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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165272
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】吸収性評価用器具及び評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/84 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
A61F13/84 100
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076108
(22)【出願日】2022-05-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】390003872
【氏名又は名称】豊島株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】仁保 博雄
(72)【発明者】
【氏名】大川 侑穂
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200AA17
3B200CA02
3B200CA03
3B200CB03
3B200CB07
3B200EA30
(57)【要約】
【課題】下着の吸収性能を、適正に且つ簡易に評価する吸収性評価用器具及び評価方法を提供する。
【解決手段】吸収性評価用器具は、下着の吸収性能を評価するために用いられる。吸収性評価用器具は、本体腰部と、一対の本体大腿部と、を備える。本体腰部は、人体の腰部を模した形状を有する中空体である。一対の本体大腿部は本体腰部に設けられる。本体腰部は、一対の本体大腿部の間に、当該吸収性評価用器具に評価対象として装着される下着の内側面を少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる股部開口を有する開口部を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下着の吸収性能を評価するために用いられる吸収性評価用器具であって、
人体の腰部を模した形状を有する中空体である本体腰部と、
前記本体腰部に設けられた一対の本体大腿部と、
を備え、
前記本体腰部は、前記一対の本体大腿部の間に、当該吸収性評価用器具に評価対象として装着される前記下着の内側面を少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる股部開口を有する開口部を含む
吸収性評価用器具。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性評価用器具であって、
前記股部開口は、前後方向における範囲であって着用者の膣口を想定した位置及び尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置に基づいて予め定められた前記前後方向における範囲を有する、吸収性評価用器具。
【請求項3】
請求項1に記載の吸収性評価用器具であって、
前記股部開口内における着用者の膣口を想定した位置及尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置を示すように構成された表示部
を更に備える、吸収性評価用器具。
【請求項4】
請求項1に記載の吸収性評価用器具であって、
内部に前記吸収性能を評価するための疑似体液を流通させる管部と、前記管部に連通し前記疑似体液を吐出するための少なくとも一つの吐出口を含む吐出部とを有し、前記股部開口内における着用者の膣口を想定した位置及び尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置に前記擬似体液を供給するように構成された供給部
を更に備える吸収性評価用器具。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載の吸収性評価用器具であって、
前記吐出部は、
複数の前記吐出口と、
前記複数の吐出口それぞれに連通する分岐管と、
を備え、
前記分岐管のうち少なくとも一部は延びる向きが互いに異なる、吸収性評価用器具。
【請求項6】
請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載の吸収性評価用器具であって、
前記基準位置は、前記股部開口内における、前記着用者の膣口を想定した位置である、吸収性評価用器具。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収性評価用器具であって、
前記基準位置は、前記股部開口内における、前記着用者の尿道口を想定した位置である、吸収性評価用器具。
【請求項8】
請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載の吸収性評価用器具であって、
前記基準位置は、前記股部開口内における、前記着用者の尿道口を想定した位置である、吸収性評価用器具。
【請求項9】
下着の吸収性能を評価するために用いられる吸収性評価用器具であって、人体の腰部を模した形状を有する中空体である本体腰部と、前記本体腰部に設けられた一対の本体大腿部と、を備え、前記本体腰部は、前記一対の本体大腿部の間に、当該吸収性評価用器具に評価対象として装着される前記下着の内側面を少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる股部開口を有する開口部を含む、前記吸収性評価用器具を用いた評価方法であって、
前記吸収性評価用器具に前記下着を装着する装着手順と、
前記装着手順の後に、前記吸収性評価用器具に前記下着が装着された状態で、前記股部開口内に対して予め定められた量の疑似体液を供給する供給手順と、
前記供給手順の後に、前記股部開口にて上方に露出する前記下着の内側面を少なくとも目視または指触することによって、前記下着の吸収性能を評価する評価手順と、
を含む評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、下半身用下着の吸収性能を評価するために用いられる吸収性評価用器具及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性を有する下半身用下着(例えば、ショーツ、パンツ等。以下、単に下着ともいう)が知られている。吸水性を有する女性用下着としての吸収型生理ショーツは、ショーツ本体が吸水する機能を有する下着であり、吸水型サニタリーショーツ(以下、吸水ショーツという)とも称される。吸水ショーツは、生理等による出血への対策のみならず、所謂尿漏れへの対策としても用いられ得る。尿漏れへの対策として、吸水性を有する男性用下着(以下、吸水パンツともいう)も知られている。このような吸水性を有する下着の普及に伴い、下着の吸収性能を適正に評価する技術が望まれている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、女性腰部モデルに生理用ナプキン及びショーツを装着し、チューブから擬似血液を注入して生理用ナプキンによる吸収量を測定する、という評価方法が提案されている。また例えば、下記特許文献2には、股間にパイプと繋がった小孔が配置された赤ちゃん人形におむつを装着し、パイプから人工尿を注入しておむつによる吸収量を測定する、という評価方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-285172号公報
