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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165216
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】船外機
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/28 20060101AFI20231108BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20231108BHJP
   F01P 5/12 20060101ALI20231108BHJP
   F01P 7/08 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B63H20/28 100
B63H21/38 A
F01P5/12 G
F01P7/08 B
F01P7/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075993
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】尾上 純弥
(72)【発明者】
【氏名】古賀 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】門林 義幸
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 公隆
(72)【発明者】
【氏名】野間 暁裕
(57)【要約】
【課題】船外機において、エンジンの冷却のために適切な量の冷却水をエンジンに供給する。
【解決手段】船外機は、アッパケースと、ロアケースと、伝達機構と、クラッチと、冷却水通路と、第1ポンプと、第2ポンプとを備える。アッパケースは、エンジンの下方に配置される。ロアケースは、アッパケースの下方に配置される。伝達機構は、エンジンの駆動力を伝達する。クラッチは、伝達機構に接続される。冷却水通路は、エンジンに接続される。冷却水通路は、アッパケース及びロアケース内に配置される。第1ポンプは、クラッチを介して伝達機構に接続される。第1ポンプは、エンジンの駆動力によって駆動されることで、冷却水通路を介してエンジンに冷却水を送る。第2ポンプは、伝達機構に接続される。第2ポンプは、エンジンの駆動力によって駆動されることで、冷却水通路を介してエンジンに冷却水を送る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機を船舶に取り付けるためのブラケットと、
エンジンと、
前記エンジンの下方に配置されたアッパケースと、
前記アッパケースの下方に配置されたロアケースと、
前記エンジンの駆動力を伝達する伝達機構と、
前記伝達機構に接続されるクラッチと、
前記エンジンに接続され、前記アッパケース及び前記ロアケース内に配置された冷却水通路と、
前記クラッチを介して前記伝達機構に接続され、前記エンジンの駆動力によって駆動されることで前記冷却水通路を介して前記エンジンに冷却水を送る第1ポンプと、
前記伝達機構に接続され、前記エンジンの駆動力によって駆動されることで前記冷却水通路を介して前記エンジンに冷却水を送る第2ポンプと、
を備える船外機。
【請求項2】
前記第1ポンプと前記第2ポンプとは、容積式のポンプであり、
前記エンジンの回転速度が低回転域である場合には、前記クラッチが前記第1ポンプと前記伝達機構とを遮断し、前記第2ポンプが駆動され、
前記エンジンの回転速度が高回転域である場合には、前記クラッチが前記第1ポンプと前記伝達機構とを接続し、前記第1ポンプと前記第2ポンプとが駆動される、
請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記第1ポンプは、容積式のポンプであり、
前記第2ポンプは、非容積式のポンプであり、
前記エンジンの回転速度が低回転域である場合には、前記クラッチが前記第1ポンプと前記伝達機構とを接続し、前記第1ポンプと前記第2ポンプとが駆動され、
前記エンジンの回転速度が高回転域である場合には、前記クラッチが前記第1ポンプと前記伝達機構とを遮断し、前記第2ポンプが駆動される、
請求項1に記載の船外機。
【請求項4】
前記伝達機構は、
前記エンジンに接続される第1軸と、
前記第1軸に接続されるシフト機構と、
前記シフト機構に接続される第2軸と、
を含み、
前記シフト機構は、前記第1軸と前記第2軸とを接続する駆動状態と、前記第1軸と前記第2軸とを遮断する中立状態とに切り替え可能であり、
前記第1ポンプは、前記第1軸に接続され、
前記第2ポンプは、前記第2軸に接続される、
請求項1に記載の船外機。
【請求項5】
前記第1軸は、前記エンジンから下方に延び、前記アッパケース及び前記ロアケース内に配置されたドライブ軸であり、
前記第2軸は、前記シフト機構を介して前記ドライブ軸に接続され、前後方向に延び、前記ロアケース内に配置されたプロペラ軸である、
請求項4に記載の船外機。
【請求項6】
前記伝達機構は、
前記エンジンから下方に延び、前記アッパケース及び前記ロアケース内に配置されたドライブ軸と、
前記ドライブ軸に接続され、前後方向に延び、前記ロアケース内に配置されたプロペラ軸と、
を含み、
前記ドライブ軸は、
前記エンジンに接続される第1ドライブ軸と、
前記シフト機構を介して前記第1ドライブ軸に接続された第2ドライブ軸と、
を含み、
前記第1軸は、前記第1ドライブ軸であり、
前記第2軸は、前記第2ドライブ軸である、
請求項4に記載の船外機。
【請求項7】
前記第1ポンプは、容積式のポンプであり、
前記第2ポンプは、非容積式のポンプであり、
前記シフト機構が前記駆動状態であり、且つ、前記エンジンの回転速度が低回転域である場合に、前記クラッチが前記第1ポンプと前記第1軸とを接続し、前記第1ポンプと前記第2ポンプとが駆動され、
前記シフト機構が前記駆動状態であり、且つ、前記エンジンの回転速度が高回転域である場合に、前記クラッチが前記第1ポンプと前記第1軸とを遮断し、前記第2ポンプが駆動され、
