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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165218
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】自立性包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/16 20060101AFI20231108BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B65D30/16 A
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075996
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】小谷 直己
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】岡村 正信
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
【Fターム(参考)】
3E064AA14
3E064AD14
3E064BA22
3E064BA24
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA07
3E064FA04
3E064FA05
3E064FA06
3E064GA02
3E064HN05
3E086AA01
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB51
3E086BB90
(57)【要約】
【課題】信頼性よく、落下時の衝撃による底材からの内容物の漏出を抑制可能な自立性包装袋御及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】自立性包装袋は、互いに立設する一対の本体部と、一対の本体部のそれぞれに接着される底材とを備え、一対の本体部及び底材によって封止空間が画成される。底材は、外側シート部材、外側シート部材と封止空間との間に位置する内側シート部材、及び、外側シート部材と前記内側シート部材との間に位置する中間体を有し、外側シート部材は、基材層、及び、基材層と内側シート部材との間に位置するシーラント層を有し、底材の縁領域では、シーラント層と内側シート部材とは、互いに一体化されると共に一対の本体部のいずれかに接着され、底材において縁領域に囲われる主領域において、外側シート部材と内側シート部材とは、中間体を介して互いに分離可能に一体化する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに立設する一対の本体部と、前記一対の本体部のそれぞれに接着される底材とを備え、前記一対の本体部及び前記底材によって封止空間が画成される自立性包装袋であって、
前記底材は、外側シート部材、前記外側シート部材と前記封止空間との間に位置する内側シート部材、及び、前記外側シート部材と前記内側シート部材との間に位置する中間体を有し、
前記外側シート部材は、基材層、及び、前記基材層と前記内側シート部材との間に位置するシーラント層を有し、
前記底材の縁領域では、前記シーラント層と前記内側シート部材とは、互いに一体化されると共に前記一対の本体部のいずれかに接着され、
前記底材において前記縁領域に囲われる主領域において、前記外側シート部材と前記内側シート部材とは、前記中間体を介して互いに分離可能に一体化する、
自立性包装袋。
【請求項2】
前記中間体は、前記底材の厚さ方向から見て点状に設けられる、請求項1に記載の自立性包装袋。
【請求項3】
前記中間体は、前記シーラント層を覆う接着部分と、前記接着部分上において点状に設けられる非接着性コート部分とを有する、請求項1に記載の自立性包装袋。
【請求項4】
前記基材層の弾性率は、前記内側シート部材の弾性率よりも高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の自立性包装袋。
【請求項5】
前記基材層は、高密度ポリエチレンの成形体であり、
前記内側シート部材は、低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレンの成形体である、請求項4に記載の自立性包装袋。
【請求項6】
外側シート部材、前記外側シート部材上に位置する中間体、及び前記中間体上に位置する内側シート部材を有する底材であって、前記外側シート部材と前記内側シート部材とが前記中間体を介して互いに分離可能に一体化している前記底材を準備する第1工程と、
二つ折りにした前記底材を、一対の本体部の間に配置する第2工程と、
前記底材の縁領域と前記一対の本体部のそれぞれの一部とを接着すると共に、前記一対の本体部のそれぞれの別の一部を接着する第3工程と、
前記一対の本体部及び前記底材によって画成される空間に被包装物を収容する第4工程と、
前記空間を封止する第5工程と、を備える、
自立性包装袋の製造方法。
【請求項7】
前記外側シート部材は、基材層と、前記基材層上に位置するシーラント層とを有し、
前記第1工程では、互いに一体化された前記シーラント層と前記中間体と前記内側シート部材との積層体が、前記基材層に固定される、請求項6に記載の自立性包装袋の製造方法。
【請求項8】
前記積層体は、共押出法によって形成される、請求項7に記載の自立性包装袋の製造方法。
【請求項9】
前記第3工程後、
前記底材の縁領域では、前記シーラント層と前記内側シート部材と前記中間体とは、互いに一体化し、
前記底材の前記縁領域に囲われる主領域において、前記シーラント層と前記内側シート部材とは、前記中間体を介して互いに分離可能に一体化する、請求項7または8に記載の自立性包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立性包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スタンディングパウチ等の自立性包装袋の利用が広がっている。例えば、下記特許文献1には、内容物の漏出への対策を図るため、底部をW折りし両側部を貼合してなる自立性袋であって胴部及び底部のうち少なくともいずれか一方を二重構造としたことを特徴とする自立性包装袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭57-80435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような二重構造の包装袋を製造するとき、外袋と内袋とが互いにずれてしまうことなどがある。この場合、製袋不良が発生しやすい問題がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面に係る目的は、信頼性よく、落下時の衝撃による底材からの内容物の漏出を抑制可能な自立性包装袋御及びその製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る自立性包装袋は、互いに立設する一対の本体部と、一対の本体部のそれぞれに接着される底材とを備え、一対の本体部及び底材によって封止空間が画成される自立性包装袋であって、底材は、外側シート部材、外側シート部材と封止空間との間に位置する内側シート部材、及び、外側シート部材と内側シート部材との間に位置する中間体を有し、外側シート部材は、基材層、及び、基材層と内側シート部材との間に位置するシーラント層を有し、底材の縁領域では、シーラント層と内側シート部材とは、互いに一体化されると共に一対の本体部のいずれかに接着され、底材において縁領域に囲われる主領域において、外側シート部材と内側シート部材とは、中間体を介して互いに分離可能に一体化する。
