(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165006
(43)【公開日】2023-11-14
(54)【発明の名称】毛髪化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/41 20060101AFI20231107BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20231107BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20231107BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20231107BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20231107BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20231107BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
A61K8/41
A61Q5/06
A61K8/60
A61K8/42
A61K8/19
A61K8/86
A61K8/46
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147778
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2021116064の分割
【原出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝
(57)【要約】
【課題】
本発明は、毛髪染料を行う上で、より色もちが良い毛髪化粧料組成物及び毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の毛髪化粧料組成物は、第一の両性界面活性剤と、第一の非イオン(ノニオン)性界面活性剤と、アルカリ剤、pH調整剤とを有することを特徴とする。また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記両性界面活性剤は、ココアンホ酢酸Na、ラウラミノプロピオン酸Na、コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、又はラウリルヒドロキシスルタインから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の両性界面活性剤と、第一の非イオン(ノニオン)性界面活性剤と、アルカリ剤と、pH調整剤とを有することを特徴とする毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
前記両性界面活性剤は、ココアンホ酢酸Na、ラウラミノプロピオン酸Na、コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、又はラウリルヒドロキシスルタインから選択される少なくとも1種である請求項1記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
前記非イオン(ノニオン)性界面活性剤は、デシルグルコシド、(カプリリル/カプリル)グルコシド、ヤシ油アルキルグルコシド、ラウリルグルコシド、又はラウリン酸ポリグリセリル-10から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
前記アルカリ剤は、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はアンモニア水から選択される少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項5】
前記pH調整剤は、リン酸、グリオキシル酸、乳酸、フィチン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、又は酒石酸から選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれか1項に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項6】
さらに、塩化ナトリウム、グリシン、ソルビトール、加水分解コラーゲン、塩化カリウム、エデト酸類、又はエチドロン酸類から選択される少なくとも1種の改質剤を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項7】
前記毛髪化粧料組成物は、塩基性染料処理後に毛髪に適用するためのものである請求項1~6のいずれか1項に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の毛髪化粧料組成物を含む毛髪化粧料。
【請求項9】
塩基性染料と、増粘剤と、防腐剤とを含有するヘアカラー剤を塗布する工程と、請求項1~6のいずれか1項に記載の毛髪化粧料組成物を適用する工程と、からなるカラートリートメント方法。
【請求項10】
さらに、第二の両性界面活性剤と、第二の非イオン(ノニオン)性界面活性剤と、を有する毛髪化粧料組成物を適用する工程と、からなる請求項9記載の方法。
【請求項11】
