(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165057
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】イリジウム触媒を用いる還元的酸化反応
(51)【国際特許分類】
C07C 45/00 20060101AFI20231108BHJP
C07C 47/40 20060101ALI20231108BHJP
C07C 47/42 20060101ALI20231108BHJP
C07C 47/21 20060101ALI20231108BHJP
C07C 47/232 20060101ALI20231108BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20231108BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20231108BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
C07C45/00
C07C47/40
C07C47/42
C07C47/21
C07C47/232
C07F7/18 H
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075637
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】598014814
【氏名又は名称】株式会社トヨタコンポン研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神島 尭明
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 順
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4H049
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC74A
4G169BC74B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169BD12A
4G169BD15A
4G169BD15B
4G169BE03A
4G169BE03B
4G169BE26A
4G169BE26B
4G169BE36A
4G169BE36B
4G169BE41A
4G169BE41B
4G169BE46A
4G169CB02
4G169CB41
4G169CB72
4G169DA02
4H006AA02
4H006AC45
4H006BA22
4H006BE20
4H039CA62
4H039CB20
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ23
4H049VR23
4H049VR41
4H049VS16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水素ガスとイリジウム触媒を用いた還元的酸化反応によるエノン構造を有する化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】式(I)の化合物から、イリジウム触媒と水素を用いることを特徴とする、式(II)の化合物の製造方法。
(式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、R
1とR
2、R
2とR
3の2つの隣接する置換基は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよい3~12員の炭素環を形成してもよく、R
4は、水素原子または保護基を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物から、イリジウム触媒と水素を用いることを特徴とする、式(II)の化合物
(式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、R
1とR
2、R
2とR
3の2つの隣接する置換基は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよい3~12員の炭素環を形成してもよく、R
4は、水素原子または保護基を示す。)に変換する工程を含む、式(II)の化合物の製造方法。
【請求項2】
R4は水素原子である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
R4は保護基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
保護基はシリル系保護基である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
シリル系保護基は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、ジメチルイソプロピル、ジエチルイソプロピル、ジメチルテキシルシリル、2-ノルボロニルジメチル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、またはジ-tert-ブチルメチルシリルである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
炭化水素基はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはアラルキル基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
炭化水素基はC1-6アルキル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、またはC7-16アラルキル基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
R1とR2の2つの隣接する置換基は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよい炭素環を形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
R1とR2の2つの隣接する置換基は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよい5~8員の炭素環を形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
イリジウム触媒は、1価のイリジウム触媒である、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
イリジウム触媒は、シクロオクタジエンイリジウム塩化物二量体またはクラブトリー触媒である、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
イリジウム触媒は、クラブトリー触媒である、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスとイリジウム触媒を用いる還元的酸化反応でエノン化合物の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
イリジウム触媒は、水素ガスとクラブトリー触媒と呼ばれる1価のイリジウム触媒を用いた反応は、炭素の2重結合を単結合へと還元することが知られている(特許文献1、非特許文献2)。
またイリジウム触媒は、2級のアルコールからケトンへの酸化反応も知られている(非特許文献1)。
イリジウム触媒はその配位子や価数によって、酸化あるいは還元反応を進行させることが可能な優れた触媒である。
そしていずれも、イリジウム触媒を利用した酸化反応、還元反応はいずれも反応箇所が一か所で、一工程の反応である。
