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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165122
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両用紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20231108BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075779
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和那
(72)【発明者】
【氏名】前田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】原 拓也
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058DD07
4C058KK02
4C058KK12
4C058KK13
4C058KK28
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH01
4C180HH11
4C180HH17
(57)【要約】
【課題】電磁波の放射を抑制することができる車両用紫外線照射装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る車両用紫外線照射装置は、基板と;前記基板の一方の面の側に設けられ、紫外線を照射可能な放電ランプと;前記基板の一方の面の側に設けられ、前記放電ランプに、所定の周波数の駆動電圧を印加可能な点灯回路と;前記基板の他方の面に設けられたグランドパターンと;前記基板、前記放電ランプ、および前記点灯回路を収納する空間を有し、前記放電ランプと対向する孔を有する筐体と;前記筐体の外壁に設けられ、導電性を有するシールドと;前記筐体の内壁に設けられ、帯状を呈し、一方の端部が前記シールドと電気的に接続され、他方の端部が前記グランドパターンと電気的に接続され、導電性を有する、少なくとも1つの第1の導電部と;を具備している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と;
前記基板の一方の面の側に設けられ、紫外線を照射可能な放電ランプと;
前記基板の一方の面の側に設けられ、前記放電ランプに、所定の周波数の駆動電圧を印加可能な点灯回路と;
前記基板の他方の面に設けられたグランドパターンと;
前記基板、前記放電ランプ、および前記点灯回路を収納する空間を有し、前記放電ランプと対向する孔を有する筐体と;
前記筐体の外壁に設けられ、導電性を有するシールドと;
前記筐体の内壁に設けられ、帯状を呈し、一方の端部が前記シールドと電気的に接続され、他方の端部が前記グランドパターンと電気的に接続され、導電性を有する、少なくとも1つの第1の導電部と;
を具備した車両用紫外線照射装置。
【請求項2】
前記筐体の内壁であって、前記筐体の孔の周囲に設けられ、前記筐体の外壁に設けられた前記シールドと電気的に接続され、導電性を有する第2の導電部と;
導電性を有し、前記筐体の孔と対向し、前記放電ランプから照射された前記紫外線を透過可能な複数の開口を有し、前記第2の導電部と電気的に接続された窓と;
をさらに具備した請求項1記載の車両用紫外線照射装置。
【請求項3】
前記第1の導電部は、膜状を呈し、複数設けられ、
前記第2の導電部は、枠状、且つ膜状を呈している請求項2記載の車両用紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を照射する放電ランプを備えた紫外線照射装置がある。従来においては、この様な紫外線照射装置は、例えば、紫外線硬化型のインク、塗料、接着剤などの硬化、材料の表面改質、液晶の光配向などに用いられていた。また、紫外線には殺菌作用があるので、紫外線照射装置が、部材の表面に付着した細菌の殺菌やウィルスの不活性化などに用いられる場合もある。
近年においては、健康意識の高まりを反映して、自動車の車内や鉄道車両の車内などの比較的狭い閉鎖空間において、車内の雰囲気や、車内にある物の表面などを浄化する要望が高まっている。
【0003】
