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  • 特開-合成樹脂製丼蓋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165223
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】合成樹脂製丼蓋
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/16 20060101AFI20231108BHJP
   A47G 19/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A47J36/16 Z
A47G19/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076007
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000176176
【氏名又は名称】三信化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100217869
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 邦久
(72)【発明者】
【氏名】宮内 萌
【テーマコード(参考)】
3B001
4B055
【Fターム(参考)】
3B001AA04
3B001BB01
3B001CC13
4B055AA31
4B055BA53
4B055CA21
4B055CB02
4B055CB11
(57)【要約】
【課題】 丼蓋の天面壁の内面に付着した水滴が丼内に落下することなく留まることが可及的に防止され、かくして丼の上方から丼蓋を移動するときに丼蓋の内面に付着した水滴がテーブル上に零れてしまうことが可及的に回避される合成樹脂製丼蓋を提供する。
【解決手段】 合成樹脂製丼蓋は、丼の開放された上面を覆う円形天面壁と該天面壁の外周縁から垂下する係止壁とを含む。天面壁は中央部及びこの中央部を囲繞し係止壁の上端に続く周縁部を有する。平面図において、中央部は円形状であり、周縁部は円環形状である。断面図において、中央部の内面は中心から半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在し、周縁部の内面は半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する内側領域と半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在する中間領域と半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する外側領域とを有する。周縁部の内面における内側領域は30度以上である傾斜角度αをなして半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丼の開放された上面を覆う円形天面壁と該天面壁の外周縁から垂下する係止壁とを含む、合成樹脂製丼蓋において、
該天面壁は中央部及び該中央部を囲繞し該係止壁の上端に続く周縁部を有し、
平面図において、該中央部は円形状であり、該周縁部は円環形状であり、
断面図において、該中央部の内面は中心から半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在し、該周縁部の内面は半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する内側領域と半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在する中間領域と半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する外側領域とを有し、
該周縁部の該内面における該内側領域は30度以上である傾斜角度αをなして半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する、
ことを特徴とする合成樹脂製丼蓋。
【請求項2】
該傾斜角度αは40乃至50度である、請求項1記載の合成樹脂製丼蓋。
【請求項3】
該中央部の該内面の外周縁部は20乃至40度である傾斜角度βをなして半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在する、請求項1記載の合成樹脂製丼蓋。
【請求項4】
該周縁部の該内面における該外側領域と該係止壁の内面とは60乃至80度である角度γをなす、請求項1記載の合成樹脂製丼蓋。
【請求項5】
該天面壁の該周縁部の外径d1は100乃至220mmで、該中央部の外径d2は55乃至125mmである、請求項1記載の合成樹脂製丼蓋。
【請求項6】
該天面壁の該周縁部の該内面における該外側領域の外周縁部から該係止壁の内面下端まで延びる排気凹部が周方向に間隔をおいて複数個配設されている、請求項1記載の合成樹脂製丼蓋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丼の開放された上面を覆う合成樹脂製丼蓋、更に詳しくは、それに限定されるものではないが、加熱された液体を含む加工食品、例えば加熱されたうどん又はそばの如き麺と汁、が収納される合成樹脂製丼の開口された上面を覆うのに適した合成樹脂製丼蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
病院及び各種学校等においては、うどん又はそばの如き麺及び汁を含む加工食品をチルド処理して保存し、患者及び生徒に提供する際に再加熱することが行われている。そして、この際には、適宜の合成樹脂から形成された丼内にチルド処理された加工食品を収容し、適宜の合成樹脂から形成された丼蓋を丼に被せて丼の開口した上面を覆った状態で、蒸気又は熱風による加熱或いは電子レンジによる加熱の如き適宜の様式で加熱している。丼蓋は、丼の開放された上面を覆う円形天面壁とこの天面壁の外周縁から垂下する係止壁とを含む。
