(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165255
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20231108BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20231108BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20231108BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q11/00
A61K8/81
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076083
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】作前 早夏
(72)【発明者】
【氏名】坂本 里絵
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD261
4C083AD262
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】CPCの濃度が相対的に高い状態で、CPCの分散性を向上させつつ、口腔用組成物を指や歯ブラシ等に取るのに適切な粘度に維持する。
【解決手段】口腔用組成物は、セチルピリジニウム塩化物水和物を0.1質量%以上含有し、さらに、ポリアクリル酸ナトリウムと、結晶セルロースを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セチルピリジニウム塩化物水和物を0.1質量%以上含有し、
さらに、ポリアクリル酸ナトリウムと、結晶セルロースを含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
前記ポリアクリル酸ナトリウムの含有量が、0.7質量%以上3質量%以下であるとともに、前記結晶セルロースの含有量が、5質量%以上18質量%以下である請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
ヒドロキシエチルセルロースの含有量が、0.3質量%未満である請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記セチルピリジニウム塩化物水和物の含有量が、0.3質量%以上である請求項1~3のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯周炎や口内炎の予防や治療を目的とした口腔用組成物が知られている。
特許文献1は、セチルピリジニウム塩化物水和物ともいう塩化セチルピリジニウムを含有する口腔用組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、セチルピリジニウム塩化物水和物(以下、CPCともいう。)を含有する口腔用組成物は、CPCの濃度が高くなるにつれて、口腔内でのCPCの分散性が低下しやすくなる。口腔用組成物の成分を調整してCPCの分散性を向上させると、口腔用組成物の粘度が低下しやすくなる。口腔用組成物の粘度が低下すると、使用時の取り扱い性が低下する虞があった。CPCの濃度が相対的に高い口腔用組成物において、CPCの分散性を向上させつつ、口腔用組成物を指や歯ブラシ等に取るのに適切な粘度に維持することが課題として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための口腔用組成物は、セチルピリジニウム塩化物水和物を0.1質量%以上含有し、さらに、ポリアクリル酸ナトリウムと、結晶セルロースを含有することを要旨とする。
【0006】
上記口腔用組成物において、前記ポリアクリル酸ナトリウムの含有量が、0.7質量%以上3質量%以下であるとともに、前記結晶セルロースの含有量が、5質量%以上18質量%以下であることが好ましい。
【0007】
上記口腔用組成物において、ヒドロキシエチルセルロースの含有量が、0.3質量%未満であることが好ましい。
上記口腔用組成物において、前記セチルピリジニウム塩化物水和物の含有量が、0.3質量%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口腔用組成物によると、CPCの濃度が相対的に高い状態で、CPCの分散性を向上させつつ、口腔用組成物を指や歯ブラシ等に取るのに適切な粘度に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る口腔用組成物を具体化した実施形態について説明する。
口腔用組成物は、CPCを0.1質量%以上含有し、さらに、ポリアクリル酸ナトリウムと、結晶セルロースを含有する。
【0010】
口腔用組成物が、CPCを0.1質量%以上という相対的に高い濃度で含有することにより、CPCによる殺菌作用を好適に発現させることができる。また、ポリアクリル酸ナトリウムと、結晶セルロースを含有することにより、CPCの分散性を向上させつつ、口腔用組成物を指や歯ブラシ等に取るのに適切な粘度に維持することができる。
【0011】
以下、口腔用組成物を構成する各成分について説明する。
<CPC>
CPCは、一般に殺菌剤として用いられる。CPCとしては、特に制限されず、公知のCPCを用いることができる。
【0012】
CPCの含有量は、0.3質量%以上であることが好ましい。CPCの含有量が0.3質量%以上であると、CPCの濃度がより高くなるため、CPCによる殺菌作用をより好適に発現させることができる。
【0013】
<ポリアクリル酸ナトリウム>
ポリアクリル酸ナトリウムは、水溶性の高分子であり、一般に増粘剤として用いられる。
【0014】
ポリアクリル酸ナトリウムとしては、特に制限されず、公知のポリアクリル酸ナトリウムを用いることができる。
ポリアクリル酸ナトリウムの含有量は特に制限されないが、0.5質量%以上であることが好ましく、0.7質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0015】
<結晶セルロース>
結晶セルロースは、植物のパルプ繊維を酸加水分解、又はアルカリ加水分解して、セルロースの結晶領域を取り出して精製したものである。結晶性セルロースは、一般に賦形剤や増粘剤として用いられる。
【0016】
結晶セルロースとしては、特に制限されず、公知の結晶セルロースを用いることができる。
結晶セルロースの含有量は特に制限されないが、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