前記シフト機構が前記中立状態である場合に、前記クラッチが前記第1ポンプと前記第1軸とを接続し、前記第1ポンプが駆動される、
請求項4に記載の船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機は、エンジンに冷却水を供給するための冷却水通路とポンプとを備えている。船外機の下部には取水口が設けられており、冷却水通路はエンジンと取水口とに接続されている。ポンプは、冷却水通路を介して冷却水をエンジンに送る。
【0003】
例えば、特許文献1の船外機は、第1ポンプと第2ポンプとを備えている。第1ポンプと第2ポンプとは、ドライブ軸に接続されている。ドライブ軸は、エンジンのクランク軸に接続されている。エンジンからの駆動力によってドライブ軸が回転することで、第1ポンプと第2ポンプとが駆動される。それにより、第1ポンプと第2ポンプとは、冷却水通路を介して冷却水をエンジンに送る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-5927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ウォータポンプがエンジンからの駆動力によって駆動される場合、エンジンが回転している場合には常にウォータポンプが駆動されるため、冷却が必要ではない場合でも、エンジンに冷却水が供給されてしまう。また、エンジンの回転速度に応じて冷却水の供給量が変化するため、エンジンの冷却に適した量の冷却水をエンジンに供給することは容易ではない。本発明の目的は、船外機において、エンジンの冷却のために適切な量の冷却水をエンジンに供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る船外機は、ブラケットと、アッパケースと、ロアケースと、伝達機構と、クラッチと、冷却水通路と、第1ポンプと、第2ポンプとを備える。船外機は、ブラケットを介して、船舶に取り付けられる。アッパケースは、エンジンの下方に配置される。ロアケースは、アッパケースの下方に配置される。伝達機構は、エンジンの駆動力を伝達する。クラッチは、伝達機構に接続される。冷却水通路は、エンジンに接続される。冷却水通路は、アッパケース及びロアケース内に配置される。第1ポンプは、クラッチを介して伝達機構に接続される。第1ポンプは、エンジンの駆動力によって駆動されることで、冷却水通路を介してエンジンに冷却水を送る。第2ポンプは、伝達機構に接続される。第2ポンプは、エンジンの駆動力によって駆動されることで、冷却水通路を介してエンジンに冷却水を送る。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る船外機では、第1ポンプと伝達機構との接続と遮断とがクラッチによって切り替えられる。それにより、クラッチによって、第1ポンプと第2ポンプとの両方によって冷却水をエンジンに供給する状態と、第2ポンプのみによって冷却水をエンジンに供給する状態とが、切り替えられる。それにより、エンジンの冷却のために適切な量の冷却水をエンジンに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る船外機の側面図である。
図2A】船外機の一部を示す拡大側面図である。
図2B】船外機の一部を示す拡大側面図である。
図2C】船外機の一部を示す拡大側面図である。
図3】第1実施形態に係る船外機の冷却系を示すブロック図である。
図4】第2実施形態に係る船外機の冷却系を示すブロック図である。
図5】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第1の例を示す図である。
図6】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第2の例を示す図である。
図7】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第3の例を示す図である。
図8】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第4の例を示す図である。
図9】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第5の例を示す図である。
図10】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第6の例を示す図である。
図11】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第7の例を示す図である。
図12】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第8の例を示す図である。
図13】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第9の例を示す図である。
図14】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第10の例を示す図である。
図15】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第11の例を示す図である。
図16】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第12の例を示す図である。
図17】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第13の例を示す図である。
図18】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第14の例を示す図である。
図19】第3実施形態に係る船外機の冷却系を示すブロック図である。
図20】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第15の例を示す図である。
図21】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第16の例を示す図である。