ここで、放電ランプを点灯させると、紫外線照射装置から電磁波が放射される場合がある。また、紫外線照射装置が、自動車や鉄道などの車両に設けられる車両用紫外線照射装置の場合には、車室内などの狭いスペースに、車両用紫外線照射装置と、車両の運行などに用いられる電子機器とが一緒に設けられる場合が多い。そのため、車両用紫外線照射装置と電子機器との間の距離が短くなり、車両用紫外線照射装置から放射された電磁波が電子機器に入射し易くなる。電子機器に電磁波が入射すると、電磁波ノイズとなって電子機器の誤動作などが生じるおそれがある。
【0004】
そこで、電磁波の放射を抑制することができる車両用紫外線照射装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-195825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電磁波の放射を抑制することができる車両用紫外線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る車両用紫外線照射装置は、基板と;前記基板の一方の面の側に設けられ、紫外線を照射可能な放電ランプと;前記基板の一方の面の側に設けられ、前記放電ランプに、所定の周波数の駆動電圧を印加可能な点灯回路と;前記基板の他方の面に設けられたグランドパターンと;前記基板、前記放電ランプ、および前記点灯回路を収納する空間を有し、前記放電ランプと対向する孔を有する筐体と;前記筐体の外壁に設けられ、導電性を有するシールドと;前記筐体の内壁に設けられ、帯状を呈し、一方の端部が前記シールドと電気的に接続され、他方の端部が前記グランドパターンと電気的に接続され、導電性を有する、少なくとも1つの第1の導電部と;を具備している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、電磁波の放射を抑制することができる車両用紫外線照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る車両用紫外線照射装置を例示するための模式斜視図である。
図2図1における車両用紫外線照射装置のA-A線方向の模式断面図である。
図3図1における車両用紫外線照射装置のB-B線方向の模式断面図である。
図4】(a)~(d)は、窓の形態を例示するための模式平面図である。
図5図2におけるC部の模式拡大図である。
図6】導電部を例示するための模式断面図である。
図7】導電部を例示するための模式断面図である。
図8図7における導電部をE-E線方向から見た場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る車両用紫外線照射装置は、自動車や鉄道などの車両に設けることができる。例えば、車両用紫外線照射装置は、自動車の車室内やトランクルームなどに設けたり、鉄道車両の車室内などに設けたりすることができる。ただし、車両用紫外線照射装置の設置場所は、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る車両用紫外線照射装置1を例示するための模式斜視図である。
図2は、図1における車両用紫外線照射装置1のA-A線方向の模式断面図である。
図3は、図1における車両用紫外線照射装置1のB-B線方向の模式断面図である。
図1図3に示すように、車両用紫外線照射装置1には、例えば、筐体2、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、点灯回路6、窓7、およびシールド8が設けられている。
【0012】
筐体2は、箱状を呈し、内部に、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、および点灯回路6を収納する空間を有する。筐体2の平面形状は、例えば、四角形とすることができる。ただし、筐体2の平面形状は、車両用紫外線照射装置1が設けられるスペースに応じて適宜変更することができる。例えば、筐体2の平面形状は、円や楕円などの曲線から構成される形状、曲線と直線から構成される形状などとしてもよい。筐体2の厚み寸法Tは、筐体2の平面寸法よりも小さくすることができる。筐体2の厚み寸法Tを小さくすることができれば、車両の運行などに用いられる電子機器と、車両用紫外線照射装置1とを一緒に設けるのが容易となる。
【0013】
また、筐体2は、複数の部分に分割することができる。図1図3に例示をした車両用紫外線照射装置1の場合には、筐体2の厚み方向において、筐体2が2つに分割されている。筐体2の厚み方向において、筐体2が2つに分割されていれば、筐体2の内部に、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、および点灯回路6を取り付けるのが容易となる。
