(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165241
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ガラス製品の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B65G 45/04 20060101AFI20231108BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20231108BHJP
F16N 7/14 20060101ALI20231108BHJP
B08B 3/02 20060101ALN20231108BHJP
B08B 1/02 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
B65G45/04
F16C33/66 Z
F16N7/14
B08B3/02 C
B08B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076062
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】鑑継 薫
(72)【発明者】
【氏名】粟津 晃
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
3J701
【Fターム(参考)】
3B116AA02
3B116AB14
3B116BA08
3B116BA15
3B116BB24
3B116CC01
3B116CC03
3B201AA02
3B201AB14
3B201BA08
3B201BA15
3B201BB24
3B201CB11
3B201CC01
3B201CC12
3J701AA02
3J701AA12
3J701AA43
3J701AA52
3J701AA53
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA77
3J701CA01
3J701CA14
3J701EA37
3J701EA41
3J701FA32
3J701GA41
3J701XB03
3J701XB46
(57)【要約】
【課題】適切な量の潤滑液を軸受に供給する。
【解決手段】ガラス製品の製造方法は、搬送装置4aによってガラス製品Gを搬送する搬送工程を備える。搬送工程は、収容室26aに収容された軸受16に対して潤滑装置17の供給路27から潤滑液LFを供給する供給工程を備える。供給工程では、軸受16における転動軌道25の最下部25aを通過する転動体22に対して、この転動体22の高さの70%以上の高さまで潤滑液LFを供給する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置によってガラス製品を搬送する搬送工程を備えるガラス製品の製造方法において、
前記搬送装置は、搬送用のシャフトと、前記シャフトを支持する軸受と、前記軸受に潤滑液を供給する潤滑装置と、前記軸受を収容する収容室と、を備え、
前記軸受は、前記シャフトを支持する内輪と、前記内輪の外側に配置される外輪と、前記内輪と前記外輪との間に形成される転動軌道に沿って転動する転動体と、を備え、
前記潤滑装置は、前記収容室に前記潤滑液を供給する供給路と、前記収容室から前記潤滑液を排出する排出路と、を備え、
前記搬送工程は、前記収容室に収容された前記軸受に対して前記供給路から前記潤滑液を供給する供給工程を備え、
前記供給工程では、前記転動軌道の最下部を通過する前記転動体に対して、前記転動体の高さの70%以上の高さまで前記潤滑液を供給することを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項2】
前記収容室は、前記供給路から供給された前記潤滑液を貯留する貯留部を備え、
前記貯留部は、前記潤滑液を前記軸受に向かって溢れ出させる堰を有し、
前記堰は、前記転動軌道の前記最下部を通過する前記転動体の下端部の位置よりも高く構成される請求項1に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項3】
前記収容室は、前記供給路に接続される供給口と、前記排出路に接続される排出口と、を備え、
前記内輪は、前記内輪を前記シャフトに固定するための固定部を備え、
前記固定部は、前記排出口側に配置される請求項1又は2に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項4】
前記シャフトは、水平方向に対して傾斜する請求項3に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項5】
