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特開2023-165138マルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置、及び、マルチフェーズDC/DCコンバータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165138
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】マルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置、及び、マルチフェーズDC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
H02M3/155 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075807
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 琢朗
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG12
5H730ZZ01
(57)【要約】
【課題】マルチフェーズDC/DCコンバータにて良好な電流バランスを実現する。
【解決手段】マルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置(2)は、出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との誤差信号(VERR)を生成する。チャネルごとに、スイッチングトランジスタ(11)のオン期間においてスイッチングトランジスタに流れる対象電流をA/D変換することにより対象電流の検出電流値(ICS)を導出する。チャネルごとに、誤差信号と対象電流に応じた電流対応信号(VCS)とに基づいてPWM信号を生成してスイッチングトランジスタを駆動する。複数チャネルに対応する複数の検出電流値の平均値を導出して平均値との差が最も大きな検出電流値に対応するチャネルを対象チャネルとして特定し、対象チャネルにおける対象電流の値が平均値に近づくよう、対象チャネルに対応するPWM信号を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々にスイッチングトランジスタ、コイル及び整流素子を有する出力段回路を複数チャネル分用いて、入力電圧から出力電圧を生成するマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置であって、
前記出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との誤差信号を生成するよう構成された誤差信号生成回路と、
前記チャネルごとに、前記スイッチングトランジスタのオン期間において前記スイッチングトランジスタに流れる対象電流をA/D変換することにより前記対象電流の検出電流値を導出するよう構成された電流検出回路と、
前記チャネルごとに、前記誤差信号と前記対象電流に応じた電流対応信号とに基づいてPWM信号を生成するよう構成されたPWM変調回路と、
前記複数チャネルに対応する複数のドライブ回路と、を備え、
各ドライブ回路は、対応するPWM信号に基づき対応するスイッチングトランジスタを駆動し、
前記PWM変調回路は、前記複数チャネルに対応する複数の検出電流値の平均値を導出して前記平均値との差が最も大きな検出電流値に対応するチャネルを対象チャネルとして特定し、前記対象チャネルにおける前記対象電流の値が前記平均値に近づくよう、前記対象チャネルに対応するPWM信号を生成する
、マルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置。
【請求項2】
前記PWM変調回路は、前記複数チャネルに対応する複数の変調ブロックを有し、
各変調ブロックは、
前記誤差信号に基づく第1比較入力信号と、対応する電流対応信号に基づく第2比較入力信号と、を比較して、比較結果を示す信号を出力するよう構成されたコンパレータと、
前記第1比較入力信号又は前記第2比較入力信号に対してオフセット信号を重畳するよう構成された重畳回路と、を有して、前記コンパレータの出力信号に基づき、対応するPWM信号を生成し、
前記PWM変調回路は、前記対象チャネルにおける前記対象電流の値が前記平均値に近づく向きに、前記対象チャネルについての前記オフセット信号を調整する
、請求項1に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置。
【請求項3】
前記PWM変調回路は、前記対象チャネルについての前記検出電流値と前記平均値との差が閾値以上であるとき、オフセット変更処理を実行し、前記オフセット変更処理において前記対象チャネルにおける前記対象電流の値が前記平均値に近づく向きに、前記対象チャネルについての前記オフセット信号を変更する
、請求項2に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置。
【請求項4】
前記PWM変調回路は、前記オフセット変更処理において前記対象チャネルにおける前記対象電流の値が前記平均値に近づく向きに、前記対象チャネルについての前記オフセット信号を所定量だけ変更する
、請求項3に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置。
【請求項5】
前記PWM変調回路は、前記対象チャネルについての前記検出電流値と前記平均値との差が前記閾値未満となるまで前記オフセット変更処理を繰り返す
、請求項3に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置。
【請求項6】
前記PWM変調回路は、前記複数チャネルに対応する、互いに位相の異なる複数のセット信号を出力するよう構成されたセット信号出力回路を備え、
各変調ブロックは、前記コンパレータの出力信号と、対応するセット信号と、に基づき、対応するPWM信号を生成するよう構成されたロジック回路を備える
、請求項2に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置。
【請求項7】
前記電流検出回路は、前記チャネルごとに、前記電流対応信号をアナログ信号として受け、前記アナログ信号をA/D変換することで前記検出電流値を有するデジタル信号を生成する
、請求項1~6の何れかに記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置。
【請求項8】
前記チャネルごとに、前記スイッチングトランジスタと前記コイルとの接続ノードから出力端子に向けて前記対象電流に応じた電流が供給され、これによって前記出力端子に前記出力電圧が生じる
、請求項1~6の何れかに記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置と、
前記複数チャネル分の出力段回路と、を備え、
前記チャネルごとに、前記PWM信号に基づき前記スイッチングトランジスタをスイッチングすることで前記スイッチングトランジスタ及び前記コイル間の接続ノードから出力端子に向かう向きに前記対象電流に応じた電流が供給され、これによって前記出力端子に前記出力電圧が生じる
、マルチフェーズDC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置、及び、マルチフェーズDC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチフェーズDC/DCコンバータでは、スイッチングトランジスタ、コイル及び整流素子を有する出力段回路を複数チャネル分設け、複数の出力段回路のスイッチングに位相差を設けて、それらのスイッチング駆動することにより1つの安定化された出力電圧を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-85858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチフェーズDC/DCコンバータでは、出力段回路に流れる電流をチャネル間で均一にすることが理想的である。但し、複数のコイル間でのインダクタンス値のばらつき等に起因して電流のバランスが崩れ、特定のチャネルのコイルに電流が集中するといったことが懸念される。
【0005】