【0014】
例えば、筐体2は、第1の部分21、および第2の部分22を有することができる。
第1の部分21は、例えば、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、および点灯回路6が取り付けられるベースとすることができる。
【0015】
第2の部分22は、例えば、第1の部分21の開口側を覆うカバーとすることができる。第2の部分22には、紫外線を出射させるための孔22aを設けることができる。孔22aは、放電ランプ4と対向する位置に設けることができる。
【0016】
第2の部分22は、第1の部分21に着脱可能に設けることができる。例えば、第2の部分22は、弾性力を用いて、第1の部分21に着脱可能に設けることができる。例えば、第2の部分22は、ネジなどの締結部材を用いて、第1の部分21に着脱可能に設けることができる。図1図3に例示をした第1の部分21と第2の部分22は、開口部分同士を嵌め合わせることで発生させた弾性力により、着脱可能に接続されている。
【0017】
また、第2の部分22は、接着剤などを用いて、第1の部分21に固定することもできる。ただし、第2の部分22が、第1の部分21に着脱可能に設けられていれば、放電ランプ4の交換などのメンテナンスが容易となる。
【0018】
ここで、図2および図3に示すように、筐体2の内部には、基板3、放電ランプ4、および点灯回路6が設けられる。そのため、筐体2(第1の部分21、および第2の部分22)を、アルミニウム合金などの金属から形成すると、漏電や短絡などが発生するおそれがある。そのため、筐体2は、絶縁性を有する樹脂から形成することが好ましい。また、絶縁性を有する樹脂から筐体2を形成すれば、車両用紫外線照射装置1の軽量化や製造コストの低減を図ることもできる。なお、第2の部分22の材料は、第1の部分21の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
基板3は、板状を呈している。基板3は、例えば、第1の部分21の内壁に設けられた複数の凸部21a(ボス)に設けることができる。基板3の材料には特に限定がない。基板3は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミックス、紙フェノールやガラスエポキシなどの有機材料などから形成することができる。また、基板3は、金属板の表面を絶縁材料で被覆したメタルコア基板などであってもよい。
【0020】
放電ランプ4は、基板3の一方の面の側に設けられている。放電ランプ4は、基板3と第2の部分22との間に位置している。放電ランプ4は、第2の部分22の孔22aに対向する位置に設けることができる。放電ランプ4は、一対の端子ホルダ41に着脱可能に設けることができる。一対の端子ホルダ41は、例えば、基板3に設けることができる。なお、図2および図3においては、1つの放電ランプ4が設けられる場合を例示したが、複数の放電ランプ4が設けられるようにしてもよい。放電ランプ4は、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0021】
放電ランプ4は、紫外線を照射可能なものであれば特に限定はない。放電ランプ4は、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、誘電体バリア放電ランプなどとすることができる。放電ランプ4は、例えば、一方向に延びる形状を有する。一方向に延びる形状を有する放電ランプ4とすれば、筐体2の厚み寸法Tを小さくするのが容易となる。
【0022】
ランプカバー5は、基板3の一方の面に設けられている。ランプカバー5は、基板3と第2の部分22との間に位置している。ランプカバー5は、箱状を呈し、基板3側とは反対側の端部が開口している。ランプカバー5の開口5aは、第2の部分22の孔22aに対向している。ランプカバー5の内部には、放電ランプ4と一対の端子ホルダ41を設けることができる。例えば、ランプカバー5は、絶縁性を有する樹脂から形成することができる。ランプカバー5の材料は、例えば、筐体2の材料と同じとすることができる。なお、ランプカバー5は、放電ランプ4から照射された紫外線に曝される。そのため、ランプカバー5の材料は、筐体2の材料よりも紫外線に対する耐性の高い材料とすることが好ましい。
【0023】
ランプカバー5が設けられていれば、放電ランプ4から照射された紫外線が、筐体2の内壁、基板3、および点灯回路6に入射するのを抑制することができる。そのため、これらが紫外線により劣化するのを抑制することができる。
