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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165113
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】差動増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20231108BHJP
   H03F 3/34 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H03F3/45
H03F3/34 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075757
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100163832
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直哉
(72)【発明者】
【氏名】中部 高臣
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AC13
5J500AF15
5J500AF17
5J500AF18
5J500AH29
5J500AH32
5J500AH39
5J500AK02
5J500AK12
5J500AK19
5J500AM13
5J500AT01
5J500AT06
5J500DP02
(57)【要約】
【課題】 高速動作が可能であり、かつ、サンプリング誤差の低減された差動増幅回路を提供する。
【解決手段】 サンプルホールド機能を備えた差動増幅回路100は、差動入力信号を差動増幅するメイン差動増幅器A1と、メイン差動増幅器A1の2つの差動出力端に接続されたスイッチ対SW4と、2つの差動出力端がメイン差動増幅器A1の2つの差動出力端に接続され、かつ、2つの差動入力端がスイッチ対SW3を介してメイン差動増幅器A1の2つの差動出力端に接続され、スイッチ対SW3がONとなることにより、メイン差動増幅器A1の2つの差動出力端間の差電圧を当該2つの差動出力端に負帰還させる補助差動増幅器A2と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルホールド機能を備えた差動増幅回路において、
差動入力信号を差動増幅するメイン差動増幅器と、
前記メイン差動増幅器の2つの差動出力端間に接続されたリセットスイッチと、
前記メイン差動増幅器の2つの差動出力端に各々の一端が接続されたスイッチ対と、
2つの差動出力端が前記メイン差動増幅器の2つの差動出力端に接続され、かつ、2つの差動入力端が前記スイッチ対を介して前記メイン差動増幅器の2つの差動出力端に接続され、前記スイッチ対がONとなることにより、前記メイン差動増幅器の2つの差動出力端間の差電圧を当該2つの差動出力端に負帰還させる補助差動増幅器と、
を有する差動増幅回路。
【請求項2】
前記補助差動増幅器の2つの差動入力端間にキャパシタが接続された請求項1に記載の差動増幅回路。
【請求項3】
メイン差動増幅器と、
第1のノード対と、前記メイン差動増幅器の2つの差動入力端に接続された第2のノード対との間に各々接続された第1のキャパシタ対と、前記第1のノード対と第1の基準電源との間に各々接続され、サンプリング期間においてONとなり、ホールド期間においてOFFとなる第1のスイッチ対とを有するサンプルホールド部と、
前記メイン差動増幅器の2つの差動出力端に接続された第3のノード対と、第4のノード対との間に各々接続された第2のキャパシタ対と、前記第4のノード対と第2の基準電源との間に接続され、前記サンプリング期間においてONとなり、前記ホールド期間においてOFFとなる第2のスイッチ対とを有する出力部と、
前記第3のノード対の各ノード間に接続され、前記サンプリング期間の開始時における前記サンプリング期間より短い期間ONとなる第3のスイッチと、
前記第3のノード対に各々の一端が接続され、前記サンプリング期間においてONとなり、前記ホールド期間においてOFFとなる第4のスイッチ対と、
2つの差動出力端が前記第3のノード対に接続され、かつ、2つの差動入力端が前記第4のスイッチ対を介して前記第3のノード対に接続され、前記第4のスイッチ対がONとなることにより前記第3のノード対の差電圧を前記第3のノード対に負帰還させる補助差動増幅器と、
