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特開2023-165247気液接触器、密閉式冷却塔、及びリキッドデシカント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165247
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】気液接触器、密閉式冷却塔、及びリキッドデシカント
(51)【国際特許分類】
   F28C 1/14 20060101AFI20231108BHJP
   F28F 25/08 20060101ALI20231108BHJP
   F28F 21/02 20060101ALI20231108BHJP
   F24F 3/14 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F28C1/14
F28F25/08 E
F28F21/02
F24F3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076072
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】秋田 智行
【テーマコード(参考)】
3L053
【Fターム(参考)】
3L053BC05
(57)【要約】
【課題】気液接触器の熱交換能力を向上させる。
【解決手段】気液接触器は、管形状を有し、内側に熱媒が流れる熱媒流路を形成する第1伝熱管と、第1伝熱管から鉛直方向及び水平方向にそれぞれ離間して配置された第2伝熱管であって、管形状を有し、内側に熱媒が流れる熱媒流路を形成する第2伝熱管と、長尺状の第1気液接触部材と、を備え、第1気液接触部材は、第1伝熱管のうち、第2伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触し、かつ、第2伝熱管のうち、第1伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触して配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液接触器であって、
管形状を有し、内側に熱媒が流れる熱媒流路を形成する第1伝熱管と、
前記第1伝熱管から鉛直方向及び水平方向にそれぞれ離間して配置された第2伝熱管であって、管形状を有し、内側に熱媒が流れる熱媒流路を形成する第2伝熱管と、
長尺状の第1気液接触部材と、
を備え、
前記第1気液接触部材は、前記第1伝熱管のうち、前記第2伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触し、かつ、前記第2伝熱管のうち、前記第1伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触して配置されている、気液接触器。
【請求項2】
請求項1に記載の気液接触器であって、さらに、
前記第1伝熱管から前記第2伝熱管よりも水平方向に離間して配置された第3伝熱管であって、管形状を有し、内側に熱媒が流れる熱媒流路を形成する第3伝熱管と、
長尺状の第2気液接触部材と、
を備え、
前記第2気液接触部材は、前記第3伝熱管のうち、前記第1伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触し、かつ、前記第2伝熱管のうち、前記第3伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触して配置されている、気液接触器。
【請求項3】
請求項2に記載の気液接触器であって、
第1伝熱管及び第2伝熱管の延伸方向に沿って第1気液接触部材が複数配置され、
第3伝熱管及び第2伝熱管の延伸方向に沿って第2気液接触部材が複数配置され、
前記第1気液接触部材と、前記第2気液接触部材とは、前記延伸方向に沿って交互に配置されている、気液接触器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の気液接触器であって、
前記第1気液接触部材は、親水性を有する繊維で形成されている、気液接触器。
【請求項5】
請求項4に記載の気液接触器であって、
前記第1気液接触部材は、カーボンファイバーで形成されている、気液接触器。
【請求項6】
密閉式冷却塔であって、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の気液接触器と、
前記気液接触器に向かって風を送る、もしくは前記気液接触器から風を排出するファンと、
前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内を流れる熱媒と、
前記第1伝熱管及び前記第2伝熱管と、前記密閉式冷却塔が冷却する冷却対象とを接続して、前記熱媒が流れる熱媒流路を形成する熱媒流路形成部と、
前記第1気液接触部材に供給される冷却水を、前記第1気液接触部材の鉛直方向の上方まで輸送する冷却水ポンプと、を備える、密閉式冷却塔。
【請求項7】
リキッドデシカントであって、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の気液接触器を内蔵する除湿器と、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の気液接触器を内蔵する再生機と、
前記除湿器が備える前記第1気液接触部材と、前記再生機が備える前記第1気液接触部材とに供給される液体調湿剤と、
前記液体調湿剤を、前記除湿器と前記再生機との間で循環させ、前記除湿器が備える前記第1気液接触部材と、前記再生機が備える前記第1気液接触部材との鉛直方向の上方ま
で輸送する循環ポンプと、
前記除湿器に内蔵された前記気液接触器に向かって風を送る、もしくは前記気液接触器から風を排出する除湿器側ファンと、
前記再生機に内蔵された前記気液接触器に向かって風を送る、もしくは前記気液接触器から風を排出する再生機側ファンと、
前記除湿器が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内と、前記再生機が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内とを循環する熱媒と、
