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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165209
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】食品用調味料組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20231108BHJP
   A23L 3/3508 20060101ALI20231108BHJP
   A23L 27/24 20160101ALI20231108BHJP
   A23L 3/349 20060101ALI20231108BHJP
   A23L 13/60 20160101ALN20231108BHJP
   A23B 4/12 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L3/3508
A23L27/24
A23L3/349 501
A23L13/60 A
A23B4/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075985
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】516089979
【氏名又は名称】株式会社ウエノフードテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】上杉 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏子
【テーマコード(参考)】
4B021
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B021LW03
4B021LW04
4B021LW09
4B021MC01
4B021MK02
4B021MK08
4B021MK18
4B021MK20
4B021MK30
4B021MP01
4B042AC06
4B042AD03
4B042AE03
4B042AG03
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK03
4B042AK04
4B042AK08
4B042AK09
4B042AK17
4B042AK20
4B042AP02
4B042AP14
4B042AP21
4B047LB09
4B047LF01
4B047LF02
4B047LF04
4B047LG01
4B047LG03
4B047LG07
4B047LG08
4B047LG09
4B047LG59
4B047LG62
4B047LG64
4B047LP02
4B047LP20
(57)【要約】
【課題】 食品の風味を損なうことなく、食品の調味と保存性向上を同時に満足し、組成物自体の保管安定性にも優れる食品用調味料組成物を提供する。
【解決手段】 醸造酢、液体調味料、有機酸ナトリウム塩および食塩を含有する組成物であって、組成物全量に対する酢酸の割合が5~10重量%、エタノールの割合が1~5重量%であり、有機酸ナトリウム塩を2種以上含有し、pHが4~5.5である食品用調味料組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
醸造酢、液体調味料、有機酸ナトリウム塩および食塩を含有する組成物であって、組成物全量に対する酢酸の割合が5~10重量%、エタノールの割合が1~5重量%であり、有機酸ナトリウム塩を2種以上含有し、pHが4~5.5である食品用調味料組成物。
【請求項2】
醸造酢が、酸度15重量%以上の高酸度醸造酢である、請求項1に記載の食品用調味料組成物。
【請求項3】
液体調味料が、発酵調味料、みりんおよびみりん風調味料からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の食品用調味料組成物。
【請求項4】
有機酸ナトリウム塩がクエン酸三ナトリウムと、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の食品用調味料組成物。
【請求項5】
液体調味料と有機酸ナトリウム塩の合計量との重量比が、1:0.5~1:2である、請求項1に記載の食品用調味料組成物。
【請求項6】
液体調味料の割合が、酢酸100重量部に対し、100~500重量部である、請求項1に記載の食品用調味料組成物。
【請求項7】