【特許文献2】特開平9-253126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の赤ちゃん人形と同様に、上述の女性腰部モデルにおいても、女性腰部モデルの股間にチューブと繋がった小孔が配置され、チューブから擬似血液が注入されていると考えられる。例えば、このような股間にチューブと繋がった小孔が配置される腰部モデルに下着を装着し、装着された下着の吸収性能を評価する方法が考えられる。
【0006】
吸収性能は、経血や尿等を模擬した擬似体液を評価対象となる下着に滴下した際の染み出しの目視確認や指触による逆流の確認等によって評価され得る。
しかしながら、股間にチューブと繋がった小孔が配置される上述の腰部モデルを用いた評価方法では、腰部モデルに評価対象となる下着を装着した状態で、目視または指触によって吸収状態を判断できない、という問題が生じる。吸収状態を判断するためには、その都度、腰部モデルから評価対象となる下着を取り外し、再び装着する必要がある。このように装着及び取り外しを繰り返すことによって、例えば、下着の吸水部分が他に付着すること、下着が伸びること、又は下着が他に触れること等により染み出しや保水の状態が本来評価すべき状態と異なってしまうという問題や、評価手順が煩雑になるという問題が生じ得る。
【0007】
本開示の1つの局面は、下着の吸収性能を、適正に且つ簡易に評価する吸収性評価用器具及び評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの局面の吸収性評価用器具は、下着の吸収性能を評価するために用いられる。吸収性評価用器具は、本体腰部と、一対の本体大腿部と、を備える。本体腰部は、人体の腰部を模した形状を有する中空体である。一対の本体大腿部は本体腰部に設けられる。本体腰部は、一対の本体大腿部の間に、当該吸収性評価用器具に評価対象として装着される下着の内側面を少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる股部開口を有する開口部を含む。
【0009】
このような吸収性評価用器具では、股部開口は当該吸収性評価用器具に装着される下着の内側面を少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる。このため、下着の吸収特性を評価するために、吸収性評価用器具に対して下着の装着及び取り外しを繰り返す必要が無い。結果として、当該吸収性評価用器具に装着される下着の吸収性能を、適正に且つ簡易に評価することができる。
【0010】
本開示の別の一つの局面の評価方法は、下着の吸収性能を評価するために用いられる吸収性評価用器具を用いた評価方法である。吸収性評価用器具は、人体の腰部を模した形状を有する中空体である本体腰部と、本体腰部に設けられた一対の本体大腿部と、を備える。本体腰部は、一対の本体大腿部の間に、当該吸収性評価用器具に評価対象として装着される下着の内側面を少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる股部開口を有する開口部を含む。評価方法は、装着手順と、供給手順と、評価手順と、を含む。装着手順では、上述の吸収性評価用器具に下着を装着する。供給手順では、装着手順の後に、上述の吸収性評価用器具に下着が装着された状態で、股部開口に対して予め定められた量の疑似体液を供給する。評価手順では、供給手順の後に、股部開口にて上方に露出する下着の内側面を少なくとも目視または指触することによって、下着の吸収性能を評価する。
【0011】
上述の評価方法によれば、本開示の1つの局面の吸収性評価用器具と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】吸水ショーツの正面図である。
図2】吸水ショーツにおける吸水部を説明する説明図である。
図3】第1実施形態の吸収性評価用器具を示す説明図である。
図4】第1実施形態のトルソーの平面図である。
図5】第1実施形態のトルソーを用いた評価試験について説明する説明図である。
図6】第1実施形態のトルソーにおける表示部と吸水ショーツとを示す説明図である。
図7】第2実施形態のトルソーを用いた評価試験について説明する説明図である。
図8】第2実施形態のアタッチメントを示す説明図である。
図9】下着側膣口位置、下着側尿道口位置を説明する説明図である。
図10】想定尿道口位置が表示された、他の実施形態のトルソーの平面図である。
図11】想定膣口位置及び想定尿道口位置が表示された、他の実施形態のトルソーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
なお、以下でいう「一致」とは、厳密な意味での一致に限るものではなく、同様の効果を奏するのであれば厳密に一致でなくてもよい。以下でいう「同一」「垂直」「平行」についても同様である。
【0014】
[1.第1実施形態]
[1-1.評価対象]
評価対象となる下着である吸水ショーツ10は、例えば図1に示すように、ショーツ本体部11と、吸水部17とを備える。ショーツ本体部11は、外側布地21により構成されており、前身頃部12と、後身頃部13と、を備える。外側布地21は、例えば、肌ざわりが良い伸縮性を有する布地である。前身頃部12は下着の着用者の腹部を覆う部分であり、後身頃部13は着用者の臀部を覆う部分である。ショーツ本体部11は、ウェスト開口部15と一対の脚開口部16とを有する。ウェスト開口部15と一対の脚開口部16とは、前身頃部12と後身頃部13とが脇線部14で縫着されることによって形成される。
【0015】
図2は、吸水部17の構成を説明するために、吸水部17の一部を切り欠いて示している。図2に示すように、吸水部17は、外側布地21と、吸水機能部25と、内側布地24とを備え、吸水機能部25が外側布地21と内側布地24との間に挟まれ保持されている。内側布地24は、着用者の肌に接触可能な布地であって、吸水性を有する。内側布地24は更に速乾性を有していてもよい。
【0016】
吸水機能部25は、水分保持布地23と防水性布地22とを含み、これらが順に積層されている。水分保持布地23は、抗菌防臭性を有し、内側布地24で吸水した水分を保持する布地である。防水性布地22は防水性を有する布地である。
【0017】
吸水機能部25は、外側布地21と内側布地24との間に挟まれた状態で、幅方向(すなわち、左右方向)において各端部が縫着される。吸水機能部25は、前後方向において、前側(すなわち、前身頃部12側)の端部が内側布地24と外側布地21に縫着され、後側(すなわち、 後身頃部13側)の端部が内側布地24と外側布地21に縫着される。
