(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165176
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】扉体のロック装置
(51)【国際特許分類】
E05C 1/04 20060101AFI20231108BHJP
E05B 65/10 20060101ALI20231108BHJP
E05B 65/08 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
E05C1/04 E
E05B65/10 L
E05B65/08 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075890
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000138613
【氏名又は名称】株式会社ユニオン
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】田河 寿一
(57)【要約】
【課題】縦框がより小さいサイズの扉体にも設置できるようにコンパクト化できる扉体のロック装置を提供する。
【解決手段】
扉体のロック装置は、施錠部材10と、操作部材20と、ロッド30と、ガイド部材40と、被ガイド部材50とを具備する。施錠部材は、施錠状態と解錠状態との間で上下に移動する。施錠状態は、施錠部材が扉体を閉状態に係止する状態である。解錠状態は、施錠部材が扉体を係止しない状態である。操作部材は、施錠部材と連動し、施錠部材を上下に移動する操作を受付ける。ロッドは、施錠部材と操作部材とを連結する。ガイド部材は、操作部材の移動をガイドする。被ガイド部材は、上下方向に延びており、第1連結部、第2連結部、及び摺接部を有する。第1連結部は、操作部材と連結される。第2連結部は、ロッドと連結される。摺接部は、第1連結部と上下方向の異なる位置に配設され、ガイド部材と摺接する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉体を係止する施錠状態と前記扉体を係止しない解錠状態との間で上下に移動する施錠部材と、
前記施錠部材と連動し、前記施錠部材を上下に移動する操作を受付ける操作部材と、
前記施錠部材と前記操作部材とを連結するロッドと、
前記操作部材をガイドするガイド部材と、
上下方向に延びており、前記操作部材と連結される第1連結部、前記ロッドと連結される第2連結部、並びに、前記第1連結部と異なる上下方向の位置に配設され、前記ガイド部材と摺接する摺接部を有する被ガイド部材
とを具備する、扉体のロック装置。
【請求項2】
前記施錠部材を前記施錠状態と前記解錠状態とに一時的に固定する一時的固定部を更に具備し、
前記ガイド部材、及び前記摺接部の一方は他方を内包し、
前記一時的固定部は、前記ガイド部材、及び前記摺接部の前記一方における前記施錠状態及び前記解錠状態と対応する位置に形成される第1溝部、及び第2溝部と、前記他方に配設され、前記第1溝部、及び前記第2溝部と弾性的に係合する弾性係合部とを含む、請求項1に記載の扉体のロック装置。
【請求項3】
前記扉体の両面のうち前記操作部材が配設される側と反対側から、前記施錠部材を前記解錠状態とするように、前記操作部材を移動する非常解錠操作を受付ける非常解錠部を更に具備する、請求項1又は請求項2に記載の扉体のロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸、開き戸、折り戸等の各種の扉体を上下のドア枠、又は天井、床等に係止し、扉体が移動しないようにロックする扉体のロック装置に関し、特に、框を有する扉体の縦框に内蔵可能である、扉体のロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の扉体を上下のドア枠、又は天井、床等に係止し、扉体をロックする扉体のロック装置として、特許文献1には、扉体の縦框に内蔵可能である扉体のロック装置が記載されている。特許文献1に記載の扉体のロック装置は、施錠部材、ロッド、操作部材、被ガイド部材、及びケースを具備する。
【0003】