図22】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第17の例を示す図である。
図23】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第18の例を示す図である。
図24】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第19の例を示す図である。
図25】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第20の例を示す図である。
図26】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第21の例を示す図である。
図27】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第22の例を示す図である。
図28】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第23の例を示す図である。
図29】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第24の例を示す図である。
図30】第1ポンプと第2ポンプとの配置の第25の例を示す図である。
図31】第4実施形態に係る船外機の一部を示す拡大側面図である。
図32】第4実施形態に係る船外機の冷却系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る船外機1の側面図である。船外機1は、ブラケット2と、エンジン3と、伝達機構4と、エンジンカウル5と、アッパケース6と、ロアケース7とを備えている。船外機1は、ブラケット2を介して、船舶に取り付けられる。
【0010】
エンジン3は、船舶を推進させるスラストを発生させる。エンジン3は、クランク軸11を含む。クランク軸11は、船外機1の上下方向に延びている。伝達機構4は、エンジン3の駆動力をプロペラ12に伝達する。伝達機構4は、ドライブ軸8と、プロペラ軸9と、シフト機構10とを含む。ドライブ軸8は、クランク軸11に接続されている。ドライブ軸8は、船外機1の上下方向に延びている。ドライブ軸8は、エンジン3から下方に延びている。
【0011】
プロペラ軸9は、船外機1の前後方向に延びている。プロペラ軸9は、シフト機構10を介して、ドライブ軸8に接続されている。プロペラ軸9にはプロペラ12が取り付けられる。シフト機構10は、ドライブ軸8からプロペラ軸9への回転の伝達方向を切り換える。それにより、船舶の前進と後進とが切り換えられる。
【0012】
詳細には、シフト機構10は、前進ギア41と、後進ギア42と、クラッチ43とを含む。クラッチ43は、図2Aに示す前進位置で、前進ギア41に係合する。それにより、プロペラ軸9が前進方向に回転する。クラッチ43は、前進位置から、図2Bに示す後進位置において、後進ギア42に係合する。それにより、後進ギア42がプロペラ軸9に接続されることで、ドライブ軸8が後進ギア42を介してプロペラ軸9に接続される。それにより、プロペラ軸9が後進方向に回転する。
【0013】
クラッチ43が、図2Cに示す中立位置では、プロペラ軸9は、前進ギア41と後進ギア42のいずれとも接続されない。それにより、ドライブ軸8とプロペラ軸9との間が遮断される。以上のように、クラッチ43が前進位置、或いは、後進位置で、シフト機構10は、ドライブ軸8からの駆動力をプロペラ軸9に伝達する駆動状態となる。クラッチ43が中立位置で、シフト機構10は、ドライブ軸8からの駆動力をプロペラ軸9に伝達しない中立状態となる。
【0014】
エンジン3は、エンジンカウル5内に配置される。アッパケース6は、エンジン3の下方に配置されている。ロアケース7は、アッパケース6の下方に配置されている。ドライブ軸8は、アッパケース6及びロアケース7内に配置されている。プロペラ軸9とシフト機構10とは、ロアケース7内に配置されている。詳細には、ロアケース7は、トーピード部13を含む。トーピード部13は、外側に膨出した形状を有する。プロペラ軸9とシフト機構10とは、トーピード部13内に配置される。ロアケース7には、キャビテーションプレート14が接続されている。キャビテーションプレート14は、ロアケース7から後方へ突出している。
【0015】
図3は、第1実施形態に係る船外機1の冷却系と駆動系とを示すブロック図である。図2において破線の矢印が船外機1の冷却系を示している。図3に示すように、エンジン3は、ウォータジャケット15を含む。ウォータジャケット15を流れる冷却水により、エンジン3が冷却される。船外機1は、冷却水通路16と排水通路17とを含む。冷却水通路16と排水通路17とは、エンジン3のウォータジャケット15に接続されている。冷却水通路16と排水通路17とは、例えばアッパケース6及びロアケース7内に配置される。
【0016】
冷却水は、船外機1の外部から、冷却水通路16を通って、エンジン3のウォータジャケット15に供給される。冷却水は、ウォータジャケット15から排水通路17を通って、排水口18から船外機1の外部に排出される。排水口18は、例えばロアケース7に設けられる。或いは、排水口18は、アッパケース6に設けられてもよい。
【0017】
冷却水通路16は、取水口21と、第1通路22と、第2通路23とを含む。船外機1は、第1ポンプ25と第2ポンプ26とを含む。取水口21は、ロアケース7に設けられている。取水口21は、船外機1の外部と連通している。取水口21を通って、冷却水が船外機1の外部から冷却水通路16に取り込まれる。
【0018】
第1通路22は、取水口21に接続されている。第1ポンプ25は、第1通路22に設けられている。第2通路23は、取水口21に接続されている。第2ポンプ26は、第2通路23に設けられている。第1通路22と第2通路23とは、ウォータジャケット15に接続されている。第1ポンプ25は、第1通路22を介してエンジン3に冷却水を送る。第2ポンプ26は、第2通路23を介してエンジン3に冷却水を送る。
【0019】
図3において、実線の矢印は、船外機1の駆動系を示している。図3に示すように、船外機1は、クラッチ28を備える。クラッチ28は、伝達機構4に接続されている。第1ポンプ25は、クラッチ28を介して伝達機構4に接続されている。第2ポンプ26は、伝達機構4に接続されている。
【0020】
詳細には、第1ポンプ25は、クラッチ28を介して、伝達機構4においてエンジン3とシフト機構10との間に接続されている。第2ポンプ26は、伝達機構4において、エンジン3とシフト機構10との間に接続されている。例えば、第1ポンプ25は、クラッチ28を介して、クランク軸11、或いはドライブ軸8に接続されている。第2ポンプ26は、クランク軸11、或いはドライブ軸8に接続されている。
【0021】
クラッチ28は、例えば、遠心クラッチである。或いは、クラッチ28は、電磁クラッチ、或いはトルクリミッターであってもよい。クラッチ28は、エンジン回転速度に応じて、係合状態と非係合状態とに切り替えられる。クラッチ28は、係合状態において、第1ポンプ25を伝達機構4に接続する。クラッチ28は、非係合状態において、第1ポンプ25を伝達機構4から遮断する。
【0022】
例えば、クラッチ28が遠心クラッチである場合、エンジン回転速度が所定の閾値より小さい場合には、クラッチ28は非係合状態に維持される。エンジン回転速度が所定の閾値以上になると、クラッチ28は係合状態に切り替わる。クラッチ28が電磁クラッチである場合、エンジン回転速度がセンサによって検出される。クラッチ28は、センサが検出したエンジン回転速度に応じて、図1に示すコントローラ40からの指令信号によって電気的に制御される。それにより、クラッチ28が、エンジン回転速度に応じて、係合状態と非係合状態とに切り替えられる。
【0023】
第1実施形態において、第1ポンプ25と第2ポンプ26とは共に、容積式のポンプである。クラッチ28が係合状態である場合には、第1ポンプ25に、エンジン3からの駆動力が、伝達機構4及びクラッチ28を介して、伝達される。それにより、第1ポンプ25は、エンジン3の駆動力によって駆動されることで、冷却水通路16を介してエンジン3に冷却水を送る。クラッチ28が非係合状態である場合には、エンジン3からの駆動力は、第1ポンプ25に伝達されず、第1ポンプ25は駆動されない。
【0024】
第2ポンプ26は、常時、伝達機構4に接続されている。従って、エンジン3が駆動されている間、エンジン3からの駆動力は、常時、第2ポンプ26に伝達される。それにより、第2ポンプ26は、エンジン3の駆動力によって駆動されることで、冷却水通路16を介してエンジン3に冷却水を送る。
【0025】
第1実施形態では、エンジン回転速度が低回転域である場合には、クラッチ28が第1ポンプ25と伝達機構4とを遮断し、第2ポンプ26が駆動される。それにより、第1ポンプ25は駆動されず、第2ポンプ26のみによって、冷却水がエンジン3に送られる。エンジン回転速度が高回転域である場合には、クラッチ28が第1ポンプ25と伝達機構4とを接続し、第1ポンプ25と第2ポンプ26とが駆動される。それにより、第1ポンプ25と第2ポンプ26との両方によって、冷却水がエンジン3に送られる。
【0026】
低回転域は、エンジン回転速度が上述した閾値以下の範囲である。低回転域は、例えば、エンジン3が、第2ポンプ26のみによって供給される冷却水で十分に冷却される程度の温度であるときのエンジン3の回転域である。高回転域は、エンジン回転速度が上述した閾値より大きい範囲である。
【0027】
第1実施形態では、エンジン回転速度が低回転域である場合には、第1ポンプ25は駆動されず、第2ポンプ26のみによって、冷却水がエンジン3に送られる。それにより、エンジン3の冷やし過ぎが抑えられる。また、第1ポンプ25が駆動されないことにより、エンジン3の駆動力の損失が抑えられる。
【0028】
エンジン回転速度が高回転域である場合には、第1ポンプ25と第2ポンプ26との両方によって、冷却水がエンジン3に送られる。容積式のポンプは、高回転域でのポンプ効率が低いが、第1ポンプ25と第2ポンプ26との両方によって冷却水がエンジン3に送られることにより、エンジン3に十分な量の冷却水が、エンジン3に供給される。
【0029】
図4は、第2実施形態に係る船外機1の冷却系と駆動系とを示すブロック図である。第2実施形態における冷却系と駆動系との構成は、第1実施形態における冷却系と駆動系との構成と同様である。第2実施形態では、第1ポンプ25は容積式のポンプであり、第2ポンプ26は、非容積式のポンプである。第2ポンプ26は、例えば遠心ポンプである。或いは、第2ポンプ26は、軸流ポンプなどの他の種類の非容積式のポンプであってもよい。第2実施形態に係る船外機1の他の構成については、第1実施形態に係る船外機1と同様である。
【0030】
第2実施形態では、エンジン回転速度が低回転域である場合には、クラッチ28が第1ポンプ25と伝達機構4とを接続し、第1ポンプ25と第2ポンプ26とが駆動される。それにより、第1ポンプ25と第2ポンプ26との両方によって、冷却水がエンジン3に送られる。
【0031】
エンジン回転速度が高回転域である場合には、クラッチ28が第1ポンプ25と伝達機構4とを遮断し、第2ポンプ26が駆動される。それにより、第1ポンプ25は駆動されず、第2ポンプ26のみによって、冷却水がエンジン3に送られる。
【0032】
低回転域は、例えば、非容積式のポンプ効率の低い範囲である。高回転域は、例えば、非容積式のポンプ効率の高い範囲である
第2実施形態では、エンジン回転速度が低回転域である場合には、第1ポンプ25と第2ポンプ26との両方によって、冷却水がエンジン3に送られる。非容積式の第2ポンプ26は低回転域でのポンプ効率が低いが、容積式の第1ポンプ25が駆動されることで、エンジン3に適切な量の冷却水が供給される。また、第2ポンプ26が水面よりも高い位置に配置されていても、第1ポンプ25が、第2ポンプ26のための呼び水を、第2ポンプ26に供給する。
【0033】
エンジン回転速度が高回転域である場合には、第1ポンプ25は駆動されず、第2ポンプ26のみによって、冷却水がエンジン3に送られる。容積式の第1ポンプ25は、高回転域でのポンプ効率が低いが、第1ポンプ25が駆動されず、高回転域でのポンプ効率の高い非容積式の第2ポンプ26によって冷却水がエンジン3に送られる。それにより、エンジン3の駆動力の損失が抑えられる。