前記補助差動増幅器の2つの差動入力端との間に接続された第4のキャパシタと、
を有する差動増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サンプルホールド機能を有する差動増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュ型AD変換回路等のアナログ回路では、サンプルホールド機能を備えた差動増幅回路が用いられる。図3はこの種の差動増幅回路の一例である従来の差動増幅回路100Aの構成を示す回路図である。この差動増幅回路100Aは、サンプルホールド部1と、メイン差動増幅器A1と、出力部2とを有する。
【0003】
サンプルホールド部1は、第1のキャパシタ対C1と、第1のスイッチ対SW1と、第1の基準電源VBIAS1とを有する。ここで、第1のキャパシタ対C1は、差動入力信号が与えられる第1のノード対N1と、メイン差動増幅器A1の2つの差動入力端に接続された第2のノード対N2との間に各々接続されている。また、第1のスイッチ対SW1は、第2のノード対N2と第1の基準電源VBIAS1との間に各々接続されている。
【0004】
出力部2は、第2のキャパシタ対C2と、第2のスイッチ対SW2と、第2の基準電源VBIAS2とを有する。ここで、第2のキャパシタ対C2は、メイン差動増幅器A1の2つの差動出力端に接続された第3のノード対N3と、差動増幅回路100Aの出力端である第4のノード対N4の間に各々接続されている。また、第2のスイッチ対SW2は、第4のノード対N4と第2の基準電源VBIAS2との間に各々接続されている。
【0005】
図4はこの差動増幅回路100Aの動作例を示すタイムチャートである。なお、図4において、Sはサンプリング期間の略語であり、Hはホールド期間の略語である。他の図2図6図7においても同様である。この差動増幅回路100Aにおいて、サンプリング期間には、第1のスイッチ対SW1および第2のスイッチ対SW2がONとされる。第1のスイッチ対SW1がONになると、第2のノード対N2は第1の基準電源VBIASに接続され、第2のノード対N2の差電圧が0Vとなる。この結果、メイン差動増幅器A1から第3のノード対N3に出力される電圧の差電圧がメイン差動増幅器A1の出力オフセット電圧に向かって変化する。また、第1のノード対N1からの差動入力信号により第1のキャパシタ対C1が充電される。また、第2のスイッチ対SW2がONになると、メイン差動増幅器A1の2つの差動出力端から出力される差動信号により第2のキャパシタ対C2が充電される。この第2のキャパシタ対C2に与えられる各電圧(すなわち、第3のノード対N3の各電圧)の差電圧はメイン差動増幅器A1の出力オフセット電圧に向かって変化する。
【0006】
そして、ホールド期間には、第1のスイッチ対SW1および第2のスイッチ対SW2がOFFとされる。これにより、第1のノード対N1の各電圧の第1のキャパシタ対C1に保持された各電圧からの変動分がメイン差動増幅器A1の2つの差動入力端に各々供給され、メイン差動増幅器A1は2つの差動入力端に対する差動信号の差分をゲインgm1倍して出力する。そして、メイン差動増幅器A1の2つの差動出力信号から第2のキャパシタ対C2に保持された電圧が差し引かれ、第4のノード対N4に出力される。ここで、第2のキャパシタ対C2に保持された各電圧の差分はメイン差動増幅器A1の出力オフセット電圧と一致している。このため、出力オフセット電圧の除去された差動出力信号が第4のノード対N4に出力されることとなる。
【0007】
ところで、第1のノード対N1に与えられる差動入力信号が大振幅の場合、ホールド期間においてメイン差動増幅器A1は、この大振幅の差動入力信号をゲインgm1で差動増幅して第3のノード対N3に出力する。そして、サンプリング期間になると、第1のスイッチ対SW1がONになることによって第2のノード対N2の差電圧が0Vになるため、第3のノード対N3の差電圧は大きな電圧値から0Vに向けて変化する。ここで、差動増幅回路100Aが高速動作し、サンプリング期間が短い場合には、第2のキャパシタ対C2を充放電するために、メイン差動増幅器A1の出力電流を増加させる必要がある。しかしながら、メイン差動増幅器A1に十分な出力電流を流せない場合には、図4に示すように、サンプリング期間内に第3のノード対の差電圧が収束せず、差動増幅回路100Aの動作に異常が発生する。
【0008】