前記シャフトは、前記供給口から前記排出口に向かって下方に傾斜する請求項4に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項6】
ガラス製品を搬送する搬送装置を備えるガラス製品の製造装置において、
前記搬送装置は、搬送用のシャフトと、前記シャフトを支持する軸受と、前記軸受に潤滑液を供給する潤滑装置と、前記軸受を収容する収容室と、を備え、
前記軸受は、前記シャフトを支持する内輪と、前記内輪の外側に配置される外輪と、前記内輪と前記外輪との間に形成される転動軌道に沿って転動する転動体と、を備え、
前記潤滑装置は、前記収容室に前記潤滑液を供給する供給路と、前記収容室から前記潤滑液を排出する排出路と、を備え、
前記収容室は、前記供給路から供給された前記潤滑液を貯留する貯留部を備え、
前記貯留部は、前記潤滑液を前記軸受に向かって溢れ出させる堰を有し、
前記堰は、前記転動軌道の最下部を通過する前記転動体の下端部の位置よりも高く構成されることを特徴とするガラス製品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製品を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばディスプレイ用のガラス基板をはじめとするガラス板を製造する方法では、ガラス原板から切り出されたガラス板に端面加工を施す加工工程、加工後にガラス板を洗浄する洗浄工程、洗浄時にガラス板の表面に付着した洗浄液をエアナイフからの気体の吹き付けにより除去する乾燥工程等が行われる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、洗浄工程及び乾燥工程をガラス板に対して実施する際、ガラス板は例えばローラコンベアなどの搬送装置によって搬送される。具体的には、搬送装置は、搬送用のシャフトと、シャフトを支持する軸受と、軸受が収容される収容室と、収容室に潤滑液を供給する供給路と、収容室から潤滑液を排出する排出路とを備えると共に、排出路を通じて収容室から潤滑液と共に収容室内の気体を排出可能としている(同文献の請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の搬送装置では、供給路から収容室内に供給される潤滑液が不十分となる場合があり、軸受が早期に損耗するおそれがあった。軸受を長寿命化するには、軸受に適切な量の潤滑液を供給する必要がある。
【0006】
本発明は、適切な量の潤滑液を軸受に供給することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、搬送装置によってガラス製品を搬送する搬送工程を備えるガラス製品の製造方法において、前記搬送装置は、搬送用のシャフトと、前記シャフトを支持する軸受と、前記軸受に潤滑液を供給する潤滑装置と、前記軸受を収容する収容室と、を備え、前記軸受は、前記シャフトを支持する内輪と、前記内輪の外側に配置される外輪と、前記内輪と前記外輪との間に形成される転動軌道に沿って転動する転動体と、を備え、前記潤滑装置は、前記収容室に前記潤滑液を供給する供給路と、前記収容室から前記潤滑液を排出する排出路と、を備え、前記搬送工程は、前記収容室に収容された前記軸受に対して前記供給路から前記潤滑液を供給する供給工程を備え、前記供給工程では、前記転動軌道の最下部を通過する前記転動体に対して、前記転動体の高さの70%以上の高さまで前記潤滑液を供給することを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、軸受における転動軌道の最下部を通過する転動体に対して、この転動体の高さの70%以上の高さまで潤滑液を供給することで、軸受に適量の潤滑液を供給でき、内輪、外輪及び転動体の損耗を抑制することが可能となる。
【0009】
本発明に係るガラス製品の製造方法において、前記収容室は、前記供給路から供給された前記潤滑液を貯留する貯留部を備え、前記貯留部は、前記潤滑液を前記軸受に向かって溢れ出させる堰を有し、前記堰は、前記転動軌道の前記最下部を通過する前記転動体の下端部の位置よりも高く構成されてもよい。
【0010】
かかる構成によれば、貯留部の堰から潤滑液を溢れ出させることで、軸受に対して適量の潤滑液を供給することが可能となる。
【0011】
本発明に係るガラス製品の製造方法において、前記収容室は、前記供給路からの前記潤滑液を前記収容室の内部に供給する供給口と、前記軸受を通過した前記潤滑液を前記収容室の外部に排出する排出口とを備え、前記内輪は、前記内輪を前記シャフトに固定するための固定部を備え、前記固定部は、前記排出口側に配置されてもよい。
【0012】