【0018】
吸水機能部25が縫着される縫目のうち左右方向の縫目、すなわち、脚開口部16における縫目を、脚開口部側縫目173という。左の脚開口部側縫目173を左脚開口部側縫目173aといい、右の脚開口部側縫目173を右脚開口部側縫目173bという。吸水機能部25が縫着される縫目のうち、前側の縫目を前縫目171といい、後側の縫目を後縫目172という。脚開口部側縫目173は、前縫目171から後縫目172までの縫目をいう。
【0019】
以下では、各部に共通する説明を記載する場合は符号を省略して記載する。例えば、左脚開口部側縫目173aと右脚開口部側縫目173bに共通する説明を記載する場合、単に、脚開口部側縫目173のように記載する。
【0020】
なお、評価対象となる吸水ショーツ10の形状、構成は、図1に示す形状、構成に限定されるものではなく、任意の形状、構成であってよい。吸水機能部25の構成は、図2に示す構成に限定されるものではなく、水分保持性と防水性を有する構成であればよく、一または複数の任意の機能性を有する布地や物質が積層される構成であり得る。
【0021】
[1-2.吸収性評価用器具]
本実施形態の吸収性評価用器具1は、図3及び図4に示すように、トルソー30と、表示部50と、供給部60とを備える。
【0022】
トルソー30は、人体における胴体部分のうちの下半身部分を模した形状を有する。具体的には、トルソー30は、本体腰部31と、本体腰部31に設けられた一対の本体大腿部32とを備える。以下では、トルソー30における腹33側を前、背34側(すなわち、臀部に繋がる側)を後ろ、腰35側を上、本体大腿部32側を下とし、トルソー30における左の本体大腿部32a側を左、右の本体大腿部32b側を右、として方向を定義する。なお、以下では、上下方向を垂直方向ともいう。
【0023】
トルソー30において、本体腰部31は、本実施形態では、女性の腰部を模した形状を有する中空体である。本実施形態でいう腰部とは、所謂腰及び臀部を含む。一対の本体大腿部32は、大腿部を模した形状(例えば、有底筒状の形状)を有し、本体大腿部32の内部空間と本体腰部31の内部空間とは連通している。このように、トルソー30は、腰35側に開口311を有し、内部が空洞となっている。
【0024】
なお、本実施形態では、所謂Mサイズのトルソー30が用いられる。トルソー30は、例えば、樹脂を用いた射出成形品であってもよい。トルソー30の材料は、これに限定されるものではなく、例えば、樹脂、金属、木、布類、紙類等といった、任意の材料及びこれらの組み合わせであり得る。
【0025】
図4に示すように、本体腰部31は、一対の本体大腿部32の間に、股部開口41を有する開口部40を含む。開口部40は股部開口41の周囲の部分である。一対の本体大腿部32の間とは、人体における所謂股部に相当する部分である。吸水ショーツ10の吸収特性は、後述するように、吸水ショーツ10の股部における染み出しや、吸水部17を指で押圧したときの逆流等によって評価される。このため、股部開口41は、後述する図6に示すように、トルソー30に装着される吸水ショーツ10の内側面18を、より具体的には吸水ショーツ10の股部の内側面18を、少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる程度の大きさを有する。
【0026】
なお、内側面18は、着用者の肌に触れる側の面である。吸水ショーツ10の股部とは、所謂ショーツにおけるマチ部、クロッチ部と呼ばれる部分であって、吸水ショーツ10において吸水部17が設けられている部分である。指触とは、指で触ること、指で押圧すること、及び、指で触るまたは押圧したときと同様の圧力を加えること、を含む。なお、同様の圧力を加えるものは指以外の器具や装置であってよい。
【0027】
股部開口41は、左右方向の幅WTとして、吸水ショーツ10の股部の幅(すなわち、吸水部17の左右方向の幅)Wよりも広い幅を有する。これにより、股部開口41において、トルソー30に装着された吸水ショーツ10の股部の内側面18における左右方向全範囲が露出される。つまり、吸水ショーツ10における吸収特性の評価において、左右方向の確認が容易となる。
【0028】
股部開口41は、着用者の膣口を想定した位置(以下、想定膣口位置ともいう)P1を基準として予め定められた、前後方向における範囲を有する。具体的には、股部開口41は、図4に示すように、想定膣口位置P1を基準として前方向に延びる範囲は予め定められた第1長さd1を有し、想定膣口位置P1を基準として後ろ方向に延びる範囲は予め定められた第2長さd2を有する。
【0029】
第1長さd1は、トルソー30に装着された吸水ショーツ10の内側面18において経血を吸収すると想定される範囲のうち、想定膣口位置P1を基準として前方向に延びる範囲を示す長さである。第2長さd2は、トルソー30に装着された吸水ショーツ10の内側面18において経血を吸収すると想定される範囲のうち、想定膣口位置P1を基準として後方向に延びる範囲を示す長さである。想定膣口位置P1を基準とする、第1長さd1と第2長さd2とを足し合わせた長さd0を有する範囲が、トルソー30に装着された吸水ショーツ10の内側面18において経血を吸収すると想定される範囲に相当する。
【0030】
第1長さd1及び第2長さd2は被験者による測定結果に基づいて経血を吸収すると想定される範囲を表す長さに設定されており、第1長さd1は約数cm~約十数cmであり、第2長さd2は第1長さd1よりも短く約数cmである。d1>d2である場合は、図3等に示すようにトルソー30が上下方向に立てられた状態において、人が立っている又は座っているとき等(すなわち、人が寝た状態ではないとき)の経血の吸収範囲についての再現性が高まる。
【0031】
例えば、本実施形態では、第1長さd1は9cm、第2長さd2は4cmであってもよい。なお、第1長さd1、第2長さd2は、それぞれ9cm、4cmに限定されるものではなく、評価したい項目等に基づいて、任意の長さであり得る。第1長さd1と第2長さd2とは同じ長さであってもよい。
【0032】
これにより、吸水ショーツ10において経血を吸収すると想定される範囲が明確にされる。つまり、股部開口41のように想定膣口位置P1を基準とする前後範囲が定められること無く、開口部40に前後方向に相対的に広い開口が単に設けられている場合と比較して、吸水ショーツ10において吸収特性を評価すべき前後方向の範囲が明確にされる。
【0033】
表示部50は、股部開口41において着用者の膣口を想定した位置(すなわち、上述の想定膣口位置)P1を示す。想定膣口位置P1は、換言すれば、トルソー30に装着された吸水ショーツ10の内側面18のうち股部開口41にて露出する範囲内において、着用者の膣口を想定した位置である。なお、想定膣口位置P1は、トルソー30における膣口を想定した位置であるともいえる。本実施形態では、表示部50によって、想定膣口位置P1の、前後方向及び左右方向における位置が特定される。
【0034】
