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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165274
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】瞬低補償装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20231108BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20231108BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231108BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J7/34 G
H02M7/48 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076114
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 隆太
【テーマコード(参考)】
5G015
5G503
5H770
【Fターム(参考)】
5G015FA16
5G015GA06
5G015HA04
5G015HA12
5G015JA54
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA05
5G503GB03
5G503GB06
5H770BA01
5H770DA10
5H770DA21
5H770FA02
5H770HA02Y
5H770HA03Y
5H770JA16Y
5H770JA17Y
(57)【要約】
【課題】モータに電力を供給するように構成された瞬低補償装置において、モータの始動時にモータへの瞬低補償機能が損なわれる事態を回避する。
【解決手段】瞬低補償装置1は、HSS6と、電力変換器2と、制御装置100とを備える。電力変換器2は、出力端子T2と蓄電装置3との間に設けられ、双方向の電力変換を行う。制御装置100は、HSS6および電力変換器2を制御する。制御装置100は、HSS6をオフに制御した状態で、電力変換器2に蓄電装置3の直流電力を交流電力に変換してモータMに供給させることによってモータMを始動する。制御装置100は、モータMの始動時、モータMの回転速度の上昇とともに交流電力の電圧および周波数が上昇するように可変電圧可変周波数制御方式により電力変換器2を作動させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続され、モータに電力を供給するように構成された瞬低補償装置であって、
入力端子が前記交流電源に接続され、出力端子が前記モータに接続されるスイッチと、
前記出力端子と蓄電装置との間に設けられ、双方向の電力変換を行う電力変換器と、
前記スイッチおよび前記電力変換器を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記スイッチをオフに制御した状態で、前記電力変換器に前記蓄電装置の直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給させることによって前記モータを始動し、
前記モータの始動時、前記モータの回転速度の上昇とともに前記交流電力の電圧および周波数が上昇するように可変電圧可変周波数制御方式により前記電力変換器を作動させる、瞬低補償装置。
【請求項2】
前記可変電圧可変周波数制御方式による前記電力変換器の作動中に前記交流電力の電圧と前記交流電源の電圧との同期が成立した場合に、前記制御装置は、前記電力変換器の制御方式を前記可変電圧可変周波数制御方式から定電圧定周波数制御方式に切り替える、請求項1に記載の瞬低補償装置。
【請求項3】
前記同期が成立した場合には、前記制御装置は、さらに、前記スイッチをオンする、請求項2に記載の瞬低補償装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記スイッチをオンした後、前記交流電源から前記スイッチを通じて供給される交流電力を直流電力に変換して前記蓄電装置を充電するように前記電力変換器を制御する、請求項3に記載の瞬低補償装置。
【請求項5】
交流電源に接続され、モータおよび前記モータとは異なる電気負荷の双方に電力を供給するように構成された瞬低補償装置であって、
入力端子が前記交流電源に接続され、出力端子が前記電気負荷に接続されるスイッチと、
前記出力端子と蓄電装置との間に設けられ、双方向の電力変換を行う電力変換器と、
前記出力端子と前記電力変換器との間に設けられる第1遮断器と、
前記電力変換器と前記モータとの間に接続される第2遮断器と、
前記スイッチ、前記電力変換器、前記第1遮断器および前記第2遮断器を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記第1遮断器を開状態に制御した状態で前記スイッチをオンすることによって前記電気負荷を始動し、
前記第1遮断器を前記開状態に制御、かつ前記第2遮断器を閉状態に制御した状態で、前記電力変換器に前記蓄電装置の直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給させることによって前記モータを始動し、
前記モータの始動時、前記モータの回転速度の上昇とともに前記交流電力の電圧および周波数が上昇するように可変電圧可変周波数制御方式により前記電力変換器を作動させる、瞬低補償装置。
【請求項6】
