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特開2023-165226ブラシ体、ブラシユニット、スリップリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165226
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ブラシ体、ブラシユニット、スリップリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
H02K13/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076026
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000121327
【氏名又は名称】遠藤工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】322006663
【氏名又は名称】株式会社緑測器
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】渋木 雅利
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 敏治
【テーマコード(参考)】
5H613
【Fターム(参考)】
5H613AA02
5H613BB24
5H613GA13
5H613KK04
(57)【要約】
【課題】ブラシをスリップリングに容易に接触させることが可能なブラシ体、ブラシユニット、スリップリング装置を提供する。
【解決手段】複数本の直線状の金属線材からなるブラシ16と、ブラシ16の一端が露出するように他端側を拘束保持するための金属製のブラシホルダ17と、からなるスリップリング装置1用のブラシ体15であって、ブラシホルダ17は、第1厚肉部31と、第1厚肉部31に一体で隣り合う薄肉部32とを有し、第1厚肉部31及び薄肉部32には、ブラシ16を挿入するための貫通穴17aが形成されており、第1厚肉部31は、貫通穴17aの延在方向に垂直な方向の厚みが薄肉部32よりも大きく、ブラシ16は、前記一端が第1厚肉部31から露出するように貫通穴17aに挿入されており、薄肉部32にカシメ加工が施されることによりブラシホルダ17に拘束保持されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の直線状の金属線材からなるブラシと、
前記ブラシの一端が露出するように他端側を拘束保持するための金属製のブラシホルダと、からなるスリップリング装置用のブラシ体であって、
前記ブラシホルダは、第1厚肉部と、前記第1厚肉部に一体で隣り合う薄肉部とを有し、
前記第1厚肉部及び前記薄肉部には、前記ブラシを挿入するための貫通穴が形成されており、
前記第1厚肉部は、前記貫通穴の延在方向に垂直な方向の厚みが前記薄肉部よりも大きく、
前記ブラシは、前記一端が前記第1厚肉部から露出するように前記貫通穴に挿入されており、前記薄肉部にカシメ加工が施されたことにより前記ブラシホルダに拘束保持されていることを特徴とするブラシ体。
【請求項2】
前記貫通穴は、前記ブラシを挿入可能かつ前記薄肉部にカシメ加工を施した際に前記金属線材の直線状態を維持可能な大きさであることを特徴とする請求項1に記載のブラシ体。
【請求項3】
前記貫通穴の断面積が複数本の前記金属線材の断面積の和の1.54~2.24倍以内であることを特徴とする請求項1に記載のブラシ体。
【請求項4】
前記ブラシホルダは、前記薄肉部に一体で前記薄肉部を前記第1厚肉部と両側から挟む第2厚肉部を有し、
前記貫通穴は、前記第2厚肉部を貫通しており、
前記第2厚肉部は、前記貫通穴の延在方向に垂直な方向の厚みが前記薄肉部よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のブラシ体。
【請求項5】
前記第1厚肉部の側面及び前記第2厚肉部の側面に、前記貫通穴を挟むように2つの溝が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のブラシ体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のブラシ体を有することを特徴とするスリップリング装置。
【請求項7】
複数本の直線状の金属線材からなるブラシと、前記ブラシの一端が露出するように他端側を拘束保持するための金属製のブラシホルダとからなるブラシ体と、
前記ブラシ体を保持するための金属製の板状の端子と、を有するスリップリング装置用のブラシユニットであって、
前記端子には、スリットが形成されており、
