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特開2023-165159プログラム、コンピュータ、情報処理システムおよび情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165159
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】プログラム、コンピュータ、情報処理システムおよび情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20231108BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20231108BHJP
【FI】
A01G7/00 603
A01G7/00 601Z
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075838
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】522176137
【氏名又は名称】中西 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】中西 隆
【テーマコード(参考)】
2B022
5L049
【Fターム(参考)】
2B022DA20
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】生育不良株が発生することを極力抑制することができるプログラム、コンピュータ、情報処理システムおよび情報処理方法を提供する。
【解決手段】プログラムは、コンピュータ(制御装置10)を受付手段12と、診断基準値設定手段14と、生育診断手段16と、管理作業分析手段18と、管理作業アドバイス出力手段20として機能させる。診断基準値設定手段14は、株の診断基準値を設定する。生育診断手段16は、各株について生育不良株であるか否かをそれぞれ特定する。管理作業分析手段18は、生育不良株であると特定された株について、受付手段12が受け付けた管理作業データに基づいて株の生育の管理作業の分析を行い、管理作業アドバイス出力手段20は、管理作業分析手段18により行われた管理作業の分析結果に基づいて、生育不良株の管理作業のアドバイスの情報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを受付手段と、生育診断手段と、管理作業分析手段として機能させるプログラムであって、
前記生育診断手段は、前記受付手段が受け付けた各株の生育計測データに基づいて各株の生育状態指標の値を算出し、算出された生育状態指標の値および予め設定されている診断基準値に基づいて各株について生育不良株であるか否かをそれぞれ特定し、
前記管理作業分析手段は、生育不良株であると特定された株について、前記受付手段が受け付けた管理作業データに基づいて株の生育の管理作業の分析を行う、プログラム。
【請求項2】
前記生育診断手段は、算出された生育状態指標の値に基づいて各株について生育優良株、生育普通株、生育不良株の何れであるかをそれぞれ特定する、請求項1記載のプログラム。
【請求項3】
前記管理作業分析手段は、前記受付手段が受け付けた管理作業データから管理作業値を算出し、生育優良株であると特定された株の管理作業値に基づいて管理作業基準値を設定し、設定された管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を算出し、管理作業の分析結果として乖離率を出力する、請求項2記載のプログラム。
【請求項4】
前記受付手段が作業管理データを受け付ける際に、作業管理データとして複数の管理作業項目毎のデータを受け付け、
前記管理作業分析手段は、前記受付手段が受け付けた各管理作業項目の管理作業データから各管理作業項目の管理作業値を算出し、生育優良株であると特定された株の管理作業値に基づいて各管理作業項目の管理作業基準値を設定し、設定された管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を管理作業項目毎に算出し、管理作業の分析結果として各管理作業項目の乖離率を出力する、請求項3記載のプログラム。
【請求項5】
前記管理作業分析手段は、予め管理作業基準値を設定しておき、前記受付手段が受け付けた管理作業データから管理作業値を算出し、予め設定されている管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を算出し、管理作業の分析結果として乖離率を出力する、請求項1記載のプログラム。
【請求項6】
前記受付手段が作業管理データを受け付ける際に、作業管理データとして複数の管理作業項目毎のデータを受け付け、
前記管理作業分析手段は、予め各管理作業項目の管理作業基準値を設定しておき、前記受付手段が受け付けた各管理作業項目の管理作業データから各管理作業項目の管理作業値を算出し、予め設定されている管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を管理作業項目毎に算出し、管理作業の分析結果として各管理作業項目の乖離率を出力する、請求項5記載のプログラム。
【請求項7】
前記コンピュータを管理作業アドバイス出力手段として更に機能させ、
前記管理作業アドバイス出力手段は、前記管理作業分析手段により行われた管理作業の分析結果に基づいて、生育不良株の管理作業のアドバイスの情報を出力する、請求項1記載のプログラム。
【請求項8】
前記生育診断手段は、算出された生育状態指標の値に基づいて各株について生育優良株、生育普通株、生育不良株の何れであるかをそれぞれ特定し、
前記受付手段が作業管理データを受け付ける際に、作業管理データとして複数の管理作業項目毎のデータを受け付け、
前記管理作業分析手段は、前記受付手段が受け付けた各管理作業項目の管理作業データから各管理作業項目の管理作業値を算出し、生育優良株であると特定された株の管理作業値に基づいて各管理作業項目の管理作業基準値を設定し、設定された管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を管理作業項目毎に算出し、管理作業の分析結果として各管理作業項目の乖離率を出力する、請求項7記載のプログラム。
【請求項9】
前記受付手段が作業管理データを受け付ける際に、作業管理データとして複数の管理作業項目毎のデータを受け付け、
前記管理作業分析手段は、予め各管理作業項目の管理作業基準値を設定しておき、前記受付手段が受け付けた各管理作業項目の管理作業データから各管理作業項目の管理作業値を算出し、予め設定されている管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を管理作業項目毎に算出し、管理作業の分析結果として各管理作業項目の乖離率を出力する、請求項7記載のプログラム。
