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特開2023-165175咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165175
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/17 20160101AFI20231108BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20231108BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20231108BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20231108BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 9/22 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A23L33/17
A23G3/34 101
A23L33/125
A61P21/00
A61P1/02
A61K47/42
A61K47/26
A61K9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075887
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小林 惠津子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 美香子
(72)【発明者】
【氏名】林 眞由
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 未来帆
(72)【発明者】
【氏名】松尾 平三
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4C076
【Fターム(参考)】
4B014GE01
4B014GG07
4B014GL08
4B014GL10
4B018LB01
4B018LB10
4B018MD20
4B018MD27
4B018MD28
4B018MD29
4B018ME14
4C076AA38
4C076BB01
4C076CC09
4C076DD38
4C076DD38A
4C076DD43
4C076DD67
4C076DD67A
4C076EE30
4C076EE42
4C076EE42A
4C076EE52
4C076EE58
4C076FF01
4C076FF31
(57)【要約】
【課題】摂取することで咀嚼機能を維持又は向上させ、唾液分泌を促進することができるグミ組成物を提供する。
【解決手段】厚み1~15mm、幅1~75mm、長さ1~70mmであり、硬度が500~50000gである、咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み1~15mm、幅1~75mm、長さ1~70mmである咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物。
【請求項2】
硬度が500~50000gである、請求項1に記載の咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物。
【請求項3】
硬度が4300~24000gである、請求項2に記載の咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物。
【請求項4】
ゼラチン、糖および糖類を含む、請求項3に記載の咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼とは、嚥下に適した性状に調整するために食物をかみ砕き、唾液と混ぜ合わせる栄養摂取行動の一部である。食物を小さな食片に粉砕することで、消化酵素が作用する表面積が増加するため、食物をよく咀嚼することは消化吸収を助ける。また、咀嚼時に分泌される唾液には消化液としてだけでなく、咀嚼により小さな断片にした食物を飲み込みやすい塊とする役割がある。さらに、唾液が食物から溶けだした化学成分の溶媒となるため、味蕾での味の知覚においても重要である。
【0003】
近年、加齢とともに咀嚼機能が低下し、摂取可能な食品が減少することで栄養不足を招き、それが筋力の低下、ひいては全身の運動機能の低下につながるおそれがあるとされ、咀嚼機能を維持、又は向上させることの重要性が認識され始めている。また、加齢により唾液の分泌量が減少すると、消化吸収力が低下するだけでなく、嚥下が困難になり誤嚥を引き起こすリスクとなる。さらに、唾液の減少により味を感じにくくなるため食の楽しみが損なわれ、QOLにも影響を与えうる。
【0004】
非特許文献1には、さきいかやたくあんを噛むことのできる咀嚼能力を有した高齢者は、そうでない高齢者と比べて健康余命が有意に長いことが示されており、咀嚼能力の維持又は向上は多様な食品の摂取、ひいては多様な栄養の摂取に繋がり健康余命の延伸に寄与することが示唆されている。
【0005】
特許文献1に開示されるように、咀嚼力を向上させるために成分の配合比を調整し、グミ組成物の硬さや粘性を好適化することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/136869号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 4 : 380-387, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
摂取することで咀嚼機能を維持又は向上させ、唾液分泌を促進することができるグミ組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、咀嚼機能を維持又は向上させ、唾液分泌を促進することができるグミ組成物の大きさ及び物性を見出した。
【0010】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
厚み1~15mm、幅1~75mm、長さ1~70mmである咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物。
項2.
硬度が500~50000gである、請求項1に記載の咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物。
項3.
硬度が4300~24000gである、請求項2に記載の咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物。
項4.