施錠部材は、ドア枠のうちの上枠に設けられている係止凹部と係合し、扉体を係止する。操作部材は、施錠部材を施錠状態と解錠状態との間で上下に移動する操作を受付ける。ロッドは、上端において施錠部材と連結され、下端において被ガイド部材と連結される。被ガイド部材は、角棒状であり、ロッドと操作部材とを連結する。
【0004】
ケースは、筒状であり、角棒状の被ガイド部材が摺動可能に挿通され、操作部材の上下の移動をガイドする。また、被ガイド部材は、ネジ等の軸状の固定手段が挿通される挿通孔を有しており、操作部材は、被ガイド部材の挿通孔に挿通される固定手段によって被ガイド部材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の扉体のロック装置においては、操作のための力が加えられる操作部材が軸状の固定手段によって被ガイド部材に固定されることから、被ガイド部材は、比較的に径の大きい固定手段を挿通できる最低限の太さを有することが必要となる。従って、被ガイド部材を内包するように配設されるケースも、最低限の横幅、厚みを有することが必要となり、ケースのコンパクト化に制約が生じ、ロック装置を扉体の縦框に内蔵するとき、縦框の横幅等のサイズが小さいと内蔵できず、設置可能な扉体が制限される。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、縦框がより小さいサイズの扉体にも設置できるようにコンパクト化できる扉体のロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示する扉体のロック装置は、施錠部材と、操作部材と、ロッドと、ガイド部材と、被ガイド部材とを具備する。前記施錠部材は、施錠状態と解錠状態との間で上下に移動する。前記施錠状態は、前記施錠部材が扉体を係止する状態である。前記解錠状態は、前記施錠部材が前記扉体を係止しない状態である。前記操作部材は、前記施錠部材と連動し、前記施錠部材を上下に移動する操作を受付ける。前記ロッドは、前記施錠部材と前記操作部材とを連結する。前記ガイド部材は、前記操作部材をガイドする。前記被ガイド部材は、上下方向に延びており、第1連結部、第2連結部、及び摺接部を有する。前記第1連結部は、前記操作部材と連結される。前記第2連結部は、前記ロッドと連結される。前記摺接部は、前記第1連結部とは上下方向の異なる位置に配設され、前記ガイド部材と摺接する。
【0009】
また、本願に開示する扉体のロック装置は、一時的固定部を更に具備する。前記一時的固定部は、前記施錠部材を前記施錠状態と前記解錠状態とに一時的に固定する。そして、本願に開示する扉体のロック装置において、前記ガイド部材、及び前記摺接部の一方は他方を内包する。前記一時的固定部は、第1溝部、及び第2溝部と、弾性係合部とを含む。前記第1溝部、及び前記第2溝部は、前記ガイド部材、及び前記摺接部の前記一方における前記施錠状態、及び前記解錠状態と対応する位置に形成される。前記弾性係合部は、前記ガイド部材、及び前記摺接部の前記他方に配設され、前記第1溝部、及び前記第2溝部と弾性的に係合する。
【0010】
更に、本願に開示する扉体のロック装置は、非常解錠部を更に具備する。前記非常解錠部は、非常解錠操作を受付ける。前記非常解錠操作は、前記扉体の両面のうち前記操作部材が配設される側と反対側から、前記施錠部材を前記解錠状態とするように、前記操作部材を移動する操作である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る扉体のロック装置によれば、縦框がより小さいサイズの扉体にも設置できるようにコンパクト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る扉体のロック装置を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る扉体のロック装置を示す、扉体に設置された状態の側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る扉体のロック装置を示す、扉体に設置された状態の正面図である。
【
図6】(a)実施形態のガイド部材を示す正面図である。(b)実施形態のガイド部材を示す側面図である。(c)実施形態のガイド部材を示す上面図である。
【
