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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165040
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/00 20200101AFI20231108BHJP
【FI】
B62J17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157663
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100206760
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 惇
(72)【発明者】
【氏名】見邨 聡
(72)【発明者】
【氏名】上田 大介
(57)【要約】
【課題】乗鞍型車両において、簡単な構造でダウンフォースを発生させる。
【解決手段】燃料タンクは、ヘッドパイプの後方に配置される。シートは、燃料タンクの後方に配置される。ニーグリップ部材は、ヘッドパイプの後方に配置される。ニーグリップ部材は、シートよりも前方かつ下方に配置され運転者の左右の膝で挟まれるニーグリップ部を含む。ステップは、ニーグリップ部よりも後方かつ下方に配置される。外装カバーは、ヘッドパイプの側方に配置される。外装カバーは、インナーパネルと、アウターパネルと、走行風通路とを含む。走行風通路は、インナーパネルとアウターパネルの間に形成され、前方からの走行風が流れる。整流板は、走行風通路を流れる走行風をニーグリップ部に指向させる。整流板は、平板形状を有しており、インナーパネルに一体成形され、インナーパネルから車幅方向外側に突出してインナーパネルに片持ち支持されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプを含む車体フレームと、
前記ヘッドパイプの後方に配置された燃料タンクと、
前記燃料タンクの後方に配置されたシートと、
前記シートよりも前方かつ下方に配置され運転者の左右の膝で挟まれるニーグリップ部を含み、前記ヘッドパイプの後方に配置されたニーグリップ部材と、
前記ニーグリップ部よりも後方かつ下方に配置され、前記運転者の足を載せるステップと、
インナーパネルと、前記インナーパネルの車幅方向外側に配置されたアウターパネルと、前記インナーパネルと前記アウターパネルの間に形成され、前方からの走行風が流れる走行風通路とを含み、前記ヘッドパイプの側方に配置された外装カバーと、
前記走行風通路を流れる前記走行風を前記ニーグリップ部に指向させる整流板と、
を備え、
前記整流板は、平板形状を有しており、前記インナーパネルに一体成形され、前記インナーパネルから車幅方向外側に突出して前記インナーパネルに片持ち支持されている、
鞍乗型車両。
【請求項2】
前記整流板の少なくとも一部は、車両側面視で前記アウターパネルから露出する、
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記整流板の後端は、前記ニーグリップ部の下端よりも車両上方に位置する、
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記整流板の後端は、前記整流板の前端よりも上方に位置する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記外装カバーは、前記走行風通路に前記走行風を導入する導入口をさらに含み、
前記整流板の後端は、前記導入口の上端よりも下方に位置する、
請求項4に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記ニーグリップ部材は、燃料タンクである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記整流板は、車両上下方向に間隔を隔てて複数設けられ、
前記複数の整流板は、第1整流板と、前記第1整流板の下方に配置される第2整流板とを含み、
前記第2整流板は、前記第1整流板よりも車幅方向外側に突出している、
請求項1から6のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体にダウンフォースを作用させる構造を備えた鞍乗型車両が知られている。例えば、特許文献1に開示された鞍乗型車両は、サイドカウルに設けられた走行風通路と、整流部材とを備えている。整流部材は、翼形状を有しており、走行風通路を流れる走行風により車体に作用させるダウンフォースを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6663949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