本実施形態では、表示部50は、トルソー30の内側面310のうち、股部開口41の周囲に設けられる。表示部50は、表示部50_1、50_2、50_3、50_4を備え、表示部50_1、50_2が互いに組を成し、表示部50_3、50_4が互いに組を成す。表示部50_1、50_2は、股部開口41を挟む前後方向において互いに向かい合うように設けられる。表示部50_2、50_3は、股部開口41を挟む左右方向において互いに向かい合うように設けられる。表示部50_1~50_4それぞれは、線状の印を表わす。
【0035】
前後方向に設けられた表示部50_1、50_2を結ぶ第1仮想線101と、左右方向に設けられた表示部50_3、50_4を結ぶ第2仮想線102とが重なる位置を垂直方向上方から下方に投影した位置が、想定膣口位置P1として示される。
【0036】
図4に示す例では、表示部50_1は開口部40の前側の端部から腹33部側に延び、表示部50_2は開口部40の後側の端部から背34側(すなわち、臀部側)に延びる。表示部50_3は開口部40の左側端部から左の本体大腿部32a側に延び、表示部50_4は開口部40の右側端部から右の本体大腿部32b側に延びる。
【0037】
但し、表示部50は、これに限定されるものではなく、例えば股部開口41の対角線上等、股部開口41を挟んで互いに向かい合う位置に複数組の線状の印が設けられていればよい。各組の線状の印は、これらを結ぶ複数の仮想線が重なる位置を垂直方向上方から下方に投影した位置が想定膣口位置P1を示すように配置されればよい。
【0038】
なお、表示部50のそれぞれが表す上述の線状の印は、例えば、内側面310に、溝または凸部を線状に設けることによって構成され得る。但し、表示部50は、インク等を用いた表示によって構成されてもよいし、テープ等といったトルソー30を構成する部材以外の部材が貼り付けられることによっても構成され得る。表示部50は、トルソー30が射出成形品である場合、射出成形によって予め形成されてもよいし、射出成形によって予め形成されなくてもよい。後者である場合、表示部50は、上述のように、インク、テープ、溝等によって構成され得る。
【0039】
想定膣口位置P1は、複数の被験者による測定結果に基づいて決定されている。つまり、被験者によって着用された吸水ショーツにおける膣口と対向する位置に印をつけ、これらの印の位置に基づいて吸水ショーツにおける着用者の膣口を想定した位置(以下、下着側膣口位置Q1ともいう)が決定される。吸水ショーツとしては、予め定められた基準となる吸水ショーツが用いられる。本実施形態では、例えば、所謂Mサイズの吸水ショーツが用いられる。トルソー30に装着される基準となる吸水ショーツにおける下着側膣口位置Q1と対応(すなわち、一致)する位置が想定膣口位置P1として決定される。上述の表示部50はこのように決定された想定膣口位置P1を示すように設けられる。
【0040】
供給部60は、表示部50によって示される想定膣口位置P1に、吸収特性を評価するための擬似体液を供給する。供給部60は、少なくとも、管部61と、管部61の一方の端部に設けられ1つの吐出口620を有する吐出部62と、を備える。本実施形態では、管部61と吐出部62とは一体である。管部61の材料としては、樹脂、ガラス、紙類等が用いられ得る。材料は硬質の材料が用いられることが好ましい。
【0041】
図示しないが、管部61の他方の端部63には、予め定められた時間毎に予め定められた量の疑似体液を供給する疑似体液供給装置が接続され得る。または、他方の端部63には、注射器状の器具が接続され得る。
【0042】
図3に示す例では、管部61は、直線状の形状を有する。管部61は、図示しない取り付け具(例えば、クランプ等といった取り付け具)等によって、股部開口41を含む面に対して略垂直となるように保持される。換言すれば、股部開口41を含む面とは、トルソー30に装着される吸水ショーツ10の内側面18であって股部開口41にて露出される内側面18に平行な面である。
【0043】
管部61は、上述の取り付け具等によって、例えば、吐出部62と、トルソー30に装着される吸水ショーツ10の内側面18であって股部開口41にて露出される内側面18との間隔が数mm~数cmであるように保持される。また、管部61は、吐出口620を有する吐出部62の位置が表示部50によって示される想定膣口位置P1に対応するように、上述の取り付け具等によって保持される。対応するとは、表示部50が設けられた股部開口41を含む面に対して略垂直方向上方又は下方に、表示部50によって示される想定膣口位置P1を投影した位置と、吐出部62の位置とが略一致することをいう。
【0044】
これにより、トルソー30に装着される吸水ショーツ10の内側面18であって股部開口41にて露出される内側面18において、想定膣口位置P1に疑似体液がピンポイントで供給される。
【0045】
なお、管部61の保持状態、形状は、図3及び上述に示すものに限定されるものではない。管部61は、股部開口41を含む面に対して予め定められた角度を有するように保持されてもよい。また、管部61は、任意の長さ、任意の内径及び外径を有するものであってよく、直線状の形状ではなく折れ曲がった形状を有していてもよい。
【0046】
[1-3.評価手順]
吸水ショーツ10の吸収特性を評価する手順を図5及び図6を用いて説明する。トルソー30を用いた吸収特性の評価手順は以下の手順を含む。
【0047】
(1)トルソー30に、評価対象としての吸水ショーツ10を装着する。表示部50が示す想定膣口位置P1は人体を模したトルソー30における膣口を想定した位置であるともいえる。上述の基準となる吸水ショーツとは異なるデザイン、異なるサイズの吸水ショーツ10を評価対象として用いる場合においても、評価対象の下着側膣口位置Q1と表示部50が示す想定膣口位置P1とは略一致する。このため、後述するように想定膣口位置P1に対応する位置に疑似体液(すなわち、経血を模擬した疑似体液)を滴下することで、実際に人体から経血が吸水ショーツ10に排出される状態が、吸収性評価用器具1にて相対的に精度よく再現される。
【0048】
(2)トルソー30に吸水ショーツ10を装着した状態で、股部開口41にて上方に露出する吸水ショーツ10の内側面18に、予め定められた量の疑似体液を供給(すなわち、滴下)する。本実施形態では、供給部60を用いて、トルソー30に装着された吸水ショーツ10の内側面18のうち股部開口41にて露出される内側面18において、表示部50が示す想定膣口位置P1に対応する位置に、経血を模擬した疑似体液が滴下される。
【0049】
本実施形態では、1mlの疑似体液を供給(以下、滴下ともいう)する。なお、供給量(以下、滴下量ともいう)は1mlに限定されるものではなく、任意の量であり得る。
疑似体液を滴下した後は、予め定められた時間(以下、待機時間ともいう)待機する。本実施形態では、待機時間は1分間である。なお、待機時間は1分間に限定されるものではなく、評価したい項目、疑似体液の滴下量等に応じて、任意の時間であり得る。または、待機時間は0であってもよい(すなわち、待機せず次の手順を実行してもよい)。
【0050】
