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特開2023-165253応力センサおよび応力センサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165253
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】応力センサおよび応力センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/20 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G01L1/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076081
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 鴻立
(57)【要約】
【課題】薄型の応力センサを提供する。
【解決手段】第1基材と、第2基材と、第1基材および第2基材の間に設けられた検知部とを備え、検知部は、第1基材上に設けられた第1電極および第1電極上に積層された感圧層を有する第1検知部構成物と、第2基材上に設けられた第2電極を有する第2検知部構成物とを含み、第1検知部構成物の感圧層に、第2検知部構成物の第2電極が接合されている、応力センサ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材と、
第2基材と、
前記第1基材および前記第2基材の間に設けられた検知部とを備え、
前記検知部は、
前記第1基材上に設けられた第1電極および前記第1電極上に積層された感圧層を有する第1検知部構成物と、
前記第2基材上に設けられた第2電極を有する第2検知部構成物とを含み、
前記第1検知部構成物の前記感圧層に、前記第2検知部構成物の前記第2電極が接合されている、応力センサ。
【請求項2】
前記第2電極の算術平均粗さが前記感圧層の算術平均粗さより小さい、請求項1に記載の応力センサ。
【請求項3】
前記第1基材と前記第2基材とが、前記検知部の周囲に設けられた接着層を介して接着されている、請求項1に記載の応力センサ。
【請求項4】
前記第1基材と前記第2基材との間に、3つ以上の前記検知部を備え、
1つの前記検知部の幾何中心を中心とした半径20mmの円形の領域内に、全ての前記検知部が形成されている、請求項1に記載の応力センサ。
【請求項5】
平面視において、前記第1電極と前記第2電極とが重なる領域の面積が、1mm以上100mm以下である、請求項1に記載の応力センサ。
【請求項6】
前記感圧層の厚さが、1μm以上100μm以下である、請求項1に記載の応力センサ。
【請求項7】
前記第2電極の算術平均粗さが前記感圧層の算術平均粗さより小さく、
前記第1基材と前記第2基材とが、前記検知部の周囲に設けられた接着層を介して接着され、
前記第1基材と前記第2基材との間に、3つ以上の前記検知部を備え、
1つの前記検知部の幾何中心を中心とした半径20mmの円形の領域内に、全ての前記検知部が形成されていて、
平面視において、前記第1電極と前記第2電極とが重なる領域の面積が、1mm以上100mm以下であり、
前記感圧層の厚さが、1μm以上100μm以下である請求項1に記載の応力センサ。
【請求項8】
第1基材の一方の面に、第1電極と感圧層とをこの順に積層した第1検知部構成物を3つ以上形成し、
第2基材の一方の面に、第2電極で構成される第2検知部構成物を、前記第1検知構成物と同数形成し、
前記第1検知部構成物の各々と前記第2検知部構成物の各々とを対向させて、前記第2電極を前記感圧層に接合することにより、3つ以上の検知部を形成する、応力センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力センサおよび応力センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
応力センサは、例えば上下2つの電極を対向させ、その2つの電極間に応力を感知する感圧層として導電膜や絶縁層を挟み込んだ構造となっている。この応力センサは、入力された応力によって感圧層が変形することで電極間の距離や対向して配置された電極の対向面積の変化を電気信号として検知し、電気抵抗変化、又は静電容量変化を押圧力やせん断力として検出する(例えば、特許文献1および2)。あるいは、応力センサは、感圧層同士の接触状態の変化を電気信号として検知し、電気抵抗変化を押圧力として検出する(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6851534号公報
