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特開2023-16495情報処理装置、飽き評価方法および飽き評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016495
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】情報処理装置、飽き評価方法および飽き評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230126BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120841
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘高
(72)【発明者】
【氏名】坪田 孝志
(72)【発明者】
【氏名】石田 元彦
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】飽きのこない商品開発の支援を実現すること。
【解決手段】情報処理装置は、味覚に対応する部位から第1の時点で測定される第1の脳波データおよび部位から第1の時点よりも後の第2の時点で測定される第2の脳波データを取得する取得部と、第1の脳波データで第1の変化の後に観測される第2の変化と、第2の脳波データで観測される第2の変化との不一致度に基づいて、第1の脳波データおよび第2の脳波データの測定時に摂取された対象物の味への飽きの度合いを評価する評価部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
味覚に対応する部位から第1の時点で測定される第1の脳波データおよび前記部位から前記第1の時点よりも後の第2の時点で測定される第2の脳波データを取得する取得部と、
前記第1の脳波データで第1の変化の後に観測される第2の変化と、前記第2の脳波データで観測される第2の変化との不一致度に基づいて、前記第1の脳波データおよび前記第2の脳波データの測定時に摂取された対象物の味への飽きの度合いを評価する評価部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記第1の脳波データおよび前記第2の脳波データの間で、前記第1の変化が観測されてから第2の変化が観測されるまでの時間差が拡大する度合いに応じて前記対象物の味への飽きの度合いを評価する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記評価部は、脳波データおよび味覚刺激が与えられる刺激発生タイミングを入力として前記第1の変化が開始する第1のタイミングを出力する第1の機械学習モデルを用いて前記第1の脳波データにおける前記第1のタイミングおよび前記第2の脳波データにおける前記第1のタイミングを検出すると共に、脳波データおよび味覚刺激が与えられる刺激発生タイミングを入力として前記第2の変化が開始する第2のタイミングを出力する第2の機械学習モデルを用いて前記第1の脳波データにおける前記第2のタイミングおよび前記第2の脳波データにおける前記第2のタイミングを検出し、前記第1の脳波データにおける前記第1のタイミングおよび前記第2のタイミングの時間差に対する、前記第2の脳波データにおける前記第1のタイミングおよび前記第2のタイミングの時間差の拡大度合いに応じて前記対象物の味への飽きの度合いを評価する、
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記評価部は、前記第1の脳波データおよび前記第2の脳波データの間で、前記第2の変化に対応する振幅または特定の周波数成分の強度が変動する度合いに応じて前記対象物の味への飽きの度合いを評価する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記評価部は、前記第1の脳波データにおける前記第2の変化時の複数の周波数成分の強度比と、前記第2の脳波データにおける前記第2の変化時の複数の周波数成分の強度比との変動度合いに応じて前記対象物の味への飽きの度合いを評価する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記対象物が有する味質の値のパターンを変化させることにより作成された複数の開発バリエーションごとに前記開発バリエーションに対応する対象物の摂取時に測定された第1の脳波データおよび第2の脳波データを取得し、
前記評価部は、前記複数の開発バリエーションのうち、前記第1の脳波データにおける前記第2の変化および前記第2の脳波データにおける前記第2の変化との不一致度が最大である開発バリエーションを除外する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記対象物が有する味質の値のパターンを変化させることにより作成された複数の開発バリエーションごとに前記開発バリエーションに対応する対象物の摂取時に測定された第1の脳波データおよび第2の脳波データを取得し、
前記評価部は、前記複数の開発バリエーションのうち、前記第1の脳波データにおける前記第2の変化および前記第2の脳波データにおける前記第2の変化との不一致度が閾値以上である開発バリエーションを除外する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記対象物が有する味質の値のパターンを変化させて作成された複数の開発バリエーションごとに前記開発バリエーションに対応する商品の摂取時に測定された複数の第1の脳波データを取得し、
前記評価部は、前記複数の開発バリエーションのうち、前記複数の第1の脳波データの間で前記第2の変化が最小である開発バリエーションを抽出する、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記複数の開発バリエーション別の前記複数の第1の脳波データを複数の対象者ごとに取得し、
前記評価部は、前記複数の対象者ごとに前記複数の開発バリエーションのうち前記複数の第1の脳波データの間で前記第2の変化が最小である開発バリエーションを抽出し、前記複数の対象者ごとに抽出された開発バリエーションの間で味質に対応する味物質の数値の統計値を前記味質ごとに算出することにより開発対象とする商品に関する標準の味質パターンを生成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