【0024】
また、ランプカバー5にリフレクタの機能を持たせることもできる。例えば、ランプカバー5を白色などの樹脂から形成したり、ランプカバー5の内壁に反射膜を形成したり、ランプカバー5の内壁を曲面としたりすることができる。ランプカバー5にリフレクタの機能を持たせれば、放電ランプ4から照射された紫外線の利用効率を向上させることができる。
【0025】
点灯回路6は、基板3の一方の面に設けることができる。点灯回路6が、基板3の、放電ランプ4が設けられる側の面に設けられていれば、筐体2の厚み寸法Tを小さくするのが容易となる。点灯回路6は、例えば、配線コードや金属板などの配線部材を用いて、一対の端子ホルダ41と電気的に接続されている。そのため、放電ランプ4を一対の端子ホルダ41に装着することで、点灯回路6と放電ランプ4とを電気的に接続することができる。
【0026】
点灯回路6は、放電ランプ4に、所定の周波数の駆動電圧を印加する。放電ランプ4に駆動電圧が印加されると、例えば、放電ランプ4に設けられた一対の電極間に放電が生じて、放電ランプ4から紫外線が放射される。
【0027】
点灯回路6は、例えば、スイッチング素子、昇圧トランス、コンデンサなどの回路部品から構成されている。例えば、スイッチング素子は、車両のバッテリーからの直流電圧を所定の周波数の交流電圧、例えば、正弦波電圧などに変換する。例えば、昇圧トランスは、車両のバッテリーからの電圧を放電ランプ4を点灯させるための所定の電圧に昇圧する。正弦波電圧とすれば、電磁波ノイズの発生量を低減させることができる。正弦波電圧の周波数は、例えば、100kHz~300kHz程度とすることが好ましい。
【0028】
点灯回路6は、所定の周波数の駆動電圧を生成することができるものであればよい。点灯回路6は、例えば、共振型の各種インバータとすることができる。
【0029】
点灯回路6は、例えば、配線61と電気的に接続されている。例えば、図1および図3に示すように、配線61の一方の端部側は、筐体2の外部に引き出されている。配線61は、いわゆる3芯ケーブルとすることができる。例えば、配線61の電線61aは、点灯回路6のプラス側と車両のバッテリーのプラス側とを電気的に接続する。例えば、配線61の電線61bは、点灯回路6のマイナス側と車両のバッテリーのマイナス側とを電気的に接続する。電線61bは、コモン線とすることができる。配線61の電線61cは、シールド8と車両のグランド(例えば、車体フレーム)とを電気的に接続する。なお、シールド8と車両のグランドとを直接接触させるようにしてもよい。この場合、電線61cは、省くことができる。
【0030】
窓7は、筐体2(第2の部分22)の孔22aと対向している。例えば、窓7は、孔22aを覆っている。窓7は、放電ランプ4から照射された紫外線を透過可能な複数の開口を有する。窓7が設けられていれば、放電ランプ4から照射された紫外線を筐体2の外部に照射することができ、且つ、人の指や異物などが筐体2の内部に侵入するのを抑制することができる。
【0031】
図4(a)~(d)は、窓の形態を例示するための模式平面図である。
図4(a)に示すように、窓7aは、複数の線状部材を格子状に並べたものとすることができる。
図4(b)に示すように、窓7bは、複数の線状部材を網目状に並べたものとすることができる。
窓7aと窓7bは、例えば、エッチング加工により形成することもできるし、複数の線材を編み込んで形成することもできる。なお、エッチング加工により、窓7aおよび窓7bを形成する場合には、複数の線状部材を囲む枠部を設けることができる。
【0032】
図4(c)に示すように、窓7cは、複数の線状部材を一方向に並べたものとすることができる。窓7cは、例えば、エッチング加工により形成することができる。なお、エッチング加工により、窓7cを形成する場合には、複数の線状部材を囲む枠部を設けることができる。
図4(d)に示すように、窓7dは、複数の開口(孔)を有する板材とすることができる。窓7dは、例えば、エッチング加工やプレス加工により形成することができる。
【0033】
ここで、放電ランプ4を点灯させた際に、放電ランプ4の電極間において放電が生じると、紫外線とともに電磁波が放射される場合がある。また、放電ランプ4を点灯させた際に、点灯回路6に設けられたスイッチング素子やスイッチング素子と電気的に接続された配線などから電磁波が放射される場合がある。
【0034】
