IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図1
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図2
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図3
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図4
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図5
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図6
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図7
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図8
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図9
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図10
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図11
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図12
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図13
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図14
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図15
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図16
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図17
  • 特開-波長変換素子および発光システム 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165052
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】波長変換素子および発光システム
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20231108BHJP
   F21V 7/30 20180101ALI20231108BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20231108BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20231108BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20231108BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20231108BHJP
【FI】
G03B21/14 A
F21V7/30
F21V9/32
F21V9/40 200
F21S2/00 311
F21S2/00 340
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168374
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 裕一
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 豪
(72)【発明者】
【氏名】由井 英臣
(72)【発明者】
【氏名】青森 繁
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA07
2K203FA25
2K203FA32
2K203FA44
2K203FA45
2K203GA35
2K203GA44
2K203GA52
2K203GA59
2K203HA30
2K203KA44
2K203MA04
(57)【要約】
【課題】波長変換素子内への励起光の入射効率が向上し、かつ、波長変換素子内の蛍光の導光を制御することにより、蛍光の取り出し効率が向上した波長変換素子を提供する。
【解決手段】基板(1)と蛍光層(12)とを含み、蛍光層は、蛍光体粒子(2)、球殻(5)を備える球殻状粒子(4)およびバインダ(3)を含み、球殻状粒子は球殻内に内部空間を備え、少なくとも一部の球殻状粒子は、内部空間に充填材(6)を含むことを特徴とする波長変換素子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に配置された蛍光層とを含み、
前記蛍光層は、複数の蛍光体粒子、球殻を備える複数の球殻状粒子、および、バインダを含み、
前記球殻状粒子は、前記球殻内に内部空間を備え、
少なくとも一部の前記複数の球殻状粒子は、前記内部空間に充填材を含むことを特徴とする波長変換素子。
【請求項2】
前記内部空間に前記充填材を含む前記複数の球殻状粒子の少なくとも一部は、前記充填材による前記内部空間の充填率が互いに異なることを特徴とする、請求項1に記載の波長変換素子。
【請求項3】
前記球殻と前記充填材とは、屈折率が互いに異なる材料からなることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の波長変換素子。
【請求項4】
前記充填材と前記バインダとは、同一の材料からなることを特徴とする、請求項3に記載の波長変換素子。
【請求項5】
