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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165271
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両制御システム及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
B60W30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076107
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】濱田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】辻 雄太
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 浩一
(72)【発明者】
【氏名】野中 信宏
(72)【発明者】
【氏名】休坂 慎也
(72)【発明者】
【氏名】西條 友馬
(72)【発明者】
【氏名】山下 良幸
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 昂
(72)【発明者】
【氏名】内海 将司
(72)【発明者】
【氏名】松原 敏雄
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA15
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC41Z
(57)【要約】
【課題】車両の走行車線が路肩や非常駐車帯に隣接しているのか否かを適切に判定し、走行車線に応じた適切な位置に車両を停車させる。
【解決手段】車両制御システムのコントローラ10は、カメラ21により撮影された画像から、道路の区画線BLと路端Eとを検出し、車両の走行車線の左側区画線BL1が白実線であり、車両の左側の路端と左側区画線との距離WSが第1の距離W1未満であり、路端と左側区画線との間に他の区画線が存在しない場合、路端と左側区画線との間に車両の少なくとも一部を進入させて停車させるように電動パワーステアリング33及びブレーキ32を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を自動的に停車させる車両制御システムであって、
前記車両の前方を撮影するカメラと、
前記カメラにより撮影された前記車両の前方の画像に基づき、前記車両を停車させるために当該車両の操舵装置及び制動装置の制御を行うよう構成されたコントローラと、
を有し、
前記コントローラは、
前記カメラにより撮影された画像から、道路の区画線と路端とを検出し、
前記車両の走行車線の左側区画線が白実線であり、前記車両の左側の路端と前記左側区画線との距離が第1の距離未満であり、前記路端と前記左側区画線との間に他の区画線が存在しない場合、前記路端と前記左側区画線との間に前記車両の少なくとも一部を進入させて停車させるように前記操舵装置及び前記制動装置を制御する、
車両制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記車両の走行車線の左側区画線が白実線ではない場合、又は、前記車両の走行車線の左側区画線が白実線であり且つ前記車両の左側の路端と前記左側区画線との距離が前記第1の距離以上である場合、前記走行車線において前記車両を停車させるように前記操舵装置及び前記制動装置を制御する、請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
車両を自動的に停車させる車両制御システムであって、
前記車両の前方を撮影するカメラと、
前記カメラにより撮影された前記車両の前方の画像に基づき、前記車両を停車させるために当該車両の操舵装置及び制動装置の制御を行うよう構成されたコントローラと、
を有し、
前記コントローラは、
前記カメラにより撮影された画像から、道路の区画線と路端とを検出し、
前記車両の走行車線の左側区画線が白実線であり、前記車両の左側の路端と前記左側区画線との距離が第1の距離未満であり、前記路端と前記左側区画線との間に他の区画線が存在し且つ当該他の区画線と前記左側区画線との距離が前記第1の距離より小さい第2の距離未満である場合、前記路端と前記左側区画線との間に前記車両の少なくとも一部を進入させて停車させるように前記操舵装置及び前記制動装置を制御する、