また、車両には、車両用紫外線照射装置1の他にも車両の運行などに用いられる電子機器が設けられる。この場合、車両用紫外線照射装置1と電子機器は、車室内などの狭いスペースに設けられることになるので、車両用紫外線照射装置1と電子機器との間の距離が短くなり易い。そのため、筐体2の内部に設けられた放電ランプ4や点灯回路6などにおいて発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されると、車両用紫外線照射装置1の近傍に設けられた電子機器に電磁波が入射する場合がある。電磁波が電子機器に入射すると、電磁波ノイズとなって電子機器の誤動作などが生じるおそれがある。
そこで、本実施の形態に係る車両用紫外線照射装置1には、シールド8が設けられている。
【0035】
シールド8は、筐体2の内部において発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを抑制する。シールド効果は、シールド8における反射損失、吸収損失、および多重反射損失が関係するが、電磁波をシールドする場合のシールド効果は、反射損失が支配的となる。
【0036】
すなわち、シールド8における反射損失を大きくすれば、筐体2の内部において発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを効果的に抑制することができる。反射損失を大きくするためには、シールド8の反射係数を大きくすればよい。シールド8の反射係数を大きくするためには、シールド8のインピーダンスを低くすればよい。
【0037】
例えば、導電性を有するシールド8とすればよい。この場合、シールド8を金属などの導電率の高い材料から形成すれば、シールド8における反射損失を大きくすることができ、ひいては、電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを効果的に抑制することができる。
【0038】
シールド8は、例えば、導電性材料を含む板材またはフィルム、導電性フィラーを含む導電性塗料、導電性を有するめっき層や蒸着層などとすることができる。導電性材料を含む板材またはフィルムは、例えば、接着剤や両面テープなどを用いて筐体2に接合することができる。導電性材料を含む板材は、例えば、インサート成形法などを用いて筐体2と一体成形することもできる。導電性塗料は、例えば、筐体2に塗布することができる。導電性を有するめっき層は、例えば、無電解めっき法などにより筐体2の表面に設けることができる。導電性を有する蒸着層は、例えば、スパッタリング法などにより筐体2の表面に設けることができる。
導電性材料は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、炭素鋼などの金属とすることができる。この場合、アルミニウムや銅などの導電率の高い金属とすることがより好ましい。
【0039】
シールド8は、例えば、筐体2の外壁および筐体2の内壁の少なくともいずれかに設けることができる。この場合、筐体2の外壁および筐体2の内壁にシールド8を設ければ、シールド効果を高めることができる。
【0040】
しかしながら、筐体2の内部には、放電ランプ4、端子ホルダ41、および点灯回路6などが設けられている。そのため、筐体2の内壁に、導電性を有するシールド8を設ければ、シールド8と、放電ランプ4などとの間の絶縁を確保する必要がある。例えば、筐体2の内壁に設けられたシールド8と、放電ランプ4などとの間の絶縁距離を確保したり、筐体2の内壁に設けられたシールド8と、放電ランプ4などとの間に絶縁シートなどの絶縁部材を挿入したりすることができる。
【0041】
しかしながら、これらの様にすれば、筐体2の厚み寸法Tが大きくなったり、車両用紫外線照射装置1の重量が増加したりすることになる。前述した様に、車両用紫外線照射装置1は、車室内などの狭いスペースに、車両の運行などに用いられる電子機器などと一緒に設けられる場合が多い。そのため、筐体2の厚み寸法Tが大きくなったり、車両用紫外線照射装置1の重量が増加したりすると、車両用紫外線照射装置1の設置が困難となる場合がある。
【0042】
そのため、図2および図3に示すように、シールド8は、筐体2の外壁に設けることが好ましい。この様にすれば、絶縁性を有する筐体2の内壁と、放電ランプ4、端子ホルダ41、および点灯回路6などとの間の距離を短くすることができるので、筐体2の厚み寸法Tを小さくするのが容易となる。筐体2の外壁に設けられたシールド8は、例えば、配線61の電線61cを介して、車両のグランドと電気的に接続される。また、筐体2の外壁に設けられたシールド8は、車両のグランド(例えば、車両のフレーム)に直接接触させてもよい。
