(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165163
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】気流形成システム、及び、制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20231108BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075847
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和宏
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
【Fターム(参考)】
3L056BD07
3L058BE08
3L058BG04
(57)【要約】
【課題】ダウンフロー気流を形成することができる気流形成システムを提供する。
【解決手段】気流形成システム10は、並列に配置された複数のダクト25と、複数のダクト25の内部へ送風を行う送風機21と、センシングによって得られる、下方空間85における人の存否に関する情報に基づいて、送風機21を制御する制御部とを備える。複数のダクト25のそれぞれの下面には当該ダクト25の長手方向に沿う長尺状の吹き出し口26であって、送風により下方空間85へ向かう気流が吹き出される吹き出し口26が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された複数のダクトの内部へ送風を行う送風機を制御する制御部を備え、
前記複数のダクトのそれぞれの下面には当該ダクトの長手方向に沿う長尺状の吹き出し口であって、前記送風により前記複数のダクトの下方に位置する空間へ向かう気流が吹き出される吹き出し口が設けられ、
前記制御部は、センシングによって得られる、前記複数のダクトの下方に位置する空間における人の存否に関する情報に基づいて、前記送風機を制御する
気流形成システム。
【請求項2】
前記人の存否に関する情報は、前記空間における人の混雑度を示す情報を含み、
前記制御部は、前記空間における人の混雑度を示す情報に基づいて、前記送風機を制御する
請求項1に記載の気流形成システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記空間における人の混雑度が高いほど、前記送風機による前記送風を強める
請求項2に記載の気流形成システム。
【請求項4】
前記人の存否に関する情報は、前記空間における人の活性度を示す情報を含み、
前記制御部は、前記空間における人の活性度を示す情報に基づいて、前記送風機を制御する
請求項1に記載の気流形成システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記空間における人の活性度が高いほど、前記送風機による前記送風を強める
請求項4に記載の気流形成システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記人の存否に関する情報に基づいて、前記空間に滞在する人と前記空間を通りかかった人とを区別し、
前記空間に滞在する人の存否、または、前記空間に滞在する人の数に基づいて、前記送風機を制御する
請求項1~5のいずれか1項に記載の気流形成システム。
【請求項7】
並列に配置された複数のダクトの内部へ送風を行う送風機の制御方法であって、
前記複数のダクトのそれぞれの下面には当該ダクトの長手方向に沿う長尺状の吹き出し口であって、前記送風により前記複数のダクトの下方に位置する空間へ向かう気流が吹き出される吹き出し口が設けられ、
前記制御方法は、センシングによって得られる、前記複数のダクトの下方に位置する空間における人の存否に関する情報に基づいて、前記送風機を制御する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気流形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空間において気流を形成するための様々な技術が提案されている。特許文献1には、複数の換気装置で同一の室内を換気する換気システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ダウンフロー気流を形成することができる気流形成システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る気流形成システムは、並列に配置された複数のダクトの内部へ送風を行う送風機を制御する制御部を備え、前記複数のダクトのそれぞれの下面には当該ダクトの長手方向に沿う長尺状の吹き出し口であって、前記送風により前記複数のダクトの下方に位置する空間へ向かう気流が吹き出される吹き出し口が設けられ、前記制御部は、センシングによって得られる、前記複数のダクトの下方に位置する空間における人の存否に関する情報に基づいて、前記送風機を制御する。