前記球殻状粒子の外側表面と、これを覆うバインダとの間の少なくとも一部に球殻外空間を備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の波長変換素子。
【請求項6】
蛍光源を備える発光システムであって、
前記蛍光源が、請求項1~5の何れか一項に記載の波長変換素子であることを特徴とする、発光システム。
【請求項7】
蛍光ホイールである請求項6に記載の発光システムであって、
ホイールをさらに備え、
前記蛍光源が、前記ホイールの表面の周方向の少なくとも一部に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の発光システム。
【請求項8】
光源装置である請求項6に記載の発光システムであって、
ホイールと、
前記ホイールを回転させる駆動装置と、
前記蛍光源に励起光を照射する励起光源と、
をさらに備え、
前記蛍光源が、前記ホイールの表面の周方向の少なくとも一部に配置されており、
前記ホイールの回転に伴い、前記蛍光源に励起光が入射した際に、前記蛍光源が蛍光を出射することを特徴とする、請求項6に記載の発光システム。
【請求項9】
車両用前照灯具である請求項6に記載の発光システムであって、
前記蛍光源に励起光を照射する励起光源と、
前記蛍光源から出射した蛍光を反射させる反射面を有するリフレクタと、
をさらに備え、
前記リフレクタの反射面が、入射した光を一定方向に平行に出射するように反射させる形状を有することを特徴とする、請求項6に記載の発光システム。
【請求項10】
投影装置である請求項6に記載の発光システムであって、
表示素子と、
前記蛍光源からの蛍光を前記表示素子まで導光する光源側光学系と、
前記表示素子からの投影光をスクリーンに投影する投影側光学系と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項6に記載の発光システム。
【請求項11】
投影装置である請求項6に記載の発光システムであって、
ホイールと、
前記ホイールを回転させる駆動装置と、
前記蛍光源に励起光を照射する励起光源と、
前記ホイールの回転位置を取得する回転位置センサと、
前記回転位置センサからの出力情報に基づいて前記励起光源を制御する光源制御部と、
表示素子と、
前記蛍光源からの蛍光を前記表示素子まで導光する光源側光学系と、
前記表示素子からの投影光をスクリーンに投影する投影側光学系と、
をさらに備え、
前記ホイールの表面の、前記励起光源から出射された励起光が通過する周方向の少なくとも一部に、前記蛍光源が周方向に複数セグメントに分割されて配置されており、
前記ホイールの回転に伴い、前記蛍光源に励起光が入射した際に、前記蛍光源が蛍光を出射し、
前記回転位置センサにより取得された前記ホイールの回転位置の情報により前記励起光源の出力を制御することを特徴とする、請求項6に記載の発光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換素子および発光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
青色レーザ等の励起光を、バインダ内に蛍光体粒子が分散されてなる蛍光層を備えた波長変換素子に照射し、発生した蛍光を取り出して利用することが従来技術として知られている。また、光の利用効率を高める等の種々の目的で、蛍光体粒子に加えて、更なる微粒子または気泡をバインダ内に分散させることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、波長変換部材における光の伝搬を抑制するために、蛍光体粒子に加えて、中空体をバインダ内に分散させてなる波長変換部材を備えた光源装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、放熱性を高めるために、蛍光体粒子に加えて、蛍光体粒子の平均粒径の1/10以下の粒径である微粒子をバインダ内に分散させてなる蛍光層を備える蛍光ホイールが記載されている。
【0005】
特許文献3には、励起光の利用効率を高めるために、無機蛍光体の内部に、複数の気泡が分散されてなる蛍光層を備えた波長変換素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-001709号公報
【特許文献2】特開2016-170359号公報
【特許文献3】特開2017-173370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の波長変換素子において、バインダ内に、蛍光体粒子に加えて更なる微粒子または気泡を分散させると、波長変換素子の製造時に、微粒子または気泡がバインダ内に均一に分散されず、これらの分布に偏りが生じるという問題がある。
【0008】
図9は、バインダ内に蛍光体粒子2および中空粒子21を分散させた蛍光層を備える従来の波長変換素子の断面のSEM画像であり、図10はその表面付近の拡大図である。
【0009】
図9および図10に示されるように、他の材料に比べて比重が極端に小さい中空粒子21をバインダ内に分散させると、波長変換素子の製造時に、中空粒子21が蛍光層の表面付近に偏在する。その結果、中空粒子21が密集した層が、蛍光層の表面付近に形成される。このような層は、蛍光層の表面から入射する励起光の散乱を増強するため、光の利用効率が低下するという問題がある。
【0010】