【0034】
図5から図18は、第1実施形態及び第2実施形態における第1ポンプ25及び第2ポンプ26の配置の例を示す図である。図5は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第1の例を示す。図5に示すように、第1の例では、第1ポンプ25は、キャビテーションプレート14よりも上方に配置される。第1ポンプ25は、喫水線L1よりも上方に配置される。第2ポンプ26は、ブラケット2の下端2Aよりも上方に配置される。第2ポンプ26は、クランク軸11の直下に配置される。
【0035】
図6は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第2の例を示す。図6に示すように、第2の例では、第1ポンプ25は、キャビテーションプレート14よりも下方に配置される。第2ポンプ26は、クランク軸11の直下に配置される。
【0036】
図7は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第3の例を示す。図7に示すように、第3の例では、第1ポンプ25と第2ポンプ26とは、キャビテーションプレート14よりも上方に配置される。
【0037】
図8は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第4の例を示す。図8に示すように、第4の例では、第1ポンプ25は、キャビテーションプレート14よりも上方に配置される。第2ポンプ26は、キャビテーションプレート14よりも下方に配置される。
【0038】
図9は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第5の例を示す。図9に示すように、第5の例では、第1ポンプ25と第2ポンプ26とは、キャビテーションプレート14よりも下方に配置される。
【0039】
図10は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第6の例を示す。図10に示すように、第6の例では、伝達機構4は、中間軸31とリンク機構32とを含む。中間軸31は、ドライブ軸8に対して偏心して配置される。中間軸31は、ギア、或いはベルトなどのリンク機構32を介して、ドライブ軸8に接続される。第2ポンプ26は、中間軸31と同軸に配置される。第2ポンプ26は、中間軸31に接続されている。第1ポンプ25と第2ポンプ26とは、キャビテーションプレート14よりも上方に配置される。
【0040】
図11は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第7の例を示す。図11に示すように、第7の例では、第6の例と同様に、第2ポンプ26は、中間軸31に接続されている。第1ポンプ25は、キャビテーションプレート14よりも下方に配置される。第2ポンプ26は、キャビテーションプレート14よりも上方に配置される。
【0041】
図12は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第8の例を示す。図12に示すように、第8の例では、ドライブ軸8は、第1ドライブ軸8Aと第2ドライブ軸8Bとを含む。第1ドライブ軸8Aは、クランク軸11に接続されている。第2ドライブ軸8Bは、シフト機構10を介して、プロペラ軸9に接続されている。第1ドライブ軸8Aと第2ドライブ軸8Bとは、互いに偏心して配置されている。伝達機構4は、リンク機構33を含む。第2ドライブ軸8Bは、ギア、或いはベルトなどのリンク機構33を介して、第1ドライブ軸8Aに接続されている。第1ポンプ25は、第2ドライブ軸8Bに接続されている。第8の例において、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置は、第1の例と同様である。
【0042】
図13は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第9の例を示す。図13に示すように、第9の例では、第8の例と同様に、第1ポンプ25は、第2ドライブ軸8Bに接続されている。第2ドライブ軸8Bは、リンク機構33を介して、第1ドライブ軸8Aに接続されている。第9の例において、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置は、第2の例と同様である。
【0043】
図14は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第10の例を示す。図14に示すように、第10の例では、第1ポンプ25と第2ポンプ26とは、第2ドライブ軸8Bに接続されている。第10の例において、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置は、第3の例と同様である。
【0044】
図15は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第11の例を示す。図15に示すように、第11の例では、第1ポンプ25と第2ポンプ26とは、第2ドライブ軸8Bに接続されている。第11の例において、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置は、第4の例と同様である。
【0045】
図16は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第12の例を示す。図16に示すように、第12の例では、第1ポンプ25と第2ポンプ26とは、第2ドライブ軸8Bに接続されている。第13の例において、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置は、第5の例と同様である。
【0046】