【0043】
ここで、筐体2が分割されている場合、複数の筐体2の部分のそれぞれにシールドを設けることになる。例えば、図1図3に示すように、筐体2が、第1の部分21および第2の部分22を有する場合には、第1の部分21の外壁にシールド8aを設け、第2の部分22の外壁にシールド8bを設けることになる。
【0044】
この場合、複数の筐体2の部分のそれぞれに設けられたシールドのいずれかが、車両のグランドと電気的に接続されていないと、シールドのシールド効果が低減することになる。また、配線61の電線61cを、複数のシールドの全てと電気的に接続すると、配線作業が繁雑となったり、筐体2の分解が困難となったりするおそれがある。
【0045】
そこで、筐体2が分割されている場合には、分割された筐体2の部分同士の接続部分において、分割された筐体2の部分のそれぞれに設けられたシールド同士が電気的に接続されるようにすることが好ましい。
【0046】
図5は、図2におけるC部の模式拡大図である。
図5に示すように、筐体2が、第1の部分21および第2の部分22を有する場合には、第1の部分21と第2の部分22との接続部分2aにおいて、第1の部分21の外壁に設けられたシールド8aと、第2の部分22の外壁に設けられたシールド8bとが、接触する様になっている。例えば、第1の部分21の開口側の端部にもシールド8aを設け、第2の部分22の開口側の端部にもシールド8bを設けることができる。
【0047】
この様にすれば、シールド8aとシールド8bとを電気的に接続することができる。この場合、シールド8aおよびシールド8bのいずれかが、車両のグランドと電気的に接続されれば、シールド8aおよびシールド8bが車両のグランドと電気的に接続されることになる。そのため、筐体2が2つの部分に分割されていても、シールド効果が低減するのを抑制することができる。
【0048】
また、第1の部分21には、基板3、一対の端子ホルダ41、および点灯回路6などが設けられる。そのため、第1の部分21に設けられるシールド8aに配線61の電線61cを電気的に接続することが好ましい。この様にすれば、第2の部分22の着脱が容易となる。
【0049】
以上に説明した様に、筐体2の外壁にシールド8が設けられていれば、筐体2の内部に設けられた放電ランプ4や点灯回路6などにおいて発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを抑制することができる。
しかしながら、近年においては、電磁波が、筐体2の外部に放射されるのをさらに抑制することが望まれている。
【0050】
例えば、窓7には放電ランプ4から照射された紫外線を透過させる複数の開口が設けられている。そのため、窓7に設けられた複数の開口を介して、電磁波が筐体2の外部に放射されるおそれがある。この場合、窓7の外面にシールド8を設けると、紫外線が筐体2の外部に照射されなくなる。
【0051】
そこで、窓7は、導電性を有するものとしている。例えば、窓7は、導電性材料から形成されている。導電性材料は、例えば、シールド8に用いる導電性材料と同じとすることができる。この場合、導電性材料が金属であれば、放電ランプ4から照射された紫外線に対する耐性を高めることもできる。
【0052】
窓7が導電性を有していれば、前述したシールド8の場合と同様に、窓7における反射損失を大きくすることができるので、電磁波が窓7を介して筐体2の外部に放射されるのを抑制することができる。
【0053】
この場合、窓7に設けられた複数の開口の開口率を小さくすると、電磁波をシールドする効果が大きくなるが、紫外線が窓7を透過し難くなる。窓7に設けられた複数の開口の開口率を大きくすると、紫外線が窓7を透過し易くなるが、電磁波をシールドする効果が小さくなる。窓7に設けられた複数の開口の開口率は、例えば、10%以上、90%以下とすることができる。なお、窓7に設けられた複数の開口の開口率は、「(複数の開口の総面積/窓7の面積)×100」である。
【0054】
また、前述したシールド8の場合と同様に、窓7が、車両のグランドと電気的に接続されていないと、窓7のシールド効果が低減する場合がある。この場合、配線61の電線61cを窓7と電気的に接続すると、配線作業が繁雑となったり、筐体2の分解が困難となったりするおそれがある。
【0055】
そこで、第2の部分22の内壁には、窓7とシールド8とを電気的に接続する導電部8b1(第2の導電部の一例に相当する)が設けられている。
図6は、導電部8b1を例示するための模式断面図である。
図6は、図2におけるD部の模式拡大図である。
