた装置を用意するために様々な外部筐体を提供することは簡単なことである。これにより、ユーザは自分が適切な装置を持っているかどうかを素早く認識することができる。また、例えば手先の器用さが制限されているなどといった、様々な特定の必要性をもつ様々なユーザグループに対応するために様々な外部筐体を提供することができる。
【0140】
図18は、本発明の第2の実施形態にかかる使用前の自己注射器201の斜視図である。自己注射器201は、自己注射器内部の薬物を調べることができるのぞき窓222を有する外部筐体220を備える。キャップ230が設けられて、装置の針挿入端部を覆い、また不注意による装置の作動を防止する。この自己注射器は、長さが約10cmと小型で使用者の手に容易になじむ。
【0141】
【0142】
図18、
図19、
図20に示す自己注射器201は、薬物容器アセンブリ(
図21に示す)と、パワーパック筐体264(
図27に示す)と駆動部材270と挿入および駆動バネ260,262とを含むパワーパックアセンブリと、ここではシャーシと呼ぶ内部筐体(
図23に示す)と、スキンセンサー要素(
図22に示す)およびスキンセンサーバネを含むスキンセンサーアセンブリと、下部筐体(
図26に示す)と、外部筐体と、キャップ(
図25に示す)とを備える。
【0143】
薬物容器アセンブリ210は、シャーシ320内に保持され、動作時にはシャーシ内部を移動する。薬物容器アセンブリ210は、シャーシのラッチ322によって初期位置に保持され、これらは薬物容器211を取り囲むクレードル215の突出部213と係合する。ラッチ322は、スキンセンサーアセンブリによりクレードルを解放しないようになっている。スキンセンサーアセンブリは、スキンセンサー要素312と、スキンセンサーバネ314とを備える。スキンセンサー要素は、シャーシ320のラッチ要素324によって保持され、シャーシ320とスキンセンサー要素312との間に保持されるスキンセンサーバネ314によって薬物容器アセンブリ210から離れる方向に付勢される。下部筐体340は、シャーシのT字型突出部328を留めることによりシャーシ320に係合する。下部筐体の窓部348は、外部筐体に形成された窓222と係合する。キャップ230は、下部筐体の流路342と係合し、スキンセンサー要素312を覆う。
【0144】
図21は、
図19および
図20に示す薬物容器アセンブリの斜視図である。薬物容器アセンブリは、薬物容器211と内部に薬物容器211を保持するクレードル要素とを備える。クレードルと薬物容器とは、別々の要素として形成されてもいいし、一体的に成型されてもよい。薬物容器211は、注射して患者に送達されることになる薬物を収容し、前端部には皮下注射針212が固定されている。第1の実施形態と同様に、薬物容器は、薬物に対する優れた接触特性を備える環状オレフィンで形成されている。クレードルはまた別の材料で形成されてもよく、好都合には成型用プラスチックで形成される。挟み込み機能部213および219が、クレードル215に形成される。
【0145】
プランジャー214は、薬物容器の内部に設けられている。薬物容器211でのプランジャー214の移動により、薬物が針212を通って外に押し出される。このプランジャーは、第1の実施形態で説明したものと同種のものであり、薬物容器の壁部との摩擦を低くし、プランジャーと薬物容器との間の静摩擦を最小限に抑えるよう設計されている。ここでも、薬物容器211の前端部の内表面は、使用中に薬物容器から押し出される薬物の量が最大となるよう、プランジャー214の前端部の形状に合う形状をしている。
【0146】
封止ホイル216は、薬物容器211の後端部に設けられており、薬物が確実に滅菌および手付かずの状態で保持および維持されるようにする。封止ホイル216は、薬物容器211の後端部に溶接されたアルミニウム層を含む積層ホイルであってもよい。
【0147】
第1の実施形態と同様に、皮下注射針212は薬物容器211の針ハブ部217に接着される。ただし、薬物容器は針の周囲に成型されてもよい。この針は、針212を滅菌状態に保つ針シールド250によって覆われている。第1の実施形態で説明したように、針シールド250は、針ハブ部217つきの封止を形成する硬質な外部筐体252を備える。弾性プラグ254が、針212の前端部が挿入される針シールド内に設けられている。弾性プラグは、針を封止し、針シールドを取り外す前に針から薬物が漏れないようにする。針シールドの硬質な外部筐体252は、自己注射器の組み立て中に針の検査ができるように、透明であってもよい。針シールド外部筐体252の前端部は、
図19に示すように、キャップ230の中のフック232と係合するよう構成された球状部256を備える。これにより、キャップ230が取り外されるときに、針シールドが確実に一緒に取り外されるようになる。
【0148】