しかし、イリジウム触媒を使用し、還元条件下での酸化反応はこれまでのどの文献でも報告されていなかった。そして、水素ガスとクラブトリー触媒を用いた還元条件であるにもかかわらず、1級のアルコールがアルデヒドへと酸化され、同時に近傍に存在する2級のアルコールが脱離反応を起こし、結果として複数個所を反応させて、多段階反応を起し、還元条件下でエノン構造を構築する反応も知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開公報 2019-218391
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Org. Lett. 2007,9,109-111
【非特許文献2】Angew Chem Int Ed - 2001 - Blankenstein - A New Class of Modular Phosphinite Oxazoline Ligands Ir―Catalyzed
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、1価のIr (イリジウム) 触媒を水素雰囲気下、協奏的アリルアルコールと反応させることで、1級アルコールが還元条件下で酸化する特異な反応し、同時に2級以上のアルコールは1級アルコールの酸化により生じたアルデヒド基を足がかりとして、脱離反応を起こす多段階型の反応により、最終生成物としてエノン化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、意外にも式(I)の化合物から、イリジウム触媒と水素を用いることを特徴とする、式(II)の化合物に変換する工程:
(式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、下記〔1〕に記載の通りである。)を含む、式(II)の化合物の製造方法を見出し、前記課題を解決可能であることを見出した。本発明者はこの知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記〔1〕から〔12〕項に記載の発明を提供することにより前記課題を解決したものである。〔1〕式(I)の化合物から、イリジウム触媒と水素を用いることを特徴とする、式(II)の化合物
(式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、R
1とR
2、R
2とR
3の2つの隣接する置換基は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよい3~12員の炭素環を形成してもよく、R
4は、水素原子または保護基を示す。)に変換する工程を含む、式(II)の化合物の製造方法。
〔2〕R
4は水素原子である、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕R
4は保護基である、〔1〕に記載の製造方法。
〔4〕保護基はシリル系保護基である、〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕シリル系保護基は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、ジメチルイソプロピル、ジエチルイソプロピル、ジメチルテキシルシリル、2-ノルボロニルジメチル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリルまたはジ-tert-ブチルメチルシリルである、〔4〕に記載の製造方法。
〔6〕炭化水素基はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基である、〔1〕に記載の製造方法。
〔7〕炭化水素基はC
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
6-14アリール基、またはC
7-16アラルキル基である、〔1〕に記載の製造方法。
〔8〕R
1とR
2の2つの隣接する置換基は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよい炭素環を形成する、〔1〕に記載の製造方法。
〔9〕R
1とR
2の2つの隣接する置換基は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよい5~8員の炭素環を形成する、〔1〕に記載の製造方法。
〔10〕イリジウム触媒は、1価のイリジウム触媒である、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔11〕イリジウム触媒は、シクロオクタジエンイリジウム塩化物二量体またはクラブトリー触媒である、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔12〕イリジウム触媒は、クラブトリー触媒である、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
今回見出いた「還元条件下での酸化反応」はこれまでのどの文献でも報告されておらず、イリジウム触媒の新たな利用法として提案できる。これは上述した水素ガスとクラブトリー触媒を用いた還元条件であるにもかかわらず、1級のアルコールがアルデヒドへと酸化されている。また同時に、近傍に存在する2級のアルコールが脱離反応を起こし、結果として還元条件下でエノン構造を構築する。
本発明の方法は、室温条件と温和な条件下で実施できる。本発明の方法を用いることにより、高収率でエノン化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明による方法は、以下のスキーム
(式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、上記の〔1〕に記載の通りである。)
によって示される。
【0009】
本明細書に記載された記号及び用語について説明する。
【0010】
炭化水素基とは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を意味する。
【0011】
アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基のようなC1-6アルキル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0012】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基およびシクロデシルのようなC3-10シクロアルキル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0013】
アリール基とは、例えば、フェニル基およびナフチル基のようなC6-14アリール基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0014】
アラルキル基とは、例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基および1-(1-ナフチル)エチル基のようなC7-16アラルキル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明の一実施態様において、R1とR2、R2とR3の2つの隣接する置換基は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよい3~12員の炭素環、好ましくは5~8員の炭素環を形成する。炭素環とは、飽和または部分不飽和炭素環を意味する。
【0016】
飽和炭素環とは、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカンおよびシクロドデカンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0017】
部分不飽和炭素環とは、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0018】