【請求項10】
前記管理作業アドバイス出力手段は、各生育不良株について管理作業項目の管理作業乖離率を降順または昇順に並べ、管理作業乖離率が降順または昇順に並べられた管理作業項目を出力する、請求項8または9記載のプログラム。
【請求項11】
各管理作業項目のアドバイスの情報が記憶装置に記憶されており、前記管理作業アドバイス出力手段は、前記管理作業分析手段により出力された各管理作業項目の乖離率に基づいて、前記記憶装置に記憶されている情報を用いることにより、各管理作業項目のアドバイスの情報を出力する、請求項8または9記載のプログラム。
【請求項12】
管理作業項目は、潅水、追肥、摘葉、摘花および摘果のうち少なくとも何れかを含む、請求項4または6記載のプログラム。
【請求項13】
生育状態指標の値は、茎径、葉面積指数および成長バランス値のうち少なくとも何れかを含む、請求項1記載のプログラム。
【請求項14】
前記コンピュータを診断基準値設定手段として更に機能させ、
前記診断基準値設定手段は、前記受付手段が受け付けたユーザによって入力装置により入力された情報、または過去の実栽培データにおいて優良生育株と特定された株の生育計測データに基づいて、株の診断基準値を設定する、請求項1記載のプログラム。
【請求項15】
プログラムを実行することにより受付手段と、生育診断手段と、管理作業分析手段として機能するコンピュータであって、
前記生育診断手段は、前記受付手段が受け付けた各株の生育計測データに基づいて各株の生育状態指標の値を算出し、算出された生育状態指標の値および予め設定されている診断基準値に基づいて各株について生育不良株であるか否かをそれぞれ特定し、
前記管理作業分析手段は、生育不良株であると特定された株について、前記受付手段が受け付けた管理作業データに基づいて株の生育の管理作業の分析を行う、コンピュータ。
【請求項16】
制御装置と、入力装置と、を備え、
前記制御装置は、プログラムを実行することにより受付手段と、生育診断手段と、管理作業分析手段として機能し、
前記生育診断手段は、前記受付手段が受け付けた各株の生育計測データに基づいて各株の生育状態指標の値を算出し、算出された生育状態指標の値および予め設定されている診断基準値に基づいて各株について生育不良株であるか否かをそれぞれ特定し、
前記管理作業分析手段は、生育不良株であると特定された株について、前記入力装置により入力され、前記受付手段が受け付けた管理作業データに基づいて株の生育の管理作業の分析を行う、情報処理システム。
【請求項17】
表示装置を更に備え、
前記制御装置は、前記プログラムを実行することにより管理作業アドバイス出力手段として更に機能し、
前記管理作業アドバイス出力手段は、管理作業の分析結果に基づいて、生育不良株の管理作業のアドバイスの情報を出力し、出力された情報が前記表示装置に表示される、請求項16記載の情報処理システム。
【請求項18】
コンピュータがプログラムを実行することにより行われる情報処理方法であって、
受け付けた各株の生育計測データに基づいて各株の生育状態指標の値を算出し、算出された生育状態指標の値および予め設定されている診断基準値に基づいて各株について生育不良株であるか否かをそれぞれ特定する工程と、
生育不良株であると特定された株について、受け付けた管理作業データに基づいて株の生育の管理作業の分析を行う工程と、
を備えた、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、コンピュータ、情報処理システムおよび情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、果菜類の栽培を経験則ではなく客観的な方法で行うためのシステムやプログラム等が知られている。例えば、特許文献1等には、果菜類の栽培を経験則ではなく客観的な方法で行うために、果菜類の群落における光合成量および生育量を精度良く算出することが可能なプログラムが開示されている。また、特許文献2には、植物栽培の知識や経験が十分ではない者であっても、理想的な植物の栽培を実現するために必要な栽培作業を容易に実行することができるよう、生育状態に対応する最適な栽培作業を指示するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-182265号公報
【特許文献2】特開2021-141862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
果菜類の栽培を行うにあたり、同じ環境で栽培を行っても各株の生育ムラ(生育の個体差)の問題が生じる。従来は、光、温湿度、二酸化炭素濃度、培養液組成等の栽培に必要な環境条件が全て自動制御されているような植物工場でも生育ムラを完全になくすことは非常に難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、栽培を行うにあたり生育ムラが生じる場合であっても生育不良株の管理作業のアドバイスの情報を出力することにより生育不良株が発生することを極力抑制することができるプログラム、コンピュータ、情報処理システムおよび情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプログラムは、
コンピュータを受付手段と、生育診断手段と、管理作業分析手段として機能させるプログラムであって、
前記生育診断手段は、前記受付手段が受け付けた各株の生育計測データに基づいて各株の生育状態指標の値を算出し、算出された生育状態指標の値および予め設定されている診断基準値に基づいて各株について生育不良株であるか否かをそれぞれ特定し、
前記管理作業分析手段は、生育不良株であると特定された株について、前記受付手段が受け付けた管理作業データに基づいて株の生育の管理作業の分析を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明のプログラムにおいては、
前記生育診断手段は、算出された生育状態指標の値に基づいて各株について生育優良株、生育普通株、生育不良株の何れであるかをそれぞれ特定してもよい。
【0008】
また、前記管理作業分析手段は、前記受付手段が受け付けた管理作業データから管理作業値を算出し、生育優良株であると特定された株の管理作業値に基づいて管理作業基準値を設定し、設定された管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を算出し、管理作業の分析結果として乖離率を出力してもよい。
【0009】
また、前記受付手段が作業管理データを受け付ける際に、作業管理データとして複数の管理作業項目毎のデータを受け付け、