【0007】
上記自立性包装袋によれば、底材の外側シート部材と内側シート部材とは、中間体を介して互いに分離可能に一体化している。これにより、自立性包装袋の製造中、外側シート部材と内側シート部材とのずれなどが発生しにくくなる。このため、信頼性よく自立性包装袋を製造できる。また、仮に外側シート部材に破損が生じた場合であっても、内側シート部材の存在により、底材からの内容物の漏出を防止できる。加えて、底材に衝撃が加わったとき、主領域にて外側シート部材と内側シート部材とが互いに分離することによって、外側シート部材から内側シート部材へ衝撃が伝搬しにくくなる。このため、底材に衝撃が加わった場合、外側シート部材と内側シート部材との両方が同時に破損しにくい。したがって、本発明の一側面に係る自立性包装袋によれば、信頼性よく、落下時の衝撃による底材からの内容物の漏出を抑制可能である。
【0008】
中間体は、底材の厚さ方向から見て点状に設けられてもよい。この場合、底材に衝撃が加わった場合、外側シート部材と内側シート部材とが互いに分離しやすいので、内側シート部材が良好に破損しにくい。
【0009】
中間体は、シーラント層を覆う接着部分と、接着部分上において点状に設けられる非接着性コート部分とを有してもよい。この場合、底材に衝撃が加わった場合、外側シート部材と内側シート部材とが互いに分離しやすいので、内側シート部材が良好に破損しにくい。
【0010】
基材層の弾性率は、内側シート部材の弾性率よりも高くてもよい。この場合、基材層と内側シート部材とが互いに異なる性能を示し得る。
【0011】
基材層は、高密度ポリエチレンの成形体であり、内側シート部材は、低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレンの成形体でもよい。この場合、外側シート部材の耐熱性を向上できるので、自立性包装袋の製造時における基材層の熱による破損を抑制できる。加えて、内側シート部材のシール性を向上できる。
【0012】
本発明の別の一側面に係る自立性包装袋の製造方法は、外側シート部材、外側シート部材上に位置する中間体、及び中間体上に位置する内側シート部材を有する底材であって、外側シート部材と内側シート部材とが中間体を介して互いに分離可能に一体化している底材を準備する第1工程と、二つ折りにした底材を、一対の本体部の間に配置する第2工程と、底材の縁領域と一対の本体部のそれぞれの一部とを接着すると共に、一対の本体部のそれぞれの別の一部を接着する第3工程と、一対の本体部及び底材によって画成される空間に被包装物を収容する第4工程と、空間を封止する第5工程と、を備える。
【0013】
上記製造方法によれば、第1工程にて、底材の外側シート部材と内側シート部材とは、中間体を介して互いに分離可能に一体化している。これにより、第2工程以降にて、外側シート部材と内側シート部材とのずれなどが発生しにくくなる。このため、信頼性よく自立性包装袋を製造できる。また、仮に外側シート部材に破損が生じた場合であっても、内側シート部材の存在により、底材からの内容物の漏出を防止できる。加えて、底材に衝撃が加わったとき、外側シート部材と内側シート部材とが互いに分離することで、外側シート部材から内側シート部材へ衝撃が伝搬しにくくなる。このため、底材に衝撃が加わった場合、外側シート部材と内側シート部材との両方が同時に破損しにくい。したがって、本発明の一側面に係る自立性包装袋の製造方法の実施によって、信頼性よく、落下時の衝撃による底材からの内容物の漏出を抑制可能である。
【0014】
外側シート部材は、基材層と、基材層上に位置するシーラント層とを有し、第1工程では、互いに一体化されたシーラント層と中間体と内側シート部材との積層体が、基材層に固定されてもよい。また、積層体は、共押出法によって形成されてもよい。
【0015】
第3工程後、底材の縁領域では、シーラント層と内側シート部材と中間体とは、互いに一体化し、底材の縁領域に囲われる主領域において、シーラント層と内側シート部材とは、中間体を介して互いに分離可能に一体化してもよい。この場合、底材に衝撃が加わったとき、主領域における外側シート部材と内側シート部材とが互いに分離することで、外側シート部材から内側シート部材へ衝撃が伝搬しにくくなる。このため、底材に衝撃が加わった場合、主領域において外側シート部材と内側シート部材との両方が同時に破損しにくい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、信頼性よく、落下時の衝撃による底材からの内容物の漏出を抑制可能な自立性包装袋御及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係るスタンディングパウチの概略正面図である。
図2図2(a)は、図1のIIa-IIa線に沿った断面図であり、図2(b)は、図1のIIb-IIb線に沿った断面図である。
図3図3(a)は、一実施形態に係るスタンディングパウチの第2状態の概略斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb面に沿った断面図である。
図4図4は、実施形態に係るスタンディングパウチの構成要素を模式的に示す分解斜視図である。
図5図5(a),(b)は、第1工程を説明するための図である。
図6図6(a)は、第1変形例に係る底材の概略断面図であり、図6(b)は、第2変形例に係る底材の概略断面図である。
図7図7は、第3変形例に係るスタンディングパウチの要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、場合により図面を参照して、本発明の一側面に係る実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明の一側面を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0019】
<スタンディングパウチ>