有機酸ナトリウム塩の合計割合が、酢酸100重量部に対し、100~400重量部である、請求項1に記載の食品用調味料組成物。
【請求項8】
食塩の割合が、食品用調味料組成物全量に対し、3~8重量%である、請求項1に記載の食品用調味料組成物。
【請求項9】
さらにアルカリ剤を含有する、請求項1に記載の食品用調味料組成物。
【請求項10】
畜肉加工品用および魚肉加工品用の調味料組成物である、請求項1~9のいずれかに記載の食品用調味料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静菌効果を有し、保管安定性に優れた食品用調味料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から米、麦等の穀物を原料として製造される穀物酢やぶどう、りんご等の果実を原料として製造される果実酢などの醸造酢は、様々な食品の調味に用いられてきた。醸造酢は酢酸が主成分であることから、酢酸が有する静菌効果を利用し、食品の保存性改善を目的とした利用もなされている。しかしながら、醸造酢は酸味が強く、甘味、塩味、うま味等の成分を含有しない、もしくは極めて少ないため、調味料として利用できる食品が限定的であった。そのため、醸造酢に砂糖、食塩、醤油などの調味料を添加した加工酢(調味酢)の利用が拡大している。
【0003】
しかしながら、加工酢は、保管中にオリが発生し易く、長期間の保管に適したものではなかった。オリが発生した加工酢は、味質の劣化や外観の変化により、製品価値が低下する。また、醸造酢の酸味を抑制するために、pHが高く調整されたものは、微生物が増殖し易く、腐敗の原因となっていた。
【0004】
一方、食品に広く用いられる他の調味料として、米、もち米、米麹を原料とする醸造調味料であるみりん類が知られている。みりん類は、原料、製法および成分などの違いから、みりん、みりん風調味料および発酵調味料に大別されている。みりん類には、甘味付与、てりつやの付与、煮崩れ防止などの効果がある他、食品の防腐性を高める効果がある。しかしながら、みりん類の食品に対する添加量は多くないため、防腐効果としては低く、みりん類の添加のみによって食品の保存性を改善することは困難であった。
【0005】
特許文献1には、食酢に砂糖、食塩などの結晶性調味料を混合し、混合液中に気泡を発生させた後、ろ過することによりオリの発生を抑制する調味酢の製造方法が記載されている。しかしながら、この調味酢を得るためには、空気を吹き込みながら撹拌するなどの操作が必要であり、容易に製造し得るものではなかった。
【0006】
特許文献2には、醸造酢と、酢酸ナトリウムと、フマル酸酸性塩、酒石酸酸性塩およびリン酸酸性塩から選ばれる少なくとも一種の塩を含有する食品の風味、品質改良剤が提案されている。しかしながら、上述したとおり、この製剤は甘味、塩味、うま味等の成分を実質的に含まないことから、調味料としての利用範囲が狭いという課題があった。
【0007】
特許文献3には、酢酸濃度が0.5~5.0重量%となるように酢ないし酢酸を配合した水相と油相とを乳化させ、使用時にクエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩及びリンゴ酸塩から選ばれた有機酸塩を添加してpHを5~7に中和する食品の製造方法が記載されている。しかしながら、上記と同様に酢以外の調味成分を含まない他、使用時に別途有機酸塩の添加によりpHを中和する必要があり、食品製造時のハンドリングは良いとは言えなかった。
【0008】
従って、食品の適用範囲が広く、酸味が抑制され、組成物自体の保管安定性にも優れた静菌効果を有する調味料組成物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58-175467号公報
【特許文献2】特開平8-256702号公報
【特許文献3】特開平9-98728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、食品の風味を損なうことなく、食品の調味と保存性向上を同時に満足し、組成物自体の保管安定性にも優れる食品用調味料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、醸造酢と液体調味料を用い、エタノールの割合を調整すると共に、複数の有機酸ナトリウム塩により、pHを特定の範囲に調整することにより、食品の調味、保存性向上および組成物自体の保管安定性が同時に達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち本発明は、醸造酢、液体調味料、有機酸ナトリウム塩および食塩を含有する組成物であって、組成物全量に対する酢酸の割合が5~10重量%、エタノールの割合が1~5重量%であり、有機酸ナトリウム塩を2種以上含有し、pHが4~5.5である食品用調味料組成物を提供する。