前記ブラシホルダは、前記端子の前記スリットに挿入保持されていることを特徴とするブラシユニット。
【請求項8】
前記ブラシホルダには、前記端子の前記スリットに嵌まり合う溝が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のブラシユニット。
【請求項9】
前記端子の前記スリットには、前記スリットの中心軸線へ向かって隆起した隆起部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のブラシユニット。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載のブラシユニットを有することを特徴とするスリップリング装置。
【請求項11】
複数本の直線状の金属線材からなるブラシと、前記ブラシの一端が露出するように他端側を拘束保持するための金属製のブラシホルダとからなるブラシ体と、
前記ブラシ体を保持するための金属製の板状の端子と、を有するスリップリング装置用のブラシユニットであって、
前記ブラシホルダは、第1厚肉部と、前記第1厚肉部に一体で隣り合う薄肉部とを有し、
前記第1厚肉部及び前記薄肉部には、前記ブラシを挿入するための貫通穴が形成されており、
前記第1厚肉部は、前記貫通穴の延在方向に垂直な方向の厚みが前記薄肉部よりも大きく、
前記ブラシは、前記一端が前記第1厚肉部から露出するように前記貫通穴に挿入されており、前記薄肉部にカシメ加工が施されたことにより前記ブラシホルダに拘束保持されており、
前記端子には、スリットが形成されており、
前記ブラシホルダは、前記端子の前記スリットに挿入保持されていることを特徴とするブラシユニット。
【請求項12】
前記ブラシホルダの前記貫通穴は、前記ブラシを挿入可能かつ前記薄肉部にカシメ加工を施した際に前記金属線材の直線状態を維持可能な大きさであることを特徴とする請求項11に記載のブラシユニット。
【請求項13】
前記ブラシホルダの前記貫通穴の断面積が複数本の前記金属線材の断面積の和の1.54~2.24倍以内であることを特徴とする請求項11に記載のブラシユニット。
【請求項14】
前記ブラシホルダは、前記薄肉部に一体で前記薄肉部を前記第1厚肉部と両側から挟む第2厚肉部を有し、
前記貫通穴は、前記第2厚肉部を貫通しており、
前記第2厚肉部は、前記貫通穴の延在方向に垂直な方向の厚みが前記薄肉部よりも大きく、
前記第1厚肉部の側面及び前記第2厚肉部の側面に、前記端子の前記スリットに嵌まり合う2つの溝が前記貫通穴を挟むように形成されており、
前記端子の前記スリットには、前記スリットの中心軸線へ向かって隆起した隆起部が設けられており、
前記端子の前記スリットに挿入された前記第2厚肉部は、前記スリットの前記隆起部に拘束されることを特徴とする請求項11に記載のブラシユニット。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか一項に記載のブラシユニットを有することを特徴とするスリップリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ体、ブラシユニット、スリップリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業機器の回転部分と静止部分との間で電気信号や電力を伝達するためのスリップリング装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-43558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述のような従来のスリップリング装置において、ブラシは静止部分側の基板に半田付け固定されるため、半田付けによってブラシの延在する方向が変化し、ブラシをスリップリングに接触させることが難しいという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ブラシをスリップリングに容易に接触させることが可能なブラシ体、ブラシユニット、スリップリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、
複数本の直線状の金属線材からなるブラシと、
前記ブラシの一端が露出するように他端側を拘束保持するための金属製のブラシホルダと、からなるスリップリング装置用のブラシ体であって、
前記ブラシホルダは、第1厚肉部と、前記第1厚肉部に一体で隣り合う薄肉部とを有し、
前記第1厚肉部及び前記薄肉部には、前記ブラシを挿入するための貫通穴が形成されており、
前記第1厚肉部は、前記貫通穴の延在方向に垂直な方向の厚みが前記薄肉部よりも大きく、