図1は、実施形態に係るスタンディングパウチの概略正面図である。図2(a)は、図1のIIa-IIa線に沿った断面図であり、図2(b)は、図1のIIb-IIb線に沿った断面図である。図3(a)は、一実施形態に係るスタンディングパウチの第2状態の概略斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb面に沿った断面図である。図4は、実施形態に係るスタンディングパウチの構成要素を模式的に示す分解斜視図である。
【0020】
図1図4に示されるように、スタンディングパウチ10は、例えば、液体、ゲル、粉体などの内容物を密封する自立性包装袋である。図1及び図2(a),(b)に示されるスタンディングパウチ10の第1状態は、畳まれていて自立性を示さない状態である。一方、図3(a),(b)に示されるスタンディングパウチ10の第2状態は、自立性を示す状態である。
【0021】
スタンディングパウチ10は、互いに立設する一対の本体部1,2と、本体部1,2のそれぞれに接着される底材3とを備え、本体部1,2及び底材3によって封止空間Sが画成される。図4に示されるように、本体部1,2のそれぞれは、互いに異なるシートであるが、これに限られない。例えば、本体部1は、1枚のシートを二つ折りしたときの半分に相当し、本体部2は当該シートの別の半分に相当してもよい。底材3は、1枚のシートの二つ折り体であり、本体部1,2によって挟まれる。本実施形態では、本体部1,2と、底材3とは、互いにヒートシールされている。以下では、図1における横方向(すなわち、スタンディングパウチ10の正面視における横方向)を左右方向とし、縦方向を上下方向と呼称することがある。
【0022】
図1において、スタンディングパウチ10の側部10a,10bのそれぞれは、サイドシール部5で構成されている。各サイドシール部5は、一対の本体部1,2同士をヒートシールした部分であり、上下方向に延在する。サイドシール部5は、封止空間Sを画成する部分の一部として機能する。スタンディングパウチ10の下方において、サイドシール部5は、一対の本体部1,2と、底材3の一部とをヒートシールする。サイドシール部5の幅は、例えば、5~18mmであり、7~15mmであってもよい。サイドシール部5の幅が5mm以上であることで十分なシール強度を達成できる傾向があり、サイドシール部5の幅が18mm以下であることでスタンディングパウチ10の十分な内容量を確保しやすい傾向がある。
【0023】
側部10a,10bのそれぞれの下方には、融着部9が設けられる。本実施形態においては、側部10a,10bのそれぞれに、二つの融着部9が上下に並んで形成される。融着部9は、本体部1,2を互いに接合する部分である。融着部9は、底材3に設けられた切り欠き部8a,8b(図4を参照)を通じて、本体部1,2が局所的に融着している部分である。図3に示されるように、切り欠き部8a,8bは、底材3の折り目3aと底辺3d,3dとの間の領域であって、底材3の側部に設けられている。切り欠き部8a,8bのそれぞれは、底材3に4つずつ設けられる。融着部9が設けられていることで、スタンディングパウチ10の自立性及び落下耐性をより一層向上させることができる。なお、ここでは、側部10a,10bのそれぞれに二つの融着部9が設けられる場合を例示したが、これに限られない。例えば、側部10a,10bのそれぞれには、一つの融着部9が設けられてもよい。
【0024】
図1において、スタンディングパウチ10の底部10cは、ボトムシール部6で構成されている。ボトムシール部6は、本体部1,2と、底材3の別の一部とをヒートシールした部分である。ボトムシール部6は、封止空間Sの底面が曲面をなすように形成される。例えば、図1に示されるように、ボトムシール部6の上辺6aは、下方に突出する半円状の凹部をなしている。底材3のうちサイドシール部5及びボトムシール部6を含まない部分は、正面視にて略半円形状を呈する。
【0025】
本実施形態では、図3(b)に示されるように、サイドシール部5に含まれる底材3の一部と、ボトムシール部6に含まれる底材3の別の一部とは、底材3の縁領域ERに含まれる。縁領域ERでは、底材3は、本体部1,2のいずれかに接着される。加えて、底材3において縁領域ERに囲われる部分は、底材3の主領域MRに相当する。主領域MRは、スタンディングパウチ10の底として機能し、封止空間Sの一部を画成する。
【0026】
スタンディングパウチ10は、モノマテリアル化が実現された包装袋である。本明細書では、包装袋が実質的に単一の材料(モノマテリアル)から形成される場合、当該包装袋のモノマテリアル化が実現されたとみなせる。本実施形態では、包装袋に含まれる特定の材料の質量比率が90質量%以上である場合、当該包装袋が実質的に単一の材料(モノマテリアル)から形成されるとみなされる。本実施形態では、リサイクル適正の観点から、スタンディングパウチ10は、実質的にポリオレフィン樹脂から形成される。スタンディングパウチ10のモノマテリアル化をより高度に達成する観点から、スタンディングパウチ10に含まれるポリオレフィン樹脂の質量比率は、92.5質量%以上でもよいし、95質量%以上でもよい。換言すると、スタンディングパウチ10の全質量に対する、ポリオレフィン樹脂以外の(これら主たるフィルム以外の)成分の合計質量の比率は、10質量%以下とすることができ、7.5質量%以下であってよく、5.0質量%以下であってよい。
【0027】
ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプリピレン樹脂などである。ポリエチレン樹脂は、石油由来のものに限定されず、その一部又は全部が生物由来の樹脂材料(例えば、バイオマス由来のエチレンを原材料に用いたバイオマスポリエチレン)であってもよい。バイオマス由来のポリエチレン樹脂の製造方法は、例えば、特表2010-511634号公報に開示されている。ポリエチレン樹脂は、市販のバイオマスポリエチレン(ブラスケム社製グリーンPE等)を含んでもよく、使用済みのポリエチレン製品、ポリエチレン製品の製造過程で発生した樹脂(いわゆるバリ)等を原料とするメカニカルリサイクルポリエチレン、原料まで分解し再合成したケミカルリサイクルポリエチレンなどを含んでもよい。ポリエチレン樹脂は、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等を含んでもよく、これらのブレンドであってもよい。VLDPEの密度は、例えば、0.90g/cm以上0.909g/cm以下であるが、これに限られない。LDPE及びLLDPEの密度は、例えば、0.91g/cm以上0.925g/cm以下であるが、これに限られない。MDPEの密度は、例えば、0.926g/cm以上0.929g/cm以上であるが、これに限られない。HDPEの密度は、例えば、0.93g/cm以上0.98g/cm以下であるが、これに限られない。
【0028】
