IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大林組の特許一覧 ▶ 日本通運株式会社の特許一覧

特開2023-164951重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置
<>
  • 特開-重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置 図1
  • 特開-重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置 図2
  • 特開-重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置 図3
  • 特開-重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置 図4
  • 特開-重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置 図5
  • 特開-重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置 図6
  • 特開-重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置 図7
  • 特開-重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置 図8
  • 特開-重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164951
(43)【公開日】2023-11-14
(54)【発明の名称】重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20231107BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20231107BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D21/00 B
E01D22/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144140
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2019198314の分割
【原出願日】2019-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】591135440
【氏名又は名称】日本通運株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230123124
【弁護士】
【氏名又は名称】木村 広行
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】丈達 康太
(72)【発明者】
【氏名】岡 重洋
(72)【発明者】
【氏名】岩城 孝之
(72)【発明者】
【氏名】越水 徹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】現場への搬出入が容易であるとともに、施工現場での据え付け作業が容易な重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置を提供する。
【解決手段】横行レールと、横行レールの両端部近傍に対向して設けられる一対の門型フレームと、横行レールに沿って走行する揚重機構と、を備える重量物移動装置により重量物を揚重移動する、重量物移動装置を用いた重量物の移動方法であって、門型フレームが、高さ方向に伸縮自在な一対の支柱と、支柱の上端部どうしを連結し長手方向に伸縮自在な連結梁と、を備え、支柱と連結梁が短小化された状態の門型フレームを、展開して据え付ける工程と、重量物を吊持させた状態ので重機構を、横行レールに沿って走行させることにより、重量物を揚重移動する工程と、支柱と連結梁の両者を短小化することにより、展開した門型フレームを、最小化する工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮可能かつ間隔調整可能な第1の支柱及び第2の支柱を有する第1の門型フレームと、伸縮可能かつ間隔調整可能な第3の支柱及び第4の支柱を有する第2の門型フレームと、揚重機構と、を備えるが、道路橋の主桁から既設床版を引きはがす床版撤去装置が未設置である床版移動装置をトレーラーに積載して施工現場に搬入する搬入工程であって、前記第1~第4の支柱の間隔が前記トレーラーに積載可能な幅に収まり、かつ、前記第1~第4の支柱の高さが前記トレーラーに積載した際に道路通行可能な高さに調整された状態で、前記床版移動装置の一部が前記トレーラーに積載されている、搬入工程と、