本開示は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、その目的は、波長変換素子内への励起光の入射効率が向上し、かつ、波長変換素子内の蛍光の導光を抑制することにより、蛍光の取り出し効率が向上した波長変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る波長変換素子は、基板と、前記基板上に配置された蛍光層とを含み、前記蛍光層は、複数の蛍光体粒子、球殻を備える複数の球殻状粒子、および、バインダを含み、前記球殻状粒子は、前記球殻内に内部空間を備え、少なくとも一部の前記複数の球殻状粒子は、前記内部空間に充填材を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、波長変換素子内への励起光の入射効率が向上し、かつ、波長変換素子内の蛍光の導光を抑制することにより、蛍光の取り出し効率が向上した波長変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施形態1に係る波長変換素子を模式的に示した断面図である。
図2】本開示の実施形態2に係る波長変換素子を模式的に示した断面図である。
図3】本開示の実施形態2に係る波長変換素子の断面のSEM画像である。
図4】本開示の実施形態2に係る波長変換素子の断面のSEM画像である。
図5】球殻状粒子の内部空間の充填率と、球殻状粒子の位置との関係を説明する模式図である。
図6】本開示の実施形態3に係る波長変換素子を模式的に示した断面図である。
図7】本開示の実施形態3に係る波長変換素子の断面のSEM画像である。
図8】本開示の実施形態3に係る波長変換素子の断面のSEM画像である。
図9】従来の波長変換素子の断面のSEM画像である。
図10】従来の波長変換素子の断面のSEM画像である。
図11】本開示の実施形態4に係る発光システムの構成を示す平面図である。
図12】本開示の実施形態4に係る発光システムの構成を示す側面図である。
図13】本開示の実施形態5に係る発光システムの構成を示す概略図である。
図14】光源装置の光源モジュールの構成を示す側面図である。
図15】光源装置の蛍光ホイールの変形例の構成を示す平面図である。
図16】光源装置の蛍光ホイールの変形例の構成を示す平面図である。
図17】実施形態6に係る発光システムの構成を示す概略図である。
図18】実施形態7に係る発光システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る波長変換素子10を模式的に示した断面図である。図1に示すように、波長変換素子10は、基板1と、前記基板1上に配置された蛍光層12とを含み、前記蛍光層12は、複数の蛍光体粒子2、球殻5を備える複数の球殻状粒子4、および、バインダ3を含み、球殻状粒子4は、球殻5内に内部空間を備え、少なくとも一部の前記複数の球殻状粒子4は、前記内部空間に充填材6を含む。
【0016】
内部空間に充填材6を含む球殻状粒子4は、内部空間が空洞のままである中空粒子に比べて、蛍光体粒子2およびバインダ3との比重差が低減されている。そのため、波長変換素子10の製造時に、球殻状粒子4が蛍光層12の表面付近に浮き上がって一様に偏在することなく、バインダ3内に分散される。その結果、波長変換素子10内への励起光の入射効率が向上し、かつ、蛍光層12における蛍光の導光が抑制され、蛍光の取り出し効率が向上する。
【0017】
なお、「波長変換素子10内への励起光の入射効率が向上する」とは、蛍光層12に入射した励起光のうち、蛍光体粒子2に向かわない方向へ散乱されて、蛍光体粒子2による蛍光発光に寄与しない励起光の割合を低減することを意図する。
【0018】
また、「蛍光層12における蛍光の導光が抑制される」とは、蛍光層12において発生した蛍光のうち、蛍光出射面11において全反射する蛍光を低減し、また、蛍光層12の側面に向かう蛍光を低減し、導光による蛍光のロスを低減することを意図する。ここで、蛍光出射面11は、蛍光層12の、基板1側と反対側の面であり、好ましい実施形態では空気と蛍光層との界面である。
【0019】
また、蛍光の取り出し効率とは、「蛍光出射面11から出てくる蛍光強度」/「励起光強度」を意図し、「励起光が蛍光層12に入射する効率」、「蛍光層12の発光効率」、および「発光した蛍光が蛍光出射面11から出ていく効率」等が含まれる。
【0020】
また、内部空間に充填材6を含む球殻状粒子4は、内部空間が空洞のままである中空粒子に比べて、熱伝導性に優れる。したがって、波長変換素子10は、中空粒子のみを含む従来の波長変換素子に比べて、蛍光層12の熱伝導率が向上されている。そのため、波長変換素子10は、蛍光層12が効率的に冷却され易く、蛍光層12の熱による焼損が防止され、良好な耐久性を示す。
【0021】
(基板1)
波長変換素子10が反射型である場合、基板1は、光を反射する反射性基板であり、励起光は、波長変換素子10の蛍光出射面11の側から入射する。すなわち、蛍光出射面11と、励起光入射面とは同一面である。
【0022】
反射性基板としては、特に限定されないが、金属基板、例えば、アルミ基板、高反射のアルミナ基板、白色完全散乱基板等を用いることができる。基板1上に銀等の高反射膜がコーティングされていてもよい。
【0023】
波長変換素子10が透過型である場合、基板1は、光を透過する透光性基板であり、励起光は、波長変換素子10の蛍光出射面11と対向する側から入射する。すなわち、蛍光出射面11と対向する面に、励起光入射面が配される。透光性基板としては、特に限定されないが、ガラス基板、サファイヤ基板等を用いることができる。
【0024】
基板1の厚さは、波長変換素子10の用途等に応じて適宜に設定することができる。
【0025】
(蛍光層12)
蛍光層12は、複数の蛍光体粒子2、複数の球殻状粒子4、および、バインダ3を含む蛍光組成物からなる。
【0026】
バインダ3は、無機化合物を含むバインダであってもよく、有機化合物を含むバインダであってもよい。無機化合物としては、例えば、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)等が挙げられる。有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0027】