整流部材自体によって走行に影響を与える程のダウンフォースを発生させる場合、整流部材は、ある程度の大きさが必要になり、形状も複雑になる。さらには、整流部材の強度や剛性を高める必要もある。そこで、特許文献1では、インナーカウルと整流部材とを別体にし、インナーカウルに形成した貫通孔に整流部材を通すことで、整流部材をインナーカウルに固定している。また、整流部材の強度および剛性を高めるために、整流部材に補強壁を設けている。さらに、整流部材は、ダウンフォースを発生させるために、下方に凸をなすように湾曲して形成されている。
【0005】
このように、整流部材自体によって走行に影響を与える程のダウンフォースを発生させるには、整流部材の形状が複雑化するとともに、整流部材のサイズも大型化してしまう。
【0006】
本発明の課題は、乗鞍型車両において、簡単な構造でダウンフォースを発生させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る鞍乗型車両は、車体フレームと、燃料タンクと、シートと、ニーグリップ部材と、ステップと、外装カバーと、整流板とを備える。車体フレームは、ヘッドパイプを含む。燃料タンクは、ヘッドパイプの後方に配置される。シートは、燃料タンクの後方に配置される。ニーグリップ部材は、ヘッドパイプの後方に配置される。ニーグリップ部材は、シートよりも前方かつ下方に配置され運転者の左右の膝で挟まれるニーグリップ部を含む。ステップは、ニーグリップ部よりも後方かつ下方に配置され、運転者の足が載せられる。外装カバーは、ヘッドパイプの側方に配置される。外装カバーは、インナーパネルと、アウターパネルと、走行風通路とを含む。アウターパネルは、インナーパネルの車幅方向外側に配置される。走行風通路は、インナーパネルとアウターパネルの間に形成され、前方からの走行風が流れる。整流板は、走行風通路を流れる走行風をニーグリップ部に指向させる。整流板は、平板形状を有しており、インナーパネルに一体成形され、インナーパネルから車幅方向外側に突出してインナーパネルに片持ち支持されている。
【0008】
本態様に係る鞍乗型車両では、整流板によって走行風通路を流れる走行風をニーグリップ部に指向させることにより、走行風通路を流れる走行風を運転者の大腿部の上面に当ててダウンフォースを発生させる。すなわち、本態様に係る鞍乗型車両は、整流板自体によって車体にダウンフォースを作用させるのではなく、運転者を介して車体にダウンフォースを作用させる。整流板は、走行風通路を流れる走行風をニーグリップ部に指向させるためのものであり、整流板ではダウンフォースは略発生しない。
【0009】
詳細には、整流板は、平板形状を有しており、整流板自体では鞍乗型車両の走行に影響を与える程のダウンフォースは発生しない。このため、整流板自体でダウンフォースを発生させる場合に比べて、整流板の大型化や形状の複雑化を抑制できる。さらに、整流板の強度や剛性を高める必要性が低減するので、整流板を非常に簡単かつ小さな構造にできる。これにより、乗鞍型車両において、簡単な構造でダウンフォースを発生させることができる。
【0010】
さらに、運転者への揚力抑制効果が得られるので、例えば、高速走行時などのライディングスタイルが維持し易くなり、運転者の快適性が向上する。また、運転者が車体との一体感を感じ易くなる。また、整流板が翼型ではなく、平板形状を有しているので、整流板によって運転者の大腿部付近に精度よく走行風を導くことができる。また、整流板がインナーパネルに片持ち支持されているので、整流板をアウターパネルで片持ち支持した場合と比べて、車両内側に整流板を配置できる。すなわち、アウターパネルで整流板を片持ち支持した場合と比べて、より運転者の大腿部に近い位置に整流板を配置できるので、走行風が整流板によって運転者の大腿部付近に導かれ易い。
【0011】
整流板の少なくとも一部は、車両側面視でアウターパネルから露出してもよい。この場合は、走行風を運転者の大腿部付近に当てるために必要な整流板の長さや面積を確保し易くなる。
【0012】
整流板の後端は、ニーグリップ部の下端よりも車両上方に位置してもよい。この場合は、走行風が整流板によって運転者の大腿部付近にさらに導かれ易くなる。
【0013】
整流板の後端は、整流板の前端よりも上方に位置してもよい。この場合は、走行風が整流板によって運転者の大腿部付近にさらに導かれ易くなる。
【0014】
外装カバーは、走行風通路に走行風を導入する導入口をさらに含んでもよい。整流板の後端は、導入口の上端よりも下方に位置してもよい。この場合は、走行風が整流板によって運転者の大腿部付近にさらに導かれ易くなる。
【0015】
ニーグリップ部材は、燃料タンクであってもよい。この場合は、燃料タンクがニーグリップ部材を兼ねるので、部品点数を削減できる。
【0016】
