(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165187
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】減速制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/00 20060101AFI20231108BHJP
B60T 13/68 20060101ALI20231108BHJP
B60T 13/36 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
B60T13/68
B60T13/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075932
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100153040
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 仁希
(72)【発明者】
【氏名】巻幡 智明
(72)【発明者】
【氏名】石黒 督浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友哉
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048HH26
3D048HH66
3D048HH67
3D048HH68
3D048RR06
3D246BA03
3D246DA01
3D246HA42A
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3D246JB03
3D246JB27
3D246JB32
3D246JB37
3D246LA32Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外部減速度要求に対応したブレーキシステムを要することなく、EDSSの減速制御を可能にする。
【解決手段】減速制御装置1は、開状態とされることにより圧縮エアをブレーキ機構に供給し、閉状態とされることにより圧縮エアをブレーキ機構に非供給とするバルブ23と、ブレーキ機構に供給される圧縮エアのエア圧を検出するセンサ26と、減速制御のためのブレーキ指示信号を取得するブレーキ指示取得部11と、エア圧をセンサ26から取得するエア圧力取得部12と、バルブを開状態及び閉状態のいずれかに制御するバルブ制御部13とを備え、バルブ制御部13は、ブレーキ指示信号が取得された場合に減速制御を開始し、減速制御において、エア圧が所定の第1の閾値以上になったときにバルブを閉状態に制御し、エア圧が第1の閾値より小さい所定の第2の閾値以下になったときにバルブを開状態に制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバの異常時に車両を減速及び停止させるための減速制御を実施する減速制御装置であって、
ブレーキ機構を駆動するための圧縮エアの流路に設けられ、開状態とされることにより前記圧縮エアを前記ブレーキ機構に供給し、閉状態とされることにより前記圧縮エアを前記ブレーキ機構に非供給とするバルブと、
前記バルブを介して前記ブレーキ機構に供給される前記圧縮エアの圧力であるエア圧を検出するセンサと、
前記減速制御を実施させるための所定のスイッチが操作されたことを示すブレーキ指示信号を取得するブレーキ指示取得部と、
前記エア圧を前記センサから取得するエア圧力取得部と、
前記バルブを開状態及び閉状態のいずれかに制御するバルブ制御部と、を備え、
前記バルブ制御部は、
前記ブレーキ指示信号が取得された場合に前記減速制御を開始し、
前記減速制御において、
前記エア圧が所定の第1の閾値以上になったときに前記バルブを閉状態に制御し、
前記エア圧が前記第1の閾値より小さい所定の第2の閾値以下になったときに前記バルブを開状態に制御する、
減速制御装置。
【請求項2】
前記バルブ制御部は、前記バルブを開状態に制御するための第1の信号、及び、前記バルブを閉状態に制御するための第2の信号のいずれかを前記バルブに送出し、
前記第1の信号を送出している場合に、前記エア圧が前記第1の閾値以上になったときに前記第2の信号を前記バルブに送出し、
前記第2の信号を送出している場合に、前記エア圧が前記第2の閾値以下になったときに前記第1の信号を前記バルブに送出する、
請求項1に記載の減速制御装置。
【請求項3】
前記バルブは、電流を供給されている場合に開状態とされ、電流を供給されていない場合に閉状態とされ、
前記バルブ制御部は、前記第1の信号として前記バルブに電流を供給し、前記第2の信号として前記バルブに電流を非供給とする、
請求項2に記載の減速制御装置。
【請求項4】