前記ブラシは、前記一端が前記第1厚肉部から露出するように前記貫通穴に挿入されており、前記薄肉部にカシメ加工が施されたことにより前記ブラシホルダに拘束保持されていることを特徴とするブラシ体を提供する。
【0007】
また本発明は、
複数本の直線状の金属線材からなるブラシと、前記ブラシの一端が露出するように他端側を拘束保持するための金属製のブラシホルダとからなるブラシ体と、
前記ブラシ体を保持するための金属製の板状の端子と、を有するスリップリング装置用のブラシユニットであって、
前記端子には、スリットが形成されており、
前記ブラシホルダは、前記端子の前記スリットに挿入保持されていることを特徴とするブラシユニットを提供する。
【0008】
また本発明は、
複数本の直線状の金属線材からなるブラシと、前記ブラシの一端が露出するように他端側を拘束保持するための金属製のブラシホルダとからなるブラシ体と、
前記ブラシ体を保持するための金属製の板状の端子と、を有するスリップリング装置用のブラシユニットであって、
前記ブラシホルダは、第1厚肉部と、前記第1厚肉部に一体で隣り合う薄肉部とを有し、
前記第1厚肉部及び前記薄肉部には、前記ブラシを挿入するための貫通穴が形成されており、
前記第1厚肉部は、前記貫通穴の延在方向に垂直な方向の厚みが前記薄肉部よりも大きく、
前記ブラシは、前記一端が前記第1厚肉部から露出するように前記貫通穴に挿入されており、前記薄肉部にカシメ加工が施されたことにより前記ブラシホルダに拘束保持されており、
前記端子には、スリットが形成されており、
前記ブラシホルダは、前記端子の前記スリットに挿入保持されていることを特徴とするブラシユニットを提供する。
【0009】
また本発明は、
上記ブラシ体又はブラシユニットを有することを特徴とするスリップリング装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブラシをスリップリングに容易に接触させることが可能なブラシ体、ブラシユニット、スリップリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)及び図1(b)は本発明の実施形態に係るスリップリング装置の構成を示す斜視図及び分解図である。
図2図2(a)はスリップリング装置の内部構成を示す断面図であり、図2(b)はブラシユニット及び回転シャフトの様子を示す図であり、図2(c)はブラシがスリップリングに接触する様子を示す拡大図である。
図3図3(a)はブラシユニットの構成を示す分解図であり、図3(b)は端子の正面図である。
図4図4(a)及び図4(b)はブラシ体の構成を示す斜視図及び断面図である。
図5図5は回転シャフトの構成を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るスリップリング装置を添付図面に基づいて説明する。
スリップリング装置1は、産業機器の回転部位において、回転部分(以下、回転機器という)と静止部分(以下、静止機器という)との間で電気信号や電力を伝達するものである。スリップリング装置1は、図1(a)に示すように複数本の回転側電線2、複数本の静止側電線3、回転シャフト4及びハウジング5を有する。
【0013】
ハウジング5は、図1(b)に示すようにハウジング本体6、蓋部材7、カバー8及び側板9からなり、蓋部材7は絶縁材で構成され、それ以外の部材は絶縁処理した金属で構成されることが好ましい。
ハウジング本体6は、中心軸線に平行な面で切り欠かれた厚肉の半円筒部6aと、半円筒部6aの一端に一体的に設けられた略円盤形状の側板部6bとからなる。半円筒部6aの外周面には、薄い板状部材を湾曲させてなるカバー8が取り付けられている。
【0014】
蓋部材7は、ハウジング本体6の切り欠き部分に嵌合するものであり、厚肉で断面が略円弧形状の板状部材からなる。蓋部材7をハウジング本体6に取り付けることで全体として円筒形状をなす。蓋部材7には、複数のブラシユニット10を挿入するための複数のスロット7aがハウジング本体6の中心軸線方向に沿って等間隔で2列互い違いに形成されている。蓋部材7は複数のネジ11でハウジング本体6に固定されている。
【0015】
ここで、図3(a)に示すようにブラシユニット10は、板状の端子12と、端子12に保持された2つのブラシ体15とからなる。ブラシ体15は、ブラシ16と、ブラシ16を保持するブラシホルダ17とからなる。なお、端子12、ブラシ16及びブラシホルダ17はいずれも導電材料で構成されている。ブラシユニット10及びブラシ体15については後に詳述する。
【0016】
側板9は、図1(b)に示すようにハウジング本体6における半円筒部6aの側板部6bと反対側の端部を閉塞する略円盤形状をしている。側板部6b、側板9には玉軸受13、14が備えられており、玉軸受13、14は回転シャフト4、詳しくは回転シャフト4の後述するパイプ22、26を回転自在に支持している。側板部6bには回転シャフト4をハウジング5外へ突出させるための貫通穴6cが形成されている。