ゼラチン、糖および糖類を含む、請求項3に記載の咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物は、適度な大きさと物性とを備え、咀嚼時に咀嚼筋の筋活動、及び/又は舌の運動を促進することで、咀嚼機能を維持又は向上させることができる。また、自発的な咀嚼を誘発し、1回の摂取あたり、又は単位時間あたりの咀嚼回数を増加させることで、唾液の分泌を促進することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本実施形態の咀嚼機能維持改善用組成物は、厚み1~15mm、幅1~75mm、長さ1~70mmであり、硬度が500~50000gであることで、咀嚼機能を維持又は改善し、唾液分泌を促進する効果を発揮する。以下、本明細書において当該咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物を、「本開示の組成物」と表記することがある。
【0013】
本開示の組成物に含まれるゼラチンとしては、特に制限されないが、例えば、牛、豚、鶏、魚等の皮、骨、腱等を原料としたものを用いることができる。ゼラチンは、酸処理またはアルカリ処理が行われていてもよい。ゼラチンのブルーム値は、100~320であることが好ましく、200以上であることがより好ましい。ゼラチンは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本開示の組成物中のゼラチンの含有量は特に制限されないが、好ましくは、5~10質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5質量%であってもよい。例えば、当該範囲は6~9質量%であってもよい。
【0015】
本開示の組成物に含まれる増粘多糖類としては、特に制限されないが、例えば、ペクチンに限らず、カラギーナン、グルコマンナン、アラビアガムなどを用いることができる。ペクチンは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
本開示の組成物中の増粘多糖類の含有量は特に制限されないが、好ましくは、0.01~0.5質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、又は0.4質量%であってもよい。
【0017】
本開示の組成物に含まれる糖質および糖類としては、砂糖、水あめ、還元水あめ、ソルビトール、マルチトールが挙げられる。砂糖は、特に制限されないが、例えば、グラニュー糖、上白糖や三温糖などを用いることができる。水あめは、特に制限されないが、例えば、酵素糖化処理や酸糖化処理されたDE値が20~60の粉末状、液体状の原料を用いることができる。還元水あめは、特に制限されないが、例えば、糖組成比は様々で、平均分子量が300~3000である粉末状、液体状の原料を用いることができる。ソルビトールは、特に制限されないが、例えば、粉末状、液体状の原料を用いることができる。マルチトールは、特に制限されないが、例えば、粉末状、液体状の原料を用いることができる。これらの甘味料は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本開示の組成物中の砂糖、水あめ、還元水あめの含有量は特に制限されないが、好ましくは、20~65質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば、25、30、35、40、45、50、55、又は60質量%であってもよい。例えば、当該含有量は30~55質量%であってもよい。
【0019】
本開示の組成物中のソルビトール、マルチトールの含有量は特に制限されないが、好ましくは、5~60質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は55質量%であってもよい。例えば、当該含有量は25~55質量%であってもよい。
【0020】
本開示の組成物に含まれるポリデキストロースとしては、特に制限されないが、例えば、食物繊維含量が固形分量に対して60%以上の粉末状、液体状の原料を用いることができる。また水素添加により還元されたポリデキストロースも同様に用いることができる。ポリデキストロースは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本開示の組成物中のポリデキストロースの含有量は特に制限されないが、好ましくは、10~20質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19質量%であってもよい。例えば、当該含有量は12~18質量%であってもよい。
【0022】
本開示の組成物に含まれる酸味料としては、特に制限されないが、例えば、酢酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、氷酢酸、グルコノデルタラクトン、リン酸などの有機酸およびその有機酸塩類を用いることができる。酸味料は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本開示の組成物中の酸味料の含有量は特に制限されないが、好ましくは、0.1~2.0質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3,1.4、1.5、1.6、1.7,1.8,又は1.9質量%であってもよい。例えば、当該含有量は0.6~1.5質量%であってもよい。なお、本開示の組成物のpHは特に制限はないが、25℃におけるpHは3~7、好ましくは2.8~4とすることができる。当該pHは、組成物を固める前の組成液の状態で測定することができる。