【0013】
好ましくは、本発明の食品用調味料組成物は、醸造酢が酸度15重量%以上の高酸度醸造酢であり、液体調味料が、発酵調味料、みりんおよびみりん風調味料からなる群から選ばれる1種以上であり、有機酸ナトリウム塩が、クエン酸三ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムからなる群より選ばれる2種以上である。
【0014】
好ましくは、本発明の食品用調味料組成物は、液体調味料と有機酸ナトリウム塩の合計量との重量比が、1:0.5~1:2である。
【0015】
好ましくは、本発明の食品用調味料組成物は、液体調味料の割合が、酢酸100重量部に対し、100~500重量部であり、有機酸ナトリウム塩の合計割合が、酢酸100重量部に対し100~400重量部である。
【0016】
好ましくは、本発明の食品用調味料組成物は、食塩の割合が、食品用調味料組成物全量に対し、3~8重量%である。
【0017】
好ましくは、本発明の食品用調味料組成物は、さらにアルカリ剤を含有するものである。
【0018】
好ましくは、本発明の食品用調味料組成物は、畜肉加工品用および魚肉加工品用の調味料組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書および特許請求の範囲において、「醸造酢」とは、醸造工程を経て製造された食酢であり、化学的に調製された所謂合成酢は含まれない。醸造酢の具体例としては、例えば、米酢、黒酢等の穀物酢や、りんご酢、ブドウ酢等の果実酢を用いることが可能であり、これらを濃縮することによって得られた高酸度醸造酢を用いてもよい。
【0020】
使用する醸造酢は、酢酸酸度5~30重量%程度のものが採用可能であるが、本発明の食品用調味料組成物の調製のし易さから、酢酸酸度15重量%以上の高酸度醸造酢が好ましく、15~20重量%のものがより好ましい。醸造酢の酢酸酸度が5重量%未満の場合、日持ち向上効果が低下する傾向にあり、酢酸酸度が30重量%を超える場合、得られる食品用調味料組成物の酸味や酸臭が強くなる傾向がある。ここで、酢酸酸度とは、「醸造酢の日本農林規格」(農林水産省)の第4条「測定方法」に規定される酸度測定方法に従って測定、算出したものをいう。
【0021】
なお、醸造酢は酢酸以外の有機酸を含む場合があるが、通常、該有機酸の量は僅かであり、酸度に寄与するほどではない。したがって、本明細書においては、醸造酢について測定された酸度(w/v%)を、該醸造酢の酢酸濃度(重量%)と同等のものとして扱う。
【0022】
本発明の食品用調味料組成物における醸造酢の割合は、食品用調味料組成物全量に対し、酢酸の割合が5~10重量%となるように配合するのが好ましく、5.2~9.8重量%となるように配合するのがより好ましく、5.5~9.5重量%となるように配合するのがさらに好ましい。
【0023】
本明細書および特許請求の範囲において、「液体調味料」とは、米類または麦類を原料とする、発酵調味料(料理酒など)、みりん、みりん風調味料、清酒等が例示される。液体調味料は、エタノール、食塩、糖類、アミノ酸、脂肪酸等を含んでいるものであってよい。
【0024】
液体調味料としては、市販されているものを使用すればよく、例えばみりんや清酒に発酵由来以外のエタノールを添加してアルコール度数を調整したもの、食塩を添加して塩濃度を調整したものなどが例示される。かかる調味料にさらに糖類、アミノ酸、脂肪酸等を添加して調製されたものも用い得る。ここで、米の分解に用いられる酵素としては、アミラーゼ、プロテアーゼが挙げられる。これら液体調味料の中でも、みりん、みりん風調味料、発酵調味料が好適に用いられる。
「みりん」とは、もち米、米麹、醸造アルコールを混合し、麹の酵素によって糖化熟成させた後、これを搾ることによって得られる、エタノール含量13~15%で、塩分を実質的に含まないものを言う。
「みりん風調味料」とは糖類、米、米麹、酸味料などの原材料をブレンドして得られる、アルコール発酵やアルコール存在下の糖化熟成工程を含まない、エタノール含量1%未満、かつ塩分1%未満の調味料を言う。
「発酵調味料」とは、米、米麹、糖類、アルコール、食塩などを混合し、耐塩性酵母で発酵させることによって得られる、エタノール含量13~15%、かつ塩分1.5%以上の調味料を言う。