特許文献1は、この問題を解決するため、図5に示す差動増幅回路100Bを提案している。この差動増幅器100Bは、図3の差動増幅器100Aの第3のノード対N3に対して、リセットスイッチである第3のスイッチSW3を接続した構成となっている。
【0009】
図6は差動増幅回路100Bの動作例を示すタイムチャートである。図6に示すように、差動増幅回路100Bでは、サンプリング期間の開始時に、第3のスイッチSW3をサンプリング期間より短い期間ONさせ、第3のノード対N3の差電圧を強制的に0Vにする。この動作により第3のノード対N3の差電圧の収束の改善が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009-21667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、図5の差動増幅回路100Bにおいて、メイン差動増幅器A1は出力オフセット電圧Vofsを有している。このため、第3のスイッチSW3がONからOFFに転じた後、第3のノード対N3の差電圧は、図7に示すように、0Vから出力オフセット電圧Vofsに向けて変化する。しかしながら、図7に示すように、第3のノード対N3の差電圧が出力オフセット電圧Vofsに収束する前にサンプリング期間が終了すると、その時点における第3のノード対N3の差電圧と出力オフセット電圧Vofsとの差分である残差電圧が発生し、第2のキャパシタ対C2の充電電圧にこの残差電圧分の誤差が発生する。これがサンプリング誤差となる。
【0012】
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、高速動作が可能であり、かつ、サンプリング誤差の低減された差動増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、サンプルホールド機能を備えた差動増幅回路において、差動入力信号を差動増幅するメイン差動増幅器と、前記メイン差動増幅器の2つの差動出力端間に接続されたリセットスイッチと、前記メイン差動増幅器の2つの差動出力端に各々の一端が接続されたスイッチ対と、2つの差動出力端が前記メイン差動増幅器の2つの差動出力端に接続され、かつ、2つの差動入力端が前記スイッチ対を介して前記メイン差動増幅器の2つの差動出力端に接続され、前記スイッチ対がONとなることにより、前記メイン差動増幅器の2つの差動出力端間の差電圧を当該2つの差動出力端に負帰還させる補助差動増幅器と、を有する差動増幅回路を提供する。
【0014】
この発明によれば、スイッチ対がONとなって、メイン差動増幅器の2つの差動出力端間の差電圧が当該2つの差動出力端に負帰還されることにより、メイン差動増幅器の出力オフセット電圧が補正される。具体的には、補助差動増幅器のゲインをgm2とした場合、メイン差動増幅器の出力オフセット電圧は1/gm2に補正される。従って、メイン差動増幅器の2つの差動出力端間の差電圧は、リセットスイッチによるリセット後、1/gm2に補正された出力オフセット電圧に向かって収束することとなり、収束が早期に完了する。よって、この発明によれば、差動増幅回路が高速動作する場合のサンプリング誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一実施形態である差動増幅回路の構成を示す回路図である。
図2】同差動増幅回路の動作を示すタイムチャートである。
図3】従来の差動増幅回路の構成例を示す回路図である。
図4】同差動増幅回路の動作例を示すタイムチャートである。
図5】従来の差動増幅回路の他の構成例を示す回路図である。
図6】同差動増幅回路の動作例を示すタイムチャートである。
図7】同差動増幅回路の他の動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1はこの発明の一実施形態である差動増幅回路100の構成を示す回路図である。この差動増幅回路100は、図5の差動増幅回路100Bに対し、第4のスイッチ対SW4と、補助差動増幅器A2と、第4のキャパシタC4とを追加した構成となっている。ここで、第4のスイッチ対SW4は、各スイッチの一端が第3のノード対N3に接続されており、サンプリング期間においてON、ホールド期間においてOFFとなる。補助差動増幅器A2は、2つの差動出力端が第3のノード対N3に接続され、かつ、2つの差動入力端が第4のスイッチ対SW4を介して第3のノード対SW3に接続されている。この補助差動増幅器A2は、第4のスイッチ対SW4がONとなることにより、第3のノード対N3の差電圧を第3のノード対N3に負帰還させ、第3のノード対N3に生じるメイン差動増幅器A1の出力オフセット電圧Vofsを補正する。具体的には、補助差動増幅器A2のゲインをgm2とした場合、出力オフセット電圧Vofsは、その1/gm2の出力オフセット電圧Vofsaに補正される。第4のキャパシタC4は、補助差動増幅器A2の2つの差動入力端間に接続されている。この第4のキャパシタC4は、サンプリング期間からホールド期間に転ずる直前に第3のノード対N3に発生した差電圧、すなわち、補正された出力オフセット電圧Vofsaをホールド期間中保持する役割を果たす。