蛍光体粒子2は、励起光により所定の波長域の蛍光を発する従来公知の蛍光体粒子を用いることができる。このような蛍光体粒子としては、例えば、YAG(YAl12:Ce)、LuAG(LuAL12:Ce)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
蛍光体粒子2の平均粒径D50は、特に限定されないが、発光効率の観点からは、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、蛍光層12の膜厚と熱マネジメントの観点から50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
球殻状粒子4は、球殻5内に内部空間を備え、少なくとも一部の球殻状粒子4は、内部空間に充填材を含む。
【0029】
球殻状粒子4を構成する球殻5は、多孔質または非多孔質の無機材料からなる。球殻5の形状は、内部空間に空気または充填材6を保持し得る略球形状であればよく、完全な球形状であっても、球の一部が欠けた形状、例えば、殻壁に穴が開いた形状であってもよい。
【0030】
球殻状粒子4の平均粒径D50は、特に限定されないが、散乱性の観点からは、100nm以上であることが好ましく、200nm以上であることがより好ましい。また、蛍光体粒子2とのパッキングの観点から10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0031】
球殻5を構成する無機材料としては、蛍光体粒子2が出射する蛍光の少なくとも一部を反射させる性質を有する任意の無機材料を用いることができる。このような無機材料としては、例えば、アルミナ、シリカ、SiO・Al、ゼオライト、MgO、CaO、La等が挙げられ、アルミナおよびシリカを特に好ましく用いることができる。
【0032】
球殻5の内部空間に充填される充填材6は、無機化合物であっても、有機化合物であってもよい。これらの無機化合物および有機化合物としては、バインダ3の構成材料として例示した材料を用いることができる。
【0033】
球殻状粒子4を構成する球殻5の製造方法としては、特に限定されず、無機微粒子を製造する公知の方法、例えば、水溶液または乳濁液から不溶性の沈殿として球殻5を沈殿させる沈殿法、溶媒を蒸発させることにより、球殻5を析出させる溶媒蒸発法、原料の融解物を噴霧する方法等を用いることができる。必要に応じて、焼結等を行うことにより、多孔質化してもよい。
【0034】
球殻5の内部空間に充填材6を充填する充填工程は、浸漬、噴霧、塗布等により、球殻5に充填材6を含む液体を浸透させることにより行われる。充填工程の後に、必要に応じて、球殻5の外表面に付着した充填材6を除去する洗浄工程、および、乾燥工程をさらに含んでもよい。
【0035】
一実施形態において、球殻5および充填材6の少なくとも一方は、バインダ3を構成する材料と、屈折率が異なる材料からなることが好ましい。球殻5および充填材6の少なくとも一方とバインダ3とが、屈折率が互いに異なる材料からなることにより、球殻状粒子4の散乱効果が高まり、球殻5の内部空間に残存する空気による散乱効果と相まって、蛍光層12における蛍光の導光を確実に抑制することができる。
【0036】
一実施形態において、球殻5と充填材6とは、屈折率が互いに異なる材料からなることが好ましい。例えば、充填材6を構成する材料の屈折率は、球殻5を構成する材料の屈折率よりも低いことが好ましい。球殻5と充填材6とが、屈折率が互いに異なる材料からなることにより、球殻状粒子4の散乱効果が高まり、球殻5の内部空間に残存する空気による散乱効果と相まって、蛍光層12における蛍光の導光を確実に抑制することができる。
【0037】
球殻5と充填材6とが、屈折率が互いに異なる材料からなる実施形態において、球殻5または充填材6を構成する材料と、バインダ3を構成する材料とは、同じであっても異なっていてもよい。製造工程の簡易化の観点からは、充填材6を構成する材料と、バインダ3を構成する材料とが同じであることが好ましい。充填材6を構成する材料と、バインダ3を構成する材料とが同じであることにより、蛍光層12を構成する蛍光組成物の調製に先立って、球殻5の内部空間に充填材6を充填する充填工程を別に設ける必要がない。蛍光組成物の調製において、バインダ3と球殻5とを直接混合することにより、球殻5の内部空間にバインダ3を充填することができる。
【0038】
充填材6を構成する材料とバインダ3を構成する材料とが同じであり、充填工程を別に設けない場合は、バインダ3と球殻5とを混合した後、且つ、基板1の上に蛍光組成物を塗布する前に、球殻5の内部空間にバインダ3を浸透させる浸透工程を行う。浸透工程は、所望量のバインダ3が球殻5の内部空間に浸透するまでの所定時間、球殻5とバインダ3との混合物を静置するかまたは撹拌することにより、行うことができる。
【0039】
一実施形態において、バインダ3および充填材6は、共に、熱伝導性の高い同一の材料、例えば、アルミナからなり、球殻5は、これらとは異なる材料からなることが好ましい。これにより、熱伝導性に優れた蛍光層12を、簡易な手順で製造することができる。
【0040】
蛍光層12に占める蛍光体粒子2の割合は、所望の発光強度等に応じて適宜に設定することができるが、光の利用効率および膜厚の観点からは、例えば、蛍光層12に対して30体積%以上であることが好ましく、50体積%以上であることがより好ましい。また、膜強度の観点からは75体積%以下であることが好ましく、70体積%以下であることがより好ましい。
【0041】
蛍光層12に占める球殻状粒子4の割合は、散乱性の観点からは、例えば、蛍光層12に対して5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましい。また、膜強度の観点からは25体積%以下であることが好ましく、20体積%以下であることがより好ましい。
【0042】
蛍光層12の厚さは、特に限定されず、波長変換素子10の用途等に応じて適宜に設定することができる。
【0043】
(さらなる機能層)
