IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井金属アクト株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用シートロック装置 図1
  • 特開-車両用シートロック装置 図2
  • 特開-車両用シートロック装置 図3
  • 特開-車両用シートロック装置 図4
  • 特開-車両用シートロック装置 図5
  • 特開-車両用シートロック装置 図6
  • 特開-車両用シートロック装置 図7
  • 特開-車両用シートロック装置 図8
  • 特開-車両用シートロック装置 図9
  • 特開-車両用シートロック装置 図10
  • 特開-車両用シートロック装置 図11
  • 特開-車両用シートロック装置 図12
  • 特開-車両用シートロック装置 図13
  • 特開-車両用シートロック装置 図14
  • 特開-車両用シートロック装置 図15
  • 特開-車両用シートロック装置 図16
  • 特開-車両用シートロック装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165270
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両用シートロック装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/20 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
B60N2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076105
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】落合 俊介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠人
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087DA10
(57)【要約】
【課題】車両用シートロック装置において、補強プレートの小型化を可能にして、ラッチ及びラチェットの噛合部分の噛合強度を向上させる。
【解決手段】シートバックに取り付けられるベースプレート7と、ベースプレート7のストライカ進入溝71よりも上方の第1配置領域部7Aに固定される補強プレート15と、第1配置領域部7Aと補強プレート15との間に回動可能に支持されると共に、ストライカ5に噛合可能な噛合溝121を有するラッチ12と、第1配置領域部7Aと補強プレート15との間に回動可能に支持されると共に、ラッチ12に設けた爪部122に噛合することによりラッチ12をラッチ位置に保持可能なラチェット9と、を備える。補強プレート15は、ラッチ12及びラチェット9の噛合部分を覆う噛合覆い領域部15Aを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体又はシートバックのいずれか一方に取り付けられるストライカと、
前記車体又は前記シートバックのいずれか他方に取り付けられると共に、前記ストライカに設けた係合杆が前記シートバックの作動に伴って進退可能なストライカ進入溝を有するベースプレートと、
前記ベースプレートにおける前記進入溝よりも上方又は下方のいずれか一方に位置する第1配置領域部に固定される補強プレートと、
前記第1配置領域部と前記補強プレートとの間に挟持されて所定角度回動可能に支持されると共に、前記ストライカ進入溝に進入した前記係合杆に噛合可能な噛合溝を有して、前記噛合溝に前記係合杆が噛合することによりアンラッチ位置からラッチ位置に回動可能なラッチと、
前記第1配置領域部と前記補強プレートとの間に挟持されて所定角度回動可能に支持されると共に、スプリングにより係合方向へ付勢されて、前記ラッチに設けた爪部に噛合することにより前記ラッチをラッチ位置に保持可能なラチェット手段と、を備え、
前記補強プレートは、前記ラッチ及び前記ラチェット手段の噛合部分を覆う噛合覆い領域部を有することを特徴とする車両用シートロック装置。
【請求項2】
車体又はシートバックのいずれか一方に取り付けられるストライカと、
前記車体又は前記シートバックのいずれか他方に取り付けられると共に、前記ストライカに設けた係合杆が前記シートバックの作動に伴って進退可能なストライカ進入溝を有するベースプレートと、
前記ベースプレートにおける前記進入溝よりも上方又は下方のいずれか一方に位置する第1配置領域部に固定される補強プレートと、
前記第1配置領域部と前記補強プレートとの間に挟持されて所定角度回動可能に支持されると共に、前記ストライカ進入溝に進入した前記係合杆に噛合可能な噛合溝を有して、前記噛合溝に前記係合杆が噛合することによりアンラッチ位置から第1ラッチ位置を経由して第2ラッチ位置に回動可能なラッチと、
前記第1配置領域部と前記補強プレートとの間に挟持されて所定角度回動可能に支持されると共に、スプリングにより係合方向へ付勢されて、前記ラッチに設けた第1爪部に噛合することにより前記ラッチを第1ラッチ位置に保持し、前記ラッチに設けた第2爪部に噛合することにより前記ラッチを第2ラッチ位置に保持可能なラチェット手段と、
前記ベースプレートにおける前記進入溝よりも上方又は下方のいずれか他方に位置する第2配置領域部に所定角度回動可能に支持されると共に、前記ストライカ進入溝に進入する前記係合杆が当接可能な第1補助アーム部と、前記係合杆が前記第1補助アーム部に当接することで待機位置から進入方向へ回動し、当該回動により前記ラッチに設けた被押部に対してラッチ方向へ当接可能な第2補助アーム部を有する噛合補助レバーと、を備え、
前記補強プレートは、前記ラッチ及び前記ラチェット手段の噛合部分を覆う噛合覆い領域部を有し、
前記ストライカの前記係合杆は、前記ラッチが第2ラッチ位置に回動することにより、前記噛合溝から抜け出て前記噛合補助レバーの前記第1補助アーム部と前記ラッチの前記第2アーム部の先端に設けた拘束部との間に挟持されることを特徴とする車両用シートロック装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記補強プレートは、第1~第3固定部を介して前記ベースプレートに固定され、