【特許文献2】特開2020-148561号公報
【特許文献3】特開2018-112405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こういった応力センサは、生体内のモニタリングなどへの応用が期待されている。生体内のセンシングでは、センサを埋め込んだ被測定対象に掛かる負担を軽減するため、さらなるセンサの薄型化が期待される。
【0005】
それ故に、本願発明は、薄型の応力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、第1基材と、第2基材と、第1基材および第2基材の間に設けられた検知部とを備え、検知部は、第1基材上に設けられた第1電極および第1電極上に積層された感圧層を有する第1検知部構成物と、第2基材上に設けられた第2電極を有する第2検知部構成物とを含み、第1検知部構成物の感圧層に、第2検知部構成物の第2電極が接合されている、応力センサである。
【0007】
また、本発明の他の局面は、第1基材の一方の面に、第1電極と感圧層とをこの順に積層した第1検知部構成物を3つ以上形成し、第2基材の一方の面に、第2電極で構成される第2検知部構成物を、第1検知構成物と同数形成し、第1検知部構成物の各々と第2検知部構成物の各々とを対向させて、第2電極を感圧層に接合することにより、3つ以上の検知部を形成する、応力センサの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄型の応力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る応力センサの概略構成図。
図2】本発明の実施形態に係る応力センサの分解平面図。
図3】応力センサの検知部の詳細図。
図4】検知部での圧力センシングのイメージ図。
図5】せん断力センシングのイメージ図。
図6】参考例に係る応力センサの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る応力センサの概略構成図であり、図2は、本発明の実施形態に係る応力センサの分解平面図であり、図3は、応力センサの検知部の詳細図である。図1(a)は、応力センサの平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA-A’断面図である。また、図2(a)は第1検知部構成物および接着層を含む第1基材の平面図であり、図2(b)は第2検知部構成物を含む第2基材の平面図である。また、図3(a)は1つの検知部の平面図であり、図3(b)は図3(a)のB-B’断面図である。
【0012】
本実施形態に係る応力センサ100は、押圧力を検出可能なセンサであり、第1基材1a、第2基材1b、検知部2、および接着層3を備える。検知部2は、第1基材1aと第2基材1bとの間に設けられており、第1電極2aおよび感圧層2cを有する第1検知部構成物2Aと、第2基材1b上に設けられた第2電極2bを有する第2検知部構成物2Bとを含む(図2)。第1基材1aと第2基材1bとは、接着層3を介して接着される。第1基材1aと第2基材1bとが接着された状態において、応力センサ100は、第1基材1a、第1電極2a、感圧層2c、第2電極2b、第2基材1bがこの順で積層された積層物と捉えることができる。
【0013】
<基材>
第1基材1aおよび第2基材1bは、可撓性を有するシート状の部材であることが好ましい。第1基材1a、および第2基材1bの材料としては、例えば、ポリエステル、ナイロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、セロファンなどのプラスチックフィルムや、シリコーンゴムのジメチルポリシロキサン、クリーンペーパー、コート紙、カレンダー紙などの加工紙を使用することができる。応力センサ100を生体へ使用する場合は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン等のポリエステルおよびそれらの共重合体、アクリル樹脂、シリコーン、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー、スチレン・ブタジエン系エラストマーなどが好適に用いられる。
【0014】
第1基材1aおよび第2基材1bは、未延伸基材および延伸基材のいずれであってもよい。機械的強度および寸法安定性を考慮した場合には、一軸延伸基材および二軸延伸基材などの延伸基材、特には二軸延伸基材を使用することが有利である。第1基材1aおよび第2基材1bの厚さに制限はないが、例えば6μm以上200μm以下とすることができる。6μm以上であれば、基材として十分な強度を有することができる。また、200μm以下であれば、応力センサ100の薄膜性が維持可能である。なお、第1基材1aおよび第2基材1bの各材料や厚さは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0015】