本開示は、良好なる電流バランスの実現に寄与するマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置、及び、マルチフェーズDC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る制御装置は、各々にスイッチングトランジスタ、コイル及び整流素子を有する出力段回路を複数チャネル分用いて、入力電圧から出力電圧を生成するマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置であって、前記出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との誤差信号を生成するよう構成された誤差信号生成回路と、前記チャネルごとに、前記スイッチングトランジスタのオン期間において前記スイッチングトランジスタに流れる対象電流をA/D変換することにより前記対象電流の検出電流値を導出するよう構成された電流検出回路と、前記チャネルごとに、前記誤差信号と前記対象電流に応じた電流対応信号とに基づいてPWM信号を生成するよう構成されたPWM変調回路と、前記複数チャネルに対応する複数のドライブ回路と、を備え、各ドライブ回路は、対応するPWM信号に基づき対応するスイッチングトランジスタを駆動し、前記PWM変調回路は、前記複数チャネルに対応する複数の検出電流値の平均値を導出して前記平均値との差が最も大きな検出電流値に対応するチャネルを対象チャネルとして特定し、前記対象チャネルにおける前記対象電流の値が前記平均値に近づくよう、前記対象チャネルに対応するPWM信号を生成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、良好なる電流バランスの実現に寄与するマルチフェーズDC/DCコンバータの制御装置、及び、マルチフェーズDC/DCコンバータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態に係るDC/DCコンバータの全体構成図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係るDC/DCコンバータの全体構成図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係り、複数の信号(セット信号)の波形図である。
図4図4は、本開示の実施形態に係り、スロープ電圧生成回路の内部構成図である。
図5図5は、本開示の実施形態に係り、スロープ電圧生成回路の動作に関わる幾つかの信号波形図である。
図6図6は、本開示の実施形態に係り、スイッチング動作を説明するための信号波形図である。
図7図7は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、電流バランス回路の内部ブロック図である。
図8図8は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、オフセット重畳回路の内部構成図である。
図9図9は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、オフセット設定部の動作に注目した制御装置の動作フローチャートである。
図10図10は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、各チャネルの電流が、平均電流に近づいていく様子を示す図である。
図11図11は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、オフセット重畳回路の内部構成図である。
図12図12は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、半導体装置の外観斜視図である。
図13図13は、本開示の実施形態に属する第6実施例に係り、出力段回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。
【0010】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。
【0011】
レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。ハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる任意の信号について、当該信号のレベルがハイレベルとなる期間をハイレベル期間と称し、当該信号のレベルがローレベルとなる期間をローレベル期間と称する。ハイレベル又はローレベルの電圧レベルをとる任意の電圧についても同様である。
【0012】
任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをアップエッジタイミングと称する。アップエッジをライジングエッジに読み替えて良い。同様に、任意の注目した信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをダウンエッジタイミングと称する。ダウンエッジをフォーリングエッジに読み替えて良い。
【0013】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。
【0014】
以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意のトランジスタについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。また、任意のトランジスタについて、トランジスタがオン状態となっている期間をオン期間と称し、トランジスタがオフ状態となっている期間をオフ期間と称する。
【0015】
任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0016】
本開示の実施形態を説明する。図1に本開示の実施形態に係るDC/DCコンバータ1の構成を示す。DC/DCコンバータ1は、複数チャネル分の出力段回路10を用いて入力電圧VINから出力電圧VOUTを生成するマルチフェーズDC/DCコンバータである。ここではチャネル数を“n”で表す。nは3以上の任意の整数である(但し、“n=2”であり得る)。故に、DC/DCコンバータ1には、第1~第nチャネルの出力段回路10が設けられる。第iチャネルの出力段回路10を特に記号“10[i]”にて参照する(図2参照)。iはn以下の任意の自然数を表す。
【0017】
第1~第nチャネルの出力段回路10は互いに同一の構成を有する。各出力段回路10は、スイッチングトラジスタ11、コイル12及び整流素子13を備える。スイッチングトラジスタ11はNチャネル型のMOSFETである。各出力段回路10において、スイッチングトラジスタ11に流れる電流を検出するための抵抗としてセンス抵抗14が設けられる。図2を参照し、出力段回路10[i]におけるスイッチングトラジスタ11、コイル12、整流素子13、センス抵抗14を、特に夫々、記号“11[i]”、“12[i]”、“13[i]”、“14[i]”にて参照する。
【0018】
ここでは、ダイオード整流方式が採用された昇圧型DC/DCコンバータとしてDC/DCコンバータ1が形成されることを例に挙げる。ダイオード整流方式の採用を前提としたとき、整流素子13は整流ダイオード13である。具体的には、任意のチャネルの出力段回路10[i]において、コイル12[i]の第1端は入力電圧VINが加わる端子に接続され、コイル12[i]の第2端はノード15[i]にてスイッチングトランジスタ11[i]のドレイン及び整流ダイオード13[i]のアノードに接続される。出力段回路10[i]において、スイッチングトランジスタ11[i]のソースはセンス抵抗14[i]の第1端に接続され、センス抵抗14[i]の第2端はグランドに接続される。
【0019】
整流ダイオード13[1]~13[n]の各カソードは出力端子OUTに共通接続される。出力端子OUTに出力電圧VOUTが加わる。入力電圧VIN及び出力電圧VOUTは互いに異なる正の直流電圧である。図1のDC/DCコンバータ1は昇圧型DC/DCコンバータであるので、“VIN<VOUT”が成立する。尚、各チャネルにおいてコイル12に流れる電流をコイル電流Iと称する。コイル12[i]に流れる電流は特に記号“I[i]”にて参照される(図2参照)。コイル電流I[i]は入力電圧VINが加わる端子からノード15[i]に向けて流れる。各チャネルにおいて、スイッチングトランジスタ11[i]のオン期間では、コイル電流I[i]はスイッチングトランジスタ11[i]及びセンス抵抗14[i]を通じてグランドに流れる。各チャネルにおいて、スイッチングトランジスタ11[i]のオフ期間では、コイル電流I[i]は整流ダイオード13[i]を通じて出力端子OUTへと流れる。出力端子OUTに対して負荷LDが接続される。負荷LDは出力電圧VOUTに基づいて駆動する任意の負荷である。負荷LDの消費電流(即ち、出力端子OUTから負荷LDを通じてグランドに流れる電流)を負荷電流と称する。