固定部が供給口側に設けられていると、収容室内において、潤滑液を軸受に供給するための空間が制限されてしまう。本発明では、固定部を排出口側に配置することで、収容室内における潤滑液の供給のための空間を広く確保することができる。
【0013】
本発明に係るガラス製品の製造方法において、前記シャフトは、水平方向に対して傾斜してもよい。この場合において、前記シャフトは、前記供給口から前記排出口に向かって下方に傾斜してもよい。
【0014】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス製品を搬送する搬送装置を備えるガラス製品の製造装置において、前記搬送装置は、搬送用のシャフトと、前記シャフトを支持する軸受と、前記軸受に潤滑液を供給する潤滑装置と、前記軸受を収容する収容室と、を備え、前記軸受は、前記シャフトを支持する内輪と、前記内輪の外側に配置される外輪と、前記内輪と前記外輪との間に形成される転動軌道に沿って転動する転動体と、を備え、前記潤滑装置は、前記収容室に前記潤滑液を供給する供給路と、前記収容室から前記潤滑液を排出する排出路と、を備え、前記収容室は、前記供給路から供給された前記潤滑液を貯留する貯留部を備え、前記貯留部は、前記潤滑液を前記軸受に向かって溢れ出させる堰を有し、前記堰は、前記転動軌道の最下部を通過する前記転動体の下端部の位置よりも高く構成されることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、貯留部の堰から潤滑液を溢れ出させることで、軸受に対して適量の潤滑液を供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、適切な量の潤滑液を軸受に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】
図2のIII-III矢視線に係る断面図である。
【
図5】ガラス製品の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図5は、本発明に係るガラス製品の製造装置及び製造方法の一実施形態を示す。以下では、ガラス製品として矩形状のガラス板を例示するが、ガラス製品の形状は本実施形態に限定されない。
【0019】
図1に示すように、ガラス製品の製造装置1は、洗浄部2と、乾燥部3と、ガラス板Gを所定の搬送方向Xに沿って搬送する搬送装置4a,4bと、を備える。以下、製造装置1におけるこれらの構成要素の位置関係を説明する場合に、ガラス板Gの搬送方向Xに基づいて、「上流側」、「下流側」の用語を用いる場合がある。
【0020】
洗浄部2は、第一洗浄装置5と、この第一洗浄装置5の下流側に設けられる第二洗浄装置6とを備える。
【0021】
第一洗浄装置5は、洗浄液をガラス板Gに供給する装置(以下「第一供給装置」という)7と、第一供給装置7の下流側に配置される洗浄具8とを備える。
【0022】
第一供給装置7は、ガラス板Gの表面(上面Ga及び下面Gb)の全域に洗浄液9を供給するように、上下一対の供給装置を含む。第一供給装置7によって供給される洗浄液9には、例えば純水を使用することができ、必要に応じて洗剤(酸性洗剤、アルカリ性洗剤)や界面活性剤、アルカリイオン水等を添加してもよい。
【0023】
洗浄具8は、ガラス板Gの表面Ga,Gbを擦って表面Ga,Gbに付着した異物等の汚れを除去する上下一対の洗浄ローラにより構成される。洗浄ローラは、ガラス板Gとの接触部をスポンジ等の弾性材料で形成したものであってもよく、ブラシで形成したものであってもよい。前者の場合、洗浄ローラはスポンジローラとなり、後者の場合、洗浄ローラはブラシローラとなる。洗浄ローラに代えて洗浄ディスクを用いてもよく、洗浄ローラと洗浄ディスクを組み合わせてもよい。
【0024】
第二洗浄装置6は、第一洗浄装置5を通過したガラス板Gにリンス液(すすぎ液)10を供給する上下一対の供給装置(以下「第二供給装置」という)11を備える。第二供給装置11によってガラス板Gに供給されるリンス液10としては、純水など公知の種類のリンス用液体を使用することが可能である。
【0025】
図1に示すように、乾燥部3は、ガラス板Gに気体12を吹き付ける上下一対の第一エアナイフ13と、第一エアナイフ13の下流側に設けられる上下一対の第二エアナイフ14と、を備える。
【0026】
第一エアナイフ13は、金属製であり、例えばステンレス鋼により構成される。第一エアナイフ13は、第二洗浄装置6を通過したガラス板Gの表面Ga,Gbにクリーンドライエア等の気体12を吹き付けるための気体吹付装置である。第一エアナイフ13は、気体12を噴出する噴出口13aを備える。
【0027】
第二エアナイフ14は、金属製であり、例えばステンレス鋼により構成される。第二エアナイフ14は、第一エアナイフ13と同じ形状を有していてもよい。第二エアナイフ14は、第一エアナイフ13を通過したガラス板Gの表面Ga,Gbにクリーンドライエア等の気体12を吹き付けるための気体吹付装置である。第二エアナイフ14は、気体12を噴出する噴出口14aを備える。