ポリプロピレン樹脂は、石油由来のものに限定されず、その一部又は全部が生物由来の樹脂材料(例えば、バイオマス由来のエチレンを原材料に用いたバイオマスポリプロピレン)であってもよい。バイオマス由来のポリプロピレン樹脂は、バイオマス由来のナフサを原料にエチレンクラッカーで分解されたバイオプロピレンから重合されたバイオポリプロピレン、バイオマス由来のエチレン、イソプロパノール等から合成されたバイオプロピレンから重合されたバイオポリプロピレンなどが挙げられる。ポリプロピレン樹脂は、市販のバイオマスポリプロピレン(岩谷産業株式会社製等)を含んでもよく、使用済みのポリプロピレン製品、ポリプロピレン製品の製造過程で発生した樹脂(いわゆるバリ)等を原料とするメカニカルリサイクルポリプロピレン、原料まで分解し再合成したケミカルリサイクルポリプロピレンなどを含んでもよい。ポリオレフィン樹脂は、リサイクルの妨げにならない程度のコポリマー、ターポリマーを含んでいてもよい。
【0029】
<積層体>
本実施形態では、一対の本体部1,2のそれぞれは積層構造体20であり、底材3は積層構造体30である。本実施形態では、モノマテリアル化の実現、及び、樹脂再生の容易化などの観点上から、積層構造体20,30のそれぞれにおけるポリオレフィン樹脂の含有量は、90質量%以上である。このため、積層構造体20,30のそれぞれは、実質的に単一の材料(モノマテリアル)から形成されるとみなせる。積層構造体20,30におけるポリオレフィン樹脂の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を使用して測定できる。
【0030】
図2(a),(b)及び図3(b)に示されるように、積層構造体20は、第1基材層21と、第1基材層21よりも封止空間Sの近くに位置する第1シーラント層22とを有する。このため、スタンディングパウチ10において、第1基材層21は、第1シーラント層22よりも外側に位置する。
【0031】
第1基材層21は、スタンディングパウチ10の外装部分として機能する層状部分である。第1基材層21は、ポリオレフィン樹脂の成形体である。第1基材層21におけるポリエチレン樹脂の質量が、第1基材層21の全質量を基準として、50質量%を超える場合、第1基材層21は、ポリオレフィン樹脂の成形体とみなせる。すなわち、第1基材層21がポリオレフィン樹脂の成形体である場合、当該成形体にはポリオレフィン樹脂以外の成分が含まれ得る。第1基材層21におけるポリエチレン樹脂の質量は、第1基材層21の全質量を基準として、70質量%以上でもよいし、80質量%以上でもよいし、90質量%以上でもよいし、92.5質量%以上でもよいし、95質量%以上でもよい。本実施形態では、耐熱性などの観点から、第1基材層21は、高密度ポリエチレンの成形体である。後述するように、当該成形体には、高密度ポリエチレン以外の成分が含まれ得る。
【0032】
第1基材層21の融点は、ヒートシール時における第1基材層21の溶融抑制の観点から、第1シーラント層の融点よりも高い。例えば、第1基材層21の融点は、第1シーラント層22の融点より20℃以上高くてもよく、25℃以上高くてもよく、30℃以上高くてもよい。第1基材層21の融点は、例えば、120℃以上、又は125℃以上である。すなわち、第1基材層21は、融点が120℃以上のポリオレフィン樹脂で構成されていてもよく、融点が125℃以上のポリオレフィン樹脂で構成されていてもよい。第1基材層21の融点は、例えば、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
【0033】
第1基材層21は、未延伸のフィルムであってもよい。第1基材層21が未延伸のフィルムであることで、第1基材層21内における樹脂の配向性がほとんどない。これにより、第1基材層21は、引っ張り力などの外部応力に対して伸びやすく、破断しにくい。第1基材層21は、単層構造でもよいし、複層構造でもよい。第1基材層21の厚さは、例えば、5μm以上200μm以下である。
【0034】
第1基材層21は、ポリオレフィン樹脂とは異なるその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、生分解性の樹脂材料(例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉等)などが挙げられる。第1基材層21は、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤等の添加剤を含んでもよい。第1基材層21におけるポリエチレン樹脂以外の成分の質量は、例えば、第1基材層21の全質量を基準として、0~15質量%、又は0~10質量%である。
【0035】
第1シーラント層22は、本体部1,2同士をヒートシールするための層状部分であって、本体部1,2と底材3とをヒートシールするための層状部分である。第1シーラント層22は、第1基材層21と同様に、ポリオレフィン樹脂の成形体である。すなわち、第1シーラント層22がポリオレフィン樹脂の成形体である場合、当該成形体にはポリオレフィン樹脂以外の成分が含まれ得る。第1シーラント層22におけるポリエチレン樹脂の質量は、第1シーラント層22の全質量を基準として、70質量%以上でもよいし、80質量%以上でもよいし、90質量%以上でもよいし、92.5質量%以上でもよいし、95質量%以上でもよい。本実施形態では、ヒートシール性などの観点から、第1シーラント層22は、低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレンの成形体である。後述するように、当該成形体には、低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレン以外の成分が含まれ得る。
【0036】
第1シーラント層22の融点は、第1基材層21の融点よりも低い。第1シーラント層22の融点は、例えば、第1基材層21の融点より20℃以上低くてもよく、25℃以上低くてもよく、30℃以上低くてもよい。第1シーラント層22の融点は、120℃以下、又は110℃以下であってもよい。第1シーラント層22の融点は、95℃以上でもよい。すなわち、第1シーラント層22は、融点が120℃以下のポリエチレン樹脂で構成されていてもよく、融点が110℃以下のポリエチレン樹脂で構成されてもよい。第1シーラント層22の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定できる。
【0037】
第1シーラント層22は、ポリオレフィン樹脂以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、生分解性の樹脂材料(例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉等)などが挙げられる。第1シーラント層22は、酸化防止剤、スリップ剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、光安定剤、脱水剤、粘着付与剤、結晶核剤、可塑剤等の添加剤を含んでもよい。第1シーラント層22におけるポリエチレン樹脂以外の成分の質量は、例えば、第1シーラント層22の全質量を基準として、0~15質量%、又は0~10質量%である。