車両制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記車両の走行車線の左側区画線が白実線であり、前記車両の左側の路端と前記左側区画線との距離が前記第1の距離未満であり、前記路端と前記左側区画線との間に前記他の区画線が存在し且つ当該他の区画線と前記左側区画線との距離が前記第2の距離未満である場合において、前記他の区画線と前記左側区画線との距離が前記第2の距離より小さい第3の距離以上である場合、前記他の区画線と前記左側区画線との間に前記車両を進入させて停車させるように前記操舵装置及び前記制動装置を制御する、請求項3に記載の車両制御システム。
【請求項5】
車両を自動的に停車させる車両制御方法であって、
カメラが、前記車両の前方を撮影するステップと、
コントローラが、前記カメラにより撮影された前記車両の前方の画像に基づき、前記車両を停車させるために当該車両の操舵装置及び制動装置の制御を行うステップと、
を有し、
前記コントローラが前記操舵装置及び前記制動装置の制御を行うステップは、
前記コントローラが、前記カメラにより撮影された画像から、道路の区画線と路端とを検出するステップと、
前記コントローラが、前記車両の走行車線の左側区画線が白実線であり、前記車両の左側の路端と前記左側区画線との距離が第1の距離未満であり、前記路端と前記左側区画線との間に他の区画線が存在しない場合、前記路端と前記左側区画線との間に前記車両の少なくとも一部を進入させて停車させるように前記操舵装置及び前記制動装置を制御するステップと、を有する、
車両制御方法。
【請求項6】
車両を自動的に停車させる車両制御方法であって、
カメラが、前記車両の前方を撮影するステップと、
コントローラが、前記カメラにより撮影された前記車両の前方の画像に基づき、前記車両を停車させるために当該車両の操舵装置及び制動装置の制御を行うステップと、
を有し、
前記コントローラが前記操舵装置及び前記制動装置の制御を行うステップは、
前記コントローラが、前記カメラにより撮影された画像から、道路の区画線と路端とを検出するステップと、
前記コントローラが、前記車両の走行車線の左側区画線が白実線であり、前記車両の左側の路端と前記左側区画線との距離が第1の距離未満であり、前記路端と前記左側区画線との間に他の区画線が存在し且つ当該他の区画線と前記左側区画線との距離が前記第1の距離より小さい第2の距離未満である場合、前記路端と前記左側区画線との間に前記車両の少なくとも一部を進入させて停車させるように前記操舵装置及び前記制動装置を制御するステップと、を有する、
車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム及び車両制御方法に係わり、特に、車両を自動的に停車させる車両制御システム及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の自動運転を実現するための技術として、車両が走行している車線を認識する技術が知られている。例えば、特許文献1には、カメラで撮像した車道の画像に基づき、車両が走行している車線を認識する走行車線認識装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-187474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の運転者が安全に運転できない状態に陥った場合に、運転者の異常を自動的に検出したり乗員が非常ボタンを押したりすることにより、車両を自動的に安全に停車させる車両制御システムの開発が進められている。車両を自動的に安全に停車させるためには、車両が走行車線に隣接した停車スペースの有無等に応じて、停車前に車線変更を行うか否かを判断する必要がある。しかしながら、上述した特許文献1に記載されているような従来技術では、車両の走行車線が路肩や非常駐車帯に隣接しているのか否かを適切に判定することができず、走行車線に応じた適切な位置に車両を停車させることができない可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、車両の走行車線が路肩や非常駐車帯に隣接しているのか否かを正確に判定し、走行車線に応じた適切な位置に車両を停車させることができる、車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の車両制御システムは、車両を自動的に停車させる車両制御システムであって、車両の前方を撮影するカメラと、カメラにより撮影された車両の前方の画像に基づき、車両を停車させるために当該車両の操舵装置及び制動装置の制御を行うよう構成されたコントローラと、を有し、コントローラは、カメラにより撮影された画像から、道路の区画線と路端とを検出し、車両の走行車線の左側区画線が白実線であり、車両の左側の路端と左側区画線との距離が第1の距離未満であり、路端と左側区画線との間に他の区画線が存在しない場合、路端と左側区画線との間に車両の少なくとも一部を進入させて停車させるように操舵装置及び制動装置を制御する。