前記床版移動装置を所定の位置に据え付ける据付工程であって、前記第1~第4の支柱を高さ方向に伸ばすこと、および、前記第1の支柱と前記第2の支柱との間隔と、前記第3の支柱と前記第4の支柱との間隔とを広げることを含む、据付工程と、
前記トレーラーを退去させる退去工程と、
前記退去工程の後に前記床版移動装置に床版撤去装置を設置する工程と、
運搬車両の荷台に積載できる大きさに道路橋の既設床版を切断して切断片を形成する工程であって、前記切断片の橋軸直交方向の長さは、前記切断片の橋軸方向の長さより長い、工程と、
前記床版撤去装置により前記切断片を主桁から引きはがす工程と、
前記切断片を吊り上げることと、前記切断片の向きを90度回転することと、を前記揚重機構により行う工程と、
前記吊り上げられた前記既設床版の切断片の下方に荷台が位置するよう運搬車両を乗り入れる工程と、
前記運搬車両の荷台に前記切断片を積載する工程と、を含む、床版移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物を揚重し移動させるための重量物移動装置を用いた重量物の移動方法
及び重量物移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、I型の主桁上に設置された既設床版を新設床版に取り替える橋梁の床版取り
替え工法において、既設床版を撤去する際には、まず、運搬車両の荷台に積載可能な形状
に既設床版を切断する。こののち、例えばクレーン等の揚重装置を用いてこの既設床版の
切断片を吊り上げつつ、運搬車両の荷台まで移動させる方法が知られている。
【0003】
このような中、特許文献1では、既設床版の一部である撤去部材を、架設桁型揚重装置
を用いて撤去する方法が開示されている。架設桁型揚重装置は、施工現場で組み立てる構
造の装置であり、まず、4本の支柱で平面視長方形の構台の4隅を支持したリフターを2
台準備し、これらを1台ずつ貨物自動車の荷台に積載して施工現場に搬入する。次に、2
台のリフターを撤去部材を挟んで間隔を設けて配置し、架設桁をリフター各々の構台に架
け渡すようにして設置し、架設桁に吊り荷機構を横行自在に設置する。
【0004】
こうして組み立てた架設桁型揚重装置の吊り荷機構を介して、既設床版の一部である撤
去部材を吊り上げることにより撤去部材を道路橋から撤去し、また、撤去部材を吊持しつ
つ吊り荷機構を架設桁に沿って横行させる。その一方で、2台のリフターのうちいずれか
一方の構台下に運搬車両を乗り入れておき、吊り荷機構が架設桁に沿って構台下まで移動
したところで、吊り荷機構に吊持されている撤去部材を運搬車両の荷台に吊り下ろす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-204427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている架設桁型揚重装置は、市場で取引されている一般的な装置
であるリフターを利用し、これに吊り荷機構を備えた架設桁を架け渡すようにして組み立
てたものであり、専用装置を製作する手間やコストを省略しつつ、撤去部材の撤去作業を
実施することが可能となっている。
【0007】
しかし、リフターは前述したように、4本の支柱で平面視長方形の構台の4隅を支持し
た形状であり、このリフターを撤去部材を挟んで2台設置すると合計で8本の支柱を据え
付けるスペースが必要となる。すると、施工現場において架設桁型揚重装置の占める面積
が広大となるため、施工現場によっては設置スペースを確保することが確保が困難な場合
が生じる。
【0008】
また、施工現場で2台のリフターを据え付け、これらに吊り荷機構を備えた架設桁を架
け渡す組み立て作業は煩雑であり、また、これらを施工現場に搬入するための貨物自動車
が複数台必要となるため、これら貨物自動車が停車するための場所の確保や搬送費用が増
大するなど、工期及び工費また作業性の面で課題が生じる。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、現場への搬出入
が容易であるとともに、施工現場での据え付け作業が容易な重量物移動装置を用いた重量
物の移動方法及び重量物移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明の重量物移動装置を用いた重量物の移動方法は、横
行レールと、該横行レールの両端部近傍に対向して設けられる一対の門型フレームと、前
記横行レールに沿って走行する揚重機構と、を備える重量物移動装置用いて重量物を揚重
移動する、重量物移動方法であって、前記門型フレームが、高さ方向に伸縮自在な一対の