【0038】
第1シーラント層22の厚さは、例えば、20μm以上250μm以下である。ヒートシール性の観点から、第1シーラント層22の厚さは、40μm以上でもよい。第1シーラント層22の弾性率は、第1基材層21の弾性率よりも低い。換言すると、第1基材層21の弾性率は、第1シーラント層22の弾性率よりも高い。
【0039】
積層構造体20は、第1基材層21と第1シーラント層22との間に位置する接着層(不図示)を更に含んでもよい。接着層を形成する接着剤は、接着方法に合わせて選定することができるが、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等を用いることができる。このような接着層を設けることで、第1基材層21と第1シーラント層22との密着性を高くしてデラミネーションしにくくなる。このため、積層構造体20の耐圧性及び耐衝撃性がより向上する。接着層は、塩素を含まなくてもよい。この場合、接着層を形成する接着剤、リサイクル後の再生樹脂等の着色、及び加熱処理による臭いの発生を抑制できる。接着層は、環境配慮の観点から、バイオマス材料で形成されていてもよく、溶剤を含まなくてもよい。
【0040】
積層構造体20は、例えば、水蒸気及び酸素に対するガスバリア性向上の観点から、ガスバリア層を更に含んでもよい。ガスバリア層は、第1基材層21と第1シーラント層22との間に設けられてもよく、第1基材層21の第1シーラント層22とは反対側の面に設けられてもよい。積層構造体20がガスバリア層を含むことで、内容物の水蒸気及び酸素による劣化を抑制し、長期的に品質を保持しやすくなる。ガスバリア層の破損抑制の観点から、ガスバリア層は、第1基材層21と第1シーラント層22との間に設けられてもよい。
【0041】
ガスバリア層の一例として、無機酸化物の蒸着層が挙げられる。無機酸化物の蒸着層を用いることにより、積層構造体20のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、及び酸化錫が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてもよい。無機酸化物の蒸着層の厚さは、例えば、5~100nm、又は10~50nmであってもよい。無機酸化物の蒸着層の厚さが5nm以上であることで優れたバリア性を得やすく、無機酸化物の蒸着層の厚さが100nm以下であることで積層体の可撓性を維持しいやすい。蒸着層は、例えば、物理気相成長法、化学気相成長法等によって形成することができる。
【0042】
積層構造体20は、ガスバリア層として、無機酸化物の蒸着層に代えて、又は無機酸化物の蒸着層に加えて、金属蒸着層を含んでもよい。金属蒸着層としては、防湿性、延展性等の加工性及びコスト等の観点から、例えばアルミニウム層などを用いることができる。金属蒸着層の厚さは、5~100nm、又は10~50nmであってもよい。
【0043】
積層構造体20は、第1基材層21と第1シーラント層22との間にアンカーコート層を更に備えてもよい。アンカーコート層は、アンカーコート剤を用いて形成することができる。アンカーコート剤としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。アンカーコート剤としては、耐熱性及び層間接着強度の観点から、アクリルウレタン系樹脂及びポリエステル系ポリウレタン樹脂の少なくとも一方であってもよい。アンカーコート層は、積層構造体20のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層であればよい。
【0044】
積層構造体20は、印刷層を更に含んでもよい。印刷層は、第1基材層21と第1シーラント層22との間に設けられてもよく、第1基材層21の第1シーラント層22とは反対側の面に設けられてもよい。印刷層は、印刷層の再溶融時に着色すること、及び臭いが発生することを抑制する観点から、塩素を含まなくてもよい。印刷層は、環境配慮の観点、バイオマス材料により形成されていてもよい。
【0045】
図2(a),(b)及び図3に示されるように、積層構造体30は、外側シート部材31と、外側シート部材31よりも封止空間Sの近くに位置する内側シート部材32と、第1シート部材と第2シート部材との間に位置する中間体33とを有する。
【0046】
外側シート部材31は、底材3の外面を含むと共に底材3の主要部として機能する層状部材である。外側シート部材31は、第2基材層34、及び、第2基材層34と内側シート部材32との間に位置する第2シーラント層35を有する。第2基材層34は、第1基材層21と同様に、スタンディングパウチ10の外装部分として機能する層状部分であり、ポリオレフィン樹脂の成形体である。第2基材層34に含まれる材料、特性などは、第1基材層21と同様である。このため本明細書では、第1基材層21の説明を第2基材層34に適用できる。本実施形態では、第2基材層34は、高密度ポリエチレンの成形体である。
【0047】
第2シーラント層35は、本体部1,2と底材3とをヒートシールするための層状部分である。第2シーラント層35に含まれる材料、特性などは、第1シーラント層22と同様である。このため本明細書では、第1シーラント層22の説明を第2シーラント層35に適用できる。本実施形態では、第2シーラント層35は、低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレンの成形体である。第2基材層34の弾性率は、第2シーラント層35の弾性率よりも高い。換言すると、第2シーラント層35の弾性率は、第2基材層34の弾性率よりも低い。
【0048】
内側シート部材32は、底材3の内面を含む部材であり、第1基材層21などと同様に、ポリオレフィン樹脂の成形体である。すなわち、第1シーラント層22がポリオレフィン樹脂の成形体である場合、当該成形体にはポリオレフィン樹脂以外の成分が含まれ得る。第1シーラント層22と第2シーラント層35とのヒートシールの阻害抑制などの観点から、内側シート部材32は、低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレンの成形体である。この場合、第1シーラント層22と第2シーラント層35とがヒートシールされる箇所にて、第1シーラント層22と、第2シーラント層35と、内側シート部材32とが互いにヒートシールされる。
【0049】