図17は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第13の例を示す。図17に示すように、第13の例では、第1ポンプ25は、第2ドライブ軸8Bに接続されている。第2ポンプ26は、中間軸31を介して、第1ドライブ軸8Aに接続されている。第14の例において、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置は、第6の例と同様である。
【0047】
図18は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第14の例を示す。図18に示すように、第14の例では、第1ポンプ25は、第2ドライブ軸8Bに接続されている。第2ポンプ26は、中間軸31を介して、第1ドライブ軸8Aに接続されている。第15の例において、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置は、第7の例と同様である。
【0048】
図19は、第3実施形態に係る船外機1の冷却系と駆動系とを示すブロック図である。図19に示すように、第3実施形態では、第1ポンプ25は、クラッチ28を介して、ドライブ軸8、或いは、クランク軸11に接続される。第2ポンプ26は、プロペラ軸9に接続される。第1ポンプ25は、容積式のポンプである。第2ポンプ26は、非容積式のポンプである。第3実施形態に係る船外機1の他の構成については、第1実施形態に係る船外機1と同様である。
【0049】
クラッチ28が係合状態である場合には、第1ポンプ25に、エンジン3からの駆動力が、伝達機構4及びクラッチ28を介して、伝達される。それにより、第1ポンプ25は、エンジン3の駆動力によって駆動されることで、冷却水通路16を介してエンジン3に冷却水を送る。クラッチ28が非係合状態である場合には、エンジン3からの駆動力は、第1ポンプ25に伝達されず、第1ポンプ25は駆動されない。
【0050】
第2ポンプ26は、常時、プロペラ軸9に接続されている。従って、エンジン3が駆動されおり、且つ、シフト機構10が駆動状態である場合には、エンジン3からの駆動力は、常時、第2ポンプ26に伝達される。それにより、第2ポンプ26は、エンジン3の駆動力によって駆動されることで、冷却水通路16を介してエンジン3に冷却水を送る。
【0051】
ただし、エンジン3が駆動されていても、シフト機構10が中立状態である場合には、エンジン3からの駆動力は、プロペラ軸9に伝達されない。従って、シフト機構10が中立状態である場合には、エンジン3が駆動されていても、エンジン3からの駆動力は、第2ポンプ26に伝達されず、第2ポンプ26は駆動されない。
【0052】
第3実施形態では、シフト機構10が駆動状態であり、且つ、エンジン回転速度が低回転域である場合に、クラッチ28が第1ポンプ25とドライブ軸8とを接続し、第1ポンプ25と第2ポンプ26とが駆動される。それにより、第1ポンプ25と第2ポンプ26との両方によって、冷却水がエンジン3に送られる。
【0053】
シフト機構10が駆動状態であり、且つ、エンジン回転速度が高回転域である場合には、クラッチ28が第1ポンプ25とドライブ軸8とを遮断し、第2ポンプ26が駆動される。それにより、第1ポンプ25は駆動されず、第2ポンプ26のみによって、冷却水がエンジン3に送られる。
【0054】
シフト機構10が中立状態である場合には、エンジン回転速度によらず、クラッチ28が第1ポンプ25とドライブ軸8とを接続し、第1ポンプ25が駆動される。それにより、第2ポンプ26は駆動されず、第1ポンプ25のみによって、冷却水がエンジン3に送られる。
【0055】
第3実施形態では、シフト機構10が駆動状態である場合には、エンジン回転速度に応じて、第1ポンプ25と第2ポンプ26との両方によって冷却水をエンジン3に供給する状態と、第2ポンプ26のみによって冷却水をエンジン3に供給する状態とが、切り替えられる。それにより、エンジン3の冷却のために適切な量の冷却水をエンジン3に供給することができる。また、エンジン3の駆動力の損失が抑えられる。
【0056】
シフト機構10が中立状態である場合には、プロペラ軸9には駆動力が伝達されないが、第1ポンプ25によって、冷却水がエンジン3に送られる。それにより、例えばエンジン3がアイドリング状態である場合でも、エンジン3の冷却のために適切な量の冷却水をエンジン3に供給することができる。
【0057】
図20から図27は、第3実施形態における第1ポンプ25及び第2ポンプ26の配置の例を示す図である。図20から図27に示すように、第3実施形態における第1ポンプ25及び第2ポンプ26の配置の例では、第2ポンプ26は、プロペラ軸9に接続されており、トーピード部13内に配置される。
【0058】
図20は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第15の例を示す。図20に示すように、第15の例では、第1ポンプ25は、クランク軸11の直下に配置される。
【0059】
図21は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第16の例を示す。図21に示すように、第16の例では、第1ポンプ25は、キャビテーションプレート14よりも上方に配置される。
【0060】
図22は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第17の例を示す。図22に示すように、第17の例では、第1ポンプ25は、キャビテーションプレート14よりも下方に配置される。
【0061】
図23は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第18の例を示す。図23に示すように、第18の例では、第6の例と同様に、第1ポンプ25は、中間軸31を介してドライブ軸8に接続されている。第1ポンプ25は、キャビテーションプレート14よりも上方に配置される。
【0062】
図24から図27は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第19~第22の例を示す。図24から図27に示すように、第19~第22の例では、第8の例と同様に、ドライブ軸8は、第1ドライブ軸8Aと第2ドライブ軸8Bとを含む。
【0063】