図2図3、および図6に示すように、導電部8b1は、第2の部分22の内壁であって、第2の部分22の孔22aの周囲に設けられている。導電部8b1は、枠状を呈し、孔22aを囲んでいる。導電部8b1は、導電性を有し、第2の部分22の外壁に設けられたシールド8bと電気的に接続されている。導電部8b1は、窓7と電気的に接続される。導電部8b1の材料は、例えば、シールド8bの材料と同じとすることができる。例えば、導電部8b1は、膜状を呈し、シールド8bと一体に形成することができる。
【0056】
導電部8b1が設けられていれば、窓7が、導電部8b1を介して、シールド8bと電気的に接続される。そのため、窓7が、シールド8を介して、車両のグランドと電気的に接続される。窓7が、車両のグランドと電気的に接続されていれば、窓7のシールド効果を向上させることができる。
【0057】
また、ネジなどの締結部材や、導電性テープなどを用いて、窓7と導電部8b1とを接続することもできる。この様にすれば、窓7と導電部8b1との接続がより強固になるので、走行などによる振動で、窓7と導電部8b1との接続が外れるのを抑制することができる。
【0058】
ここで、前述した様に、筐体2の厚み寸法Tを小さくするためには、筐体2の内壁にシールド8を設けないようにすることが好ましい。しかしながらこの様にすると、点灯回路6などにおいて発生した電磁波が、筐体2の外部に漏れる場合がある。
そこで、基板3の、放電ランプ4および点灯回路6が設けられた面と対向する面(第2の面の一例に相当する)に設けられたグランドパターン3aと、第1の部分21の外壁に設けられたシールド8aとを電気的に接続する導電部8a1(第1の導電部の一例に相当する)が設けられている。グランドパターン3aは、例えば、いわゆるベタパターンなどとすることができる。
【0059】
図7は、導電部8a1を例示するための模式断面図である。
図8は、図7における導電部8a1をE-E線方向から見た場合の模式図である。
図7、および図8に示すように、導電部8a1は、帯状を呈し、第1の部分21の内壁に設けられている。導電部8a1は、第1の部分21の外壁側から基板3側に向けて延びている。導電部8a1の一方の端部は、第1の部分21の外壁に設けられたシールド8aと電気的に接続されている。導電部8a1の他方の端部は、基板3に設けられたグランドパターン3aと電気的に接続されている。
【0060】
例えば、導電部8a1の他方の端部は、第1の部分21の内壁に設けられた凸部21aの頂面に設けることができる。また、凸部21aに代えて導電性のスペーサを設け、基板3に設けられたグランドパターン3aと、第1の部分21の内壁に設けられた導電部8a1とを導電性のスペーサを介して電気的に接続することもできる。
【0061】
導電部8a1は、導電性を有している。導電部8a1の材料は、例えば、シールド8aの材料と同じとすることができる。例えば、導電部8a1は、膜状を呈し、シールド8aと一体に形成することができる。
【0062】
導電部8a1が設けられていれば、導電部8a1を介して、基板3に設けられたグランドパターン3aと、シールド8aとを電気的に接続することができる。そのため、シールド8を介して、基板3に設けられたグランドパターン3aが、車両のグランドと電気的に接続される。基板3に設けられたグランドパターン3aが、車両のグランドと電気的に接続されていれば、筐体2の厚み寸法Tを小さくしても、点灯回路6などにおいて発生した電磁波が、筐体2の外部に漏れるのを抑制することができる。
また、導電部8a1は帯状を呈しているので、導電部8a1が第1の部分21の内壁に設けられていたとしても、基板3などとの間の絶縁距離を確保するのが容易となる。
【0063】
導電部8a1は、少なくとも1つ設けることができる。この場合、図7、および図8に示すように、複数の導電部8a1が設けられていれば、シールド効果の向上を図ることができる。また、複数の導電部8a1が設けられていれば、走行に伴う振動が加わったとしても、グランドパターン3aとシールド8aとの電気的な接続を維持するのが容易となる。
【0064】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 車両用紫外線照射装置、2 筐体、3 基板、3a グランドパターン、4 放電ランプ、6 点灯回路、7 窓、8 シールド、8a シールド、8a1 導電部、8b シールド、8b1 導電部、21 第1の部分、22 第2の部分、22a 孔
図1
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図8