味覚に対応する部位から第1の時点で測定される第1の脳波データおよび前記部位から前記第1の時点よりも後の第2の時点で測定される第2の脳波データを取得し、
前記第1の脳波データで第1の変化の後に観測される第2の変化と、前記第2の脳波データで観測される第2の変化との不一致度に基づいて、前記第1の脳波データおよび前記第2の脳波データの測定時に摂取された対象物の味への飽きの度合いを評価する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする飽き評価方法。
【請求項11】
味覚に対応する部位から第1の時点で測定される第1の脳波データおよび前記部位から前記第1の時点よりも後の第2の時点で測定される第2の脳波データを取得し、
前記第1の脳波データで第1の変化の後に観測される第2の変化と、前記第2の脳波データで観測される第2の変化との不一致度に基づいて、前記第1の脳波データおよび前記第2の脳波データの測定時に摂取された対象物の味への飽きの度合いを評価する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする飽き評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、飽き評価方法および飽き評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料の商品開発には、甘味や酸味、塩味、うま味、苦味などの五味を始めとする味質を数値化する味覚センサが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-212772号公報
【特許文献2】特開2020-149452号公報
【特許文献3】特表2007-530053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の味覚センサは、飽きのこない商品開発を支援する点において改善の余地がある。例えば、上記の味覚センサは、商品等の味を数値化することにより美味しい商品を開発することは支援できても、その商品に飽きが来にくいかどうかまで評価することは難しい。それ故、上記の味覚センサを用いてたとえ美味しい商品が開発できたとしてもその商品が飽きのきやすい商品である場合、一過性の需要しか期待できず、継続的な需要を喚起することは難しい。
【0005】
そこで、一つの側面では、飽きのこない商品開発の支援を実現できる情報処理装置、飽き評価方法および飽き評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面にかかる情報処理装置は、味覚に対応する部位から第1の時点で測定される第1の脳波データおよび前記部位から前記第1の時点よりも後の第2の時点で測定される第2の脳波データを取得する取得部と、前記第1の脳波データで第1の変化の後に観測される第2の変化と、前記第2の脳波データで観測される第2の変化との不一致度に基づいて、前記第1の脳波データおよび前記第2の脳波データの測定時に摂取された対象物の味への飽きの度合いを評価する評価部と、を有する。
【0007】
一側面にかかる飽き評価方法では、味覚に対応する部位から第1の時点で測定される第1の脳波データおよび前記部位から前記第1の時点よりも後の第2の時点で測定される第2の脳波データを取得し、前記第1の脳波データで第1の変化の後に観測される第2の変化と、前記第2の脳波データで観測される第2の変化との不一致度に基づいて、前記第1の脳波データおよび前記第2の脳波データの測定時に摂取された対象物の味への飽きの度合いを評価する、処理をコンピュータが実行する。
【0008】
一側面にかかる飽き評価プログラムは、味覚に対応する部位から第1の時点で測定される第1の脳波データおよび前記部位から前記第1の時点よりも後の第2の時点で測定される第2の脳波データを取得し、前記第1の脳波データで第1の変化の後に観測される第2の変化と、前記第2の脳波データで観測される第2の変化との不一致度に基づいて、前記第1の脳波データおよび前記第2の脳波データの測定時に摂取された対象物の味への飽きの度合いを評価する、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態によれば、飽きのこない商品開発の支援を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】脳の部位の一例を示す模式図である。
図3】飽きの度合いの評価方法1の一例を示す図である。
図4】飽きの度合いの評価方法2の一例を示す図である。
図5】脳波データの周波数成分の一例を示す図である。
図6】飽きの度合いの評価方法3の一例を示す図である。
図7】飽き評価処理の手順を示すフローチャートである。
図8】ハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本願に係る情報処理装置、飽き評価方法および飽き評価プログラムの実施形態について説明する。各実施形態には、あくまで1つの例や側面を示すに過ぎず、このような例示により数値や機能の範囲、利用シーンなどは限定されない。そして、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0012】
(利用シーン)
図1は、情報処理装置10の機能構成例を示すブロック図である。図1に示す情報処理装置10は、飽きのこない商品開発を支援する側面から、開発対象とする商品の味への飽きの度合いを評価する飽き評価機能を提供するものである。
【0013】
例えば、情報処理装置10は、上記の飽き評価機能を実現する飽き評価プログラムを任意のコンピュータに実行させることにより実現できる。一例として、情報処理装置10は、上記の飽き評価機能をオンプレミスに提供するサーバとして実現することができる。他の一例として、情報処理装置10は、SaaS(Software as a Service)型のアプリケーションとして実装することで、上記の飽き評価機能に対応するサービスをクラウドサービスとして提供することもできる。
【0014】
図1に示すように、情報処理装置10は、ネットワークNWを介して、センサ装置30およびユーザ端末50と通信可能に接続され得る。例えば、ネットワークNWは、有線または無線を問わず、インターネットやLAN(Local Area Network)などの任意の種類の通信網であってよい。
【0015】