前記第1の閾値は、エア圧に関する所与の狙い値より大きく、
前記第2の閾値は、前記狙い値より小さい、
請求項1~3のいずれか一項に記載の減速制御装置。
【請求項5】
前記バルブ制御部は、前記車両が停止した時以後において、前記バルブを開状態に維持する、
請求項1に記載の減速制御装置。
【請求項6】
前記バルブ制御部は、前記車両が停止した時以後において、前記エア圧が前記第1の閾値以上になったときに前記バルブを閉状態に制御し、前記エア圧が前記第2の閾値以下になったときに前記バルブを開状態に制御する、
請求項1に記載の減速制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバの異常時に車両を減速及び停止させるための減速制御を実施する減速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバの異常時に、車両を減速及び停止させる技術であるドライバ異常時対応システム(EDSS:Emergency Driving Stop System)が知られている。例えば、特許文献1には、EDSSによる減速制御において、運転者が異常状態にある場合、車両に制動力を付与して車両を停止させる停止制御、及び、停止制御により車両を停止させた以降において車両を停止状態に保持する停止保持制御を実行する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のEDSSのシステムでは、EDSSの制御を実施するECUが、運転席及び車内客席等に設けられたスイッチが操作されたことを受信すると、サービスブレーキを制御するブレーキECUに、減速度の指示値を含む外部減速度要求を送出し、ブレーキECUが、外部減速度要求に従ってブレーキを制御して減速制御を実施していた。このような機構は、ブレーキECUが外部減速度要求に従って、ブレーキを駆動するバルブに供給する電流を細密に制御する減速制御に対応していることが前提であって、そのような外部減速度要求に応じて減速制御を行うブレーキシステムが必ずしも車両に搭載されるとは限らなかった。
【0005】
そこで、本発明は、外部減速度要求に対応したブレーキシステムを要することなく、EDSSの減速制御を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の一側面に係る減速制御装置は、ドライバの異常時に車両を減速及び停止させるための減速制御を実施する減速制御装置であって、ブレーキ機構を駆動するための圧縮エアの流路に設けられ、開状態とされることにより圧縮エアをブレーキ機構に供給し、閉状態とされることにより圧縮エアをブレーキ機構に非供給とするバルブと、バルブを介してブレーキ機構に供給される圧縮エアの圧力であるエア圧を検出するセンサと、減速制御を実施させるための所定のスイッチが操作されたことを示すブレーキ指示信号を取得するブレーキ指示取得部と、エア圧をセンサから取得するエア圧力取得部と、バルブを開状態及び閉状態のいずれかに制御するバルブ制御部と、を備え、バルブ制御部は、ブレーキ指示信号が取得された場合に減速制御を開始し、減速制御において、エア圧が所定の第1の閾値以上になったときにバルブを閉状態に制御し、エア圧が第1の閾値より小さい所定の第2の閾値以下になったときにバルブを開状態に制御する。
【0007】
このような側面においては、圧縮エアのエア圧が第2の閾値以下である場合には、ブレーキ機構に圧縮エアを供給するバルブが開状態に制御され、圧縮エアのエア圧が第1の閾値以上である場合には、ブレーキ機構に圧縮エアを供給するバルブが閉状態に制御されるので、エア圧が第1の閾値と第2の閾値との間に維持される。そして、第1及び第2の閾値の間に維持されたエア圧に応じてブレーキ機構により発生された減速度により車両が減速される。従って、バルブを開状態及び閉状態のいずれかに制御するといった容易な制御により、所望の減速制御を実現できる。また、単一系統の圧縮エアのエア圧の制御により減速制御が実現されるので、圧縮エアの供給のための構成を単純化できる。
【0008】
第2の側面に係る減速制御装置では、第1の側面に係る減速制御装置において、バルブ制御部は、バルブを開状態に制御するための第1の信号、及び、バルブを閉状態に制御するための第2の信号のいずれかをバルブに送出し、第1の信号を送出している場合に、エア圧が第1の閾値以上になったときに第2の信号をバルブに送出し、第2の信号を送出している場合に、エア圧が第2の閾値以下になったときに第1の信号をバルブに送出することとしてもよい。
【0009】
このような側面によれば、第1の信号及び第2の信号のいずれかをバルブに送出することにより、バルブを開状態及び閉状態のいずれかに制御できる。従って、容易に減速制御を実現させることが可能となる。
【0010】