【0020】
DC/DCコンバータ1には出力コンデンサCOUT並びに分圧抵抗R1及びR2が設けられる。出力コンデンサCOUTの第1端は出力端子OUTに接続され、出力コンデンサCOUTの第2端はグランドに接続される。分圧抵抗R1の第1端は出力端子OUTに接続され、分圧抵抗R1の第2端は分圧抵抗R2を介してグランドに接続される。故に、分圧抵抗R1及びR2間の接続ノードに出力電圧VOUTに応じた帰還電圧VFBが生じる。
【0021】
DC/DCコンバータ1には、各チャネルのスイッチングトランジスタ11を駆動することを通じてDC/DCコンバータ1の動作を制御する制御装置2が設けられる。制御装置2には、エラーアンプ20と、電流検出回路30と、PWM変調回路40と、nチャネル分のドライブ回路50と、が設けられる。図2を参照し、第iチャネルにおけるドライブ回路50を特に記号“50[i]”にて参照する。
【0022】
また、制御端子2には、nチャネル分の駆動端子DOと、nチャネル分の電流検出端子CSと、帰還端子FBと、が設けられる。帰還端子FBは分圧抵抗R1及びR2間の接続ノードは接続され、帰還電圧VFBを受ける。図2を参照し、第iチャネルにおける駆動端子DOを特に記号“DO[i]”にて参照し、第iチャネルにおける電流検出端子CSを特に記号“CS[i]”にて参照する。駆動端子DO[i]は制御装置2の外部においてスイッチングトランジスタ11[i]のゲートに接続される。電流検出端子CS[i]は制御装置2の外部においてスイッチングトランジスタ11[i]のソースに接続される。故に、各チャネルにおいて、センス抵抗14の電圧降下分の電位を有する信号VCSが電流検出端子CSに加わる。信号VCSはスイッチングトランジスタ11に流れる電流に比例する電圧信号であり、以下、電流対応信号VCSと称される。また、第iチャネルにおける電流対応信号VCS(即ち、電流検出端子CS[i]に加わる電流対応信号VCS)を、特に記号“VCS[i]”にて参照する(図2参照)。
【0023】
エラーアンプ20は誤差信号生成回路の例である。エラーアンプ20は、反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有する。エラーアンプ20において反転入力端子は帰還端子FBに接続されて帰還電圧VFBを受ける。エラーアンプ20の非反転入力端子には基準電圧VREFが加わる。基準電圧VREFは所定の正の直流電圧値を有する。エラーアンプ20は、帰還電圧VFB及び基準電圧VREFの比較結果に応じた誤差信号VERRを自身の出力端子から出力する。誤差信号VERRは電圧信号である。エラーアンプ20の出力端子は配線WR1に接続され、配線WR1に誤差信号VERRが生じる。エラーアンプ20は、“VFB<VREF”の成立時には配線WR1に対して電荷(正の電荷)を供給することで誤差信号VERRの電位を上昇させる。エラーアンプ20は、“VFB>VREF”の成立時には配線WR1から電荷(正の電荷)を引き込むことで誤差信号VERRの電位を低下させる。特に図示しないが、例えば、配線WR1とグランドとの間に、抵抗及びコンデンサの直列回路を含む位相補償回路が設けられていて良い。
【0024】
電流検出回路30は、チャネルごとに、スイッチングトランジスタ11のオン期間においてスイッチングトランジスタ11に流れる電流(以下、対象電流と称する)を検出する。各チャネルにおいて、スイッチングトランジスタ11のオン期間ではコイル電流Iがスイッチングトランジスタ11を通じて流れる。このため、各チャネルにおいて、対象電流はコイル電流Iと等価であると考えて良い。
【0025】
具体的には電流検出回路30は、電流検出端子CS[1]~CS[n]に接続され、電流対応信号VCS[1]~VCS[n]を受ける。各チャネルにおいて、電流対応信号VCSは対象電流に比例する電圧値を持つアナログの電圧信号である。電流検出回路30は、A/D変換(アナログ/デジタル変換)を行うA/D変換器(不図示)を有し、チャネルごとに、スイッチングトランジスタ11のオン期間中の対象タイミングにて電流対応信号VCSをサンプリングし、対象タイミングでの電流対応信号VCSをA/D変換によりデジタル信号に変換する。これにより、電流検出回路30にて、チャネルごとに、検出電流値ICSを持つデジタル信号が得られる。第iチャネルにおける検出電流値ICSを特に記号“ICS[i]”にて参照する(図2参照)。検出電流値ICS[i]は、スイッチングトランジスタ11[i]のオン期間中の対象タイミングにおける電流対応信号VCS[i]の電圧値に比例するデジタル値であり、故に、当該対象タイミングにおける第iチャネルの対象電流の値(故にコイル電流I[i]の値)を表す。チャネルごとのA/D変換により検出電流値ICS[1]~ICS[n]が得られる。
【0026】
PWM変調回路40は、チャネルごとに、誤差信号VERRと電流対応信号VCSとに基づいて信号SPWMを生成する。信号SPWMはパルス幅変調された信号(即ちPWM信号)である。信号SPWMはハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる二値信号である。PWM変調回路40は、チャネルごとに、生成した信号SPWMを対応するドライブ回路50に出力する。第iチャネルにおける信号SPWMを特に記号“SPWM[i]”にて参照する(図2参照)。
【0027】
nチャネル分のドライブ回路50は、チャネルごとに、対応する信号SPWMに基づいて、対応するスイッチングトランジスタ11を駆動する。図2を参照し、第iチャネルにおけるドライブ回路50を特に記号“50[i]”にて参照する。各チャネルにおいて、ドライブ回路50[i]はPWM変調回路40から信号SPWM[i]を受ける。各チャネルにおいて、ドライブ回路50[i]は駆動端子DO[i]に接続される。ドライブ回路50[i]は、信号SPWM[i]に基づきスイッチングトランジスタ11[i]のゲートに対しハイレベル又はローレベルのゲート信号を供給することで、スイッチングトランジスタ11[i]をスイッチング駆動する。
【0028】
ハイレベルのゲート信号は、スイッチングトランジスタ11[i]のゲート閾電圧よりも十分に高い電位を有する。ローレベルのゲート信号は、スイッチングトランジスタ11[i]のゲート閾電圧よりも十分に低い電位を有する。各チャネルにおいて、ドライブ回路50[i]は、信号SPWM[i]がハイレベルであるときにハイレベルのゲート信号をスイッチングトランジスタ11[i]のゲートに供給し、これによってスイッチングトランジスタ11[i]をオン状態とする。各チャネルにおいて、ドライブ回路50[i]は、信号SPWM[i]がローレベルであるときにローレベルのゲート信号をスイッチングトランジスタ11[i]のゲートに供給し、これによってスイッチングトランジスタ11[i]をオフ状態とする。
【0029】
PWM変調回路40は、nチャネル分の変調ブロック60と、セット信号出力回路70と、電流バランス回路80と、を有する。第iチャネルにおける変調ブロック60を特に記号“60[i]”にて参照する(図2参照)。変調ブロック60[1]~60[n]にて、夫々、信号SPWM[1]~SPWM[n]が生成される。
【0030】
セット信号出力回路70は、所定のPWM周波数である周波数fPWMを持つクロック信号CLKに基づき、nチャネル分の信号SET(セット信号)を生成する。nチャネル分の信号SETは共通の周波数fPWMを有する。但し、nチャネル分の信号SETにおいて、位相が互いに(360°/n)ずつ、ずれている。第iチャネルにおける信号SETを特に記号“SET[i]”にて参照する(図2参照)。
【0031】
図3に信号SET[1]~SET[n]の波形を示す。信号SET[1]~SET[n]は原則としてローレベルを有する。周波数fPWMの逆数はPWM周期である。セット信号出力回路70は、信号SET[1]~SET[n]の夫々においてPWM周期にて微小なパルスを発生させる。即ち、セット信号出力回路70は、信号SET[1]~SET[n]の夫々においてPWM周期にてアップエッジを生じさせる。但し、信号SET[1]のアップエッジタイミングから見て、信号SET[j]のアップエッジタイミングは、時間“((1/fCLK)×(j-1)/n)”だけ遅れる。ここにおけるjは、2以上n以下の整数を表す。例えば、“n=8”であれば、信号SET[1]のアップエッジタイミングから見て、信号SET[2]のアップエッジタイミングは時間“(1/fCLK)×1/8”だけ遅れ、信号SET[3]のアップエッジタイミングは時間“(1/fCLK)×2/8”だけ遅れる。“n=8”の場合、時間“(1/fCLK)×1/8”は位相45°に相当する。一般化すると、信号SET[2]は信号SET[1]から見て位相(360°/n)だけ遅れた信号であり、信号SET[3]は信号SET[2]から見て位相(360°/n)だけ遅れた信号であり、・・・、信号SET[n]は信号SET[n-1]から見て位相(360°/n)だけ遅れた信号である。