センサ装置30の例として、脳波データを測定する脳波測定装置が挙げられる。例えば、センサ装置30は、ヘッドセット型、あるいはイヤホン型などの脳波測定装置により実現されてよい。あくまで一例として、センサ装置30は、開発対象とする食品や飲料などの商品を摂取する被験者に装着され得る。例えば、被験者の例として、自身の感覚を通じて味の評価、いわゆる官能試験を実施する検査員などが挙げられる。なお、被験者は、必ずしも官能試験などの特定の資格を有さずともよく、商品開発に参加する関係者全般であってよい。
【0016】
図2は、脳の部位の一例を示す模式図である。図2には、味覚情報の伝播経路が矢印により示されている。図2に示すように、口腔粘膜に存在する味蕾からの味覚情報は、味覚神経、延髄孤束核、視床味覚野、大脳皮質味覚野(第一次味覚野)の順に上行する。大脳皮質の各感覚野では、食物の摂取、咀嚼、嚥下に際しての味覚、嗅覚、口腔粘膜、顎関節や歯の感覚、視覚、聴覚などの感覚情報が分析され得る側面がある。このような側面から、味覚に対応する部位の例として、センサ装置30の装着時には、図2に示す大脳皮質味覚野に対応する位置に基準電極や探査電極などの電極が配置されるセンサ装置30が大脳皮質味覚野における脳活動の測定に用いられる。これはあくまで一例であり、味覚に対応する部位として、大脳皮質味覚野、大脳皮質連合野および扁桃体のうち少なくとも1つ以上の部位が測定対象とされてよい。
【0017】
例えば、センサ装置30は、開発対象とする商品の摂取時における被験者の脳波データの測定に用いられる。商品の摂取時には、味覚刺激に対する知覚および認識に対応する脳波波形の変化を含む脳波データが測定される。さらに、センサ装置30には、当該センサ装置30により測定される脳波データを他の装置、例えば情報処理装置10などへ伝送する通信機能も搭載され得る。この場合、センサ装置30は、IoT(Internet of Things)デバイスとしても機能し得る。このようなセンサ装置30を介して、情報処理装置10には、被験者の脳波データが収集される。
【0018】
ここで、情報処理装置10には、複数の時点の各々に対応する複数の脳波データが収集される。あくまで一例として、情報処理装置10には、第1の時点で測定される第1の脳波データと、第1の時点よりも後の第2の時点で測定される第2の脳波データとが収集される。例えば、第1の時点は、開発対象とする商品の試食回数が第1の閾値、例えば3回未満である時点に行われる試食であってよい。一方、第2の時点は、開発対象とする商品の試食回数が第2の閾値、例えば10回以上である時点に行われる試食であってよい。なお、ここでは、あくまで一例として、第1の時点および第2の時点が試食回数の閾値により定義される例を挙げたが、これに限らず、咀嚼回数、嚥下回数、あるいは期間などにより定義されることとしてもよい。
【0019】
ユーザ端末50は、上記の飽き評価機能の提供を受けるコンピュータの一例である。あくまで一例として、ユーザ端末50は、商品開発に参加する関係者などをユーザとし、商品開発の支援に利用され得る。例えば、ユーザ端末50には、パーソナルコンピュータなどのデスクトップ型のコンピュータなどが対応し得る。これはあくまで例示に過ぎず、ユーザ端末50は、ラップトップ型のコンピュータや携帯端末装置、ウェアラブル端末などの任意のコンピュータであってよい。
【0020】
なお、図1には、上記の飽き評価機能に対応するサービスがクライアントサーバシステムで提供される例を挙げるが、この例に限定されず、スタンドアロンで上記のサービスが提供されることとしてもよい。
【0021】
(情報処理装置10の機能構成)
図1には、情報処理装置10が有する機能に対応するブロックが模式化されている。図1に示すように、情報処理装置10は、通信インタフェイス部11と、記憶部13と、制御部15とを有する。なお、図1には、上記の飽き評価機能に関連する機能部が抜粋されているに過ぎず、図示以外にも既存のコンピュータがデフォルトまたはオプションで装備する機能部が情報処理装置10に備わることとしてもよい。
【0022】
通信インタフェイス部11は、情報処理装置10と、他の装置、例えばセンサ装置30やユーザ端末50との間の通信を制御する通信制御部の一例に対応する。あくまで一例として、通信インタフェイス部11は、LANカードなどのネットワークインタフェイスカードにより実現され得る。例えば、通信インタフェイス部11は、センサ装置30から被験者の脳波データを受け付けたり、また、ユーザ端末50から開発対象とする商品の評価リクエストを受け付けたりする。また、通信インタフェイス部11は、商品の評価結果をユーザ端末50へ出力する。
【0023】
記憶部13は、各種のデータを記憶する機能部である。あくまで一例として、記憶部13は、ストレージ、例えば内部、外部または補助のストレージにより実現される。例えば、記憶部13は、第1の脳波データ13Aと、第2の脳波データ13Bとを記憶する。これら第1の脳波データ13Aおよび第2の脳波データ13B以外にも、記憶部13には、五味、脂味および辛味などのうちいずれか1つ以上の味質に関する商品のレーダチャートなどの他のデータが記憶されることを妨げない。
【0024】
第1の脳波データ13Aおよび第2の脳波データ13Bは、いずれも被験者の脳波データである。ここで言う「脳波データ」とは、脳波に対応する電気信号の波形、例えば信号強度の時系列データを指す。
【0025】
以下、脳波データのあくまで一例として、センサ装置30により測定される脳波のオリジナル波形を用いる例を挙げるが、周波数解析や独立成分分析などにより得られる解析結果、例えばパワースペクトルや周波数帯域別の時間波形が用いられることとしてもよい。
【0026】
上述の通り、第1の脳波データ13Aは、開発対象とする商品の試食回数が第1の閾値、例えば3回未満である時点に行われる試食で測定される脳波データである。その一方で、第2の脳波データ13Bは、開発対象とする商品の試食回数が第2の閾値、例えば10回以上である時点に行われる試食で測定される脳波データである。
【0027】
これら第1の脳波データ13Aおよび第2の脳波データ13Bのペアは、同一の被験者から測定される。例えば、記憶部13には、1人以上の任意の自然数であるM人分の被験者の第1の脳波データ13Aおよび第2の脳波データ13Bのペアが保存されてよい。
【0028】
制御部15は、情報処理装置10の全体制御を行う処理部である。例えば、制御部15は、ハードウェアプロセッサが実行するプロセスにより実現され得る。図2に示すように、制御部15は、取得部15Aと、評価部15Bと、出力部15Cとを有する。