【0006】
本発明の一態様に係る制御方法は、並列に配置された複数のダクトの内部へ送風を行う送風機の制御方法であって、前記複数のダクトのそれぞれの下面には当該ダクトの長手方向に沿う長尺状の吹き出し口であって、前記送風により前記複数のダクトの下方に位置する空間へ向かう気流が吹き出される吹き出し口が設けられ、前記制御方法は、センシングによって得られる、前記複数のダクトの下方に位置する空間における人の存否に関する情報に基づいて、前記送風機を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る気流形成システム等は、ダウンフロー気流を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る気流形成システムの外観図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る気流形成システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る気流形成システムの動作例1のフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る気流形成システムの動作例2のフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る気流形成システムの動作例3のフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る気流形成システムの動作例4のフローチャートである。
【
図8】
図8は、変形例に係る気流発生装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0011】
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態に係る気流形成システムの構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る気流形成システムの外観図である。
図2は、実施の形態に係る気流形成システムの機能構成を示すブロック図である。
【0012】
実施の形態に係る気流形成システム10は、部屋80などの室内空間においてダウンフロー気流を形成することができるシステムである。気流形成システム10は、具体的には、気流発生装置20と、センサ群30と、制御装置40とを備える。
【0013】
まず、気流発生装置20について説明する。気流発生装置20は、送風機21と、複数のダクト25とを備える。送風機21は、部屋80の壁82の内部空間に設置され、壁82の下部に設けられた開口から空気を吸引することにより、複数のダクト25の内部への送風を行う。送風機21は、複数のファン22と、複数の配管23と、フィルタユニット24とを備える。複数のファン22は、高圧空気を発生させるための羽車(不図示)と羽車を駆動するモータ(不図示)とを含む。
【0014】
配管23は、ファン22が送出する空気を、フィルタユニット24へ導く。配管23は、例えば、樹脂材料によって形成されるが、アルミニウムなどの軽量の金属材料によって形成されてもよい。
【0015】
フィルタユニット24は、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタを有し、配管23からダクト25の内部へ向かう空気に含まれる微細な粒子を取り除く。フィルタユニット24の筐体は、例えば、樹脂材料によって形成されるが、アルミニウムなどの軽量の金属材料によって形成されてもよい。
【0016】
複数のダクト25は、上方空間83及び下方空間85の間に位置する仮想平面S(
図3に図示)に沿って並列に配置される。
図3は、複数のダクト25の断面図であり、より具体的には、複数のダクト25を長手方向に垂直な平面で切断したときの断面図である。簡略化のため、
図3では、複数のダクト25は、2つだけ示されている。なお、上方空間83は、天井81と複数のダクト25との間の空間であり、下方空間85は、複数のダクト25と床86との間の空間である。
【0017】