前記補強プレートの前記噛合覆い領域部を、前記第1~第3固定部をそれぞれ互いに結んだ線により囲まれる領域とすることを特徴とする車両用シートロック装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1固定部は、前記ラッチを前記ベースプレートと前記補強プレートとの間に回動可能に支持するラッチ軸であり、
前記第2固定部は、前記ラッチ軸の上方にあって、前記ラチェット手段を前記ベースプレートと前記補強プレートとの間に回動可能に支持するラチェット軸であり、
前記第3固定部は、前記第1配置領域部にあって、かつ前記ラッチ及び前記ラチェット手段よりも前記ストライカ進入溝の入口側に位置して、一端が前記第1配置領域部に固着され、他端が前記補強プレートに固着される固定部材であることを特徴とする車両用シートロック装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記補強プレートの前記噛合覆い領域部に、前記ラッチ及び前記ラチェット手段の噛合部分を跨ぐように、前記噛合部分に向けて突出するビードを設けたことを特徴とする車両用シートロック装置。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記ベースプレートの前記第1配置領域部は、前記ベースプレートにおける前記ストライカ進入溝よりも上方に位置し、
前記ラチェット手段を解除作動させるための操作装置を前記第1配置領域部に配置したことを特徴とする車両用シートロック装置。
【請求項7】
請求項1又は2において、
前記ベースプレートにおける前記ストライカ進入溝の内周下部に、前記ラッチの前記噛合溝を形成する第1、2アーム部の側面に向けて折曲される折曲部を設けたことを特徴とする車両用シートロック装置。
【請求項8】
請求項2において、
前記ラッチの前記噛合溝は、前記ラッチがアンラッチ位置と第2ラッチ位置の手前との間の位置にあるとき、前記ストライカ進入溝に対して重なる位置にあり、前記ラッチが第2ラッチ位置にあるとき、前記ストライカ進入溝に対して重ならない位置に退避することを特徴とする車両用シートロック装置。
【請求項9】
請求項2において、
前記噛合補助レバーは、前記第2補助アーム部が前記ラッチの前記被押部に当接することにより、前記ラッチを第2ラッチ位置の手前まで回動させ、
前記ラチェット手段は、前記スプリングの付勢力により前記ラッチの前記第2爪部に噛合することにより、前記ラッチを第2ラッチ位置の手前から第2ラッチ位置まで強制回動させるカム部を有することを特徴とする車両用シートロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートロック装置に関し、特には、車体又はシートバックのいずれか一方に設けられるストライカに噛合することで、シートバックを起立位置に保持可能なロック機構を備える車両用シートロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、シートバックに固定されるベースプレート(引用文献1においてはボディ、引用文献2においてはベース)と、ベースプレートに回動可能に支持されるラッチ(同じくフックレバー、ラッチ)及びラチェット(同じくオープンレバー、ロックレバー)と、ラッチを支持するための軸及びラチェットを支持するための軸をそれぞれ支持するようにベースプレートに固定される補強プレート(同じくベースプレート、ホルダ)とを有する車両用シートロック装置が記載されている。
【0003】
特許文献1、2に記載の車両用シートロック装置におけるラッチは、ベースプレートと補強プレートとの間に回動可能に支持されて、ベースプレートに設けたストライカ進入溝に進入したストライカに噛合し、同じくラチェットは、ベースプレートと補強プレートとの間に回動可能に支持されて、ストライカに噛合したラッチに噛合して、ラッチをラッチ位置(拘束位置)に保持することで、シートバックをユーザが着座可能な起立位置に保持する構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6209765号公報
【特許文献2】特許第5883345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の車両用シートロック装置は、ラッチ及びラチェットをベースプレートと補強プレートとの間に回動可能に支持することで、ラッチ及びラチェットの支持強度及び互いの噛合強度の向上を可能としている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用シートロック装置においては、補強プレートがベースプレートの開口の略全領域を覆うような形状を呈して各軸に固定されるため、補強プレートが大型化して、重量増、コストアップを招く課題を有している。
【0007】
また、特許文献2に記載の車両用シートロック装置においては、ラッチを支持するための軸をベースプレートにおけるストライカ進入溝を堺にした一方側の領域に支持し、またラチェットを支持するための軸をベースプレートにおけるストライカ進入溝を堺にした他方側の領域に支持した構成であるため、補強プレートがストライカ進入溝を跨ぐような形状を呈して、各軸に固定されるため、補強プレートが大型化して、重量増、コストアップを招く課題を有している。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、補強プレートの小型化を図ると共に、ラッチ及びラチェットの噛合部分の噛合強度を向上させることを可能にした車両用シートロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、車両用シートロック装置において、車体又はシートバックのいずれか一方に取り付けられるストライカと、前記車体又は前記シートバックのいずれか他方に取り付けられると共に、前記ストライカに設けた係合杆が前記シートバックの作動に伴って進退可能なストライカ進入溝を有するベースプレートと、前記ベースプレートにおける前記進入溝よりも上方又は下方のいずれか一方に位置する第1配置領域部に固定される補強プレートと、前記第1配置領域部と前記補強プレートとの間に挟持されて所定角度回動可能に支持されると共に、前記ストライカ進入溝に進入した前記係合杆に噛合可能な噛合溝を有して、前記噛合溝に前記係合杆が噛合することによりアンラッチ位置からラッチ位置に回動可能なラッチと、前記第1配置領域部と前記補強プレートとの間に挟持されて所定角度回動可能に支持されると共に、スプリングにより係合方向へ付勢されて、前記ラッチに設けた爪部に噛合することにより前記ラッチをラッチ位置に保持可能なラチェット手段と、を備え、前記補強プレートは、前記ラッチ及び前記ラチェット手段の噛合部分を覆う噛合覆い領域部を有することを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、車両用シートロック装置において、車体又はシートバックのいずれか一方に取り付けられるストライカと、前記車体又は前記シートバックのいずれか他方に取り付けられると共に、前記ストライカに設けた係合杆が前記シートバックの作動に伴って進退可能なストライカ進入溝を有するベースプレートと、前記ベースプレートにおける前記進入溝よりも上方又は下方のいずれか一方に位置する第1配置領域部に固定される補強プレートと、前記第1配置領域部と前記補強プレートとの間に挟持されて所定角度回動可能に支持されると共に、前記ストライカ進入溝に進入した前記係合杆に噛合可能な噛合溝を有して、前記噛合溝に前記係合杆が噛合することによりアンラッチ位置から第1ラッチ位置を経由して第2ラッチ位置に回動可能なラッチと、前記第1配置領域部と前記補強プレートとの間に挟持されて所定角度回動可能に支持されると共に、スプリングにより係合方向へ付勢されて、前記ラッチに設けた第1爪部に噛合することにより前記ラッチを第1ラッチ位置に保持し、前記ラッチに設けた第2爪部に噛合することにより前記ラッチを第2ラッチ位置に保持可能なラチェット手段と、前記ベースプレートにおける前記進入溝よりも上方又は下方のいずれか他方に位置する第2配置領域部に所定角度回動可能に支持されると共に、前記ストライカ進入溝に進入する前記係合杆が当接可能な第1補助アーム部と、前記係合杆が前記第1補助アーム部に当接することで待機位置から進入方向へ回動し、当該回動により前記ラッチに設けた被押部に対してラッチ方向へ当接可能な第2補助アーム部を有する噛合補助レバーと、を備え、前記補強プレートは、前記ラッチ及び前記ラチェット手段の噛合部分を覆う噛合覆い領域部を有し、前記ストライカの前記係合杆は、前記ラッチが第2ラッチ位置に回動することにより、前記噛合溝から抜け出て前記噛合補助レバーの前記第1補助アーム部と前記ラッチの前記第2アーム部の先端に設けた拘束部との間に挟持されることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記補強プレートは、第1~第3固定部を介して前記ベースプレートに固定され、前記補強プレートの前記噛合覆い領域部を、前記第1~第3固定部をそれぞれ互いに結んだ線により囲まれる領域とする。
【0012】
好ましくは、前記第1固定部は、前記ラッチを前記ベースプレートと前記補強プレートとの間に回動可能に支持するラッチ軸であり、前記第2固定部は、前記ラッチ軸の上方にあって、前記ラチェット手段を前記ベースプレートと前記補強プレートとの間に回動可能に支持するラチェット軸であり、前記第3固定部は、前記第1配置領域部にあって、かつ前記ラッチ及び前記ラチェット手段よりも前記ストライカ進入溝の入口側に位置し、一端が前記第1配置領域部に固着され、他端が前記補強プレートに固着される固定部材とする。
【0013】
好ましくは、前記補強プレートの前記噛合覆い領域部に、前記ラッチ及び前記ラチェット手段の噛合部分を跨ぐように、前記噛合部分に向けて突出するビードを設ける。
【0014】
好ましくは、前記ベースプレートの前記第1配置領域部は、前記ベースプレートにおける前記ストライカ進入溝よりも上方に位置し、前記ラチェット手段を解除作動させるための操作装置を前記第1配置領域部に配置する。
【0015】
好ましくは、前記ベースプレートにおける前記ストライカ進入溝の内周下部に、前記ラッチの前記噛合溝を形成する第1、2アーム部の側面に向けて折曲される折曲部を設ける。
【0016】
好ましくは、前記ラッチの前記噛合溝は、前記ラッチがアンラッチ位置と第2ラッチ位置の手前との間の位置にあるとき、前記ストライカ進入溝に対して重なる位置にあり、前記ラッチが第2ラッチ位置にあるとき、前記ストライカ進入溝に対して重ならない位置に退避する。
【0017】
好ましくは、前記噛合補助レバーは、前記第2補助アーム部が前記ラッチの前記被押部に当接することにより、前記ラッチを第2ラッチ位置の直前位置まで回動させ、前記ラチェット手段は、前記スプリングの付勢力により前記ラッチの前記第2爪部に噛合することにより、前記ラッチを第2ラッチ位置の直前位置から第2ラッチ位置まで強制回動させるカム部を有する。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によると、ラッチ及びラチェット手段をベースプレートにおける第1配置領域部に回動可能に支持したことで、補強プレートをベースプレートにおける第1配置領域部以外の領域に配置する必要がないので、補強プレートの小型化を可能にして、ロック機構の軽量化、コストダウンを図ることができる効果を奏する。また、補強プレートの小型化を可能にしつつ、補強プレートにラッチ及びラチェット手段の噛合部分を覆う噛合覆い領域部を形成したことで、噛合強度の向上を図ることができる効果を奏する。
【0019】
第2の発明によると、上記効果に加えて、単一のラッチによりシートバックを2段階の起立位置に変更できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る車両用シートロック装置を装着したシートの斜視図である。
図2】ロック機構の右斜め方向から見た斜視図である。
図3】ロック機構の左斜め方向から見た斜視図である。
図4】ロック機構の左斜め方向から見た分解斜視図である。
図5】ロック機構の右側面図である。
図6】ロック機構の左側面図である。
図7図6におけるVII-VII線断面図である。
図8図6におけるVIII-VIII線断面図である。
図9】ラッチがアンラッチ位置にある状態のロック機構の右側面図である。
図10】ラッチがアンラッチ位置から第1ラッチ位置に至る途中の状態のロック機構の右側面図である。
図11】ラッチが第1ラッチ位置に停止した状態のロック機構の右側面図である。
図12】ラッチが第1ラッチ位置に保持された状態のロック機構の右側面図である。
図13】ラッチの第1ラッチ位置において可動ハンドルが解除操作された状態のロック機構の右側面図である。