整流板は、車両上下方向に間隔を隔てて複数設けられてもよい。複数の整流板は、第1整流板と、第1整流板の下方に配置される第2整流板とを含んでもよい。第2整流板は、前記第1整流板よりも車幅方向外側に突出してもよい。この場合は、走行風が整流板によって運転者の大腿部付近にさらに導かれ易くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、乗鞍型車両において、簡単な構造でダウンフォースを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】鞍乗型車両の左側面図である。
図2】鞍乗型車両の正面図である。
図3】車体フレーム及び外装カバーを車両正面から見た図である。
図4】外装カバー周辺を車両左後方から見た図である。
図5】インナーパネルの左側面図である。
図6】外装カバーの部分左側面図である。
図7図5のVII-VII線の部分断面図である。
図8図6のVIII-VIII線の断面図である。
図9】鞍乗型車両の部分左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一態様に係る鞍乗型車両の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、「前後」、「上下」、「左右」等の方向を示す用語は、鞍乗型車両100を運転する時の運転者から見た方向を基準として説明する。したがって、左右方向は、車幅方向と一致する。また、車幅方向外側とは、車幅方向において鞍乗型車両の車幅方向の中心から遠い側を意味する。車幅方向内側とは、車幅方向において鞍乗型車両の車幅方向の中心に近い側を意味する。
【0020】
図1は、鞍乗型車両100の左側面図である。図2は、鞍乗型車両100の正面図である。鞍乗型車両100は、車体フレーム2と、ステアリング装置3と、前輪4、後輪5と、エンジン6と、燃料タンク7と、ニーグリップ部材8と、シート9と、ステップ10と、車体カバー11とを備える。
【0021】
車体フレーム2は、ヘッドパイプ12と、メインフレーム13とを含む。ヘッドパイプ12は、前方かつ下方に延びている。ヘッドパイプ12は、鞍乗型車両100の車幅方向の中心に配置されている。
【0022】
メインフレーム13は、前端がヘッドパイプ12に接続されている。メインフレーム13は、左右に一対設けられている。メインフレーム13は、ヘッドパイプ12から左右に分岐してヘッドパイプ12から後方に延びている。なお、「接続」とは、直接的な接続に限らず、間接的な接続も含む。また、「接続」とは、別体の部材が互いに固定されていることに限らず、一体の部材において複数の部分が連続していることも含む。
【0023】
ステアリング装置3は、ヘッドパイプ12に回転可能に支持されている。ステアリング装置3は、フロントフォーク14と、ハンドル部15とを含む。フロントフォーク14は、左右に一対設けられている。フロントフォーク14は、前方かつ下方に延びている。フロントフォーク14は、下端14aが前輪4に接続されている。ハンドル部15は、フロントフォーク14に接続されている。ハンドル部15は、左右方向に延びるハンドルバー15aを含む。ハンドルバー15aの両端にはグリップが設けられている。ハンドル部15の前方には、ウィンドシールド16が配置されている。ウィンドシールド16の下方には、ポジションライト17が配置されている。
【0024】
前輪4は、フロントフォーク14に回転可能に支持されている。後輪5は、エンジン6の後方に配置されるスイングアーム18に回転可能に支持されている。
【0025】
エンジン6は、車体フレーム2に支持されている。エンジン6は、メインフレーム13の下方に配置されている。
【0026】
燃料タンク7は、ヘッドパイプ12の後方に配置されている。燃料タンク7は、エンジン6及びメインフレーム13の上方に配置されている。
【0027】
ニーグリップ部材8は、ヘッドパイプ12の後方に配置されている。本実施形態では、ニーグリップ部材8は、燃料タンク7と一体である。すなわち、燃料タンク7は、ニーグリップ部材8を兼ねている。ニーグリップ部材8は、ニーグリップ部8aを含む。ニーグリップ部8aは、鞍乗型車両100の走行中に運転者の左右の膝で挟まれる部分である。また、運転者がニーグリップ部8aをニーグリップした状態では、運転者の膝に近い大腿部の内側がニーグリップ部8aに接触する。
【0028】
ニーグリップ部8aは、燃料タンク7の左右の側面に形成されている。ニーグリップ部8aは、例えば、車幅方向外側から車幅方向内側に向かって凹む形状を有している。ニーグリップ部8aは、シート9よりも前方かつ下方に配置されている。このため、運転者がニーグリップ部8aをニーグリップした状態では、運転者の大腿部は、車両側面視で水平方向に対して前方かつ下方に傾斜した状態にある。ニーグリップ部8aは、車両側面視で、フロントフォーク14の下端14aとシート9とを結ぶ仮想線Vと重なる位置に配置されることが好ましい。