【0032】
電流バランス回路80の機能については後述するものとし、変調ブロック60の内部構成を説明する。
【0033】
各変調ブロック60は、スロープ電圧生成回路61、オフセット重畳回路62、コンパレータ63、及び、ロジック回路64を備える。変調ブロック60[1]~60[n]は互いに同じ構成を有する。図2を参照し、変調ブロック60[i]におけるスロープ電圧生成回路61、オフセット重畳回路62、コンパレータ63、及び、ロジック回路64を、夫々特に記号“61[i]”、“62[i]”、“63[i]”、“64[i]”にて参照する。
【0034】
各チャネルにおいて、スロープ電圧生成回路61は、対応する電流対応信号VCSに応じた電圧信号であるスロープ信号VSLP’を生成する。第iチャネルのスロープ電圧生成回路61[i]に対応する電流対応信号VCSは電流対応信号VCS[i]であり、スロープ電圧生成回路61[i]にて生成されるスロープ信号VSLP’は特に記号“VSLP’[i]”にて参照される(図2参照)。
【0035】
図4に1つのスロープ電圧生成回路61の内部構成を示す。スロープ電圧生成回路61はランプ電圧生成回路61a及び加算器61bを備える。図4にはスロープ電圧生成回路61[i]が示されており、スロープ電圧生成回路61[i]におけるランプ電圧生成回路61a及び加算器61bを特に夫々記号“61a[i]”及び“61b[i]”にて参照する。ランプ電圧生成回路61aは電圧信号であるランプ信号VRAMPを生成する。ランプ電圧生成回路61a[i]にて生成されるランプ信号VRAMPを特に記号“VRAMP[i]”にて参照する。
【0036】
図5に、スロープ電圧生成回路61[i]の動作に関わる幾つかの信号波形を示す。ランプ電圧生成回路61a[i]は、対応するスイッチングトランジスタ11[i]のオン期間中において初期電圧値を起点に徐々に増加する鋸波状の電圧信号をランプ信号VRAMP[i]として生成する。初期電圧値は0Vでも良いし、0Vより高いバイアス電圧値を有していても良い。ランプ電圧生成回路61a[i]は、例えば、信号SPWM[i]のアップエッジタイミングからランプ信号VRAMP[i]を初期電圧値を起点に徐々に増加させれば良い。加算器61b[i]は、電流対応信号VCS[i]に対してランプ信号VRAMP[i]を加算することでスロープ信号VSLP’[i]を生成する。即ち、スロープ信号VSLP’[i]は電流対応信号VCS[i]とランプ信号VRAMP[i]との和の信号である。周知の如く、ランプ信号VRAMPの加算により、カレントモード制御における出力帰還ループの発振を抑制することができる。
【0037】
図1を再度参照する。各変調ブロック60において、オフセット重畳回路62は、誤差信号VERRに基づく信号VCMP及びスロープ信号VSLP’に基づく信号VSLPをコンパレータ63に供給する。信号VCMP及びVSLPは電圧信号である。各変調ブロック60において、オフセット重畳回路62は、誤差信号VERRに対してオフセット信号を重畳することで信号VCMPを生成することができる、又は、スロープ信号VSLP’に対してオフセット信号を重畳することで信号VSLPを生成することができる。但し、1以上のチャネルの変調ブロック60において、オフセット信号の重畳は行われないこともある。オフセット信号の重畳については後述される。
【0038】
各変調ブロック60において、信号VCMPは第1比較入力信号としてコンパレータ63の反転入力端子に入力され、信号VSLPは第2比較入力信号としてコンパレータ63の非反転入力端子に入力される。各変調ブロック60において、コンパレータ63は、自身に入力された信号VCMP及びVSLPを比較し、比較結果に応じた信号RSTを生成及び出力する。各変調ブロック60において、ロジック回路64は、コンパレータ63からの出力信号RSTと、対応する信号SETと、に基づき、信号SPWMを生成及び出力する。
【0039】
図2を参照し、変調ブロック60[i]における信号VCMP、VSLP、RSTを、特に夫々、記号“VCMP[i]”、“VSLP[i]”、“RST[i]”にて参照する。コンパレータ63[i]は信号VCMP[i]を反転入力端子で受けると共に信号VSLP[i]を非反転入力端子で受けて、信号RST[i]を出力する。コンパレータ63[i]は、“VSLP[i]>VCMP[i]”であれば(即ち、信号VSLP[i]の電位が信号VCMP[i]の電位よりも高ければ)ハイレベルの信号RST[i]を出力し、“VSLP[i]<VCMP[i]”であれば(即ち、信号VSLP[i]の電位が信号VCMP[i]の電位よりも低ければ)ローレベルの信号RST[i]を出力する。“VSLP[i]=VCMP[i]”であるとき、信号RST[i]はローレベル又はハイレベルとなる。
【0040】
ロジック回路64[i]は、信号SET[i]及びRST[i]に基づき信号SPWM[i]を生成及び出力する。図6を参照して第iチャネルのスイッチング動作を説明する。尚、図6では、信号VSLP’[i]及びVSLP[i]が互いに一致し、且つ、信号VERR及びVCMP[i]が互いに一致すると仮定している。
【0041】
ロジック回路64[i]は信号SET[i]のアップエッジに同期して信号SPWM[i]にアップエッジを生じさせる。信号SPWM[i]のアップエッジを受けてドライブ回路50[i]はスイッチングトランジスタ11[i]をターンオンさせる。スイッチングトランジスタ11[i]がターンオンすると、コイル電流I[i]がスイッチングトランジスタ11[i]を通じて流れる。スイッチングトランジスタ11[i]のオン期間においてコイル電流I[i]が徐々に増大してゆき、これに連動して信号VSLP’[i]及びVSLP[i]の電位も徐々に増大してゆく。そして、信号VSLP[i]の電位が信号VCMP[i]の電位に達して“VSLP[i]>VCMP[i]”が成立した時点で信号RST[i]にアップエッジが生じる。
【0042】
ロジック回路64[i]は信号RST[i]のアップエッジに同期して信号SPWM[i]にダウンエッジを生じさせる。信号SPWM[i]のダウンエッジを受けてドライブ回路50[i]はスイッチングトランジスタ11[i]をターンオフさせる。スイッチングトランジスタ11[i]がターンオフすると、コイル12[i]の蓄積エネルギに基づきコイル電流I[i]が整流ダイオード13[i]を通じ出力端子OUTに向けて流れる。スイッチングトランジスタ11[i]がオフ期間では、コイル12[i]の蓄積エネルギが徐々に減少してゆくことでコイル電流I[i]の大きさも徐々に減少してゆく。尚、スイッチングトランジスタ11[i]のターンオフに伴って信号VSLP[i]の電位は急峻に低下するため、信号RST[i]のハイレベル期間は微小である。このような動作が各PWM周期にて行われる。チャネルごとに、スイッチングトランジスタ11及びコイル12間の接続ノード15から出力端子OUTに向けて対象電流(スイッチングトランジスタ11のオン期間においてスイッチングトランジスタ11に流れる電流)に応じた電流が供給されることで、出力電圧VOUTが生成される。この際、制御装置2は帰還電圧VFBが基準電圧VREFと一致するように信号SPWM[1]~SPWM[n]を生成するため、抵抗R1及びR2による分圧比と基準電圧VREFとで定まる目標電圧にて出力電圧VOUTが安定化する。
【0043】
尚、各PWM周期において、コイル電流I[i]の最大値をピーク値と称すると共に記号“VALPAEK[i]”にて参照し、コイル電流I[i]の最小値をボトム値と称すると共に記号“VALBTM[i]”にて参照する(図6参照)。各PWM周期において、スイッチングトランジスタ11[i]のオン期間からオフ期間に切り替わる際にコイル電流I[i]はピーク値を持つ。各PWM周期において、スイッチングトランジスタ11[i]のオフ期間からオン期間に切り替わる際にコイル電流I[i]はボトム値を持つ。
【0044】
ここで電流検出回路30について説明を加える。電流検出回路30は、チャネルごとに、スイッチングトランジスタ11のオン期間中の対象タイミングにて電流対応信号VCSをサンプリングし、対象タイミングでの電流対応信号VCSをA/D変換によりデジタル信号に変換する。対象タイミングはA/D変換におけるサンプリングタイミングに相当する。ここで、対象タイミングは、コイル電流Iがピーク値を持つタイミングであるとする。スイッチングトランジスタ11[i]がターンオフされるタイミング又はその直前においてコイル電流I[i]はピーク値をとる。従って例えば、電流検出回路30は信号RST[i]のアップエッジタイミング又は信号SPWM[i]のダウンエッジタイミングを第iチャネルに対する対象タイミングとして取り扱うと良い。そして、電流検出回路30は、信号RST[i]のアップエッジタイミング又は信号SPWM[i]のダウンエッジタイミングにて電流対応信号VCS[i]をA/D変換によりデジタル信号に変換することで検出電流値ICS[i]を得ると良い。この場合、検出電流値ICS[i]はコイル電流I[i]のピーク値VALPAEK[i]に相当する。