図14】ラッチが第1ラッチ位置から第2ラッチ位置に至る途中の状態のロック機構の右側面図である。
図15】ラッチが図14に示す位置よりもさらに第2ラッチ位置へ向けて回動した状態の右側面図である。
図16】ラッチが図15に示す位置よりもさらに第2ラッチ位置へ向けて回動した状態のロック機構の右側面図である。
図17】ラッチが第2ラッチ位置に保持された状態のロック機構の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明に係る車両用シートロック装置1が装着されるリアシート2は、車体フロアに据え付けられるシートクッション2Aと、シートクッション2Aの後端下部に左右方向を向くヒンジ軸(図示略)により前後方向へ起倒可能に支持されるシートバック2Bとを備える。
【0022】
車両用シートロック装置1は、シートバック2B側に取り付けられるロック機構4と、車体側に固定されるストライカ5とを備え、ロック機構4がストライカ5に噛合することで、シートバック2Bの背凭れ角度を図1に実線で示す第1起立位置と、第1起立位置よりさらに後方に傾いた2点鎖線で示す第2起立位置との2段階に変更可能とした構成を有する。
【0023】
なお、本発明は、シートバック2Bを第1起立位置又は第2起立位置のいずれか一方の起立位置に保持可能とした車両用シートロック装置1にも適用可能である。
【0024】
シートバック2Bは、第1起立位置又は第2起立位置のいずれかの位置に選択的に位置変更であって、ロック機構4の上部に取り付けられてシートバック2Bの肩部に露出した操作装置6の可動ハンドル62の解除操作に基いて、ロック機構4とストライカ5との噛合を解除することで、図1に示す2点鎖線で示すように、前方へ倒伏した倒伏位置に移動させることができる。
【0025】
図2~6に示すように、操作装置6は、ロック機構4における後述のベースプレート7の上部(第1配置領域部7A)に固定されるエスカッション61と、エスカッション61に左右方向を向く軸63により上下方向に回動可能に支持された可動ハンドル62とを有する。可動ハンドル62は、ロッド等により形成される操作力伝達部材64を介してロック機構4の後述のラチェット9に連結されて、解除操作(上方操作)でラチェット9を解除作動させることで、ロック機構4の後述のラッチ12とストライカ5との噛合を解除して、シートバック2Bの位置変更を可能にする。
【0026】
図1から理解できるように、ストライカ5は、シートバック2Bの側面に対向する車体側に固定されると共に、前側の第1係合杆51と、第1係合杆51から後方へ所定量離間した後側の第2係合杆52とを有する。第1係合杆51は、シートバック2Bが第1、2起立位置にあるとき、ロック機構4のラッチ12に噛合することで、シートバック2Bを第1起立位置又は第2起立位置に保持する。
【0027】
図2~6に示すように、ロック機構4は、シートバック2B内のシートフレーム(図示略)に固定される金属製のベースプレート7と、ベースプレート7に左右方向を向く鍔付き円柱状のラチェット軸8により所定角度回動可能に支持されるラチェット9及びカム部材10を含むラチェット手段(符号無し)と、ベースプレート7に左右方向を向く鍔付き円筒状のラッチ軸11により所定角度回動可能に支持されるラッチ12と、ベースプレート7に左右方向を向く鍔付き円筒状の軸13により所定角度回動可能に支持される噛合補助レバー14と、ラチェット軸8、ラッチ軸11及び円柱状の固定部材72を介してベースプレート7に固定される金属製の補強プレート15と、を備える。
【0028】
ベースプレート7は、後方が開口したストライカ進入溝71を有する。ストライカ進入溝71は、ベースプレート7の下部に設けられて、シートバック2Bを倒伏位置から第1、2起立位置に移動させた際、ストライカ5の第1係合杆51が後方から進入可能な形状を有する。ベースプレート7におけるストライカ進入溝71の内周下部には、内側(左側)に向けて折曲された折曲部71aが設けられる。特に図8に示すように、折曲部71aは、ラッチ12が後述の第1、2ラッチ位置にあるとき、ラッチ12の後述の第2アーム部125の先端寄りの側面に対向するように設けられる。このように、ストライカ進入溝71に折曲部71aを設けることで、ストライカ5に噛合しているラッチ12に対して過大な荷重が作用した場合、第2アーム部125の先端寄りの側面が折曲部71aに当接することで、第2アーム部125の変形を抑止して、ラッチ12の噛合溝121と第1係合杆51との噛合を強固に保持可能となる。さらに、ラッチ12に対して外方(図8において左方)へ向けて高負荷が作用して、ラッチ12が折曲部71aに当接した場合には、図8に示すように、折曲部71aが矢印方向へ変形して、2点鎖線で示すように上方を向くことで、ラッチ12と折曲部71aとの接触面積が増大して、さらなる強度向上を図ることが可能となる。
【0029】
ベースプレート7は、複数(本実施形態においては3本)のボルト16A~16C(図2参照)によってシートフレームに固定される。ボルト16Aは、鍔付き円筒状のラッチ軸11に挿入され、ボルト16Bは、鍔付き円筒状の軸13に挿入され、ボルト16Cは、ベースプレート7の後下部に配置される円筒状のカラー73に挿入されて、それぞれがシートフレームに螺合することで、ベースプレート7及び補強プレート15をシートフレームに固定する。好ましくは、ラチェット軸8、ラッチ軸11及び軸13の各鍔部、並びにカラー73の端面をシートフレームの表面に当接させた状態で、複数のボルト16A~16Cによってシートフレームに固定する。
【0030】
なお、以下の説明においては、ベースプレート7におけるストライカ進入溝71よりも上側の領域を第1配置領域部7A(図4、6参照)とし、ベースプレート7におけるストライカ進入溝71よりも下側の領域を第2配置領域部7B(図4、6参照)としてそれぞれ定義する。
【0031】
補強プレート15は、自体とベースプレート7の第1配置領域部7Aとの間に、ラチェット9、カム部材10及びラッチ12を挟むようにして、ラチェット軸8、ラッチ軸11及び固定部材72を介してベースプレート7の第1配置領域部7Aに固定される。補強プレート15については、あとでさらに詳細に説明する。
【0032】
ラッチ12は、ベースプレート7の第1配置領域部7Aにラッチ軸11により所定角度回動可能に支持されると共に、ラッチ軸11に巻装されたラッチスプリング20によりアンラッチ方向(図5において反時計方向、図6において時計方向)へ付勢される。