針シールドによる針ハブの封止は、第1の実施形態で説明し
図5に図示したものと同じやりかたで、締まりばめを用いて実現される。
【0149】
第1の実施形態と同様に、
図18~
図20に示す自己注射器は、針を注射部位に挿入し、薬物を針から注射部位へ放出する自動メカニズムを備える。本明細書では、この自動メカニズムをパワーパックアセンブリと呼ぶ。パワーパックアセンブリは、圧縮バネ260,262の形をとる蓄積エネルギー源を備える。挿入バネと呼ばれる第1のバネ260が解放されると、このバネにより薬物容器アセンブリ210が自己注射器の筐体内を移動して針212を注射部位に挿入する。その後、送達バネと呼ばれる第2のバネ262が解放されると、プランジャー214が薬物容器211内を移動して薬物を注射する。バネ260,262およびパワーパックアセンブリ内でバネを解放するシーケンスを制御するメカニズムは、薬物容器アセンブリの後方に位置している。
【0150】
パワーパックは、
図22に示す、薬物容器アセンブリ210に連結されたパワーパック筐体264を備える。パワーパック筐体264は、クレードル215の機能部219を挟むアーム265を有する。
図19および
図20では自己注射器の使用前の圧縮状態で図示される挿入バネ260は、パワーパック筐体264と外部筐体220との間に位置している。後述するように、薬物容器アセンブリがシャーシのラッチ322から解放されると、薬物容器アセンブリは挿入バネ260が伸長することで押されて、シャーシ内を前方の挿入位置に自由に移動するようになる。
【0151】
駆動バネ262は、パワーパック筐体264と駆動部材270との間に位置している。初期位置において、駆動部材270の突出部272がパワーパック筐体の表面267に係合することにより、駆動バネの拡張が防止されている。
【0152】
後述するように、駆動部材270は、封止ホイル216を破る補助をし、使用時にはプランジャーと係合する鋸歯を有する前端部表面276を備える。また、駆動部材270は、突出部272がパワーパック筐体と係合してロック面226から外れないように、主筐体20の一部である(または固く固定された)ロック面226により外側に向って押される弾性脚部274を有する。このように、駆動バネ262は圧縮状態でロックされて、突出部272が表面267から解放されるまでパワーパック筐体264とともに移動する。
【0153】
パワーパック筐体が挿入位置まで移動するとき、駆動部材はロック面226を超えて移動している。この時点では、ロック面がもはや脚部274の間にはないため、脚部274が押し付け合って駆動部材がパワーパック筐体の表面267から外れることができるようになる。そして、駆動部材は、駆動バネ262によって前方に移動し、封止ホイル216を破り薬物容器211の中のプランジャー214を押して、針212を介して薬物を出す。
【0154】
第1の実施形態と同様に、第2の実施形態において、スキンセンサーアセンブリは、薬物容器の前方に設けられており、使用の前後に針を覆い、またキャップを取り外して注射部位に自己注射器を押し付けるだけで作動できるようにするものである。
【0155】
スキンセンサーアセンブリは、スキンセンサー要素312と、スキンセンサーバネ314とを備える。スキンセンサーバネ314は、スキンセンサー要素とシャーシとの間に保持される。これは、
図19から明らかである。動作時には、このスキンセンサー要素は、シャーシ320と相互作用する。
【0156】
図23は、第2の実施形態のスキンセンサー要素の斜視図である。スキンセンサー要素は、使用時に注射部位に接触し、針の挿入中にその針を通す開口を有する前表面313を備える。開口315は、スキンセンサー要素が後退位置にあるときはシャーシのラッチ322と揃うように設けられ、ラッチが外側に向って屈折して機能部213から外れるようにし、薬物容器を解放する。フック316は、初期位置においてシャーシと係合するよう設けられ、スキンセンサーバネにより加えられた力に対してスキンセンサー要素を保持する。表面317は、シャーシが当接するよう設けられ、スキンセンサー要素が完全に延びた位置におかれたときにシャーシが後退することを防止する。支えアーム318により、機械的剛性が得られる。
【0157】
図24は、第2の実施形態のシャーシの斜視図である。シャーシは、プラスチック材料から形成されている。また、シャーシは、基本的に管状であり、薬物容器アセンブリが軸方向に運動することができる中央穴部を有する。シャーシは、直径が小さくなった前端部332を有し、薬物容器アセンブリはこの前端部を超えて移動することができない。シャーシは、前端部に、径方向内側に延びるカンチレバーアーム334を含む。薬物容器アセンブリは、カンチレバーアームに接触して、挿入位置へ移動する際にこれを本明細書では軸方向とも呼ぶ挿入方向に屈折させる。カンチレバーアームの屈折により、挿入位置に到達すると薬物容器アセンブリは減速し、シャーシからスキンセンサーバネとスキンセンサーとを介して注射部位に加えられる力が低減される。カンチレバーアーム334は、シャーシの前端部の残りの部分と同じ高さになる前に屈折させるために、その固定端から自由端に向けて後方に延びるよう構成される。