支柱と、該支柱の上端部どうしを連結し長手方向に伸縮自在な連結梁と、を備え、前記支
柱と前記連結梁が短小化された状態の前記門型フレームを、展開して据え付ける工程と、
前記重量物を吊持させた状態の前記揚重機構を、前記横行レールに沿って走行させること
により、前記重量物を揚重移動する工程と、前記支柱と前記連結梁の両者を短小化するこ
とにより、前記展開した門型フレームを最小化する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の重量物移動装置は、横行レールと、該横行レールの両端部近傍に対向し
て設けられる一対の門型フレームと、前記横行レールに沿って走行する揚重機構と、を備
える重量物移動装置であって、前記門型フレームが、高さ方向に伸縮自在な一対の支柱と
、該支柱の上端部どうしを連結し長手方向に伸縮自在な連結梁と、を有することを特徴と
する。
【0012】
本発明の重量物移動装置を用いた重量物の移動方法及び重量物移動装置によれば、門型
フレームが、高さ方向に伸縮自在な一対の支柱と、支柱の上端部どうしを連結し長手方向
に伸縮自在な連結梁と、により構成される。これにより、支柱の最短長さを、トレーラー
に積載した際に道路通行の可能な高さに設定し、連結梁の最短長さを、一対の支柱をトレ
ーラーに積載可能な幅に収まる間隔で連結できる長さに設定することにより、重量物移動
装置を分解することなくトレーラーに積載し施工現場に搬出入できる。
【0013】
その一方で、重量物の揚重作業を行う際には、トレーラーで施工現場に搬入したのちに
組み立て作業を行うことなく、支柱と連結梁とをそれぞれ伸長して門型フレームを所望の
大きさに展開し、据え付ければよい。
【0014】
したがって、施工現場で重量物移動装置を搬出入するたびに、組立及び解体作業を実施
する必要が無く、施工性を大幅に向上することが可能となる。また、1台のトレーラで搬
出入できるため、複数の運搬車両を必要とする場合と比較して搬送費用を削減することが
でき、工期短縮及び工費削減に寄与する寄与することが可能となる。
【0015】
さらに、従来技術では、市場で取引されている一般的な装置であるリフターを2台、合
計8本の支柱を設置するスペースが必要なところ、本発明では、門型フレームが2本の支
柱を備える構造であるため合計4本の支柱を設置するスペースで足り、狭小なスペースに
も設置することが可能となる。また、施工現場で重量物移動装置を据え付ける際は、門型
フレームの支柱および連結梁を所望の長さに伸長して展開でき、作業エリアとなる内方空
間に所望の広さを確保することが可能となる。
【0016】
本発明の重量物移動装置は、前記横行レールの一方の端部が、対向する一対の前記門型
フレームより外方に張り出して設けられ、該横行レールの一方の端部に、積込みホイスト
が設けられることを特徴とする。
【0017】
本発明の重量物移動装置によれば、横行レールの一方の端部に、積込みホイストが設け
られることから、重量物を吊り上げた揚重機構を横行レールに沿って走行させ、重量物を
横行レールの一方の端部まで移動させたのち、積込みホイストに盛り替えて重量物を再度
吊り上げることができる。これにより、積込みホイストを利用して搬送車両への重量物の
積み込み作業を行いながら、揚重機構で新たな重量物の移動作業を実施でき、作業効率を
大幅に向上することが可能となる。
【0018】
本発明の重量物移動装置は、前記横行レールと平行な側面に、サイドパネルが設けられ
ていることを特徴とする。
【0019】
本発明の重量物移動装置によれば、内方空間に設定される作業エリアのプロテクタとし
てサイドパネルが機能する。したがって、例えば重量物移動装置を道路工事に適用する際
、重量物移動装置の側方で一般車両を通行させつつ内方空間の作業エリアで道路工事を進
捗させても、作業上の安全性を向上させることが可能となる。
【0020】
本発明の重量物移動装置は、前記揚重機構に、橋梁の主桁から既設床版を引きはがす床
版撤去装置が設置されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の重量物移動装置によれば、揚重機構に床版撤去装置が支持されていることから
、橋梁の主桁から既設床版を撤去する際、運搬車両に積載可能に切断した切断片を、床版
撤去装置を用いて主桁から引きはがして撤去する。次に、切断片と床版撤去装置とを揚重
機構で吊り上げ、横行レールに沿って揚重機を走行させて切断片を床版撤去装置とともに
移動させる。そのうえで、切断片を床版撤去装置から取り外せば、切断片を施工現場から
搬出できる。
【0022】
これにより、重量物移動装置を用いて切断片の撤去から搬出までの一連の作業を実施で
き、作業効率を大幅に向上させることができる。また、床版撤去装置を常時揚重機構に支
持させておくことができるため、床版撤去装置の仮置き場が不要となり、作業エリアを広