図7】(a)実施形態の被ガイド部材を示す正面図である。(b)実施形態の被ガイド部材を示す側面図である。(c)実施形態の被ガイド部材を示す上面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る扉体のロック装置を示す、扉体に設置された状態の背面図である。
【
図9】(a)実施形態の施錠部材を示す正面図である。(b)実施形態の施錠部材を示す側面図である。(c)実施形態の施錠部材を示す上面図である。
【
図10】(a)実施形態のロッドを示す正面図である。(b)実施形態のロッドを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る扉体のロック装置を図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するのに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この実施形態に限定されるものではない。
【0014】
〈実施形態〉
以下に、
図1~
図5を参照して、本発明の実施形態に係る扉体のロック装置を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る扉体のロック装置を示す側面図である。
図2は、実施形態の扉体を示す正面図である。
図3は、実施形態の扉体の縦框を示す上面図である。
図4は、実施形態に係る扉体のロック装置を示す、扉体に設置された状態の側面図である。
図5は、実施形態に係る扉体のロック装置を示す、扉体に設置された状態の正面図である。
【0015】
図1、
図2に示すように、実施形態に係る扉体のロック装置は、框を有する扉体1に取付けられるものであり、施錠部材10と、操作部材20と、ロッド30と、ガイド部材40と、被ガイド部材50と、一時的固定部60と、非常解錠部70と、調整手段80と、保持手段90とを具備する。
【0016】
図2に示すように、実施形態の扉体1は、ガラス引戸であり、アルミニウム合金製の縦框1aを有し、ドア枠2、又は床、天井等によって、
図2の左右方向に移動可能に支持される。扉体1は、脱衣場と浴場との間の扉、部屋の間仕切り扉等に好適に使用できる。また、実施形態の扉体のロック装置は、上下のドア枠、又は床、天井等に扉体1を係止し、扉体1が移動しないように、例えば閉状態にロックする。
【0017】
閉状態とは、扉体1の縦框1aがドア枠2の縦枠2aと接する状態である。なお、実施形態の扉体のロック装置は、扉体1を閉状態にロックする必要はなく、扉体1が間仕切り扉であれば、扉体1の縦框1aがドア枠2の縦枠2aとは接していない状態で、扉体1が移動しないように定位置にロックすることもできる。
【0018】
図3から
図5に示すように、縦框1aは、内部に、上下方向に延びる、一様な横断面形状の収容空間1bを有する。収容空間1bの横断面形状は、実施形態においては、扁平な長方形であり、収容空間1bの幅方向は、扉体1の厚み方向と一致している。ここで、「扁平な長方形」とは、「長さ」と「幅」がある、正方形ではない長方形をいうが、収容空間1bの横断面形状は、特に限定されず、正方形や楕円形、トラック楕円形等であってもよい。また、実施形態の扉体のロック装置は、縦框1aの上端、又は下端における収容空間1bの開口1cを介し、収容空間1bの内部に挿入されるようにして、収容空間1bに収容され、縦框1aに内蔵される。
【0019】
縦框1aは、扉体1の室内側(例えば、浴場側)、及び室外側(例えば、脱衣場側)の両面に、溝部1dを有し、
図4に示すように、室内側の溝部1dの底部に、第1ガイド長孔1eを有し、室外側の溝部1dの底部に、第2ガイド長孔1fを有する。
図3に示すように、縦框1aと上框1gとは、止めビス1hによって連結され、縦框1aの戸先側には、上下に延びる第1緩衝部材1iが配設され、反対側には、ガラス板1jを保持する、上下に延びる第2緩衝部材1kが配設される。
【0020】
施錠部材10は、
図1に実線によって示す施錠状態と、二点鎖線によって示す解錠状態との間で上下に移動可能に設けられる。実施形態においては、施錠状態における施錠部材10の位置は、解錠状態における施錠部材10の位置より上にある。なお、施錠部材10は、床、又はドア枠2の下枠に扉体1を係止してもよく、施錠部材10が、床、又はドア枠2の下枠に扉体1を係止するとき、施錠状態における施錠部材10の位置は、解錠状態における施錠部材10の位置より下となる。