このように構成された本発明においては、コントローラは、車両の走行車線の左側に他の車線が存在せず、路端と左側区画線との間のスペースに、車両が通常走行可能な程度の幅がなく且つ非常駐車帯を画定するような他の区画線もない場合に、車両の走行車線が路肩に隣接していると想定して、路端に車両を寄せて停車させる。これにより、車両の走行車線が路肩に隣接していることを正確に判定して、路肩に車両を進入させて停車させることができ、走行車線に応じた適切な位置に車両を停車させることができる。
【0007】
また、本発明において、好ましくは、コントローラは、車両の走行車線の左側区画線が白実線ではない場合、又は、車両の走行車線の左側区画線が白実線であり且つ車両の左側の路端と左側区画線との距離が第1の距離以上である場合、走行車線において車両を停車させるように操舵装置及び制動装置を制御する。
このように構成された本発明においては、コントローラは、車両の走行車線の左側に、他の車線が存在する場合や、車両の通常走行が可能な幅のスペースが存在する場合に、車両の走行車線が路肩に隣接していないと想定して、車両を現在の走行車線で停車させる。これにより、車両の走行車線が路肩に隣接していないことを正確に判定し、車線変更の繰り返しを回避して車両を現在の走行車線で停車させることができ、走行車線に応じた適切な位置に車両を停車させることができる。
【0008】
また、本発明の車両制御システムは、車両を自動的に停車させる車両制御システムであって、車両の前方を撮影するカメラと、カメラにより撮影された車両の前方の画像に基づき、車両を停車させるために当該車両の操舵装置及び制動装置の制御を行うよう構成されたコントローラと、を有し、コントローラは、カメラにより撮影された画像から、道路の区画線と路端とを検出し、車両の走行車線の左側区画線が白実線であり、車両の左側の路端と左側区画線との距離が第1の距離未満であり、路端と左側区画線との間に他の区画線が存在し且つ当該他の区画線と左側区画線との距離が第1の距離より小さい第2の距離未満である場合、路端と左側区画線との間に車両の少なくとも一部を進入させて停車させるように操舵装置及び制動装置を制御する。
このように構成された本発明においては、コントローラは、車両の走行車線の左側に他の車線が存在せず、路端と白実線の左側区画線との間のスペースに、車両が通常走行可能な程度の幅がなく、且つ、路端と左側区画線との間に存在する他の区画線と、左側区画線との間のスペースにも車両が通常走行可能な程度の幅がない場合に、車両の走行車線が路肩あるいは非常駐車帯に隣接していると想定して、路端に車両を寄せ、あるいは非常駐車帯に車両を進入させて停車させる。これにより、車両の走行車線が路肩や非常駐車帯に隣接していることを正確に判定して、路肩や非常駐車帯に車両を進入させて停車させることができ、走行車線に応じた適切な位置に車両を停車させることができる。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、コントローラは、車両の走行車線の左側区画線が白実線であり、車両の左側の路端と左側区画線との距離が第1の距離未満であり、路端と左側区画線との間に他の区画線が存在し且つ当該他の区画線と左側区画線との距離が第2の距離未満である場合において、他の区画線と左側区画線との距離が第2の距離より小さい第3の距離以上である場合、他の区画線と左側区画線との間に車両を進入させて停車させるように操舵装置及び制動装置を制御する。
このように構成された本発明においては、コントローラは、車両の走行車線の左側に他の車線が存在せず、路端と白実線の左側区画線との間のスペースに、車両が通常走行可能な程度の幅がなく、且つ、路端と白実線の左側区画線との間の他の区画線と、左側区画線との間のスペースには車両が通常走行可能な程度の幅はないが車両を停車させることが可能な程度の幅がある場合に、車両の走行車線が非常駐車帯に隣接していると想定して、非常駐車帯に車両を進入させて停車させる。これにより、車両の走行車線が非常駐車帯に隣接していることを正確に判定して、非常駐車帯に車両を進入させて停車させることができ、走行車線に応じた適切な位置に車両を停車させることができる。