く確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、横行レールの両端部近傍各々に設ける一対の門型フレームが、高さ方
向に伸縮自在な一対の支柱と長手方向に伸縮自在な連結梁とにより構成されるから、支柱
及び連結梁を最短にした状態をトレーラーに積載可能な大きさに形成することにより、重
量物移動装置をトレーラーに積載し施工現場に搬出入できるとともに、搬出入するたびに
組立及び解体作業を実施する必要が無いため、施工現場への搬出入作業及び据え付け作業
を容易に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態における重量物移動装置をトレーラーに積載した様子を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における重量物移動装置の後面を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における重量物移動装置の側断面(A-A断面)を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における揚重機構を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における旋回レール及び旋回トロリーを示す図である。
図6】本発明の実施の形態における床版撤去装置を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における重量物移動装置を用いて既設床版の切断片を主桁から撤去し移動する手順を示す図である(その1)。
図8】本発明の実施の形態における重量物移動装置を用いて既設床版の切断片を主桁から撤去し移動する手順を示す図である(その2)。
図9】本発明の実施の形態における重量物移動装置を用いて既設床版の切断片の撤去跡に新設床版片を配置する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の重量物移動装置は、重量物を揚重し移動させる装置であって、トレーラに積載
可能でありながら、施工現場にて所望の高さ及び幅に展開することの可能な構造を有する
ものである。本実施の形態では、道路橋のI型主桁に設置された既設床版を新設床版に取
り替える橋梁の床版取り替え工法に、重量物移動装置を適用する場合を事例に挙げ、以下
にその詳細を説明する。
【0026】
なお、床版取り替え工法では、既設床版を新設床版に取り替えるにあたって、既設床版
を運搬車両の荷台に積載できる大きさの切断片に切断するが、重量物移動装置は、この切
断片を主桁上から移動させ、運搬車両に積載するまでの作業を行う。
【0027】
≪≪重量物移動装置≫≫
重量物移動装置100は、図1(a)(b)で示すように、その大きさをトレーラーT
に積載可能な長さL、幅W、及び高さHに変更できる構造を有し、図2で示すように、一
対の門型フレーム12を備える伸縮フレーム機構10と、一対の門型フレーム12に架け
渡された横行レール11に沿って移動する揚重機構20と、揚重機構20に設置された床
版撤去装置30とを備える。
【0028】
≪伸縮フレーム機構≫
伸縮フレーム機構10は、図2及び図3で示すように、1対の門型フレーム12と、門
型フレーム12どうしを連結する1対の連結トラス15と、連結トラス15に平行に配置
される2体の横行レール11と、を備え、門型フレーム12は、図2で示すように、間隔
をもって配置された一対の支柱13と、一対の支柱13の上端部近傍を連結した連結梁1
4とにより構成されている。
【0029】
支柱13は、伸縮機構を有する揚重装置であればいずれを採用してもよいが、本実施の
形態では油圧ジャッキを採用し、図2で示すように、シリンダ131が上方に位置しピス
トンロッド132が下方に位置するように配置されている。また、支柱13の最短長さは
図1(b)で示すように、トレーラーTに積載した際に道路通行の可能な高さHに設定
されている。
【0030】
連結梁14は、図2で示すように、その両端部に長さを調整可能なテレスコピック機構
が設けられており、最短長さは、図1(b)で示すように、一対の支柱13をトレーラー
Tに積載可能な幅Wに収まる間隔で連結できる長さに設定されている。
【0031】
なお、支柱13と連結梁14との取り合いには図2で示すように、ブレース材121が
設けられて補強がなされている。ブレース材121は、上記のとおり門型フレーム12が
展開した際これに追従するよう、ネジ式伸縮部材や油圧ジャッキ等の伸縮装置により構成
されているとともに、その両端部が支柱13および連結梁14に対して回転自在に連結さ
れている。
【0032】
連結トラス15は、トレーラーTに積載可能な長さLより短小な間隔で並列配置された