ダクト25は、中空の長尺状であり、例えば、樹脂材料によって形成される、ダクト25は、アルミニウムなどの軽量の金属材料によって形成されてもよい。ダクト25の下方空間85と対向する面(下面)には、ダクト25の長手方向に沿う長尺状の吹き出し口26が設けられている。ダクト25の長手方向における端部は、送風機21のフィルタユニット24に接続されている。送風機21が送風を行うと、上記端部に設けられた開口からダクト25の内部へ風が送り込まれる。この結果、吹き出し口26から下方空間へ気流が吹き出される。なお、ダクト25には、吹き出し口26、及び、上記端部に設けられた開口以外には、開口部は設けられていない。
【0018】
図3に示されるように、複数のダクト25それぞれの吹き出し口から下方空間85へ気流が吹き出されると、複数のダクト25の間の空間84は負圧となり、空間84には、複数のダクト25の上方空間83の空気が誘引される。この結果、気流発生装置20は、複数のダクト25の吹き出し口26から吹き出される気流と誘引された空気に基づく気流(
図3の白い矢印に相当。以下、誘引気流とも記載される)とが合わさった、直進性に優れたダウンフロー気流(面気流)を吹き出すことができる。ダウンフロー気流によれば、下方空間85における飛沫などのエアロゾルが床86側に吹き下ろされる。この結果、感染症の拡大を抑制する効果などが得られる。
【0019】
次に、センサ群30について説明する。センサ群30は、下方空間85に設置され、下方空間85においてセンシングを行う。センサ群30は、具体的には、下方空間85に位置する人、または、下方空間85の空気質を対象にセンシングを行う。なお、センサ群30によるセンシングには、ユーザが気流発生装置20の制御を意図した手動操作のセンシングは含まれない。また、センサ群30は、センシングの結果として得られる下方空間85における人の存否に関する情報を制御装置40へ送信する。
【0020】
センサ群30には、人感センサ31、音センサ32、着座センサ33、AI(Artificial Intelligence)カメラ34(高機能の画像センサ)、二酸化炭素濃度センサ35、微粒子濃度センサ36、及び、人位置センサ37が含まれる。なお、センサ群30には、人感センサ31、音センサ32、着座センサ33、AIカメラ34、二酸化炭素濃度センサ35、微粒子濃度センサ36、及び、人位置センサ37の少なくとも1つが含まれればよい。
【0021】
人感センサ31は、下方空間85における人の存否を示す情報を制御装置40へ送信する。人感センサ31は、人の体から発せられる赤外線をセンシングする焦電センサなどによって実現される。人の存否を示す情報は、人の存否に関する情報の一例である。
【0022】
音センサ32は、いわゆるマイクロフォンであり、下方空間85において音を取得する。音センサ32によって取得される音には、下方空間85に位置する人の発話音声が含まれる。音センサ32は、取得した音の音情報を、下方空間85に位置する人の存否に関する情報として制御装置40へ送信する。音情報は、人の存否に関する情報の一例である。
【0023】
着座センサ33は、下方空間85に設けられた座席等に人が座っているかどうかをセンシングし、当該座席における人の存否を示す情報を制御装置40へ送信する。着座センサ33は、人の体から発せられる赤外線をセンシングする焦電センサなどによって実現される。人の存否を示す情報は、人の存否に関する情報の一例である。
【0024】
AIカメラ34は、下方空間85に位置する人の数をセンシングする。AIカメラ34は、例えば、下方空間85における人の映像を撮影し、撮影した映像を処理することにより下方空間85に位置する人の数を示す情報を制御装置40へ送信する。人の数を示す情報は、人の存否に関する情報の一例である。
【0025】
二酸化炭素濃度センサ35は、下方空間85における二酸化炭素濃度を計測し、二酸化炭素濃度の計測値を制御装置40へ送信する。下方空間85に人が位置しているときには、二酸化炭素濃度が増加することから、二酸化炭素濃度の計測値は、人の存否に関する情報の一例であるといえる。
【0026】
微粒子濃度センサ36は、下方空間85における微粒子(例えば、花粉またはPM(Particulate Matter)2.5など)の濃度を計測し、計測した微粒子濃度の計測値を制御装置40へ送信する。微粒子濃度センサ36は、例えば、LED等の光源が発する光の散乱に基づいて微粒子濃度をセンシングする光学式のセンサである。下方空間85に人が位置しているときには、飛沫などの人由来の微粒子(エアロゾル)が増加することから、微粒子濃度の計測値は、人の存否に関する情報の一例であるといえる。
【0027】
人位置センサ37は、言い換えれば、人の位置のセンシングシステムである。人位置センサ37は、例えば、下方空間85に分散配置された(設置位置が既知の)複数のビーコン送信機のそれぞれが送信するビーコン信号の、人が所持するビーコン受信機における受信信号強度に基づいて、人(ビーコン受信機)の現在位置を計測する。人位置センサ37は、下方空間85における人の数、及び、各人の位置情報(座標)を示す人位置情報を制御装置40へ送信する。人位置情報は、人の存否に関する情報の一例である。