【0010】
他の観点では、本発明の車両制御方法は、車両を自動的に停車させる車両制御方法であって、カメラが、車両の前方を撮影するステップと、コントローラが、カメラにより撮影された車両の前方の画像に基づき、車両を停車させるために当該車両の操舵装置及び制動装置の制御を行うステップと、を有し、コントローラが操舵装置及び制動装置の制御を行うステップは、コントローラが、カメラにより撮影された画像から、道路の区画線と路端とを検出するステップと、コントローラが、車両の走行車線の左側区画線が白実線であり、車両の左側の路端と左側区画線との距離が第1の距離未満であり、路端と左側区画線との間に他の区画線が存在しない場合、路端と左側区画線との間に車両の少なくとも一部を進入させて停車させるように操舵装置及び制動装置を制御するステップと、を有する。
【0011】
また、他の観点では、本発明の車両制御方法は、車両を自動的に停車させる車両制御方法であって、カメラが、車両の前方を撮影するステップと、コントローラが、カメラにより撮影された車両の前方の画像に基づき、車両を停車させるために当該車両の操舵装置及び制動装置の制御を行うステップと、を有し、コントローラが操舵装置及び制動装置の制御を行うステップは、コントローラが、カメラにより撮影された画像から、道路の区画線と路端とを検出するステップと、コントローラが、車両の走行車線の左側区画線が白実線であり、車両の左側の路端と左側区画線との距離が第1の距離未満であり、路端と左側区画線との間に他の区画線が存在し且つ当該他の区画線と左側区画線との距離が第1の距離より小さい第2の距離未満である場合、路端と左側区画線との間に車両の少なくとも一部を進入させて停車させるように操舵装置及び制動装置を制御するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による車両制御システム及び車両制御方法によれば、車両の走行車線が路肩や非常駐車帯に隣接しているのか否かを適切に判定し、走行車線に応じた適切な位置に車両を停車させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による車両制御システムが適用された車両の概略構成図である。
図2】本発明の実施形態による車両制御システムの電気的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態による車両制御システムが実行する自動停車処理のフローチャートである。
図4】走行車線、路肩及び非常駐車帯を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両制御システム及び車両制御方法を説明する。
【0015】
<システム構成>
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態による車両制御システムが適用された車両の全体構成を説明する。図1は、本実施形態による車両制御システムが適用された車両の概略構成図である。図2は、本実施形態による車両制御システムの電気的構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、符号1は、本実施形態による車両制御システムが適用された車両を示す。この車両1は、駆動力を発生するエンジン31、車両1を制動するブレーキ32、及び電動パワーステアリング33を有している。また、車両1には、車両1の前方を撮影するカメラ21、及び車両1の周辺の障害物を検出するレーダ22が設けられている。
【0017】
さらに、図2に示すように、車両1には、車速を検出する車速センサ23、車両1の進行方向の加速度を検出する加速度センサ24、車両1のヨーレートを検出するヨーレートセンサ25、車両1の舵角を検出する舵角センサ26、アクセルペダルの操作(例えばアクセル開度)を検出するアクセルセンサ27、ブレーキペダルの操作(例えばブレーキペダルの踏み込み量)を検出するブレーキセンサ28、車両1の位置を検出する測位システム29、及びナビシステム30が設けられている。カメラ21が撮影した画像データ、レーダ22が検出した障害物の位置情報、測位システム29により取得された位置情報、ナビシステム30から取得された非常駐車帯の位置等に関する情報、及び各センサにより検出された検出データは、コントローラ10に出力される。
【0018】