前記管理作業分析手段は、前記受付手段が受け付けた各管理作業項目の管理作業データから各管理作業項目の管理作業値を算出し、生育優良株であると特定された株の管理作業値に基づいて各管理作業項目の管理作業基準値を設定し、設定された管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を管理作業項目毎に算出し、管理作業の分析結果として各管理作業項目の乖離率を出力してもよい。
【0010】
また、前記管理作業分析手段は、予め管理作業基準値を設定しておき、前記受付手段が受け付けた管理作業データから管理作業値を算出し、予め設定されている管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を算出し、管理作業の分析結果として乖離率を出力してもよい。
【0011】
また、前記受付手段が作業管理データを受け付ける際に、作業管理データとして複数の管理作業項目毎のデータを受け付け、
前記管理作業分析手段は、予め各管理作業項目の管理作業基準値を設定しておき、前記受付手段が受け付けた各管理作業項目の管理作業データから各管理作業項目の管理作業値を算出し、予め設定されている管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を管理作業項目毎に算出し、管理作業の分析結果として各管理作業項目の乖離率を出力してもよい。
【0012】
また、本発明のプログラムは、前記コンピュータを管理作業アドバイス出力手段として更に機能させ、
前記管理作業アドバイス出力手段は、前記管理作業分析手段により行われた管理作業の分析結果に基づいて、生育不良株の管理作業のアドバイスの情報を出力してもよい。
【0013】
また、前記生育診断手段は、算出された生育状態指標の値に基づいて各株について生育優良株、生育普通株、生育不良株の何れであるかをそれぞれ特定し、
前記受付手段が作業管理データを受け付ける際に、作業管理データとして複数の管理作業項目毎のデータを受け付け、
前記管理作業分析手段は、前記受付手段が受け付けた各管理作業項目の管理作業データから各管理作業項目の管理作業値を算出し、生育優良株であると特定された株の管理作業値に基づいて各管理作業項目の管理作業基準値を設定し、設定された管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を管理作業項目毎に算出し、管理作業の分析結果として各管理作業項目の乖離率を出力してもよい。
【0014】
また、前記受付手段が作業管理データを受け付ける際に、作業管理データとして複数の管理作業項目毎のデータを受け付け、
前記管理作業分析手段は、予め各管理作業項目の管理作業基準値を設定しておき、前記受付手段が受け付けた各管理作業項目の管理作業データから各管理作業項目の管理作業値を算出し、予め設定されている管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を管理作業項目毎に算出し、管理作業の分析結果として各管理作業項目の乖離率を出力してもよい。
【0015】
また、前記管理作業アドバイス出力手段は、各生育不良株について管理作業項目の管理作業乖離率を降順または昇順に並べ、管理作業乖離率が降順または昇順に並べられた管理作業項目を出力してもよい。
【0016】
また、各管理作業項目のアドバイスの情報が記憶装置に記憶されており、前記管理作業アドバイス出力手段は、前記管理作業分析手段により出力された各管理作業項目の乖離率に基づいて、前記記憶装置に記憶されている情報を用いることにより、各管理作業項目のアドバイスの情報を出力してもよい。
【0017】
また、管理作業項目は、潅水、追肥、摘葉、摘花および摘果のうち少なくとも何れかを含んでいてもよい。
【0018】
また、生育状態指標の値は、茎径、葉面積指数および成長バランス値のうち少なくとも何れかを含んでいてもよい。
【0019】
また、本発明のプログラムは、前記コンピュータを診断基準値設定手段として更に機能させ、
前記診断基準値設定手段は、前記受付手段が受け付けたユーザによって入力装置により入力された情報、または過去の実栽培データにおいて優良生育株と特定された株の生育計測データに基づいて、株の診断基準値を設定してもよい。
【0020】
本発明のコンピュータは、
プログラムを実行することにより受付手段と、生育診断手段と、管理作業分析手段として機能するコンピュータであって、
前記生育診断手段は、前記受付手段が受け付けた各株の生育計測データに基づいて各株の生育状態指標の値を算出し、算出された生育状態指標の値および予め設定されている診断基準値に基づいて各株について生育不良株であるか否かをそれぞれ特定し、
前記管理作業分析手段は、生育不良株であると特定された株について、前記受付手段が受け付けた管理作業データに基づいて株の生育の管理作業の分析を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明の情報処理システムは、
制御装置と、入力装置と、を備え、
前記制御装置は、プログラムを実行することにより受付手段と、生育診断手段と、管理作業分析手段として機能し、
前記生育診断手段は、前記受付手段が受け付けた各株の生育計測データに基づいて各株の生育状態指標の値を算出し、算出された生育状態指標の値および予め設定されている診断基準値に基づいて各株について生育不良株であるか否かをそれぞれ特定し、
前記管理作業分析手段は、生育不良株であると特定された株について、前記入力装置により入力され、前記受付手段が受け付けた管理作業データに基づいて株の生育の管理作業の分析を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明の情報処理システムは、
表示装置を更に備え、
前記制御装置は、前記プログラムを実行することにより管理作業アドバイス出力手段として更に機能し、
前記管理作業アドバイス出力手段は、管理作業の分析結果に基づいて、生育不良株の管理作業のアドバイスの情報を出力し、出力された情報が前記表示装置に表示されてもよい。
【0023】
本発明の情報処理方法は、
コンピュータがプログラムを実行することにより行われる情報処理方法であって、
受け付けた各株の生育計測データに基づいて各株の生育状態指標の値を算出し、算出された生育状態指標の値および予め設定されている診断基準値に基づいて各株について生育不良株であるか否かをそれぞれ特定する工程と、
生育不良株であると特定された株について、受け付けた管理作業データに基づいて株の生育の管理作業の分析を行う工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のプログラム、コンピュータ、情報処理システムおよび情報処理方法によれば、生育不良株が発生することを極力抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態による情報処理システムの構成を概略的に示す図である。