図24は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第19の例を示す。第19の例では、第1ポンプ25は、クランク軸11の直下に配置されている。
【0064】
図25は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第20の例を示す。第20の例では、第1ポンプ25は、第2ドライブ軸8Bに接続されている。第1ポンプ25は、キャビテーションプレート14よりも上方に配置されている。
【0065】
図26は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第21の例を示す。第21の例では、第1ポンプ25は、第2ドライブ軸8Bに接続されている。第1ポンプ25は、キャビテーションプレート14よりも下方に配置されている。
【0066】
図27は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第22の例を示す。第22の例では、第1ポンプ25は、中間軸31を介して、第1ドライブ軸8Aに接続されている。第1ポンプ25は、キャビテーションプレート14よりも上方に配置されている。
【0067】
図28は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第23の例を示す。第23の例では、第2ポンプ26は、第1クランク軸8Aの下端に接続されている。第23の例の他の構成は、図12に示す第8の例と同様である。
【0068】
図29は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第24の例を示す。第24の例では、第2ポンプ26は、第1クランク軸8Aの下端に接続されている。第24の例の他の構成は、図13に示す第9の例と同様である。
【0069】
図30は、第1ポンプ25と第2ポンプ26との配置の第25の例を示す。第25の例では、第1ポンプ25は、クラッチ28を介して、第1クランク軸8Aの下端に接続されている。第25の例の他の構成は、図24に示す第19の例と同様である。
【0070】
図31は、第4実施形態に係る船外機1の一部を示す側面図である。第4実施形態に係る船外機1は、ツインローテーションプロペラを備える。図31に示すように、船外機1は、第1ドライブ軸102と、第2ドライブ軸103と、第1プロペラ軸104と、第2プロペラ軸105と、シフト機構106と、ギア機構107とを備えている。
【0071】
第1ドライブ軸102は、エンジン3に接続されており、船外機1の上下方向に延びている。第2ドライブ軸103は、第1ドライブ軸102と別体である。第2ドライブ軸103は、第1ドライブ軸102の下方に配置されており、船外機1の上下方向に延びている。第1プロペラ軸104は、船外機1の前後方向に延びている。第2プロペラ軸105は、第1プロペラ軸104の外周側において第1プロペラ軸104と同軸に配置されている。第2プロペラ軸105は、第1プロペラ軸104に対して回転可能である。第1プロペラ軸104には、第1プロペラ108が接続される。第2プロペラ軸105には、第2プロペラ109が接続される。第2プロペラ109のフィンは、第1プロペラ108のフィンと反対の方向に捻られている。
【0072】
シフト機構106は、第1ギア111と、第2ギア112と、第3ギア113と、クラッチ114とを含む。第2ギア112は、第1ドライブ軸102と同軸に配置されている。第1ギア111と、第2ギア112と、第3ギア113とは、例えばベベルギアである。第2ギア112は、第1ドライブ軸102に接続されている。第3ギア113は、第2ドライブ軸103と同軸に配置されている。第3ギア113は、第2ドライブ軸103に対して回転可能である。第1ギア111は、第2ギア112及び第3ギア113の間に配置されており、第2ギア112及び第3ギア113に噛み合っている。
【0073】
クラッチ114は、アクチュエータ115に接続されており、アクチュエータ115によって動作する。クラッチ114は、第2ギア112と第2ドライブ軸103との係合と非係合、及び第3ギア113と第2ドライブ軸103との係合と非係合を切り換える。
【0074】
ギア機構107は、第2ドライブ軸103の回転を所定の回転方向で第1プロペラ軸104に伝達し、第2ドライブ軸103の回転を所定の回転方向と逆方向に第2プロペラ軸105に伝達する。ギア機構107は、第1ギア121と第2ギア122と第3ギア123とを含む。
【0075】
クラッチ114は、シフト機構106を、駆動状態と中立状態とに切り替える。シフト機構106は、駆動状態で、第1ドライブ軸102からの駆動力を第2ドライブ軸103に伝達する。駆動状態は、前進状態と後進状態とを含む。
【0076】
前進状態では、クラッチ114は、第2ギア112と第2ドライブ軸103とを係合させ、第3ギア113と第2ドライブ軸103とを解放させる。それにより、第1ドライブ軸102の回転が、同じ回転方向で第2ドライブ軸103に伝達される。第2ドライブ軸103の回転は、ギア機構107の第1ギア121、第2ギア122、及び第1プロペラ軸104を介して、第1プロペラ108に伝達される。また、第2ドライブ軸103の回転は、ギア機構107の第1ギア121、第3ギア123、及び第2プロペラ軸105を介して、第2プロペラ109に伝達される。それにより、第1プロペラ108と第2プロペラ109とが前進方向に回転する。なお、第1プロペラ108と第2プロペラ109との前進方向は互いに反対の回転方向である。
【0077】
後進状態では、クラッチ114は、第2ギア112と第2ドライブ軸103とを解放させ、第3ギア113と第2ドライブ軸103とを係合させる。それにより、第1ドライブ軸102の回転が、第2ギア112、第1ギア111、及び第3ギア113を介して、第1ドライブ軸102の回転と逆方向で第2ドライブ軸103に伝達される。第2ドライブ軸103の回転は、ギア機構107の第1ギア121、第2ギア122、及び第1プロペラ軸104を介して、第1プロペラ108に伝達される。また、第2ドライブ軸103の回転は、ギア機構107の第1ギア121、第3ギア123、及び第2プロペラ軸105を介して、第2プロペラ109に伝達される。それにより、第1プロペラ108と第2プロペラ109とが後進方向に回転する。