【0025】
液体調味料に含まれる、食塩の割合は一般的に0~3重量%であるが、0.2~2.8重量%であるものがより好ましく、0.5~2.5重量%であるものがさらに好ましい。みりんやみりん風調味料などのように食塩を実質的に含まない、あるいは極めて微量である液体調味料の場合は食塩を別途添加して本願の食品用調味料組成物の塩分量を調整すればよい。液体調味料に含まれる食塩の割合が3重量%を超える場合には添加する食品の味質に与える影響が強くなる傾向がある。
【0026】
本願の食品用調味料組成物に含まれるエタノールを、液体調味料由来のものとする場合、液体調味料に含まれるエタノールの合計量の割合は10~20重量%のものが好ましく、12~18重量%であるものがより好ましく、13~15重量%であるものがさらに好ましい。なお、液体調味料に含まれるエタノールの割合が10重量%未満の場合は本発明の食品用調味料組成物を調製した際に別途エタノールを添加して調節すればよい。液体調味料のエタノール含量が20重量%を超える場合には添加する食品の味質に与える影響が強くなる傾向がある。
【0027】
本発明の食品用調味料組成物において、組成物全量に対するエタノールの割合は1~5重量%となるように調整すればよく、1.5~4重量%となるように調整するのが好ましく、1.8~3.7重量%となるように調整するのがより好ましく、2~3.5重量%となるように調整するのがさらに好ましい。
エタノールの割合が1重量%未満である場合、食品用調味料組成物自体の保管安定性が悪化する傾向があり、5重量%を超える場合、酢酸エチル等の異臭が生じやすい傾向がある。
【0028】
エタノールを実質的に含まない、あるいは極めて少ない、みりん風調味料を採用した場合には、別途エタノールを添加して調整すればよい。
【0029】
液体調味料の割合の目安としては、酢酸100重量部に対し、100~500重量部であるのが好ましく、150~450重量部であるのがより好ましく、180~420重量部であるのがさらに好ましい。
【0030】
本発明の食品用調味料組成物に含有させる有機酸ナトリウム塩としては、クエン酸三ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウム等が挙げられる。本発明においては、これら有機酸ナトリウム塩を2種以上用いることにより、pHを所定の範囲に調整すると共に味質を調整することが可能となる。
【0031】
本発明の食品用調味料組成物において好ましい有機酸ナトリウム塩は、クエン酸三ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウムが好ましく、クエン酸三ナトリウムに、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウムの中から1種以上を選択するのがより好ましい。
【0032】
本発明の食品用調味料組成物における有機酸ナトリウム塩の合計割合は、酢酸100重量部に対し、100~400重量部であるのが好ましく、150~390重量部であるのがより好ましく、200~385重量部であるのがさらに好ましい。酢酸100重量部に対する有機酸ナトリウム塩の合計割合が100重量部未満の場合、酸味が強くなる傾向があり、400重量部を超える場合は、日持ち向上効果が不十分となる傾向がある。
【0033】
本発明の食品用調味料組成物においては、液体調味料と有機酸ナトリウム塩の合計量との重量比が、1:0.5~1:2であるものが好ましく、1:0.8~1:1.7であるものがより好ましく、1:1~1:1.5であるものがさらに好ましい。
【0034】
本発明の食品用調味料組成物における食塩の割合は、食品用調味料組成物全量に対し、3~8重量%であるのが好ましく、4~7重量%であるのがより好ましく、4.5~6.5重量%であるのがさらに好ましい。食塩の割合が3重量%未満である場合、食品用調味料組成物自体の保管安定性が悪化する傾向があり、8重量%を超える場合、添加する食品の味質に与える影響が強くなる傾向がある。液体調味料として食塩を実質的に含有しないみりん、みりん風調味料を採用する場合、別途食塩を添加して本発明の食品用調味料組成物を調製すればよい。
【0035】