図2図1に示す情報処理システムによる概略的な処理の流れを示すフローチャートである。
図3】株の成長点長さを示す説明図である。
図4】茎径および成長点長さから成長バランス値を求める方法を示す説明図である。
図5図1に示す情報処理システムにおいて生育診断手段により生育優良株、生育不良株および生育普通株をそれぞれ特定する動作の流れを概略的に示すフローチャートである。
図6図1に示す情報処理システムにおいて定植後40日以内の株について生育優良株、生育不良株および生育普通株のうち何れの株であるかを特定する動作の流れを示すフローチャートである。
図7図1に示す情報処理システムにおいて定植後40日を超えた株について生育優良株、生育不良株および生育普通株のうち何れの株であるかを特定する動作の流れを示すフローチャートである。
図8図1に示す情報処理システムにおいて管理作業分析手段により株の生育の管理作業の分析を行う動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図8は、本実施の形態に係る情報処理システム1を示す図である。
【0027】
本実施の形態による情報処理システム1は、制御装置10と、記憶装置30と、入力装置40と、表示装置42と、計測装置44と、撮像装置46とを備えている。ここで、制御装置10には記憶装置30、入力装置40、表示装置42、計測装置44および撮像装置46がそれぞれ接続されている。制御装置10は例えばCPU(中央演算処理装置)等を含み、所定のプログラムを実行することにより受付手段12、診断基準値設定手段14、生育診断手段16、管理作業分析手段18および管理作業アドバイス出力手段20として機能する。記憶装置30は、様々な情報を記憶するようになっている。入力装置40は、ユーザによって使用されるものであり、当該ユーザによって入力装置40が操作されることにより制御装置10に様々な情報が入力されるようになっている。表示装置42は制御装置10から表示指示信号を受けることにより様々な情報を表示するようになっている。計測装置44は生育中の株の様々な値を測定するようになっている。計測装置44により測定される生育中の株の様々な値については後述する。撮像装置46は生育中の株を撮像するようになっている。本実施の形態では、制御装置10、記憶装置30、入力装置40および表示装置42が一体化した例えばパーソナルコンピュータ等が用いられてもよい。また、他の例として、入力装置40としてユーザが所持するスマートフォン、タブレットPC等の携帯通信端末が用いられてもよい。このような情報処理システム1の各構成要素について以下に説明する。
【0028】
受付手段12は、入力装置40、計測装置44、撮像装置46等から様々な情報を受け付けるようになっている。診断基準値設定手段14は、受付手段12が受け付けた情報に基づいて、診断基準値として設定茎径、設定葉面積指数、設定成長バランス値をそれぞれ設定する。ここで、茎径とは、図3に示すような株の茎100の直径のことをいい、後述する成長点から株の根元に向かって例えば15cmの箇所の直径が本実施の形態の茎径として用いられる。茎径は草勢を反映しており、茎径の大小が草勢の強弱を表している。茎径が小さ過ぎて草勢が低下している株は病害が発生しやすくなるため、茎径の大きさを一定以上に維持することが望まれる。一方、茎径が大き過ぎる場合は、株に与えられる栄養の多くが茎に取られるため、果菜類等の収穫量が少なくなるおそれがある。
【0029】
葉面積指数とは、株の葉の茂り具合を表す指標であり、地表の単位面積に対する、その上方に存在する全ての葉の片方の総面積の割合で表される。各株の栽植密度、葉の枚数、各葉の面積に基づいて葉面積指数が算出される。葉面積指数の測定方法としては、既知の様々な方法が用いられる。また、葉面積指数として、実際の全ての葉の面積を測定することにより算出する代わりに、最も大きい葉の面積に基づいて葉面積指数が推定されるようになっていてもよい。葉面積指数が大きいほど各々の株の全体での光合成能力が高く単位面積当たりの果菜類等の収穫量も多くなるが、葉面積指数が大き過ぎる場合は下の方にある葉は陰になって光合成を行うことができずに呼吸消耗だけ行うので果菜類等の収穫量が少なくなる。
【0030】
成長バランス値とは、茎径および成長点長さに基づいて算出される、株の成長を相対的に示す値である。成長バランス値は、設定成長バランス値としての基準値(具体的には、基準となる茎径および成長点長さ)に基づいて算出される。ここで、成長点長さとは、図3に示すような株において茎100から葉102が出る箇所P(この箇所を成長点という)から、成長点の下方にある茎100における花104がつく支茎106の分岐点の箇所Qまでの距離(図3において参照符号Bで表示)のことをいう。ある株について、図4に示すように茎径Aを縦軸、成長点長さBを横軸としてグラフを作成したときに、当該株の茎径および成長点長さの計測値と、上述した設定成長バランス値としての基準となる茎径および成長点長さとの間の距離が、成長バランス値Cとなる。ここで、果菜類の栽培では、茎葉の成長である栄養成長と、果菜類の成長である生殖成長とのバランスをうまく取ることが重要である。上述したように、茎径が大きいほど草勢が強く栄養成長をより一層行い、成長点長さが短いほど生殖成長をより一層行う。よって、茎径Aを縦軸、成長点長さBを横軸にとった生育バランスシート(図4に示すグラフ)上に、各株の茎径と成長点長さの計測値をプロットすることにより、各株の成長バランスを評価することができる。このような成長バランス値Cが0に近いほど、株はより優良に成長していると考えられる。なお、成長点長さは、茎100から葉102が出る箇所P(成長点)から、成長点の下方にある茎100における花104がつく支茎106の分岐点の箇所Qまでの距離に限定されることはない。他の態様として、成長点から開花段までの距離が成長点長さとして扱われるようになっていてもよい。
【0031】
生育診断手段16は、受付手段12が各株の生育計測データを受け付けると、受け付けた生育計測データに基づいて各株の生育状態指標の値を算出し、算出された生育状態指標の値に基づいて各株について生育優良株、生育不良株および生育普通株の何れであるかをそれぞれ特定する。生育診断手段16による各株の生育診断方法の詳細については後述する。
【0032】
管理作業分析手段18は、入力された管理作業データから、各株について潅水、追肥、摘葉、摘花、摘果の管理作業値を算出し、算出された潅水、追肥、摘葉、摘花、摘果の管理作業値に基づいて管理作業の分析を行う。管理作業分析手段18による管理作業分析方法の詳細については後述する。
【0033】
管理作業アドバイス出力手段20は、管理作業分析手段18により行われた管理作業の分析結果に基づいて、生育不良株の管理作業のアドバイスの情報を出力する。管理作業アドバイス出力手段20によるアドバイスの情報の出力方法の詳細については後述する。