【0028】
なお、人位置センサ37は、人が所持するビーコン送信機が送信するビーコン信号の、下方空間85に分散配置された(設置位置が既知の)複数のビーコン受信機のそれぞれにおける受信信号強度に基づいて人(ビーコン送信機)の現在位置を計測してもよい。つまり、人位置センサ37は、上記の説明とビーコン信号の送信及び受信の関係性が逆の構成に基づいて、人の現在位置を計測していてもよい。
【0029】
次に、制御装置40について説明する。制御装置40は、気流発生装置20を制御するためにユーザが操作する情報端末である。制御装置40は、センサ群30から受信した人の存否に関する情報に基づいて、気流発生装置20を自動的に制御することもできる。制御装置40は、例えば、気流発生装置20のリモートコントローラであるが、スマートフォン、または、タブレット端末などの汎用装置に所定のアプリケーションプログラムがインストールされることによって実現されてもよい。また、制御装置40は、EMS(Energy Management System)コントローラなどであってもよい。
【0030】
制御装置40は、具体的には、操作受付部41と、制御部42と、記憶部43とを備える。なお、図示されないが、制御装置40(制御部42)と、気流発生装置20及びセンサ群30のそれぞれとは、有線通信または無線通信を行うことができ、制御装置40は、センサ群30から受信した人の存否に関する情報に基づいて気流発生装置に制御信号を送信することにより、気流発生装置20を制御することができる。
【0031】
操作受付部41は、ユーザの操作を受け付ける。操作受付部41は、例えば、タッチパネルによって実現されるが、タッチパネル以外に、ハードウェアボタンを含んでもよい。なお、図示されないが、操作受付部41は、液晶パネルまたは有機EL(Electro-Luminescence)パネルなどの表示パネルによって実現される表示部を備え、操作受付部41及び表示部はGUI(Graphical Use Interface)を構成してもよい。
【0032】
制御部42は、操作受付部41によって受け付けられたユーザの操作、または、センサ群30から受信した人の存否に関する情報に基づいて、気流発生装置20のオン及びオフを制御する。また、制御部42は、操作受付部41によって受け付けられたユーザの操作、または、センサ群30から受信した人の存否に関する情報に基づいて、気流発生装置20が発生する気流の強さ(例えば、送風機21が有するファン22の回転速度)を制御する。気流の強さは、風量または風速などと言い換えることができる。
【0033】
制御部42は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。制御部42の機能は、例えば、制御部42を構成するマイクロコンピュータ等が記憶部43に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0034】
記憶部43は、制御部42が気流発生装置20を制御するために必要な各種情報、及び、コンピュータプログラムなどが記憶される記憶装置である。記憶部43は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。なお、記憶部43は、制御部42に内蔵されてもよい。
【0035】
[動作例1:オン動作]
上述のように、制御装置40は、センサ群30から受信した人の存否に関連する情報に基づいて、気流発生装置20を自動的にオンすることができる。
図4は、気流発生装置20のオン動作(動作例1)のフローチャートである。なお、
図4の動作は、例えば、ユーザが選択可能な気流形成システム10の動作モードの1つ(自動オンオフモード)として実現される。
【0036】
気流発生装置20がオフの状態で(S11)、制御装置40の制御部42は、センサ群30から制御装置40へ送信される下方空間85における人の存否に関する情報を取得(受信)し(S12)、取得した人の存否に関する情報に基づいて下方空間85における人の存否を判定する(S13)。
【0037】
例えば、人の存否に関する情報が、人感センサ31または着座センサ33によって送信される下方空間85における人の存否を示す情報である場合、制御部42は、直接的に下方空間85における人の存否を判定することができる。同様に、人の存否に関する情報が、AIカメラ34によって送信される人の数を示す情報である場合、制御部42は、直接的に下方空間85における人の存否を判定することができる。人の存否に関する情報が人位置センサ37によって送信される人位置情報である場合も、制御部42は、直接的に下方空間85における人の存否を判定することができる。