【0021】
施錠状態は、施錠部材10が扉体1を係止する状態である。実施形態においては、施錠部材10は、施錠状態においてドア枠2の上枠2bに形成される係止凹部2cと係合し、扉体1を係止する。解錠状態は、施錠部材10が扉体1を係止しない状態であり、実施形態においては、施錠部材10は、解錠状態において縦框1aの内部に退避され、係止凹部2cとの係合が解除される。
【0022】
操作部材20は、施錠部材10と連動し、施錠部材10を上下に移動する操作を受付ける。実施形態においては、操作部材20は、アルミニウム合金製であり、
図4、
図5に示すように、把持部21と、連結突部22とを有する。
【0023】
操作部材20の把持部21は、上下に長い長方形板状であり、縦框1aの溝部1dの内部に配設され、溝部1dと摺接する。把持部21と溝部1dの底部との間には、樹脂シートから形成される長方形の緩衝スペーサ23が配設され、把持部21が溝部1dの底部と擦れることによって溝部1dの底部に傷が付くことが防止される。また、把持部21が上下に長い長方形板状であることによって、第1ガイド長孔1eを把持部21によって覆うことができ、扉体1のデザイン性を向上できる。
【0024】
操作部材20の連結突部22は、把持部21の裏面に突設され、第1ガイド長孔1eに挿入され、第1ガイド長孔1eと摺接する。また、連結突部22は、トラック楕円形の横断面形状を有し、突出先端に雌ネジ22aが開口する。連結突部22がトラック楕円形の横断面形状を有し、第1ガイド長孔1eと摺接することによって、操作部材20の回転が阻止され、把持部21の姿勢が正しく上下方向に保持される。
【0025】
ロッド30は、施錠部材10と操作部材20とを連結する。実施形態においては、ロッド30の上端が施錠部材10と連結され、ロッド30の下端が被ガイド部材50と連結され、ロッド30は、被ガイド部材50を介し、施錠部材10と操作部材20とを連結する。
【0026】
以下、
図6、
図7を参照して、ガイド部材40と、被ガイド部材50とを説明する。
図6(a)は、実施形態のガイド部材を示す正面図である。
図6(b)は、実施形態のガイド部材を示す側面図である。
図6(c)は、実施形態のガイド部材を示す上面図である。
図7(a)は、実施形態の被ガイド部材を示す正面図である。
図7(b)は、実施形態の被ガイド部材を示す側面図である。
図7(c)は、実施形態の被ガイド部材を示す上面図である。
【0027】
図6に示すように、ガイド部材40は、リップ溝形鋼と同様の扁平なC字状の断面形状を有する形材状の部材であり、横断面形状は、全体として扁平な長方形であり、幅方向が扉体1の厚み方向と一致するように収容空間1bに収容され、縦框1aに固定され、操作部材20をガイドする。
【0028】
ガイド部材40、及び後述の被ガイド部材50は、一方が他方を内包するように配設されるものであり、実施形態においては、ガイド部材40が、被ガイド部材50の摺接部53を内包し、被ガイド部材50をガイドし、操作部材20の上下方向の移動をガイドする。
【0029】
また、ガイド部材40は、上下方向に長い、抜止め用長孔41と、複数の止めネジ孔42とを有する。抜止め用長孔41は、図示しない抜け止め用の軸状部材が挿通される。抜け止め用の軸状部材は、被ガイド部材50がガイド部材40から抜け落ちることを防止するように、被ガイド部材50に配設される。
【0030】
図5に示すように、複数の止めネジ孔42には、複数の止めネジ40aが、収容空間1bの周壁を貫通するようにして螺合され、ガイド部材40は、収容空間1bの内部において縦框1aに固定される。複数の止めネジ40aは、縦框1aの各外側面のうち、第1緩衝部材1iが配設される、戸先側の外側面から捩じ込まれ、複数の止めネジ40aの頭は、第1緩衝部材1iによって覆われ、外部に露出せず、扉体1のデザイン性を向上できる。
【0031】
図7に示すように、被ガイド部材50は、全体として長板状であり、上下方向に延びており、幅方向が扉体1の厚み方向と一致するように、収容空間1bの内部に配設される。被ガイド部材50は、第1連結部51、第2連結部52、及び摺接部53を含む。
【0032】
実施形態においては、被ガイド部材50の上から順に、第2連結部52、第1連結部51、摺接部53が配設され、摺接部53は、第1連結部51、及び第2連結部52とは、被ガイド部材50の上下方向における異なる位置に配設される。