【0034】
記憶装置30は、上述したように、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)およびSSD(Solid State Drive)などで構成されており、様々な情報を記憶するようになっている。制御装置10の受付手段12により受け付けられた様々な情報(例えば、各株の生育計測データ、管理作業値等)が記憶装置30に記憶されるようになっている。また、制御装置10により実行されるプログラムも記憶装置30に記憶されており、制御装置10によって記憶装置30に記憶されているプログラムが読み出されて当該プログラムが制御装置10により実行されることにより、制御装置10は上述した受付手段12、診断基準値設定手段14、生育診断手段16、管理作業分析手段18および管理作業アドバイス出力手段20として機能する。なお、制御装置10により実行されるプログラムは記憶装置30に記憶されていることに限定されることはない。制御装置10により実行されるプログラムが記憶装置30とは別の外部装置に記憶されていたり、外部装置から制御装置10に送信されたプログラムが都度、この制御装置10により実行されたりするようになっていてもよい。
【0035】
上述したように、入力装置40は、ユーザによって使用されるものであり、当該ユーザによって入力装置40が操作されることにより制御装置10に様々な情報が入力されるようになっている。制御装置10、記憶装置30、入力装置40および表示装置42が一体化した例えばパーソナルコンピュータ等が用いられる場合は、入力装置40として例えばキーボードやマウス等が用いられる。また、上述したように、表示装置42は制御装置10から表示指示信号を受けることにより様々な情報を表示するようになっている。制御装置10、記憶装置30、入力装置40および表示装置42が一体化した例えばパーソナルコンピュータ等が用いられる場合は、表示装置42として例えばモニタ等が用いられる。なお、入力装置40および表示装置42が一体化したものとして例えばタッチパネルが用いられてもよい。また、パーソナルコンピュータとは別にユーザが所持するスマートフォンやPCタブレット等の携帯通信端末が用いられる場合は、入力装置40および表示装置42が一体化されたものとしてユーザが所持する携帯通信端末のタッチパネルが用いられてもよい。
【0036】
上述したように、計測装置44は生育中の株の様々な値を測定するようになっている。具体的には、計測装置44は、株の茎径、成長点長さ、株の葉の面積等の計測を行う計測器等を含む。計測装置44により計測されたデータは制御装置10に送られる。また、計測装置44として、各株の管理作業データを測定するものが用いられてもよい。具体的には、潅水装置や追肥装置に付随するセンサが計測装置44として用いられ、当該センサにより潅水装置における潅水量や追肥装置における追肥量が自動的に計測されてもよい。計測装置44としてのセンサにより計測された潅水装置における潅水量や追肥装置における追肥量の情報が当該センサから制御装置10に送信される。
【0037】
上述したように、撮像装置46は生育中の株を撮像するようになっている。撮像装置46は例えばカメラやビデオカメラ等を含む。撮像装置46によって撮像された生育中の株の画像は制御装置10に送られる。撮像装置46によって撮像された生育中の株の画像に基づいて、制御装置10において既知の情報処理方法により株の葉面積指数等を算出することができるようになっている。
【0038】
次に、このような構成からなる情報処理システム1により行われる動作について図2および図5乃至図8に示すフローチャートを用いて説明する。図2は、情報処理システム1による概略的な処理の流れを示すフローチャートである。また、図5は、情報処理システム1において生育診断手段16により生育優良株、生育不良株および生育普通株をそれぞれ特定する動作の流れを概略的に示すフローチャートである。また、図6および図7は、それぞれ、情報処理システム1において各株について生育優良株、生育不良株および生育普通株のうち何れの株であるかを特定する動作の流れを示すフローチャートである。また、図8は、情報処理システム1において管理作業分析手段18により株の生育の管理作業の分析を行う動作の流れを示すフローチャートである。
【0039】
まず、診断基準値設定手段14により診断基準値として設定茎径、設定葉面積指数、設定成長バランス値がそれぞれ設定される(図2のStep1)。具体的には、ユーザは入力装置40により設定茎径、設定葉面積指数、設定成長バランス値(具体的には、茎径と成長点長さの組み合わせ)を入力すると、診断基準値設定手段14は、受付手段12が受け付けた情報に基づいて診断基準値を設定する。このような設定茎径、設定葉面積指数、設定成長バランス値は、ユーザが栽培に関する様々な文献や資料等を見ながら入力する。また、果菜類等の収穫が行われた後、優良生育株の茎径、葉面積指数、成長バランス値が診断基準値設定手段14により診断基準値として設定されてもよい。
【0040】
診断基準値設定手段14により診断基準値として設定茎径、設定葉面積指数、設定成長バランス値がそれぞれ設定された後、実際に株の生育が行われる(図2のStep2)。このような株の生育において、生育診断手段16により各株の生育状況が診断される。具体的には、株の生育データから生育状態の指標が算出され、診断基準値設定手段14により設定された診断基準値と比較されることにより各株について生育優良株、生育不良株および生育普通株の何れであるかがそれぞれ特定される。このような生育診断手段16による各株の生育状況の診断方法の詳細について図6乃至図8に示すフローチャートを用いて説明する。
【0041】
まず、ユーザは各株の生育データを計測し、計測された各株の生育計測データを入力装置40により制御装置10に入力する。このような各株の生育計測データの入力は例えば週に1回行われる。ユーザによって入力装置40により入力される各株の生育計測データは、例えば栽植密度、葉の枚数、葉の面積、茎径、成長点長さ、花数、果実数等である。より詳細には、各株の葉の枚数、花数、果実数等は目視により行われ、栽植密度、茎径、成長点長さはメジャーにより計測され、葉の面積は、カメラやビデオカメラ等による撮影および撮像された葉の面積についての測定ソフトによる演算によって算出される。制御装置10の受付手段12は、入力装置40により入力された各株の生育計測データを受け付ける(図5のStep11)。そして、受付手段12が受け付けた各株の生育計測データに基づいて、制御装置10において各株について生育状態指標の値として葉面積指数および成長バランス値が算出される(図5のStep12)。なお、受付手段12により受け付けられた各株の茎径も生育状態指標として取り扱われる。
【0042】