カメラ21は、車両1の周囲を撮影し、画像データを出力する。コントローラ10は、カメラ21から受信した画像データに基づいて、対象物(例えば、道路の区画線(例えば車線境界線、車道外側線、車両通行帯最外側線等を含む白線や黄線等)、路端(道路とそれ以外の物との境界、例えば舗装と土との境界、ガードレール、縁石等)、他車両、歩行者、信号、標識、停止線、交差点、障害物等)を特定する。
【0019】
レーダ22は、対象物(特に、路端(道路とそれ以外の物との境界、例えば舗装と土との境界、ガードレール、縁石等)他車両、歩行者、障害物等)の位置及び速度を測定する。レーダ22として、例えばミリ波レーダを用いることができる。レーダ22は、車両1の周辺に電波を送信し、対象物により送信波が反射されて生じた反射波を受信する。そして、レーダ22は、送信波と受信波に基づいて、車両1から対象物までの方向及び距離や、車両1と対象物との相対速度を測定する。なお、このようなレーダ22に代えて、レーザレーダや超音波センサ等を用いて対象物との距離や相対速度を測定してもよい。
【0020】
図2に示すように、コントローラ10には、カメラ21が撮影した画像データ、レーダ22が検出した障害物の位置情報、測位システム29により取得された位置情報、ナビシステム30から取得された非常駐車帯の位置等に関する情報、及び各センサ23~28により検出された検出データが入力されるようになっている。
【0021】
コントローラ10は、1つ以上のプロセッサ10a(典型的にはCPU)と、当該プロセッサ上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如きメモリ10bと、を備えるコンピュータにより構成される。
【0022】
具体的には、コントローラ10は、カメラ21が撮影した画像データ、レーダ22が検出した障害物の位置情報、測位システム29により取得された位置情報、ナビシステム30から取得された非常駐車帯の位置等に関する情報、及び各センサ23~28により検出された検出データに基づき、主に、エンジン31、ブレーキ32及び電動パワーステアリング33に対して制御信号を出力し、これらを制御する。例えば、コントローラ10は、エンジン31の点火時期、燃料噴射時期、燃料噴射量を調整するために、エンジン31の点火プラグや燃料噴射弁やスロットル弁などを制御する。また、コントローラ10は、ブレーキ32に制動力を発生させるために、例えばブレーキ32の液圧ポンプやバルブユニットなどを制御する。また、コントローラ10は、車両1の進行方向を変更するために、電動パワーステアリング33のモータなどを制御する。なお、カメラ21及びコントローラ10は、本発明における「車両制御システム」の一例に相当する。
【0023】
<車両の制御>
次に、図3及び図4により、車両制御システムが行う車両1の自動停車処理について説明する。
【0024】
図3は、本実施形態による車両制御システムが実行する自動停車処理のフローチャートである。図4は、走行車線、路肩及び非常駐車帯を例示した説明図である。
【0025】
図3の自動停車処理は、コントローラ10が車両1を自動的に停車させる処理であり、車両1の走行中にドライバの異常が検知された場合(例えば、車両1に設けられた非常ボタンが押されたり、ドライバモニタリングシステムによりドライバの異常が検知されたりした場合)に開始され、コントローラ10によって実行される。
【0026】
図3に示すように、自動停車処理が開始されると、ステップS11において、コントローラ10は、上述したカメラ21が撮影した画像データ、レーダ22が検出した障害物の位置情報、測位システム29により取得された位置情報、ナビシステム30から取得された非常駐車帯の位置等に関する情報、及び各センサ23~28により検出された検出データに対応する情報も含めて、車両1の種々の情報を取得する。
【0027】
次に、ステップS12において、コントローラ10は、ステップS11においてカメラ21から入力された画像データに基づき、車両1が走行している道路の区画線及び路端を検出する。図4に示した例では、コントローラ10は、路端E、車両1が走行している車線(走行車線)の左側の区画線BL(白実線、車道外側線)、走行車線の右側の区画線BL(白破線、車線境界線)、走行車線の右側の隣接車線における右側の区画線BL(白実線、車道中央線)、路端Eと車両1の走行車線の左側区画線BL1(車道外側線)との間の区画線BL(白実線、非常駐車帯を画定)を検出する。
【0028】