一対の門型フレーム12どうしを連結するものであり、図2で示すように、門型フレーム
12を構成する一対の支柱13と同じ間隔で、2本が並列配置されている。そして、2本
の連結トラス15の間に、これらと平行して2本の横行レール11が所定の間隔を有して
配置されている。
【0033】
2本の横行レール11はそれぞれ、図3で示すように、一対の門型フレーム12を架け
渡すようにして両端部の近傍各々が、連結梁14の下面側に設置されている。その長さは
、連結トラス15より長く、最大でトレーラーTに積載可能な長さLに形成され、両端部
各々が一対の門型フレーム12の間に形成された空間から外方に突き出している。そして
、横行レール11各々の一方の端部には、2台の積込みホイスト112が隣接して配置さ
れ、他方の端部にはチェーンブロック111が設置されている。
【0034】
積込みホイスト112は、後述する揚重機構20により移動された切断片Pを、図8
b)で示すように、運搬車両Cに積載する際に使用するものであり、横行レール11に架
け渡すように2台が設置されている。また、チェーンブロック111は、1本の横行レー
ル11に1台ずつで合計2台が補助揚重機構として設置されているが、必ずしも設けなく
てもよい。
【0035】
そして、断面がI型の鋼材により形成される2本の横行レール11にはそれぞれ、下フ
ランジをレールにして、揚重機構20の横行トロリー21が走行している。
【0036】
≪揚重機構≫
揚重機構20は、図4(a)(b)で示すように、横行レール11の下フランジに沿っ
て走行する横行トロリー21と、横行トロリー21に吊持されている直交レール22と、
直交レール22に沿って走行する直交トロリー23と、直交トロリー23に支持される旋
回レール24を備える。
【0037】
横行トロリー21は、1本の横行レール11に対して2台が間隔を有して設けられてお
り、2本の横行レール11に沿って合計4台が同期して走行する。また、これら横行トロ
リー21に吊持された直交レール22は、2本が間隔を有して横行レール11に直交する
方向に延在している。そして、1本の直交レール22に対して直交トロリー23が2台間
隔を有して設けられており、合計4台が同期して2本の直交レール22に沿って走行する
【0038】
旋回レール24は、図4及び図5で示すように、4台の直交トロリー23に支持された
平面視円形のレールである。上記のとおり4台の直交トロリー23は、横行トロリー21
に吊持された直交レール22に沿って走行するから、旋回レール24の伸縮フレーム機構
10に対する平面視位置は、図5で示すように、横行レール11の延在方向及び直交レー
ル22の延在方向に移動させて調整することができる。
【0039】
揚重機構20はさらに、旋回レール24に沿って走行する旋回トロリー25と、旋回ト
ロリー25に設けられている揚重ホイスト26とを備えている。
【0040】
旋回トロリー25は、図5で示すように平面視で、旋回レール24に対して45度の間
隔で4台設置され、隣り合う旋回トロリー25どうしが連結材251を介して連結されて
いる。これにより、旋回トロリー25は常時、45度の間隔を保持しながら旋回レール2
4上を走行する。
【0041】
揚重ホイスト26は、図4(a)(b)で示すように、4体の旋回トロリー25各々に
設置され、これにより揚重機構20に合計4台設置される。そして、この揚重ホイスト2
6で重量物を揚重することもできるが、本実施の形態では、図3で示すように、揚重ホイ
スト26で床版撤去装置30を吊持し、この床版撤去装置30を介して道路橋B上で切断
した既設床版の切断片Pを主桁Dから撤去する。
【0042】
≪床版撤去装置≫
床版撤去装置30は、道路橋Bの主桁Dから切断片Pを引きはがす装置であり、図6
a)(b)で示すように、一対の縦材31及び一対の横材32をにより形成されるフレー
ム33と、フレーム33に設置されている吊荷用アンカー部材34、反力ジャッキ35、
及び吊治具36により構成されている。
【0043】
縦材31及び横材32はともに、一対の溝形鋼を1組として形成した長尺鋼材に形成さ
れ、溝形鋼のウェブどうしを隙間を設けて背合わせすることにより、長尺鋼材の中央部に
は軸線と平行する隙間が形成されている。
【0044】
フレーム33は、図6(a)で示すように、間隔を設けて配置した一対の横材32と、
その上面に同じく間隔を設けて配置された一対の縦材31とにより平面視井桁状に形成さ
れている。このとき、縦材31及び横材32はいずれも長尺鋼材の隙間が上下方向に貫通
する姿勢に配置されている。
【0045】
吊荷用アンカー部材34は、フレーム33における横材32と縦材31とが重なる4か
所各々に配置され、図6(c)で示すように、アンカーロッド341がフレーム33を貫
通した状態で、頭部が縦材31の上面にアンカープレート342を介して頭部ナット34