波長変換素子10は、基板1と蛍光層12との間に、さらなる機能層を備えていてもよい。このような機能層としては、例えば、散乱粒子と第2のバインダとを含む散乱層が挙げられる。
【0044】
基板1と蛍光層12との間に屈折率が高い散乱粒子を含む散乱層が配置されていることにより、蛍光出射面11とは反対方向へ向かった蛍光を散乱し、蛍光出射面11側へ向かわせることができる。そのため、導光による蛍光のロスを抑制することができる。また、蛍光層12に入射したが、蛍光体粒子2による蛍光発光に直接寄与することなく、蛍光層12を透過した励起光を散乱層によって散乱することにより、励起光の光路長が伸びるため、励起光の利用効率を向上させることができる。そのため、蛍光発光強度を高めることができる。また、同一の蛍光発光強度を有する波長変換素子に比べて、蛍光層12の厚さを薄くすることができる。つまり、蛍光体粒子2および球殻状粒子4の量を減らすことができる。
【0045】
散乱粒子は、蛍光層12を構成するバインダ3および蛍光体粒子2、並びに、散乱層を構成する第2のバインダよりも屈折率が高い。散乱粒子としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられるが、中でも、酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンは、ルチル型の結晶構造を有することが好ましい。
【0046】
第2のバインダは、蛍光層12を構成するバインダ3で例示したバインダを用いることができる。蛍光層12を構成するバインダ3と、散乱層を構成する第2のバインダとは、異なるバインダであってもよいが、同一のバインダであることが好ましい。当該構成であることにより、蛍光層12と散乱層との間での界面ロスを低減することにおいて有効である。ここで、「界面ロスを低減すること」とは、蛍光層12と散乱層との接触面から蛍光層12の側面に導光する励起光および蛍光を低減して、当該接触面から蛍光層12における当該接触面に対向する面に導光する励起光および蛍光を増加することを意図する。
【0047】
散乱層に占める散乱粒子の割合は、特に限定されないが、例えば、散乱層に対して10~75体積%程度である。当該構成であることにより、基板1への密着性を有しつつ、上述した効果を奏することができる。
【0048】
散乱層の厚さは、20~50μmであることが好ましい。
【0049】
また、散乱層の代わりにまたは散乱層の形成と共に、基板1の蛍光層12または散乱層との接触面に凹凸を形成してもよい。当該凹凸によっても、蛍光を散乱させて導光による蛍光のロスを抑制し、励起光を散乱させて励起光の光路長を伸ばすことにより励起光の利用効率を向上させることができる。
【0050】
(波長変換素子10の製造方法)
次に、一例を挙げて、本実施形態に係る波長変換素子10の製造方法を説明する。
【0051】
本実施形態に係る波長変換素子10は、蛍光体粒子2、バインダ3および球殻状粒子4を含む蛍光組成物を、基板1の上に塗布し、必要に応じて乾燥および/または硬化させて蛍光層12を形成することにより、好適に製造することができる。
【0052】
蛍光組成物を基板1上に塗布する方法としては、スプレー塗布、インクジェット塗布、ディスペンサ塗布、スクリーン印刷、ディップ法等の慣用の方法を用いることができる。
【0053】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0054】
(波長変換素子20の構成)
図2は、本実施形態に係る波長変換素子20を模式的に示した断面図である。また、図3は、本実施形態に係る波長変換素子20の断面のSEM画像であり、図4は、同表面のうち、球殻状粒子4を割断して得られる断面を含む領域を拡大して示すSEM画像である。
【0055】
図2に示すように、本実施形態に係る波長変換素子20は、複数の球殻状粒子4a、4b、4c、4dにおいて、充填材6による内部空間の充填率が互いに異なる点において、実施形態1の波長変換素子10と異なる。その他の各構成は、実施形態1において説明した構成と同じである。
【0056】
波長変換素子20の蛍光層12中には、内部空間の全てが充填材6で埋められている球殻状粒子4a、内部空間の一部が充填材6で埋められている球殻状粒子4b、4c、および、内部空間に充填材6を実質的に含まず、空気7のみを含む球殻状粒子4dが混在していてよい。
【0057】
球殻状粒子4は、充填材6の充填率が低いほど、散乱性に優れ、充填材6の充填率が高いほど、熱伝導性に優れる。充填率が互いに異なる球殻状粒子4a、4b、4c、4dが混在することにより、高い散乱性と、高い熱伝導性とを同時に確保することができる。また、充填率が互いに異なる球殻状粒子4a、4b、4c、4dの混合比を調整することにより、散乱性と熱伝導性との所望のバランスを達成することができる。球殻状粒子4の充填率の制御は、球殻状粒子4の製造方法の充填工程において、球殻5に充填材6を含む液体を浸透させる浸透時間を調整すること等により行うことができる。
【0058】
充填率が互いに異なる球殻状粒子4a、4b、4c、4dは、比重の違いにより、蛍光層12の厚み方向において、互いに異なる位置に分布する傾向がある。具体的には、図5に示すように、充填材6の充填率が低いほど蛍光出射面11側に分布し、充填材6の充填率が高いほど基板1側に分布する傾向がある。したがって、蛍光層12のうち、蛍光出射面11側においては、主に、散乱性に優れた球殻状粒子4により、蛍光層12における蛍光の導光を抑制する効果が得られる。また、蛍光層12のうち、基板1側においては、主に、熱伝導性に優れた球殻状粒子4により、蛍光層12の熱を基板1側に速やかに伝達し、蛍光層12を効率的に冷却する効果が得られる。
【0059】