また、ポリアクリル酸ナトリウムの含有量が、0.7質量%以上3質量%以下であるとともに、結晶セルロースの含有量が、5質量%以上18質量%以下であることが好ましい。ポリアクリル酸ナトリウムと結晶セルロースの含有量が上記数値範囲であることにより、CPCの分散性を向上させつつ、口腔用組成物を指や歯ブラシ等に取るのにより適切な粘度に維持することができる。
【0018】
<その他成分>
口腔用組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外のその他成分、例えば、殺菌剤、抗菌剤、界面活性剤、湿潤剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤、甘味剤、pH調整剤、酸化防止剤、香料、着色剤等を配合してもよい。これら各成分は、口腔用組成物に配合される公知のものを使用することができる。これらの成分は、それぞれ一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
殺菌剤の具体例としては、上記CPC以外に、例えばヒノキチオール等が挙げられる。
抗菌剤の具体例としては、例えばパラベン類、安息香酸ナトリウム、トリクロサン、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ミノサイクリン塩酸塩、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0020】
界面活性剤の具体例としては、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート20ともいう。)、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60ともいう。)、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80ともいう。)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ラウリルグリコシド、デシルグリコシド等のアルキルグリコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(酸化エチレンの平均付加モル数が10、20、40、60のもの)、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
【0021】
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0022】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤の具体例としては、例えばN-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジエチルグリシン等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N-アルキル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩、及び2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン系両性界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
湿潤剤の具体例としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、水、アルコール等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、プロピレングリコール、及びグリセリンの少なくとも一方を含有することが好ましい。
湿潤剤の含有量は、特に制限されないが、35質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらに好ましい。また、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
プロピレングリコールの含有量は、特に制限されないが、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
【0026】
グリセリンの含有量は、特に制限されないが、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。また、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0027】
増粘剤の具体例としては、上記ポリアクリル酸ナトリウム、及び結晶セルロース以外に、例えばカラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられる。増粘剤は、粘結剤ともいう。
【0028】
上記ポリアクリル酸ナトリウム及び結晶セルロース以外の増粘剤の含有量は小さいことが好ましい。ポリアクリル酸ナトリウム以外及び結晶セルロース以外の増粘剤の含有量は0.3質量%未満であることが好ましく、0質量%であることがより好ましい。ここで、0質量%は、不純物レベルで含有する態様を許容するものとする。特にヒドロキシエチルセルロースの含有量は0.3質量%未満であることが好ましい。ヒドロキシエチルセルロースの含有量が0.3質量%未満であると、CPCの分散性が向上しやすくなる。
【0029】
安定化剤の具体例としては、例えばエデト酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0030】
防腐剤の具体例としては、例えば1,2-ジブロモ-2、4-ジシアノブタン、感光素、イソチアゾロン誘導体、ヒダントイン誘導体、パラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノール等が挙げられる。
【0031】
酸化防止剤の具体例としては、例えばトコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。
甘味剤の具体例としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトールなどが挙げられる。
【0032】
pH調整剤の具体例としては、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの化学的に可能な塩、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
香料は、天然香料や合成香料であってもよい。また、単品香料や調合香料であってもよい。
香料の具体例としては、例えばl-メントール、d-カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。