【0003】
然るに、上述したとおりにして加熱された加工食品を食するためにトレー又はテーブル上に載置された丼から丼蓋を離脱すると、丼蓋の内面に付着した水滴がテーブル上に零れてしまうことが少なくない。かような問題を解決せんとして、下記特許文献1には、丼蓋の天面壁の内面の中央部に円筒形状の凹部を形成すると共にかかる凹部の下端縁に隣接して段部を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3194385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然るに、上記特許文献1に開示されている丼蓋も未だ充分に満足し得るものではなく、(1)丼蓋の天面壁の内面における上記円筒形凹部の内側に位置する領域に付着した水滴及び上記円筒形凹部の外側に位置する領域に付着した水滴が、丼に丼蓋が被せられている状態或いは丼から丼蓋を離脱する初期段階(丼蓋が未だ丼の上方に位置している段階)において充分円滑に流動することなくそのまま滞留して丼内に落下しない等に起因して、丼の上方から丼蓋を移動する時に丼蓋の内面に付着した水滴がトレー又はテーブル上に零れてしまうことを充分に回避することができない、(2)丼蓋の天面壁の内面周縁部と係止壁の内面上端部との境界領域に流動した水滴が、丼から丼蓋を離脱する際にテーブル上に流出してしまう、という解決すべき問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、丼蓋の天面壁の内面に付着した水滴が丼内に落下することなく留まることが可及的に防止され、かくして丼の上方から丼蓋を移動するときに丼蓋の内面に付着した水滴がテーブル上に零れてしまうことが可及的に回避される、新規且つ改良された合成樹脂製丼蓋を提供することである。
【0007】
本発明の他の技術的課題は、上記主たる技術的課題の達成に加えて、丼蓋の天面壁の内面周縁部と係止壁の内面上端部との境界領域に流動した水滴が、丼から丼蓋を離脱する際にテーブル上に流出してしまうことが可及的に回避される、新規且つ改良された丼蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、丼蓋の天面壁における平面図において円形状の中央部を、断面図において、中央部の内面は中心から半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在する形態にし、丼蓋の天面壁における平面において円環形状の周縁部の内面を、断面図において半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する内側領域と半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在する中間領域と半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する外側領域とを有し、周縁部の内面における内側領域は30度以上である傾斜角度αをなして半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する形態にすることによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する合成樹脂製丼蓋として、
丼の開放された上面を覆う円形天面壁と該天面壁の外周縁から垂下する係止壁とを含む、合成樹脂製丼蓋において、
該天面壁は中央部及び該中央部を囲繞し該係止壁の上端に続く周縁部を有し、
平面図において、該中央部は円形状であり、該周縁部は円環形状であり、
断面図において、該中央部の内面は中心から半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在し、該周縁部の内面は半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する内側領域と半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在する中間領域と半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する外側領域とを有し、
該周縁部の該内面における該内側領域は30度以上である傾斜角度αをなして半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する、
ことを特徴とする合成樹脂製丼蓋が提供される。
【0010】
好ましくは、該傾斜角度αは40乃至50度であるのが好都合である。該中央部の該内面の外周縁部は20乃至40度である傾斜角度βをなして半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在するのが好適である。
【0011】
上記他の技術的課題は、該周縁部の該内面における該外側領域と該係止壁の内面とは60乃至80度である角度γをなす形態によって達成される。
【0012】
該天面壁の該周縁部の外径d1は100乃至220mmで、該中央部の外径d2は55乃至125mmであるのが好都合である。該天面壁の該周縁部の該内面における該外側領域の外周縁部から該係止壁の内面下端まで延びる排気凹部が周方向に間隔をおいて複数個配設されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従って構成された丼蓋においては、丼に丼蓋が被せされている状態、そしてまた丼から丼蓋を離脱する初期段階(丼蓋が未だ丼の上方に位置している段階)において、天面壁の内面における中央部に付着した水滴は中央部と周縁部との境界に向かって流動し、周縁部の内面における内側領域が30度以上である傾斜角度αをなして半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在することに起因して効果的に丼内に落下し、そしてまた天面壁の内面における周縁部の中間領域に付着した水滴は周縁部の中間領域と外側領域との境界領域に向かって流動して少なくとも一部は丼内に滴下し、丼の上方から丼蓋を移動するときに丼蓋の内面に付着した水滴がトレー又はテーブル上に零れてしまうことが可及的に回避される。