また、ユーザが入力装置40により各株の生育計測データの全てを入力する代わりに、計測装置44により計測された栽植密度、茎径、成長点長さ等の生育計測データが計測装置44から制御装置10に送信され、受付手段12により生育計測データが受け付けられてもよい。この場合は、制御装置10において入力装置40から受け付けた生育計測データおよび/または計測装置44から受け付けた生育計測データに基づいて、各株についての葉面積指数および成長バランス値のうち少なくとも何れかが算出される。また、撮像装置46によって撮像された生育中の株の画像が制御装置10に送られ、受付手段12により生育計測データとして生育中の株の画像が受け付けられてもよい。この場合は、撮像装置46から受け付けた生育中の株の葉の画像に基づいて制御装置10により葉の面積が測定され、測定された葉の面積に基づいて各株についての葉面積指数が算出される。また、撮像装置46から受け付けた生育中の株の葉の画像に基づいて株の茎径、成長点長さ、葉の枚数等も算出されてもよい。
【0043】
そして、生育状態指標の値としての各株の茎径、葉面積指数および成長バランス値に基づいて、各株について生育優良株、生育不良株および生育普通株のうち何れの株であるかが特定される(図5のStep13)。このような各株の生育状態の特定方法は、定植後40日以内の株と、定植後40日を超えた株とで異なる。果菜類の生育ステージは栄養成長期と生殖成長期に分けられ、その境界の目安として定植後40日としたが、任意に設定することができる。それぞれの場合について図6および図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0044】
図6に示すように、定植後40日以内の株については(図6のStep21の「YES」)、まず、生育計測データに基づいて算出された葉面積指数が診断基準値設定手段14により設定された設定葉面積指数以下であるか否かが判断される(図6のStep22)。生育計測データに基づいて算出された葉面積指数が設定葉面積指数より大きい場合は(図6のStep22の「NO」)、この株は生育不良株であると生育診断手段16により特定される。上述したように、葉面積指数が大き過ぎる場合は下の方にある葉は陰になって光合成を行うことができずに呼吸消耗だけ行うので果菜類等の収穫量が少なくなるからである。
【0045】
生育計測データに基づいて算出された葉面積指数が設定葉面積指数以下である場合は(図6のStep22の「YES」)、各株について算出された葉面積指数に基づいて降順に(すなわち、値が大きい順に)整列され、例えば上位10%に入る株については(図6のStep23の「YES」)、生育優良株であると生育診断手段16により特定される。葉面積指数が大きいほど各々の株の全体での光合成能力が高く単位面積当たりの果菜類等の収穫量も多くからである。一方、各株について算出された葉面積指数に基づいて降順に整列されたときに例えば下位10%に入る株については(図6のStep24の「YES」)、生育不良株であると生育診断手段16により特定される。また、各株について算出された葉面積指数に基づいて降順に整列されたときに上位10%および下位10%にそれぞれ入らない残りの80%の株については(図6のStep23の「NO」およびStep24の「NO」)、生育普通株であると生育診断手段16により特定される。なお、生育優良株、生育不良株であるとそれぞれ生育診断手段16により特定されるのは、葉面積指数の上位10%、下位10%に限定されることはない。生育優良株、生育不良株がそれぞれ葉面積指数の上位、下位の何パーセントであるかは任意に設定することができる。
【0046】
次に、定植後40日を超えた株(図6のStep21の「NO」)について、図7に示すフローチャートを用いて生育診断方法について説明する。定植後40日を超えた株について、まず、生育計測データに基づいて算出された葉面積指数が診断基準値設定手段14により設定された設定葉面積指数以下であるか否かが判断される(図7のStep25)。生育計測データに基づいて算出された葉面積指数が設定葉面積指数より大きい場合は(図7のStep25の「NO」)、この株は生育不良株であると生育診断手段16により特定される。
【0047】
生育計測データに基づいて算出された葉面積指数が設定葉面積指数以下である場合は(図7のStep25の「YES」)、次に、測定された株の茎径が診断基準値設定手段14により設定された設定茎径以上であるか否かが判断される(図7のStep26)。測定された株の茎径が設定茎径よりも小さい場合は(図7のStep26の「NO」)、生育不良株であると生育診断手段16により特定される。茎径が小さ過ぎる場合は、草勢が低下しており株は病害が発生しやすくなるからである。また、測定された茎径が設定茎径以上である株について(図7のStep26の「YES」)、各株について算出された成長バランス値に基づいて昇順に(すなわち、値が小さい順に)整列され、例えば上位10%に入る株については(図7のStep27の「YES」)、生育優良株であると生育診断手段16により特定される。一方、測定された茎径が設定茎径以上である株について、各株について算出された成長バランス値に基づいて昇順に整列されたときに例えば下位10%に入る株については(図7のStep28の「YES」)、生育不良株であると生育診断手段16により特定される。また、各株について算出された成長バランス値に基づいて昇順に整列されたときに上位10%および下位10%にそれぞれ入らない残りの80%の株については(図7のStep27の「NO」および図7のStep28の「NO」)、生育普通株であると生育診断手段16により特定される。なお、生育優良株、生育不良株であるとそれぞれ生育診断手段16により特定されるのは、成長バランス値の上位10%、下位10%に限定されることはない。生育優良株、生育不良株がそれぞれ成長バランス値の上位、下位の何パーセントであるかは任意に設定することができる。
【0048】
次に、管理作業分析手段18により株の生育の管理作業についての分析が行われる(図2のStep3)。具体的には、各株について、その管理作業データから管理作業値を算出し、生育優良株の管理作業値に基づいて設定された管理作業基準値と、生育不良株の管理作業値との乖離率が算出される。
【0049】
具体的には、ユーザは入力装置40により各株の管理作業データを入力する。入力すべき管理作業項目は、例えば潅水、追肥、摘葉、摘花、摘果等である。具体的には、潅水の管理作業項目については潅水装置における潅水量、追肥の管理作業項目については追肥装置における追肥量、摘葉の管理作業項目については葉の枚数、摘花の管理作業項目については花の数、摘果の管理作業項目については果実の数である。また、潅水、追肥については、計測装置44として潅水装置や追肥装置にセンサが付随しており、当該センサにより潅水装置における潅水量や追肥装置における追肥量が自動的に計測されてもよい。この場合、計測装置44としてのセンサにより計測された潅水装置における潅水量や追肥装置における追肥量の情報が当該センサから制御装置10に送信される。