経血を模擬した疑似体液として、例えば、水、純水、人口血液、塩化ナトリウム水溶液、牛血等が用いられ得る。塩化ナトリウム水溶液の電解質濃度は、例えば、百~数百mEq であってもよい。なお、経血を模擬した疑似体液は上述の液体に限定されるものではなく、経血を模擬した任意の液状の物質であり得る。液状の物質は、固体状の物質を含んでいてもよい。
【0051】
(3)待機時間経過後、吸水ショーツ10の吸収性能を評価する。吸収性能の評価には、少なくとも目視または指触による評価が含まれる。本実施形態では、以下の評価を行う。
(a)吸水部17における縫目(すなわち、前縫目171、後縫目172、左脚開口部側縫目173a、右脚開口部側縫目173b)からの疑似体液の染み出しを、目視にて確認する。
【0052】
(b)吸水部17の外側面(すなわち、吸水部17の外側布地21)における疑似体液の染み出しを、目視にて確認する。
(c)吸水部17における内側面18のうち疑似体液を滴下した部分を指で押さえ、疑似体液が逆流するか否かを確認する(以下、指触確認ともいう)。
【0053】
(4)(2)-(3)の手順を繰り返す。(3)の手順において、吸水部17の縫目における染み出しが確認される、吸水部17の外側面における染み出しが確認される、吸水部17の内側面18における押圧時の疑似体液の逆流または内側面18が濡れた状態が確認される等といった、予め定められた評価特定条件が満たされる場合、前回までの疑似体液の滴下量の総量を、吸水ショーツ10の最大吸収量として特定する。以上で、(2)-(3)の手順の繰り返しを終了する。
【0054】
(5)最大吸収量が特定された後、更に、所定時間経過後、吸水部17の縫目及び吸水部17の外側面以外の部分からの疑似体液の染み出し、漏れ等を確認する。本実施形態では、所定時間は30分間である。そして、以上で評価手順を終了する。なお、所定時間は30分間に限定されるものではなく、評価したい項目、疑似体液の滴下量等に応じて、任意の時間であり得る。
【0055】
このように、共通のトルソー30に評価対象を装着した状態のままで同様の評価手順を行うことで、複数種類の吸水ショーツ10を評価対象としてその結果を対比することにより、それぞれの吸水ショーツ10の吸収特性が相対的に評価される。
【0056】
なお、染み出しの状態をカメラ等によって撮像し、撮像画像に基づいて目視確認を行ってもよい。指触確認は、指で押さえるときの押圧力と同様の押圧力を加えることが可能な装置等によって行われてもよい。指で押さえるときの押圧力は、例えば数十g/cm2であり得る。例えば、本実施形態では、上述の押圧力は50g/cm2であってもよい。なお、上述の押圧力は、50g/cm2に限定されるものではなく、評価項目や評価対象に応じて、任意の値であり得る。
【0057】
[1-4.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)吸収性評価用器具1は、評価対象としての吸水ショーツ10の吸収性能を評価するために用いられ、トルソー30と、供給部60とを備える。トルソー30は、本体腰部31と、本体腰部31に設けられた一対の本体大腿部32とを備える。本体腰部31は一対の本体大腿部32の間に、股部開口41を有する開口部40を備える。股部開口41は、吸収性評価用器具1(すなわちトルソー30、より具体的には本体腰部31)に装着される吸水ショーツ10の内側面18を少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる股部開口41を有する。
【0058】
したがって、本実施形態によれば、評価対象となる吸水ショーツ10の装着及び取り外しを繰り返し行う必要が無いため、例えば、下着の吸水部分が他に付着すること、下着が伸びること、又は下着が他に触れること等により染み出しや保水の状態が本来評価すべき状態と異なってしまうという問題が抑制される。つまり、着用者に着用された状態に相対的に近い状態で評価を行うことができる。結果として、評価を行う際に装着した吸水ショーツ10を取り外す必要があるような従来の評価用器具を用いる場合よりも、下着の吸収性能を適正に評価することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、評価を行う際に装着した吸水ショーツ10を取り外す必要が無いので、評価を行う際に装着した吸水ショーツ10を取り外す必要があるような従来の評価用器具を用いる場合よりも、下着の吸収性能を簡易に評価することができる。
【0060】
(1b)股部開口41は、前後方向における範囲であって着用者の膣口を想定した位置及び尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置に基づいて予め定められた前後方向における範囲を有する。本実施形態では、基準位置は膣口を想定した位置である。したがって、本実施形態では、基準位置を膣口を想定した位置としない場合と比較して、股部開口41において、トルソー30に装着された吸水ショーツ10における内側面18のうち少なくとも経血吸収すると想定される前後方向の範囲をより確実に露出させることができる。
【0061】
(1c)表示部50は、股部開口41内における着用者の膣口を想定した位置及び尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置を示す。本実施形態では、基準位置は膣口を想定した位置である。したがって、本実施形態では、股部開口41内における、着用者の膣口を想定した位置を明確にすることができる。
【0062】
(1d)供給部60は、管部61と、吐出部62とを有する。管部61は、内部に吸収性能を評価するための疑似体液を流通させる。吐出部62は、管部61に連通し疑似体液を吐出するための少なくとも一つの吐出口620を含む。本実施形態では、吐出部62は、1つの吐出口620を含む。供給部60は、股部開口41内における着用者の膣口を想定した位置及び尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置に擬似体液を供給する。本実施形態では、基準位置は膣口を想定した位置である。したがって、本実施形態では、着用者による着用状態に相対的に近い状態で、経血についての吸収特性の評価を行うことができる。
【0063】
特に本実施形態では、(1c)に記載のように表示部50を備えるので、股部開口41内における着用者の膣口を想定した位置に、的確に、すなわちピンポイントで疑似体液を供給することができる。
【0064】
(1e)吸収性評価用器具1を用いた評価方法は、装着手順と、供給手順と、評価手順と、を含む。装着手順は、吸収性評価用器具1(すなわちトルソー30、具体的には本体腰部31)に評価対象である下着として吸水ショーツ10を装着する。供給手順は、装着手順の後に、トルソー30に吸水ショーツ10が装着された状態で、股部開口41内に対して予め定められた量の疑似体液を供給する。評価手順は、供給手順の後に、股部開口41にて上方に露出する吸水ショーツ10の内側面18を少なくとも目視または指触することによって、吸水ショーツ10の吸収性能を評価する。
【0065】