前記除湿器が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内に循環する前記熱媒を冷却し、前記再生機が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内に循環する前記熱媒を加熱するヒートポンプと、
前記除湿器と前記再生機との間で前記液体調湿剤の熱交換を行う熱交換器と、
を備える、リキッドデシカント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液接触器、密閉式冷却塔、及びリキッドデシカントに関する。
【背景技術】
【0002】
気液接触板の上方から散水すると共に気液接触板に風を送り、気液接触板上での水の蒸発熱を利用した気液接触装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された気液接触装置では、斜交ハニカムに散水が行われると共に風が送られる。散水された水は、斜交ハニカムを形成するシート上を流れる。
【0003】
特許文献2には、気液接触を利用した除湿空調装置が記載されている。この装置では、伝熱流体を内部に導通させる伝熱管が上下方向に沿って離間して配置され、複数のフィンが離間した伝熱管を接続している。複数のフィンは、上下方向に平行な平板形状を有し、伝熱管の長手軸にそって間隔を空けて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-249341号公報
【特許文献2】特開2003-326102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された斜交ハニカムは、熱交換を行う熱媒が流れる筒状態と離間しているため、筒状態と直接的に熱交換を行うことができない。そのため、斜交ハニカムのシート上で水が蒸発すると、シートの温度が下がり、シート上の水の蒸発速度が低下する。その結果、気液接触による効率向上が限られてしまう。
【0006】
特許文献2に記載された装置では、フィンが伝熱管に接続しているものの、フィンと伝熱管とで熱交換が行われるのは、フィンのうちの伝熱管の直下に位置する部分だけである。そのため、伝熱管とフィンとの熱交換が十分に行われず、伝熱管内を通る熱媒の温度変化が抑制されるおそれがある。また、フィン形状が平板かつ上下方向に平行な面を有するため、液体調湿剤がフィンの表面を伝って真っ直ぐに鉛直下方に流れる。そのため、フィンの表面上での液体調湿剤の滞在時間が短く、反応が平衡に達しないおそれがある。この結果、上方から供給する液体調湿剤の流量を多くしなければならず、ポンプ損や顕熱損が増加してしまう。
【0007】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、気液接触器の熱交換能力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0009】
(1)本発明の一形態によれば、気液接触器が提供される。この気液接触器は、管形状を有し、内側に熱媒が流れる熱媒流路を形成する第1伝熱管と、前記第1伝熱管から鉛直方向及び水平方向にそれぞれ離間して配置された第2伝熱管であって、管形状を有し、内側に熱媒が流れる熱媒流路を形成する第2伝熱管と、長尺状の第1気液接触部材と、を備え、前記第1気液接触部材は、前記第1伝熱管のうち、前記第2伝熱管と対向する外周面と
は逆側の外周面に接触し、かつ、前記第2伝熱管のうち、前記第1伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触して配置されている。
【0010】
この構成によれば、第1伝熱管と、第2伝熱管とは、鉛直方向及び水平方向にずれた位置に配置されている。第1気液接触部材は、第1伝熱管と第2伝熱管とが互いに対向する面とは逆側の外周面に接触しているため、第1伝熱管の表面と、第2伝熱管の表面とを接続している。結果として、第1気液接触部材は、水平方向に対して傾斜して第1伝熱管と、第2伝熱管とを接続する。第1気液接触部材に冷却水などが供給されると、冷却水は、傾斜している第1気液接触部材を伝って、第1伝熱管と第2伝熱管との間の移動中に、蒸発することで第1気液接触部材を冷却する。第1気液接触部材を介して第1伝熱管及び第2伝熱管に直接的に熱が伝わるため、第1伝熱管内を流れる熱媒と、第2伝熱管内を流れる熱媒とが、冷却水の蒸発により効率的に冷却され、本構成の熱交換能力が向上する。また、第1気液接触部材から、第1伝熱管及び第2伝熱管へと直接的に熱が伝わることにより、第1気液接触部材における冷却水が蒸発による吸熱で温度が低下することを抑制できる。この結果、温度低下による冷却水の気液平衡の遷移が抑制され、気液の反応性が向上する。また、第1気液接触部材が鉛直方向に平行ではなく、水平方向に傾斜しているため、第1気液接触部材における冷却水の滞在時間が長くなる。この結果、気液の接触効率が向上し、第1気液接触部材に散布する冷却水等の使用量を削減でき、冷却水を第1気液接触部材の上方に送るためのポンプ動力等を抑制できる。冷却水の蒸発を促進できるため、熱媒を効率的に冷却できる。
【0011】
(2)上記態様の気液接触器において、さらに、前記第1伝熱管から前記第2伝熱管よりも水平方向に離間して配置された第3伝熱管であって、管形状を有し、内側に熱媒が流れる熱媒流路を形成する第3伝熱管と、長尺状の第2気液接触部材と、を備え、前記第2気液接触部材は、前記第3伝熱管のうち、前記第1伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触し、かつ、前記第2伝熱管のうち、前記第3伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触して配置されていてもよい。