【0050】
制御装置10は、入力装置40により入力された管理作業データや計測装置44により計測された管理作業データに基づいて管理作業値を算出する(図8のStep31)。具体的には、制御装置10は、潅水の管理作業項目については前回計測時からの潅水量の合計値、追肥の管理作業項目については直近2週間の追肥量の合計値、摘葉の管理作業項目については直近2週間の葉の枚数の増減、摘花の管理作業項目については直近2週間の花の数の増減、摘果の管理作業項目については直近2週間の果実の数の増減を算出する。
【0051】
また、上述した生育診断手段16により生育優良株であると特定された株について(図8のStep32の「YES」)、制御装置10は、当該株の管理作業値の平均値を算出し、この平均値を管理作業基準値とする(図8のStep33)。なお、管理作業基準値の算出方法は、生育優良株であると特定された株の管理作業値の平均値を算出する方法に限定されることはない。管理作業基準値の他の算出方法として、例えば生育不良株と特定された株に物理的に最も近い位置にある生育優良株の管理作業値を管理作業基準値としてもよく、あるいは、栽培実績データの中で最大収量または最良品質の株の管理作業値を管理作業基準値としてもよく、あるいは、既存の研究結果に基づく管理作業推奨値を管理作業基準値としてもよい。
【0052】
また、上述した生育診断手段16により生育不良株であると特定された株について(図8のStep34の「YES」)、制御装置10は、この生育不良株の管理作業値と管理作業基準値との乖離率(管理作業乖離率)を管理作業項目毎に算出する(図8のStep35)。管理作業項目毎の管理作業乖離率は以下の式により算出される。
【0053】
【数1】
【0054】
ki:管理作業乖離率
k:管理作業項目(具体的には、潅水:k=1、追肥:k=2、摘葉:k=3、摘花:k=4、摘果:k=5)
i:生育不良株の番号
k0:管理作業項目kの管理作業基準値
ki:生育不良株iの管理作業項目kの管理作業値
【0055】
このようにして、管理作業分析手段18により生育不良株の各管理作業項目の管理作業乖離率が算出される。
【0056】
次に、管理作業アドバイス出力手段20は生育不良株の管理作業アドバイスを出力する(図2のStep4)。具体的には、管理作業アドバイス出力手段20は、各生育不良株について管理作業項目の管理作業乖離率を降順に並べ、管理作業乖離率が降順に並べられた管理作業項目を出力する。管理作業アドバイス出力手段20により出力された、管理作業乖離率が降順に並べられた管理作業項目の情報は表示装置42に表示される。このことにより、優先すべき管理作業項目が明確にされ、ユーザはどの管理作業項目をまず改善すべきであるかを認識することができる。また、各生育不良株について各管理作業項目の管理作業値および管理作業基準値に基づいて下記表のアドバイスの情報を出力する。下記表に示すようなアドバイスの内容と管理作業項目等との関係は予め記憶装置30に記憶されている。
【0057】
【表1】
【0058】
管理作業アドバイス出力手段20により出力されるアドバイスの内容は、株の生育改善の履歴を機械学習させることにより精緻化することも可能である。
【0059】
その後、管理作業アドバイス出力手段20により出力されるアドバイスによる株の生育の改善効果の確認を行うため、制御装置10により生育ムラ度および生育状態の指標の履歴が出力される(図2のStep5)。生育ムラ度については、各株の生育状態の各指標の変動係数が下記式のように算出される。
【0060】
【数2】
【0061】
j:生育状態の指標(例えば、茎径:j=1、葉面積指数:j=2、成長バランス値:j=3)
【0062】
制御装置10は、生育状態の各指標に対する生育ムラ度Cvjを出力し、表示装置42には、制御装置10により出力された各指標に対する生育ムラ度Cvjの履歴グラフが表示される。表示装置42には、制御装置10により出力された生育状態の指標の履歴も表示される。このことにより、ユーザは生育状態の各指標に対する生育ムラ度Cvjや生育状態の指標の履歴を確認することができる。また、生育不良株と特定された株については優先的に表示装置42に表示される。このことにより、ユーザは生育不良株の生育状態が改善されているか否かを確認することができる。例えば、前回の生育データの計測時に生育不良株と特定された株について、生育状態の各指標の値を下記の表のように表示装置42に対比表示されるようにする。
【0063】
【表2】
【0064】
1回の各株の果実等の収穫が完了すると、記憶装置30に記憶されている各株の全栽培期間の収量データ、生育計測データ、生育状態の各指標の値、管理作業値等が制御装置10により出力され、表示装置42に表示されたり記憶装置30に記憶されたりする。また、制御装置10により出力された実栽培データは、次回の栽培において診断基準値設定手段14が診断基準値を設定する際に参照される(図2のStep6)。具体的には、例えば優良生育株であると特定された株の茎径、葉面積指数および成長バランス値等が診断基準値を設定する際に参照される。このことにより、次回の栽培において診断基準値設定手段14が診断基準値として設定茎径、設定葉面積指数、設定成長バランス値をより精度良く設定することができるようになる。
【0065】
以上のような構成からなる本実施の形態の情報処理システム1、プログラムおよび情報処理方法によれば、プログラムが実行されることにより制御装置10(コンピュータ)は受付手段12と、診断基準値設定手段14と、生育診断手段16と、管理作業分析手段18と、管理作業アドバイス出力手段20として機能する。診断基準値設定手段14は、株の診断基準値を設定し、生育診断手段16は、受付手段12が受け付けた各株の生育計測データに基づいて各株の生育状態指標の値を算出し、算出された生育状態指標の値および診断基準値に基づいて各株について生育不良株であるか否かをそれぞれ特定し、管理作業分析手段18は、生育不良株であると特定された株について、受付手段12が受け付けた管理作業データに基づいて株の生育の管理作業の分析を行い、管理作業アドバイス出力手段20は、管理作業分析手段18により行われた管理作業の分析結果に基づいて、生育不良株の管理作業のアドバイスの情報を出力する。このような技術的事項によれば、果菜類の栽培を行うにあたり生育ムラが生じる場合であっても生育不良株の管理作業のアドバイスの情報を出力することにより生育不良株が発生することを極力抑制することができる。
【0066】