【0045】
ところで、マルチフェーズDC/DCコンバータにおいて、複数のコイル間でのインダクタンス値のばらつき等に起因してコイル電流のバランスが崩れ、特定のチャネルのコイルに電流が集中するといったことが懸念される。本実施形態に係るDC/DCコンバータ1では電流バランス回路80が有意に機能してコイル電流のバランスを適正に保つ。
【0046】
以下、複数の実施例の中で、DC/DCコンバータ1(特に電流バランス回路80)に関わる幾つかの具体的な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0047】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。図7に電流バランス回路80の内部ブロック図を示す。電流バランス回路80をデジタル回路にて構成することができる。電流バランス回路80は、平均値導出部81、対象チャネル特定部82及びオフセット設定部83を備える。
【0048】
平均値導出部81は検出電流値ICS[1]~ICS[n]の平均値を導出する。検出電流値ICS[1]~ICS[n]の平均値を記号“IAVE”にて参照する。尚、図2に示す如く、電流検出回路30から電流バランス回路80に対して検出電流値ICS[1]~ICS[n]を示すデジタル信号が入力される。
【0049】
対象チャネル特定部82は、検出電流値ICS[1]~ICS[n]及び平均値IAVEに基づき、検出電流値ICS[1]~ICS[n]の内、平均値IAVEとの差が最も大きな検出電流値に対応するチャネルを対象チャネルとして特定する。即ち、対象チャネル特定部82は、“1≦i≦n”を満たす各整数iについて、検出電流値ICS[i]と平均値IAVEとの差DIF[i]を求める。差DIF[i]の絶対値を、“|DIF[i]|”と表記する。そして、対象チャネル特定部82は、絶対値|DIF[1]|~|DIF[n]|の内、最も大きな絶対値に対応するチャネルを対象チャネルとして特定する。従って例えば、絶対値|DIF[1]|~|DIF[n]|の内、絶対値|DIF[1]|が最大であれば第1チャネルが対象チャネルとして特定され、絶対値|DIF[2]|が最大であれば第2チャネルが対象チャネルとして特定される。仮に、絶対値|DIF[1]|~|DIF[n]|の内、2以上の絶対値が共に最大であれば、2以上の絶対値に対応する2以上のチャネルの内、最も小さなチャネル番号が割り当てられたチャネルを対象チャネルとして特定して良い。
【0050】
オフセット設定部83は、各チャネルのオフセット重畳回路62において重畳すべきオフセット信号を設定する。この際、対象チャネルが第iチャネルであれば、オフセット設定部83は、第iチャネルにおける対象電流の値(ここではコイル電流Iのピーク値)が平均値IAVEに近づく向きに、対象チャネルについてのオフセット信号を調整する。これにより、対象チャネルが第iチャネルであれば、コイル電流I[i]のピーク値がコイル電流I[1]~I[n]のピーク値の平均に近づくことなり、結果、コイル電流I[1]~I[n]が均等な状態に近づく。
【0051】
変調ブロック60[1]~60[n]の内部構成は共通であるため、それらを代表して、図8に第1実施例に係るオフセット重畳回路62[i]の内部構成を示す。各変調ブロック60において、オフセット重畳回路62は加算器62aを有し、加算器62aは誤差信号VERRに対してオフセット信号VOSTを加算することで信号VCMPを生成する。オフセット重畳回路62[i]における加算器62a及びオフセット信号VOSTを特に夫々記号“62a[i]”及び“VOST[i]”にて参照する。第1実施例において、信号VCMP[i]は誤差信号VERRとオフセット信号VOST[i]との和信号である。即ち、誤差信号VERRに基づく信号VCMP[i]においてオフセット信号VOST[i]が重畳されている。一方、第1実施例において、信号VSLP[i]はスロープ信号VSLP’[i]そのものである。
【0052】
オフセット設定部83は、各変調ブロック60に対するオフセット信号VOSTを設定する、即ち、オフセット信号VOST[1]~VOST[n]を設定する。
【0053】
図9に、オフセット設定部83の動作に注目した制御装置2の動作フローチャートを示す。オフセット信号VOST[1]~VOST[n]の初期値はゼロである。故に、制御装置2の初期状態では、各変調ブロック60において、VCMP=VERR、且つ、VSLP=VSLP’、である。制御装置2が起動してドライブ回路50[1]~50[n]を用いたスイッチングトランジスタ11[1]~11[n]のスイッチングが開始された後、ステップS11に至る。
【0054】
ステップS11において、電流検出回路30により検出電流値ICS[1]~ICS[n]が取得される。ステップS11で取得される検出電流値ICS[1]~ICS[n]は、その時点で取得可能な最新の検出電流値ICS[1]~ICS[n]である。ステップS11に続くステップS12において、平均値導出部81は、ステップS11にて取得された検出電流値ICS[1]~ICS[n]の平均値IAVEを導出する。ステップS12の後、ステップS13に進む。
【0055】
ステップS13において、対象チャネル特定部82は、ステップS11にて取得された検出電流値ICS[1]~ICS[n]及びステップS12にて導出された平均値IAVEに基づき、検出電流値ICS[1]~ICS[n]の内、平均値IAVEとの差が最も大きな検出電流値に対応するチャネルを対象チャネルとして特定する。ステップS13の後、ステップS14に進む。尚、対象チャネルの検出電流値ICSを、以下では記号“ICS_TG”にて表す。
【0056】
ステップS14において、オフセット設定部83は、対象チャネルの検出電流値ICS_TGと平均値IAVEとの差DIFTGを導出し、差DIFTGが所定の正の閾値THDIF以上であるかを判断する。ここで“DIFTG≧0”であるとする。即ち、“DIFTG≧0”となるように、検出電流値ICS_TG及び平均値IAVEの内の一方から他方が差し引かれることで差DIFTGが導出されるものとする。差DIFTGは、検出電流値ICS_TGと平均値IAVEとの差の大きさであると解して良い。差DIFTGが閾値THDIF以上であれば(ステップS14のY)ステップS14からステップS15に進む。差DIFTGが閾値THDIF未満であれば(ステップS14のN)ステップS14からステップS11に戻る。
【0057】
ステップS15において、オフセット設定部83は“ICS_TG>IAVE”の成否を判定する。“ICS_TG>IAVE”が成立する場合には(ステップS15のY)、ステップS15からステップS16に進む。“ICS_TG>IAVE”が不成立の場合には(ステップS15のN)、ステップS15からステップS17に進む。
【0058】
ステップS16において、オフセット設定部83は対象チャネルのオフセット信号VOSTを所定量ΔVだけ低下させる。その後、ステップS11に戻る。ステップS17において、オフセット設定部83は対象チャネルのオフセット信号VOSTを所定量ΔVだけ上昇させる。その後、ステップS11に戻る。所定量ΔVは正の電圧量である。
【0059】
ステップS16及びS17にて実行される処理は、対象チャネルのオフセット信号VOSTを変更するオフセット変更処理(換言すればオフセット更新処理)に属する。ステップS16に係るオフセット変更処理では、対象チャネルのオフセット信号VOSTを所定量ΔVだけ低下させる(対象チャネルのオフセット信号VOSTが所定量ΔVだけ低下するよう対象チャネルのオフセット信号VOSTを更新する)。ステップS17に係るオフセット変更処理では、対象チャネルのオフセット信号VOSTを所定量ΔVだけ上昇させる(対象チャネルのオフセット信号VOSTが所定量ΔVだけ上昇するよう対象チャネルのオフセット信号VOSTを更新する)。尚、オフセット信号VOSTの低下、上昇、変更、更新とは、詳細には、オフセット信号VOSTの電位の低下、上昇、変更、更新を指す。オフセット信号VOSTの調整等についても同様であり、他の電圧信号についても同様である。
【0060】