さらに、無機酸又は有機酸を適用する工程と、からなる請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料組成物及び当該毛髪化粧料組成物を含む毛髪化粧料に関し、特に、色もちに優れる毛髪化粧料組成物及び当該毛髪化粧料組成物を含む毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアカラーリングとして、主として、医薬部外品の永久染毛料であるヘアカラーと、化粧品の半永久染毛料であるヘアマニキュアやヘアカラートリートメント等がある。特に、永久染毛料のヘアカラーにはパラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が含まれるものが主流となっているが、黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるので更に注意が必要となっている。
【0003】
例えば、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むヘアカラーリング組成物として、(a)水溶性過酸素ブリーチ;(b)有機ペルオキシ酸ブリーチ前駆体及び/又は予め形成された有機ペルオキシ酸から選択されたブリーチング助剤;並びに、(c)1以上のヘアカラーリング剤を含むことを特徴とするヘアカラーリング組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1も含め、従来技術においては、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むものは、上述のように黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるので更に注意が必要となっている以外に、近年、パラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が原因で皮膚障害が報告されている。
【0006】
また、半永久染毛料のヘアマニキュアは1回の使用で色素(酸性染料)が髪の内部まで浸透し2~3週間の色持ちが特徴であるが、頭皮に付着し放置時間が長くなれば長くなるほど染まった色素が取れにくくなり、施術する側では生え際ギリギリまで塗布するのが難しく、施術者の技量の割にはヘアカラーに比べて染まりが悪いためサロンや美容室では敬遠されがちな染毛料となっている。
【0007】
一方で、上述のヘアカラーでは、コルテックス(毛皮質。毛髪の内部)までしっかり染めることができるが、ヘアカラートリートメントでは、キューティクル(毛小皮)及び毛髪表面近くのコルテックスを染めるもので、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあった。
【0008】
そこで、本発明は、毛髪染料を行う上で、より色もちが良い毛髪化粧料組成物及び毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ヘアカラートリートメントの前後の処理について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0010】
すなわち、本発明の毛髪化粧料組成物は、第一の両性界面活性剤と、第一の非イオン(ノニオン)性界面活性剤と、アルカリ剤、pH調整剤とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記両性界面活性剤は、ココアンホ酢酸Na、ラウラミノプロピオン酸Na、コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、又はラウリルヒドロキシスルタインから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記非イオン(ノニオン)性界面活性剤は、デシルグルコシド、(カプリリル/カプリル)グルコシド、ヤシ油アルキルグルコシド、ラウリルグルコシド、又はラウリン酸ポリグリセリル-10から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記アルカリ剤は、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はアンモニア水から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記pH調整剤は、リン酸、グリオキシル酸、乳酸、フィチン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、又は酒石酸から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、さらに、塩化ナトリウム、グリシン、ソルビトール、加水分解コラーゲン、塩化カリウム、エデト酸類、又はエチドロン酸類から選択される少なくとも1種の改質剤を含有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記毛髪化粧料組成物は、塩基性染料処理後に毛髪に適用するためのものであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の毛髪化粧料は、本発明の毛髪化粧料組成物を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明のカラートリートメント方法は、塩基性染料と、増粘剤と、防腐剤とを含有するヘアカラー剤を塗布する工程と、本発明の毛髪化粧料組成物を適用する工程と、からなることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のカラートリートメント方法は、さらに、第二の両性界面活性剤と、第二の非イオン(ノニオン)性界面活性剤と、を有する毛髪化粧料組成物を適用する工程と、からなることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のカラートリートメント方法は、さらに、無機酸又は有機酸を適用する工程と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の毛髪化粧料組成物によれば、高齢化でヘアカラーの使用期間が長くなる可能性を秘めているため安心して使える色持ちの良く、また施術する側でも安心して頭皮への付着を気にせず新生部まで塗布出来るヘアカラー製品を提供することが可能であるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の毛髪化粧料組成物は、両性界面活性剤と、非イオン(ノニオン)性界面活性剤と、アルカリ剤と、pH調整剤とを有することを特徴とする。