【0158】
シャーシは、スキンセンサー要素のフック316に係合するラッチ要素324を備える。ラッチ要素324は、その固定端から後方に軸方向からオフセットした角度で延びる弾力性のあるアームである。ラッチ要素は、パワーパックアセンブリのカム機能部269により屈折して、スキンセンサーが伸長位置に移動するとフック316が通過することができるようにする。シャーシは、その固定端から前方に向って延びる弾力性のあるアームであるロックアーム326を備える。ロックアームは、屈折してスキンセンサーが後退位置から伸長位置まで移動するとスキンセンサー要素が通過することができるようにするが、スキンセンサーが完全に延びた位置へ到達すると表面317がロックアーム326を後方に超えないよう構成される。
【0159】
図25a~
図25cは、スキンセンサーアセンブリの動作シーケンスを示す図であり、外部筐体とキャップとが取り外された本装置の側面図である。
図25は、使用前の本装置を示す。スキンセンサー要素312は、ラッチ要素324によりスキンセンサーバネの作用に対抗して保持されている。具体的には、スキンセンサー要素のフック316は、ラッチ要素324と係合している。
【0160】
図25bは、スキンセンサー要素が注射部位に押し付けられてパワーパックが前方に移動する場合になるように、押し戻されたスキンセンサー要素312を示す。この位置では、フック316は、表面ラッチ要素324から離れている。ここで、開口315は、シャーシのラッチ322の位置に合わさっている。
図25bに示す位置において、ラッチ322は、スキンセンサー要素の開口315に押し出されるため、もはや薬物容器アセンブリ210を保持していない。したがって、薬物容器311は前方に移動しており、挿入バネ261が拡張してパワーパックアセンブリと薬物容器を挿入位置に移動させる。
【0161】
パワーパックアセンブリが前方に移動して挿入位置に到達するため、カムリッジ269はラッチ要素324に係合して、図に示すように軸方向に延びるように、ラッチ要素を屈折させる。
【0162】
装置が注射部位から取り外されると、スキンセンサーバネ314はスキンセンサー要素312を前方に付勢する。ラッチアーム324が屈折しているので、スキンセンサー要素が前方に移動すると、フック316がラッチ要素324を通すことができる。そこで、スキンセンサー要素312は、
図25cに示すように完全に延びた位置まで移動することができる。この位置で、スキンセンサー要素は再び針を覆う。スキンセンサー要素は、シャーシに保持されて、支えアーム318が下部筐体340(
図25cには図示せず)の一部に係合することにより、さらに前方に移動しないようにされる。ロックアーム326は、屈折してスキンセンサーが後退位置から伸長位置まで移動するとスキンセンサー要素が通過することができるようにするが、スキンセンサー要素が後退位置に押し戻されてスキンセンサー要素が伸長位置にロックされると、表面317はロックアーム326に係合する。
【0163】
図26は、第2の実施形態の下部筐体の斜視図である。下部筐体340は、透明プラスチック材料から形成され、窓部348を含む。下部筐体は、スキンセンサーおよびシャーシの上に嵌るが、部分的に外部筐体の内部に配される。窓部348は、外部筐体に形成された窓222と係合する盛り上がった外枠を有している。下部筐体340は、シャーシのT字型突出部328が入る開口344により、シャーシ320と係合する。下部筐体には、流路342が設けられてキャップ330と係合する。
【0164】
図27は、第2の実施形態のキャップの斜視図である。キャップ230は、
図19に示す、角度をつけて離間し、押し込んで針シールド250の球状部256と係合することができる、3つの内側に突出するフック232を含む中央円筒管部を有する。これにより、装置使用の際に、針シールドからキャップが確実に取り外される。また、キャップは、キャップの外周に等しく離間し、下部筐体340と係合するよう構成された、3つの内側に突出する突起234を有する。キャップを取り外すには、ユーザは単にキャップをつかんで2本の指で押さえ、キャップを下部筐体から引っ張るだけでよい。等しく離間した3つの突起の使用により、ユーザがキャップを径方向に押さえつけると、キャップが押さえつけられる方向に関わらず、これらの突起のうち少なくとも2つが確実に外側に移動して下部筐体から外れる。これにより、キャップの簡単な取り外しが保証される。
【0165】
図28a~
図28eは、動作シーケンスを説明する第2の実施形態の断面図である。