各チャネルのオフセット信号VOSTはゼロの電圧値を有する、又は、正若しくは負の電圧値を有する。仮に、対象チャネルのオフセット信号VOSTがゼロの電圧値を有しているときにステップS16に至ると、対象チャネルのオフセット信号VOSTの電位は電位(-ΔV)へと更新されることになる。対象チャネルのオフセット信号VOSTがゼロの電圧値を有しているときにステップS17に至ると、対象チャネルのオフセット信号VOSTの電位は電位ΔVへと更新されることになる。
【0061】
対象チャネルが第iチャネルである場合を考える。この場合、第iチャネルにおける対象電流の値である検出電流値ICS[i]が対象チャネルの検出電流値ICS_TGに相当する。
【0062】
対象チャネルの検出電流値ICS_TGに相当する検出電流値ICS[i]が平均値IAVEより大きいとき、第iチャネル(対象チャネル)のオフセット信号VOST[i]が所定量ΔVだけ低下するようオフセット信号VOST[i]が更新される(ステップS16)。オフセット信号VOST[i]の低下は信号VCMP[i]を低下させ、信号VCMP[i]の低下は信号SPWM[i]のハイレベル期間の縮小をもたらす。結果、第iチャネルにおける対象電流(スイッチングトランジスタ11[i]のオン期間においてスイッチングトランジスタ11[i]に流れる電流)の値は低下することとなり、平均値IAVEへ近づく。つまり、第iチャネルにおける対象電流の値が平均値IAVEへ近づく向きにオフセット信号VOST[i]が調整されることになる。
【0063】
逆に、対象チャネルの検出電流値ICS_TGに相当する検出電流値ICS[i]が平均値IAVEより小さいとき、第iチャネル(対象チャネル)のオフセット信号VOST[i]が所定量ΔVだけ上昇するようオフセット信号VOST[i]が更新される(ステップS17)。オフセット信号VOST[i]の上昇は信号VCMP[i]を上昇させ、信号VCMP[i]の上昇は信号SPWM[i]のハイレベル期間の拡大をもたらす。結果、第iチャネルにおける対象電流(スイッチングトランジスタ11[i]のオン期間においてスイッチングトランジスタ11[i]に流れる電流)の値は増大することとなり、平均値IAVEへ近づく。つまり、第iチャネルにおける対象電流の値が平均値IAVEへ近づく向きにオフセット信号VOST[i]が調整されることになる。
【0064】
ステップS14、S16又はS17からステップS11に戻った場合、次のPWM周期において又は1以上のPWM周期の長さ分の時間を経てから、ステップS11以降の処理を再実行する。ステップS11から始まる一連の処理が繰り返される中で対象チャネルは次々と変化しうる。
【0065】
図10に“n=4”であることを想定した単純な数値例を挙げる。図10の数値例において、或る電流値が“100”であるとは、当該電流値が(100×k)ミリアンペアであることを意味する(例えば“k=30”)。ステップS11の処理から始まってステップS11に戻るまでの一連の処理をサイクルと称する。制御装置2において、第1サイクル、第2サイクル、第3サイクル・・・、が順次実行される。尚、図10の数値例では負荷電流が一定であると仮定している。
【0066】
図10の例において、第1サイクルにおけるステップS11及びS12では、“(ICS[1],ICS[2],ICS[3],ICS[4],IAVE)=(99,111,92,98,100)”である。このため、第1サイクルにおいて、第2チャネルが対象チャネルとなり、“ICS_TG=ICS[2]>IAVE”であるため、第2チャネルのオフセット信号VOST[2]を所定量ΔVだけ低下させるオフセット変更処理が実行される(ステップS16)。これにより信号VCMP[2]が低下し、信号VCMP[2]の低下は、第2チャネルのコイル電流I[2]及び対象電流(故にICS[2])を低下させるように作用する。但し、コイル電流I[1]、I[3]及び、I[4]が不変な状態でのコイル電流I[2]の低下は、出力電圧VOUTの低下を通じて誤差信号VERRの上昇をもたらす。このため、信号VCMP[1]、VCMP[3]及びVCMP[4]が上昇することで第1、第3及び第4チャネルのコイル電流I及び対象電流(故にICS[1]、ICS[3]及びICS[4])が幾分上昇する。
【0067】
第1サイクルのオフセット変更処理の結果、第2サイクルにおけるステップS11及びS12では、“(ICS[1],ICS[2],ICS[3],ICS[4],IAVE)=(100,108,93,99,100)”である。このため、第2サイクルにおいて、第2チャネルが対象チャネルとなり、“ICS_TG=ICS[2]>IAVE”であるため、第2チャネルのオフセット信号VOST[2]を所定量ΔVだけ低下させるオフセット変更処理が実行される(ステップS16)。これにより信号VCMP[2]が低下し、信号VCMP[2]の低下は、第2チャネルのコイル電流I[2]及び対象電流(故にICS[2])を低下させるように作用する。但し、コイル電流I[1]、I[3]及び、I[4]が不変な状態でのコイル電流I[2]の低下は、出力電圧VOUTの低下を通じて誤差信号VERRの上昇をもたらす。このため、信号VCMP[1]、VCMP[3]及びVCMP[4]が上昇することで第1、第3及び第4チャネルのコイル電流I及び対象電流(故にICS[1]、ICS[3]及びICS[4])が幾分上昇する。
【0068】
第2サイクルのオフセット変更処理の結果、第3サイクルにおけるステップS11及びS12では、“(ICS[1],ICS[2],ICS[3],ICS[4],IAVE)=(101,105,94,100,100)”である。このため、第3サイクルにおいて、第3チャネルが対象チャネルとなり、“ICS_TG=ICS[3]<IAVE”であるため、第3チャネルのオフセット信号VOST[3]を所定量ΔVだけ上昇させるオフセット変更処理が実行される(ステップS17)。これにより信号VCMP[3]が上昇し、信号VCMP[3]の上昇は、第3チャネルのコイル電流I[3]及び対象電流(故にICS[3])を増大させるように作用する。但し、コイル電流I[1]、I[2]及び、I[4]が不変な状態でのコイル電流I[3]の増大は、出力電圧VOUTの上昇を通じて誤差信号VERRの低下をもたらす。このため、信号VCMP[1]、VCMP[2]及びVCMP[4]が低下することで第1、第2及び第4チャネルのコイル電流I及び対象電流(故にICS[1]、ICS[2]及びICS[4])が幾分低下する。
【0069】
第3サイクルのオフセット変更処理の結果、第4サイクルにおけるステップS11及びS12では、“(ICS[1],ICS[2],ICS[3],ICS[4],IAVE)=(100,104,97,99,100)”である。このため、第4サイクルにおいて、第2チャネルが対象チャネルとなり、“ICS_TG=ICS[2]>IAVE”であるため、第2チャネルのオフセット信号VOST[2]を所定量ΔVだけ低下させるオフセット変更処理が実行される(ステップS16)。これにより信号VCMP[2]が低下し、信号VCMP[2]の低下は、第2チャネルのコイル電流I[2]及び対象電流(故にICS[2])を低下させるように作用する。但し、コイル電流I[1]、I[3]及び、I[4]が不変な状態でのコイル電流I[2]の低下は、出力電圧VOUTの低下を通じて誤差信号VERRの上昇をもたらす。このため、信号VCMP[1]、VCMP[3]及びVCMP[4]が上昇することで第1、第3及び第4チャネルのコイル電流I及び対象電流(故にICS[1]、ICS[3]及びICS[4])が幾分上昇する。
【0070】
第4サイクルのオフセット変更処理の結果、第5サイクルにおけるステップS11及びS12では、“(ICS[1],ICS[2],ICS[3],ICS[4],IAVE)=(101,101,98,100,100)”である。このため、第5サイクルにおいて、第3チャネルが対象チャネルとなる。但し、図10の例では“THDIF=3”であるとする。このため、図9のステップS14の判定結果が否定となるので、オフセット変更処理を実行することなく第5サイクルを終える。
【0071】
このように、PWM変調回路40は、対象チャネルについての検出電流値ICS_TGと平均値IAVEとの差が閾値THDIF未満となるまで、オフセット変更処理を繰り返す。これにより、コイル電流Iの均等化が図られる。第5サイクルの後も周期的にステップS11から始まる一連の処理が実行される。このため、一旦、ステップS14の判定結果が否定となる状況になった後においても、DC/DCコンバータ1の温度変化等に起因して、ステップS14の判定結果が肯定となる状況に至れば、再びオフセット変更処理が実行される。
【0072】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第1実施例ではオフセット信号が信号VCMPに重畳されるが、第2実施例ではオフセット信号が信号VSLPに重畳される。この点を除けば第2実施例は第1実施例と同様である。但し、第2実施例において信号VSLPに重畳されるオフセット信号は、第1実施例において信号VSLPに重畳されるオフセット信号の逆極性の信号である。