【0033】
被ガイド部材50の第1連結部51は、横断面形状が扁平な長方形であり、第1貫通孔51aを有し、操作部材20と連結される。第1貫通孔51aは、被ガイド部材50が延びる方向と交差する方向、実施形態においては、扉体1の厚み方向である被ガイド部材50の幅方向に第1連結部51を貫通するように形成される。第1貫通孔51aには、後述の締結部材71が挿通される。
【0034】
被ガイド部材50の第2連結部52は、第1連結部51と同厚、同幅で、第1連結部51より短い長板状であり、ロッド30と連結される。また、第2連結部52は、第2雌ネジ52aを有する。第2雌ネジ52aは、実施形態においては第2連結部52の上端面に開口する。
【0035】
また、第2連結部52は、幅小部54によって、第1連結部51と一体的に連結される。幅小部54は、第1連結部51、及び第2連結部52より厚み、幅が小さく、樹脂製コの字状の摺動スペーサ55が外装される。摺動スペーサ55は、被ガイド部材50が収容空間1bの内部でスムーズに上下に移動できるように、収容空間1bの周壁と摺接する。
【0036】
被ガイド部材50の摺接部53は、第1連結部51よりも薄く、幅が小さい長板状であり、第1連結部51の下端から下方に延設され、ガイド部材40と摺接する。また、摺接部53は、第2貫通孔53a、及び第3貫通孔53bを有する。第2貫通孔53aは、被ガイド部材50の幅方向に摺接部53を貫通し、後述のスプリング64を収容するとともに、両端開口を介し一対の鋼球65を突出可能に収容する。第3貫通孔53bは、被ガイド部材50の厚み方向に摺接部53を貫通し、上述した抜け止め用の軸状部材が挿通される。
【0037】
以下、
図6、
図7、及び前掲の
図1等を参照して、一時的固定部60を説明する。
【0038】
一時的固定部60は、施錠部材10を施錠状態と解錠状態とに一時的に固定する。実施形態においては、一時的固定部60は、第1溝部61、及び第2溝部62と、弾性係合部63とを含む。
【0039】
図6に示すように、第1溝部61、及び第2溝部62は、ガイド部材40、及び被ガイド部材50の一方における施錠状態、及び解錠状態と対応する位置に形成される。実施形態においては、第1溝部61は、ガイド部材40において、施錠部材10が施錠状態であるときに被ガイド部材50の第2貫通孔53aの両端開口と対向する位置に形成される。第2溝部62は、ガイド部材40において、施錠部材10が解錠状態であるときに被ガイド部材50の第2貫通孔53aの両端開口と対向する位置に形成される。
【0040】
弾性係合部63は、ガイド部材40、及び被ガイド部材50の他方に配設され、第1溝部61、及び第2溝部62と弾性的に係合する。実施形態においては、弾性係合部63は、スプリング64、及び一対の係合部材である一対の鋼球65を含み、被ガイド部材50の摺接部53に配設される。
【0041】
スプリング64は、圧縮され、摺接部53における第2貫通孔53aの内部に収容される。一対の鋼球65は、スプリング64の両端と当接するように、第2貫通孔53aの内部に収容され、スプリング64によって第2貫通孔53aの両端開口から外部に突出するように付勢され、第1溝部61、及び第2溝部62と弾性的に係合する。一対の鋼球65が第1溝部61と係合するとき、施錠部材10は、施錠状態に一時的に固定され、一対の鋼球65が第2溝部62と係合するとき、施錠部材10は、解錠状態に一時的に固定される。
【0042】
次に、
図8と、前掲の
図4、
図7とを参照して、非常解錠部70を説明する。
図8は、実施形態に係る扉体のロック装置を示す、扉体に設置された状態の背面図である。
【0043】
非常解錠部70は、非常解錠操作を受付ける。非常解錠操作は、扉体1の両面のうち操作部材20が配置される側と反対側から、施錠部材10を解錠状態とするように、操作部材20を移動する操作である。
【0044】
図4、
図8に示すように、非常解錠部70は、締結部材71を含む。実施形態においては、締結部材71は、六角穴付ボルトであり、軸部71a、及び頭部71bを有し、被ガイド部材50の第1連結部51と操作部材20とを締結する。
【0045】
締結部材71の軸部71aは、雄ネジを有し、操作部材20と反対側から第1連結部51の第1貫通孔51aに挿通される。軸部71aの雄ネジは、操作部材20の連結突部22の雌ネジ22aと螺合する。