【0029】
取得部15Aは、被験者の脳波データを取得する処理部である。1つの側面として、センサ装置30から取得された脳波データが第1の時点で測定された脳波データである場合、取得部15Aは、センサ装置30から取得された脳波データを記憶部13に記憶される第1の脳波データ13Aに追加する。他の側面として、センサ装置30から取得された脳波データが第2の時点で測定された脳波データである場合、取得部15Aは、センサ装置30から取得された脳波データを記憶部13に記憶される第2の脳波データ13Bに追加する。このように脳波データが記憶部に保存する際、取得部15Aは、開発対象とする商品の識別情報や被験者の識別情報、被験者の試食回数などの情報を第1の脳波データや第2の脳波データに関連付けることができるのは言うまでもない。
【0030】
評価部15Bは、開発対象とする商品の味への飽きの度合いを評価する処理部である。一実施形態として、評価部15Bは、ユーザ端末50から開発対象とする商品の評価リクエストを受け付けることができる。例えば、評価リクエストの受付時には、開発対象とする商品の指定、例えば商品の識別情報の指定の他、被験者の人数の指定などを受け付けることができる。これにより、どの商品を評価するのか、さらには、どのような人数の被験者で評価するのかを指定させることができる。続いて、評価部15Bは、記憶部13に記憶された第1の脳波データ13Aおよび第2の脳波データ13Bのうち、評価リクエストで指定された被験者の人数M人の分の第1の脳波データおよび第2の脳波データを取得する。
【0031】
その上で、評価部15Bは、M人の被験者ごとに、第1の脳波データおよび第2の脳波データの間で知覚に対応する変化の後に観測される認知に対応する変化の不一致度に基づいて開発対象とする商品の味への飽きの度合いを評価する。ここで言う「知覚」とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、体性感覚、平衡感覚など、それぞれの感覚情報をもとに、対象物や事象を自覚することを指す。1つの側面として、知覚は、刺激後に現れる第1の脳波変化として測定され得る。また、「認知」とは、知覚を行ったのちに、状況を判断・理解・解釈することを指す。1つの側面として、認知は、第1の脳波変化に引き続いて起こる第2の脳波変化として測定され得る。以下、脳波の波形上で観測される波形の変化であって知覚に対応する変化のことを「知覚変化」と記載する一方で、認知に対応する変化のことを「認知変化」と記載する場合がある。
【0032】
1つの側面として、評価部15Bは、第1の脳波データおよび第2の脳波データの間で知覚変化が観測されてから認知変化が観測されるまでの時間差が拡大する度合いを評価する。以下、知覚変化が開始するタイミングおよび認知変化が開始するタイミングの各々のことを「知覚変化開始タイミング」および「認知変化開始タイミング」と記載する場合がある。
【0033】
ここで、知覚変化および認知変化の検出には、既知の任意のアルゴリズムを用いることができるが、あくまで一例として、事象関連電位に基づいて知覚変化が開始するタイミングおよび認知変化が開始するタイミングを検出することができる。例えば、知覚変化の検出には、味覚刺激によって惹起される味覚誘発電位を用いることができる。さらに、認知変化の検出には、刺激から300ms後のPositive電位変化、いわゆるP300を用いることができる。
【0034】
このように事象関連電位に基づいて知覚変化および認知変化を検出する場合、評価部15Bは、被験者に味覚刺激が与えられるタイミングを補助情報として用いることができる。以下、被験者に味覚刺激が与えられるタイミングのことを「刺激発生タイミング」と記載する場合がある。例えば、被験者による試食の様子が撮影される画像から、画像処理により、被験者が商品の試食で咀嚼を開始するタイミングを刺激発生タイミングとして検出することができる。この他、被験者自身に刺激発生タイミングを操作入力させたり、被験者による試食を監視する監視員などに刺激発生タイミングを操作入力させたりすることもできる。
【0035】
あくまで一例として、知覚変化が開始するタイミングおよび認知変化が開始するタイミングは、次のような機械学習モデルを生成することにより実現できる。以下、知覚変化が開始するタイミングおよび認知変化が開始するタイミングの各々のことを「知覚変化開始タイミング」および「認知変化開始タイミング」と記載する場合がある。これら知覚変化開始タイミングおよび認知変化開始タイミングは、あくまで一例として、刺激発生タイミングからの経過時間として表現することができる。
【0036】
例えば、第1の脳波データおよび刺激発生タイミングを入力として知覚変化開始タイミングを出力する機械学習モデルを生成する場合を例に挙げる。この場合、機械学習モデルの訓練には、第1の脳波データおよび刺激発生タイミングと、正解ラベルの知覚変化開始タイミングとが対応付けられた訓練データを含むデータセットを用いることができる。このようなデータセットの下、学習フェイズでは、第1の脳波データおよび刺激発生タイミングを機械学習モデルの説明変数とし、ラベルを機械学習モデルの目的変数とし、任意の機械学習のアルゴリズム、例えばディープラーニングなどにしたがって機械学習モデルを訓練できる。これにより、訓練済みの機械学習モデルが得られる。このような訓練済みの機械学習モデルによれば、第1の脳波データおよび刺激発生タイミングが入力された場合、知覚変化開始タイミングを出力することができる。なお、第1の脳波データおよび刺激発生タイミングを入力として認知変化開始タイミングを出力する機械学習モデルも、上記の訓練方法と同様にして生成することができる。さらに、第2の脳波データおよび刺激発生タイミングを入力として知覚変化開始タイミングまたは認知変化開始タイミングを出力する機械学習モデルも、上記の訓練方法と同様にして生成することができる。
【0037】
図3は、飽きの度合いの評価方法1の一例を示す図である。図3には、第1の脳波データのうち知覚変化に対応する部分の波形WA1と認知変化に対応する部分の波形WA2が模式的に示されている。さらに、波形WA1には、知覚変化開始タイミングT3A1が示されると共に、波形WA2には、認知変化開始タイミングT3A2が示されている。この場合、評価部15Bは、第1の脳波データから、知覚変化開始タイミングT3A1および認知変化開始タイミングT3A2の差、例えばT3A2-T3A1を計算することにより、第1の時間差TL1を算出できる。