【0028】
図1に示すように、搬送装置4a,4bは、洗浄部2においてガラス板Gを搬送する第一搬送装置4aと、乾燥部3においてガラス板Gを搬送する第二搬送装置4bと、を含む。各搬送装置4a,4bは、例えばローラコンベアにより構成される。
【0029】
図1及び
図2に示すように、各搬送装置4a,4bは、ガラス板Gの搬送方向Xに沿って間隔をおいて配置される複数の搬送ローラ15と、搬送ローラ15を支持する軸受16と、軸受16に水等の潤滑液LFを供給する潤滑装置17と、を主に備える。
【0030】
図2に示すように、搬送ローラ15は、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する水平方向に対して所定の角度θで傾斜している。搬送ローラ15の傾斜角度θは、1~30°とされることが好ましい。この構成により、搬送ローラ15によって搬送されるガラス板Gは、傾斜姿勢で搬送されることになる。
【0031】
上記の傾斜姿勢により、ガラス板Gは、その幅方向(搬送方向Xに直交する方向)における一方の端部が、ガラス板Gの幅方向における他方の端部よりも下方に位置することになる。ガラス板Gにおいて下方に位置する一方の端部は、図示しないローラによって支持された状態で搬送されてもよい。
【0032】
上記のように、搬送ローラ15によってガラス板Gが傾斜姿勢で搬送されることにより、ガラス板Gに供給された洗浄液9又はリンス液10は、ガラス板Gの幅方向における他方の端部側から、一方の端部側に向かって流れ、この一方の端部から流れ落ちることになる。
【0033】
図2に示すように、搬送ローラ15は、ガラス板Gを支持する支持部としてのローラ本体18と、ローラ本体18を支持するシャフト19とを含む。
【0034】
ローラ本体18は、例えば樹脂により構成されるが、ローラ本体18の材質は本実施形態に限定されない。本実施形態では、シャフト19の長手方向に間隔をおいて複数の円板状のローラ本体18が形成され得るが、これに限らず、シャフト19の長手方向に長いロール状のローラ本体18を使用してもよい。
【0035】
シャフト19は金属製であり、搬送方向Xに対して直交する方向に延びる。シャフト19は、図示しない駆動装置によって回転駆動される。シャフト19は、水平方向に対して傾斜するように、軸受16によって支持されている。
【0036】
図2乃至
図4に示すように、軸受16は、シャフト19を回転可能に支持する。軸受16は、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、特殊環境用玉軸受、スラフト玉軸受、自動調心玉軸受、自動調心ころ軸受などにより構成される。軸受16は、シャフト19を支持する内輪20と、内輪20の外側に配置される外輪21と、内輪20と外輪21との間で転動する複数の転動体22と、を備える。
【0037】
内輪20は、例えばPEEK等の樹脂又はセラミックスにより構成されるが、内輪20の材質は本実施形態に限定されない。内輪20は、シャフト19が挿通される挿通孔20aと、外周面20bと、内輪20をシャフト19に固定するための固定部20cと、を備える。
【0038】
挿通孔20aは、内輪20の軸方向の一端部から他端部まで貫通している。外周面20bは、転動体22が接触した状態で転動するための軌道面を構成する。固定部20cは、内輪20における軸方向の一端部のみに形成されるフランジ状の部分である。
【0039】
図3に示すように、固定部20cは、ねじ部材等の固定部材23が嵌まる複数のねじ孔24を有する。複数のねじ孔24は、固定部20cの周方向に間隔をおいて形成されている。ねじ孔24は、固定部20cをその半径方向に貫通するように形成されている。ねじ孔24に嵌め込まれた固定部材23は、その先端部がシャフト19に接触している。
【0040】
外輪21は、例えばPEEK等の樹脂又はセラミックスにより構成されるが、外輪21の材質は本実施形態に限定されない。外輪21は、内周面21aと、外周面21bとを有する。内周面21aは、内輪20の外周面20bと対向するように配置されている。内周面21aは、転動体22が接触して転動することが可能な軌道面を構成する。内周面21aは、球面状に構成されており、その曲率中心は、軸受16の中心と一致している。
【0041】
上記の構成により、外輪21の内周面21aと、内輪20の外周面20bとの間に、転動体22が転動することが可能な円環状の転動軌道25が構成されている。
【0042】