内側シート部材32の融点は、第1シーラント層22と同様である。また、内側シート部材32は、第1シーラント層22と同様に、ポリオレフィン樹脂以外のその他の成分、添加剤を含んでもよい。その他の成分、添加剤としては、第1シーラント層22に含まれ得るその他の成分、添加剤と同様である。内側シート部材32におけるポリエチレン樹脂以外の成分の質量は、例えば、内側シート部材32の全質量を基準として、0~15質量%、又は0~10質量%である。
【0050】
内側シート部材32の厚さは、例えば、30μm以上200μm以下である。衝撃などに対する内側シート部材32の破損抑制などの観点から、内側シート部材32の厚さは、50μm以上でもよい。縁領域ERにおけるヒートシール性の観点から、内側シート部材32の厚さは、100μm以下でもよい。内側シート部材32の弾性率は、第2基材層34の弾性率よりも低い。換言すると、第2基材層34の弾性率は、内側シート部材32の弾性率よりも高い。
【0051】
中間体33は、外側シート部材31と内側シート部材32とを仮固定するための層状部材である。図3(b)に示されるように、底材3の縁領域ERでは、第2シーラント層35と内側シート部材32と中間体33とは、互いに一体化されると共に第1シーラント層22に接着される。本実施形態では、縁領域ERにおいて、第1シーラント層22と、第2シーラント層35と、内側シート部材32と、中間体33とがヒートシールされることによって、各層が互いに強固に接合される。一方、底材3の主領域MRにおいて、外側シート部材31と内側シート部材32とは、中間体33を介して互いに分離可能に一体化する。すなわち、主領域MRにおいては、外側シート部材31と内側シート部材32とのそれぞれの全面は、中間体33に対して離間可能である。本実施形態では、主領域MRにおいて、内側シート部材32と中間体33、及び、中間体33と第2シーラント層35とのそれぞれは、互いにヒートシールされていない。このため、主領域MRにおける内側シート部材32と中間体33との接着力、及び、中間体33と第2シーラント層35との接着力のそれぞれは、縁領域ERにおける内側シート部材32と中間体33と第2シーラント層35との接着力と比較して、顕著に小さい。主領域MRにおける内側シート部材32と中間体33との接着力、及び、中間体33と第2シーラント層35との接着力のそれぞれは、例えば10gf/15mm以上100gf/15mm以下である。この場合、例えば、スタンディングパウチ10の落下等によって底材3に衝撃が加わるとき、主領域MRにおける内側シート部材32と中間体33との分離、及び/又は、中間体33と第2シーラント層35との分離が容易に発生し得る。例えば、主領域MRにおいて、外側シート部材31(第2シーラント層35)と中間体33とは、互いにブロッキングされてもよいし、内側シート部材32と中間体33とは、互いにブロッキングされてもよい。
【0052】
中間体33は、例えば、内側シート部材32と同様に、ポリオレフィン樹脂の成形体である。すなわち、中間体33がポリオレフィン樹脂の成形体である場合、当該成形体にはポリオレフィン樹脂以外の成分が含まれ得る。第1シーラント層22と第2シーラント層35と内側シート部材32とのヒートシールの阻害抑制などの観点から、中間体33は、低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレンの成形体である。この場合、第1シーラント層22と第2シーラント層35とがヒートシールされる箇所にて、第1シーラント層22と、第2シーラント層35と、内側シート部材32と、中間体33とが互いにヒートシールされる。中間体33の特性(例えば、融点、厚さ、弾性率など)は、内側シート部材32と同様である。このため本明細書では、内側シート部材32の説明を中間体33に適用できる。
【0053】
図3(b)において、縁領域ERにおける第1シーラント層22と内側シート部材32との境界、内側シート部材32と中間体33との境界、及び、中間体33と第2シーラント層35との境界のそれぞれは、二点鎖線にて示される。加えて、主領域MRにおける、内側シート部材32と中間体33との境界、及び、中間体33と第2シーラント層35との境界のそれぞれは、一点鎖線にて示される。すなわち、各図においてヒートシールされて一体化された2以上の構成要素の境界が二点鎖線にて示され、各図において互いに分離可能に一体化された2つの構成要素の境界が一点鎖線にて示される。
【0054】
積層構造体30は、積層構造体20と同様に、上記接着層、上記ガスバリア層、上記アンカーコート層、及び上記印刷層の少なくとも一を含み得る。
【0055】
次に、本実施形態に係るスタンディングパウチ10の製造方法の一例について説明する。
【0056】
まず、外側シート部材31、中間体33、内側シート部材32を有する底材3であって、外側シート部材31と内側シート部材32とが中間体33を介して互いに分離可能に一体化している底材3を準備する(第1工程)。第1工程では、まず、図5(a)に示されるように、順に積層される第2シーラント層35と中間体33と内側シート部材32との積層体40を形成する。積層体40は、例えば共押出法によって形成され、第2シーラント層35と中間体33と内側シート部材32とは互いに分離可能に一体化されている。積層体40における第2シーラント層35の表面には、コロナ放電処理等の表面処理が実施されてもよい。続いて、図5(b)に示されるように、積層体40を第2基材層34に固定することによって、底材3を形成する。例えば、第2基材層34の片面に接着剤を塗布した後、当該片面と積層体40とを互いに圧着する。このとき、上記片面と表面処理が施された第2シーラント層35とを圧着する。そして、所定の条件にて上記接着剤を硬化させることによって、積層体40が第2基材層34に固定される。
【0057】
次に、二つ折りにした底材3を、一対の本体部1,2の間に配置する(第2工程)。第2工程では、まず、第2基材層34が内側に位置するように(すなわち、内側シート部材32が外側に位置するように)、底材3を二つ折りにする。続いて、当該底材3を一対の本体部1,2の間に搬送する。
【0058】
次に、底材3の縁領域ERと一対の本体部1,2のそれぞれの一部とを接着すると共に、一対の本体部1,2のそれぞれの別の一部を接着する(第3工程)。第3工程では、上記一部と上記別の一部とのそれぞれを、所定条件にてヒートシールする。これにより、図1に示されるサイドシール部5及びボトムシール部6を形成する。第3工程にて、底材3の主領域MRには、ヒートシールなどは実施されない。このため、第3工程後、底材3の縁領域ERでは、第2シーラント層35と内側シート部材32と中間体33とは、互いに強固に密着する。一方、底材3の主領域MRでは、第2シーラント層35と内側シート部材32とは、中間体33を介して互いに分離可能に一体化している。
【0059】
次に、一対の本体部1,2及び底材3によって画成される空間に被包装物を収容する(第4工程)。第4工程では、後に封止空間Sとなる空間に被包装物を収容する。被包装物は、例えば、本体部1,2において封止されていない部分(例えば、スタンディングパウチ10の上端部)を介して上記空間に収容される。そして、上記空間を封止する(第5工程)。以上により、内容物が密封されるスタンディングパウチ10が製造される。