【0033】
ラッチ12は、シートバック2Bが倒伏位置等にあって、ストライカ5の第1係合杆51がベースプレート7のストライカ進入溝71に進入していない場合には、図9に示すアンラッチ位置に停止し、シートバック2Bの起立動作に伴ってストライカ5の第1係合杆51がストライカ進入溝71に進入することにより、ラッチスプリング20の付勢力に抗して、アンラッチ位置からラッチ方向(図9において時計方向)へ所定角度回動した図5、6、12に示す第1ラッチ位置(シートバック2Bの第1起立位置に相当)に保持され、さらに第1ラッチ位置からラッチ方向へ所定角度回動した図17に示す第2ラッチ位置(シートバック2Bの第2起立位置に相当)に保持される。
【0034】
ラッチ12は、ストライカ5の第1係合杆51が噛合可能な噛合溝121と、外周面から遠心方向へ延出する第1爪部122と、噛合溝121のラッチ方向側で、かつ噛合溝121と第1爪部122との間にあって、外周面から遠心方向へ延出する第2爪部123と、噛合溝121のラッチ側に設けた第1アーム部124と、噛合溝121のアンラッチ側に設けた第2アーム部125と、第2アーム部125の側面に設けられ、側方へ突出する円柱状の被押部126と、を有する。
【0035】
噛合溝121は、第1アーム部124と第2アーム部125との間に形成され、シートバック2Bの起立作動に伴って、ストライカ5の第1係合杆51がストライカ進入溝71に進入することで、第1係合杆51に噛合する。これにより、ラッチ12は、噛合溝121に第1係合杆51が噛合した状態で、ラッチスプリング20の付勢力に抗して、アンラッチ位置からラッチ方向へ回動する。
【0036】
噛合溝121及び第1アーム部124は、ラッチ12がアンラッチ位置と第2ラッチ位置の手前との間に位置しているときには、図9図14に示すように、ストライカ進入溝71に重なる位置にあり、ラッチ12が第2ラッチ位置の手前位置を超えた位置に回動したときには、図15~17に示すようにストライカ進入溝71の上方に移動してストライカ進入溝71から退避する。ストライカ5の第1係合杆51は、噛合溝121がストライカ進入溝71から上方へ退避した状態にあっては噛合溝121から前方へ脱出する。
【0037】
図5、6、12に示すように、ラッチ12が第1ラッチ位置にあるときには、ラチェット9の後述の係合溝93が第1爪部122に噛合する。これにより、ラッチ12は、第1ラッチ位置に保持されて、シートバック2Bを第1起立位置に保持する。
【0038】
図17に示すように、ラッチ12が第2ラッチ位置にあるときには、ラチェット9の係合溝93が第2爪部123に噛合する。これにより、ラッチ12は、第2ラッチ位置に保持されて、シートバック2Bを第2起立位置に保持する。
【0039】
第2アーム部125は、図9に示すように、ラッチ12がアンラッチ位置にあるときには、後方を向く姿勢で、ストライカ進入溝71の入口付近の上方に位置し、図5、6、12に示すように、ラッチ12が第1ラッチ位置にあるときには、下向き姿勢でストライカ進入溝71及び折曲部71aに重合する位置にあり、図17に示すように、ラッチ12が第2ラッチ位置にあるときには、前向き姿勢でストライカ進入溝71及び折曲部71aの左方に重合した位置にある。
【0040】
上述のように、ラッチ12が第2ラッチ位置に回動して第2アーム部125が前向き姿勢となった場合には、ストライカ5の第1係合杆51は、噛合溝121から前方へ脱出して第2アーム部125の外周に設けた拘束部125aと噛合補助レバー14の後述の第1補助アーム部141との間に挟み込まれる。
【0041】
被押部126は、円柱状であって、ラッチ12における第2アーム部125の側面に左方へ突出するように固着されて、ラッチ12がアンラッチ位置にあるとき、ストライカ進入溝71の上方に位置し、ラッチ12が第1ラッチ位置を通過した直後、ストライカ進入溝71に重なる位置に移動する。
【0042】
ラチェット9は、前端部がラチェット軸8によりベースプレート7の第1配置領域部7Aに所定角度回動可能に支持されると共に、上下方向へ移動可能な操作力伝達部材64を介して操作装置6の可動ハンドル62に連結される。これにより、ラチェット9は、可動ハンドル62の上方への回動操作(解除操作)に連動してラチェット軸8を中心にラチェット軸8に巻装された第1スプリング17の付勢力に抗して解除方向(図5において反時計方向、図6において時計方向)へ所定角度回動する。
【0043】
ラチェット9は、後端部にあって下方へ突出する鈎状のフック部91と、フック部91から前方へ所定距離離間した位置に設けられる段部94と、フック部91と段部94との間の間隙に形成される係合溝93とを有する。係合溝93には、前述のようにラッチ12の第1爪部122及び第2爪部123が選択的に噛合する。
【0044】
カム部材10は、ラチェット軸8によりベースプレート7の第1配置領域部7Aにラチェット9と独立して所定角度回動可能に支持されると共に、ラチェット9の解除方向への回動に伴って、ラチェット9と一緒に第2スプリング18の付勢力に抗して解除方向へ回動する。ラチェット9の解除方向への回動に伴うカム部材10の解除方向への回動は、ラチェット9に設けたアーム部92がカム部材10に設けたアーム部101に対して解除方向から当接することで達成される。
【0045】
カム部材10の後端部外周には、カム部102が設けられる。カム部102は、図5においてラチェット軸8の中心からの距離が反時計方向へ行くにしたがって漸増する形状を呈すると共に、前方からラチェット9の段部94を超えて係合溝93内に僅かに進入し得るように形成される。これにより、ラチェット9の係合溝93がラッチ12の第1爪部122又は第2爪部123に噛合する際、カム部材10が第2スプリング18の付勢力により係合方向へ回動して、カム部102が第1爪部122又は第2爪部123を摺動することで、ラッチ12をラッチ方向へ僅かに強制回動させる。
【0046】
噛合補助レバー14は、軸13によりベースプレート7の第2配置領域部7Bの前部に所定角度回動可能に支持されると共に、軸13に巻装された第3スプリング19により待機方向(例えば、図5において時計方向、図6において反時計方向)へ付勢される。噛合補助レバー14は、常時は下部14aがベースプレート7の底部に当接した、例えば、図2、3、5、6に示す待機位置に保持されて、シートバック2Bが第2起立位置に向けて移動した際には、待機位置から第3スプリング19の付勢力に抗して進入方向(図5において反時計方向、図6において時計方向)へ所定角度回動した拘束位置(図17に示す位置)に回動して停止する。