健康な毛髪のpHは、およそ4.5~5.5の範囲であり、一般に、毛髪のイオン性は平衡に保たれている。本発明においては、両性界面活性剤と、非イオン(ノニオン)性界面活性剤との併用により、ヘアカラー剤を適用後に本発明の毛髪化粧料組成物を適用することにより、前記ヘアカラー剤の色持ちを良くすることが可能となる。
【0023】
本発明の毛髪化粧料組成物のpH値としては、染料の色持ちや毛髪の色調という観点から、好ましくは5.0~6.5、より好ましくは、5.5~6.0に調整することができる。
【0024】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記両性界面活性剤は、特に限定されないが、起泡・洗浄力という観点から、例えば、ココアンホ酢酸Na、ラウラミノプロピオン酸Na、コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、又はラウリルヒドロキシスルタインから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。また、前記両性界面活性剤の量としては、特に限定されないが、洗浄及び乾燥後の指通りという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは1~20質量%、より好ましくは3~15質量%とすることができる。
【0025】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記非イオン(ノニオン)性界面活性剤は、泡立ちという観点から、デシルグルコシド、(カプリリル/カプリル)グルコシド、ヤシ油アルキルグルコシド、ラウリルグルコシド、又はラウリン酸ポリグリセリル-10から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。前記非イオン(ノニオン)性界面活性剤の量としては、特に限定されないが、洗浄力という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは1~20質量%、より好ましくは3~15質量%とすることができる。
【0026】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記アルカリ剤は、経時的な毛髪の色調という観点から、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はアンモニア水から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。前記アルカリ剤の量としては、特に限定されないが、刺激という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%とすることができる。
【0027】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記pH調整剤は、染料の色持ちという観点から、リン酸、グリオキシル酸、乳酸、フィチン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、又は酒石酸から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。前記pH調整剤の量としては、特に限定されないが、経時的な毛髪の色調という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.1~2質量%とすることができる。
【0028】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、褪色抑制効果という観点から、さらに、塩化ナトリウム、グリシン、ソルビトール、加水分解コラーゲン、塩化カリウム、エデト酸類、又はエチドロン酸類から選択される少なくとも1種の改質剤を含有することを特徴とする。前記改質剤の量としては、特に限定されないが、褪色改良という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは1~20質量%とすることができる。