また、上述したように、生育診断手段16は、算出された生育状態指標の値に基づいて各株について生育優良株、生育普通株、生育不良株の何れであるかをそれぞれ特定する。また、管理作業分析手段18は、受付手段12が受け付けた管理作業データから管理作業値を算出し、生育優良株であると特定された株の管理作業値に基づいて管理作業基準値を設定し、設定された管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を算出し、管理作業の分析結果として乖離率を出力する。この場合、受付手段12が作業管理データを受け付ける際に、作業管理データとして複数の管理作業項目毎のデータを受け付け、管理作業分析手段18は、受付手段12が受け付けた各管理作業項目の管理作業データから各管理作業項目の管理作業値を算出し、生育優良株であると特定された株の管理作業値に基づいて各管理作業項目の管理作業基準値を設定し、設定された管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を管理作業項目毎に算出し、管理作業の分析結果として各管理作業項目の乖離率を出力する。
【0067】
また、上述したように、管理作業基準値は、生育優良株であると特定された株の管理作業値に基づいて設定されることに限定されることはない。他の態様として、管理作業分析手段18は、予め管理作業基準値を設定しておき、受付手段12が受け付けた管理作業データから管理作業値を算出し、予め設定されている管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を算出し、管理作業の分析結果として乖離率を出力してもよい。ここで、予め設定されている管理作業基準値は、例えば、生育不良株と特定された株に物理的に最も近い位置にある生育優良株の管理作業値、栽培実績データの中で最大収量または最良品質の株の管理作業値、または既存の研究結果に基づく管理作業推奨値等であってもよい。この場合、受付手段12が作業管理データを受け付ける際に、作業管理データとして複数の管理作業項目毎のデータを受け付け、管理作業分析手段18は、予め各管理作業項目の管理作業基準値を設定しておき、受付手段12が受け付けた各管理作業項目の管理作業データから各管理作業項目の管理作業値を算出し、予め設定されている管理作業基準値と生育不良株の管理作業値との乖離率を管理作業項目毎に算出し、管理作業の分析結果として各管理作業項目の乖離率を出力してもよい。
【0068】
また、管理作業アドバイス出力手段20は、各生育不良株について管理作業項目の管理作業乖離率を降順に並べ、管理作業乖離率が降順に並べられた管理作業項目を出力する。このことにより、優先すべき管理作業項目が明確にされ、ユーザはどの管理作業項目をまず改善すべきであるかを認識することができる。なお、管理作業アドバイス出力手段20は、各生育不良株について管理作業項目の管理作業乖離率を降順ではなく昇順に並べ、管理作業乖離率が昇順に並べられた管理作業項目を出力してもよい。
【0069】
また、各管理作業項目毎のアドバイスの情報が記憶装置30に記憶されており、管理作業アドバイス出力手段20は、管理作業分析手段18により出力された各管理作業項目の乖離率に基づいて、記憶装置30に記憶されている情報を用いることにより、各管理作業項目のアドバイスの情報を出力する。このことにより、ユーザは各管理作業項目についての出力されたアドバイスに沿って生育不良株について栽培方法の修正を行うことができる。
【0070】
また、管理作業項目は、潅水、追肥、摘葉、摘花および摘果のうち少なくとも何れかを含む。なお、上記の説明では、管理作業項目は、潅水、追肥、摘葉、摘花および摘果の全てを含む態様について述べたが、本実施の形態はこのような態様に限定されることはない。管理作業項目は、潅水、追肥、摘葉、摘花および摘果の全てではなく一部が用いられてもよい。
【0071】
また、生育状態指標は、茎径、葉面積指数および成長バランス値のうち少なくとも何れかを含む。なお、上記の説明では、生育状態指標は、茎径、葉面積指数および成長バランス値の全てを含む態様について述べたが、本実施の形態はこのような態様に限定されることはない。生育状態指標は、茎径、葉面積指数および成長バランス値の全てではなく一部が用いられてもよい。
【0072】
また、診断基準値設定手段14は、受付手段12が受け付けたユーザによって入力装置40により入力された情報、または過去の実栽培データにおいて優良生育株と特定された株の生育計測データに基づいて、株の診断基準値を設定する。過去の実栽培データにおいて優良生育株と特定された株の生育計測データに基づいて株の診断基準値を設定した場合は、より診断基準値を精度良く設定することができる。
【0073】
なお、本実施の形態による情報処理システム1や情報処理方法等は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0074】
例えば、診断基準値設定手段14により株の診断基準値を設定する方法は上述した方法に限定されることはない。例えば、株の診断基準値として、設定茎径、設定葉面積指数および設定成長バランス値以外の値が用いられてもよい。また、ユーザが入力装置40により診断基準値を入力する方法や、過去の実栽培データにおいて優良生育株と特定された株の生育計測データに基づいて診断基準値が設定される方法以外の方法により、株の診断基準値が設定されてもよい。
【0075】
また、生育診断手段16により各株について生育不良株であるか否かをそれぞれ特定する方法は上述した方法に限定されることはない。受付手段12が受け付けた各株の生育計測データに基づいて生育不良株であるか否かを特定できるのであれば、上述した方法以外の方法により生育診断手段16が株の生育診断を行ってもよい。
【0076】
また、管理作業分析手段18により生育不良株であると特定された株の生育の管理作業の分析を行う方法は上述した方法に限定されることはない。生育不良株であると特定された株の生育の管理作業の分析を行うことができるのであれば、上述した方法以外の方法により管理作業分析手段18が管理作業の分析を行ってもよい。
【0077】
また、管理作業アドバイス出力手段20により生育不良株の管理作業のアドバイスの情報を出力する方法は上述した方法に限定されることはない。生育不良株の管理作業のアドバイスの情報を出力することができるのであれば、上述した方法以外の方法により管理作業アドバイス出力手段20が管理作業のアドバイスの出力を行ってもよい。
【0078】
また、本発明において、栽培が行われる株は果菜類に限定されることはない。栽培が行われる株として果菜類以外のものが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 情報処理システム
10 制御装置
12 受付手段
14 診断基準値設定手段
16 生育診断手段
18 管理作業分析手段
20 管理作業アドバイス出力手段
30 記憶装置
40 入力装置
42 表示装置
44 計測装置
46 撮像装置
100 茎
102 葉
104 花
106 支茎
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8