3で固定されている。また、アンカーロッド341の先端部は、切断片Pを貫通しその下
面に先端ナット344で固定されている。これにより、吊荷用アンカー部材34を介して
切断片Pをフレーム33に連結することができる。
【0046】
反力ジャッキ35は、図6(a)で示すように、フレーム33の4隅となる横材32の
両端部各々に配置され、図6(c)で示すように、油圧ジャッキのピストンロッド351
が横材32の下面より下方に突出する態様で、シリンダ352を横材32に内装させてい
る。
【0047】
ここで、フレーム33における横材32は、図6(b)(c)で示すように、反力ジャ
ッキ35のピストンロッド351が配置されている両端部近傍の下面に切欠き331が設
けられており、反力ジャッキ35を最も短縮させた状態でピストンロッド351の押圧面
が、フレーム33の下面より突出しない形状となっている。
【0048】
したがって、図6(b)で示すように、反力ジャッキ35のピストンロッド351に阻
害されることなく、フレーム33を切断片Pの上面に積層することができる。そして、こ
の状態で、切断片Pとフレーム33とを連結し、反力ジャッキ35を伸長すると、撤去し
ようとする切断片Pの周囲をピストンロッド351が押圧する。
【0049】
これにより、図6(c)で示すように、フレーム33は、下面が道路橋Bの主桁Dに固
着されている切断片Pを主桁Dから引きはがしつつ上昇する。こうして、切断片Pを道路
橋Bの主桁Dから撤去することが可能となる。
【0050】
そして、床版撤去装置30は、フレーム33の上面に吊治具36が設置されているから
、この吊治具36を介して揚重ホイスト26により、切断片Pとともに吊り上げられる。
【0051】
上述する構成の重量物移動装置100は、図3で示すように、伸縮フレーム機構10の
側面、つまり連結トラス15とこの連結トラス15で連結されている支柱13で囲まれる
面にトラス構造16が採用されて補強がなされているとともに、サイドパネル17が設置
されている。このサイドパネル17は、伸縮フレーム機構10の内方空間に設けられてい
る作業エリアのプロテクタとして機能する。
【0052】
したがって、橋梁の床版取り替え工法で既設床版の切断片Pを主桁Dから撤去し移動す
る際、重量物移動装置100の側方で一般車両を通行させつつ、伸縮フレーム機構10内
の作業エリアで作業を進捗させることが可能となる。なお、トラス構造16及びサイドパ
ネル17はともに、支柱13のシリンダ131の高さ範囲に設けられているため、支柱1
3の伸長もしくは短縮の挙動を阻害することはない。
【0053】
また、サイドパネル17は、図1で示すように、トレーラー7に載置した際の運転手側
もしくは助手席側のいずれか一方を、シリンダ131の高さ範囲全体に設置し、他方を、
下端側を切欠き171を設けておくとよい。これは、既設床版の取替え作業を全段面(横
断面全面)で行う方法ではなく、半断面ごとにを取り替える半断面床版取り替え工法に適
用する際に好適である。
【0054】
半断面床版取替え工法は、例えば追い越し車線と走行車線を有する2車線の道路橋Bに
おいて車線規制を行い、半断面分、つまりコンクリート床版202における走行車線側と
追い越し車線側のいずれか一方を新設床版に取替え、これと前後して、他方側の半断面分
も同様に新設床版に取替える方法である。
【0055】
このような半断面床版取替え工法に適用すると、道路橋Bの両側各々に設けられた高欄
Hのうち、図2で示すように、一方が設置されたままの既設床版の切断片Pを、サイドパ
ネル17の切欠き171を利用して、伸縮フレーム機構10の内方空間に設定した作業エ
リアに取り込んで、撤去作業を行うことができる。
【0056】
その一方で、シリンダ131の高さ範囲全体にサイドパネル17を設けた側は、不慮の
事態により作業エリアから機器や切断片Pが飛出す現象を抑制できる。したがって、切欠
き171を設けたサイドパネル17を利用して、伸縮フレーム機構10内の作業エリアで
切断片Pの撤去作業を行いつつ、シリンダ131の高さ範囲全体にサイドパネル17を設
けた側の外方で、一般車両を安全に供用させることができる。
【0057】
≪≪重量物移動装置を用いた重量物の移動方法≫≫
上述する重量物移動装置100を用いた重量物の移動方法を、上述する橋梁の半断面床
版取り替え工法で、既設床版の切断片Pを主桁Dから撤去し移動する場合、及び施工現場
内に仮置きした新設床版片Nを、切断片Pの撤去移動跡地に配置する場合を事例に挙げ、
以下にその手順を説明する。なお、重量物である切断片Pは、図7(a)で示すように、
道路橋Bの主桁D上に設置された状態で、運搬車両Cの荷台に積載できる大きさにあらか
じめ切断されている。
【0058】
≪既設床版の切断片Pを撤去移動し施工現場から搬出する場合≫