【0018】
図2は差動増幅回路100の動作例を示すタイムチャートである。サンプリング期間の開始時において、サンプリング期間よりも短い期間、リセットスイッチである第3のスイッチSW3がONになると、第3のノード対N3の差電圧は強制的に0Vにリセットされる。
【0019】
一方、サンプリング期間には、第4のスイッチ対SW4がONとなり、第3のノード対N3に発生する差電圧が補助差動増幅器A2を介して第3のノード対N3に負帰還される。
【0020】
そして、第3のスイッチSW3がOFFになると、第3のノード対N3の差電圧は0Vからメイン差動増幅器A1の出力オフセット電圧に向けて変化する。このとき、第3のノード対N3に発生する差電圧は、補助差動増幅器A2を介して第3のノード対N3に負帰還されるため、メイン差動増幅器A1の出力オフセット電圧Vofsはその1/gm2の出力オフセット電圧Vofsaに補正される。このため、第3のノード対N3の差電圧は、この補正後の出力オフセット電圧Vofsaに収束しようとする。
【0021】
ここで、補正後の出力オフセット電圧Vofsaは、補正されていない出力オフセット電圧Vofsよりも小さい。従って、差動増幅回路100が高速動作し、サンプリング期間が短い場合でも、第3のノード対N3の差電圧は、サンプリング期間内に補正後の出力オフセット電圧Vofsaに収束する。そして、この補正後の出力オフセット電圧Vofsaを差電圧とする第3のノード対N3の各電圧が第2のキャパシタ対C2に保持される。
【0022】
ホールド期間になると、メイン差動増幅器A1は、第1のキャパシタ対C1を介して供給される差動入力信号を差動増幅して第3のノード対N3に出力する。このとき、補助増幅器A2は、メイン差動増幅器A1の2つの差動出力端に対し、第4のキャパシタC4に保持された差電圧、すなわち、補正後の出力オフセット電圧Vofsaに基づく負帰還を掛けるので、メイン差動増幅器A1の出力オフセット電圧は補正後の出力オフセット電圧Vofsaとなる。そして、ホールド期間において、メイン差動増幅器A1の2つの差動出力端の出力信号は、補正後の出力オフセット電圧Vofsaを差電圧として保持した第2のキャパシタ対C2を介して出力される。このため、出力オフセット電圧の除去された差動出力信号が得られる。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、差動入力信号を差動増幅するメイン差動増幅器A1と、メイン差動増幅器A1の2つの差動出力端に接続されたスイッチ対SW4と、2つの差動出力端がメイン差動増幅器A1の2つの差動出力端に接続され、かつ、2つの差動入力端がスイッチ対SW3を介してメイン差動増幅器A1の2つの差動出力端に接続され、スイッチ対SW3がONとなることにより、メイン差動増幅器A1の2つの差動出力端間の差電圧を当該2つの差動出力端に負帰還させる補助差動増幅器A2と、を設けたので、高速動作が可能であり、かつ、サンプリング誤差の低減された差動増幅回路を実現することができる。
【0024】
また、本実施形態によれば、高速動作を実現するために、メイン差動増幅器に流す電流を増加させる必要がないので、消費電力を増加させることなく、高速動作が可能であり、かつ、サンプリング誤差の低減された差動増幅回路を実現することができる。
【符号の説明】
【0025】
100……差動増幅回路、1……サンプルホールド部、2……出力部、N1……第1のノード対、N2……第2のノード対、SW1……第1のスイッチ対、VBIAS1……第1の基準電源、A1……メイン差動増幅器、N3……第3のノード対、SW3……第3のスイッチ、SW4……第4のスイッチ、C4……第4のキャパシタ、A2……補助差動増幅器、C2……第2のキャパシタ対、N4……第4のノード対、SW2……第2のスイッチ対、VBIAS2……第2の基準電源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7