第1基材1aおよび第2基材1bの形状に制限はない。ただし、量産性を考慮した場合には、第1基材1aおよび第2基材1bは長尺物であることが好ましい。
【0016】
<検知部>
検知部2は、第1基材1a(第2基材1b)の表面に対して垂直方向(応力センサ100の厚さ方向)の圧力、すなわち、応力センサ100に加えられる押圧力を検知する部分であり、第1基材1aと第2基材1bとの間に設けられる。検知部2は、第1基材1a上に設けられる第1検知部構成物2Aと、第2基材1b上に設けられる第2検知部構成物2Bとが対向配置された状態で貼り合わせられて構成される。第1検知部構成物2Aは、第1基材1a上に設けられる第1電極2aと感圧層2cとを含み、第2検知部構成物2Bは、第2基材1b上に設けられる第2電極2bを含む。
【0017】
検知部2の数に特に制限はないが、押圧力に加えてせん断力も検出することが可能となるため、3つ以上であることが好ましく、任意の方向のせん断力を検出可能とする場合、例えば図1~2に示すように5つとすることが好ましい。
【0018】
検知部2を複数設ける場合、応力センサ100の小型化の観点から、1つの検知部2の幾何中心を中心とした半径20mmの円形の領域内に、全ての検知部2が形成されていることが好ましい。さらに、検知部2が3つ以上の場合、検出精度の向上の観点から、1つの検知部2を原点に配置したXY座標系において、他の検知部2がX軸上及びY軸上に配置されることが好ましい。図1を例にすると、原点となる中央検知部21を中心として、他の4つの検知部2(上方検知部22、下方検知部23、左方検知部24、右方検知部25)を中央検知部21の上下左右にそれぞれ配置し、中央検知部21の幾何中心から、半径20mm以内の円内に配置している。
【0019】
<電極>
第1電極2aは第1基材1aの一方面に、第2電極2bは第2基材1bの一方面に設けられる。第1電極2a上には感圧層2cが設けられるが、第2電極2b上に感圧層は設けられない。
【0020】
応力センサ100の安定的な動作を考慮すると、応力センサ100にせん断力が入力されてせん断変位が生じた場合であっても、せん断力の入力前後で第1電極2aと第2電極2bとの平面視における電極重複領域Lap2(図3)の面積が変化しないことが好ましい。そのため、第1電極2aの面積が第2電極2bの面積より大きく、電極重複領域Lap2の面積が第2電極2bの面積と等しくなる構成が好ましい(図3)。さらに、第2電極2bの外周が、第1電極2aの外周よりも内側に位置するように配置されることが好ましく、平面視において第1電極2aの中心と第2電極2bの中心とが一致するように設けられることがさらに好ましい。
【0021】
平面視における第1電極2aの面積が0.2mm以上200mm以下であり、第2電極2bの面積が0.1mm以上100mm以下であることが好ましい。さらに、第2電極2bの面積は、第1電極2aの面積の半分以上であることが好ましい。つまり、第1電極2aの面積が第2電極2b(電極重複領域Lap2)の面積の2倍以下となるため、応力センサ100の小型化および高集積化することができる。なお、第2電極2bが第1電極2aよりも相対的に面積が大きい構成でもよい。
【0022】
第1電極2aおよび第2電極2bの厚さは特に限定されないが、0.01μm以上10μm以下の範囲が好ましい。また、第1電極2aおよび第2電極2bの形状は限定されず、例えば、矩形、円形、三角形などが選択できるが、電極重複領域Lap2を効率的に設計できることから第1電極2aと第2電極2bとは互いに相似な形状であることが好ましい。
【0023】
第1電極2aおよび第2電極2bの算術平均粗さは、後述する感圧層2cの算術平均粗さより小さいことが好ましく、感圧層2cの算術平均粗さの10分の1以下であることがより好ましい。
【0024】
第1電極2aおよび第2電極2bには、抵抗率が低い導電性材料を用いることができる。第1電極2a、および第2電極2bは、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属、あるいはITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO2(酸化スズ)などの導電性金属酸化物の使用が可能である。
【0025】