転動体22は、例えばPEEK等の樹脂又はセラミックスにより構成されるが、転動体22の材質は本実施形態に限定されない。転動体22は、ボール状(球体状)に構成されるが、転動体22の形状は本実施形態に限定されない。例えば、転動体22は、円柱状、円錐状、針状に構成されてもよい。このような転動体22を用いた軸受16としては、例えば円すいころ軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受が挙げられる。
【0043】
図3に示すように、複数の転動体22は、転動軌道25に沿って所定の間隔をおいて配置されている。複数の転動体22は、一定の間隔を維持するように保持器(図示略)によって保持されている。
図2及び
図4に示すように、転動軌道25に沿って配置される複数の転動体22は、複列に配されている。すなわち、複数の転動体22は、第一列に配される転動体22aと、第二列に配される転動体22bとを含む。
【0044】
図2及び
図4に示すように、各搬送装置4a,4bは、シャフト19の一部及び軸受16を収容するケーシング26を備え、潤滑装置17は、ケーシング26に潤滑液LFを供給する供給路27と、ケーシング26から潤滑液LFを排出する排出路28と、を備える。
【0045】
ケーシング26は、例えば樹脂により構成されるが、ケーシング26の材質は本実施形態に限定されない。ケーシング26は、その内部に、シャフト19の一部及び軸受16を収容する収容室26aを有する。
【0046】
図2及び
図4に示すように、収容室26aは、側壁部29a,29bと、軸受16を支持する支持部30と、供給路27に接続される供給口31と、供給路27から供給された潤滑液LFを貯留する貯留部32と、排出路28に接続される排出口33と、を備える。
【0047】
側壁部29a,29bは、供給口31側及び貯留部32側に位置する第一側壁部29aと、排出口33側に位置する第二側壁部29bとを含む。各側壁部29a,29bは、シャフト19を挿通するための挿通孔29cを有する。挿通孔29cは、シャフト19の断面形状と相似であり、かつシャフト19よりも僅かに大きくなるように構成される。
【0048】
支持部30は、供給口31と排出口33との間において、収容室26aの一部に形成されている。支持部30は、軸受16の外輪21に接触する支持面30aを有する。支持面30aは、外輪21の外周面21bの全周にわたってこの外周面21bに接触している。
【0049】
供給口31は、収容室26aの底部、具体的には貯留部32の底部に形成される開口部又は貫通孔である。供給口31の開口径D1は、例えば0.1~5mmであることが好ましい。
【0050】
図2及び
図4に示すように、貯留部32は、潤滑液LFを軸受16に向かって溢れ出させる堰34を有する。
【0051】
堰34は、収容室26aの底部から上方に突出する壁部である。
図4に示すように、堰34は、収容室26aの第一側壁部29aと対向する第一側面34aと、第一側面34aとは反対側に位置する第二側面34bと、潤滑液LFを軸受16に案内する案内面34cと、を含む。
【0052】
図4に示すように、第一側面34aは、収容室26aの第一側壁部29aから離れた位置において、この第一側壁部29aとほぼ平行となるように形成されている。この構成により、第一側面34aと収容室26aの第一側壁部29aとの間に、潤滑液LFを貯留することが可能な空間が形成されている。
【0053】
第二側面34bは、軸受16の外輪21の側面に接触している。すなわち、第二側面34bは、軸受16の位置決めを行う位置決め部として機能する。
【0054】
図4に示すように、案内面34cは、第一案内面34c1と、第二案内面34c2とを含む。第一案内面34c1及び第二案内面34c2は、平坦面により構成されるが、これに限らず、曲面により構成されてもよい。また、案内面34cは、一つの曲面又は一つの平坦面により構成されてもよい。
【0055】
第一案内面34c1は、第一側面34a及び第二案内面34c2と繋がっている。第一案内面34c1は、堰34において最も高い位置にあり、堰34の頂部を構成する。第一案内面34c1は、転動軌道25の最下部25aにおける外輪21の内周面21aの位置よりも高い位置にある。したがって、第一案内面34c1は、転動軌道25の最下部25aを通過する転動体22の下端部よりも高い位置にある。
【0056】
第二案内面34c2は、第一案内面34c1及び第二側面34bと繋がっている。第二案内面34c2は、第一側面34a側から第二側面34b側に向かうにつれて徐々に下方に傾斜する傾斜面により構成される。第二案内面34c2があるため、堰34と転動体22aとが衝突した場合において、転動体22aが欠けてしまうのを抑制できる。
【0057】
排出口33は、シャフト19の長手方向に沿って供給口31から離れた位置で、収容室26aの底部に形成される開口部又は貫通孔である。排出口33の開口径D2は、供給口31の開口径D1よりも大きいことが好ましい。排出口33の開口径D2は、例えば0.2~7mmであることが好ましい。