充填率が互いに異なる球殻状粒子4a、4b、4c、4dが、それぞれの比重に応じて分布する結果、図3のSEM画像に示すように、蛍光層12の全体にわたって、球殻状粒子4が分散する。また、内部空間の一部が充填材6で埋められている球殻状粒子4b、4cにおいて、充填材の充填様式は特に限定されない。充填材6は、図4のSEM画像に示すように、球殻5の内壁上に付着するように充填されており、内部空間の中心部は空洞のままであってもよい。または、充填材6は、内部空間の中心部に位置するように充填されていてもよい。
【0060】
〔実施形態3〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0061】
(波長変換素子30の構成)
図6は、本実施形態に係る波長変換素子30を模式的に示した断面図である。また、図7は、本実施形態に係る波長変換素子30の断面のSEM画像であり、図8は、同表面のうち、球殻状粒子4を割断して得られる断面を含む領域を拡大して示すSEM画像である。
【0062】
図6~8に示すように、本実施形態に係る波長変換素子30は、蛍光層12において、球殻状粒子4の外側表面と、これを覆うバインダ3との間の少なくとも一部に、球殻外空間8を備える点において、実施形態1の波長変換素子10または実施形態2の波長変換素子20と異なる。その他の各構成は、実施形態1および実施形態2において説明した構成と同じである。
【0063】
球殻外空間8は、球殻状粒子4の外側表面に沿って設けられる空気からなる層である。球殻外空間8を構成する空気は、バインダ3および球殻5を構成する材料との屈折率差が大きい。したがって、蛍光層12が球殻外空間8を備えることにより、高い散乱性が得られ、導光抑制効果が一層高まる。また、球殻外空間8は、球殻状粒子4の外側表面に沿って設けられるため、比重の軽い空気からなる層でありながら、蛍光層12の表面付近に偏在することなく、バインダ3内に均一に分散される。したがって、波長変換素子30内への励起光の入射効率を向上し、かつ、蛍光層12における蛍光の導光を抑制し、蛍光の取り出し効率を一層向上することができる。
【0064】
(波長変換素子30の製造方法)
本実施形態に係る波長変換素子30は、実施形態1の波長変換素子10または実施形態2の波長変換素子20の製造方法と同様にして、蛍光組成物を基板1上に塗布し、必要に応じて乾燥および/または硬化した後で、球殻5の少なくとも一部を溶解等により除去し、球殻外空間8を形成することにより、好適に製造することができる。
【0065】
球殻5の少なくとも一部を除去する方法としては、基板1上に塗布された蛍光組成物を酸性溶液またはアルカリ性溶液に浸漬し、球殻5の外表面を溶解する方法等が挙げられる。
【0066】
〔実施形態4〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0067】
〔発光システムの構成〕
図11は、本実施形態に係る発光システムの構成を示す平面図(xy平面)である。当該発光システムは、上記実施形態1~3に係る少なくとも何れかの波長変換素子10、20、30を、波長変換素子148a(すなわち蛍光源)として備える蛍光ホイール102aである。
【0068】
図12は、本実施形態4に係る発光システムの構成を示す側面図(xz平面)である。蛍光ホイール102aは、励起光源から出射された励起光を受けるホイール141aの表面の周方向の少なくとも一部に、波長変換素子148aが配置されている。図11に示すように、波長変換素子148aは、同心円状にホイール141a上に配置されていることが好ましい。
【0069】
〔実施形態5〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0070】
〔発光システムの構成〕
図13は、本実施形態に係る発光システムの構成を示す概略図である。当該発光システムは、上記実施形態1~3に係る少なくとも何れかの波長変換素子10、20、30を、波長変換素子148a(すなわち蛍光源)として備える光源装置140である。図14は、光源装置140の光源モジュール101の構成を示す側面図(xz平面)である。
【0071】
光源装置140は、蛍光ホイール102aと、蛍光ホイール102aを回転させる駆動装置142と、波長変換素子148aに励起光14を照射する励起光源13とを備えている。光源装置140は、蛍光ホイール102aの回転に伴い、少なくとも蛍光ホイール102aの表面の周方向に配置された波長変換素子148aの蛍光層に励起光14が入射した際に、蛍光117を出射する。
【0072】
光源装置140は、好ましくはプロジェクタ等に用いられる。光源装置140では、励起光源13は、波長変換素子148aの蛍光層を励起する波長の励起光14を出射する青色レーザ光源であるのが好ましい。好ましい実施形態では、YAG、LuAG等の蛍光体粒子を励起する青色レーザダイオードが用いられる。波長変換素子148aの蛍光層を照射する励起光14は、光路上にてレンズ144a、144b、144cを通過することができる。
【0073】
励起光14の光路上にミラー145が配置されていてもよい。ミラー145は半透鏡(ハーフミラー)であるのが好ましい。
【0074】
蛍光ホイール102aは、ホイール固定具146によって、駆動装置142の回転軸147に固定される。駆動装置142は好ましくはモータであり、モータの回転シャフトである回転軸147に、ホイール固定具146によって固定された蛍光ホイール102aが、モータの回転に伴い回転する。
【0075】
蛍光ホイール102aの表面上の周辺部に配置された波長変換素子148aが、励起光14を受けて蛍光117を出射し、ミラー145を透過して蛍光を出射する。波長変換素子148aは、蛍光ホイール102aの回転に伴い回転するため、随時回転しながら、蛍光117を出射する。
【0076】