【0017】
蓋部材7のスロット7aには、ブラシユニット10の端子12の後述する板状の矩形部18が蓋部材7の内側から挿入されてハウジング5外へ突き出ている。矩形部18には静止側電線3が接続されており、この接続部分及び矩形部18は絶縁材からなる熱収縮チューブ19で被覆されている。蓋部材7には内側から絶縁板21が取り付けられており、絶縁板21によってブラシユニット10は蓋部材7に対して固定されている。絶縁板21は、絶縁材からなる板状部材であって、複数の貫通穴、詳しくは1つのブラシユニット10に対して2つの貫通穴が形成されている。ブラシユニット10の2束のブラシ16、16はそれぞれ貫通穴から下方へ向かって突出し、回転シャフト4のスリップリング20の溝に両側(図2(a)紙面手前側及び奥側)から接触している。
【0018】
図5に示すように回転シャフト4は、図5左方から順にパイプ22、軸受リング23、交互に配置された複数のスリップリング20と複数の絶縁リング24、軸受リング25、パイプ26を有し、これらが全体として円筒形をなすように一体化してなる。回転シャフト4の内部には回転側電線2が収納されており、不図示の樹脂が充填されている。
【0019】
パイプ22、26は、円筒状部材であって、ハウジング5の側板部6b、側板9に備えられた玉軸受13、14によって回転自在に支持されている。パイプ22は、パイプ26よりも長く、側板部6bの貫通穴6cからハウジング5外へ突出している。
軸受リング23、25は、樹脂等の絶縁材料からなり、玉軸受13、14の内輪側面に当接する円環状部材である。軸受リング23、25には、回転シャフト4の軸線方向内側にスリップリング20と嵌まり合う円形の溝が形成されている。
【0020】
複数の絶縁リング24は、樹脂製の円環状部材であって、回転シャフト4の軸線方向両側にスリップリング20と嵌まり合う円形の溝が形成されている。
複数のスリップリング20は、金属製で、軸受リング23、25及び絶縁リング24よりも小径の円環状部材である。スリップリング20には、ブラシユニット10のブラシ16を案内する円周方向へ延びる溝20aが外周面を一周するように設けられている。
【0021】
パイプ22には、回転シャフト4の軸線方向外側から複数本の回転側電線2が挿入されており、複数本の回転側電線2はそれぞれ対応するスリップリング20の内周面に接続されている。なお、複数本の回転側電線2は、パイプ22内において絶縁材からなる熱収縮チューブ27で被覆されている。
【0022】
以上に述べた構成のスリップリング装置1は、静止側電線3、回転側電線2が静止機器、回転機器にそれぞれ接続され、回転シャフト4のパイプ22が回転機器に連結されて回転することにより、回転シャフト4とともに回転側電線2、玉軸受13、14の内輪が一体的に回転することができる。このとき、ブラシユニット10のブラシ16は回転するスリップリング20の溝20aに常に接触した状態が維持される。これにより、スリップリング装置1は、静止機器から出力された電気信号又は電力を、静止側電線3、ブラシユニット10の端子12、ブラシホルダ17、ブラシ16、スリップリング20、回転側電線2を順に介して回転機器へ伝達することができ、これとは逆に回転機器から静止機器への電気信号又は電力の伝達も可能である。
【0023】
本実施形態に係るスリップリング装置1において特徴的な構成であるブラシ体15とブラシユニット10について説明する。
ブラシ体15は、図4(a)に示すようにブラシ16と、ブラシ16の一端が露出するように他端を拘束保持するブラシホルダ17とからなる。
ブラシ16は、複数本(本実施形態では10本)の直線状の金属線材(ワイヤ)からなる。
【0024】
ブラシホルダ17は、円柱状部材の軸線方向における中央部分を径の小さな円柱形状に加工してなる。言い換えればブラシホルダ17は、ブラシ16の先端側から順に、円柱形状の第1厚肉部31、第1厚肉部31よりも小径の円柱形状の薄肉部32、第1厚肉部31と同径の円柱形状の第2厚肉部33とからなる。ブラシホルダ17は、金属製であって、本実施形態では電気伝導性が良好で加工しやすい真鍮で構成されている。なお、第1厚肉部31及び第2厚肉部33の形状は円柱形状に限られず、例えば側面の角部面取りした略四角柱形状等としてもよい。
【0025】
第1厚肉部31の側面には、軸線方向へ延びる底の浅い2つの溝部31a、31aが中心軸線を挟んで対向するように形成されている。同様に、第2厚肉部33の側面には、2つの溝部33a、33aが形成されている。第1厚肉部31の溝部31a、31a及び第2厚肉部33の溝部33a、33aは、後述する端子12のスリット形成部36、36に嵌合可能となっている。