次に、ステップS13において、コントローラ10は、車両1の走行車線を画定する左右の区画線の内の左側の区画線(左側区画線BL1)が白実線か否かを判定する。図4に示した例では、車両1の走行車線の左側区画線BL1は白実線である。
【0029】
ステップS13の判定の結果、車両1の走行車線の左側区画線BL1が白実線ではない場合(ステップS13:No)、例えば車両1が高速道路の追い越し車線を走行しており、走行車線の左側区画線BL1が白破線である場合、車両1の走行車線の左側には他の車線が存在している、即ち車両1の走行車線は路肩や非常駐車帯に隣接していないと考えられる。この場合、車両1を路肩や非常駐車帯で停車させるためには車線変更を繰り返さなければならず、短時間で停車を完了させることが困難な可能性がある。そこで、ステップS14において、コントローラ10は、車両1を現在の走行車線を維持しながら停車させる。例えば、コントローラ10は、既知の車線維持制御により電動パワーステアリング33のモータなどを制御しながら、車速が0になるまで所定の減速度(例えば0.2G以下の減速度)が発生するようにエンジン31やブレーキ32を制御する。車両1が停車した後、コントローラ10は自動停車処理を終了する。
【0030】
一方、ステップS13の判定の結果、図4に例示したように車両1の走行車線の左側区画線BL1が白実線である場合(ステップS13:Yes)、つまり車両1の走行車線の左側に他の車線が存在していないと考えられる場合、ステップS15に進み、コントローラ10は、路端Eと白実線の左側区画線BL1との距離WSが第1の距離W1未満か否かを判定する。第1の距離W1は、路端と白実線の左側区画線BL1との間のスペースが路肩(走行車線と路端とにより挟まれ、通常は車両が走行しないスペース)であるのか、路肩ではない(例えば車両が通常走行可能な車線など)のかを判断するための閾値であり、例えば3.5mである。
【0031】
ステップS15の判定の結果、路端Eと白実線の左側区画線BL1との距離WSが第1の距離W1未満ではない場合(ステップS15:No)、即ちWS≧W1である場合、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間のスペースは車両の通常走行が可能な程度に十分な幅を有しているので、車両1の走行車線は路肩や非常駐車帯に隣接していないと考えられる。そこで、ステップS14に進み、コントローラ10は、車両1を現在の走行車線を維持しながら停車させる。
【0032】
一方、ステップS15の判定の結果、路端Eと白実線の左側区画線BL1との距離WSが第1の距離W1未満である場合(ステップS15:Yes)、ステップS16に進み、コントローラ10は、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間に他の区画線BL2が存在するか否かを判定する。
【0033】
ステップS16の判定の結果、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間に他の区画線BL2が存在しない場合(ステップS16:No)、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間のスペースは、通常は車両が走行することがなく且つ非常駐車帯を画定するような区画線BLもないので、路肩であると考えられる。そこで、ステップS17に進み、コントローラ10は、路端Eから所定の距離(例えば0.75m)まで車両1を路端Eに接近させるように、電動パワーステアリング33のモータなどを制御すると共に、車速が0になるまで所定の減速度(例えば0.2G以下の減速度)が発生するようにエンジン31やブレーキ32を制御する。路端Eから所定の距離まで車両1を路端Eに接近させたとき、車両1の少なくとも一部が、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間のスペースに入っていればよい。車両1が停車した後、コントローラ10は自動停車処理を終了する。
【0034】
一方、ステップS16の判定の結果、図4の上部に例示したように路端Eと白実線の左側区画線BL1との間に他の区画線BL2が存在する場合(ステップS16:Yes)、ステップS18に進み、コントローラ10は、白実線の左側区画線BL1と当該他の区画線BL2との距離WLが第2の距離W2未満か否かを判定する。第2の距離W2は、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間に存在する区画線BLと、白実線の左側区画線BL1との間のスペースが、車両が通常走行可能な車線であるのか否かを判断するための閾値であり、第1の距離W1よりも小さく、例えば2.8mである。