【0038】
さらに、図3には、第2の脳波データのうち知覚変化に対応する部分の波形WB1と認知変化に対応する部分の波形WB2が模式的に示されている。さらに、波形WB1には、知覚変化開始タイミングT3B1が示されると共に、波形WB2には、認知変化開始タイミングT3B2が示されている。この場合、評価部15Bは、第2の脳波データから、知覚変化開始タイミングT3B1および認知変化開始タイミングT3B2の差、例えばT3B2-T3B1を計算することにより、第2の時間差TL2を算出できる。
【0039】
その上で、評価部15Bは、第1の時間差TL1に対する第2の時間差TL2の拡大度合いを算出する。このような第2の時間差TL2の拡大度合いは、試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いに関連し得る。すなわち、第2の時間差TL2の拡大は、味覚刺激に対する認知変化の鈍化を意味すると言える。このため、評価部15Bは、第1の時間差TL1に対する第2の時間差TL2の拡大度合いに基づいて試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いを評価する。例えば、第2の時間差TL2の拡大度合いが大きくなるに連れて試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いを高く評価することができる。以下、第1の時間差TL1に対する第2の時間差TL2の拡大度合いの側面から評価される飽きの度合いのことを「第1の飽きの度合い」と記載する場合がある。
【0040】
他の側面として、評価部15Bは、第1の脳波データおよび第2の脳波データの間で認知変化に対応する振幅が減衰する度合いを評価する。
【0041】
図4は、飽きの度合いの評価方法2の一例を示す図である。図4には、第1の脳波データのうち知覚変化に対応する部分の波形WA1と認知変化に対応する部分の波形WA2が模式的に示されている。さらに、図4には、第2の脳波データのうち知覚変化に対応する部分の波形WB1と認知変化に対応する部分の波形WB2が模式的に示されている。図4に示すように、評価部15Bは、第1の脳波データにおける認知変化の波形WA2で観測される変動幅を振幅A1として算出できる。さらに、評価部15Bは、第2の脳波データにおける認知変化の波形WB2で観測される変動幅を振幅A2として算出できる。
【0042】
その上で、評価部15Bは、振幅A1に対する振幅A2の減衰度合いを算出する。このような振幅A2の減衰度合いは、試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いに関連し得る。すなわち、振幅A1に対する振幅A2の減衰は、味覚刺激に対する認知変化の鈍化を意味すると言える。このため、評価部15Bは、振幅A1に対する振幅A2の減衰度合いに基づいて試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いを評価する。例えば、振幅A1に対する振幅A2の減衰度合いが大きくなるに連れて試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いを高く評価することができる。以下、振幅A1に対する振幅A2の減衰度合いの側面から評価される飽きの度合いのことを「第2の飽きの度合い」と記載する場合がある。
【0043】
更なる側面として、評価部15Bは、第1の脳波データおよび第2の脳波データの間で認知変化に対応する特定の周波数成分の強度が減衰する度合いを評価する。
【0044】
図5は、脳波データの周波数成分の一例を示す図である。図5には、被験者の脳波データに対するフーリエ変換やウェーブレット変換などの周波数解析の実行結果として得られる周波数成分別の波形が示されている。図5に示すように、脳波データには、0.5~4Hzに対応するデルタ波、4~8Hzに対応するシータ波、8~13Hzに対応するアルファ波、13~32Hzに対応するベータ波、25~140Hzに対応するガンマ波が含まれ得る。例えば、図5に示す5つの周波数成分のうち、アルファ波およびベータ波を飽きの度合いの評価に用いることができる。
【0045】
図6は、飽きの度合いの評価方法3の一例を示す図である。図6には、第1の脳波データで観測されるアルファ波のうち認知変化に対応する部分の波形における強度と、第2の脳波データで観測されるアルファ波のうち認知変化に対応する部分の波形における強度とがグラフG1として示されている。さらに、図6には、第1の脳波データで観測されるベータ波のうち認知変化に対応する部分の波形における強度と、第2の脳波データで観測されるベータ波のうち認知変化に対応する部分の波形における強度とがグラフG2として示されている。
【0046】
図6に示すグラフG1の例で言えば、評価部15Bは、第1の脳波データのアルファ波の強度に対する第2の脳波データのアルファ波の強度の変動度合いを算出する。例えば、図6のグラフG1に示す通り、第1の脳波データのアルファ波の強度から第2の脳波データのアルファ波の強度が減算された差分値D1を変動度合いとして算出できる。このような第2の脳波データのアルファ波の強度の変動度合いは、試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いに関連し得る。すなわち、第2の脳波データのアルファ波の強度の変動度合いが減衰する場合、味覚刺激に対する認知変化の鈍化を意味すると言える。このため、評価部15Bは、第1の脳波データのアルファ波の強度に対する第2の脳波データのアルファ波の強度の変動度合いに基づいて試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いを評価する。例えば、第1の脳波データのアルファ波の強度に対する第2の脳波データのアルファ波の強度の変動度合いが大きくなるに連れて試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いを高く評価することができる。
【0047】