【0046】
締結部材71の頭部71bは、締結部材71を回転操作するための六角孔等の凹部71cを有し、
図4、
図8に示すように、縦框1aの第2ガイド長孔1fの内部に配設され、扉体1の室外側から回転操作等ができる。
【0047】
そして、非常解錠部70は、締結部材71の頭部71bに上方向、又は下方向の力が加えられることによって非常解錠操作を受付ける。実施形態においては、ヘアピン、ボールペン等の細長い部材が頭部71bの凹部71cに差込まれ、頭部71bに下方向の力が加えられることによって、操作部材20が下に移動し、施錠部材10が解錠状態となり、非常解錠部70は、非常解錠操作を受付ける。
【0048】
以上、
図1~
図8を参照して説明したように、実施形態の扉体のロック装置によれば、操作部材20が、施錠部材10を上下に移動する操作を受付け、ロッド30が、施錠部材10と操作部材20とを連結し、ガイド部材40が、操作部材20をガイドし、被ガイド部材50が、操作部材20と連結される第1連結部51、ロッド30と連結される第2連結部52、及びガイド部材40と摺接する摺接部53を有し、摺接部53が、被ガイド部材50における第1連結部51と異なる上下方向の位置に配設される。
【0049】
摺接部53が、第1連結部51と異なる上下方向の位置に配設されることによって、被ガイド部材50の中で、操作部材20を介し操作のための力が加えられる第1連結部51と、ガイド部材40によってガイドされる摺接部53とが分離されることとなり、摺接部53のサイズを操作部材20のガイドのための必要最小限のサイズとすることができ、縦框1aがより小さいサイズの扉体1にも設置が可能なようにコンパクト化できる。
【0050】
更に詳しく説明すると、第1連結部51は、操作部材20を十分な強度で被ガイド部材50に固定するために、比較的に径の大きいボルトを挿通できる第1貫通孔51aが形成され、厚み等を小さくする場合に制約が生じる。従って、摺接部53を第1連結部51と分離して設けることによって、操作部材20をガイドするために必要十分な厚みにまで摺接部53を薄くでき、扉体のロック装置をサイズダウンする際のボトルネックであったガイド部材40の厚みを小さくすることが容易となり、扉の開閉方向における縦框1aの幅がより小さいような、縦框1aのより小さいサイズの扉体にも設置が可能なようにコンパクト化できる。
【0051】
また、
図1~
図8を参照して説明したように、実施形態の扉体のロック装置によれば、一時的固定部60が、第1溝部61、及び第2溝部62と、弾性係合部63とを含み、第1溝部61、及び第2溝部62が、ガイド部材40、及び摺接部53の一方に形成され、弾性係合部63が、ガイド部材40、及び摺接部53の他方に配設され、ガイド部材40、及び摺接部53の一方が他方を内包する。
【0052】
実施形態においては、ガイド部材40、及び摺接部53のうち、他方を内包する方であるガイド部材40に第1溝部61、及び第2溝部62が形成され、内包される方である摺接部53に弾性係合部63が配設される。従って、実施形態のように、弾性係合部63のスプリング64を摺接部53の内部に配設することも可能となり、内包される方の部材の内部に弾性係合のための弾性手段を配設することができる。
【0053】
以上の結果、一時的固定部60の設置によってロック装置のサイズが大きくなることを抑制でき、スムーズ且つ確実に、扉体1を係止し、移動しないようにロックできるとともに、ロックを解除できる。また、縦框1aがより小さいサイズの扉体1にも設置が可能なようにコンパクト化を更に容易にできる。
【0054】
また、ガイド部材40と摺接部53とを内と外とで密接させ、一時的固定部60の係合部材として、第2貫通孔53aからの最大の突出量が小さい鋼球65を使用することによって、ガイド部材40の幅を更に小さくでき、縦框がより小さいサイズの扉体にも設置が可能なようにコンパクト化を更に容易にできる。
【0055】
また、
図1~
図8を参照して説明したように、実施形態の扉体のロック装置によれば、非常解錠部70が、扉体1の両面のうち操作部材20が配置される側と反対側から、施錠部材10を解錠状態とするよう操作部材20を移動する非常解錠操作を受付ける。従って、例えば扉体1が脱衣場と浴場との間に設置されるようなガラス引戸等の扉体であり、浴場の内部で人が倒れる等の緊急の事態が発生したような場合に、脱衣場の方から解錠でき、緊急の事態に対処できる。