第3の側面に係る減速制御装置では、第2の側面に係る減速制御装置において、バルブは、電流を供給されている場合に開状態とされ、電流を供給されていない場合に閉状態とされ、バルブ制御部は、第1の信号としてバルブに電流を供給し、第2の信号としてバルブに電流を非供給とすることとしてもよい。
【0011】
このような側面によれば、電流を供給または非供給とすることにより、第1の信号または第2の信号の送出が実現される。従って、バルブの開閉制御を容易に実施できる。
【0012】
第4の側面に係る減速制御装置では、第1~3の側面のいずれか一つに係る減速制御装置において、第1の閾値は、エア圧に関する所与の狙い値より大きく、第2の閾値は、狙い値より小さいこととしてもよい。
【0013】
このような側面によれば、エア圧が狙い値近傍に制御される。所望の減速度が発生されるようなエア圧を狙い値として設定することにより、好適な減速制御が実現される。
【0014】
第5の側面に係る減速制御装置では、第1~4の側面のいずれか一つに係る減速制御装置において、バルブ制御部は、車両が停止した時以後において、バルブを開状態に維持することとしてもよい。
【0015】
このような側面によれば、別途の制御系統及びエア供給系統を要することなく、減速制御終了後において車両を停車状態に維持することが可能となる。
【0016】
第6の側面に係る減速制御装置では、第1~4の側面のいずれか一つに係る減速制御装置において、バルブ制御部は、車両が停止した時以後において、エア圧が第1の閾値以上になったときにバルブを閉状態に制御し、エア圧が第2の閾値以下になったときにバルブを開状態に制御することとしてもよい。
【0017】
このような側面によれば、別途の 制御系統及びエア供給系統を要することなく、減速制御終了後においても、エア圧を所望の範囲に維持することにより、車両を停車状態に維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、外部減速度要求に対応したブレーキシステムを要することなく、EDSSの減速制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る減速制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の減速制御装置による減速制御処理を示すフローチャートである。
【
図3】エア圧に応じたバルブ制御信号の変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る減速制御装置の機能的構成を示すブロック図である。減速制御装置1は、車両に搭載されて、ドライバの異常時に車両を減速及び停止させるための減速制御を実施する装置である。即ち、減速制御装置は、EDSSを構成する。
【0022】
減速制御装置1は、制御装置10を含んで構成される。制御装置10は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)により構成される。ECUにより構成される制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller Area Network)通信回路等を有する電子制御ユニットとして構成されてもよい。制御装置10は、例えば、CAN通信回路を介してROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御装置10は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよく、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)等を含んで構成されてもよい。
【0023】
制御装置10は、例えばEDSSのためのECU(EDSS-ECU)により構成され、機能的には、ブレーキ指示取得部11、エア圧力取得部12及びバルブ制御部13を備える。制御装置10の機能の詳細については後に詳述する。
【0024】
減速制御装置1は、制御装置10の他、非常ブレーキスイッチ(運転席)21、非常ブレーキスイッチ(車内客席)22、バルブ23、エアタンク24、減圧弁25、エア圧センサ26、DC(ダブルチェック)弁27、サービスブレーキ回路28、ホーン29、フラッシャー30、ブレーキスイッチインジケータ31及びエア圧センサ32を備える。
【0025】
非常ブレーキスイッチ(運転席)21は、運転席に設けられ、EDSSにおける減速制御を開始させるためのスイッチである。非常ブレーキスイッチ(運転席)21は、例えば押下操作可能に構成されており、ドライバ等による押下操作に応じて、制御装置10にブレーキ指示信号を送出する。
【0026】
非常ブレーキスイッチ(車内客席)22は、車両内の客席に設けられ、EDSSにおける減速制御を開始させるためのスイッチである。非常ブレーキスイッチ(車内客席)21は、例えば押下操作可能に構成されており、乗客等による押下操作に応じて、制御装置10にブレーキ指示信号を送出する。