この構成によれば、第1気液接触部材に加えて、第2気液接触部材を備えている。第2気液接触部材は、第3伝熱管と第2伝熱管とが互いに対向する面とは逆側の外周面に接触しているため、第3伝熱管の表面と、第2伝熱管の表面とを接続している。第3伝熱管が、第1伝熱管から第2伝熱管よりも水平方向に離間して配置されている。そのため、第1伝熱管が第2伝熱管と成す傾斜と、第3伝熱管が第2伝熱管と成す傾斜とは、第2伝熱管の延伸方向を通る鉛直面に対して、反対側に傾斜している。この結果、本構成の気液接触器では、第1気液接触部材と第2気液接触部材とによって、冷却水等が伝わる流路が複雑に形成されることで気液接触率をさらに向上させることができる。
【0012】
(3)上記態様の気液接触器において、第1伝熱管及び第2伝熱管の延伸方向に沿って第1気液接触部材が複数配置され、第3伝熱管及び第2伝熱管の延伸方向に沿って第2気液接触部材が複数配置され、前記第1気液接触部材と、前記第2気液接触部材とは、前記延伸方向に沿って交互に配置されていてもよい。
この構成によれば、第1伝熱管及び第2伝熱管の延伸方向に沿って、第1気液接触部材と第2気液接触部材とが交互に複数配置されている。そのため、冷却水等が伝わる流路が更に複雑に形成されているため、気液接触率をさらに向上させることができる。
【0013】
(4)上記態様の気液接触器において、前記第1気液接触部材は、親水性を有する繊維で形成されていてもよい。
この構成によれば、第1気液接触部材が親水性を有する繊維で形成されているため、毛管力により、冷却水の分散性が向上する。
【0014】
(5)上記態様の気液接触器において、前記第1気液接触部材は、カーボンファイバーで
形成されていてもよい。
この構成によれば、第1気液接触部材が熱伝導率の高いカーボンファイバーで形成されるため、第1気液接触部材と、第1伝熱管及び第2伝熱管との間での熱交換能力がさらに向上する。
【0015】
(6)本発明の他の一形態によれば、密閉式冷却塔が提供される。この密閉式冷却塔は、上記形態の気液接触器と、前記気液接触器に向かって風を送る、もしくは前記気液接触器から風を排出するファンと、前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内を流れる熱媒と、前記第1伝熱管及び前記第2伝熱管と、前記密閉式冷却塔が冷却する冷却対象とを接続して、前記熱媒が流れる熱媒流路を形成する熱媒流路形成部と、前記第1気液接触部材に供給される冷却水を、前記第1気液接触部材の鉛直方向の上方まで輸送する冷却水ポンプと、を備える。
この構成によれば、冷却水ポンプにより第1気液接触部材に冷却水が供給され、第1気液接触部材を伝わる冷却水は、ファンによって送られた風により蒸発する。冷却水の蒸発の吸熱により、第1気液接触部材に接続されている第1伝熱管内及び第2伝熱管内を流れる熱媒が冷却される。冷却された熱媒は、熱媒流路形成部により形成された熱媒流路内を流れて、冷却対象を冷却する。本構成では、気液接触器の熱交換能力が高いため、冷却対象を効率的に冷却できる。
【0016】
(7)本発明の他の一形態によれば、リキッドデシカントが供給される。このリキッドデシカントは、上記形態の気液接触器を内蔵する除湿器と、上記形態の気液接触器を内蔵する再生機と、前記除湿器が備える前記第1気液接触部材と、前記再生機が備える前記第1気液接触部材とに供給される液体調湿剤と、前記液体調湿剤を、前記除湿器と前記再生機との間で循環させ、前記除湿器が備える前記第1気液接触部材と、前記再生機が備える前記第1気液接触部材との鉛直方向の上方まで輸送する循環ポンプと、前記除湿器に内蔵された前記気液接触器に向かって風を送る、もしくは前記気液接触器から風を排出する除湿器側ファンと、前記再生機に内蔵された前記気液接触器に向かって風を送る、もしくは前記気液接触器から風を排出する再生機側ファンと、前記除湿器が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内と、前記再生機が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内とを循環する熱媒と、前記除湿器が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内に循環する前記熱媒を冷却し、前記再生機が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内に循環する前記熱媒を加熱するヒートポンプと、前記除湿器と前記再生機との間で前記液体調湿剤の熱交換を行う熱交換器と、を備える。
この構成によれば、循環ポンプにより除湿器と再生機とに内蔵される第1気液接触部材に液体調湿剤が供給される。除湿器内の第1気液接触部材を伝わる液体調湿剤は、ヒートポンプにより冷却された第1伝熱管内及び第2伝熱管内を流れる熱媒により冷却されると共に、除湿器側ファンによって送風される。この結果、除湿器内の液体調湿剤は、空気中の水分を吸着するため、除湿器内から外部へと除湿された空気が供給される。一方で、再生機内の第1気液接触部材を伝わる液体調湿剤は、ヒートポンプにより加熱された第1伝熱管内及び第2伝熱管内を流れる熱媒により加熱されると共に、再生機側ファンによって送風される。この結果、再生機内の液体調湿剤は、空気中へ水分を脱着するため、再生機内から外部へと加湿された空気が供給される。除湿器から排出される水分を吸着した液体調湿剤と、再生機から排出される水分を脱着した液体調湿剤とは、熱交換器により熱交換する。この結果、除湿器側から送られてきた液体調湿剤は、再生機により加熱されて水分を脱着する。一方で、再生機側から送られてきた液体調湿剤は、除湿器により冷却されて水分を吸着する。本構成では、熱交換能力の高い気液接触器が用いられることにより、除湿器及び再生機の第1気液接触部材を伝わる液体調湿剤の気液平衡の遷移を抑制することにより、除湿及び加湿を効率的に行うことができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、気液接触器、密閉
式冷却塔、リキッドデシカント及びこれらの装置を備えるシステム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態としての気液接触器を備える密閉式冷却塔の概略ブロック図である。
図2】気液接触器の説明図である。
図3】気液接触器の説明図である。
図4】気液接触器による熱媒の冷却についての説明図である。
図5】比較例の気液接触器の一部の概略断面図である。