【0047】
噛合補助レバー14には、第1補助アーム部141と第2補助アーム部142とが設けられる。第1補助アーム部141は、噛合補助レバー14の待機位置において、ストライカ5の第1係合杆51がストライカ進入溝71に所定量進入することで、第1係合杆51が当接し得るように、ストライカ進入溝71に対して交差するように上斜め後方へ延伸する。噛合補助レバー14は、第1係合杆51が第1補助アーム部141に当接することで、第3スプリング19の付勢力に抗して、待機位置から進入方向へ回動する。
【0048】
第2補助アーム部142は、噛合補助レバー14の待機位置において、ストライカ進入溝71の下方に退避した位置にあって、噛合補助レバー14が待機位置から進入方向へ回動することで上方へ移動して、ラッチ12の第2ラッチ位置の手前位置において、ラッチ12を第2ラッチ位置に向けて強制回動させるように、ラッチ12に設けた被押部126に当接する。これにより、ラッチ12は、噛合補助レバー14が進入方向へ回動することでラッチ方向へ強制回動させられる。噛合補助レバー14が図17に示す拘束位置に回動した際には、第1補助アーム部141の前面部がベースプレート7に当接することで、噛合補助レバー14のこれ以上の回動が阻止される。
【0049】
補強プレート15は、ベースプレート7の第1配置領域部7A内に収まる大きさの形状を呈して、ラチェット軸8、ラッチ軸11を支持する部分、及びラチェット8とラッチ12とが互いに噛合する部分(ラチェット8の係合溝93及びカム部材10のカム部102がラッチ12の第1、2爪部122、123に噛合する部分である。以下、この部分を「ラチェット9及びラッチ12の噛合部分」という)を覆う噛合覆い領域部15Aを形成する。補強プレート15は、ラチェット軸8、ラッチ軸11及び固定部材72の3箇所の固定部を介して第1配置領域部7Aに固定される。本実施形態においては、ラッチ軸11は第1固定部に相当し、ラチェット軸8は第2固定部に相当し、固定部材72は第3固定部に相当する。
【0050】
図6、12、17に示すように、補強プレート15における噛合覆い領域部15Aは、ラッチ軸11の中心と、ラッチ軸11の前斜め上方に位置するラチェット軸8の中心と、ラッチ軸11の後斜め上方、かつラチェット軸8の後斜め下方に位置する固定部材72の中心とを互いに結んだ線で囲まれる三角形の領域(斜線を引いた部分の領域)に形成される。さらに、噛合覆い領域部15Aには、噛合覆い領域部15Aの剛性を高めるため、ラチェット9及びラッチ12の噛合部分を跨ぐように上下方向に延伸し、かつ図7に示すように、ラチェット9及びラッチ12の噛合部分側に向けて突出するビード151(図6、7参照)が形成される。
【0051】
なお、ラチェット軸8は、一端がベースプレート7の第1配置領域部7Aに設けた軸孔74(図4参照)に挿入してカシメ固着されると共に、他端側に拡径部81(図4参照)を有することで、一端と拡径部81との間にベースプレート7、カム部材10、ラチェット9及び補強プレート15を挟み込んだ形態でベースプレート7に固着される。ラッチ軸11は、一端がベースプレート7の第1配置部7Aに設けた軸孔75(図4参照)に挿入してカシメ固着されて、他端側に設けた拡径部111を有することで、一端と拡径部111との間にベースプレート7、ラッチ12及び補強プレート15を挟み込んだ形態でベースプレート7に固着される。固定部材72は、一端がベースプレート7の第1配置領域部7Aに設けた図示略の孔に挿入してカシメ固着され、他端が補強プレート15に設けた孔152(図4参照)に挿入してカシメ固着される。
【0052】
上述のように、補強プレート15を3箇所の固定部(ラチェット軸8、ラッチ軸11及び固定部材72)を介してベースプレート7の第1配置領域部7Aに固定して、補強プレート15とベースプレート7の間に、ラチェット9、カム部材10及びラッチ12を回動可能に支持すると共に、3箇所の固定部により囲まれた補強プレート15の噛合覆い領域部15Aとベースプレート7の第1配置領域部7Aとの間にラチェット9及びラッチ12の噛合部分を挟み込んだことによって、補強プレート15を第1配置領域部7Aの一部のみを覆う大きさの小型形状としても、ラチェット軸8及びラッチ軸11の支持強度を向上させると共に、ラチェット9及びラッチ12の噛合部分の変形を噛合覆い領域部15Aにより抑止して噛合強度を向上させることが可能となる。さらに、噛合覆い領域部15Aにラチェット9及びラッチ12の噛合部分を跨ぐようにビード151を形成したことで、ラチェット9及びラッチ12の噛合部分の変形を確実に抑止して、噛合強度をより向上させることができる。
【0053】
次に、図9~17に基づいて、本実施形態に係る車両用シートロック装置1の作用について説明する。
【0054】
図9は、ラッチ12がアンラッチ位置にあるときの状態、図10は、ラッチ12がアンラッチ位置から第1ラッチ位置に至る途中の状態、図11は、ラッチ12が第1ラッチ位置に停止した状態、図12は、ラッチ12の第1ラッチ位置に保持された状態、図13は、ラッチ12の第1ラッチ位置において可動ハンドル62が解除操作された状態、図14は、ラッチ12が第1ラッチ位置から第2ラッチ位置に至る途中の状態、図15は、ラッチ12が図14に示す位置よりもさらに第2ラッチ位置へ向けて回動した状態、図16は、ラッチ12が図15に示す位置よりもさらに第2ラッチ位置へ向けて回動した状態、図17は、ラッチ12が第2ラッチ位置に保持された状態をそれぞれ示す。
【0055】
(シートバック2Bを倒伏位置から第1起立位置に移動させる場合)
シートバック2Bが倒伏位置にある場合には、図9に示すように、ラッチ12は、アンラッチ位置に保持され、ラチェット9、カム部材10及び噛合補助レバー14は、それぞれの待機位置に保持されている。この状態においては、ラチェット9は、フック部91の先端がラッチ12の外周に設けた凸形外周部127に当接することで待機位置に保持される。カム部材10は、カム部材10の下部外周部103が第1爪部122の先端に当接することで待機位置に保持される。噛合補助レバー14は、下部14aがベースプレート7の底面に当接することで待機位置に保持される。可動ハンドル62は、ラチェット9が待機位置に保持されることで、エスカッション61から上方へ僅かに突出した位置に保持される。