まず、図1で示すように、重量物移動装置100を解体することなく、門型フレーム1
2の支柱13及び連結梁14を最も短小化させた状態でトレーラーTに積載し、道路橋B
上の施工現場に搬入する。
【0059】
次に、図7(a)で示すように、伸縮フレーム機構10に設けた横行レール11を道路
橋Bの橋軸方向に向けた状態で、撤去予定の切断片Pを跨ぐ位置に重量物移動装置100
を積載したトレーラーTを停車させる。そして、門型フレーム12の支柱13及び連結梁
14を適宜伸長させて、重量物移動装置100の伸縮フレーム機構10を所望の大きさに
展開し、道路橋B上の所定の位置に据え付ける一方で、トレーラーTは退去させる。この
作業と前後してもしくは同時に、揚重機構20の揚重ホイスト26に床版撤去装置30を
設置する。
【0060】
こののち、横行トロリー21を横行レール11に沿って走行させて、揚重機構20を橋
軸方向に移動させるとともに、必要に応じて直交トロリー23を直交レール22に沿って
走行させ、揚重機構20をさらに橋軸直交方向に移動させ、揚重機構20に支持されてい
る床版撤去装置30を、撤去予定の切断片Pの上方に位置決めする。
【0061】
こうして、床版撤去装置30の位置合わせを行ったところで、図7(b)で示すように
、揚重機構20の揚重ホイスト26を用いて床版撤去装置30を吊り下ろし、切断片Pの
上面に積層する。そして、床版撤去装置30の吊荷用アンカー部材34を用いて、切断片
Pと床版撤去装置30のフレーム33とを連結する。
【0062】
切断片Pにはあらかじめアンカー挿通孔(図示せず)を設けておき、図6(b)で示す
ように、このアンカー挿通孔に吊荷用アンカー部材34のアンカーロッド341を貫通さ
せて、切断片Pの下面に先端ナット334で固定する。一方、アンカーロッド341の頭
部は、フレーム33の上面にアンカープレート342を介して頭部ナット333で固定す
る。
【0063】
こののち、図6(c)で示すように、床版撤去装置30の反力ジャッキ35を伸長させ
、ピストンロッド351の下面で切断片Pの周囲を押圧することにより、切断片Pがフレ
ーム33と上昇し、切断片Pは主桁から完全に引きはがされる。この状態で、揚重機構2
0の揚重ホイスト26を介して切断片Pが連結されたフレーム33を所定高さまで上昇さ
せる。
【0064】
本実施の形態では、切断片Pの橋軸直交方向の長さを橋軸方向より長大に切断している
ことから、図8(a)で示すように、揚重機構20の旋回トロリー25を旋回レール24
に沿って走行させ、床版撤去装置30及び切断片Pの向きを90度回転し、運搬車両Cの
荷台に積載する姿勢に転換する。
【0065】
この姿勢の切断片Pと床版撤去装置30を、揚重機構20の横行トロリー21を横行レ
ール11に沿って走行させることにより橋軸方向に移動させ、横行レール11の一方の端
部に設置した積込みホイスト112の直下に載置する。
【0066】
吊荷用アンカー部材34を取り外して切断片Pとフレーム33との連結を解除したのち
、揚重機構20の横行トロリー21を横行レール11に走行させて床版撤去装置30のみ
を伸縮フレーム機構10の中ほどへ移動させ、床版撤去装置30を用いた新たな切断片P
の撤去作業を開始する。
【0067】
その一方で、載置された切断片Pを、図8(b)で示すように、積込みホイスト112
を介して所定高さまで吊り上げるとともに、吊り上げられた状態の切断片Pの下方に荷台
が位置するように運搬車両Cを乗り入れ、切断片Pを荷台に積載する。こうして、重量物
移動装置100を介して撤去及び移動させた切断片Pを、道路橋Bから搬出することがで
きる。
【0068】
≪仮置きした新設床版片Nを切断片Pの撤去移動跡地に配置する場合≫
上記の手順を繰り返して全ての切断片Pを撤去し終わったのち、主桁D上における切断
片Pの撤去跡地に、新設床版片Nを敷設する。
【0069】
新設床版片Nは、搬送車両Cにより施工現場に搬入し、積込みホイスト112を利用し
て搬送車両Cの荷台から積込みホイスト112の下方における既設床版上に仮置きする。
また、揚重機構20の揚重ホイスト26から床版撤去装置30を取り外したうえで、横行
トロリー21を横行レール11に沿って積込みホイスト112の下方まで走行させる。
【0070】
次に、図9(a)で示すように、仮置きした新設床版片Nを揚重機構20の揚重ホイス
ト26を用いて吊持し、横行トロリー21を横行レール11に沿って移動させ、伸縮フレ
ーム機構10の内方空間に設けた作業エリアまで移動させる。切断片Pの撤去移動跡地に
配置する際の新設床版片Nの姿勢は、橋軸直交方向の長さが橋軸方向より長大となるから
、揚重機構20の旋回トロリー25を旋回レール24に沿って走行させ、新設床版片Nの
向きを90度回転し、主桁Dの上面に設置する際の姿勢に転換する。
【0071】