【0035】
ステップS18の判定の結果、白実線の左側区画線BL1と他の区画線BL2との距離WLが第2の距離W2未満ではない場合(ステップS18:No)、即ちWL≧W2である場合、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間の他の区画線BL2と、白実線の左側区画線BL1との間のスペースは車両の通常走行が可能な程度の幅を有しているので、車両1の走行車線は路肩や非常駐車帯に隣接していないと考えられる。そこで、ステップS14に進み、コントローラ10は、車両1を現在の走行車線を維持しながら停車させる。
【0036】
一方、ステップS18の判定の結果、白実線の左側区画線BL1と他の区画線BL2との距離WLが第2の距離W2未満である場合(ステップS18:Yes)、ステップS19に進み、コントローラ10は、白実線の左側区画線BL1と他の区画線BL2との距離WLが第3の距離W3以上か否かを判定する。第3の距離W3は、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間に存在する区画線BL2と、白実線の左側区画線BL1との間のスペースが、非常駐車帯であるのか否かを判断するための閾値であり、第2の距離W2よりも小さく、例えば2.5mである。
【0037】
ステップS19の判定の結果、白実線の左側区画線BL1と他の区画線BL2との距離WLが第3の距離W3以上ではない場合(ステップS19:No)、即ちWL<W3である場合、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間に存在する区画線BL2と、白実線の左側区画線BL1との間のスペースは、非常駐車帯ではないと考えられる。そこで、ステップS17に進み、コントローラ10は、路端Eから所定の距離まで車両1を路端Eに寄せて、車両1を停車させる。
【0038】
一方、ステップS19の判定の結果、白実線の左側区画線BL1と他の区画線BL2との距離WLが第3の距離W3以上である場合(ステップS19:Yes)、つまり白実線の左側区画線BL1と他の区画線BL2との距離WLが第3の距離W3以上W2未満である場合、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間に存在する区画線BL2と、白実線の左側区画線BL1との間のスペースは、車両を停車させることが可能な程度の幅を有しており、非常駐車帯であると考えられる。そこで、ステップS20に進み、コントローラ10は、非常駐車帯(即ち路端Eと白実線の左側区画線BL1との間に存在する区画線BL2と、白実線の左側区画線BL1との間のスペース)に車両1を進入させるように、電動パワーステアリング33のモータなどを制御すると共に、車速が0になるまで所定の減速度(例えば0.2G以下の減速度)が発生するようにエンジン31やブレーキ32を制御する。車両1が停車した後、コントローラ10は自動停車処理を終了する。
【0039】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例を説明する。
上述した実施形態においては、車両制御システムを搭載する車両1は、駆動力を発生する動力源としてエンジン31を搭載する場合を例として説明したが、このエンジン31に代えて、あるいはエンジン31と共に、動力源として車両1にバッテリ及びモータを搭載してもよい。
【0040】
<作用効果>
次に、上述した本実施形態及び変形例による車両制御システムの作用効果を説明する。
【0041】
コントローラ10は、カメラ21により撮影された画像から、道路の区画線BL、BL1、BL2と路端Eとを検出し、車両1の走行車線の左側区画線BL1が白実線であり、車両1の左側の路端Eと左側区画線BL1との距離WSが第1の距離W1未満であり、路端Eと左側区画線BL1との間に他の区画線が存在しない場合、路端Eと左側区画線BL1との間に車両1の少なくとも一部を進入させて停車させるように電動パワーステアリング33及びブレーキ32を制御する。つまり、コントローラ10は、車両1の走行車線の左側に他の車線が存在せず、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間のスペースに、車両が通常走行可能な程度の幅がなく且つ非常駐車帯を画定するような他の区画線BLもない場合に、車両1の走行車線が路肩に隣接していると想定して、路端Eに車両1を寄せて停車させる。これにより、車両1の走行車線が路肩に隣接していることを正確に判定して、路肩に車両1を進入させて停車させることができ、走行車線に応じた適切な位置に車両1を停車させることができる。