【0056】
シートバック2Bを倒伏位置から起立させると、ストライカ5の第1係合杆51は、ストライカ進入溝71に進入して、ラッチ12の噛合溝121に噛合する。これにより、図10に示すように、ラッチ12は、ラッチスプリング20の付勢力に抗して、アンラッチ位置からラッチ方向(時計方向)へ回動する。
【0057】
図11に示すように、ラッチ12がラッチ方向へさらに回動して第1ラッチ位置まで回動すると、ラッチ12の凸形外周部127がフック部91の先端から外れ、ラッチ12の第1爪部122の外周面がカム部材10の下部外周部103から外れ、ラッチ12の第1爪部122がラチェット9のフック部91に当接する。これにより、ラチェット9及びカム部材10の係合方向への回動は許可され、ラッチ12はラッチ方向への回動が阻止されて第1ラッチ位置に停止する。
【0058】
ラッチ12が第1ラッチ位置に停止すると、図12に示すように、ラチェット9は第1スプリング17の付勢力により係合位置に回動し、カム部材10は第2スプリング18の付勢力により係合位置に回動する。これにより、ラチェット9の係合溝93は、ラッチ12の第1爪部122に噛合し、ラッチ12は、第1ラッチ位置に保持される。また、カム部材10は、第2スプリング18の付勢力によって、カム部102がラッチ12の第1爪部122に摺動しつつ係合位置へ移動することで、ラッチ12を第1ラッチ位置に向けて強制的に微小量回動させる。これにより、ラッチ12は、第1ラッチ位置において第1爪部122がフック部91とカム部102との間に強固に噛合して、第1ラッチ位置に保持される。シートバック2Bは、ラッチ12が第1ラッチ位置に保持されることで第1起立位置に保持される。
【0059】
ラッチ12が第1ラッチ位置に保持されている状態においては、ラッチ12の第1、2アーム部124、125の下部側面が折曲部71aに重合した状態となる。これによって、第1起立位置に保持されているシートバック2Bに過大な荷重がかかって、ラッチ12が変形するような力が作用しても、第1、2アーム部124、125の側面が折曲部71aに当接することで、第1、2アーム部124、125の板厚方向(右方)の変形を抑えることができる。これにより、ラッチ12の噛合溝121に対するストライカ5の第1係合杆51の噛合強度を向上させて、シートバック2Bを強固に第1起立位置に保持できる。さらに、ラチェット9及びラッチ12の噛合部分は、補強プレート15の噛合覆い領域部15Aとベースプレート7の第1配置領域部7Aとの間にあって、噛合覆い領域部15Aによって覆われることで、ラチェット9及びラッチ12の噛合部分の噛合強度を向上させて、シートバック2Bをより強固に第1起立位置に保持できる。
【0060】
なお、操作装置6の可動ハンドル62は、ラチェット9の係合溝93がラッチ12の第1爪部122に完全に噛合している場合には、図12から理解できるように、エスカッション61と平坦な状態にあって、係合溝93が第1爪部122に不完全に噛合している場合には、図11から理解できるように、エスカッション61から上方へ突出した状態となる。これにより、係合溝93が第1爪部122に確実に噛合しているか否かを目視で確認できる。
【0061】
(シートバック2Bを第1起立位置から第2起立位置に移動させる場合)
シートバック2Bが第1起立位置に保持されている場合には、図12に示すように、ラチェット9は、係合溝93がラッチ12の第1爪部122に噛合した係合位置にあり、カム部材10は、カム部102が第1爪部122に当接した係合位置にあり、ラッチ12は、第1ラッチ位置に保持された位置にあり、ストライカ5は、第1係合杆51がラッチ12の噛合溝121に噛合した位置にあり、噛合補助レバー14は、待機位置に保持されている。
【0062】
ユーザにより操作装置6の可動ハンドル62が解除操作されると、図13に示すように、ラチェット9は、係合位置から解除作動し、これに連動してカム部材10も係合位置から解除作動する。これにより、ラチェット9の係合溝93及びカム部材10のカム部102は、ラッチ12の第1爪部122から外れて、フック部91及びカム部102は第1爪部122の移動軌跡外に退避することで、ラッチ12の第1ラッチ位置からラッチ方向及びアンラッチ方向への回動が可能となる。
【0063】
次いで、可動ハンドル62を解除操作したままシートバック2Bを後方へ押し込む。これにより、図14に示すように、ストライカ5の第1係合杆51は、ラッチ12の噛合溝121に噛合した状態でさらにストライカ進入溝71に深く進入して、噛合補助レバー14の第1補助アーム部141に当接する。そして、ラッチ12は、第1ラッチ位置からさらにラッチ方向へ回動し、第2爪部123の外周面がカム部材10の下部外周部103に当接する。これにより、カム部材10は待機位置に保持される。なお、図14に示すように、ラッチ12が第1ラッチ位置を通過して第2ラッチ位置に向けて回動したあとは、可動ハンドル62の解除操作を止める。
【0064】
さらに、ストライカ5の第1係合杆51がストライカ進入溝71に深く進入すると、ラッチ12は、ラッチ方向へさらに回動して、ラッチ12の噛合溝121が前斜め下方を向く姿勢となり、噛合補助レバー14は、第3スプリング19の付勢力に抗して、進入方向(反時計方向)へ回動する。
【0065】
さらに、ストライカ5の第1係合杆51がストライカ進入溝71に深く進入すると、第1係合杆51がラッチ12の噛合溝121から前方へ脱出すると略同時に、進入方向へ回動している噛合補助レバー14の第2補助アーム部142がラッチ12の被押部126に後方から当接して、ラッチ12をラッチ方向へ強制回動させる。
【0066】
さらに、図15に示すように、ストライカ5の第1係合杆51がストライカ進入溝71に深く進入すると、ストライカ5の第1係合杆51がラッチ12の噛合溝121から完全に抜け出て、噛合補助レバー14は、第1係合杆51の進入に伴って、進入方向に回動してラッチ12を第2ラッチ位置の直前位置まで回動させ、最終的に第1補助アーム部141の前面部がベースプレート7に当接する拘束位置に停止する。
【0067】
ラッチ12が第2ラッチ位置の直前位置まで回動した場合には、ラッチ12の第2アーム部125は、前方を向く姿勢で、ストライカ進入溝71に重なる状態となる。また、第2爪部123の外周面は、カム部材10の下部外周部103から外れることで、カム部材10の係合方向への回動を許可する。