【0038】
また、人の存否に関する情報が、音センサ32によって送信される下方空間85における音の音情報である場合、制御部42は、音声認識処理などによって音情報に人の発話音声が含まれるか否かを判定することで、下方空間85における人の存否を判定することができる。
【0039】
人の存否に関する情報が、二酸化炭素濃度センサ35によって送信される下方空間85における二酸化炭素濃度の計測値である場合、制御部42は、二酸化炭素濃度の計測値が閾値を超えたときに、下方空間85に人が存在すると判定することができる。
【0040】
人の存否に関する情報が、微粒子濃度センサ36によって送信される下方空間85における微粒子濃度の計測値である場合、制御部42は、微粒子濃度の計測値が閾値を超えたときに、下方空間85に人が存在すると判定することができる。
【0041】
制御部42は、下方空間85に人が存在しないと判定すると(S13でNo)、動作は終了となり、気流発生装置20のオフ状態が継続される。一方、制御部42は、下方空間85に人が存在すると判定すると(S13でYes)、気流発生装置20をオンする(S14)。制御部42は、具体的には、有線通信または無線通信によって気流発生装置20へ制御信号を送信することにより、気流発生装置20をオンすることができる。つまり、制御部42は、送風機21をオンすることができる。
【0042】
以上説明したように、気流形成システム10は、下方空間85に人がいるときに気流発生装置20を自動的にオンすることができる。これにより、下方空間85に人がいるにもかかわらず、気流発生装置20がオンしていないことが抑制される。つまり、気流による感染症対策が不十分となってしまうことが抑制される。
【0043】
[動作例2:オフ動作]
また、制御装置40は、センサ群30から受信した人の存否に関連する情報に基づいて、気流発生装置20を自動的にオフすることができる。
図5は、気流発生装置20のオフ動作(動作例2)のフローチャートである。なお、
図5の動作は、例えば、ユーザが選択可能な気流形成システム10の動作モードの1つ(自動オンオフモード)として実現される。
【0044】
気流発生装置20がオンの状態で(S21)、制御装置40の制御部42は、センサ群30から制御装置40へ送信される下方空間85における人の存否に関する情報を取得(受信)し(S22)、取得した人の存否に関する情報に基づいて下方空間85における人の存否を判定する(S23)。下方空間85における人の存否の判定方法については、オン動作において説明した通りである。
【0045】
なお、ステップS13で使用される二酸化炭素濃度の計測値に対する第一閾値(ステップ)と、ステップS23で使用される二酸化炭素濃度の第二閾値とは、同一であってもよいし、第一閾値>第二閾値であってもよい。つまり、ヒステリシスが設けられていてもよい。微粒子濃度についても同様である。
【0046】
制御部42は、下方空間85に人が存在すると判定すると(S23でYes)、動作は終了となり、気流発生装置20のオン状態が継続される。一方、制御部42は、下方空間85に人が存在しないと判定すると(S23でNo)、気流発生装置20をオフする(S24)。制御部42は、具体的には、有線通信または無線通信によって気流発生装置20へ制御信号を送信することにより、気流発生装置20をオフすることができる。つまり、制御部42は、送風機21をオフすることができる。
【0047】
以上説明したように、気流形成システム10は、下方空間85に人がいないときに気流発生装置20を自動的にオフすることができる。これにより、下方空間85に人がいないにもかかわらず、気流発生装置20がオフしていないことが抑制される。つまり、不必要に気流発生装置20がオンしてしまうことが抑制され、節電効果などが得られる。
【0048】
[動作例3:混雑度に基づく動作]
制御装置40は、下方空間85における人の混雑度に基づいて、気流発生装置20の送風の強さを制御することもできる。
図6は、混雑度に基づく動作(動作例3)のフローチャートである。なお、
図6の動作は、例えば、ユーザが選択可能な気流形成システム10の動作モードの1つ(混雑度連動モード)として実現される。
【0049】
制御部42は、センサ群30から制御装置40へ送信される下方空間85における人の混雑度を示す情報を取得する(S31)。制御部42は、例えば、下方空間85に位置する人の数を混雑度とみなすことができる。したがって、センサ群30から制御装置40へ送信される情報(人の存否に関連する情報)のうち、人の数を直接的または間接的に示す以下の情報は、人の混雑度を示す情報として使用することができる。
【0050】