【0029】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記毛髪化粧料組成物は、塩基性染料処理後に毛髪に適用するためのものであることを特徴とする。すなわち、本発明の毛髪化粧料組成物において、当該毛髪化粧料組成物中に含まれる両性界面活性剤、及び非イオン(ノニオン)性界面活性剤により、前記ヘアカラー剤、すなわち、塩基性染料の色持ちを良くすることが可能となる。すなわち、上述のように健康な毛髪のpHは、およそ4.5~5.5の範囲であり、一般に毛髪のイオン性は平衡に保たれているが、毛髪化粧料組成物のpHが中性付近では、両性界面活性剤は、両性+陰イオン(アニオン)性であるため毛髪化粧料組成物内はマイナスイオンが多く存在し、塩基性染料のプラスイオンと引き合うことになる。塩基性染料はプラスに帯電しているため、仮に陰イオン(アニオン)性界面活性剤が含まれている場合には、当該陰イオン(アニオン)性界面活性剤の親水基がマイナスのイオン性を示し、染料を取り去る虞がある。これに対して、本発明のおいて使用する両性界面活性剤は、プラス及びマイナスの両方の性質を有するが、酸性域では、カチオン性を、アルカリ性域ではアニオン性を示す。また、非イオン(ノニオン)性界面活性剤の場合には、そもそも染料に影響を及ぼす物ではない。このようなことから、特に、染料、特に塩基性染料を使用した場合に、当該毛髪化粧料組成物中に含まれる両性界面活性剤、及び非イオン(ノニオン)性界面活性剤の使用により、染料の色持ちを良くすることが可能となることを本発明者らは見いだしたものである。
【0030】
また、本発明の毛髪化粧料は、本発明の毛髪化粧料組成物を含むことを特徴とする。
【0031】
また、本発明のカラートリートメント方法は、塩基性染料と、増粘剤と、防腐剤とを含有するヘアカラー剤を塗布する工程と、本発明の毛髪化粧料組成物を適用する工程と、からなることを特徴とする。本発明において、塩基性染料としては、特に限定されないが、染色性という観点から、塩基性茶16、塩基性青99、塩基性赤51、塩基性黄87等を挙げることができる。前記塩基性染料の量としては、特に限定されないが、毛髪へのダメージという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.0005~5質量%、より好ましくは0.1~1質量%とすることができる。
【0032】
また、本発明において、増粘剤としては、特に限定されないが、泡立ちの増強や増粘という観点から、テトラステアリン酸PEG-150ペンタエリスリチル、コカミドメチルMEA、コカミドDEA等を挙げることができる。前記塩基性染料の量としては、特に限定されないが、泡の安定性という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.3~7質量%とすることができる。
【0033】
また、本発明において、防腐剤としては、特に限定されないが、頭皮への負担という観点から、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、フェノキシエタノール等を挙げることができる。前記塩基性染料の量としては、特に限定されないが、製品の安定性という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.1~0.8質量%とすることができる。
【0034】
また、毛髪化粧料組成物については、上述の本発明の毛髪化粧料組成物の説明を参照することができる。
【実施例0035】
以下では本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0036】
実施例1
まず、試験用毛束サンプル1)を作成した。塩基性染料を用いての染毛毛束作製については以下の通りである。人毛白髪100% (1g X 1cm)(品番:BM-W-A,ビューラックス社製)の毛束に処方1の染毛料(ヘアカラー剤)を塗布してラップし後、定温乾燥器(型式:SDN27P、(株)三商)を用いて40℃、30分放置後、本発明の毛髪化粧料組成物を適用(洗浄)した後に乾燥させて試験用毛束サンプル1)とした。処方1の内容を表1に示す。処方1の染毛料において、ヒドロキシエチルセルロースは増粘剤として使用し、また、メチルパラベンは防腐剤として、使用している。染毛料のpHは6.8以上に調整した。
【0037】
【0038】
また、適用した本発明の毛髪化粧料組成物の成分表を、表2に示す。
【0039】
【0040】
なお、表2において、A)、D)、F)、及びH)の入手先の情報は、以下の通りである。A)ソフタゾリン CL-R(川研ファインケミカル(株)製)、D)Plantacare 2000 UP(BASFジャパン(株)製)、F)アデカカーポール MD-100((株)ADEKA製)、H)ニッピペプタイドCQT-F01-G((株)ニッピ製)である。
【0041】
作成した一例における本発明の毛髪化粧料組成物は、外観は淡黄色~黄褐色の液体、pHは5.8程度、粘度は2,300mPa・sであった。本発明においては、陰イオン(アニオン)性界面活性剤を使わず、両性界面活性剤として、ココアンホ酢酸Naを、非イオン(ノニオン)性界面活性剤として、デシルグルコシドを用いた。
【0042】
次に、本発明の毛髪化粧料組成物を用いて、ヘアカラー剤の色保持性、すなわち褪色抑制効果について調べた。具体的には、上述のように用意した試験用毛束サンプル1)について分光色彩計(型式:SD6000、日本電色工業(株)製)を用いて測色した。その結果を、表3に示す。
【0043】
【0044】
実施例2
次に、実施例1の試験用毛束サンプル1)を用いて、陰イオン(アニオン)性界面活性剤と、非イオン(ノニオン)性界面活性剤とを用いた場合の比較を行った。実施例2の本発明の方法に適用可能な毛髪化粧料組成物、比較例1及び2について、毛髪化粧料組成物を、pH5.0付近に調整し、染毛した試験用毛束サンプル1)を各々の試験管に入れ、下記表4に示す成分を有する実施例2、比較例1及び2の毛髪化粧料組成物を25gを注入し、プログラム低温恒温器(型式:IN804型、ヤマト科学(株)製)を用いて25℃、24時間放置後、すすぎ・乾燥させて分光色彩計(型式:SD6000、日本電色工業(株)製)を用いて測色した。比較例1は、陰イオン(アニオン)性界面活性剤と両性界面活性剤の組み合わせで、陰イオン(アニオン)性界面活性剤として広く使われているポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩のラウレス硫酸Naを使用した例である。また、比較例2は、陰イオン(アニオン)性界面活性剤と両性界面活性剤の組み合わせて、陰イオン(アニオン)性界面活性剤のアミノ酸系活性剤とて広く使われているココイルグルタミン酸TEAを使用した例である。また、実施例2は、非イオン(ノニオン)性界面活性剤と両性界面活性剤の組み合わせて、非イオン(ノニオン)性界面活性剤として起泡性に優れたアルキルポリグルコシドタイプのデシルグルコシドを使用した例である。表4に、各実施例2、比較例1及び2に用いた成分及び配合量等を示す。