図6】本実施形態と比較例との気液接触器の熱交換能力の検証条件である。
図7】気液接触器を備えるリキッドデシカントの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての気液接触器10を備える密閉式冷却塔100の概略ブロック図である。図1に示される密閉式冷却塔100では、気液接触器10に散水された冷却水の蒸発熱を利用して、冷却対象である熱源OBにより温度が上昇した熱媒40を冷却する。本実施形態の気液接触器10では、親水性を有する長尺状の気液接触部材11が、上下方向及び水平方向にそれぞれ離間して配置された管形状を有する複数の伝熱管12を、水平方向に対して傾斜して接続する。そのため、傾斜した気液接触部材11を伝って冷却水が下方の伝熱管12へと流れるため、冷却水が気液接触部材11に滞留する時間が長くなり、気液接触率が向上する。また、気液接触部材11が親水性を有するため、冷却水の分散性が向上する。
【0020】
図1に示されるように、密閉式冷却塔100は、2つの気液接触器10と、気液接触器10を内蔵しているケーシング60と、ケーシング60内に風を送るファン20と、気液接触器10に散水される冷却水72を鉛直方向の上方まで輸送するポンプ(冷却水ポンプ)50と、配管70と、気液接触器10と熱源(冷却対象)OBとの間を循環する熱媒40と、熱媒流路形成部30と、を備えている。
【0021】
ファン20は、ケーシング60の水平方向における中央付近の上方に配置されている。ファン20は、ケーシング60の外気を、ケーシング60内へと送り込む。ケーシング60内には、2つの気液接触器10が水平方向に離間して配置されている。2つの気液接触器10は、水平方向において、ファン20を通る鉛直方向を基準にケーシング60内に面対称に配置されている。ケーシング60には、ケーシング60の内側と外側を接続する2つの通気口61が形成されている。2つの通気口61は、ファン20を通る鉛直方向を基準として、ケーシング60の面対称となる位置、かつ、水平方向におけるファン20の中心から気液接触器10を結ぶ方向の延長上の位置に対応する側面に形成されている。そのため、ファン20によりケーシング60内へと送り込まれた外気は、気液接触器10に向かって送られ、通気口61を通ってケーシング60外へと流出する。
【0022】
配管70は、密閉式冷却塔100内を循環する冷却水72が流れる水路71を形成する。配管70のうち、2つの気液接触器10の上方に位置する部分では、複数の散水口73が形成されている。そのため、ポンプ50により気液接触器10の上方まで輸送された冷却水72は、気液接触器10へと散水される。気液接触器10を通過して下方に移動した冷却水72は、集められてポンプ50により再び気液接触器10の上方に輸送される。なお、冷却水72の一部は、気液接触器10における蒸発によって外気へと放出される。そのため、本実施形態では、冷却水72は、密閉式冷却塔100の外部から随時補給される。
【0023】
熱媒流路形成部30は、熱源OBと、気液接触器10が備える伝熱管12内との間で熱媒40が流れる熱媒流路31を形成する。2つの気液接触器10は、同じ形状及び同じ構造を有する。図1に示されるように、気液接触器10は、水平方向及び鉛直方向にそれぞれ離間して配置された複数の伝熱管12と、伝熱管12を接続する複数の気液接触部材11とを備えている。複数の伝熱管12は、管の内側に形成され、熱媒40が流れる熱媒流路12Fがそれぞれ同じ方向(図1:Y軸方向)を向くように、同じ向きに配列されている。
【0024】
図2及び図3は、気液接触器10の説明図である。図2には、冷却水72が散水される気液接触器10の概略斜視図が示されている。図2に示されるように、本実施形態の気液接触器10では、水平方向に沿って5列、かつ、鉛直方向に沿って7段の計35本の伝熱管12が、等間隔で配置されている。各伝熱管12は、5列で配列された水平方向(X軸方向)と、7段で配列された鉛直方向(Z軸方向)とのそれぞれに直交する伝熱管12の延伸方向(Y軸方向)に沿う直線状の配管である。ファン20により気液接触器10に送られる風は、X軸正方向と同じ流れ方向DRに沿って流れている。なお、図示されていないが、各熱媒流路12Fは、熱媒流路形成部30が形成する熱媒流路31に接続されている。また、図2に示される、X軸、Y軸、及びZ軸で構成される直交座標系CSは、図3以降で示される直交座標系CSと対応している。
【0025】
本実施形態の1つの気液接触部材11は、親水性を有する繊維である複数のカーボンファイバーで形成されてシート状の形状を有する。図2に示されるように、気液接触部材11は、12個の第1気液接触部材111と、12個の第2気液接触部材112とを備えている。第1気液接触部材111と、第2気液接触部材112とは、伝熱管12の延伸方向に沿って交互に配置されている。具体的には、Y軸負方向側から順番に、3個の第1気液接触部材111と、3個の第2気液接触部材112とが交互に層を形成して配列している。3個の第1気液接触部材111が、2層、4層、及び6層を形成し、3個の第2気液接触部材112が、1層、3層、及び5層を形成している。
【0026】
同じ伝熱管12に接続して3つの層を形成しているそれぞれ3個の第1気液接触部材111と、第2気液接触部材112とのそれぞれは、同じ形状を有する。なお、残り各9個の第1気液接触部材111及び第2気液接触部材112は、接続する伝熱管12が異なるが、同じ形状を有している。そのため、1つの第1気液接触部材111と、1つの第2気液接触部材112とについて説明し、他の第1気液接触部材111及び第2気液接触部材112についての説明を省略する。
【0027】
図3には、気液接触器10の概略正面図が示されている。説明のため、35本の伝熱管12のそれぞれには、図3に示されるように、1211~1215,1221~1225,1231~1235,1241~1245,1251~1255,1261~1265,及び1271~1275の符番が付されている。
【0028】