【0029】
シート9は、燃料タンク7の後方に配置されている。シート9は、座面9aと、側面9bとを含む。座面9aは、シート9の上面に形成されている。座面9aは、前後方向及び車幅方向に延びている。座面9aは、ニーグリップ部8aよりも上方かつ後方に配置されている。側面9bは、座面9aの車幅方向の両端から下方に延びている。
【0030】
ステップ10は、運転者の足を載せる部分である。ステップ10は、左右に一対設けられている。ステップ10は、棒形状であり、車幅方向に延びている。ステップ10は、ニーグリップ部8aよりも後方かつ下方に配置されている。ステップ10は、シート9の下方に配置されている。運転者がニーグリップ部8aをニーグリップした状態では、運転者の下腿部は、車両側面視で水平方向に対して後方かつ下方に傾斜した状態にある。
【0031】
車体カバー11は、樹脂製である。図2に示すように、車体カバー11は、フロントカバー21と、外装カバー22と、サイドカバー23とを含む。フロントカバー21、外装カバー22及びサイドカバー23は、それぞれ左右に一対設けられている。
【0032】
図3は、車体フレーム2及び外装カバー22を車両正面から見た図である。フロントカバー21は、ポジションライト17の下方に配置されている。フロントカバー21は、中央部21aと、側部21bとを含む。中央部21aは、鞍乗型車両100の車幅方向の中心に配置されている。中央部21aは、ヘッドパイプ12の前方に配置されている。中央部21aは、ポジションライト17を支持している。側部21bは、左右に一対設けられている。側部21bは、中央部21aの車幅方向の両端から後方かつ下方に延びている。側部21bは、後端が前端よりも車幅方向外側に位置する。すなわち、側部21bは、車両正面視で、中央部21aの車幅方向の両端から下方かつ車幅方向外側に向かって延びている。
【0033】
外装カバー22は、ヘッドパイプ12の側方に配置されている。外装カバー22は、ヘッドパイプ12を車幅方向外側から覆う。外装カバー22は、インナーパネル32と、アウターパネル34と、導入口36と、走行風通路38とを含む。
【0034】
図4は、外装カバー22周辺を車両左後方から見た図である。図5は、インナーパネル32の左側面図である。図6は、外装カバー22の部分左側面図である。図7は、図5のVII-VII線の部分断面図である。図8は、図6のVIII-VIII線の断面図である。図9は、鞍乗型車両の部分左側面図である。
【0035】
インナーパネル32は、フロントカバー21とサイドカバー23とに固定されている。図5に示すように、インナーパネル32は、第1パネル41と、第2パネル42と、壁部43とを含む。
【0036】
第1パネル41は、フロントカバー21の側部21bの側方に配置されている。第1パネル41は、フロントカバー21の側部21bとの間で前方からの走行風が流れ込む開口45(図3参照)を形成するように、フロントカバー21の側部21bを車幅方向外側から覆う。
【0037】
図3及び図5に示すように、第1パネル41は、上部41aと、第1延伸部41bと、第2延伸部41cと、下部41dとを含む。上部41aは、前後方向に延びている。上部41aは、フロントカバー21の中央部21aに固定されている。第1延伸部41bは、上部41aから車幅方向外側に延びている。第2延伸部41cは、側部21bの側方を覆うように第1延伸部41bから下方かつ後方に延びている。第2延伸部41cは、側部21bから車幅方向に離れている。下部41dは、フロントカバー21の側部21bの下端に固定されている。下部41dは、上部41aよりも車幅方向外側に位置する。下部41dは、第2延伸部41cから下方かつ後方に延びている。
【0038】
図3及び図4に示すように、第2パネル42は、側部21bと前後方向に僅かな隙間をおいて、側部21bの後方に配置されている。第2パネル42は、側部21bの一部と前後方向に連なるように配置されている。図4に示すように、第2パネル42は、車幅方向内側に凹む形状を有している。図7に示すように、第2パネル42は、第2延伸部41cよりも車幅方向内側に配置されている。
【0039】
図5に示すように、第2パネル42は、車両側面視で、第2延伸部41cの後方に配置されている。第2パネル42の上端42aは、車両側面視で、第1パネル41の上部41aと第1延伸部41bの境界付近から後方に延びている。第2パネル42の下端42bは、下部41dに接続されている。第2パネル42の下端42bは、車両側面視で、第2延伸部41cの下端から後方に延びている。第2パネル42の上端42aは、第2パネル42の下端42bよりも後方に延びている。
【0040】
壁部43は、第2延伸部41cと第2パネル42との間で車幅方向に延びている。壁部43は、第2延伸部41cと第2パネル42とに接続されている。壁部43の下端は、第2延伸部41cの下端及び第2パネル42の下端42bよりも上方に位置する。