【0073】
図11に第2実施例に係るオフセット重畳回路62[i]の内部構成を示す。各変調ブロック60において、オフセット重畳回路62は加算器62bを有し、加算器62bはスロープ信号VSLP’に対してオフセット信号(-VOST)を加算することで信号VSLPを生成する。オフセット重畳回路62[i]における加算器62b及びオフセット信号(-VOST)を特に夫々記号“62a[i]”及び“-VOST[i]”にて参照する。オフセット信号(-VOST[i])は、第1実施例におけるオフセット信号VOST[i]の逆極性の信号である。第2実施例において、信号VSLP[i]は、スロープ信号VSLP’[i]とオフセット信号(-VOST[i])との和信号である。換言すれば、第2実施例における信号VSLP[i]は、スロープ信号VSLP’[i]からオフセット信号VOST[i]を差し引いた信号である。このように第2実施例では、スロープ信号VSLP’[i]に基づく信号VSLP[i]においてオフセット信号(-VOST[i])が重畳される。一方、第2実施例において、信号VCMP[i]は誤差信号VERRそのものである。
【0074】
信号VCMP[i]においてオフセット信号VOST[i]を重畳することと、信号VSLP[i]においてオフセット信号VOST[i]の逆極性の信号(即ち(-VOST[i]))を重畳することは、等価である。
【0075】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。第1又は第2実施例において、電流バランス回路80は、チャネルごとに検出電流値ICS[i]と平均値IAVEとのずれ量を求め、チャネルごとにずれ量に応じたオフセット信号VOST[i]を設定するようにしても良い。
【0076】
即ち、第3実施例に係る電流バランス回路80はチャネルごとにずれ量を求める。第iチャネルのずれ量を記号“IDV[i]”にて表す。ここで“IDV[i]=IAVE-ICS[i]”である。そして、電流バランス回路80は、チャネルごとにずれ量に対してゲイン係数kを乗じて得た値を、オフセット信号VOSTに設定する。即ち、“VOST[i]=IDV[i]×k”とする。kは正の固定係数である。
【0077】
電流バランス回路80は、“VOST[i]=IDV[1]×k”に従ってオフセット信号VOST[1]~VOST[n]を設定する。そして、第1実施例と第3実施例を組み合わせる場合(図8参照)、チャネルごとにオフセット信号VOST[i]を加算器62a[i]に与えることで信号VCMP[i]を生成すれば良い。第2実施例と第3実施例を組み合わせる場合(図11参照)、チャネルごとにオフセット信号(-VOST[i])を加算器62b[i]に与えることで信号VSLP[i]を生成すれば良い。
【0078】
“VOST[i]=IDV[i]×k”に従ってオフセット信号VOST[1]~VOST[n]を設定した後、制御装置2への電源供給が途絶えて制御装置2の動作が停止するまで、オフセット信号VOST[1]~VOST[n]は不変とされて良い。或いは、“VOST[i]=IDV[i]×k”に従ってオフセット信号VOST[1]~VOST[n]を設定した後、図9の動作を行うようにしても良い。
【0079】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。上述したように、電流検出回路30は、チャネルごとに、スイッチングトランジスタ11のオン期間中の対象タイミングにて電流対応信号VCSをサンプリングし、対象タイミングでの電流対応信号VCSをA/D変換によりデジタル信号に変換する。コイル電流Iがピーク値を持つタイミングを対象タイミングとして用いることを説明したが、対象タイミングは、これに限定されない。例えば、コイル電流Iがボトム値を持つタイミングを対象タイミングとして用いても良い。つまり、検出電流値ICS[i]はコイル電流I[i]のボトム値VALBTM[i]に相当していても良い(図6参照)。
【0080】
また例えば、電流検出回路30は、信号SET[i]又はSPWM[i]のアップエッジタイミングから所定時間が経過したタイミングを対象タイミングに設定し、対象タイミングにおける電流対応信号VCS[i]をA/D変換によりデジタル信号に変換することで、検出電流値ICS[i]を得ても良い。
【0081】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。DC/DCコンバータ1は、半導体集積回路にて構成された半導体装置を1以上用いて構成される。ここにおける半導体装置は、図12に示すような半導体装置500を指す。半導体装置500は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から半導体装置500の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置500が形成される。尚、図12に示される半導体装置500の外部端子の数及び半導体装置500の筐体の種類は例示に過ぎず、それらを任意に設計可能である。半導体装置500に内蔵された端子を内部端子と称する。内部端子は、半導体装置500の筐体から露出していない端子である。
【0082】
制御装置2(図1又は図2)は1つの半導体装置であって良い。この場合、当該1つの半導体装置に設けられた複数の外部端子に、駆動端子DO[1]~DO[n]、電流検出端子CS[1]~CS[n]及び帰還端子FBが含まれ、当該1つの半導体装置の筐体内にエラーアンプ20、電流検出回路30、PWM変調回路40及びドライブ回路50[1]~50[n]が収容される。半導体装置内にスイッチングトランジスタ11[1]~11[n]が収容される場合もあり、この場合、駆動端子DO[1]~DO[n]は内部端子となる。また、半導体装置内にスイッチングトランジスタ11[1]~11[n]及びセンス抵抗14[1]~14[n]が収容される場合もあり、この場合、駆動端子DO[1]~DO[n]及び電流検出端子CS[1]~CS[n]は内部端子となる。
【0083】
制御装置2(図1又は図2)は複数の半導体装置にて構成されても良い。即ち例えば、互いに分離した第1~第(n+1)の半導体装置にて制御装置2が形成されていても良い。この際、第1~第nの半導体装置に、夫々、ドライブ回路50[1]~50[n]が収容される。第1~第nの半導体装置に、夫々、スイッチングトランジスタ11[1]~11[n]が収容される場合があり、更にセンス抵抗14[1]~14[n]が収容される場合もある。第(n+1)の半導体装置に、エラーアンプ20、電流検出回路30及びPWM変調回路40が収容される。第1~第(n+1)の半導体装置は、夫々に、半導体装置500と同様の構造を有する。但し、特に例えば、第1~第nの半導体装置と第(n+1)の半導体装置とを対比した場合、前者と後者との間で、外部端子の数及び筐体の形状が異なり得る。
【0084】
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。DC/DCコンバータ1にてダイオード整流方式が採用される場合の構成を挙げたが、DC/DCコンバータ1にて同期整流方式が採用されるようにしても良い。この場合、各チャネルの整流素子13を同期整流トランジスタに置換すれば良く、整流素子13としての同期整流トランジスタのオン、オフが制御装置2により制御される。具体的には、該同期整流トランジスタはスイッチングトランジスタ11のオフ期間においてオンに制御され、スイッチングトランジスタ11のオン期間においてオフに制御される。
【0085】
また、昇圧型DC/DCコンバータとして構成されたDC/DCコンバータ1を例にとったが、本開示に係る技術は降圧型DC/DCコンバータ又は昇降圧DC/DCコンバータにも適用できる。即ち、DC/DCコンバータ1は降圧型DC/DCコンバータ又は昇降圧DC/DCコンバータに変形されても良く、各チャネルの出力段回路10を降圧用又は昇降圧用に変形すれば足る。
【0086】
例えば、DC/DCコンバータ1を降圧型DC/DCコンバータに変形する場合、出力段回路10[i]は図13の出力段回路10a[i]に置換される。出力段回路10a[i]は、Nチャネル型MOSFETにて形成されるスイッチングトランジスタ11a[i]と、コイル12a[i]と、整流素子13a[i]と、を備える。図13において整流素子13a[i]は整流ダイオードである。スイッチングトランジスタ11a[i]のドレインは入力電圧VINが加わる端子に接続される。スイッチングトランジスタ11a[i]のソース及び整流ダイオード13a[i]のカソードはコイル12a[i]の第1端に接続される。コイル12a[i]の第2端は出力端子OUTに接続される。整流ダイオード13a[i]のアノードはグランドに接続される。周知の電流検出手段を用い、スイッチングトランジスタ11a[i]のオン期間にてスイッチングトランジスタ11a[i]に流れる電流に比例する信号が電流検出端子CS[i]に加わるようにすれば良い。整流素子13a[i]として同期整流トランジスタが用いられても良い。