図15および図16は、光源装置140の蛍光ホイールの変形例の構成を示す平面図(xy平面)である。図15および図16に示すように、ホイールは、セグメントの一部を励起光14が透過する透過部143を備えたホイール141bとすることができる。好ましい実施形態では、透過部143はガラスからなることが好ましい。かかるセグメント構成とすることにより、励起光14を1つの蛍光ホイールで複数の波長に変換させることが可能となる。図15に示すように、波長変換素子148bを、緑色に相当する波長を蛍光発光する蛍光層12aを備えるセグメントと、黄色に相当する波長を蛍光発光する蛍光層12bを備えるセグメントとに分割した蛍光ホイール102bとしてもよい。
【0077】
また、図16に示すように、波長変換素子148cを、緑色に相当する波長を蛍光発光する蛍光層12aを備えるセグメントと、黄色に相当する波長を蛍光発光する蛍光層12bを備えるセグメントと、赤色に相当する波長を蛍光発光する蛍光層12cを備えるセグメントとに分割した蛍光ホイール102cとしてもよい。蛍光ホイールを周方向に複数のセグメントに分割し、蛍光層をセグメント毎に塗り分けることにより、様々な色を作り出すことができる。
【0078】
〔実施形態6〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0079】
〔発光システムの構成〕
図17は、本実施形態に係る発光システムの構成を示す概略図である。当該発光システムは、上記実施形態1~3に係る少なくとも何れかの波長変換素子10、20、30を、波長変換素子81(すなわち蛍光源)として備える光源装置80である。光源装置80は、波長変換素子81と、波長変換素子81に励起光を照射する励起光源13と、波長変換素子81から出射した蛍光117を反射させる反射面を有するリフレクタ111とを備えている。リフレクタ111の反射面は、入射した光を一定方向に平行に出射するように反射させる形状を有している。
【0080】
光源装置80は、好ましくは反射型車両用前照灯具(レーザヘッドライト)である。励起光源13は、波長変換素子81の蛍光層を励起する波長の励起光14を出射する青色レーザ光源であるのが好ましい。リフレクタ111は、半放物面ミラーから構成されるのが好ましい。放物面をxy平面に平行に上下に2分割して半放物面とし、その内面はミラーになっているのが好ましい。リフレクタ111には、励起光14が通過する透孔がある。波長変換素子81は、青色の励起光14によって励起され、可視光の長波長域(黄色波長)の蛍光117を発する。また、励起光14は、波長変換素子81の表面にて反射され、拡散反射光118ともなる。波長変換素子81は、放物面の焦点の位置に配置される。波長変換素子81が、放物面ミラーの焦点の位置にあるので、波長変換素子81から出射された蛍光117、拡散反射光118はリフレクタ111へ向い、その表面にて反射すると、一様に出射面112に直進する。蛍光117と拡散反射光118とが混ざり合った白色光が平行光として出射面112から出射する。
【0081】
〔実施形態7〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0082】
〔発光システムの構成〕
図18は、本実施形態に係る発光システムの構成を示す概略図である。当該発光システムは、上記実施形態1~3に係る少なくとも何れかの波長変換素子10、20、30を、波長変換素子(すなわち蛍光源)として備える投影装置100である。投影装置100は、光源装置と、蛍光ホイールの回転位置を取得する回転位置センサ103と、回転位置センサ103からの出力情報に基づいて励起光源13を制御する光源制御部104と、表示素子107と、光源装置からの光を表示素子107まで導光する光源側光学系106と、表示素子107からの投影光をスクリーンに投影する投影側光学系108とを備えている。投影装置100は、回転位置センサ103により取得された蛍光ホイールの回転位置の情報により、励起光源13の出力を制御する。光源装置は、励起光源13から出射された励起光14が通過する周方向の少なくとも一部に、波長変換素子が周方向に複数セグメントに分割されて配置された蛍光ホイールを備えているが、上述したセグメントに分割されていない蛍光ホイール102aであってもよい。
【0083】
例えば、図16のように蛍光ホイール102cのセグメントの一部に透過部143を設けた場合、青色発光の励起光14は透過部143を介して蛍光ホイール102cを透過する。波長変換素子148cに照射した励起光14は、光路上にてミラー109a~109cおよび光源側光学系106を経由することができる。光源側光学系106はダイクロイックミラーであるのが好ましい。好ましいダイクロイックミラーは、45度で入射した青色の光は反射させ、赤色および緑色の光は透過させることができる。
【0084】
より詳細に検討すると、上記光学特性を備えたダイクロイックミラーを光源側光学系106に採用することにより、ダイクロイックミラーに入射する励起光14による青色の光は反射されて蛍光ホイール102cに向けられる。蛍光ホイール102cの回転のタイミングにより、青色の光は透過部143を介して蛍光ホイール102cを透過する。蛍光ホイール102cの回転のタイミングにより、透過部143以外のセグメントに照射された励起光14は、波長変換素子148c(蛍光層12a~12c)を照射し、波長変換素子148c(蛍光層12a~12c)を蛍光発光させる。セグメント毎に蛍光層12aでは緑色波長帯域の蛍光が発光され、蛍光層12bでは黄色波長帯域の蛍光が発光され、蛍光層12cでは赤色波長帯域の蛍光が発光される。蛍光発光された緑色、黄色および赤色の光は、ダイクロイックミラーを透過して表示素子107に入射する。透過部143を透過した青色の光は、ミラー109a~109cを介して再度ダイクロイックミラーに入射し、ダイクロイックミラーで再度反射されて表示素子107に入射する。
【0085】
好ましい実施形態では、プロジェクタ(投影装置100)は、光源モジュール101と、表示素子107と、光源側光学系106(ダイクロイックミラー)と、投影側光学系108と、を備えることができる。光源側光学系106(ダイクロイックミラー)は、光源モジュール101からの光を上記表示素子107まで導光し、投影側光学系108は、上記表示素子107からの投影光をスクリーン等に投影することができる。好ましい実施形態では、表示素子107はDMD(デジタルミラーデバイス)であるのが好ましい。投影側光学系108は投影部レンズの組み合わせからなるのが好ましい。