【0060】
以上に説明した本実施形態に係るスタンディングパウチ10の作用効果について、以下に説明する比較例を用いながら説明する。比較例に係るスタンディングパウチの底材には、中間体が含まれていない。このため、比較例における底材にでは、外側シート部材と内側シート部材とは、互いに一体化していない。よって、比較例においては、底材の搬送中に外側シート部材と内側シート部材とが互いにずれてしまうことがある。この場合、底材と本体部との接着不良などが生じやすく、不良品が製造される可能性が高くなってしまう。
【0061】
これに対して、本実施形態に係る製造方法によって製造されるスタンディングパウチ10によれば、底材3の外側シート部材31と内側シート部材32とは、中間体33を介して互いに分離可能に一体化している。これにより、スタンディングパウチ10の製造中、外側シート部材31と内側シート部材32とのずれなどが発生しにくくなる。このため、信頼性よくスタンディングパウチ10を製造できる。また、仮に外側シート部材31に破損が生じた場合であっても、内側シート部材32の存在により、底材3からの内容物の漏出を防止できる。加えて、底材3に衝撃が加わったとき、主領域MRにて外側シート部材31と内側シート部材32とが互いに分離することによって、外側シート部材31から内側シート部材32へ衝撃が伝搬しにくくなる。このため、底材3に衝撃が加わった場合、外側シート部材31と内側シート部材32との両方が同時に破損しにくい。したがって、本実施形態に係るスタンディングパウチ10によれば、信頼性よく、落下時の衝撃による底材3からの内容物の漏出を抑制可能である。
【0062】
さらに、本実施形態では、積層構造体20,30のそれぞれにおけるポリオレフィン樹脂の含有量は、90質量%以上であるので、スタンディングパウチ10は、モノマテリアル化が実現された包装袋である。
【0063】
本実施形態では、第2基材層34の弾性率は、内側シート部材32の弾性率よりも高い。このため、第2基材層34を含む外側シート部材31と、内側シート部材32とが互いに異なる性能を示し得る。これにより、複数の特性を有する底材3を形成できる。
【0064】
本実施形態では、第2基材層34は、高密度ポリエチレンの成形体であり、内側シート部材32は、低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレンの成形体ある。このため、外側シート部材31の耐熱性を向上できるので、スタンディングパウチ10の製造時における第2基材層34の熱による破損を抑制できる。加えて、内側シート部材32のシール性を向上できる。
【0065】
次に、図6(a),(b)及び図7を参照しながら、上記実施形態の変形例について説明する。以下では、上記実施形態と重複する記載は省略し、上記実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、変形例に上記実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0066】
図6(a)は、第1変形例に係る底材の概略断面図である。図6(a)に示されるように、底材3Aの積層体40Aにおいて、中間体33Aは、底材3Aの厚さ方向から見て点状に設けられる。中間体33Aは、上記厚さ方向から見て不規則に設けられてもよいし、上記厚さ方向から見て規則的に設けられてもよい。中間体33Aに起因する接着力の偏重抑制などの観点から、中間体33Aは、上記厚さ方向から見て規則的に設けられてもよい。
【0067】
以上に説明する第1変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が発揮される。加えて、上記実施形態と比較して、外側シート部材31と中間体33Aとの接合力、及び、内側シート部材32と中間体33Aとの接合力のそれぞれは、小さい。したがって、底材3Aに衝撃が加わった場合、外側シート部材31と内側シート部材32とが互いに分離しやすいので、内側シート部材32が良好に破損しにくい。
【0068】
図6(b)は、第2変形例に係る底材の概略断面図である。図6(b)に示されるように、底材3Bの積層体40Bにおいて、中間体33Bは、第2シーラント層35を覆う接着部分33aと、接着部分33a上において点状に設けられる非接着性コート部分33bとを有する。接着部分33aは、第2シーラント層35と内側シート部材32とのそれぞれに対して接着性を示す部分であり、例えば、上記実施形態の中間体33と同様の構造及び特性を有する。
【0069】
非接着性コート部分33bは、接着部分33aと内側シート部材32との接着を阻害する機能を有する部分である。非接着性コート部分33bは、例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤などを含む。非接着性コート部分33bは、例えば、パターン塗布などによって接着部分33a上に形成される。非接着性コート部分33bは、上記厚さ方向から見て不規則に設けられてもよいし、上記厚さ方向から見て規則的に設けられてもよい。中間体33Bに起因する接着力の偏重抑制などの観点から、非接着性コート部分33bは、上記厚さ方向から見て規則的に設けられてもよい。
【0070】
以上に説明する第2変形例においても、上記第1変形例と同様の作用効果が発揮される。
【0071】
図7は、第3変形例に係るスタンディングパウチの要部概略断面図である。図7に示されるように、一対の本体部1A,2Aのそれぞれは、第1基材層21及び第1シーラント層22に加えて、第1シーラント層22と封止空間Sとの間に位置する内側シート部材51を有する。すなわち、積層構造体20Aは、順に積層される第1基材層21、第1シーラント層22、及び内側シート部材51を有する。
【0072】
内側シート部材51は、本体部1A,2Aの内面を含む部材であり、内側シート部材32と同様に、ポリオレフィン樹脂の成形体である。すなわち、内側シート部材51がポリオレフィン樹脂の成形体である場合、当該成形体にはポリオレフィン樹脂以外の成分が含まれ得る。第1シーラント層22と第2シーラント層35と内側シート部材32と中間体33とのヒートシールの阻害抑制などの観点から、内側シート部材51は、低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレンの成形体である。この場合、第1シーラント層22と第2シーラント層35とがヒートシールされる箇所にて、第1シーラント層22と、第2シーラント層35と、内側シート部材32と、中間体33と、内側シート部材51とが互いにヒートシールされる。
【0073】
内側シート部材51の特性(例えば、融点、厚さ、弾性率など)は、内側シート部材32と同様である。このため本明細書では、内側シート部材32の説明を内側シート部材51に適用できる。