【0087】
<<第7実施例>>
第7実施例を説明する。第7実施例では、他の変形例等を説明する。
【0088】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0089】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。
【0090】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0091】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0092】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0093】
本開示の一側面に係る制御装置は、各々にスイッチングトランジスタ(11)、コイル(12)及び整流素子(13)を有する出力段回路(10)を複数チャネル分用いて、入力電圧(VIN)から出力電圧(VOUT)を生成するマルチフェーズDC/DCコンバータ(1)の制御装置(2)であって、前記出力電圧に応じた帰還電圧(VFB)と基準電圧(VREF)との誤差信号(VERR)を生成するよう構成された誤差信号生成回路(20)と、前記チャネルごとに、前記スイッチングトランジスタのオン期間において前記スイッチングトランジスタに流れる対象電流をA/D変換することにより前記対象電流の検出電流値(ICS)を導出するよう構成された電流検出回路(30)と、前記チャネルごとに、前記誤差信号と前記対象電流に応じた電流対応信号(VCS)とに基づいてPWM信号(SPWM)を生成するよう構成されたPWM変調回路(40)と、前記複数チャネルに対応する複数のドライブ回路(50[1]~50[n])と、を備え、各ドライブ回路は、対応するPWM信号に基づき対応するスイッチングトランジスタを駆動し、前記PWM変調回路は、前記複数チャネルに対応する複数の検出電流値(ICS[1]~ICS[n])の平均値(IAVE)を導出して前記平均値との差が最も大きな検出電流値に対応するチャネルを対象チャネルとして特定し、前記対象チャネルにおける前記対象電流の値が前記平均値に近づくよう、前記対象チャネルに対応するPWM信号を生成する構成(第1の構成)である。
【0094】
マルチフェーズDC/DCコンバータにおいて、電流のバランスをとるために、必要な信号処理を全てアナログ領域で行う参考方法も検討される。但し、参考方法では、各種のばらつき要因に起因して、電流のバランス化が理想より乖離することがある。第1構成に係る制御装置では、A/D変換により対象電流の検出電流値を導出し、得られたデジタル値(検出電流値)を用いて、対象チャネルにおける対象電流の値を平均値に近づける制御を行う。このため、上記ばらつき要因の影響を受け難くなり、理想的に電流のバランスをとることが可能となる。
【0095】
上記第1の構成に係る制御装置において、前記PWM変調回路は、前記複数チャネルに対応する複数の変調ブロック(60[1]~60[n])を有し、各変調ブロックは、前記誤差信号に基づく第1比較入力信号(VCMP)と、対応する電流対応信号に基づく第2比較入力信号(VSLP)と、を比較して、比較結果を示す信号(RST)を出力するよう構成されたコンパレータ(63)と、前記第1比較入力信号又は前記第2比較入力信号に対してオフセット信号を重畳するよう構成された重畳回路(62)と、を有して、前記コンパレータの出力信号に基づき、対応するPWM信号を生成し、前記PWM変調回路は、前記対象チャネルにおける前記対象電流の値が前記平均値に近づく向きに、前記対象チャネルについての前記オフセット信号を調整する構成(第2の構成)であっても良い。
【0096】
上記第2の構成に係る制御装置において、前記PWM変調回路は、前記対象チャネルについての前記検出電流値と前記平均値との差(DIFTG)が閾値(THDIF)以上であるとき、オフセット変更処理を実行し、前記オフセット変更処理において前記対象チャネルにおける前記対象電流の値が前記平均値に近づく向きに、前記対象チャネルについての前記オフセット信号を変更する構成(第3の構成)であっても良い。
【0097】
これにより、良好なる電流バランスを実現することができる。
【0098】
上記第3の構成に係る制御装置において 前記PWM変調回路は、前記オフセット変更処理において前記対象チャネルにおける前記対象電流の値が前記平均値に近づく向きに、前記対象チャネルについての前記オフセット信号を所定量(ΔV)だけ変更する構成(第4の構成)であっても良い。
【0099】
これにより、良好なる電流バランスを実現することができる。
【0100】
上記第3又は第4の構成に係る制御装置において、前記PWM変調回路は、前記対象チャネルについての前記検出電流値と前記平均値との差が前記閾値未満となるまで前記オフセット変更処理を繰り返す構成(第5の構成)であっても良い。
【0101】
これにより、良好なる電流バランスを実現することができる。
【0102】
上記第2~第5の構成の何れかに係る制御装置において、前記PWM変調回路は、前記複数チャネルに対応する、互いに位相の異なる複数のセット信号(SET[1]~SET[n])を出力するよう構成されたセット信号出力回路(70)を備え、各変調ブロックは、前記コンパレータの出力信号と、対応するセット信号と、に基づき、対応するPWM信号を生成するよう構成されたロジック回路(64)を備える構成(第6の構成)であっても良い。
【0103】
上記第1~第6の構成の何れかに係る制御装置において、前記電流検出回路は、前記チャネルごとに、前記電流対応信号をアナログ信号として受け、前記アナログ信号をA/D変換することで前記検出電流値を有するデジタル信号を生成する構成(第7の構成)であっても良い。
【0104】
上記第1~第7の構成の何れかに係る制御装置において、前記チャネルごとに、前記スイッチングトランジスタと前記コイルとの接続ノードから出力端子に向けて前記対象電流に応じた電流が供給され、これによって前記出力端子に前記出力電圧が生じる構成(第8の構成)であっても良い。
【0105】
上記第1~第8の構成の何れかに係る制御装置(2)と、前記複数チャネル分の出力段回路(10[1]~10[n])と、を備え、前記チャネルごとに、前記PWM信号に基づき前記スイッチングトランジスタをスイッチングすることで前記スイッチングトランジスタ及び前記コイル間の接続ノードから出力端子に向かう向きに前記対象電流に応じた電流が供給され、これによって前記出力端子に前記出力電圧が生じる構成(第9の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0106】
1 DC/DCコンバータ
2 制御装置
10、10[1]~10[n] 出力段回路
11、11[1]~11[n] スイッチングトランジスタ
12、12[1]~12[n] コイル
13、13[1]~13[n] 整流素子(整流ダイオード)
14、14[1]~14[n] センス抵抗
15、15[1]~15[n] ノード
OUT 出力端子
OUT 出力コンデンサ
R1、R2 分圧抵抗
LD 負荷
20 エラーアンプ
30 電流検出回路
40 PWM変調回路
50、50[1]~50[n] ドライブ回路
60、60[1]~60[n] PWMブロック
61、61[1]~61[n] スロープ電圧生成回路
61a[i] ランプ電圧生成回路
61b[i] 加算器
62、62[1]~62[n] オフセット重畳回路
62a[i]、62b[i] 加算器
63、63[1]~63[n] コンパレータ
64、64[1]~64[n] ロジック回路
70 セット信号出力回路
80 電流バランス回路
81 平均値導出部
82 対象チャネル特定部
83 オフセット設定部
IN 入力電圧
OUT 出力電圧
FB 帰還電圧
REF 基準電圧
ERR 誤差信号
CS、VCS[1]~VCS[n] 電流対応信号
CS、ICS[1]~ICS[n] 検出電流値
DO、DO[1]~DO[n] 駆動端子
CS、CS[1]~CS[n] 電流検出端子
FB 帰還端子
500 半導体装置
10a[i] 出力段回路
11a[a] スイッチングトランジスタ
12a[i] コイル
13a[i] 整流素子(整流ダイオード)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13