【0058】
図2及び
図4に示すように、排出口33の上方には、軸受16の内輪20における固定部20cが配置されている。このように、内輪20の固定部20cを供給口31側、貯留部32側ではなく、排出口33側に設けることで、貯留部32における潤滑液LFの貯留空間及び潤滑液LFの流路を大きく確保することが可能となる。
【0059】
図2及び
図4に示すように、軸受16に支持されたシャフト19は、収容室26aの供給口31から排出口33に向かって下方に傾斜している。したがって、シャフト19は、ケーシング26の第一側壁部29aの挿通孔29cに挿通されている部分が、第二側壁部29bの挿通孔29cに挿通されている部分よりも高い位置にある。なお、ケーシング26は、シャフト19の傾斜に対応するように傾斜して配置されている。これにより、収容室26aにおける第一側壁部29aの挿通孔29cは、第二側壁部29bの挿通孔29cよりも高い位置に配されている。
【0060】
図2に示すように、供給路27は、潤滑液LFを収容するタンク35と、ポンプ36と、フィルタ37と、流量計38と、を備える。タンク35は、排出路28を流れる潤滑液LFを回収するように構成される。ポンプ36は、タンク35に収容されている潤滑液LFをケーシング26の収容室26aに圧送するように構成される。フィルタ37は、ポンプ36の下流側に設けられており、潤滑液LFに含まれる異物を回収することができる。流量計38は、フィルタ37の下流側に配置されているが、流量計38の位置は、本実施形態に限定されない。
【0061】
図2に示すように、排出路28は、気液分離槽39と、吸引装置40とを備える。気液分離槽39は、収容室26aから排出された潤滑液LF及び気体を分離するためのものである。気液分離槽39は、排気部41と、排液部42とを備える。排気部41は、吸引装置40に接続されている。排液部42は、供給路27のタンク35に潤滑液LFを流すように、タンク35の上方に配置されている。吸引装置40は、収容室26a内の気体を、排出路28を通じて吸引するためのものである。
【0062】
上記の構成により、潤滑装置17は、排出路28の排液部42からタンク35に戻された潤滑液LFを供給路27から収容室26aに送ることで、軸受16に対して潤滑液LFを循環供給することができる。
【0063】
以下、上記の構成を有する製造装置1を使用してガラス板Gを製造する方法について説明する。
図5に示すように、本方法は、加工工程S1と、洗浄工程S2と、乾燥工程S3と、を含む。この他、本方法は、搬送装置4a,4bによってガラス板Gを搬送する搬送工程を備える(
図1参照)。
【0064】
加工工程S1は、製造関連処理工程であり、例えば砥石によってガラス板Gの端面を加工する工程や、ガラス板Gの表面を研磨する工程、ガラス板Gの表面を粗化する工程が該当する。本方法では、加工工程S1の前工程として、ガラス原板から所望のサイズのガラス板Gを切り出す切断工程(製造関連処理工程)を設けてもよい。
【0065】
洗浄工程S2は、加工工程S1後のガラス板Gを洗浄する製造関連処理工程である。洗浄工程S2では、第一搬送装置4aによってガラス板Gを搬送方向Xに沿って搬送しつつ、第一洗浄装置5の第一供給装置7によって、ガラス板Gの表面Ga,Gbに洗浄液9を供給する。その後、第一洗浄装置5の洗浄具8によって、ガラス板Gの表面Ga,Gbに対して擦り洗浄を行う。
【0066】
その後、第一搬送装置4aによって搬送されるガラス板Gは、第二洗浄装置6に到達する。第二洗浄装置6では、搬送されてきたガラス板Gの表面Ga,Gbに第二供給装置11によってリンス液10を供給することで、ガラス板Gに対するリンス洗浄を行う。その後、第一搬送装置4aは、ガラス板Gを乾燥部3へと搬送する。
【0067】
乾燥工程S3は、洗浄工程S2後のガラス板Gを乾燥させる製造関連処理工程である。乾燥工程S3では、ガラス板Gを第二搬送装置4bによって搬送しつつ、このガラス板Gに対して、第一エアナイフ13から気体12を吹き付ける(第一乾燥工程)。これにより、ガラス板Gの表面Ga,Gbに残存していたリンス液10が除去される。
【0068】
その後、第一エアナイフ13を通過し、第二エアナイフ14に到達したガラス板Gに対して、第二エアナイフ14から気体12を吹き付ける(第二乾燥工程)。これにより、ガラス板Gの表面Ga,Gbを乾燥させることができる。
【0069】
搬送工程において、第一搬送装置4a及び第二搬送装置4bは、搬送ローラ15を駆動装置によって回転させることで、ガラス板Gを搬送方向Xに搬送する。この動作の他、搬送工程は、収容室26aに収容された軸受16に潤滑液LFを供給する供給工程を備える。
【0070】