【0027】
バルブ23は、ブレーキ機構を駆動するための圧縮エアの流路に設けられ、開状態とされることにより圧縮エアをブレーキ機構に供給し、閉状態とされることにより圧縮エアをブレーキ機構に非供給とする。
【0028】
バルブ23は、制御装置10から送出される第1の信号及び第2の信号によりそれぞれ開状態及び閉状態に制御される。バルブ23は、制御装置10からの電流が供給されている状態を第1の信号として取得し、電流が非供給をされている状態を第2の信号として取得してもよい。
【0029】
エアタンク24は、圧縮エアを格納しており、バルブ23、DC弁27及びサービスブレーキ回路28に対する圧縮エアの供給源である。
【0030】
減圧弁25は、エアタンク24からの圧縮エアの圧力を所定の圧力に低下させて、所定圧力の圧縮エアをバルブ23に供給する。
【0031】
エア圧センサ26は、バルブ23を介してブレーキ機構に供給される圧縮エアの圧力であるエア圧を検出するセンサである。エア圧センサ26は、検出したエア圧を制御装置10に送出する。
【0032】
DC弁27、サービスブレーキ回路28及びエア圧センサ32は、本実施形態におけるブレーキ機構の一例を構成する。DC弁27は、バルブ23を介して供給される圧縮エア、及び、図示されない別途のサービスブレーキ用エアの供給経路から供給される圧縮エアを入力とし、入力された2系統の圧縮エアのうち、より高圧の圧縮エアをサービスブレーキ回路28に送出するバルブである。
【0033】
サービスブレーキ回路28は、車両における常用のブレーキ及びDC弁27を介して供給される圧縮エアに応じて当該ブレーキを制御する制御回路からなる。DC弁27及びサービスブレーキ回路28を含むブレーキ機構は、バルブ23の開閉に応じて供給される圧縮エアのエア圧に応じた減速度を車両に発生させる。
【0034】
エア圧センサ32は、DC弁27を介してサービスブレーキ用の圧縮エアに供給される圧縮エアの圧力を検出するセンサである。エア圧センサ32は、検出したエアの圧力を制御装置10に送出する。制御装置10は、例えば、エア圧センサ32から取得した検出値を、エア圧センサ26において検出されたエア圧と比較することにより、圧縮エアのサービスブレーキ回路28への供給の異常の有無を判断することができる。
【0035】
ホーン29は、車外に対して警報音を発する装置であり、EDSSによる減速制御の実施時に、警報音を発することにより、異常の発生を周囲に報知する。
【0036】
フラッシャー30は、車内及び/又は車外に設けられたランプであり、EDSSによる減速制御の実施時に、例えば点滅等することにより、異常の発生を車内乗客及び/又は車外に報知する。
【0037】
ブレーキスイッチインジケータ31は、車内に設けられ、表示、点灯または点滅することにより、EDSSによる減速制御が実施されていることを、ドライバ及び/又は乗客に認識させるための装置である。
【0038】
次に、制御装置10の各機能部を説明する。ブレーキ指示取得部11は、減速制御を実施させるための所定のスイッチが操作されたことを示すブレーキ指示信号を取得する。本実施形態では、ブレーキ指示取得部11は、非常ブレーキスイッチ(運転席)21または非常ブレーキスイッチ(車内客席)22から送出されたブレーキ指示信号を取得する。
【0039】
エア圧力取得部12は、エア圧をセンサから取得する。本実施形態では、エア圧力取得部12は、エア圧センサ26により取得された、バルブ23からDC弁27に供給されている圧縮エアのエア圧を取得する。
【0040】
バルブ制御部13は、バルブ23を開状態または閉状態のいずれかに制御する。本実施形態のバルブ制御部13は、ブレーキ指示取得部11によりブレーキ指示信号が取得された場合に、EDSSにおける減速制御を開始する。
【0041】
減速制御において、バルブ制御部13は、エア圧が所定の第1の閾値以上になったときにバルブ23を閉状態に制御し、エア圧が第1の閾値より小さい所定の第2の閾値以下になったときにバルブを開状態に制御する。このように、バルブが開状態または閉状態に制御されることにより、減速制御中において、エア圧が第1の閾値と第2の閾値との間に維持される。そして、第1及び第2の閾値の間に維持されたエア圧に応じてブレーキ機構により発生された減速度により車両が減速される。
【0042】
第1の閾値は、所与の狙い値より大きい値に設定され、第2の閾値は、狙い値より小さい値に設定される。このように、第1及び第2の閾値が設定されることにより、エア圧が狙い値近傍に制御される。所望の減速度が発生されるようなエア圧を狙い値として設定することにより、好適な減速制御が実現される。例えば、エア圧が2.5barであるときにブレーキ機構(DC弁27、サービスブレーキ回路28)において好適な減速度が発生する場合には、例えば第1の閾値を2.6barとし、第2の閾値を2.4barとすることにより、エア圧を2.5bar近傍の2.4bar~2.6barに維持させることが可能となる。