【0042】
また、コントローラ10は、車両1の走行車線の左側区画線BL1が白実線ではない場合、又は、車両1の走行車線の左側区画線BL1が白実線であり且つ車両1の左側の路端Eと左側区画線BL1との距離が第1の距離W1以上である場合、走行車線において車両1を停車させるように電動パワーステアリング33及びブレーキ32を制御する。つまり、コントローラ10は、車両1の走行車線の左側に他の車線が存在する場合や、車両の通常走行が可能な幅のスペースが存在する場合に、車両1の走行車線が路肩に隣接していないと想定して、車両1を現在の走行車線で停車させる。これにより、車両1の走行車線が路肩に隣接していないことを正確に判定し、車線変更の繰り返しを回避して車両1を現在の走行車線で停車させることができ、走行車線に応じた適切な位置に車両1を停車させることができる。
【0043】
また、コントローラ10は、車両1の走行車線の左側区画線BL1が白実線であり、車両1の左側の路端Eと左側区画線BL1との距離WSが第1の距離W1未満であり、路端Eと左側区画線BL1との間に他の区画線BL2が存在し且つ当該他の区画線BL2と左側区画線BL1との距離WLが第1の距離W1より小さい第2の距離W2未満である場合、路端Eと左側区画線BL1との間に車両1の少なくとも一部を進入させて停車させるように電動パワーステアリング33及びブレーキ32を制御する。つまり、コントローラ10は、車両1の走行車線の左側に他の車線が存在せず、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間のスペースに、車両が通常走行可能な程度の幅がなく、且つ、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間の他の区画線BL2と、白実線の左側区画線BL1との間のスペースにも車両が通常走行可能な程度の幅がない場合に、車両1の走行車線が路肩あるいは非常駐車帯に隣接していると想定して、路端Eに車両1を寄せ、あるいは非常駐車帯に車両1を進入させて停車させる。これにより、車両1の走行車線が路肩や非常駐車帯に隣接していることを正確に判定して、路肩や非常駐車帯に車両1を進入させて停車させることができ、走行車線に応じた適切な位置に車両1を停車させることができる。
【0044】
また、コントローラ10は、車両1の走行車線の左側区画線BL1が白実線であり、車両1の左側の路端Eと左側区画線BL1との距離WSが第1の距離W1未満であり、路端Eと左側区画線BL1との間に他の区画線BL2が存在し且つ当該他の区画線BL2と左側区画線BL1との距離WLが第1の距離W1より小さい第2の距離W2未満である場合において、他の区画線BL2と左側区画線BL1との距離が第2の距離W2より小さい第3の距離W3以上である場合、他の区画線BL2と左側区画線BL1との間に車両1を進入させて停車させるように電動パワーステアリング33及びブレーキ32を制御する。つまり、コントローラ10は、車両1の走行車線の左側に他の車線が存在せず、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間のスペースに、車両が通常走行可能な程度の幅がなく、且つ、路端Eと白実線の左側区画線BL1との間の他の区画線BL2と、白実線の左側区画線BL1との間のスペースには車両が通常走行可能な程度の幅はないが車両を停車させることが可能な程度の幅がある場合に、車両1の走行車線が非常駐車帯に隣接していると想定して、非常駐車帯に車両1を進入させて停車させる。これにより、車両1の走行車線が非常駐車帯に隣接していることを正確に判定して、非常駐車帯に車両1を進入させて停車させることができ、走行車線に応じた適切な位置に車両1を停車させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 車両
10 コントローラ
10a プロセッサ
10b メモリ
21 カメラ
22 レーダ
23 車速センサ
24 加速度センサ
25 ヨーレートセンサ
26 舵角センサ
27 アクセルセンサ
28 ブレーキセンサ
29 測位システム
30 ナビシステム
31 エンジン
32 ブレーキ
33 電動パワーステアリング
E 路端
BL 区画線
BL1 左側区画線
BL2 路端と左側区画線との間に存在する他の区画線
図1
図2
図3
図4