【0041】
アウターパネル34は、インナーパネル32の車幅方向外側に配置されている。アウターパネル34は、インナーパネル32を車幅方向外側から覆うようにインナーパネル32に固定されている。詳細には、図3及び図6に示すように、アウターパネル34は、第1パネル41の全体を覆う。図8に示すように、アウターパネル34は、第2パネル42との間で走行風通路38を形成するように第2パネル42の少なくとも一部を車幅方向外側から覆う。本実施形態では、アウターパネル34は、第2パネル42において、第1パネル41の第2延伸部41cに近接した部分を覆う。第2パネル42の略後ろ半分は、アウターパネル34に覆われておらず、露出している。
【0042】
導入口36は、開口45から流れ込む前方からの走行風を走行風通路38に導入する。導入口36は、前後方向に貫通する開口である。図3に示すように、導入口36の一部は、車両正面視で開口45と重なる。導入口36の一部は、車両正面視で、アウターパネル34と重なる。図4に示すように、導入口36の上端36aは、ヘッドパイプ12の下端よりも上方に位置する。本実施形態では、導入口36は、第1パネル41と第2パネル42の間に形成されている。導入口36は、壁部43の下方に形成されている。導入口36の上端36aは、壁部43の下端と一致する。導入口36は、壁部43の下端から第2パネル42の下端42bまで延びている。導入口36の上端36aは、シート9よりも下方に位置する。図4に示すように、導入口36の上端36aは、ニーグリップ部8aの下端8bよりも上方に位置する。導入口36の下端は、ニーグリップ部8aよりも下方に位置する。導入口36の下端は、エンジン6よりも上方に位置する。
【0043】
走行風通路38は、前方からの走行風が流れる。走行風通路38には、開口45に流れ込んだ前方からの走行風が導入口36から導入される。導入口36から導入された走行風は、走行風通路38を通過して後方に流れる。詳細には、走行風通路38を通過した走行風は、燃料タンク7の側方を通る。すなわち、走行風通路38を通過した走行風は、ニーグリップ部8aの側方を通る。
【0044】
走行風通路38は、インナーパネル32とアウターパネル34の間に形成されている。図4及び図8に示すように、走行風通路38は、第2パネル42とアウターパネル34との間に領域に形成されている。図9に示すように、走行風通路38は、車両側面視で、ニーグリップ部8aと前後方向に重なる。
【0045】
鞍乗型車両100は、整流板51,52を備えている。整流板51,52は、走行風通路38に配置されている。整流板51,52は、走行風通路38を流れる走行風を整流する。整流板51,52は、走行風通路38を流れる走行風をニーグリップ部8aに指向させる。詳細には、図9に矢印で示すように、走行風通路38を流れる走行風は、整流板51,52によってニーグリップ部8aに指向する。すなわち、整流板51,52によって走行風が運転者の大腿部付近に精度よく導かれる。
【0046】
図8に示すように、整流板51,52は、平板形状を有している。整流板51,52は、樹脂製であり、インナーパネル32に一体成形されている。整流板51,52は、インナーパネル32から車幅方向に突出してインナーパネル32に片持ち支持されている。整流板51,52は、アウターパネル34と車幅方向に離れており、アウターパネル34に接続されていない。整流板51,52は、前後方向に延びるとともに、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって厚みが徐々に薄くなるように形成されている。
【0047】
整流板51,52は、ダウンフォースが略発生しないように構成されている。すなわち、整流板51,52では、鞍乗型車両100の走行に影響を与える程のダウンフォースは発生しない。詳細には、図7及び図8に示すように、整流板51,52の上面51a,52a及び下面51b,52bは、凹凸のない略平面で構成されている。このため、例えば、下面51b,52bが車両側面視で下方に凸に湾曲した翼型に形成することによって整流板51,52自体でダウンフォースを発生させる場合と比べて、整流板51,52の前面投影面積は小さい。本実施形態において、整流板51,52に走行風が当たることにより、ダウンフォースとして車両に作用するピッチングモーメントは、3.16N・m程度であり、これは外装カバー22の樹脂撓みとして吸収される。つまり、走行風が整流板51,52に当たることによって生じるダウンフォースは、鞍乗型車両100の走行に影響を与える程のものではなく、外装カバー22の樹脂撓みに吸収されるので、鞍乗型車両100には作用しない。
【0048】