図28aは、キャップを取り外した直後でスキンセンサー要素を注射部位に押し付ける前の装置を示す。針シールドアセンブリが、キャップと一緒に取り外されていることがわかる。
【0166】
図28bは、スキンセンサー要素312が押し戻されてスキンセンサーバネ314が圧縮された状態の装置を示す。スキンセンサー要素の支えアーム318はシャーシに当接して、スキンセンサー要素のさらに後方への移動を防止している。この位置では、シャーシのラッチ322は窓315の中に自由に屈曲できる。
【0167】
図28cは、挿入バネ261の伸長によって挿入位置に移動させられた薬物容器211とパワーパック筐体264とを示す。この位置では、針212が注射部位に挿入されている。駆動部材270は、外部筐体のロック面226から離れている。これは、脚部274を押し付け合って、突起272をパワーパック筐体264の表面267から外すことができることを意味する。駆動バネ262は自由に拡張することができる。パワーパック筐体のカム突出部269は、注射部位から取り外されるとスキンセンサー要素312が完全に延びた位置まで前方に自由に移動できるように、ラッチ要素324を屈折させている。
【0168】
図28dに、拡張した駆動バネ262を示す。封止ホイル216は破れており、プランジャー214が薬物容器を移動して薬物が放出されている。
【0169】
図28eは、注射部位から取り外された後の装置を示し、スキンセンサー要素が完全に延びた位置でロックされ針を覆っている状態を示している。スキンセンサー要素は、シャーシに保持されて、支えアーム318が下部筐体340の一部に係合することによって、さらに前方に移動しないようにされる。ロックアーム316は、屈折してスキンセンサー要素が伸長位置までスキンセンサーを通ることができるようするが、表面317は伸長位置でスキンセンサー要素をロックし、スキンセンサー要素の後退を防止する。
【0170】
図29は、本発明の第2の実施形態にかかる自己注射器の組み立てプロセスを示す模式図である。ステップ350において、針212および針シールド250を含む薬物容器アセンブリ210に一回分の薬物とプランジャー214とが充填され、その後、封止ホイル216によって封止される。これは滅菌環境において行われる。これとは別に、ステップ352において、パワーパックアセンブリが外部筐体に組みつけられる。ステップ354において、充填された薬物容器アセンブリがパワーパックアセンブリに嵌められる。ステップ356において、シャーシ、スキンセンサー要素、スキンセンサーバネ、および下部筐体を含む装置の前端部が組み立てられる。パワーパック筐体は、ロックアーム266を含み、これは外部筐体の開口部224に入って挿入バネを第1の圧縮状態に保持する。ロック面226は、駆動部材270に係合して駆動バネを圧縮状態に保持する。
【0171】
ステップ358において、前端部アセンブリは、薬物容器アセンブリ、パワーパックアセンブリ、および外部筐体に連結される。薬物容器アセンブリは、シャーシのラッチアームにより保持される。下部筐体の窓部348は、外部筐体の窓222に挟まれる。窓部が外部筐体の窓と完全に係合する係合位置に向って下部筐体が移動すると、シャーシ320はパワーパック筐体のアーム266に係合してアームを開口部224内に移動させる。このメカニズムを
図30に示す。
【0172】
シャーシは、後端部にロックアーム266の対応するカム面267に係合するカム面336を含む。シャーシおよびパワーパックが互いに向かって移動すると、シャーシのカム面267がロックアームを内側に屈折させて外部筐体220から外れるようにする。挿入バネ260は、この時点で少し拡張することができるようになるが、その後下部筐体340が外部筐体に係合するとすぐに第2の圧縮状態で保持される。シャーシのラッチ322は薬物容器アセンブリ210に係合し、シャーシ320が下部筐体に固定され、下部筐体は外部筐体に固定される。したがって、挿入バネは、ラッチ322が薬物容器から解放されるまでは拡張することができない。第2の圧縮状態においても、挿入バネは、ラッチ322が解放されたときに薬物容器を挿入位置に押し付けることにより、針12の注射部位への挿入に十分なエネルギーを蓄積している。これらの要素は、窓部348が窓222をロックする直前の一瞬の間にロックアーム266が外部筐体から外れるよう構成されている。
【0173】
キャップ30は、通常、前端部アセンブリの組み立て中に下部筐体340に組み付けられるが、パワーパックと前部アセンブリとが組み合わされた後、または外部筐体が下部筐体に嵌った後に追加されてもよい。
図29のステップ357に、これらの選択肢を示す。
図29に示すプロセスの代替案として、薬物容器アセンブリは、パワーパックおよび外部筐体に連結される前に前端部アセンブリに組み付けられてもよい。この組み立てプロセスは、ステップ360で終了する。