【0024】
本開示の組成物には、上記成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲で、公知の成分を含有してもよい。例えば香料、着色料、果汁、食物繊維、酸味料、酸化防止剤、乳化剤、加工澱粉、でんぷん、増粘多糖類、pH調整剤、油脂、タンパク質等が挙げられる。香料は、組成物全量に対して0.1~2質量%含有させることができる。
【0025】
本開示の組成物の有する物性は、当該技術分野において通常用いられるTA.XT plus 100C (Stable Microsystems社製)等のテクスチャーアナライザーを用い、測定することができる。測定条件は、例えば、直径2又は3mmの円柱プローブ、くさび形プローブを用い、測定速度3mm/秒、圧縮率100%が挙げられる。本明細書中では、前記測定条件での測定結果を硬度(g)と定義する。
【0026】
本開示の組成物の物性は、特に制限されないが、好ましくは上記測定方法で測定される硬度(g)が、500~50000gである。当該範囲の上限又は下限は、例えば、1000,1500,2000,2500,3000,3500,4000,4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、12000、14000、16000、18000、20000、22000、24000、26000、28000、30000、32000、34000、36000、38000、40000,42000、44000、46000,又は48000gであってもよい。例えば、当該硬度(g)は4300~24000g、さらに好ましくは4300~15000gであってもよい。
【0027】
本開示の組成物の大きさは、特に制限されないが、好ましくは厚みが1~15mm、幅が1~75mm、長さが1~70mmである。当該範囲の上限又は下限は、例えば、厚み2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14mmであってもよく、幅2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は、70mmであってもよく、長さ2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、又は65mmであってもよい。
【0028】
本明細書において、「厚み」、「幅」、及び「長さ」は、1つの独立した組成物において、それぞれが直交する3つの軸方向における長さのいずれかであればよい。例えば、物体を静置した際の上面または底面を含む平面上において直交する2つの方向の一方の長さを「幅」、他方の長さを「長さ」とし、前記平面に直交する方向の長さを「厚み」としてもよい。本開示の組成物が、全体的に丸みを帯びた略直方体である場合、厚み、幅、及び長さは、それぞれの方向における最も長い距離を表してもよい。
【0029】
本開示の組成物は、前記厚み、幅、長さを備えた形状であればよく、例えば略直方体であってもよい。略直方体には、角あるいは辺が丸みを帯びたもの、面に凹凸を設けた直方体も含まれる。
【0030】
本開示の組成物の用途は、特に制限されないが、例えば、一般食品や保健機能食品、特別用途食品等に使用することができる。また、保健機能食品としては、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等に使用することができる。これらの中でも、咀嚼機能の維持、咀嚼機能の向上、咀嚼力の維持、咀嚼力の向上、咬合圧の維持、咬合圧の向上、嚥下機能の維持、嚥下機能の向上、舌機能の維持、舌機能の向上、オーラルフレイルの予防、オーラルフレイルの解消、口腔機能改善、咀嚼訓練、咀嚼トレーニング、唾液分泌促進、口腔乾燥予防、及び口腔乾燥改善に対して、本開示の組成物を好適に用いることができる。
【0031】
本開示の組成物の適用対象としては、ヒトを含む哺乳動物(例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ヒツジ、ウマ、ウシ、サル等)等が例示される。中でもヒトが好ましい。本開示の組成物の適用対象となるヒトとしては、例えば、咀嚼機能が低下している、又はその疑いがあるヒト;咀嚼力が低下している、又はその疑いがあるヒト;咬合圧が低下している、又はその疑いがあるヒト;嚥下機能が低下している、又はその疑いがあるヒト;舌機能が低下している、又はその疑いがあるヒト;オーラルフレイルである、又はその疑いのあるヒト;唾液分泌が低下している、又はその疑いがあるヒト;口腔が乾燥している、又はその疑いがあるヒト;等に限らず、健常者(例えば、口腔機能を改善したいヒト、咀嚼を訓練したいヒト、咀嚼筋をトレーニングしたいヒト)等であってもよい。
【実施例0032】
咀嚼機能維持向上又は唾液分泌促進用組成物について、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本開示の組成物は、実施例に記載の構成に限定されるものではない。
【0033】
表1および2に記載の処方1~160の配合量にて、常法によりグミ組成物を調製した。処方番号1~160の各組成物について、表3および4に記載の形状1~349の形状とした。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
表1および2に記載の処方番号1~160のグミ組成物は、それぞれ硬度(g)が500~50000gの範囲内であった。また、表3および4の形状を有することにより、被験者に当該組成物を摂取させることで、咀嚼機能が維持・向上し、唾液分泌が促進された。
【0039】
表5に、本開示の組成物の処方例を示す。