これにより、トルソー30を用いて同様の評価手順を行い、その結果を対比することにより、複数種類の吸水ショーツ10に対してそれぞれの吸収特性を相対的に評価することができる。
【0066】
なお、上記実施形態において、吸収性評価用器具1、トルソー30、表示部50、及び供給部60、が吸収性評価用器具に相当し、トルソー30が本体腰部及び一対の本体大腿部に相当し、本体腰部31が本体腰部に相当し、一対の本体大腿部32が一対の本体大腿部に相当し、吸水ショーツ10が下着に相当し、内側面18が内画面に相当し、股部開口41が股部開口に相当する。膣口想定位置P1が着用者の膣口を想定した位置、基準位置に相当し、表示部50、表示部50_1~50_4が表示部に相当し、供給部60が供給部に相当する。
【0067】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0068】
第2実施形態では、図7に示すように、吸収性評価用器具1aが備える供給部60aは、疑似体液を供給するための複数の分岐管75~77を備える点で、第1実施形態と相違する。
【0069】
本実施形態では、供給部60aが備える管部61の吐出部62側に、アタッチメント70が設けられる。アタッチメント70は、図8に示すように、筒本体部71と、筒開口部72と、筒底部73と、分岐管75~77とを備える。筒本体部71は筒状の形状を有する。筒開口部72は、筒本体部71の一方の端部であって、開口721を有する。開口721は、吐出口620の外径よりも若干大きい、または若干小さい内径を有する。図示しないが、筒開口部72は、吐出部62に接続可能な形状を有する。
【0070】
筒底部73は、筒本体部71の他方の端部であって、中央に開口731を有し、更に開口731に隣接する開口732、733を有する。開口731~733において、開口731は最も大きい内径を有する。換言すれば、開口732、733は開口731よりも小さい内径を有する。開口731~733は筒底部73に一列に配置されている。つまり、開口731~733のそれぞれの中心が同一直線状に位置する。
【0071】
分岐管75~77は管状の形状を有する。分岐管75は開口731に連通し、分岐管76は開口732に連通し、分岐管77は開口733に連通する。本実施形態では、分岐管75は筒底部73に対して略垂直方向に延びる形状を有する。分岐管76、77は、分岐管75を中心軸として、それぞれ所定の角度を有する。
【0072】
アタッチメント70の材料は、管部61と同様の材料が用いられ得る。アタッチメント70の材料は、管部61と同様に、材料は硬質の材料が用いられることが好ましい。
管部61の吐出部62にアタッチメント70の開口721が接続されることにより、管部61の内部空間とアタッチメント70の内部空間とが連通する。これにより、管部61に供給される疑似体液は、分岐管75~77それぞれから吐出される。吐出量は、分岐管75からの吐出量が分岐管76~77からの吐出量よりも多い。また、吐出部62にアタッチメント70が接続された状態で、分岐管75~77は前後方向に一列に配置される。これにより、疑似体液が、異なる方向に、異なる滴下量で滴下される。
【0073】
[2-2.効果]
(2a)吐出部62は、複数の吐出口としての開口731~733と、開口731~733それぞれに連通する分岐管75~77と、を備える。複数の分岐管75~77のうち少なくとも一部は延びる向きが互いに異なる。本実施形態では、分岐管75~77の内全てが、それぞれ、延びる向きが互いに異なる。これにより、管部61から供給される疑似体液を分散して滴下することができる。例えば評価項等に応じて、供給量、供給方向について任意の態様で、疑似体液を滴下することができる。
【0074】
(2b)分岐管75~77は前後方向に一列に配置される。これにより、例えば、経血を模擬した疑似体液の吐出状態を、経血が排出され前後方向に伝い流れる状況により近い状態とすることができる。つまり、実際の状態により近い吐出状態で疑似体液を用いて吸水ショーツ10の吸収特性を評価できるので、結果として、より適正な評価結果を得ることができる。
【0075】
なお、上記実施形態において、供給部60aが供給部に相当し、アタッチメント70が吐出部に相当し、開口731~733が複数の吐出口に相当し、分岐管75~77が分岐管に相当する。
【0076】
[2-3.変形例]
(1)上述の実施形態では、アタッチメント70は3つの分岐管75~76を有するが、アタッチメント70はこれに限定されるものではない。アタッチメント70が有する分岐管の数は、複数であればよく、3以外の数であってもよい。
【0077】
(2)上述の実施形態では、中央の分岐管75の断面積(すなわち、開口731の内径)が他の分岐管76、77の断面積(すなわち、開口732、733の内径)よりも大きいが、各分岐管の断面積の大きさはこれに限定されるものではない。各分岐管の断面積の大きさは任意であってよい。
【0078】
(3)上述の実施形態では、複数の分岐管75~77は前後方向に一列に配置されるが、複数の分岐管の配置はこれに限定されるものではない。複数の分岐管は、例えばアタッチメント70が吐出部62に接続された状態で前後方向に延びる基準線に対してジグザグに配置されてもよいし、不規則に配置されてもよい。
【0079】
(4)上述の実施形態では、分岐管75は筒底部73に対して略垂直方向に延び、分岐管76、77は分岐管75に対して所定角度を有して配置されるが、複数の分岐管75~77が互いに成す角度はこれに限定されるものではない。分岐管75は筒底部73に対して略垂直方向に延びるものでなく、所定の角度を有して延びるものであってもよい。また、複数の分岐管が互いに成す角度は任意の角度であってもよい。
【0080】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0081】
(3a)上述の実施形態では、吸収性評価用器具1aは供給部60を備えるが、吸収性評価用器具はこれに限定されるものではない。吸収性評価用器具は、トルソー30のみを備えて供給部60を備えていなくてもよい。例えば、評価試験を行う評価者が注射器等を用いて疑似体液を想定膣口位置P1に滴下してもよい。この場合、トルソー30が吸収性評価用器具に相当する。
【0082】
(3b)上述の実施形態では、吸収性評価用器具1aは表示部50を備えるが、吸収性評価用器具はこれに限定されるものではない。吸収性評価用器具は(すなわち、具体的にはトルソー30)は、図示しないが、表示部50を備えていなくてもよい。この場合、評価手順(1)では、評価対象となる吸水ショーツ10における下着側膣口位置Q1を特定する手順(以下、特定手順ともいう)を実行してもよい。
【0083】
例えば、図9に示すように、評価対象となる吸水ショーツ10の前後のウェスト開口部15を合わせて吸水ショーツ10を中心線C0で二つ折りにし、股部の折山Mから前側(すなわち、前身頃部12のウェスト開口部15側)に、予め定められた予測距離da離れた位置を下着側膣口位置Q1として特定してもよい。
【0084】