さらに、図6に示すグラフG2の例で言えば、評価部15Bは、第1の脳波データにおけるアルファ波及びベータ波の強度比r1と、第2の脳波データにおけるアルファ波及びベータ波の強度比r2との変動度合いRを評価パラメータとして算出する。例えば、第1の脳波データにおけるアルファ波の強度をα1とし、第1の脳波データにおけるベータ波の強度をβ1としたとき、ベータ波の強度β1をアルファ波の強度α1で除算する計算により、強度比r1を算出できる。また、同様にして、第2の脳波データにおけるアルファ波の強度をα2とし、第2の脳波データにおけるベータ波の強度をβ2としたとき、ベータ波の強度β2をアルファ波の強度α2で除算する計算により、強度比r2を算出できる。さらに、変動度合いRは、あくまで一例として、強度比r2を強度比r1で除算する計算により算出することができる。このような変動度合いRは、試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いに関連し得る。1つの側面として、被験者が商品の味に飽きるに連れてアルファ波の強度が低下する傾向があるといった関連性がある。このため、上記の計算方法により強度比r1、強度比r2および変動度合いが算出される場合、R第2の脳波データから算出される強度比r2が第1の脳波データから算出される強度比r1よりも大きくなるに連れて上記の変動度合いRも大きくなる。したがって、上記の変動度合いRに基づいて試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いを評価する場合、変動度合いRが大きくなるに連れて試食中の商品の味に対する被験者の飽きの度合いを高く評価することができる。
【0048】
その上で、評価部15Bは、アルファ波およびベータ波の周波数成分ごとに評価された飽きの度合いの統計値、例えば相加または加重の平均値、あるいは中央値などを算出する。以下、周波数成分ごとに強度の変動度合いの側面から評価される飽きの度合いのことを「第3の飽きの度合い」と記載する場合がある。
【0049】
このように算出される3種類の飽きの度合い、すなわち第1の飽きの度合い、第2の飽きの度合い及び第3の飽きの度合いのうち、いずれか1つを評価に用いることもできれば、2つ以上を評価に用いることもできる。
【0050】
あくまで一例として、評価部15Bは、第1の飽きの度合い、第2の飽きの度合い及び第3の飽きの度合いに所定の統計処理、例えば相加平均または加重平均を実行することにより得られた統計値を飽きの度合いの総合評価として算出することができる。
【0051】
このようにM人の被験者ごとに飽きの度合いの総合評価が算出されると、評価部15Bは、M人の被験者の飽きの度合いの総合評価に任意の統計処理を実行することにより、M人の被験者の飽きの度合いの総合評価を代表する統計値を最終評価として算出する。このとき、評価部15Bは、統計処理の例として、相加平均または加重平均を計算する処理を実行することができる。
【0052】
出力部15Cは、開発対象とする商品の評価結果を出力する処理部である。あくまで一例として、出力部15Cは、評価部15Bにより評価された商品の評価結果をユーザ端末50へ出力する。ここでは、評価結果の出力先の例として、ユーザ端末50を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、出力部15Cは、商品の評価結果を記憶部13に保存させることとしてもよいし、情報処理装置10外部のデータベースサーバへ出力することとしてもよい。この他、出力部15Cは、商品の評価結果を入力として各種の処理を実行するアプリケーション、あるいはサービスを出力先とすることもできる。これらアプリケーションおよびサービスは、必ずしも情報処理装置10により実行されずともよく、外部のサーバ装置などにより実行されることとしてもよい。
【0053】
(処理の流れ)
図7は、飽き評価処理の手順を示すフローチャートである。図7には、あくまで一例として、開発対象とする商品の評価リクエストを受け付けた場合に処理が開始される例を挙げるが、これに限定されない。例えば、センサ装置30から新たな被験者の第1の脳波データおよび第2の脳波データが記憶部13に登録されることを契機に自動的に処理が開始されることとしてもよい。この他、定期時刻、例えば18時や24時などにそれまでに取得された被験者の第1の脳波データおよび第2の脳波データを処理対象とし、自動的に処理が開始されることとしてもよい。
【0054】
図7に示すように、開発対象とする商品の評価リクエストを受け付けると(ステップS101)、評価部15Bは、次のような処理を実行する。すなわち、評価部15Bは、第1の脳波データ13Aおよび第2の脳波データ13Bのうち、ステップS101の評価リクエストで指定された被験者の人数M人の分の第1の脳波データおよび第2の脳波データを取得する(ステップS102)。
【0055】
続いて、評価部15Bは、M人の被験者に対応する回数の分、ステップS103からステップS109までの処理を繰り返すループ処理1を実行する。なお、ここでは、ループ処理が実行される例を挙げるが、M人の被験者ごとにステップS103からステップS109までの処理が並列して実行されてもよい。
【0056】
すなわち、評価部15Bは、第1の脳波データおよび第2の脳波データの間で知覚変化が観測されてから認知変化が観測されるまでの時間差が拡大する度合いを算出する(ステップS103)。そして、評価部15Bは、ステップS103で算出された時間差の拡大度合いに基づいて第1の飽きの度合いを評価する(ステップS104)。
【0057】
また、評価部15Bは、第1の脳波データおよび第2の脳波データの間で認知変化に対応する振幅が減衰する減衰度合いを算出する(ステップS105)。そして、評価部15Bは、ステップS105で算出された振幅の減衰度合いに基づいて第2の飽きの度合いを評価する(ステップS106)。
【0058】
また、評価部15Bは、第1の脳波データおよび第2の脳波データの間で認知変化に対応する特定の周波数成分の強度が変動する変動度合いを算出する(ステップS107)。そして、評価部15Bは、ステップS107で算出された周波数成分の強度の変動度合いに基づいて第3の飽きの度合いを評価する(ステップS108)。
【0059】
また、評価部15Bは、第1の脳波データにおけるアルファ波及びベータ波の強度比と、第2の脳波データにおけるアルファ波及びベータ波の強度比との変動度合いを算出する(ステップS109)。そして、評価部15Bは、ステップS109で算出されたアルファ波及びベータ波の強度比の変動度合いに基づいて第4の飽きの度合いを評価する(ステップS110)。
【0060】
その上で、評価部15Bは、第1の飽きの度合い、第2の飽きの度合い、第3の飽きの度合い及び第4の飽きの度合いに所定の統計処理、例えば相加平均または加重平均を実行することにより得られた統計値を飽きの度合いの総合評価として算出する(ステップS111)。