供給工程において、潤滑装置17は、供給路27のポンプ36によってタンク35に収容されている潤滑液LFを収容室26aに送る。これにより、潤滑液LFは、収容室26aの供給口31を通じて貯留部32に供給される。供給工程では、流量計によって供給路27を流れる潤滑液LFの流量が測定されるとともに、収容室26aに供給される潤滑液LFの供給量が管理される。
【0071】
図4に示すように、供給工程において、供給口31から供給された潤滑液LFは、貯留部32に貯留される。貯留部32に供給された潤滑液LFは、堰34の第一側面34aを越え、案内面34c上を流れて軸受16を通過する。これにより、潤滑液LFは、軸受16の転動軌道25の最下部25aを通過する転動体22に供給される。
【0072】
潤滑液LFは、軸受16を通過する際に、その液面の高さH2が所定の基準高さH1以上となることが好ましい。潤滑液LFの液面の基準高さH1は、以下のように定義される。すなわち、転動軌道25の最下部25aに位置する転動体22と外輪21の内周面21aとの接触位置を基準位置RPとする。この基準位置RPから、転動体22の直径の70%の長さに相当する高さH1を基準高さとする。
【0073】
軸受16を通過する潤滑液LFの高さH2は、転動軌道25の最下部25aを通過する転動体22の上端部の高さと同一であってもよい。ただし、軸受16を通過する潤滑液LFの高さH2は、収容室26aの第一側壁部29aに形成されるシャフト19の挿通孔29cから潤滑液LFが溢れ出ないように、この挿通孔29cよりも低いことが好ましい。
【0074】
軸受16を通過した潤滑液LFは、排出口33を通じて収容室26aの外部に排出される。この際、吸引装置40によって、収容室26a内に存在する気体(空気)も潤滑液LFとともに排出口33から排出される。
【0075】
収容室26aから排出された気体及び潤滑液LFは、排出路28を通じて気液分離槽39に到達する。気液分離槽39は、気体と潤滑液LFとを分離し、分離した気体と潤滑液LFとを、排気部41及び排液部42から排出する。分離された潤滑液LFは、排液部42からタンク35へと落下する。タンク35に回収された潤滑液LFは、供給路27を通じて収容室26aに再び供給される。
【0076】
搬送工程では、シャフト19の回転による軸受16の摩耗により、塵埃が発生する。上記のように、排出路28によって収容室26aから潤滑液LF及び気体を排出することで、この塵埃を収容室26aから排出することが可能となる。なお、排液部42からタンク35に回収された潤滑液LFに含まれる塵埃等の異物は、供給路27のフィルタ37によって除去される。
【0077】
以上説明した本実施形態に係るガラス板Gの製造装置1及び製造方法によれば、供給工程において、軸受16における転動軌道25の最下部25aを通過する転動体22に対して、基準高さH1(転動体22の直径の70%の長さに相当する高さ)以上の高さH2まで潤滑液LFを供給することで、軸受16に適量の潤滑液LFを供給することができる。また、貯留部32の堰34から潤滑液LFを溢れ出させることで、軸受16に対して適量の潤滑液LFを供給することが可能となる。これにより、軸受16における内輪20、外輪21及び転動体22の損耗を抑制することができる。したがって、軸受16を長寿命化することで、ガラス板Gの製造コストを可及的に低減することが可能となる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0079】
上記の実施形態では、シャフト19を傾斜姿勢で支持する軸受16を備える製造装置1を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。製造装置1は、シャフト19を水平姿勢で支持する軸受16を備えてもよい。
【0080】
上記の実施形態では、収容室26aの供給口31から排出口33に向かって下方に傾斜するシャフト19を備える搬送装置4a,4bを例示したが、本発明はこの構成に限定されない。搬送装置4a,4bのシャフト19は、排出口33から供給口31に向かって下方に傾斜してもよい。
【0081】
上記の実施形態では、本発明を洗浄部2(洗浄工程S2)と、乾燥部3(乾燥工程S3)とに適用したが、本発明はこの構成に限定されない。発塵が問題となりやすく、潤滑装置による発塵防止効果が顕著となるので、本発明を乾燥部3(乾燥工程S3)に適用することが好ましい。
【符号の説明】
【0082】
1 製造装置
4a 第一搬送装置
4b 第二搬送装置
16 軸受
17 潤滑装置
19 シャフト
20 内輪
20c 固定部
21 外輪
22 転動体
25 転動軌道
25a 転動軌道の最下部
26a 収容室
27 供給路
28 排出路
31 供給口
32 貯留部
33 排出口
34 堰
G ガラス板(ガラス製品)
H1 基準高さ
H2 軸受に供給される潤滑液の高さ
LF 潤滑液