こののち、必要に応じて、図5で示すように、横行トロリー21を横行レール11に沿
ってさらに移動させて揚重機構20を橋軸方向に移動させる。もしくは直交トロリー23
を直交レール22に沿って走行させて揚重機構20を橋軸直交方向に移動させる等して、
新設床版Pの位置を、主桁D上の設置予定位置に位置決めする。
【0072】
こうして、新設床版Pの位置合わせを行ったところで、図9(b)で示すように、揚重
機構20の揚重ホイスト26を用いて新設床版片Nを吊り下ろし、主桁Dの上面に配置す
る。
【0073】
なお、新設床版片Nにはあらかじめ、揚重機構20の揚重ホイスト26に取り付け可能
な取り付け具を着脱自在に設けて置くとよい。また、切断片Pの撤去作業と新設床版片N
の配置作業は、伸縮フレーム機構10の内方空間に設けた作業エリア内に位置する切断P
をすべて撤去したのち、新設床版片Nを順次設置してもよいし、切断片Pの撤去作業と新
設床版片Nの配置作業とを交互に実施してもよい。
【0074】
上記の作業が終了したのち、重量物移動装置100を施工現場から搬出する。重量物移
動装置100は解体することなく、門型フレーム12の支柱13及び連結梁14を最も短
小化させてトレーラーTに積載可能な大きさに縮小させたのち、この縮小した重量物移動
装置100をトレーラーTに積載し施工現場から搬出する。
【0075】
上記のとおり、橋梁の床版取り替え工法において、既設床版の切断片Pを主桁Dから撤
去し移動する際に重量物移動装置100を用いると、切断片Pの撤去から搬出までの一連
の作業を実施でき、作業効率を大幅に向上させることができる。また、床版撤去装置30
を常時揚重機構20に支持させておくことができるため、床版撤去装置30の仮置き場が
不要となり、作業エリアを広く確保することが可能となる。
【0076】
また、重量物移動装置100は、施工現場へ搬出入するたびに、組立てもしくは解体す
る必要が無く、施工性を大幅に向上することが可能となる。さらに、1台のトレーラTで
搬出入できるため、複数のトレーラーTを必要とする場合と比較して搬送費用を削減する
ことができ、工期短縮及び工費削減に寄与する寄与することが可能となる。
【0077】
また、門型フレーム12は2本の支柱を備える構造であり、一対の門型フレーム12よ
り構成される伸縮フレーム機構10は合計4本の支柱13を有する構造であるため、小さ
い設置スペースにも設置することが可能となる。そして、施工現場で重量物移動装置10
0を据え付ける際は、門型フレーム12の支柱13および連結梁14を所望の長さに伸長
することにより伸縮フレーム機構10を展開でき、作業エリアとなる内方空間に所望の広
さを確保することが可能となる。
【0078】
本発明の重量物移動装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を
逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0079】
例えば、本実施の形態では、切断片Pを主桁Dから引きはがすべく、重量物移動装置1
00の揚重機構20に床版撤去装置30を設置し、床版撤去装置30を利用して切断片P
を撤去した。しかし、切断片Pが吊り上げるのみで撤去可能な状態にある場合には、床版
撤去装置30を用いることなく揚重機構20の揚重ホイスト26を利用して、切断片Pを
撤去してもよい。
【0080】
また、重量物移動装置で撤去する重量物は、切断片に限定されるものではなく、いずれ
の重量物にも重量物移動装置を適用することが可能である。
【0081】
さらに、横行レール11や直交レール22、横行トロリー21、直交トロリー23、旋
回トロリー25等の数量は、いずれも上述した数量に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0082】
100 重量物移動装置
10 伸縮フレーム機構
11 横行レール
111 チェーンブロック
112 積込みホイスト
12 門型フレーム
121 ブレース材
13 支柱
131 シリンダ
132 ピストンロッド
14 連結梁
15 連結トラス
16 トラス構造
17 サイドパネル
20 揚重機構
21 横行トロリー
22 直交レール
23 直交トロリー
24 旋回レール
25 旋回トロリー
251 連結材
26 揚重ホイスト
30 床版撤去装置
31 縦材
32 横材
33 フレーム
34 吊荷用アンカー部材
341 アンカーロッド
342 アンカープレート
343 頭部ナット
344 先端ナット
35 反力ジャッキ
351 ピストンロッド
352 シリンダ
T トレーラー
C 搬送車両
P 切断片
H 高欄
B 道路橋
D 主桁
N 新設床版片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9