【0034】
着色剤の具体例としては、例えば緑色1号、緑色3号、青色1号、黄色4号、黄色5号、赤色102号、赤色3号等の法定色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0035】
<口腔用組成物の適用形態、剤形、用途>
口腔用組成物の適用形態は、特に限定されず、例えば医薬品、指定医薬部外品、医薬部外品、化粧品として使用することができる。
【0036】
口腔用組成物の剤形は、特に制限されないが、ペースト剤、軟膏剤、ジェルとして使用することができる。
口腔用組成物の用途としては、例えば舌部を含めた口腔内塗布剤、歯肉抗炎症剤、歯周病治療剤、義歯装着剤、インプラントケア剤等が挙げられる。
【0037】
<作用及び効果>
本実施形態の口腔用組成物の作用について説明する。
口腔用組成物において、CPCの含有量が0.1質量%以上であると、口腔内でのCPCの分散性は低下しやすくなる。CPCの含有量が0.3質量%以上であると、分散性はより低下しやすくなる。その一方で、口腔内でのCPCの分散性を向上させるために、例えば増粘剤の含有量を小さくすると、口腔用組成物の粘度が低下しやすくなる。本実施形態の口腔用組成物は、ポリアクリル酸ナトリウムと、結晶セルロースを選択的に含有することによって、CPCの分散性を向上させつつ、口腔用組成物を指や歯ブラシ等に取るのに適切な粘度に維持することができる。
【0038】
本実施形態の口腔用組成物の効果について説明する。
(1)セチルピリジニウム塩化物水和物を0.1質量%以上含有し、さらに、ポリアクリル酸ナトリウムと、結晶セルロースを含有する。
【0039】
したがって、CPCの濃度が0.1質量%以上と相対的に高くても、CPCの分散性を向上させつつ、口腔用組成物を指や歯ブラシ等に取るのに適切な粘度に維持することができる。CPCの分散性を向上させることによって、口腔内にCPCが広がりやすくなる。また、口腔用組成物を適切な粘度に維持することによって、使用時の取り扱い性が良好になる。
【0040】
(2)ポリアクリル酸ナトリウムの含有量が、0.7質量%以上3質量%以下であるとともに、結晶セルロースの含有量が、5質量%以上18質量%以下である。したがって、CPCの分散性を向上させつつ、口腔用組成物を指や歯ブラシ等に取るのにより適切な粘度に維持することができる。
【0041】
(3)ヒドロキシエチルセルロースの含有量が、0.3質量%未満である。したがって、CPCの分散性を向上させることができる。
(4)CPCの含有量が0.3質量%以上である。したがって、CPCによる殺菌作用をより好適に発現させることができる。また、CPCの含有量が0.3質量%以上であっても、CPCの分散性を向上させつつ、口腔用組成物を指や歯ブラシ等に取るのに適切な粘度に維持することができる。
【実施例0042】
以下、本発明の構成、及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。
表1に示す実施例1~8、参考例1、及び比較例1~3の口腔用組成物を常法に従って各成分を混合することによって製造した。なお、表1において、各成分の右側に記載した数字は、各成分の含有量(質量%)を意味し、残部の水と合計で100質量%となるように配合した。
【0043】
【表1】
(評価試験)
実施例1~8、参考例1、及び比較例1~3の口腔用組成物について、粘度、及びCPCの分散性を評価した。評価方法、及び評価結果について以下に示す。
【0044】
(粘度の評価方法)
粘度は、B型粘度計(ブルックフィールド社製)を用いて公知の方法によって測定した。粘度の好適な数値範囲を30Pa・s以上300Pa・s以下とした。
【0045】
(CPCの分散性の評価方法)
CPCの分散性の評価は、以下の手順で行った。
実施例1~8、参考例1、及び比較例1~3の口腔用組成物をそれぞれ1g採取した。採取した液体に水9mLを加えて、公知の振とう機で2分間振とうした。振とう後の液体を濾過して、濾液を1mL採取した。採取した濾液にCPC抽出溶媒を加えて10mLに希釈した。CPC抽出溶媒としては、pH3.0の0.02mol/Lクエン酸緩衝溶液にラウリル硫酸ナトリウム(0.01mol/L)を加えた後、アセトニトリル(1:3)を添加したものを用いた。希釈した液体をメンブランフィルターで濾過して、得られた濾液を試料溶液とした。
【0046】
また、標準試料用として、実施例1~8、参考例1、及び比較例1~3の口腔用組成物をそれぞれ1g採取した。採取した液体に水9mLを加えて、公知の振とう機で10分間以上振とうして完全に分散させた。振とう後の液体を濾過して、濾液を1mL採取した。採取した濾液に上記と同じCPC抽出溶媒を加えて10mLに希釈した。希釈した液体をメンブランフィルターで濾過して、得られた濾液を標準溶液とした。
【0047】
各試料溶液、及び各標準溶液におけるCPCの濃度を、公知の高速液体クロマトグラフィを用いて定量した。下記の式を用いてCPCの分散率を算出した。
分散率=(試料溶液中のCPC濃度/標準溶液中のCPC濃度)×100
CPCの分散率が50%以上であると、分散性が向上したと判断した。分散率の上限は特に制限されない。結果を表1に示す。
【0048】
(評価結果)
表1より、参考例1は、CPCの含有量が0.05質量%と小さいため、分散率は69%と高く、粘度も82Pa・sと好適であった。これに対し、比較例1~3、実施例1~8は、CPCの含有量が0.3質量%と大きいため、CPCの分散性が低下しやすいという課題が生じる。
【0049】
比較例1、2は、ポリアクリル酸ナトリウムを含有せず、結晶セルロースとヒドロキシエチルセルロースを含有するため、粘度は好適であるものの、CPCの分散性が低いことが確認された。
【0050】
比較例3は、ポリアクリル酸ナトリウムと結晶セルロースの両方を含有しないため、CPCの分散性は向上するものの、粘度が低いことが確認された。
これに対し、実施例1~8では、ポリアクリル酸ナトリウムと結晶セルロースの両方を含有するため、CPCの分散性が向上するとともに、指や歯ブラシ等に取るのに適切な粘度に維持されていた。
【0051】
実施例2~8では、ヒドロキシエチルセルロースの含有量が0.3質量%未満であるため、粘度が250Pa・s未満で指や歯ブラシ等に取るのに適切な粘度に維持されていた。粘度が250Pa・s未満であると、口腔用組成物の柔軟性が向上するため、取り扱い性が良好になる。
【0052】
実施例3~8では、ポリアクリル酸ナトリウムの含有量が、0.7質量%以上3質量%以下であるとともに、結晶セルロースの含有量が、5質量%以上18質量%以下である。口腔用組成物の粘度が224Pa・s未満でより指や歯ブラシ等に取るのに適切な粘度に維持されるため、口腔用組成物の柔軟性がより向上して、口腔用組成物の取り扱い性がより良好になる。