第1電極2aおよび第2電極2bの形成方法は特に限定されず、一般的な成膜方法を利用することができる。形成方法は、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、リバースオフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法を用いることもできる。
【0026】
<感圧層>
感圧層2cは、第1基材1aに設けられる第1電極2a上に積層され、第2基材1bに設けられる第2電極2b上には積層されない。そのため、図6に示すような、第1電極2a’に加えて第2電極2b’上にも感圧層2c’が形成される参考例に係る応力センサと比較して層数を抑えることができ、応力センサの薄型化することができる。応力センサ100を安定して動作可能とするため、感圧層2cは、第1電極2aの表面を被覆しているのが好ましい。
【0027】
感圧層2cを構成する導電膜材料としては、第1電極2a、および第2電極2bより抵抗率が高い材料が用いられる。
【0028】
感圧層2cの厚さが、第1電極2aより厚く、1μm以上100μm以下であることが好ましい。感圧層2cの形状は、第1電極2aの形状に応じて適宜変更される。
【0029】
感圧層2cの表面は算術平均粗さが大きく、微細な凹凸形状が形成される。具体的には、感圧層2cの算術平均粗さに対して、第1電極2aおよび第2電極2bの算術平均粗さは小さいことが好ましく、第1電極2aおよび第2電極2bの算術平均粗さは、感圧層2cの算術平均粗さの10分の1以下であることがより好ましい(図3)。これにより、電極上に形成される感圧層2cの表面形状が、電極の表面形状に依存しにくくなる。そのため、複数の検知部2間における圧力応答のバラつきを抑えることができ、応力センサの検出精度の低下を抑制できる。
【0030】
感圧層2cを構成する材料として、表面凹凸が形成しやすく、かつ変形する材料が好ましい。これは、応力センサ100に入力された押圧力によって感圧層2cの表面の凹凸形状が変形することで、第2電極2bとの接触面積が増加し、感圧層2cと第2電極2b間の抵抗値が減少する必要があるためである。また、厚みが変化することで自身の抵抗値が減少する特性を利用することも可能で、変形することにより抵抗率が変化する材料がより好ましい。そのような材料としては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子や、グラファイトやカーボンナノチューブを用いたカーボンペーストが好適に用いられる。さらに、想定する応力の大きさに応じて、感圧層2cは硬度および抵抗率を調整することが望ましい。想定する応力が大きい場合は硬度の高く、抵抗率の変化が穏やかな材料を選び、想定する応力が小さい場合は硬度の低く、抵抗率の変化が急峻な材料を選ぶと良い。
【0031】
感圧層2cの形成方法としては、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法、熱化学気相堆積法、プラズマ化学気相堆積法を用いることもできる。
【0032】
<接着層>
接着層3は、第1基材1aと第2基材1bとを接着することで、対向する第1検知部構成物2Aと第2検知部構成物2Bを貼り合わせる。接着層3は、例えば、複数の検知部2を囲むように円環状に設けられる。第1基材1aと第2基材1bとが接着された状態においては、第1基材1aと第2基材1bとの間に第1電極2aおよび第2電極2bが感圧層2cを介して積層されていると見なせる。
【0033】
接着層3は、第1検知部構成物2Aの周辺の第1基材1a上に塗布して第1検知部構成物2Aと第2検知部構成物2Bとを貼り合わせる。接着層3の抵抗率には特に要求がないが、膜厚は第1検知部構成物2Aと第2検知部構成物2Bの合計の厚みより薄いことが好ましい。第1基材1aおよび第2基材1bに対して良好な粘着力があれば、接着層3の材料としては特に制限がなく、例えばゴム系、アクリル系、シリコーン系などが好適に用いられる。また、状況に応じて両面テープを用いてもよい。
【0034】
接着層3の形成方法として、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法を用いることができる。
【0035】
応力センサ100における、圧力測定時の検知部2の状態を説明する。図4は、検知部での圧力センシングのイメージ図である。
【0036】
図4(a)は押圧力印加前の状態を示している。この状態から、図4(b)のように第2基材1bに押圧力F1を掛けると、感圧層2cの表面凹凸が変形し、感圧層2cと第2電極2bとの接触面積が増加する。検知部2は、例えば、この時の第1電極2aと第2電極2bとの間の抵抗値の変化を押圧力として出力する。
【0037】
応力センサ100における、せん断力測定方法について説明する。図5は、せん断力センシングのイメージ図である。