【0061】
そして、M人の被験者ごとに飽きの度合いの総合評価が算出されると、評価部15Bは、次のような処理を実行する。すなわち、評価部15Bは、M人の被験者の飽きの度合いの総合評価に任意の統計処理を実行することにより、M人の被験者の飽きの度合いの総合評価を代表する代表値を最終評価として算出する(ステップS112)。その後、出力部15Cは、ステップS110で得られた商品の最終評価をユーザ端末50へ出力し(ステップS113)、処理を終了する。
【0062】
(効果)
上述してきたように、情報処理装置10は、味覚に対応する部位から第1の時点で測定される第1の脳波データおよび部位から第1の時点よりも後の第2の時点で測定される第2の脳波データを取得する。そして、情報処理装置10は、第1の脳波データおよび第2の脳波データの間で知覚変化の後に観測される認知変化との関係の不一致度に基づいて開発対象とする商品の味への飽きの度合いを評価する。このように飽きの度合いの評価結果が商品の開発関係者により参照されることで、1つの側面として、飽きの原因究明、ひいては飽き発生の機序を妨げる機能を有する商品の開発が可能になる。したがって、情報処理装置10によれば、飽きのこない商品開発の支援を実現できる。
【0063】
また、情報処理装置10は、第1の脳波データおよび第2の脳波データの間で知覚変化が観測されてから認知変化が観測されるまでの時間差が拡大する度合いに応じて開発対象とする商品の味への飽きの度合いを評価する。これによって、味覚刺激に対する認知変化の鈍化度合いを飽きの度合いとして定量的に評価できる。
【0064】
また、情報処理装置10は、第1の脳波データおよび第2の脳波データの間で第2の変化に対応する振幅または特定の周波数成分が減衰する度合いに応じて開発対象とする商品の味への飽きの度合いを評価する。これによっても、味覚刺激に対する認知変化の鈍化度合いを飽きの度合いとして定量的に評価できる。
【0065】
また、情報処理装置10は、第1の脳波データにおけるアルファ波及びベータ波の強度比と、第2の脳波データにおけるアルファ波及びベータ波の強度比との変動度合いに応じて開発対象とする商品の味への飽きの度合いを評価する。これによっても、味覚刺激に対する認知変化の鈍化度合いを飽きの度合いとして定量的に評価できる。
【0066】
(応用例)
上記の実施形態は一例を示したものであり、種々の応用が可能である。
【0067】
(1)飽きの来やすい開発バリエーションの除外1
上記の実施形態の応用例として、情報処理装置10は、味質の値のパターンが異なる複数の開発バリエーションごとに当該開発バリエーションに対応する商品の試食時に測定された第1の脳波データおよび第2の脳波データを取得する。その上で、情報処理装置10は、複数の開発バリエーションのうち、第1の脳波データにおける認知変化および第2の脳波データにおける認知変化の不一致度が最大である開発バリエーションを除外することもできる。
【0068】
例えば、複数の開発バリエーションは、甘味や酸味、塩味、うま味、苦味などの五味の他、脂味、辛味などの味質を既存の味センサを用いて評価することにより、味質の値のパターンを変化させて作成される。そして、取得部15Aは、味質パターンが異なる複数の開発バリエーションごとに第1の脳波データおよび第2の脳波データを取得する。このように取得される第1の脳波データ及び第2の脳波データを用いて、評価部15Bは、不一致度の例として、図3に例示した時間差の拡大度合い、図4に例示した振幅の減衰度合い、図6に例示した周波数成分の強度の変動度合いや周波数成分の強度比の変動度合いを開発バリエーションごとに算出する。これら時間差の拡大度合い、振幅の減衰度合い及び周波数成分の強度の変動度合いのうち少なくともいずれか1つに基づいて、評価部15Bは、飽きの度合いの総合評価を開発バリエーションごとに算出する。その上で、評価部15Bは、開発バリエーションごとに算出された飽きの度合いの総合評価のうち飽きの度合いの総合評価が最大である開発バリエーションを除外する。これによって、開発対象とする商品に関する開発バリエーションのうち飽きの来やすい開発バリエーションを選択して製品化から除外できる。
【0069】
(2)飽きの来やすい開発バリエーションの除外2
上記(1)の応用例では、複数の開発バリエーションのうち不一致度が最大である開発バリエーションを除外する例を挙げたが、これに限定されず、不一致度が閾値以上である開発バリエーションを除外することもできる。
【0070】
例えば、取得部15Aは、味質パターンが異なる複数の開発バリエーションごとに第1の脳波データおよび第2の脳波データを取得する。このように取得される第1の脳波データ及び第2の脳波データを用いて、評価部15Bは、不一致度の例として、図3に例示した時間差の拡大度合い、図4に例示した振幅の減衰度合い、図6に例示した周波数成分の強度の変動度合いやアルファ波及びベータ波の強度比の変動度合いを開発バリエーションごとに算出する。これら時間差の拡大度合い、振幅の減衰度合い、周波数成分の強度の変動度合い及び周波数成分の強度比の変動度合いのうち少なくともいずれか1つに基づいて、評価部15Bは、飽きの度合いの総合評価を開発バリエーションごとに算出する。その上で、評価部15Bは、開発バリエーションごとに算出された飽きの度合いの総合評価のうち飽きの度合いの総合評価が閾値以上である開発バリエーションを除外する。これによっても、開発対象とする商品に関する開発バリエーションのうち飽きの来やすい開発バリエーションを選択して製品化から除外できる。
【0071】
(3)個人の味志向に合わせたカスタム商品の提供
上記の実施形態では、M人の被験者の飽きの度合いの総合評価に統計処理を適用することにより、M人の被験者の飽きの度合いの総合評価を1つの代表値に統合する例を挙げたが、必ずしも1つの代表値に統合されずともよい。例えば、脳波データから味覚の個人特性を把握する側面から、上記(1)または上記(2)の応用例において被験者ごとに算出される開発バリエーション別の不一致度を用いて開発バリエーション間でバランスをフィッティングすることもできる。これによって、個人の味志向に合わせたカスタム商品の提供が可能になる。
【0072】
(4)飽きの来にくい開発バリエーションの抽出
上記(1)や上記(2)の応用例では、飽きの来やすい開発バリエーションを除外する例を挙げたが、飽きの来にくい開発バリエーションの抽出へも応用できる。
【0073】