【0043】
バルブ制御部13は、バルブ23を開状態に制御するための第1の信号、及び、バルブ23を閉状態に制御するための第2の信号のいずれかを制御信号としてバルブ23に送出してもよい。バルブ23は、第1の信号を受けている場合には、開状態に制御され、第2の信号を受けている場合には、閉状態に制御される。第1の信号は、バルブ23を開状態にするための、いわゆるON信号であり、第2の信号は、バルブ23を閉状態にするための、いわゆるOFF信号である。
【0044】
バルブ制御部13は、EDSSにおける減速制御として、第1の信号を送出している場合に、エア圧が第1の閾値以上になったときに第2の信号をバルブ23に送出し、第2の信号を送出している場合に、エア圧が第2の閾値以下になったときに第1の信号をバルブ23に送出する。このように、バルブ制御部13は、第1の信号及び第2の信号のいずれかをバルブ23に送出することにより、バルブを開状態及び閉状態のいずれかに制御できる。従って、容易に減速制御を実現させることが可能となる。
【0045】
バルブ23は、電流を供給されている場合に開状態とされ、電流を供給されていない場合に閉状態とされてもよい。即ち、バルブ23は、電流が供給されている状態をON信号として認識し、電流が供給されていない状態をOFF信号として認識してもよい。この場合には、バルブ制御部13は、第1の信号としてバルブ23に電流を供給し、第2の信号としてバルブ23に電流を非供給とする。このように、電流を供給または非供給とすることにより、第1の信号または第2の信号の送出が実現されるので、バルブ制御部13は、バルブの開閉制御を容易に実施できる。
【0046】
また、バルブ制御部13は、減速制御の終了後、即ち、車両が停止した時以後において、バルブ23を開状態に維持することにより、車両を停車状態に維持してもよい。このような制御により、別途の制御系統及びエア供給系統を要することなく、減速制御終了後において車両を停車状態に維持することが可能となる。
【0047】
また、バルブ制御部13は、減速制御の終了後において、減速制御の終了以前と同様に、エア圧が第1の閾値以上になったときにバルブ23を閉状態に制御し、エア圧が第2の閾値以下になったときにバルブを開状態に制御することにより、車両を停車状態に維持してもよい。このような制御により、別途の制御系統及びエア供給系統を要することなく、減速制御終了後においても、エア圧を所望の範囲に維持することにより、車両を停車状態に維持することが可能となる。
【0048】
続いて、
図2及び
図3を参照しながら、本実施形態の減速制御装置1による減速制御処理を説明する。
図2は、減速制御処理を示すフローチャートである。
図3は、エア圧に応じたバルブ制御信号の変化の例を示す図である。
【0049】
ステップS1において、ブレーキ指示取得部11は、非常ブレーキ指示を取得したか否かを判定する。非常ブレーキ指示を取得したと判定された場合には、処理はステップS2に進む。非常ブレーキ指示を取得したと判定されなかった場合には、ステップS1の処理が繰り返され、非常ブレーキ指示の監視が続けられる。
【0050】
ステップS2において、バルブ制御部13は、減速制御を開始する。減速制御の開始時には、通常の場合であればバルブ23は閉状態であるので、ステップS3において、バルブ制御部13は、第1の信号をバルブ23に送出する。第1の信号を受けたバルブ23は、開状態に制御される。そして、バルブ23から供給される圧縮エアのエア圧に応じてブレーキ機構により発生された減速度により車両が減速される。
【0051】
ステップS4において、バルブ制御部13は、車両が停車したか否かを判定する。即ち、減速制御の終了の可否を判定する。バルブ制御部13は、車速センサ及びその他の所定の制御信号等に基づいて、停車を認識してもよい。車両が停車したと判定された場合には、処理はステップS9に進む。一方、車両が停車したと判定されなかった場合には、処理はステップS5に進む。
【0052】
ステップS5において、バルブ制御部13は、エア圧力取得部12により取得されたエア圧が第1の閾値に達したか否かを判定する。エア圧が第1の閾値に達したと判定された場合には、処理はステップS6に進む。一方、エア圧が第1の閾値に達したと判定されなかった場合には、処理はステップS4に進む。
【0053】
ステップS6において、バルブ制御部13は、第2の信号をバルブ23に送出する。第2の信号を受けたバルブ23は、閉状態に制御される。これにより、ブレーキ機構に対する圧縮エアの供給が停止される。
【0054】