【0086】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る波長変換素子(10、20、30)は、基板(1)と、前記基板(1)上に配置された蛍光層とを含み、前記蛍光層は、複数の蛍光体粒子(2)、球殻(5)を備える複数の球殻状粒子(4)、および、バインダ(3)を含み、前記球殻状粒子(4)は、前記球殻(5)内に内部空間を備え、少なくとも一部の前記複数の球殻状粒子(4)は、前記内部空間に充填材(6)を含む構成である。
【0087】
本開示の態様2に係る波長変換素子(20、30)は、上記の態様1において、前記内部空間に前記充填材(6)を含む前記複数の球殻状粒子(4)の少なくとも一部が、前記充填材(6)による前記内部空間の充填率が互いに異なる構成としてもよい。
【0088】
本開示の態様3に係る波長変換素子(10、20、30)は、上記の態様1または態様2において、前記球殻(5)と前記充填材(6)とが、屈折率が互いに異なる材料からなる構成としてもよい。
【0089】
本開示の態様4に係る波長変換素子(10、20、30)は、上記の態様3において、前記充填材(6)と前記バインダ(3)とが、同一の材料からなる構成としてもよい。
【0090】
本開示の態様5に係る波長変換素子(30)は、上記の態様1~4の何れかにおいて、前記球殻状粒子(4)の外側表面と、これを覆うバインダ(3)との間の少なくとも一部に球殻外空間(8)を備える構成としてもよい。
【0091】
本開示の態様6に係る発光システムは、蛍光源を備える発光システムであって、上記蛍光源が、上記の態様1~5の何れかに記載の波長変換素子(10、20、30)である構成である。
【0092】
本開示の態様7に係る発光システムは、上記の態様6において、蛍光ホイール(102a、102b、102c)である発光システムであって、ホイール(141a、141b)をさらに備え、前記蛍光源が、前記ホイール(141a、141b)の表面の周方向の少なくとも一部に配置されている構成である。
【0093】
本開示の態様8に係る発光システムは、上記の態様6において、光源装置(140)である発光システムであって、ホイール(141a、141b)と、前記ホイール(141a、141b)を回転させる駆動装置(142)と、前記蛍光源に励起光(14)を照射する励起光源(13)と、をさらに備え、前記蛍光源が、前記ホイール(141a、141b)の表面の周方向の少なくとも一部に配置されており、前記ホイール(141a、141b)の回転に伴い、前記蛍光源に励起光(14)が入射した際に、前記蛍光源が蛍光(117)を出射する構成である。
【0094】
本開示の態様9に係る発光システムは、上記の態様6において、車両用前照灯具である発光システムであって、前記蛍光源に励起光(14)を照射する励起光源(13)と、前記蛍光源から出射した蛍光(117)を反射させる反射面を有するリフレクタ(111)と、をさらに備え、前記リフレクタ(111)の反射面が、入射した光を一定方向に平行に出射するように反射させる形状を有する構成である。
【0095】
本開示の態様10に係る発光システムは、上記の態様6において、投影装置(100)である発光システムであって、表示素子(107)と、前記蛍光源からの蛍光を前記表示素子(107)まで導光する光源側光学系(106)と、前記表示素子(107)からの投影光をスクリーンに投影する投影側光学系(108)と、をさらに備える構成である。
【0096】
本開示の態様11に係る発光システムは、上記の態様6において、投影装置(100)である発光システムであって、ホイールと、前記ホイールを回転させる駆動装置と、前記蛍光源に励起光(14)を照射する励起光源(13)と、前記ホイールの回転位置を取得する回転位置センサ(103)と、前記回転位置センサ(103)からの出力情報に基づいて励起光源(13)を制御する光源制御部(104)と、表示素子(107)と、前記蛍光源からの蛍光を前記表示素子(107)まで導光する光源側光学系(106)と、前記表示素子(107)からの投影光をスクリーンに投影する投影側光学系(108)と、をさらに備え、前記ホイールの表面の、前記励起光源(13)から出射された励起光(14)が通過する周方向の少なくとも一部に、前記蛍光源が周方向に複数セグメントに分割されて配置されており、前記ホイールの回転に伴い、前記蛍光源に励起光(14)が入射した際に、前記蛍光源が蛍光を出射し、前記回転位置センサ(103)により取得された前記ホイールの回転位置の情報により前記励起光源(13)の出力を制御する構成である。
【0097】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 基板
2 蛍光体粒子
3 バインダ
4、4a、4b、4c、4d 球殻状粒子
5 球殻
6 充填材
7 空気
8 球殻外空間
10、20、30、81、148a、148b、148c 波長変換素子
11 蛍光出射面
12、12a、12b、12c 蛍光層
13 励起光源
14 励起光
21 中空粒子
80、140 光源装置
100 投影装置
101 光源モジュール
102a、102b、102c 蛍光ホイール
103 回転位置センサ
104 光源制御部
106 光源側光学系
107 表示素子
108 投影側光学系
109a、145 ミラー
111 リフレクタ
112 出射面
117 蛍光
118 拡散反射光
141a、141b ホイール
142 駆動装置
143 透過部
144a レンズ
146 ホイール固定具
147 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18