あくまで一例として、取得部15Aは、味質パターンが異なる複数の開発バリエーションごとに第1の脳波データおよび第2の脳波データを取得する。このように取得される第1の脳波データ及び第2の脳波データを用いて、評価部15Bは、不一致度の例として、図3に例示した時間差の拡大度合い、図4に例示した振幅の減衰度合い、図6に例示した周波数成分の強度の変動度合いやアルファ波及びベータ波の強度比の変動度合いを開発バリエーションごとに算出する。これら時間差の拡大度合い、振幅の減衰度合い、周波数成分の強度の変動度合い及び周波数成分の強度比の変動度合いのうち少なくともいずれか1つに基づいて、評価部15Bは、飽きの度合いの総合評価を開発バリエーションごとに算出する。その上で、評価部15Bは、開発バリエーションごとに算出された飽きの度合いの総合評価のうち飽きの度合いの総合評価が最小である開発バリエーション、あるいは飽きの度合いの総合評価が閾値以下である開発バリエーションを抽出する。これによって、開発時に作成される開発バリエーションの中から飽きが来にくい開発バリエーションを選択して製品化することが可能である。
【0074】
(5)標準の味質パターンの作成
上記の実施形態の応用例として、取得部15Aは、複数の開発バリエーション別の複数の第1の脳波データを複数の被験者ごとに取得する。その上で、評価部15Bは、複数の被験者ごとに複数の開発バリエーションのうち複数の第1の脳波データの間で認知変化が最大である開発バリエーションを選択する。例えば、評価部15Bは、認知変化に対応する振幅、あるいは認知変化に対応する周波数成分の強度が最小である開発バリエーション、あるいは認知変化に対応する振幅、あるいは認知変化に対応する周波数成分の強度が閾値以下である開発バリエーションを選択できる。その上で、評価部15Bは、複数の対象者ごとに選択された開発バリエーションの間で味質に対応する味物質の数値の統計値を味質ごとに算出することにより開発対象とする商品に関する標準の味質パターンを生成する。このような味物質の数値の例として、濃度が挙げられると共に、統計値の例として、平均値や中央値などが挙げられる。
【0075】
(6)精神状態を安定化させる商品の提供
上記の実施形態の応用例として、脳波データにより精神状態を分析し、安定状態へ導くホルモンバランスを算出し、算出されたホルモンバランスから閾値以上の濃度の差があるホルモンの発生に適する味覚刺激が可能な商品を選択することもできる。これによって、精神状態を安定化させる商品の提供が可能である。
【0076】
(7)試験条件
上記の実施形態の応用例として、第1の時点および第2の時点の間で試食回数、咀嚼回数、嚥下回数、あるいは期間の差を変化させたバリエーションごとに図4に例示した振幅の減衰度合い、図6に例示した周波数成分の強度の変動度合いやアルファ波及びベータ波の強度比の変動度合いを算出して飽きの度合いを評価することもできる。この場合、特定の回数刻みに複数の第2の時点を設定して、第1の脳波データおよび第2の脳波データを取得することもできる。例えば、試食回数を例に挙げる。第1の時点を試食1回目で固定し、第2の時点を試食30回目、試食40回目、試食50回目、・・・、試食(30+10N)回目といった要領で特定の回数、例えば10回刻みに複数の第2の時点を設定して、第1の脳波データおよび第2の脳波データを取得することができる。これにより、特定の回数刻みで飽きの度合いの変動トレンドを評価できる。
【0077】
<適用例>
上記の実施形態は一例を示したものであり、種々の適用が可能である。
【0078】
(1)システム
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0079】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0080】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0081】
(2)ハードウェア
次に、情報処理装置10のハードウェア構成例を説明する。図8は、ハードウェア構成例を説明する図である。図8に示すように、情報処理装置10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、図8に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0082】
通信装置10aは、ネットワークインタフェイスカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、図1に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0083】
プロセッサ10dは、図1に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、図1等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、情報処理装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、取得部15A、評価部15Bおよび出力部15C等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、取得部15A、評価部15Bおよび出力部15C等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0084】
このように、情報処理装置10は、プログラムを読み出して実行することでパラメータ算出方法を実行するコンピュータとして動作する。また、情報処理装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記の実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、情報処理装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0085】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0086】
10 情報処理装置
11 通信インタフェイス部
13 記憶部
13A 第1の脳波データ
13B 第2の脳波データ
15 制御部
15A 取得部
15B 評価部
15C 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8