【0068】
そして、ラッチ12が第2ラッチ位置の直前位置まで回動した時点で、図16に示すように、カム部材10が第2スプリング18の付勢力により係合方向へ回動して、カム部102がラッチ12の第2爪部123を摺動することで、ラッチ12は、第2ラッチ位置の直前位置から第2ラッチ位置まで強制回動させられる。また、これと略同時に、ラチェット9は、第1スプリング17の付勢力により係合方向へ回動して、係合溝93が第2爪部123に噛合する。最終的に、図17に示すように、カム部材10のカム部102がラッチ12の第2爪部123に当接し、ラチェット9の係合溝93がラッチ12の第2爪部123に完全に噛合する。これにより、ラッチ12は第2ラッチ位置に保持される。
【0069】
ラッチ12が第2ラッチ位置に保持された状態においては、ラッチ12の噛合溝121から抜け出た第1係合杆51は、自体の前部が噛合補助レバー14の第1補助アーム部141に当接し、後部がラッチ12の第2アーム部125の拘束部125aに当接した状態で、第1補助アーム部141と第2アーム部125の拘束部125aとの間に挟持される。これにより、シートバック2Bは第2起立位置に保持される。
【0070】
ラッチ12が第2ラッチ位置に保持されている状態においては、ラッチ12の第2アーム部125の下部側面が折曲部71aに重合した状態となる。これによって、第2起立位置に保持されているシートバック2Bに過大な荷重がかかって、ラッチ12が変形するような力が作用しても、第2アーム部125が折曲部71aに当接することで、第2アーム部125の変形を抑えることができる。これにより、ラッチ12の噛合溝121に対するストライカ5の第1係合杆51の噛合強度を向上させて、シートバック2Bを第2起立位置に強固に保持できる。さらに、ラチェット9及びラッチ12の噛合部分は、補強プレート15の噛合覆い領域部15Aとベースプレート7との間にあって、噛合覆い領域部15Aによって覆われる。これにより、ラチェット9及びラッチ12の噛合部分の噛合強度を向上させて、シートバック2Bをより強固に第2起立位置に保持できる。
【0071】
(シートバック2Bを第2起立位置(又は第1起立位置)から倒伏位置に移動させる場合)
シートバック2Bが第2起立位置(又は第1起立位置)に保持されている場合には、ロック機構4は、図17(又は図12)に示す状態にある。この状態において、可動ハンドル62が解除操作されると、図13に示すように、ラチェット9の係合溝93及びカム部材10のカム部102がラッチ12の第1爪部122(又は第2爪部123)から外れて、フック部91及びカム部102は、第1爪部122(又は第2爪部123)の移動軌跡外に退避することで、ラッチ12のアンラッチ方向への回動を許可する。これにより、シートバック2Bの前方への回動が可能になり、この状態で、シートバック2Bを倒伏位置へ向けて回動させると、ストライカ5の第1係合杆51がラッチ12の噛合溝121及びストライカ進入溝71から退出して、シートバック2Bを第2起立位置(又は第1起立位置)から倒伏位置に移動させることができる。
【0072】
上述のように、本実施形態における車両用シートロック装置1は、ベースプレート7の第1配置領域部7Aの領域内のみに配置される小型の補強プレート15をベースプレート7に固定したことで、ラチェット軸8及びラッチ軸11の支持強度、及びラチェット9及びラッチ12の噛合部分の噛合強度を向上させる効果に加えて、単一のラッチ12によりシートバック2Bを第1起立位置及び第2起立位置に保持可能な効果を奏する。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、上記実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
【0074】
(a)ロック機構4を車体側に取り付け、ストライカ5をシートバック2B側に設ける。
【0075】
(b)ラチェット9とカム部材10とを一体構造とする。
【0076】
(c)ロック機構4を第1起立位置又は第2起立位置の一方の起立位置のみに保持可能なシートバック2Bに適用する。この場合には、ラッチ12の第1爪部122又は第2爪部123の一方の爪部、及び噛合補助レバー14を省略した構成とする。
【0077】
(d)ラッチ12及びラチェット9をベースプレート7におけるストライカ進入溝71よりも下方に配置する。このように配置にすることによって、シートバック2Bの後側にある荷室側から操作できるように、シートバック2Bの後側中央部分に操作装置6を設ける構成を簡単に実現することができる。また、設定上、ロック機構4をシートバック2Bの上端に配置する必要があるときには、ロック機構4と操作装置6との隙間が少なくなってしまうが、ロック機構4(ラチェット9)と操作機構6との隙間を空けることができるため、設定が容易となる。
【符号の説明】
【0078】
1 車両用シートロック装置 2 リアシート
2A シートクッション 2B シートバック
4 ロック機構 5 ストライカ
51 第1係合杆 52 第2係合杆
6 操作装置 61 エスカッション
62 可動ハンドル 63 軸
64 操作力伝達部材 7 ベースプレート
71 ストライカ進入溝 71a 折曲部
72 固定部材(第3固定部) 73 カラー
74、75 軸孔 7A 第1配置領域部
7B 第2配置領域部 8 ラチェット軸(第2固定部)
81 拡径部 9 ラチェット(ラチェット手段)
91 フック部 92 アーム部
93 係合溝 94 段部
10 カム部材(ラチェット手段) 101 アーム部
102 カム部 103 下部外周部
11 ラッチ軸(第1固定部) 111 拡径部
12 ラッチ 121 噛合溝
122 第1爪部 123 第2爪部
124 第1アーム部 125 第2アーム部
125a 拘束部 126 被押部
127 凸形外周部 13 軸
14 噛合補助レバー 14a 下部
141 第1補助アーム部 142 第2補助アーム部
15 補強プレート 151 ビード
152 孔 15A 噛合覆い領域部
16A~16C ボルト 17 第1スプリング
18 第2スプリング 19 第3スプリング
20 ラッチスプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17