【0078】
中立状態では、クラッチ114は、第2ギア112と第2ドライブ軸103とを解放させ、第3ギア113と第2ドライブ軸103とを解放させる。シフト機構106は、中立状態で、第1ドライブ軸102からの駆動力を第2ドライブ軸103に伝達しない。なお、上記とは逆に、前進状態と後進状態とで、第1プロペラ108と第2プロペラ109との回転方向は上記と逆の方向であってもよい。第4実施形態に係る船外機1の他の構成は、上述した第1実施形態に係る船外機1と同様である。
【0079】
図32は、第4実施形態に係る船外機1の冷却系と駆動系とを示すブロック図である。図32に示すように、第4実施形態では、第1ポンプ25は、クラッチ28を介して、第1ドライブ軸102に接続される。第2ポンプ26は、第2ドライブ軸103に接続される。第1ポンプ25は、容積式のポンプである。第2ポンプ26は、非容積式のポンプである。
【0080】
図31に示すように、例えば、第1ポンプ25は、キャビテーションプレート14よりも上方に配置される。第1ポンプ25は、喫水線L1よりも上方に配置される。第2ポンプ26は、キャビテーションプレート14よりも下方に配置される。第2ポンプ26は、喫水線L1よりも下方に配置される。或いは、第1ポンプ25と第2ポンプ26とは、上述した第1~第25の例のように配置されてもよい。
【0081】
クラッチ28が係合状態である場合には、第1ポンプ25に、エンジン3からの駆動力が、伝達機構4及びクラッチ28を介して、伝達される。それにより、第1ポンプ25は、エンジン3の駆動力によって駆動されることで、冷却水通路16を介してエンジン3に冷却水を送る。クラッチ28が非係合状態である場合には、エンジン3からの駆動力は、第1ポンプ25に伝達されず、第1ポンプ25は駆動されない。
【0082】
第2ポンプ26は、常時、第2ドライブ軸103に接続されている。従って、エンジン3が駆動されおり、且つ、シフト機構106が駆動状態である場合には、エンジン3からの駆動力は、常時、第2ポンプ26に伝達される。それにより、第2ポンプ26は、エンジン3の駆動力によって駆動されることで、冷却水通路16を介してエンジン3に冷却水を送る。
【0083】
ただし、エンジン3が駆動されていても、シフト機構106が中立状態である場合には、エンジン3からの駆動力は、第2ドライブ軸103に伝達されない。従って、シフト機構106が中立状態である場合には、エンジン3が駆動されていても、エンジン3からの駆動力は、第2ポンプ26に伝達されず、第2ポンプ26は駆動されない。
【0084】
第4実施形態では、シフト機構106が駆動状態であり、且つ、エンジン回転速度が低回転域である場合に、クラッチ28が第1ポンプ25と第1ドライブ軸102とを接続し、第1ポンプ25と第2ポンプ26とが駆動される。それにより、第1ポンプ25と第2ポンプ26との両方によって、冷却水がエンジン3に送られる。
【0085】
シフト機構106が駆動状態であり、且つ、エンジン回転速度が高回転域である場合には、クラッチ28が第1ポンプ25と第1ドライブ軸102とを遮断し、第2ポンプ26が駆動される。それにより、第1ポンプ25は駆動されず、第2ポンプ26のみによって、冷却水がエンジン3に送られる。
【0086】
シフト機構106が中立状態である場合には、エンジン回転速度によらず、クラッチ28が第1ポンプ25と第1ドライブ軸102とを接続し、第1ポンプ25が駆動される。それにより、第2ポンプ26は駆動されず、第1ポンプ25のみによって、冷却水がエンジン3に送られる。
【0087】
第4実施形態では、シフト機構106が駆動状態である場合には、エンジン回転速度に応じて、第1ポンプ25と第2ポンプ26との両方によって冷却水をエンジン3に供給する状態と、第2ポンプ26のみによって冷却水をエンジン3に供給する状態とが、切り替えられる。それにより、エンジン3の冷却のために適切な量の冷却水をエンジン3に供給することができる。また、エンジン3の駆動力の損失が抑えられる。
【0088】
シフト機構106が中立状態である場合には、第2ドライブ軸103には駆動力が伝達されないが、第1ポンプ25によって、冷却水がエンジン3に送られる。それにより、例えばエンジン3がアイドリング状態である場合でも、エンジン3の冷却のために適切な量の冷却水をエンジン3に供給することができる。
【0089】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0090】
船外機1の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。冷却水通路16の構成は上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、取水口の数は1つに限らず、2つ以上であってもよい。第1通路22と第2通路23とは、それぞれ別々の取水口に接続されてもよい。第1通路22と第2通路23とは、ポンプ25,26の下流において合流していなくてもよい。すなわち、第1通路22と第2通路23とは、互いに独立してエンジン3のウォータジャケット15に接続されてもよい。
【0091】
上記の実施形態では、エンジン回転速度に応じて、クラッチ28が切り替えられている。しかし、エンジン回転速度に限らず、エンジン3の冷却水温、排気温度、油温などのパラメータに基づいて、クラッチ28が切り替えられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、船外機において、エンジンの冷却のために適切な量の冷却水をエンジン3に供給することができる。
【符号の説明】
【0093】
2:ブラケット、 4:伝達機構、 3:エンジン、 6:アッパケース、 7:ロアケース、 8:ドライブ軸、 8A:第1ドライブ軸、 8B:第2ドライブ軸、 9:プロペラ軸、 10:シフト機構、 16:冷却水通路、 25:第1ポンプ、 26:第2ポンプ、 28:クラッチ
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32