例えば、AIカメラ34によって送信される人の数を示す情報、及び、人位置センサ37によって送信される人位置情報は、人の数を直接的に示す情報であるといえる。着座センサ33によって送信される人の存否を示す情報によれば、制御部42は、座席に座っている人数を特定することができる。したがって、当該情報は、人の数を直接的に示す情報であるといえる。
【0051】
また、音センサ32によって送信される音情報は、音声認識処理(話者の個人識別処理)により、発話者の数を特定することができる。したがって、音情報は、人の数を間接的に示す情報であるといえる。
【0052】
二酸化炭素濃度センサ35によって送信される二酸化炭素濃度の計測値は、当該計測値が大きいほど人の数が多いと考えることができる。したがって、二酸化炭素濃度の計測値は、人の数を間接的に示す情報であるといえる。微粒子濃度センサ36によって送信される微粒子濃度の計測値は、当該計測値が大きいほど人の数が多いと考えることができる。したがって、微粒子濃度の計測値は、人の数を間接的に示す情報であるといえる。
【0053】
制御部42は、これらの混雑度を示す情報(人の数を直接的または間接的に示す情報)に基づいて、気流発生装置20の送風の強さを決定する(S32)。制御部42は、例えば、下方空間85に位置する人の数(推定人数の場合もある)が多いほど、送風が強くなるように送風の強さを決定する。人の数と送風の強さとの対応関係については、例えば、テーブル情報としてあらかじめ記憶部43に記憶される。テーブル情報は、気流形成システム10の設計者等により、経験的または実験的に定められればよい。
【0054】
次に、制御部42は、気流発生装置20に決定した強さで送風を行わせる(S33)。制御部42は、有線通信または無線通信によって気流発生装置20へ制御信号を送信することにより、気流発生装置20の送風の強さを制御することができる。制御部42は、下方空間85に人がいない場合には、気流発生装置20の送風を停止させてもよい。
【0055】
以上説明したように、気流形成システム10は、下方空間85における人の混雑度を示す情報に基づいて、気流発生装置20(送風機21)を制御する。気流形成システム10は、下方空間85における人の混雑度が高いほど、気流発生装置20(送風機21)による送風を強める。これにより、気流形成システム10は、効率的に感染症対策を行うことができる。
【0056】
なお、制御部42は、送風の強さを決定するにあたり、混雑度を示す情報を少なくとも1つ使用すればよいが、混雑度を示す情報を複数種類組み合わせてもよい。
【0057】
[動作例4:活性度に基づく動作]
制御装置40は、下方空間85における人の活性度に基づいて、気流発生装置20の送風の強さを制御することもできる。
図7は、活性度に基づく動作(動作例4)のフローチャートである。なお、
図7の動作は、例えば、ユーザが選択可能な気流形成システム10の動作モードの1つ(活性度連動モード)として実現される。
【0058】
制御部42は、センサ群30から制御装置40へ送信される下方空間85における人の活性度を示す情報を取得する(S41)。ここでの活性度は、コミュニケーションが活発に行われているかどうかの指標であり、活性度が高いとは、会話における発話音量が大きいか、あるいは、会話が頻繁に行われていることを意味する。制御部42は、例えば、下方空間85に位置する人の会話量を活性度とみなすことができる。したがって、センサ群30から制御装置40へ送信される情報(人の存否に関連する情報)のうち、音センサ32によって送信される音情報は、人の活性度を示す情報として使用することができる。
【0059】
制御部42は、活性度を示す情報(音情報)に基づいて、気流発生装置20の送風の強さを決定する(S42)。
【0060】
制御部42は、まず、活性度を決定する。制御部42は、例えば、所定期間における平均発話音量を算出し、算出した平均発話音量を活性度として決定する。また、制御部42は、所定期間から誰も発話していない期間を減算した累積発話期間の長さを算出し、算出した累積発話期間の長さを活性度として決定してもよい。また、制御部42は、発話音量と発話期間とを両方考慮し、所定期間において発話音量と発話期間とを積分した積分値を算出し、算出した積分値を活性度として決定してもよい。所定期間は、例えば、10分~1時間程度の期間であるが、特に限定されない。
【0061】
制御部42は、このように決定した活性度が高いほど、送風が強くなるように送風の強さを決定する。活性度と送風の強さとの対応関係については、例えば、テーブル情報としてあらかじめ記憶部43に記憶される。テーブル情報は、気流形成システム10の設計者等により、経験的または実験的に定められればよい。
【0062】