【0026】
ブラシホルダ17には、図4(b)に示すようにブラシ16を挿入するための円形の貫通穴17aが中心軸線を通るように形成されている。本実施形態においてブラシホルダ17の貫通穴17aにはブラシ16が挿入されており、薄肉部32にカシメ(加締め)加工を施すことによりブラシ16はブラシホルダ17に保持されている。詳細には、カシメ加工として薄肉部32に四方から中心軸線に向かって工具で力を加えて薄肉部32を変形させることにより、ブラシ16は薄肉部32によって拘束されている。なお、薄肉部32にカシメ加工を施すことを薄肉部32をカシメるともいう。
【0027】
ブラシホルダ17の貫通穴17aの大きさは、ブラシ16を挿入できる程度に小さく、かつ薄肉部32をカシメた際に第1厚肉部31から露出したブラシ16が広がってしまうことを抑える、即ちブラシ16を構成する金属線材の直線状態を維持可能な程度に小さく設計されている。
【0028】
より具体的には、貫通穴17aの直径は、貫通穴17aの断面積がブラシ16の断面積(本実施形態では10本の金属線材の断面積の和)の1.54~2.24倍以内となる大きさに設計されている。貫通穴17aの断面積がブラシ16の断面積の1.54倍を下回ると、ブラシ16を貫通穴17aに挿入しにくくなってしまう。一方、貫通穴17aの断面積がブラシ16の断面積の2.24倍を上回ると、薄肉部32をカシメた際のブラシ16の広がりを抑える効果が小さくなってしまう。したがって、貫通穴17aの断面積をブラシ16の断面積の1.54~2.24倍以内とすることにより、貫通穴17aにブラシ16をスムーズに挿入でき、かつ薄肉部32をカシメた際にブラシ16の広がり防止効果を最大限に発揮することができる。
なお、第2厚肉部33において貫通穴17aは、ブラシ16を挿入しやすいように軸線方向外側へ向かって直径が徐々に大きく設計されている。
【0029】
ここで、従来のブラシ体は、例えば円柱形状のブラシホルダの貫通穴にブラシを挿入し、ブラシホルダをカシメることで作製されている。このような従来のブラシ体は、ブラシホルダをカシメた際にブラシの延在方向が変化してしまう。詳細には、ブラシが広がってしまう、即ちブラシを構成する金属線材同士の間隔が広がってしまう。また、先に述べた従来のスリップリング装置のように静止機器側の基板に半田付け固定されるブラシは、半田付けの熱によってブラシが広がってしまう。そしてこれらの広がったブラシは、スリップリング装置の組み立て時にスリップリングの溝からはみ出てしまうため、当該溝に収まるようにまとめながら当該装置に組み付けなければならず、この作業が煩雑であった。
【0030】
これに対して本実施形態におけるブラシ体15は、上述のようにブラシ16の先端側から順に第1厚肉部31と薄肉部32とをブラシホルダ17に設けて薄肉部32をカシメる構成としたことにより、薄肉部32をカシメた際にブラシ16が広がってしまうことを最小限に抑え、ブラシ16を構成する複数本の金属線材が束になった状態を維持することができる。また、本実施形態におけるブラシ体15は、上述のようにブラシホルダ17の貫通穴17aの大きさ適切に設定したことにより、薄肉部32をカシメた際のブラシ16の広がりを抑える効果を最大限に発揮することができる。
【0031】
したがって、スリップリング装置1の組み立て時に、ブラシ16をスリップリング20の溝20aに適切に接触するように簡単に組み付けることができ、スリップリング20の溝20aに接触した際のブラシ16の広がりも最小限にとどめることができる。そしてこれにより、ブラシ16とスリップリング20との間の電気信号及び電力の伝達を確実に安定して行うことができる。
【0032】
図3(a)に示すようにブラシユニット10は、2つのブラシ体15と、2つのブラシ体15を支持する端子12とからなる。
端子12は、細長い板状の矩形部18と、矩形部18に一体的に設けられており矩形部18の一端から垂直に延びた板状の延在部34とからなる全体として略L字型の板状部材である。端子12は、金属製であって、本実施形態では電気伝導性が良好で加工しやすい真鍮で構成されている。
【0033】
端子12の延在部34には、ブラシ体15のブラシホルダ17を挿入するために、矩形部18と反対の方向へ向かって開放された矩形状の2つのスリット35、35が形成されている。
2つのスリット35、35は、互いの間隔が矩形部18と反対の方向へ向かって徐々に大きくなるように延在部34に傾斜して設けられている。より詳しくは、各スリット35、35の傾斜角度は、スリット35にブラシホルダ17を取り付けた端子12をスリップリング装置1に組み付けた際に、ブラシホルダ17に保持されたブラシ16がスリップリング20の溝20aに適当な圧力で接触する大きさに設計されている。