予測距離daは被験者による測定結果に基づいて決定されてもよい。予測距離daは数cmであり得る。例えば、本実施形態では、予測距離daは3cmであってもよい。なお、予測距離daは3cmに限定されるものではなく、評価対象の種類等に応じて、任意の数値であり得る。
【0085】
評価手順(2)では、トルソー30に吸水ショーツ10を装着した状態で、股部開口41にて上方に露出する吸水ショーツ10の内側面18のうち、特定した下着側膣口位置Q1に予め定められた量の疑似体液を滴下し、吸収性能を評価してもよい。なお、下着側膣口位置Q1から前側に後述する差分距離d3離れた位置を、吸水ショーツ10における着用者の尿道口を想定した位置として特定してもよい。
【0086】
(3c)上述の実施形態では、表示部50は複数組の線状の印として構成されるが、表示部50はこれに限定されるものではない。表示部50は、例えば、レーザポインタのような装置であってもよい。
【0087】
(3d)上述の実施形態では、吸収性評価用器具は吸水ショーツ10における経血の吸収特性を評価するための器具であるが、吸収性評価用器具は吸水ショーツ10における尿の吸収特性を評価するものであってもよい。つまり、上述の実施形態の説明において、膣口を尿道口、想定膣口位置P1を着用者の尿道口を想定した位置(以下、尿道口想定位置)P2、経血を尿に読み替えてもよい。被験者による測定結果に基づいて、例えば、基準吸水ショーツ側の尿道口と対応する位置を、トルソー30における尿道口想定位置P2として決定してもよい。
【0088】
例えば、図10に示すように、トルソー30bにおける股部開口41は、着用者の尿道口を想定した位置(すなわち、想定尿道口位置P2)を基準として前後方向の範囲が定められていてもよい。表示部50(例えば、表示部50_1、50_2、50_5、50_6)は、股部開口41内における想定尿道口位置P2を指し示してもよい。つまり、第2仮想線102と、表示部50_5、50_6を結ぶ第3仮想線103とが重なる位置を垂直方向上方から下方に投影した位置が、想定尿道口位置P2として示されてもよい。図示しないが、供給部60は、尿を模擬した疑似体液を想定尿道口位置P2にピンポイントで供給するものであってよい。
【0089】
なお、被験者による測定結果に基づいて、想定膣口位置P1から差分距離d3前側の位置を想定尿道口位置P2としてもよい。差分距離d3は数mm~数cmであり得る。例えば、本実施形態では差分距離d3は1cmであってもよい。なお、差分距離d3は、1cmに限定されるものではなく、評価対象の種類等に応じて、任意の長さであり得る。
【0090】
また、供給部60は、例えば数mlといったように、経血を模擬した疑似体液の滴下量よりも多い量を、尿を模擬した疑似体液の滴下量としてもよい。尿を模擬した疑似体液として、例えば、水、純水、人口尿等が用いられ得る。本実施形態では、想定尿道口位置P2が基準位置、着用者の尿道口を想定した位置に相当する。
【0091】
(3e)吸収性評価用器具は、吸水ショーツ10における経血及び尿の吸収特性を評価するものであってもよい。
例えば、図11に示すように、トルソー30cにおける股部開口41は、想定膣口位置P1を基準として予め定められた前後における範囲と、想定尿道口位置P2を基準として予め定められた前後方向における範囲とが一致していてもよい。表示部50のうち、表示部50_1~50_4が股部開口41内における想定膣口位置P1を示し、表示部50_1、50_2、50_5、50_6が股部開口41内における想定尿道口位置P2を示してもよい。
【0092】
図示しないが、供給部60は、経血を模擬した疑似体液を想定膣口位置P1にピンポイントで供給し、且つ、尿を模擬した疑似体液を想定尿道口位置P2にピンポイントで供給するものであってもよい。本実施形態では、想定膣口位置P1、想定尿道口位置P2が基準位置に相当し、想定膣口位置P1が着用者の膣口を想定した位置に相当し、想定尿道口位置P2が着用者の尿道口を想定した位置に相当する。
【0093】
(3f)上述の実施形態では、本体腰部31は、腰及び臀部を含む腰部を模した形状を有する中空体であったが、本体腰部31はこれに限定されるものではない。本体腰部31は、臀部のみを模した形状を有する中空体であってもよい。上述の実施形態では、一対の本体大腿部32の形状は大腿部を模した形状であって有底筒状であるが、一対の本体大腿部32の形状はこれに限定されるものではない。一対の本体大腿部32の形状は、大腿部を模した形状であって、底が無い筒状の形状であってもよい。
【0094】
または、一対の本体大腿部32の形状は、大腿部を模した形状であって、上下に底を有する中空また中実の筒状の形状であってもよい。なお、本体腰部31の内部空間と一対の本体大腿部32の内部空間とは連通していなくてもよい。一対の本体大腿部32の形状は、大腿部を模した形状ではなく、単に、柱状、筒状、棒状等といった形状であってもよい。一対の本体大腿部32の材料は、本体腰部31と異なる材料であってもよい。
【0095】
(3g)上述の実施形態では、トルソー30のサイズは所謂Mサイズであるが、トルソー30のサイズはこれに限定されるものではなく、任意のサイズであり得る。なお、トルソーのサイズと基準となる吸水ショーツのサイズとは、(例えば、Mサイズのように)呼称が同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0096】
(3h)上述の実施形態では、トルソー30に装着される評価対象としての下着は吸水ショーツ10であるが、評価対象としての下着はこれに限定されるものではない。評価対象としての下着は、例えば、吸水ショーツ10から吸水機能部25を除いたショーツであってもよい。また、評価対象としての下着は、おむつであってもよい。
【0097】
(3i)上述の実施形態では、吸収性評価用器具は、女性用の下着の吸収性能を評価するものであるが、吸収性評価用器具は男性用の下着(例えば、パンツ、吸水パンツ、おむつ等)の吸収性能を評価するものであってもよい。例えば、トルソーの本体腰部は、男性の腰部を模した形状を有するものであってもよく、着用者の膣口を想定した位置及び尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置は、尿道口を想定した位置であってもよい。つまり、股部開口は、着用者の尿道口を想定した位置に基づいて前後方向における範囲が予め定められていてもよい。表示部は着用者の尿道口を想定した位置を示すものであってもよく、供給部は着用者の尿道口を想定した位置に尿を模擬した疑似体液を供給するものであってもよい。
【0098】
(3j)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0099】
[4.本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
下着の吸収性能を評価するために用いられる吸収性評価用器具であって、
人体の腰部を模した形状を有する中空体である本体腰部と、
前記本体腰部に設けられた一対の本体大腿部と、
を備え、
前記本体腰部は、前記一対の本体大腿部の間に、当該吸収性評価用器具に装着される評価対象としての前記下着の内側面を少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる股部開口を有する開口部を含む