図6に示すように、整流板51,52の少なくとも一部は、車両側面視でアウターパネル34から露出する。詳細には、整流板51,52の前端51c,52cは、車両側面視でアウターパネル34に覆われている。整流板51,52の後端51d,52dは、車両側面視で、アウターパネル34から露出する。なお、整流板51,52は、車両側面視で全体がアウターパネル34に覆われていてもよい。
【0049】
整流板51,52は、前端51c,52cよりも後端51d,52dが上方に位置する。このため、整流板51,52は、車両側面視で、前後方向に対して傾斜している。図4に示すように、整流板51,52の後端51d,52dは、ニーグリップ部8aの下端8bよりも上方に位置する。整流板51,52の後端51d,52dは、導入口36の上端36aよりも下方に位置する。
【0050】
整流板51と整流板52とは、上下方向に間隔を隔てて配置されている。整流板51,52は、第2パネル42に形成されている。整流板51,52は、導入口36の後方かつ導入口36に近接した位置に形成されている。整流板51,52は、車両正面視で、導入口36と重なる。整流板52は、整流板51の下方に配置されている。図7及び図8に示すように、整流板52は、整流板51よりも車幅方向外側に突出している。整流板51は、第1整流板の一例であり、整流板52は、第2整流板の一例である。
【0051】
図1及び図4に示すように、サイドカバー23は、外装カバー22と燃料タンク7の間に配置されている。サイドカバー23は、インナーパネル32の第2パネル42及びメインフレーム13の上方に配置されている。サイドカバー23は、後部が燃料タンク7の側面に連なるように配置されている。
【0052】
本態様に係る鞍乗型車両100では、整流板51,52によって走行風通路38を流れる走行風をニーグリップ部8aに指向させることにより、走行風通路38を流れる走行風を運転者の大腿部の上面に当ててダウンフォースを発生させる。すなわち、鞍乗型車両100は、整流板51,52自体によって車体にダウンフォースを作用させるのではなく、運転者を介して車体にダウンフォースを作用させる。整流板51,52は、走行風通路38を流れる走行風をニーグリップ部8aに指向させるためのものであり、整流板51,52ではダウンフォースは略発生しない。
【0053】
詳細には、上述したように、整流板51,52は、平板形状を有しており、整流板51,52自体では鞍乗型車両100の走行に影響を与える程のダウンフォースは発生しない。このため、整流板51,52自体でダウンフォースを発生させる場合に比べて、整流板51,52の大型化や形状の複雑化を抑制できる。さらに、整流板51,52の強度や剛性を高める必要性が低減するので、整流板51,52を非常に簡単かつ小さな構造にできる。その結果、鞍乗型車両100において、簡単な構造でダウンフォースを発生させることができる。
【0054】
さらに、運転者への揚力抑制効果が得られるので、例えば、高速走行時などのライディングスタイルが維持し易くなり、運転者の快適性が向上する。また、運転者が車体との一体感を感じ易くなる。また、整流板51,52が翼型ではなく、平板形状を有しているので、整流板51,52によって運転者の大腿部付近に精度よく走行風を導くことができる。また、アウターパネル34よりも車両内側に配置されるインナーパネル32に整流板51,52を設けることで、走行風が整流板51,52によって運転者の大腿部付近に導かれ易くなる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
前記実施形態では、ニーグリップ部材8は、燃料タンク7と一体であったが、ニーグリップ部材8は、燃料タンク7と別体であってもよい。また、燃料タンク7が、タンクカバーを備える場合は、ニーグリップ部8aがタンクカバーの側面に形成されていてもよい。
【0057】
前記実施形態では、インナーパネル32とアウターパネル34とが別体であったが、インナーパネル32とアウターパネル34とが一体であってもよい。
【0058】
整流板51,52の数や配置は変更されてもよい。整流板51,52は、3つ以上であってもよいし、インナーパネル32に整流板51及び整流板52のいずれか一方のみが形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、乗鞍型車両において、簡単な構造でダウンフォースを発生させることができる。
【符号の説明】
【0060】
2 車体フレーム
7 燃料タンク
8 ニーグリップ部材
8a ニーグリップ部
8b ニーグリップ部の下端
9 シート
10 ステップ
22 外装カバー
32 インナーパネル
34 アウターパネル
36 導入口
36a 導入口の上端
38 走行風通路
51 整流板(第1整流板の一例)
52,整流板(第2整流板の一例)
51a,52a 整流板の前端
51d,52d 整流板の後端
100 鞍乗型車両
図1
図2
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図9