【0038】
図5(a)は、せん断力印加前の状態を示している。この状態から、図5(b)のように第1基材1aに対して紙面右に向かってせん断力F2を掛ける。すると、加えられる押圧力は3つの検知部2(中央検知部21、左方検知部24、右方検知部25)のそれぞれで異なっており、例えば、中央検知部21が受けた押圧力をF1で、左方検知部24が受けた押圧力をF1+ΔFで、右方検知部25が受けた押圧力をF1-ΔFで表すことができる。そして、押圧力の差分ΔFより、せん断力F2を計算することが可能なため、その計算値をせん断力として出力することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る応力センサ100においては、感圧層2cは第1基材1aの第1電極2a上にのみ設けられている。そのため、図6に示すような2層の感圧層2c’を有する参考例に係る応力センサと比較して薄型にすることができる。
【0040】
また、第1電極2aおよび第2電極2bの算術平均粗さは、感圧層2cの算術平均粗さより小さい。そのため、感圧層2cの表面形状が電極の表面形状に影響を受けにくくなり、複数の検知部2間での圧力応答にバラつきを抑え、応力センサの検出精度の低下を抑制できる。
【0041】
また、1つの検知部2の幾何中心を中心とした半径20mmの円形の領域内に、全ての検知部2が形成されている。そのため、複数の検知部2を備える応力センサ100を小型化することができる。
【0042】
上記各実施形態で説明した本発明に係る応力センサおよびその製造方法は、以下の通りである。
【0043】
[1]第1基材と、第2基材と、前記第1基材および前記第2基材の間に設けられた検知部とを備え、前記検知部は、前記第1基材上に設けられた第1電極および前記第1電極上に積層された感圧層を有する第1検知部構成物と、前記第2基材上に設けられた第2電極を有する第2検知部構成物とを含み、前記第1検知部構成物の前記感圧層に、前記第2検知部構成物の前記第2電極が接合されている、応力センサ。
【0044】
[2]前記第2電極の算術平均粗さが前記感圧層の算術平均粗さより小さい、項目1に記載の応力センサ。
【0045】
[3]前記第1基材と前記第2基材とが、前記検知部の周囲に設けられた接着層を介して接着されている、項目1または2に記載の応力センサ。
【0046】
[4]前記第1基材と前記第2基材との間に、3つ以上の前記検知部を備え、
1つの前記検知部の幾何中心を中心とした半径20mmの円形の領域内に、全ての前記検知部が形成されている、項目1~3のいずれかに記載の応力センサ。
【0047】
[5]平面視において、前記第1電極と前記第2電極とが重なる領域の面積が、1mm以上100mm以下である、項目1~4のいずれかに記載の応力センサ。
【0048】
[6]前記感圧層の厚さが、1μm以上100μm以下である、項目1~5のいずれかに記載の応力センサ。
【0049】
[7]第1基材の一方の面に、第1電極と感圧層とをこの順に積層した第1検知部構成物を3つ以上形成し、
第2基材の一方の面に、第2電極で構成される第2検知部構成物を、前記第1検知構成物と同数形成し、
前記第1検知部構成物の各々と前記第2検知部構成物の各々とを対向させて、前記第2電極を前記感圧層に接合することにより、3つ以上の検知部を形成する、応力センサの製造方法。
【実施例0050】
<実施例1>
図1に示すような、5つの検知部を有する応力センサを作製し、実施例1の応力センサとした。具体的な作製手順は下記に示す。
【0051】
まず、第1基材(厚さ125μmのポリイミドフィルム)の一方の面側に、第1電極、感圧層を順次積層し、5つの第1検知部構成物を形成した後、円環状の接着層を形成した。続いて、第2基材(厚さ125μmのポリイミドフィルム)の一方の面側に、第2電極を形成し、5つの第2検知部構成物を形成した。最後に、第1基材と第2基材とを接着層を介して接着し、第1検知部構成物と第2検知部構成物が対向するように貼り合わせた。このとき、第1電極および第2電極は銀インキを用いてグラビアオフセット印刷法によって形成し、感圧層はカーボンの導電性インキを用いてスクリーン印刷法によって膜厚50μmで形成した。接着層には両面テープを用いた。
【0052】
5つの検知部は、対向する2つの電極の中心が一致するように構成し、重なった領域の面積を1.0mmにした。第1電極の電極面積を2.0mmにした。
【0053】
<比較例1>
検知部を1つとした以外、実施例1と同様の手順で応力センサを作製し、比較例1の応力センサとした。
【0054】
<参考例1>
第2検知部構成物の上に感圧層が積層され、感圧層同士が貼り合わされる構造の応力センサを作製し、参考例1の応力センサとした。具体的な作製手順は下記に示す。