【0014】
本発明に従って構成された丼蓋の、周縁部の内面における外側領域と係止壁の内面とは60乃至80度である角度γをなす形態においては、丼蓋の天面壁の内面周縁部と係止壁の上端部内面との境界領域に流動した水滴は、周縁部の内面における外側領域と係止壁の内面とは60乃至80度である角度γをなす故に、表面張力によって天面壁の内面周縁部と係止壁の上端部内面との境界領域に保持され、かくして丼から丼蓋を離脱する際にテーブル上に流出してしまうことが可及的に回避される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に従って構成された丼蓋の正面図。
図2図1に示す丼蓋の平面図。
図3図1に示す丼蓋の底面図。
図4図1に示す丼蓋の断面図。
図5図1に示す丼蓋を丼に被せた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に従って構成された丼蓋の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳述する。
【0017】
図1乃至図4を参照して説明すると、本発明に従って構成された、全体を番号2で示す丼蓋は、円形天面壁4とこの天面壁4の外周縁から垂下する略円筒形状の係止壁6とから構成されている。天面壁4は中央部8とこの中央部8を囲繞し且つ係止壁6の上端に続く周縁部10とを有し、平面図において中央部8は円形状であり周縁部10は円環形状である。丼蓋2が適用される丼20(図5)の大きさに依存するが、通常、天面壁4の周縁部10の外径d1は100乃至220mm程度であり、中央部8の外径d2は55乃至125mm程度である。丼蓋2は、適宜の合成樹脂から形成することができるが、耐熱性及び機械的強度等に優れた樹脂、例えばポリエーテルサルフォン、メラミン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステルポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルホン、ポリアミド、ポニフェニレンサルファイド、ポリフェニルスルホン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、又はポリエーテルイミドから形成されているのが好都合である。
【0018】
本発明に従って構成された丼蓋2においては、天面壁4の内面(図4において下面)12の形状及び係止壁6の内面(内周面)14の形状が重要である。
【0019】
主として図4を参照して説明を続けると、天面壁4の上記中央部8の内面16は、断面図において中心から半径方向外側に向かって漸次下方に傾斜して、好ましくは略円弧形状をなして半径方向外側に向かって漸次下方に傾斜して、延在している。中央部8の内面16の外周縁部においては中心部に比べて傾斜角度が増大されており、中央部8の内面16の外周縁部は20乃至40度である傾斜角度βをなしているのが望ましい。
【0020】
天面壁4の上記周縁部10の内面18は内側領域18a、中間領域18b及び外側領域18cを有し、断面図において内側領域18aは半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在し、中間領域18bは半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在し、外側領域18cは半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する。内側領域18aは断面図において30度以上、好ましくは40乃至50度である傾斜角度αをなして半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在する、好ましくは直線状に延在する(従って、内側領域18aは全体として傾斜角度αを有する円錐台形状である)、ことが重要である。傾斜角度αが30度以上、好ましくは40乃至50度であると、丼20に丼蓋2が被せられている状態、そしてまた丼20から丼蓋2を離脱する初期段階(丼蓋2が未だ丼20の上方に位置している段階)において、天面壁4の内面12、特に中央部8の内面16、に付着した水滴が半径方向外方に流動して中央部8の内面16と周縁部10の内面18の境界領域において丼20(図5)内に円滑に滴下する。これに対して傾斜角度αが過少であると、天面壁4の内面、特に中央部8の内面16、に付着した水滴が半径方向外方に流動しても丼20(図5)内に滴下することなく滞留し、丼20(図5)の上方から丼蓋2を移動する際に水滴がテーブル(図示していない)上に流出してしまう傾向がある。傾斜角度αが過大になると、成形の際に天面壁4の中央部8の内面16と周縁部10の内面18との境界において所謂ヒケが発生する虞がある。中間領域18bは5乃至15度の傾斜角度δをなして半径方向外方に向かって漸次下方に傾斜して延在するのが好都合である。外側領域18cは10乃至30度の角度εをなして半径方向外方に向かって漸次上方に傾斜して延在するのが好都合である。
【0021】
係止壁6の内面14は中心軸線Xと略平行に、更に詳しくは半径方向外方に向かって下方に中心軸線Xに対して5乃至10度程度の傾斜角度ζをなして延在するのが好都合である。そして、本発明に従って構成された丼蓋2においては、天面壁4の周縁部10の内面18の外側領域18cと係止壁6の内面14とは60乃至80度である角度γをなしているのが重要である。角度γが過大になると、天面壁4の内面12の外周縁部と係止壁6の内面上端部の境界領域に流動した水滴が、表面張力によってそこに保持されることなく、丼20(図5)から丼蓋2を離脱する際にテーブル上に離脱されてしまう傾向がある。角度γが過少になると、丼20(図5)に対する丼蓋2の被嵌及び離脱が困難になる。