スリット35を矩形部18と反対の方向から見て、スリット35を構成するスリット形成部36、36の奥位置に、スリット35の中心軸線へ向かって台形状に隆起した隆起部36a、36aが設けられており、スリット幅が他の部分よりも小さくなっている。
【0034】
斯かる構成の端子12のスリット35に上述したブラシ体15のブラシホルダ17が圧入される、詳しくは端子12のスリット形成部36、36とブラシホルダ17の溝部31a、31a、33a、33aとが嵌まり合うように圧入されることにより、端子12へのブラシ体15の取り付けが行われる。
【0035】
ここで、従来の端子へのブラシ体の取り付けは、例えば板状の端子の両端にブラシ体のブラシホルダを溶接することで行われている。このため、端子に対してブラシホルダを位置決めするための治具が必要であったり、溶接によって端子に対するブラシホルダの位置がずれてしまい、結果としてブラシの延在方向が変化してしまう。また、先に述べた従来のスリップリング装置のように静止機器側の基板に半田付け固定されるブラシは、半田付けによってブラシの延在方向が変化してしまう。そしてこれらの延在方向が変化したブラシは、スリップリング装置の組み立て時にスリップリングの溝からはみ出てしまうため、当該溝に接触するように当該装置に組み付けなければならず、この作業が煩雑であった。
【0036】
これに対して本実施形態におけるブラシユニット10は、端子12のスリット35にブラシホルダ17を挿入する構成としたことにより、端子12に対してブラシホルダ17の位置や向きを一定に取り付け、ブラシ16の位置決め(端子12からブラシ16が延びる方向や角度の設定)を簡単かつ安定して確実に行うことができる。このため、スリップリング装置1の組み立て時に、ブラシ16をスリップリング20の溝20aに適当な圧力で適切に接触するように簡単に組み付けることができる。そしてこれにより、ブラシ16とスリップリング20との間の電気信号及び電力の伝達を確実に安定して行うことができる。即ち、スリップリング装置1の組み立てを行う作業者の技量によらず、スリップリング20の溝20aに対するブラシ16の押し付け具合を均一にでき、製品性能を安定化することができる。
【0037】
なお、端子12のスリット形成部36、36に隆起部36a、36aを設けたことにより、スリット35にブラシホルダ17を挿入した際に、隆起部36a、36aでブラシホルダ17の第2厚肉部33が挟み込まれるため、圧入強度をより良好に確保することができる。
【0038】
本実施形態におけるブラシユニット10は、上述のようにブラシホルダ17をカシメる際にブラシ16が広がることを防止するブラシ体15と、上述のようにブラシホルダ17をスリット35に挿入することでブラシ16の位置決めが可能な端子12とを組み合わせたことにより、スリップリング装置1の組み立て時にブラシ16をスリップリング20の溝20aに適切に接触するように最も簡単に組み付けることができる。そして組み立てられたスリップリング装置1は、ブラシ16とスリップリング20との間の電気信号及び電力の伝達をより確実かつ安定して行うことができる。
【0039】
なお、ブラシユニット10におけるブラシホルダ17は、上述のように第1、第2厚肉部31、33と薄肉部32とからなる。しかしながらブラシホルダ17の構成はこれに限られず、例えば第1厚肉部31と薄肉部32のみでブラシホルダ17を構成してもよく、カシメ時のブラシ16の広がりを防止することが可能である。
【0040】
また、上述したブラシ16の位置決めの効果のみを目的とする場合には、ブラシホルダ17を角柱形状とし、これを端子12のスリット35に装着する構成としてもよい。この場合、角柱形状のブラシホルダの1つの側面とこれに対向する側面に、端子12のスリット形成部36、36に嵌合可能な軸線方向へ延びる溝部を設けることが望ましい。
【0041】
以上、本実施形態によれば、簡単かつ安価な構成でブラシ16をスリップリング20に容易に接触させることが可能なブラシ体15、ブラシユニット10、スリップリング装置1を実現することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 スリップリング装置
2 回転側電線
3 静止側電線
4 回転シャフト
5 ハウジング
6 ハウジング本体
6a 半円筒部
6b 側板部
7 蓋部材
8 カバー
9 側板
10 ブラシユニット
11 ネジ
12 端子
13、14 玉軸受
15 ブラシ体
16 ブラシ
17 ブラシホルダ
18 端子の矩形部
19 熱収縮チューブ
20 スリップリング
21 絶縁板
22 パイプ
23、25 軸受リング
24 絶縁リング
27 熱収縮チューブ
31 第1厚肉部
32 薄肉部
33 第2厚肉部
35 スリット
36 スリット形成部
36a 隆起部
図1
図2
図3
図4
図5