図3に示されるように、伝熱管1212に接続している第1気液接触部材111は、鉛直上方から順番に、伝熱管1212,1221,1232,1241,1252,1261,及び1271を接続している。第1気液接触部材111は、伝熱管1221のうち、伝熱管1232と対向するX軸正方向側の外周面SF2とは逆側のX軸負方向側の外周面SF1に接している。また、第1気液接触部材111は、伝熱管1232のうち、伝熱管1221と対向するX軸負方向側の外周面SF3とは逆側のX軸正方向側の外周面SF4に接している。なお、伝熱管1221の外周面のうち、外周面SF1が太い実線で示されている。また、伝熱管1232の外周面のうち、外周面SF3が太い実線で示されている。伝熱管1221と、伝熱管1232とは、鉛直方向及び水平方向にそれぞれ離間して配
置されている。そのため、伝熱管1221と伝熱管1232とは、第1気液接触部材111により水平方向に角度θ傾斜して接続されている。第1気液接触部材111は、各伝熱管1232,1241,1252,1261で同じような構造を有し、外周面に沿って折り返されて傾斜している。なお、伝熱管1221が第1伝熱管に相当し、伝熱管1232が第2伝熱管に相当する。
【0029】
図3に示されるように、伝熱管1212に接続している第2気液接触部材112は、鉛直上方から順番に、伝熱管1212,1223,1232,1243,1252,1263,及び1272を接続している。第2気液接触部材112は、伝熱管1223のうち、伝熱管1232と対向するX軸負方向側の外周面SF5とは逆側のX軸負方向側の外周面SF6に接している。また、第2気液接触部材112は、伝熱管1232のうち、伝熱管1223と対向するX軸正方向側の外周面とは逆側のX軸負方向側の外周面SF4に接している。なお、伝熱管1223の外周面のうち、外周面SF6が太い実線で示されている。また、伝熱管1232の外周面のうち、外周面SF4が太い実線で示されている。外周面SF3と、外周面SF4とは、Z軸負方向側の一部が重複している。伝熱管1223と、伝熱管1232とは、鉛直方向及び水平方向にそれぞれ離間して配置されている。そのため、伝熱管1221と伝熱管1232とは、第1気液接触部材111により水平方向に角度θ傾斜して接続されている。第2気液接触部材112は、各伝熱管1232,1243,1252,1263で同じような構造を有し、外周面に沿って折り返されて傾斜している。また、伝熱管1223は、第1気液接触部材111が接続している伝熱管1221から伝熱管1232よりも水平方向に離間して配置されている。そのため、第2気液接触部材112が伝熱管1232と成す傾斜角は、伝熱管1232の延伸軸OLを通る鉛直面FLを基準として、第1気液接触部材111が同じ伝熱管1232と成す傾斜角の反対側に形成されている。すなわち、第2気液接触部材112は、伝熱管1232に対して、第1気液接触部材111と反対側に折り返されて傾斜している。なお、伝熱管1223が第3伝熱管に相当する。
【0030】
図4は、気液接触器10による熱媒40の冷却についての説明図である。図4には、気液接触部材11を伝って流れる冷却水72の蒸発のイメージが示されている。図4に示される気液接触部材11では、説明のため、図3に示される気液接触部材11の傾斜角を変えて図示されている。図4に示されるように、冷却水72は、複数のカーボンファイバーの束で形成された気液接触部材11を伝って、ファン20による送風を受けて蒸発する。蒸発による気化熱が、気液接触部材11の熱伝導によって伝熱管12へと伝わり、伝熱管12内を通る熱媒40が冷却される。
【0031】
図5は、比較例の気液接触器10xの一部の概略断面図である。比較例の気液接触器10xでは、本実施形態の気液接触器10と比較して、気液接触部材11xが異なる。比較例では、気液接触部材11xは、鉛直方向に配置された伝熱管12を接続して、水平方向に対して90°傾斜している。なお、比較例における伝熱管12の延伸方向に沿った層数(図2)は、実施形態と同じ6層である。
【0032】
本実施形態の気液接触器10と、比較例の気液接触器10xとに対して、熱交換能力についてシミュレーションにより検証した。図6は、本実施形態と比較例との気液接触器10の熱交換能力の検証条件である。図6に示される外気温は、ケーシング60(図1)外の温度である。湿度は、ケーシング60外の空気の湿度である。滴下冷却水温度は、気液接触器10,10xに散水される冷却水72の温度である。伝熱管内熱媒温度は、各伝熱管12内を流れる熱媒40の温度である。風速は、ファン20(図1)によりケーシング60内に送られる風の速度である。検証した結果、本実施形態の気液接触器10の熱交換能力は、比較例の気液接触器10xの熱交換能力の約1.5倍であった。なお、本実施形態では、気液接触部材11のうち、傾斜方向に沿って、気液接触部材11の中央部の温度
が最も低く、伝熱管12の表面に接している部分の温度が最も高かった。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の気液接触器10は、長尺状の第1気液接触部材111を備えている。第1気液接触部材111は、図3に示されるように、伝熱管1221のうち、伝熱管1232と対向するX軸正方向側の外周面SF2とは逆側のX軸負方向側の外周面SF1に接している。また、第1気液接触部材111は、伝熱管1232のうち、伝熱管1221と対向するX軸負方向側の外周面SF3とは逆側のX軸正方向側の外周面SF4に接している。伝熱管1221と、伝熱管1232とは、鉛直方向及び水平方向にそれぞれ離間して配置されている。そのため、伝熱管1221と、伝熱管1232とは、鉛直方向及び水平方向にずれた位置に配置されている。第1気液接触部材111は、伝熱管1221と伝熱管1232とが互いに対向する外周面SF2,SF3とは逆側の外周面SF1,SF4に接しているため、伝熱管1221の表面と、伝熱管1232の表面とを接続している。結果として、第1気液接触部材111は、水平方向に対して傾斜して伝熱管1221と、伝熱管1232とを接続する。第1気液接触部材111に冷却水72が散水されると、冷却水72は、傾斜している第1気液接触部材111を伝って、伝熱管1221と伝熱管1232との間の移動中に、蒸発することで第1気液接触部材111を冷却する。第1気液接触部材111を介して伝熱管1221及び伝熱管1223に直接的に熱が伝わる。そのため、伝熱管1221,1232内を流れる熱媒40が冷却水72の蒸発により効率的に冷却され、気液接触器10の熱交換能力が向上する。また、第1気液接触部材111から、伝熱管1221,1232へと直接的に熱が伝わることにより、第1気液接触部材111における冷却水72が蒸発による吸熱で温度が低下することを抑制できる。この結果、温度低下による冷却水72の気液平衡の遷移が抑制され、気液の反応性が向上する。また、第1気液接触部材111が鉛直方向に平行ではなく、水平方向に傾斜しているため、第1気液接触部材111における冷却水72の滞在時間が長くなる。この結果、気液の接触効率が向上し、第1気液接触部材111に散水する冷却水72の使用量を削減でき、冷却水72を第1気液接触部材111の鉛直方向の上方に送るためのポンプ50の動力を抑制できる。冷却水72の蒸発を促進できるため、熱媒40を効率的に冷却できる。