置換されていてもよい炭化水素基および置換されていてもよい3~12員の炭素環における置換されても良い置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、保護されたヒドロキシル基、オキソ基、アミノ基、C1~C6アルキル基、C1~C6ハロアルキル基、C1~C6アルコキシ基、C1~C6ハロアルコキシ基、C3-10シクロアルキル基およびC7-16アラルキル基から独立して選択される1、2または3個の置換基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0019】
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を示す。
【0020】
C1-6アルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0021】
C1~C6ハロアルキル基とは、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基および6,6,6-トリフルオロヘキシル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0022】
C1-6アルコキシ基とは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基およびヘキシルオキシ基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0023】
C1~C6ハロアルコキシ基とは、トリフルオロメトキシ基、クロロジフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、3,3,3-トリフルオロプロポキシ基、4,4,4-トリフルオロブトキシ基、5,5,5-トリフルオロペンチルオキシ基および6,6,6-トリフルオロヘキシル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0024】
C3-10シクロアルキル基とは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基およびシクロデシル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0025】
C6-14アリール基とは、フェニル基およびナフチル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0026】
C7-16アラルキル基とは、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基および1-(1-ナフチル)エチル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0027】
保護基または保護されたヒドロキシル基における保護基とは、シリル系保護基、エーテル系保護基、アシル系保護基およびアセタール系保護基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0028】
シリル系保護基とは、TMS、TES、TBS、TIPS、TBDPS、DMIPS、DEIPS、TDS、NDMS、TPS、DPMSまたはDTBMSを含むが、これらに限定されるものではない。
TMSとは、トリメチルシリル基を意味する。
TESとは、トリエチルシリル基を意味する。
TBSとは、t-ブチルジメチルシリル基を意味する。
TIPSとは、トリイソプロピルシリル基を意味する。
TBDPSとは、t-ブチルジプロピルシリル基を意味する。
DMIPSとは、ジメチルイソプロピルシリル基を意味する。
DEIPSとは、ジエチルイソプロピルシリル基を意味する。
TDSとは、トリデカニルシリル基を意味する。
NDMSとは、ノナニルジメチルシリル基を意味する。
TPSとは、トリプロピルシリル基を意味する。
DPMSとは、ジフェニルメチルシリル基を意味する。
DTBMSとは、ジ-tert-ブチルメチルシリル基を意味する。
【0029】
エーテル系保護基とは、ベンジル基およびtert-ブチル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0030】
アシル系保護基とは、アセチル基、ピバロイル基およびベンゾイル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0031】
アセタール系保護基とは、メトキシメチル基およびエトキシメチル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0032】
反応の条件について説明する。
式(I)の化合物から、イリジウム触媒と水素を用いることを特徴とし、式(II)の化合物の製造されることができる。
(イリジウム触媒)
【0033】
イリジウム触媒は、1価のイリジウム触媒を意味し、炭素数6~30の二重結合一つ以上有する環状炭化水素化合物、炭素数6~30の芳香族炭化水素化合物、炭素数2~30のヘテロ環化合物、窒素含有官能基を有する炭素数1~30の炭化水素化合物、酸素含有官能基を有する炭素数1~30の炭化水素化合物、硫黄含有官能基を有する炭素数1~30の炭化水素化合物およびリン含有官能基を有する炭素数1~30の炭化水素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を配位子とする錯体で、特に好ましくは、シクロオクタジエンイリジウム塩化物二量体、Ir2(OCH3)2(C8H12)2、クロロビス(シクロオクテン)イリジウム二量体、(クロロビス(シクロオクテン)イリジウムダイマー)またはクラブトリー触媒、好ましくはシクロオクタジエンイリジウム塩化物二量体、クラブトリー触媒、より好ましくはクラブトリー触媒を例示することができる。
【0034】
炭素数6~30の二重結合一つ以上有する環状炭化水素化合物とは、シクロオクタジエン、シクロオクテン等を例示することができる。
【0035】
炭素数6~30の芳香族炭化水素化合物とは、ベンゼンおよびナフタレン等を例示することができる。
【0036】
炭素数2~30のヘテロ環化合物とは、チオフェン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、フェナントロリン、チアゾール、オキサゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾールおよびトリアゾール等を例示することができる。
【0037】
窒素含有官能基を有する炭素数1~30の炭化水素化合物とは、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基およびイミノ基等の窒素含有官能基を有する炭化水素化合物を例示することができる。
【0038】
アルキルアミノ基とは、メチルアミノ基およびエチルアミノ基等を例示することができる。
【0039】
アリールアミノ基とは、フェニルアミノ基およびナフチル-2-アミノ基を例示することができる。
【0040】
アシルアミノ基とは、アセチルアミノ基およびルベンゾイルアミノ基を例示することができる。
【0041】
アルコキシカルボニルアミノ基とは、メトキシカルボニルアミノ基およびエトキシカルボニルアミノ基等を例示することができる。
【0042】
アリールオキシカルボニルアミノ基とは、フェノキシカルボニルアミノ基等を例示することができる。
【0043】
スルホニルアミノ基とは、メチルスルホニルアミノ基およびエチルスルホニルアミノ基等を例示することができる。
【0044】
イミノ基とは、メトキシイミノ基およびエトキシイミノ基等を例示することができる。
【0045】
酸素含有官能基を有する炭素数1~30の炭化水素化合物とは、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シリルオキシ基、カルボニル基およびエーテル基等の酸素含有官能基を有する炭化水素化合物を例示することができる。
【0046】
アルコキシ基とは、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基等を例示することができる。