【0045】
【0046】
なお、表4において、A)~E)の入手先の情報は、以下の通りである。A)ソフタゾリン CL-R(川研ファインケミカル(株)製)、B)エマール327(花王(株)製)、C)アミソフトCT-12S(味の素(株)製)、D)Plantacare 2000 UP(BASFジャパン(株)製)、E)カチナール HC-200(東邦化学工業(株)製)である。
【0047】
また、同様に、実施例2、比較例1及び2に適用した試験用毛束サンプル1)について分光色彩計(型式:SD6000、日本電色工業(株)製)を用いて測色した。その結果を、表5に示す。
【0048】
【0049】
その結果、非イオン(ノニオン)性界面活性剤と両性界面活性剤の組み合わせによる実施例2において、色差が17.29と小さく、色保持性、すなわち褪色抑制効果が優れていることが分かった。
【0050】
実施例3
次に、非イオン(ノニオン)性界面活性剤を含む染料を用意して、試験用毛束サンプル2)を作成した。人毛白髪100% (1g X 1cm)(品番:BM-W-A,ビューラックス社製)の毛束を試験管に入れ処方2の染毛料を25g分注し、プログラム低温恒温器(型式:IN804型、ヤマト科学(株)製)を用いて25℃、20分静置後、本発明の毛髪化粧料組成物で洗浄した後に乾燥させて試験用毛束サンプル2)とした。処方1の内容を表6に示す。
【0051】
【0052】
なお、表6中のD)の入手先の情報は、以下の通りである。D)Plantacare 2000 UP(BASFジャパン(株)製)である。
【0053】
実施例4~12
次に、pH調整剤として適用可能な無機酸及び有機酸を広く調べた。すなわち、配合する無機酸および有機酸によって色保持性に変化があるか実施例4~12の各成分を有する本発明の方法に適用可能な毛髪化粧料組成物をpH4.5付近に調整し、定温乾燥器(型式:SDN27P、(株)三商)を用いて40℃、60分放置した。放置中に試験管に上述したように用意した試験用毛束サンプル2)を入れ、放置後各々の試験管に25g分注し、40℃、30分放置した。すすぎ・乾燥後、目視で色保持性を比較した。フィチン酸の他、グルタミン酸とアスパラギン酸について色保持性が良いことが判明した。また、最も色保持性が良かった有機酸は、フィチン酸であった。結果を表7に示す。これによって、実施例3の結果と照らし合わせると、塩基性染料に非イオン(ノニオン)性界面活性剤を含んだ染毛料を用いて、さらに本発明の毛髪化粧料組成物を適用しても良いことが分かる。また、本発明の毛髪化粧料組成物を適用後に、無機酸又は有機酸を適用しても、色保持性に優れることが判明した。
【0054】
【0055】
なお、表7において、F)の入手先は、以下の通りである。すなわち、F)アデカカーポール MD-100((株)ADEKA製)である。
【0056】
実施例13~15
実施例4~12の結果、フィチン酸が優れていたため、次に、フィチン酸の配合量及びpHと、色持ちとの関係について調べた。上述したように作成した試験用毛束サンプル2)を用いて、実施例13~15の成分を有する本発明の方法に適用可能な毛髪化粧料組成物におけるフィチン酸の配合量およびpHによる色差確認のため、定温乾燥器(型式:SDN27P、(株)三商)を用いて40℃、60分放置した。放置中に試験管に試験用毛束サンプル2)を入れ、放置後各々の試験管に25g分注し、40℃、30分放置した。すすぎ・乾燥後分光色彩計(型式:SD6000、日本電色工業(株)製)を用いて測色した。同じくらいのpHすなわちpH3付近であれば、フィチン酸の配合量が多いほど、色差が小さく、フィチン酸(50%溶液)を2.80%くらいにした場合はpHの低いほど色差が小さかった。結果を表8に示す。
【0057】
【表8】
なお、表8中のF)の入手先は、F):アデカカーポール MD-100((株)ADEKA製)である。
【0058】
実施例16~20
次に、改質剤の違いによって、色保持性に違いがあるか調べた。試験用毛束サンプルとしては、上述の実施例で用意した試験用毛束サンプル1)を用いた。その結果、塩基性染料で染色した試験用毛束サンプル1)において、塩化ナトリウムを配合したものが色差が最も少なかった。実施例16~20の成分及び配合量を表9に示す。
【0059】
【0060】
なお、表9中のA)~H)の入手先の情報は、以下の通りである。A)ソフタゾリン CL-R(川研ファインケミカル(株)製)、D)Plantacare 2000 UP(BASFジャパン(株)製)、G)ソルビトール花王(花王(株)製)、H)ニッピペプタイドCQT-F01-G((株)ニッピ製)である。
【0061】
また、上述の実施例と同様に、試験用毛束サンプル1)について分光色彩計(型式:SD6000、日本電色工業(株)製)を用いて測色した結果を、表10に示す。
【0062】
【0063】
このように、本発明においては、毛髪染料、特に塩基性染料を処理した毛髪に対して適用した場合に、色保持性に優れる毛髪化粧料組成物、及び毛髪化粧料を提供することが判明した。