【0034】
また、本実施形態の第2気液接触部材112は、図3に示されるように、伝熱管1223のうち、伝熱管1232と対向するX軸負方向側の外周面SF5とは逆側のX軸負方向側の外周面SF6に接している。また、第2気液接触部材112は、伝熱管1232のうち、伝熱管1223と対向するX軸正方向側の外周面SF4とは逆側のX軸負方向側の外周面SF3に接している。伝熱管1223と、伝熱管1232とは、鉛直方向及び水平方向にそれぞれ離間して配置されている。また、伝熱管1223は、第1気液接触部材111が接続している伝熱管1221から伝熱管1232よりも水平方向に離間して配置されている。本実施形態の気液接触器10は、第1気液接触部材111に加えて、第2気液接触部材112を備えている。第2気液接触部材112は、伝熱管1223と伝熱管1232とが互いに対向する外周面SF4,SF5とは逆側の外周面SF3,SF6に接しているため、伝熱管1223の表面と、伝熱管1232の表面とを接続している。伝熱管1223が、伝熱管1221から伝熱管1232よりも水平方向に離間して配置されている。そのため、伝熱管1221が伝熱管1232と成す傾斜と、伝熱管1223が伝熱管1232と成す傾斜とは、伝熱管1232の延伸軸OLを通る鉛直面FLに対して、反対側に傾斜している。この結果、本実施形態の気液接触器10では、第1気液接触部材111と第2気液接触部材112とによって、冷却水72が伝わる流路が複雑に形成されることで気液接触率をさらに向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態の気液接触部材11は、12個の第1気液接触部材111と、12個の第2気液接触部材112とを備えている。第1気液接触部材111と、第2気液接触部材112とは、伝熱管12の延伸方向に沿って交互に配置されている。本実施形態では、
伝熱管1221及び伝熱管1232の延伸方向に沿って、第1気液接触部材111と第2気液接触部材112とが交互に複数配置されている。そのため、冷却水72が伝わる流路が更に複雑に形成されているため、気液接触率をさらに向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態の気液接触部材11は、親水性を有する繊維である複数のカーボンファイバーで形成されてシート状の形状を有する。すなわち、気液接触部材11が親水性を有する繊維で形成されているため、毛管力により、冷却水72の分散性が向上する。また、気液接触部材11が熱伝導率の高いカーボンファイバーで形成されるため、気液接触部材11と、各伝熱管12との間での熱交換能力がさらに向上する。
【0037】
本実施形態の密閉式冷却塔100は、密閉式冷却塔100は、2つの気液接触器10と、ケーシング60内に風を送るファン20と、気液接触器10に散水される冷却水72を鉛直方向の上方まで輸送するポンプ50と、気液接触器10と熱源OBとの間を循環する熱媒40と、熱媒流路形成部30と、を備えている。そのため、ポンプ50により気液接触部材11に冷却水72が供給され、気液接触部材11を伝わる冷却水72は、ファン20によって送られた風により蒸発する。冷却水72の蒸発の吸熱により、気液接触部材11に接続されている伝熱管12内を流れる熱媒40が冷却される。冷却された熱媒40は、熱媒流路31内を流れて、熱源OBを冷却する。本実施形態の密閉式冷却塔100では、気液接触器10の熱交換能力が高いため、熱源OBを効率的に冷却できる。
【0038】
<第2実施形態>
図7は、気液接触器10を備えるリキッドデシカント500の概略ブロック図である。図7に示されるリキッドデシカント500は、冷却されることで水蒸気を吸着すると共に加熱されることで水蒸気を脱着する液体調湿剤110を用いて、除湿器200による除湿と、再生機300による加湿とを行う。
【0039】
図7に示されるように、リキッドデシカント500は、気液接触器10を内蔵する除湿器200と、気液接触器10を内蔵する再生機300と、気液接触器10に供給される液体調湿剤110と、液体調湿剤110を循環させる循環ポンプ51,52と、熱媒40と、熱媒40の加熱及び冷却を行うヒートポンプ120と、除湿器200と再生機300との間で液体調湿剤110の熱交換を行う熱交換器130と、除湿器側熱交換器140と、再生器側熱交換器150と、を備えている。
【0040】
除湿器200及び再生機300は、上記実施形態と同じ気液接触器10と、気液接触器10を内蔵しているケーシング60と、ケーシング60内に風を送るファン20と、を備えている。気液接触器10には、上記実施形態の冷却水72の代わりに、液体調湿剤110が散布される。図7では、液体調湿剤110の循環が実線で示されている。なお、除湿器200側では、熱交換器130及び除湿器側熱交換器140により冷却された(例えば、20℃)液体調湿剤110が循環する。再生機300側では、熱交換器130及び再生器側熱交換器150により加熱された(例えば、40℃)液体調湿剤110が循環する。図7では、温度の違いが液体調湿剤110を表す実線の太さで示されている。なお、除湿器200に内蔵されるファン20は、除湿器側ファンに相当する。再生機300に内蔵されるファン20は、再生機側ファンに相当する。
【0041】