本発明の食品用調味料組成物は、上記の醸造酢、液体調味料、有機酸ナトリウム塩、エタノールおよび食塩の種類や割合によって、pHを所定の範囲に調整可能であるが、調整が困難である場合には、別途アルカリ剤を用いて調整してもよい。本発明に適用可能なアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、重合リン酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム等が例示される。これらアルカリ剤の中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウムがpH調整能の点で好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0036】
本発明の食品用調味料組成物のpHは4~5.5であればよく、4.3~5.4であるのが好ましく、4.5~5.2であるのがより好ましい。
【0037】
本発明の食品用調味料組成物の調製には特別な操作は必要なく、各成分を混合すればよい。さらに、食品の味質や風味に影響を与えない範囲で、アミノ酸、脂肪酸、脂肪酸エステル、塩基性蛋白・ペプチド、カンゾウ油性抽出物等の成分を含有させてもよい。
【0038】
アミノ酸としてはグリシン、アラニン等が挙げられる。脂肪酸としてはカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等の炭素原子数6~18の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸エステルとしてはグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。塩基性蛋白・ペプチドとしてはプロタミン、リゾチーム、ε-ポリリジン、キトサン、ペクチン分解物、ナイシン等が挙げられる。これらの成分は2種以上を使用してもよい。
【0039】
また、本発明の食品用調味料組成物は、溶媒中に希釈して用いてもよく、この場合、溶媒としては、水、醤油、たれ、つゆ等が挙げられる。
【0040】
本発明の食品用調味料組成物は、食品に添加することにより、食品の調味および保存性改善が同時に達成される。
【0041】
また、本発明の食品用調味料組成物は、組成物自体の保管安定性が改善されており、長期間保管した場合でも、変敗することなく、上記効果が維持される。
【0042】
本発明の食品用調味料組成物の食品に対する添加量は、食品の種類によって異なるが、食品100重量部に対して、食品用調味料組成物0.5~3重量部程度が好ましく、0.8~2.5重量部程度がより好ましく、1~2重量部程度がさらに好ましい。食品100重量部に対して、食品用調味料組成物0.5重量部未満である場合、十分な日持ち向上効果が得られない傾向があり、食品100重量部に対して、食品用調味料組成物3重量部を超える場合、添加する食品の種類によっては風味に悪影響を及ぼす傾向がある。
【0043】
本発明の食品用調味料組成物が使用可能な食品は、特に限定されるものではなく、非加熱の食品、加熱工程を含む食品のいずれにも適用可能であり、ハム、ソーセージ、ベーコン、ハンバーグ、肉団子、餃子、シュウマイ等の畜肉加工品、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、魚肉ソーセージ等の魚肉加工品、ポテトサラダ、卵焼き、煮物、和え物等の惣菜類、コロッケ、トンカツ、フライドチキン、魚フライ、唐揚げ等のフライ製品類、チャーハン、炊き込み御飯等の米飯類、浅漬け、梅干等の漬物類、タラコ、数の子等の魚卵加工品などが挙げられる。これら食品の中でも、調味や保存性改善の点で畜肉加工品および魚肉加工品が好ましい。
【0044】
本発明の食品用調味料組成物の食品への添加方法としては、原材料と共に混合する方法以外にも、食品に噴霧あるいは浸漬する方法などが挙げられる。食品への添加方法は、食品の種類や目的に応じて使用者が適宜選択できる。
【0045】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明する。
【実施例0046】
実施例1~3および比較例1~3
表1に示す割合で各成分を混合し、食品用調味料組成物を調製した。尚、液体調味料は予め発酵エタノールを添加し、エタノール含量約14重量%に調整したものを使用した。
【0047】
以下の実施例および比較例で使用した各材料を示す。
・醸造酢(HA-150、マルカン酢株式会社製)(酸度15%)
・液体調味料(新味料(みりん風調味料)、キング醸造株式会社製)(エタノール含量1%未満)
・食塩(特級精製塩、日本食塩製造株式会社製)
・クエン酸三ナトリウム(クエン酸三ナトリウム(結晶)微粉、磐田化学工業株式会社製)
・リンゴ酸ナトリウム(DL-リンゴ酸ナトリウム(DL-リンゴ酸ナトリウム1/2HO)、扶桑化学工業株式会社製)