吸収性評価用器具。
[項目2]
項目1に記載の吸収性評価用器具であって、
前記股部開口は、前後方向における範囲であって着用者の膣口を想定した位置及び尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置に基づいて予め定められた前記前後方向における範囲を有する、吸収性評価用器具。
[項目3]
項目1または項目2に記載の吸収性評価用器具であって、
前記股部開口内における着用者の膣口を想定した位置及び尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置を示すように構成された表示部
を更に備える、吸収性評価用器具。
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか一項に記載の吸収性評価用器具であって、
内部に前記吸収性能を評価するための疑似体液を流通させる管部と、前記管部に連通し前記疑似体液を吐出するための少なくとも一つの吐出口を含む吐出部とを有し、前記股部開口内における着用者の膣口を想定した位置及び尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置に前記擬似体液を供給するように構成された供給部
を更に備える吸収性評価用器具。
[項目5]
項目4に記載の吸収性評価用器具であって、
前記吐出部は、
複数の前記吐出口と、
前記複数の吐出口それぞれに連通する分岐管と、
を備え、
前記分岐管のうち少なくとも一部は延びる向きが互いに異なる、吸収性評価用器具。
[項目6]
項目2から項目5までのいずれか一項に記載の吸収性評価用器具であって、
前記基準位置は、前記股部開口内における前記着用者の膣口を想定した位置である、吸収性評価用器具。
[項目7]
項目2から項目6までのいずれか一項に記載の吸収性評価用器具であって、
前記基準位置は、前記股部開口内における前記着用者の尿道口を想定した位置である、吸収性評価用器具。
[項目8]
下着の吸収性能を評価するために用いられる吸収性評価用器具であって、人体の腰部を模した形状を有する中空体である本体腰部と、前記本体腰部に設けられた一対の本体大腿部と、を備え、前記本体腰部は、前記一対の本体大腿部の間に、評価対象として装着される前記下着の内側面を少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる股部開口を有する開口部を含む、前記吸収性評価用器具を用いた評価方法であって、
前記吸収性評価用器具に前記下着を装着する装着手順と、
前記装着手順の後に、前記吸収性評価用器具に前記下着が装着された状態で、前記股部開口に対して予め定められた量の疑似体液を供給する供給手順と、
前記供給手順の後に、前記股部開口にて上方に露出する前記下着の内側面を少なくとも目視または指触することによって、前記下着の吸収性能を評価する評価手順と、
を含む評価方法。
【符号の説明】
【0100】
1…吸収性評価用器具、30…トルソー、10…吸水ショーツ、31…本体腰部、32…本体大腿部、40…開口部、41…股部開口、18…内側面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下着の吸収性能を評価するために用いられる吸収性評価用器具であって、
人体の腰部を模した形状を有する中空体である本体腰部と、
前記本体腰部に設けられた一対の本体大腿部と、
を備え、
前記本体腰部は、前記一対の本体大腿部の間に、当該吸収性評価用器具に評価対象として装着される前記下着の内側面を少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる股部開口を有する開口部を含む
吸収性評価用器具。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性評価用器具であって、
前記股部開口は、前後方向における範囲であって着用者の膣口を想定した位置及び尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置に基づいて予め定められた前記前後方向における範囲を有する、吸収性評価用器具。
【請求項3】
請求項1に記載の吸収性評価用器具であって、
前記股部開口内における着用者の膣口を想定した位置及尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置を示すように構成された表示部
を更に備える、吸収性評価用器具。
【請求項4】
請求項1に記載の吸収性評価用器具であって、
内部に前記吸収性能を評価するための疑似体液を流通させる管部と、前記管部に連通し前記疑似体液を吐出するための少なくとも一つの吐出口を含む吐出部とを有し、前記股部開口内における着用者の膣口を想定した位置及び尿道口を想定した位置のうちの少なくとも一方である基準位置に前記似体液を供給するように構成された供給部
を更に備える吸収性評価用器具。
【請求項5】
請求項4に記載の吸収性評価用器具であって、
前記吐出部は、
複数の前記吐出口と、
前記複数の吐出口それぞれに連通する分岐管と、
を備え、
前記分岐管のうち少なくとも一部は延びる向きが互いに異なる、吸収性評価用器具。
【請求項6】
請求項2から請求項までのいずれか一項に記載の吸収性評価用器具であって、
前記基準位置は、前記股部開口内における、前記着用者の膣口を想定した位置である、吸収性評価用器具。
【請求項7】
請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載の吸収性評価用器具であって、
前記基準位置としての第1の基準位置と第2の基準位置とがあり、前記第1の基準位置は、前記股部開口内における、前記着用者の膣口を想定した位置であり、前記第2の基準位置は、前記股部開口内における、前記着用者の尿道口を想定した位置である、吸収性評価用器具。
【請求項8】
請求項2から請求項までのいずれか一項に記載の吸収性評価用器具であって、
前記基準位置は、前記股部開口内における、前記着用者の尿道口を想定した位置である、吸収性評価用器具。
【請求項9】
下着の吸収性能を評価するために用いられる吸収性評価用器具であって、人体の腰部を模した形状を有する中空体である本体腰部と、前記本体腰部に設けられた一対の本体大腿部と、を備え、前記本体腰部は、前記一対の本体大腿部の間に、当該吸収性評価用器具に評価対象として装着される前記下着の内側面を少なくとも目視または指触可能に上方に露出させる股部開口を有する開口部を含む、前記吸収性評価用器具を用いた評価方法であって、
前記吸収性評価用器具に前記下着を装着する装着手順と、
前記装着手順の後に、前記吸収性評価用器具に前記下着が装着された状態で、前記股部開口内に対して予め定められた量の疑似体液を供給する供給手順と、
前記供給手順の後に、前記股部開口にて上方に露出する前記下着の内側面を少なくとも目視または指触することによって、前記下着の吸収性能を評価する評価手順と、
を含む評価方法。