【0055】
まず、第1基材(厚さ125μmのポリイミドフィルム)の一方の面側に、第1電極、感圧層を順次積層し、5つの第1検知部構成物を形成した後、円環状の接着層を形成した。続いて、第2基材(厚さ125μmのポリイミドフィルム)の一方の面側に、第2電極を形成し、5つの第2検知部構成物を形成した後、第2検知部構成物の上に感圧層を積層した。最後に、第1基材と第2基材とを接着層を介して接着し、第1検知部構成物と第2検知部構成物上に積層した感圧層が対向するようにして貼り合わせた。このとき、第1電極および第2電極は銀インキを用いてグラビアオフセット印刷法によって形成し、感圧層はカーボンの導電性インキを用いてスクリーン印刷法によって形成した。接着層は両面テープを用いた。2層の感圧層の合計膜厚は100μmであった。
【0056】
5つの検知部は、対向する2つの電極の中心が一致するように構成し、重なった領域の面積を1.0mmにした。第1電極の電極面積を2.0mmにした。
【0057】
実施例1、比較例1及び参考例1に係る応力センサの構成を表1に示す。
【表1】
【0058】
<評価>
実施例1および比較例1~2に係る応力センサについて特性評価を実施した。
【0059】
[押圧力検知特性]
実施例1、比較例1及び参考例1に係る応力センサをLCRメーターにつなぎ、第1電極と第2電極との間に5Vの交流電圧を印加した状態で、応力センサの上から指で押したときの電圧値の変化を測定し、圧力検知特性の評価を行った。
【0060】
圧力検知特性の判断基準は、次の通りである。
○(良好):圧力に対し、検出した電圧値が線形的に単調増加あるいは単調減少した場合
△(概ね良好):圧力に対し、検出した電圧値は線形的ではないが、単調増加あるいは単調減少した場合
×(不良):圧力に対し、検出した電圧の変化が単調ではない場合
【0061】
[せん断力検知特性]
実施例1、比較例1及び参考例1に係る応力センサをLCRメーターにつなぎ、第1電極と第2電極との間に5Vの交流電圧を印加した状態で、応力センサの上から応力センサの面(第2基材)に沿って指でなでたときの電圧値の変化を測定し、せん断力検知特性の評価を行った。
【0062】
せん断力検知特性の判断基準は、次の通りである。
○(良好):せん断力に対し、検出した電圧値が線形的に単調増加あるいは単調減少した場合
△(概ね良好):せん断力に対し、検出した電圧値は線形的ではないが、単調増加あるいは単調減少した場合
×(不良):せん断力に対し、検出した電圧の変化が単調ではない場合
【0063】
[薄膜化の可能性]
各実施例および比較例の応力センサの感圧層の層数を測定し、薄膜化の可能性について評価した。
微細化の可能性の判断基準は、次の通りである。
○(良好):応力センサの感圧層の層数が1層の場合
△(概ね良好):応力センサの感圧層の層数が2層の場合
×(不良):応力センサの感圧層の層数が3層以上の場合
【0064】
[総合評価]
応力センサの総合評価の判断基準として、全ての評価項目が良好の場合のみ、○:良好と評価した。概ね良好の項目があり、不良の項目がない場合は△:概ね良好と評価した。不良の項目がある場合は×:不良と評価した。
【0065】
評価結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2から分かるように、実施例1に係る応力センサは検知部が5つであったため、押圧力に加え、せん断力の検知特性も良好であった。さらに、感圧層が応力センサの厚み方向に対して1層のみであったため、薄膜化の可能性が高く、総合評価が良好であった。
【0068】
一方、比較例1に係る応力センサは、検知部が1つであったためせん断力が検出できず、総合評価が不良であった。参考例1に係る応力センサは、複数の検知部の応答にバラつきが大きく、せん断力の検出精度が低かった。これは、第1電極と第2電極の間に感圧層が2層形成されていたため、力の入力に対して感圧層の変形が追従しにくかったことが原因と推測される。また、感圧層が応力センサの厚み方向に対して2層設けられていたため、薄膜化の可能性が実施例1よりも劣り、総合評価が概ね良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、押圧力およびせん断力が検出可能な応力センサとして利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 基材
1a 第1基材
1b 第2基材
2 検知部
2A 第1検知部構成物
2B 第2検知部構成物
2a 第1電極
2b 第2電極
2c 感圧層
3 接着層
100 応力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6