【0074】
本体部1Aの第1シーラント層22と、本体部2Aの第1シーラント層22とが互いに接着する領域において、内側シート部材51は、第1シーラント層22に一体化されると共に第1シーラント層22に接着される。本実施形態では、当該領域において、第1シーラント層22と、内側シート部材51とがヒートシールされることによって、各層が互いに強固に接合される。特に、底材3の主領域MRにおいては、第1シーラント層22と、第2シーラント層35と、中間体33と、内側シート部材32,51とが、互いに一体化される。一方、本体部1Aの第1シーラント層22と、本体部2Aの第1シーラント層22とが互いにヒートシールされない領域(未ヒートシール領域)においては、内側シート部材51は、第1シーラント層22に対して離間可能に設けられる。上記未ヒートシール領域では、第1シーラント層22と、内側シート部材51とは、互いに離間可能に接着されてもよい。この場合、例えば、未ヒートシール領域において、第1シーラント層22と内側シート部材51とは、互いにブロッキングされてもよい。
【0075】
以上に説明した第3変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、仮に第1基材層21に破損が生じた場合であっても、内側シート部材51の存在により、本体部1A,2Aからの内容物の漏出を防止できる。よって、落下時の衝撃による本体部1A,2Aからの内容物の漏出を良好に抑制可能である。さらに、本体部1A,2Aのそれぞれの一部である上記未ヒートシール領域では、内側シート部材51は、第1シーラント層22に対して離間可能に設けられる。このため、本体部1A,2Aに衝撃が加わったとき、第1シーラント層22を介して第1基材層21から内側シート部材51へ衝撃が伝搬しにくい。したがって、本体部1A,2Aに衝撃が加わったとき、第1シーラント層22、第1基材層21、内側シート部材51の全てが破損しにくくなる。
【0076】
本発明の一側面に係る自立性包装袋は、以下の[1]~[9]に記載する通りであり、上記実施形態及び上記変形例に基づいてこれらを詳細に説明した。
[1] 互いに立設する一対の本体部と、前記一対の本体部のそれぞれに接着される底材とを備え、前記一対の本体部及び前記底材によって封止空間が画成される自立性包装袋であって、
前記底材は、外側シート部材、前記外側シート部材と前記封止空間との間に位置する内側シート部材、及び、前記外側シート部材と前記内側シート部材との間に位置する中間体を有し、
前記外側シート部材は、基材層、及び、前記基材層と前記内側シート部材との間に位置するシーラント層を有し、
前記底材の縁領域では、前記シーラント層と前記内側シート部材とは、互いに一体化されると共に前記一対の本体部のいずれかに接着され、
前記底材において前記縁領域に囲われる主領域において、前記外側シート部材と前記内側シート部材とは、前記中間体を介して互いに分離可能に一体化する、
自立性包装袋。
[2] 前記中間体は、前記底材の厚さ方向から見て点状に設けられる、[1]に記載の自立性包装袋。
[3]前記中間体は、前記シーラント層を覆う接着部分と、前記接着部分上において点状に設けられる非接着性コート部分とを有する、[1]に記載の自立性包装袋。
[4] 前記基材層の弾性率は、前記内側シート部材の弾性率よりも高い、[1]~[3]のいずれかに記載の自立性包装袋。
[5] 前記基材層は、高密度ポリエチレンの成形体であり、前記内側シート部材は、低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレンの成形体である、[4]に記載の自立性包装袋。
[6] 外側シート部材、前記外側シート部材上に位置する中間体、及び前記中間体上に位置する内側シート部材を有する底材であって、前記外側シート部材と前記内側シート部材とが前記中間体を介して互いに分離可能に一体化している前記底材を準備する第1工程と、
二つ折りにした前記底材を、一対の本体部の間に配置する第2工程と、
前記底材の縁領域と前記一対の本体部のそれぞれの一部とを接着すると共に、前記一対の本体部のそれぞれの別の一部を接着する第3工程と、
前記一対の本体部及び前記底材によって画成される空間に被包装物を収容する第4工程と、
前記空間を封止する第5工程と、を備える、
自立性包装袋の製造方法。
[7] 前記外側シート部材は、基材層と、前記基材層上に位置するシーラント層とを有し、
前記第1工程では、互いに一体化された前記シーラント層と前記中間体と前記内側シート部材との積層体が、前記基材層に固定される、[6]に記載の自立性包装袋の製造方法。
[8] 前記積層体は、共押出法によって形成される、[7]に記載の自立性包装袋の製造方法。
[9] 前記第3工程後、
前記底材の縁領域では、前記シーラント層と前記内側シート部材と前記中間体とは、互いに一体化し、
前記底材の前記縁領域に囲われる主領域において、前記シーラント層と前記内側シート部材とは、前記中間体を介して互いに分離可能に一体化する、[7]または[8]に記載の自立性包装袋の製造方法。
【0077】
しかし、本発明の一側面は、上記実施形態、上記変形例及び上記[1]~[9]に限定されない。本発明の一側面は、その要旨を逸脱しない範囲でさらなる変形が可能である。上記実施形態と上記変形例とは、適宜組み合わされてもよい。
【0078】
上記実施形態及び上記変形例では、自立性包装袋に含まれる各積層体のポリオレフィン樹脂の含有量が、90質量%以上であればよい。このため、例えば、本体部に含まれる積層体において、第1基材層と第1シーラント層との一方におけるポリオレフィン樹脂の質量比率は、90質量%未満でもよい。同様に、底材に含まれる積層体において、第2基材層と第2シーラント層と中間体と内側シート部材の少なくとも一におけるポリオレフィン樹脂の質量比率は、90質量%未満でもよい。
【0079】
上記実施形態及び上記変形例では、積層体は共押出法によって形成されるが、これに限られない。例えば、積層体の少なくとも一部はインフレーション法によって形成されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1,1A,2,2A…本体部、3,3A,3B…底材、3a…折り目、3d…底辺、5…サイドシール部、6…ボトムシール部、6a…上辺、8a…切り欠き部、8b…切り欠き部、9…融着部、10…スタンディングパウチ、10a…側部、10b…側部、10c…底部、20,20A,30…積層構造体、21…第1基材層、22…第1シーラント層、31…外側シート部材、32…内側シート部材、33,33A,33B…中間体、33a…接着部分、33b…非接着性コート部分、34…第2基材層、35…第2シーラント層、40,40A,40B…積層体、51…内側シート部材、ER…縁領域、MR…主領域、S…封止空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7