【0022】
丼蓋2の天面壁4及び係止壁6の外面の形状は、上記のとおりの天面壁4の内面12の形状及び係止壁6の内面14の形状に略対応した形状であり、従って天面壁4及び係止壁6は全体に渡って略均一な厚さを有する。厳密にいえば、図示の実施形態においては、天面壁4の中央部8と周縁部10との境界及び周縁部の中間領域と外側領域との境界において天面壁4の厚さが局部的に厚くなっているが、それ以外の部位においては天面壁4及び係止壁6の厚さは実質上同一である。
【0023】
図示の実施形態においては、図3に明確に図示する如く、天面壁4の周縁部10の内面18における外側領域18cの外周縁部から係止壁6の内面下端まで延びる排気凹部22が周方向に間隔をおいて複数個(図示の場合は3個)配設されている。
【0024】
図5には、図1乃至図4に図示する上記のとおりの丼蓋2と共に、丼20が図示されている。それ自体は周知の形態でよい丼20は全体として椀形状の主部24を有する。主部24の底部外面(下面)は周方向に等間隔をおいて円弧上に延びる3個の脚26が配設されている。丼20も適宜の合成樹脂、好ましくは耐熱性及び機械的強度等に優れた樹脂、例えばポリエーテルサルフォン、メラミン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステルポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルホン、ポリアミド、ポニフェニレンサルファイド、ポリフェニルスルホン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、又はポリエーテルイミドから形成することができる。かような丼20内には、例えばチルド処理された麺及び汁を含む加工食品(図示していない)が収納される。そして、丼20の主部24に丼蓋2が被せられ、丼20の開放された上面が丼蓋2によって覆われる。丼蓋2が被せられた丼20を複数個積層する場合には、図5に二点鎖線で図示する如く、上方に位置する丼20の脚26が下方に位置する丼蓋2の天面壁4の外面における中央部8と周面部10の境界に形成されている環状凹部内に位置付けられ、かくして安定的に積層される。しかる後に、蒸気又は熱風による加熱或いは電子レンジによる加熱等の適宜の様式で丼20内に収容されている加工食品が加熱され、病院における患者或いは各種学校における生徒に提供される。加熱の際に生成される水蒸気の圧力が過剰になると、丼蓋2に配設されている排気凹部22を通して水蒸気が排出される。
【0025】
丼20に収容されている加工食品が例えば麺及び汁を含む場合、加熱の際に生成される水蒸気に起因して丼蓋2の天面壁4の内面12には多数の水滴が付着される。然るに、本発明に従って構成された丼蓋2においては、天面壁4の内面12、特に天面壁4の中央部8の内面に付着した水滴は、丼20に丼蓋2が被せられた状態においても、半径方向外方に流動して中央部8の内面16と周縁部10の内面18の境界領域に流動し、内面18の内側領域18aが断面図において30度以上、好ましくは40乃至50度である傾斜角度αをなして延在する形態である故に、丼20内に円滑に滴下される。そして、丼20内に収容されている加工食品を食するために丼20から丼蓋2を離脱する初期段階(丼蓋2が未だ丼20の上方に位置している段階)において丼蓋2を傾動すると、特に天面壁4の中央部8の内面に残留している水滴の流動が助長されて中央部8の内面16と周縁部10の内面18との境界領域の特定角度位置(最下位置部分)に流動し、丼20内に滴下する。天面壁4の周縁部10の内面18の中間領域18bに付着した水滴は中間領域18bと外側領域18cとの境界領域に向かって流動して少なくとも一部は丼内に滴下する。かくして、丼蓋2を丼20の上方から移動して例えばトレー又はテーブル(図示していない)上に丼蓋2に載置する際に水滴が零れることが可及的に回避される。更に、丼20内に滴下することなく天面壁4の内面12の外周縁部と係止壁6の内面14の上端部との境界領域に流動した水滴は、天面壁4の周縁部10の内面18の外側領域18cと係止壁6の内面14とは60乃至80度である角度γをなしている故に、表面張力によって底に保持されテーブル又はトレー(図示していない)上に流出してしまうことが可及的に回避される。
【0026】
実施例
図1乃至図4に図示するとおりの形態の丼蓋を、ポリエーテルサルフォンから10個形成した。傾斜角度αは約45度、傾斜角度βは約30度、傾斜角度δは約10度、傾斜角度εは約20度、約傾斜角度ζは7度、角度γは約70度であった。天面壁の周縁部の外径は160mm、天面壁の中央部の外径は90mmであった。天面壁及び係止壁の厚さは局部的に厚さが増大されている部分を除き約3mmであった。
【0027】
上記10個の丼蓋の各々において、ポリエーテルサルフォンから形成した図5に図示するとおりの形態で、上端の外径が160mmである丼内に、200gのうどんと300gの液体(うどん汁)を収容し、丼に上記丼蓋を被せた。次いで、丼蓋が被せられた丼を電子レンジ内に導入して750Wで5分間加熱した。しかる後に、電子レンジから取り出した丼を通常のトレー上に載置し、一般的な手順によって丼から丼蓋を離脱して天面壁の内面を上方に向けた状態でトレー上に載置した。丼内の液体の温度を測定したところ97℃であった。トレーの表面を観察したところ、10個の丼蓋の全てに関して水滴は存在しなかった。丼蓋の内面を観察したところ、10個の丼蓋のすべてにおいて天面壁の中央部及び周縁部の内面並びに天面壁の内面外周縁部と係止壁の内面上端部との間に、幾分かの水滴が存在していた。
【符号の説明】
【0028】
2:丼蓋
4:天面壁
6:係止壁
8:天面壁の中央部
10:天面壁の周縁部
12:天面壁の内面
14:係止壁の内面
16:天面壁の中央部の内面
18:天面壁の周縁部の内面
18a:内側領域
18b:中間領域
18c:外側領域
20:丼
22:排気凹部
24:丼の主部
26:脚
図1
図2
図3
図4
図5