次に、制御部42は、気流発生装置20に決定した強さで送風を行わせる(S43)。制御部42は、有線通信または無線通信によって気流発生装置20へ制御信号を送信することにより、気流発生装置20の送風の強さを制御することができる。制御部42は、下方空間85に人がいない場合には、気流発生装置20の送風を停止させてもよい。
【0063】
以上説明したように、気流形成システム10は、下方空間85における人の活性度を示す情報に基づいて、気流発生装置20を制御する。気流形成システム10は、下方空間85における人の活性度が高い(飛沫の浮遊量が多いと考えられる)ほど、気流発生装置20(送風機21)による送風を強める。これにより、気流形成システム10は、効率的に感染症対策を行うことができる。
【0064】
[通りかかった人の区別]
ところで、部屋80が閉空間ではなくオープンスペースであるような場合、下方空間85に滞在している人と下方空間85に通りかかった人とを区別することで、気流発生装置20の制御の精度の向上を図ることができる。ここで、下方空間85に滞在する人とは、目的をもって下方空間85にある程度長期間の間位置している人を意味し、通りかかった人とは、下方空間85に位置する目的は無く、移動に際して下方空間85またはその近傍に居合わせた人を意味する。
【0065】
制御装置40の制御部42は、下方空間85に滞在する人の存否、または、下方空間85に滞在する人の数に基づいて、気流発生装置20を制御することで、制御の精度の向上を図ることができる。ここでの制御は、上記動作例1~動作例4で説明したいずれの制御であってもよい。
【0066】
例えば、制御部42は、人位置センサ37によって送信される人位置情報をある程度高い頻度で取得すれば、取得した人位置情報に基づいて、下方空間85内に位置している人の連続滞在時間を特定することができる。よって、下方空間85内に位置している人のうち連続滞在時間が所定時間以上の人を下方空間85に滞在している人として、連続滞在時間が所定時間未満の下方空間85に通りかかった人と区別することができる。
【0067】
また、制御部42は、センサ群30に含まれるセンサのうち2種類以上のセンサを併用して、下方空間85に滞在する人と、下方空間85に通りかかった人を区別してもよい。例えば、AIカメラ34及び二酸化炭素濃度センサ35を併用して、下方空間85に滞在する人と、下方空間85に通りかかった人を区別してもよい。
【0068】
[気流発生装置の変形例]
上記実施の形態では、気流発生装置20は、ダクト25を3つ以上備えたが、ダクト25を2つだけ備えてもよい。例えば、気流発生装置20は、2つのダクト25の吹き出し口26から吹き出される気流と誘引気流とが合わさった、直進性に優れたダウンフロー気流(面気流)によってエアカーテンを形成する装置として実現されてもよい。
図8は、このような変形例に係る気流発生装置の外観図である。
【0069】
図8に示される気流発生装置20aは、ダウンフロー気流によりエアカーテンを形成する。エアカーテンによれば、ユーザが発する飛沫が他方のユーザへ到達することを抑制することができる。また、気流発生装置20aのようにダウンフロー気流によりエアカーテンを形成する構成は、下方から上方へ向かうアップフロー気流によりエアカーテンが形成される構成に比べて、飛沫が舞い上がりにくい。このため、気流発生装置20aによる感染症の拡大の抑制効果は高いといえる。上記実施の形態において説明された動作は、気流発生装置20に代えて、気流発生装置20aを制御対象として行われてもよい。
【0070】
[効果等]
以上説明したように、気流形成システム10は、並列に配置された複数のダクト25の内部へ送風を行う送風機21を制御する制御部42を備える。複数のダクト25のそれぞれの下面には当該ダクト25の長手方向に沿う長尺状の吹き出し口26であって、送風により複数のダクト25の下方に位置する空間(下方空間85)へ向かう気流が吹き出される吹き出し口26が設けられる。制御部42は、センシングによって得られる、下方空間85における人の存否に関する情報に基づいて、送風機21を制御する。なお、上記実施の形態では、送風機21を制御することを、気流発生装置20を制御するとも記載している。
【0071】
このような気流形成システム10は、下方空間85における人の存否に基づいて、ダウンフロー気流を形成することができる。
【0072】
また、例えば、人の存否に関する情報は、下方空間85における人の混雑度を示す情報を含む。制御部42は、下方空間85における人の混雑度を示す情報に基づいて、送風機21を制御する。
【0073】
このような気流形成システム10は、下方空間85における人の混雑度に基づいて、ダウンフロー気流を形成することができる。
【0074】
また、例えば、制御部42は、下方空間85における人の混雑度が高いほど、送風機21による送風を強める。