【0056】
また、実施形態のように、非常解錠部70が、操作部材20を固定するための締結部材71を兼用し、締結部材71の頭部71bに上方向、又は下方向の力が加えられることによって非常解錠操作を受付けるものであることによって、部品点数の増大を抑え、設置作業を簡易化できる。また、非常解錠部70を簡単な構造とでき、扉体のロック装置の製造コストを低減できる。
【0057】
また、締結部材71の頭部71bが、非常解錠操作のための力が加えられる印可部とされ、
図4に示すように、第2ガイド長孔1fの内部に配設されることによって、印可部が縦框1aの表面から突出することがなく、指でむやみに解錠できず、また、外部から荷物等が印可部に衝突したような場合にも意図せずに解錠されることを防止できる。
【0058】
次に、
図9、
図10と、前掲の
図1、
図4、
図7等を参照して、施錠部材10と、ロッド30とを更に詳しく説明し、実施形態の調整手段80、及び保持手段90を説明する。
図9(a)は、実施形態の施錠部材を示す正面図である。
図9(b)は、実施形態の施錠部材を示す側面図である。
図9(c)は、実施形態の施錠部材を示す上面図である。
図10(a)は、実施形態のロッドを示す正面図である。
図10(b)は、実施形態のロッドを示す側面図である。
【0059】
図9に示すように、実施形態の施錠部材10は、上下方向に配される扁平形状の長板状であり、係合部11と、回転阻止部12と、幅小部13とを有する。ここで、「扁平形状」とは、幅よりも厚みが全体的に小さい形状をいう。係合部11と回転阻止部12の厚みは同等であり、幅小部13の厚みは、係合部11、及び回転阻止部12の厚みより小さい。
【0060】
係合部11は、施錠部材10の先端側に配され、扉体1の上方、又は下方に突出し、扉体1の上方、又は下方に配設される係止凹部2cと係合する。実施形態において、係合部11の先端側は、回転阻止部12よりも幅が狭く、
図1に示すように、施錠状態において、縦框1aから上に突出され、係止凹部2cに嵌挿され、係止凹部2cと係合する。
【0061】
また、係合部11の先端には、係止凹部2cへの嵌挿を容易とするように、施錠部材10の先端に向かうに連れて厚み、及び幅が小さくなるテーパ部11aが形成される。また、係合部11の基端部11bは、回転阻止部12と同じ幅となるように拡幅されており、通常は、施錠状態においても框1aの内部に留まる。なお、係合部11の基端部11bが常に框1aの内部に留まることは必須ではない。
【0062】
回転阻止部12は、施錠部材10の基端側に配され、施錠部材10が施錠状態と解錠状態との間で移動するときにも常に収容空間1bの内部に留まり、施錠部材10の回転を阻止する。回転阻止部12の下端には、第1雌ネジ12aが開口している。
【0063】
図9に示すように、幅小部13は、係合部11の基端部11b、及び回転阻止部12よりも幅、厚みが小さく、係合部11と回転阻止部12とを一体的に連結するように、係合部11と回転阻止部12との間に配設される。幅小部13には、樹脂製コの字状の摺動スペーサ14が外装される。摺動スペーサ14は、係合部11の基端部11bと回転阻止部12とに挟まれることによって、施錠部材10に対する上下方向の位置が固定され、施錠部材10をスムーズに上下に移動可能とし、施錠部材10の移動の際に発生する音が小さくなるように、収容空間1bの周壁と摺接する。
【0064】
図10に示すように、実施形態のロッド30は、上端に第1雄ネジ81を有し、下端に第2雄ネジ82を有する。また、ロッド30における第1雄ネジ81と第2雄ネジ82との間の所定位置には、摺動ブロック91が、ロッド30と一体的に回転可能に取付けられる。摺動ブロック91は、扁平な直方体形状を有し、収容空間1bの内部に配設され、収容空間1bの周壁と摺接する。
【0065】
調整手段80は、扉体1の上方又は下方への施錠部材10の突出量、又は突出長さを調整する。実施形態の調整手段80は、ロッド30に設けられる第1雄ネジ81、及び第2雄ネジ82と、施錠部材10の第1雌ネジ12a、及び被ガイド部材50の第2雌ネジ52aとを含む。そして、実施形態の調整手段80は、第1雄ネジ81の第1雌ネジ12aに対する捩じ込み量、及び第2雄ネジ82の第2雌ネジ52aに対する捩じ込み量の少なくとも一方の調節によって、扉体1の上方又は下方への施錠部材10の突出量を調整する。