循環ポンプ51は、除湿器200の気液接触器10から排出された液体調湿剤110を、再生機300へと循環させ、再生機300の気液接触器10の鉛直方向の上方へ輸送する。一方で、循環ポンプ52は、再生機300の気液接触器10から排出された液体調湿剤110を、除湿器200へと循環させ、除湿器200の気液接触器10の鉛直方向の上方へ輸送する。循環ポンプ51から送り出される低温の液体調湿剤110と、循環ポンプ52から送り出される液体調湿剤110とは、熱交換器130により熱交換される。
【0042】
ヒートポンプ120は、除湿器200側を循環する熱媒40を冷却し、再生機300側を循環する熱媒を加熱する。図7では、熱媒40の流れが破線で示されている。除湿器側熱交換器140は、熱交換器130による熱交換により冷却された液体調湿剤110を、ヒートポンプ120で冷却された熱媒40と熱交換させることにより冷却する。除湿器側熱交換器140の熱交換により冷却された液体調湿剤110は、除湿器200の気液接触器10に散布される。
【0043】
再生器側熱交換器150は、熱交換器130による熱交換により加熱された液体調湿剤110を、ヒートポンプ120で加熱された熱媒40と熱交換させることにより加熱する。再生器側熱交換器150の熱交換により加熱された液体調湿剤110は、再生機300の気液接触器10に散布される。
【0044】
第2実施形態のリキッドデシカント500では、気液接触器10の気液接触部材11において、ファン20によりケーシング60内に取り込まれた空気と、液体調湿剤110とが接触する。除湿器200内の液体調湿剤110は、空気中の水蒸気と吸着することにより、吸着熱が生じて発熱する。温度が上昇した液体調湿剤110は、伝熱管12内を通る熱媒40によって冷却される。一方で、再生機300内の液体調湿剤110は、空気中の水蒸気と吸着することにより、脱着熱が生じて冷却される。温度が低下した液体調湿剤110は、伝熱管12内を通る熱媒40によって加熱される。
【0045】
以上説明したように、第2実施形態のリキッドデシカント500は、気液接触器10を内蔵する除湿器200と、気液接触器10を内蔵する再生機300と、気液接触器10に供給される液体調湿剤110と、液体調湿剤110を循環させる循環ポンプ51,52と、熱媒40と、熱媒40の加熱及び冷却を行うヒートポンプ120と、除湿器200と再生機300との間で液体調湿剤110の熱交換を行う熱交換器130と、を備えている。第2実施形態では、循環ポンプ51,52により除湿器200と再生機300とに内蔵される気液接触部材11に液体調湿剤110が散布される。除湿器200内の気液接触部材11を伝わる液体調湿剤110は、ヒートポンプ120により冷却された伝熱管12内を流れる熱媒40により冷却されると共に、除湿器200側のファン20によって送風される。この結果、除湿器200内の液体調湿剤110は、ケーシング60内に送り込まれた空気中の水分を吸着するため、除湿器200内から外部へと除湿された空気が供給される。一方で、再生機300内の気液接触部材11を伝わる液体調湿剤110は、ヒートポンプ120により加熱された伝熱管12内を流れる熱媒40により加熱されると共に、再生機300側のファン20によって送風される。この結果、再生機300内の液体調湿剤110は、ケーシング60内に送り込まれた空気中へ水分を脱着するため、再生機300内から外部へと加湿された空気が供給される。除湿器200から排出される水分を吸着した液体調湿剤110と、再生機300から排出される水分を脱着した液体調湿剤110とは、熱交換器130により熱交換する。この結果、除湿器200側から送られてきた液体調湿剤110は、再生機300により加熱されて水分を脱着する。一方で、再生機300側から送られてきた液体調湿剤110は、除湿器200により冷却されて水分を吸着する。本実施形態のリキッドデシカント500では、熱交換能力の高い気液接触器10が用いられることにより、除湿器200及び再生機300の気液接触部材11を伝わる液体調湿剤110の気液平衡の遷移を抑制することにより、除湿及び加湿を効率的に行うことができる。
【0046】
<上記実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0047】
上記実施形態の気液接触器10が備える構成及び形状については、一例であって変形可能である。第1伝熱管及び第2伝熱管として機能する伝熱管12の数、形状、及び配置については変形可能である。図2に示される伝熱管12の水平方向に沿って配置される列数、鉛直方向に沿って配置される段数、及び延伸方向に沿って配置される層数については変形可能である。伝熱管12の形状は、異なっていてもよく、伝熱管12内の熱媒40が通る熱媒流路12Fの形状が異なっていてもよい。複数の伝熱管12は、必ずしも鉛直方向または水平方向に等間隔に配置されていなくてもよい。例えば、水平方向に対して所定の角度を成して、複数の伝熱管12が一直線上に配置されていてもよい。隣接する伝熱管12は、鉛直方向に沿う位置に配置されていなくてもよい。各伝熱管12の延伸方向は、必ずしも平行でなくてもよく、ねじりの関係であってもよい。伝熱管12の延伸方向は、直線状である必要はなく、気液接触部材11を表面に接続できる範囲で変形できる。
【0048】
気液接触部材11の数、形状、及び、配置についても変形可能である。気液接触部材11は、同じ形状の複数の第1気液接触部材111のみで形成されていてもよい。第1気液接触部材111と、第2気液接触部材112とは、伝熱管12の延伸方向に沿って交互に配置されていなくてもよい。第1気液接触部材111と、第2気液接触部材112との数は同じでなくてもよいし、延伸方向に沿う長尺状の幅が異なっていてもよい。気液接触部材11は、第1気液接触部材111と第2気液接触部材112とのいずれとも異なる第3気液接触部材を備えていてもよい。第1気液接触部材111の材質と、第2気液接触部材112の材質とが異なっていてもよい。気液接触部材11は、親水性を有さない材質で形成されていてもよく、繊維状の材質で形成されていなくてもよい。
【0049】