ステップS7において、バルブ制御部13は、車両が停車したか否かを判定する。即ち、減速制御の終了の可否を判定する。車両が停車したと判定された場合には、処理はステップS9に進む。一方、車両が停車したと判定されなかった場合には、処理はステップS8に進む。
【0055】
ステップS8において、バルブ制御部13は、エア圧力取得部12により取得されたエア圧が第2の閾値に低下したか否かを判定する。エア圧が第2の閾値に低下したと判定された場合には、処理はステップS3に進む。一方、エア圧が第2の閾値に低下したと判定されなかった場合には、処理はステップS7に進む。
【0056】
ステップS4またはステップS7において車両が停車したと判定された場合に、ステップS9において、減速制御が終了する。
【0057】
図3は、ステップS3~S8,S9における、バルブ制御部13がバルブ23に送出するバルブ制御信号の遷移、及び、エア圧センサ26により取得されるエア圧の変化を示している。即ち、バルブ制御部13からON信号(第1の信号)が送出されると(S3)、バルブ23が開状態に制御されるので、エア圧が上昇する。続いて、上昇したエア圧が第1の閾値に達すると(S5)、バルブ制御部13からOFF信号(第2の信号)が送出される(S6)。OFF信号の送出に応じてバルブ23が閉状態に制御されるので、エア圧が低下する。低下されたエア圧が第2の閾値に低下すると(S8)、バルブ制御部13からON信号が再び送出される(S3)。ステップS3,S5,S6,S8の処理が繰り返されることにより、第1の閾値と第2の閾値との間に維持されたエア圧に応じてブレーキ機構により発生された減速度により車両が減速され、停車フラグに示されるように車両が停車した場合に(S4またはS7)、減速制御が終了される(S9)。なお、停車フラグは、車両の状態を示す制御信号の一例であり、車速センサ及びその他の所定の制御信号等に基づいて車両が停車状態にあることが認識された場合に立てられる信号であって、当該減速制御装置1において必須に備えられなくてもよい。
【0058】
ステップS10において、制御装置10は、車両の制動保持を実施する。具体的には、
図3のバルブ制御信号及びエア圧のセンサ値のグラフの実線に示されるように、バルブ制御部13は、バルブ23に対する第1の信号の送出を維持することによりバルブ23を開状態に維持し、車両の停車状態の維持を実現させてもよい。これにより、別途の制御系統及びエア供給系統を要することなく、減速制御終了後において車両の停車状態に維持することが可能となる。具体的には、バルブ制御部13は、車速センサ、その他の所定の制御信号及び上記の停車フラグ等に基づいて停車を認識した場合に、第1の信号の送出を維持することとしてもよい。
【0059】
また、
図3のバルブ制御信号及びエア圧のセンサ値のグラフの一点鎖線に示されるように、バルブ制御部13は、減速制御の終了以前と同様に、エア圧が第1の閾値以上になったときにバルブ23を閉状態に制御し、エア圧が第2の閾値以下になったときにバルブを開状態に制御することにより、車両を停車状態に維持してもよい。このような制御により、別途の制御系統及びエア供給系統を要することなく、減速制御終了後においても、エア圧を所望の範囲に維持することにより、車両を停車状態に維持することが可能となる。
【0060】
ステップS11において、制御装置10は、キーOFFされたか否かを判定する。キーOFFされたと判定された場合には、減速制御処理は終了する。一方、キーOFFされたと判定されなかった場合には、ステップS10の制動保持のための処理が繰り返される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の減速制御装置1では、圧縮エアのエア圧が第2の閾値以下である場合には、ブレーキ機構に圧縮エアを供給するバルブ23が開状態に制御され、圧縮エアのエア圧が第1の閾値以上である場合には、ブレーキ機構に圧縮エアを供給するバルブ23が閉状態に制御されるので、エア圧が第1の閾値と第2の閾値との間に維持される。そして、第1及び第2の閾値の間に維持されたエア圧に応じてブレーキ機構により発生された減速度により車両が減速される。従って、バルブを開状態及び閉状態のいずれかに制御するといった容易な制御により、所望の減速制御を実現できる。また、単一系統の圧縮エアのエア圧の制御により減速制御が実現されるので、圧縮エアの供給のための構成を単純化できる。
【0062】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…減速制御装置、10…制御装置、11…ブレーキ指示取得部、12…エア圧力取得部、13…バルブ制御部、23…バルブ、24…エアタンク、25…減圧弁、26…エア圧センサ、27…DC弁、28…サービスブレーキ回路、29…ホーン、30…フラッシャー、31…ブレーキスイッチインジケータ、32…エア圧センサ。