【0047】
アリールオキシ基とは、フェノキシ基およびピリジルオキシ基等を例示することができる。
【0048】
アシルオキシ基とは、アセチルオキシ基およびベンゾイルオキシ基等を例示することができる。
【0049】
シリルオキシ基とは、トリメチルシリルオキシ基およびトリエチルシリルオキシ基等を例示することができる。
【0050】
カルボニル基とは、アセチル基およびベンゾイル基等を例示することができる。
【0051】
エーテル基とは、メトキシメチル基およびエトキシメチル基等を例示することができる。
【0052】
硫黄含有官能基を有する炭素数1~30の炭化水素化合物とは、アルキルチオ基、アリールチオ基、およびチオエーテル基等の硫黄含有官能基を有する炭化水素化合物を例示することができる。
【0053】
アルキルチオ基とは、メチルチオ基およびエチルチオ基等を例示することができる。
【0054】
アリールチオ基とは、フェニルチオ基および1-ナフチルチオ基等を例示することができる。
【0055】
チオエーテル基とは、メチルチオメチル基およびエチルチオメチル基等を例示することができる。
【0056】
リン含有官能基を有する炭素数1~30の炭化水素化合物とは、ジアルキルホスフィノ基、ジアリールホスフィノ基、トリアルキルホスフィノ基およびトリアリールホスフィノ基等のリン含有官能基を有する炭化水素化合物を例示することができる。
【0057】
ジアルキルホスフィノ基とは、ジメチルホスフィノ基及びジエチルホスフィノ基等を例示することができる。
【0058】
ジアリールホスフィノ基とは、ジフェニルホスフィノ基等を例示することができる
【0059】
トリアルキルホスフィノ基とは、トリメチルホスフィノ基及びトリエチルホスフィノ基等を例示することができる。
【0060】
トリアリールホスフィノ基とは、トリフェニルホスフィノ基等を例示することができる。
【0061】
(イリジウム触媒の使用量)
イリジウム触媒の使用量として、式(I)の化合物1モルに対して、0.1~500mmol%、好ましくは0.5~300mmol%、より好ましくは1~200mmol%、さらに好ましくは3~100mmol%、特に好ましくは5~50mmol%を例示することができる。
【0062】
(溶媒)
反応の円滑な進行等の観点から、本発明の反応は溶媒の存在下で実施することが好ましい。本発明の反応における溶媒は、反応が進行する限りは、いずれの溶媒でもよい。
【0063】
本発明の反応における溶媒としては、例えば、
水、
ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,3-ジクロロプロパン、1,4-ジクロロブタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ペンタクロロエタン、トリクロロトリフルオロメタン等、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、より好ましくはジクロロメタン)、
芳香族炭化水素誘導体類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、ベンゾトリフルオリド、4-クロロベンゾトリフルオリド、ジフルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ニトロベンゼン等、好ましくはトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン)、
ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等、好ましくはアセトニトリル)、
カルボン酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等)、
アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)等、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)より好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF))、
アルキル尿素類(例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)等)、
スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等)、
スルホン類(例えば、スルホラン等)、
炭酸エステル類(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)
アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等)、
エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメチルエーテル(DME)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、tert-アミルメチルエーテル(TAME)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジグリム(diglyme)、トリグリム(triglyme)、4-メトキシベンゼン、ジフェニルエーテル等)、および
任意の割合のそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。
【0064】
反応性および経済効率等の観点から、溶媒の好ましい例は、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素誘導体類、ニトリル類、カルボン酸エステル類、アミド類、および任意の割合のそれらの任意の組み合わせを含むが、本発明の反応における溶媒は当業者により適切に選択されることができる。しかしながら、本発明の反応における溶媒は当業者により適切に選択されることができる。
【0065】
溶媒の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。収率の向上、副生成物の抑制、および経済効率等の観点から、一般式(I)で表されるスルフィド誘導体(原料化合物)1モルに対して、0.01~10.0L(リットル)、好ましくは0.1~1.0Lを例示できる。しかしながら、本発明の反応における溶媒の使用量は当業者により適切に調整されることができる。2種以上の溶媒の組み合わせを用いるときは、2種以上の溶媒の割合は、反応が進行する限りは、いずれの割合でもよい。
【0066】
(反応温度)
本発明の反応温度は、特に制限されない。収率、反応収率およびエナンチオマー過剰率の向上、副生成物の抑制、ならびに経済効率等の観点から、0℃~50℃、好ましくは5℃~40℃、より好ましくは10℃~30℃の範囲を例示できる。
【0067】
(反応時間)
本発明の反応時間は、特に制限されない。一つの態様においては、収率、反応収率の向上、副生成物の抑制、および経済効率等の観点から、10分~24時間、好ましくは20分~5時間、より好ましくは30分~3時間の範囲を例示できる。
【0068】
(水素の導入方法)
水素の導入方法としては、バルーンのようなガス捕集風船、水素ボンベから導入管を利用する方法が提案される。
【0069】
明細書中、実施例の各物性の測定には次の機器を用いた。
1H核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR):AVANCE-400(Burker社製)、内部基準物質:テトラメチルシラン
13C核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR):AVANCE-400(Burker社製)、内部基準物質:テトラメチルシラン
質量分析:MircOTOF-Q II-S1(Burker社製)
【実施例0070】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明がこれに限定されないことはいうまでもない。