・コハク酸二ナトリウム(コハク酸ソーダ、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社製)
・グルコン酸ナトリウム(グルコン酸ソーダF、松村薬品工業株式会社製)
・酢酸ナトリウム(酢酸ナトリウム(無水)、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社製)
・水酸化ナトリウム(試薬、富士フイルム和光純薬株式会社製)
・水酸化カリウム(試薬、富士フイルム和光純薬株式会社製)
・発酵エタノール(95度、第一アルコール株式会社製、エタノール92.3重量%)
【0048】
抗菌力試験
日本化学療法学会標準法(微量液体希釈法)により、最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。表1に示す各調味料組成物をオートクレーブにて滅菌した後、1N-HCl水溶液および1N-NaOH水溶液にてpH6.0に調整した。これをマイクロタイタープレートを用いて、SCDブイヨン培地にて10段階に2倍希釈したものに下記供試菌の菌液を培地100μl/ウェルに対して5μlづつ接種した。これを30℃にて24時間培養し、菌の増殖の有無にてMICを測定した。結果を表2に示す。
【0049】
供試菌:
Escherichia coli NIHJ-jc2
Staphylococcus aureus NBRC12732
Leuconostoc mesenteroides IAM1046
Lactobacillus brevis NBRC3345
Saccharomyces cerevisiae NBRC0205
Hansenula anomala 6258
Bacillus subtilis IAM1069芽胞
Bacillus cereus IAM1029芽胞
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
本発明の食品用調味料組成物は、比較例の組成物に比べ、幅広い菌に対し優れた抗菌力を示した。
【0053】
実施例4および比較例4
ソーセージの官能試験
表1に示す食品用調味料組成物AおよびFを用い、表3に示す組成のソーセージを製造した。フードプロセッサー(MK-K48P、パナソニック株式会社製)に各材料を入れ、1分間撹拌した。15gづつ棒状に成形し、80ml容ポリエチレン製袋に入れ、脱気した後、密封し、スチームコンベクションオーブン(TSCO-4EB、タニコー株式会社製)で75℃、20分間加熱した。加熱終了後、1時間放冷し、ソーセージを得た。得られたソーセージについて、無添加のソーセージを対照として、酸味およびうま味を評価した。酸味の評価は、対照と比較して同程度の酸味であるものを〇、酸味が強いものを×とした。また、うま味の評価は、対照と比較してうま味が強いものを〇、うま味が弱いものを×とした。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
ソーセージの保存試験
上記官能試験と同様にして製造したソーセージを25℃の恒温器内で1週間保存し、一般生菌数を比較した。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
本発明の食品用調味料組成物Aを用いて製造した実施例4のソーセージは、比較例4のものに比べ、酸味が抑制され、うま味を強く感じるものであった。また、1週間保存後の一般生菌数が少なく、高い保存効果を示した。
【0057】
実施例5および比較例5
安定性試験(低温保管安定性)
表5に示す食品用調味料組成物GおよびHを0℃で3日間保管し、保管直後および室温で2時間静置した後の各製剤の透明性を目視にて確認した。評価は、外観に異常(白濁、沈殿、析出または分離)が認められなかった場合を〇、保管直後は外観に異常が認められたが2時間静置後に異常が解消された場合を△、保管直後から2時間静置後まで異常が解消されなかった場合を×とした。結果を表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
実施例6および比較例6
官能試験
表6に示す食品用調味料組成物IおよびJを水で20倍に薄めた液を調製し、被験者が口に含み、酸味およびうま味を確認した。
評価は希釈した醸造酢を対照とし、対照よりも酸味が弱いものを〇、酸味が強いものを×とした。また、対照よりもうま味が強いものを〇、対照と同程度のうま味であるものを×とした。結果を表6に示す。
【0060】
【表6】