【0075】
このような気流形成システム10は、下方空間85における人の混雑度が高いほど、強いダウンフロー気流を形成することができる。
【0076】
また、例えば、人の存否に関する情報は、下方空間85における人の活性度を示す情報を含む。制御部42は、下方空間85における人の活性度を示す情報に基づいて、送風機21を制御する。
【0077】
このような気流形成システム10は、下方空間85における人の活性度に基づいて、ダウンフロー気流を形成することができる。
【0078】
また、例えば、制御部42は、下方空間85における人の活性度が高いほど、送風機21による送風を強める。
【0079】
このような気流形成システム10は、下方空間85における人の活性度が高いほど、強いダウンフロー気流を形成することができる。
【0080】
また、例えば、制御部42は、人の存否に関する情報に基づいて、下方空間85に滞在する人と下方空間85に通りかかった人とを区別し、下方空間85に滞在する人の存否、または、下方空間85に滞在する人の数に基づいて、送風機21を制御する。
【0081】
このような気流形成システム10は、送風機21の制御の精度の向上を図ることができる。
【0082】
また、制御装置40(制御部42)などのコンピュータが実行する送風機21(気流発生装置20)の制御方法は、並列に配置された複数のダクト25の内部へ送風を行う送風機21の制御方法である。複数のダクト25のそれぞれの下面には当該ダクト25の長手方向に沿う長尺状の吹き出し口26であって、送風により複数のダクト25の下方に位置する空間(下方空間85)へ向かう気流が吹き出される吹き出し口26が設けられる。制御方法は、センシングによって得られる、複数のダクト25の下方に位置する空間における人の存否に関する情報に基づいて、送風機21を制御する。
【0083】
このような制御方法は、下方空間85における人の存否に基づいて、ダウンフロー気流を形成することができる。
【0084】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0085】
例えば、上記実施の形態において、気流形成システムは、複数の装置によって実現された。この場合、気流形成システムが備える構成要素(特に、機能的な構成要素)は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。また、気流形成システムは、単一の装置として実現されてもよい。例えば、気流形成システムは、制御装置に相当する単一の装置として実現されてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態で説明された処理の順序は、一例である。複数の処理の順序は変更されてもよいし、複数の処理は並行して実行されてもよい。また、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。
【0087】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0088】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(又は集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0089】
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。例えば、本発明は、上記実施の形態の気流形成システムが適用された建物(部屋)として実現されてもよいし、上記実施の形態の制御装置として実現されてもよい。また、本発明は、上記実施の形態の制御装置(制御部)などのコンピュータが実行する気流形成システム(気流発生装置、送風機)の制御方法として実行されてもよいし、このような制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。また、本発明は、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0090】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
10 気流形成システム
20、20a 気流発生装置
21 送風機
22 ファン
23 配管
24 フィルタユニット
25 ダクト
26 吹き出し口
30 センサ群
31 人感センサ
32 音センサ
33 着座センサ
34 AIカメラ
35 二酸化炭素濃度センサ
36 微粒子濃度センサ
37 人位置センサ
40 制御装置
41 操作受付部
42 制御部
43 記憶部
80 部屋
81 天井
82 壁
83 上方空間
84 空間
85 下方空間
86 床