密閉式冷却塔100及びリキッドデシカント500に内蔵される気液接触器10の配置については、変形可能である。例えば、図1に示されるファン20の鉛直下方に気液接触器10が配置さえてもよい。ファン20が気液接触器10に送る風の向きについても変形可能である。ファン20は、図2に示されるように、水平方向に沿う流れ方向DRで気液接触器10に風を送らなくてもよく、例えば、伝熱管12の延伸方向(Y軸方向)に送風してもよい。また、ファン20は、気液接触器10から風を排出してもよい。具体的には、ファン20がケーシング60内の空気を外部へ排出する風の流れを生じさせる。この結果、気液接触器10に向かって風が流れる。リキッドデシカント500に用いられる液体調湿剤110は、塩化リチウムなど、周知の材質を適用できる。
【0050】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0051】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
気液接触器であって、
管形状を有し、内側に熱媒が流れる熱媒流路を形成する第1伝熱管と、
前記第1伝熱管から鉛直方向及び水平方向にそれぞれ離間して配置された第2伝熱管であって、管形状を有し、内側に熱媒が流れる熱媒流路を形成する第2伝熱管と、
長尺状の第1気液接触部材と、
を備え、
前記第1気液接触部材は、前記第1伝熱管のうち、前記第2伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触し、かつ、前記第2伝熱管のうち、前記第1伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触して配置されている、気液接触器。
[適用例2]
適用例1に記載の気液接触器であって、さらに、
前記第1伝熱管から前記第2伝熱管よりも水平方向に離間して配置された第3伝熱管であって、管形状を有し、内側に熱媒が流れる熱媒流路を形成する第3伝熱管と、
長尺状の第2気液接触部材と、
を備え、
前記第2気液接触部材は、前記第3伝熱管のうち、前記第1伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触し、かつ、前記第2伝熱管のうち、前記第3伝熱管と対向する外周面とは逆側の外周面に接触して配置されている、気液接触器。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の気液接触器であって、
第1伝熱管及び第2伝熱管の延伸方向に沿って第1気液接触部材が複数配置され、
第3伝熱管及び第2伝熱管の延伸方向に沿って第2気液接触部材が複数配置され、
前記第1気液接触部材と、前記第2気液接触部材とは、前記延伸方向に沿って交互に配置されている、気液接触器。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれか一項に記載の気液接触器であって、
前記第1気液接触部材は、親水性を有する繊維で形成されている、気液接触器。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれか一項に記載の気液接触器であって、
前記第1気液接触部材は、カーボンファイバーで形成されている、気液接触器。
[適用例6]
密閉式冷却塔であって、
適用例1から適用例5までのいずれか一項に記載の気液接触器と、
前記気液接触器に向かって風を送る、もしくは前記気液接触器から風を排出するファンと、
前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内を流れる熱媒と、
前記第1伝熱管及び前記第2伝熱管と、前記密閉式冷却塔が冷却する冷却対象とを接続して、前記熱媒が流れる熱媒流路を形成する熱媒流路形成部と、
前記第1気液接触部材に供給される冷却水を、前記第1気液接触部材の鉛直方向の上方まで輸送する冷却水ポンプと、を備える、密閉式冷却塔。
[適用例7]
リキッドデシカントであって、
適用例1から適用例6までのいずれか一項に記載の気液接触器を内蔵する除湿器と、
適用例1から適用例6までのいずれか一項に記載の気液接触器を内蔵する再生機と、
前記除湿器が備える前記第1気液接触部材と、前記再生機が備える前記第1気液接触部材とに供給される液体調湿剤と、
前記液体調湿剤を、前記除湿器と前記再生機との間で循環させ、前記除湿器が備える前記第1気液接触部材と、前記再生機が備える前記第1気液接触部材との鉛直方向の上方まで輸送する循環ポンプと、
前記除湿器に内蔵された前記気液接触器に向かって風を送る、もしくは前記気液接触器から風を排出する除湿器側ファンと、
前記再生機に内蔵された前記気液接触器に向かって風を送る、もしくは前記気液接触器から風を排出する再生機側ファンと、
前記除湿器が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内と、前記再生機が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内とを循環する熱媒と、
前記除湿器が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内に循環する前記熱媒を冷却し、前記再生機が備える前記第1伝熱管内及び前記第2伝熱管内に循環する前記熱媒を加熱するヒートポンプと、
前記除湿器と前記再生機との間で前記液体調湿剤の熱交換を行う熱交換器と、
を備える、リキッドデシカント。
【符号の説明】
【0052】
10,10x…気液接触器
11,11x…気液接触部材
12…伝熱管
12F…熱媒流路
20…ファン
30…熱媒流路形成部
31…熱媒流路
40…熱媒
50…ポンプ(冷却水ポンプ)
51,52…循環ポンプ
60…ケーシング
61…通気口
70…配管
71…水路
72…冷却水
73…散水口
100…密閉式冷却塔
110…液体調湿剤
111…第1気液接触部材
112…第2気液接触部材
120…ヒートポンプ
130…熱交換器
140…除湿器側熱交換器
150…再生器側熱交換器
200…除湿器
300…再生機
500…リキッドデシカント
1211~1215,1221~1225,1231~1235,1241~1245,1251~1255,1261~1265,1271~1275…伝熱管
CS…直交座標系
DR…方向
FL…鉛直面
OB…熱源(冷却対象)
OL…伝熱管の延伸軸
SF1~SF6…伝熱管の外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7