【0066】
保持手段90は、調整手段80によって調整される施錠部材10の突出量を保持する。実施形態の保持手段90は、施錠部材10の回転阻止部12と、摺動ブロック91とを含む。
【0067】
保持手段90としての回転阻止部12は、収容空間1bの周壁と摺接し、施錠部材10の回転を阻止し、施錠部材10の突出量を保持する。保持手段90としての摺動ブロック91は、収容空間1bの周壁と摺接し、ロッド30の回転を阻止し、施錠部材10の突出量を保持する。
【0068】
回転阻止部12が施錠部材10の回転を阻止することによって、ロッド30が回転しないように設けられていれば、第1雄ネジ81の第1雌ネジ12aに対する捩じ込み量が保持され、調整手段80によって調整される施錠部材10の突出量が保持される。
【0069】
また、摺動ブロック91がロッド30の回転を阻止することによって、第2雄ネジ82の第2雌ネジ52aに対する捩じ込み量が保持されるとともに、上述したとおり、第1雄ネジ81の第1雌ネジ12aに対する捩じ込み量が保持され、調整手段80によって調整される施錠部材10の突出量が保持される。
【0070】
以下に、調整手段80によって施錠部材10の突出量を調整する手順の一例を説明する。
【0071】
手順1:操作部材20を被ガイド部材50から取外した状態で、止めネジ40aを緩め、縦框1aに対するガイド部材40の固定を解除する。
【0072】
手順2:収容空間1bの開口1cを介し、施錠部材10の全体を縦框1aの外部まで引出し、必要と思われる回数、施錠部材10を回転し、第1雄ネジ81の第1雌ネジ12aに対する捩じ込み量を調節し、施錠部材10の突出量を調整する。
【0073】
手順3:手順2の操作では、施錠部材10の突出量が十分に調整できない場合には、摺動ブロック91を摘まめる位置までロッド30を縦框1aの外部に引出し、摺動ブロック91を回転することによって、ロッド30を施錠部材10とともに回転し、第2雄ネジ82の第2雌ネジ52aに対する捩じ込み量を調節し、施錠部材10の突出量を調整する。
【0074】
手順4:ロッド30、及び施錠部材10を回転しないように保ちながら、収容空間1bの内部に挿入し、止めネジ40aによってガイド部材40を縦框1aに固定する。
【0075】
以上、
図9、
図10を参照して説明したように、調整手段80によって、扉体1の上方又は下方への施錠部材10の突出量が調整でき、上枠2bや床との隙間が様々である扉体1にロック装置を設置できる。
【0076】
また、ロッド30に、雌ネジではなく、第1雄ネジ81、及び第2雄ネジ82が形成されることによって、例えば筒状の雌ネジ部材をロッド30に取付ける必要がなく、部品点数の増大を抑えることができる。
【0077】
また、第1雄ネジ81、及び第2雄ネジ82の両方で突出量を調整でき、施錠部材10に突出量の調整のための十分な深さの雌ネジを形成できない場合にも、被ガイド部材50に雌ネジを形成し、補うことができ、様々な扉体1において十分な調整量で施錠部材10の突出量を調整できる。
【0078】
また、保持手段90が、調整手段80によって調整される施錠部材10の突出量を保持することによって、外力が加わる等しても施錠部材10の突出量を保持でき、扉体1の開け閉めの際の振動や人が施錠部材10に力を加えることによって施錠部材10の突出量が変動し、施錠部材10が床や上枠2bと擦れるようになったり、扉体1を係止できなくなったりする不具合を防止できる。
【0079】
また、保持手段90が、ロッド30に外装され、ロッド30と一体的に回転する摺動ブロック91を含むことによって、突出量を調整する際に摺動ブロック91を摘まむことができ、ロッド30を回転し、突出量を調整することが容易となり、突出量の調整を更に容易にできる。
【0080】
以上、図面(
図1~
図10)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…扉体
10…施錠部材
1a…縦框
20…操作部材
30…ロッド
40…ガイド部材
50…被ガイド部材
53…摺接部
60…一時的固定部
61…第1溝部
62…第2溝部
63…弾性係合部
70…非常解錠部