前記可変電圧可変周波数制御方式による前記電力変換器の作動中に前記交流電力の電圧と前記交流電源の電圧との同期が成立した場合には、前記制御装置は、前記電力変換器の制御方式を前記可変電圧可変周波数制御方式から定電圧定周波数制御方式に切り替える、請求項5に記載の瞬低補償装置。
【請求項7】
前記出力端子および前記モータの間に設けられた第3遮断器をさらに備え、
前記制御装置は、前記第3遮断器を開状態に制御した状態で前記モータを始動し、
前記同期が成立した場合には、前記制御装置は、さらに、
前記第1遮断器を前記開状態から閉状態に切り替えるとともに、
前記第3遮断器を前記開状態から閉状態に切り替えた後に、前記第2遮断器を前記閉状態から開状態に切り替える、請求項6に記載の瞬低補償装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1遮断器を前記開状態から前記閉状態に切り替えた後、前記交流電源から前記スイッチおよび前記第1遮断器を通じて供給される交流電力を直流電力に変換して前記蓄電装置を充電するように前記電力変換器を制御する、請求項7に記載の瞬低補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、瞬低補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再表2021-001994号公報(特許文献1)は、瞬低補償装置を開示する。この瞬低補償装置は、電気負荷に接続されている場合に、交流電源の瞬間的な電圧低下(瞬低)および停電から電気負荷を保護するための電源として用いられる(瞬低補償機能)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2021-001994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気負荷の始動時には、交流電源から瞬低補償装置を通じて電気負荷へ突入電流が発生することがある。電気負荷としてモータが用いられる場合、モータの始動時の突入電流は、他の電気負荷の始動時の突入電流よりも大きい。このような大きな突入電流は、瞬低補償装置の過負荷を招きやすい。その結果、瞬低補償装置によるモータへの瞬低補償機能が損なわれることがある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、モータに電力を供給するように構成された瞬低補償装置において、モータの始動時にモータへの瞬低補償機能が損なわれる事態を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の瞬低補償装置は、交流電源に接続され、モータに電力を供給するように構成される。瞬低補償装置は、スイッチと、電力変換器と、制御装置とを備える。スイッチは、入力端子が交流電源に接続され、出力端子がモータに接続される。電力変換器は、出力端子と蓄電装置との間に設けられ、双方向の電力変換を行う。制御装置は、スイッチおよび電力変換器を制御する。制御装置は、スイッチをオフに制御した状態で、電力変換器に蓄電装置の直流電力を交流電力に変換してモータに供給させることによってモータを始動し、モータの始動時、モータの回転速度の上昇とともに交流電力の電圧および周波数が上昇するように可変電圧可変周波数制御方式により電力変換器を作動させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、モータに電力を供給するように構成された瞬低補償装置において、モータの始動時にモータへの瞬低補償機能が損なわれる事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に従う瞬低補償装置を含む瞬低補償システムの構成を示す図である。
図2】交流電源が正常状態にある場合の電力の流れを示す図である。
図3】瞬低または停電が起こった場合の電力の流れを示す図である。
図4】瞬低補償装置の過負荷が検出された場合の電力の流れを示す図である。
図5】瞬低補償装置の過負荷検出時に過電流が検出された場合に制御装置により実行される制御を説明するための図である。
図6】モータの始動時に制御装置により実行される制御を説明するための図である。
図7】実施の形態1において制御装置により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図8】実施の形態2に従う瞬低補償装置を含む瞬低補償システムの構成を示す図である。
図9】モータおよび電気負荷の始動時に制御装置により実行される制御を説明するための図である。
図10】電力変換器からモータへの交流電力の電圧と交流電源の電圧との同期が成立した後に制御装置によりさらに実行される制御を説明するための図である。
図11】実施の形態2において制御装置により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明を繰り返さない。
【0010】
<実施の形態1>
図1は、この実施の形態1に従う瞬低補償装置を含む瞬低補償システムの構成を示す図である。図1を参照して、瞬低補償システム150は、電気負荷12と、瞬低補償装置1とを含む。電気負荷12は、例えば産業プラントの重要設備であり、交流電力を受けて作動する。
【0011】
瞬低補償装置1は、交流電源11(この例では、商用電源)および電気負荷12に接続され、電気負荷12に電力を供給するように構成される。瞬低補償装置1は、ハイスピードスイッチ(HSS:High Speed Switch)6と、バイパス経路10と、遮断器7~9と、補償給電回路5と、センサユニット13A,13Bと、制御装置100とを備える。
【0012】
HSS6は、オンオフ可能なスイッチの一例として示されている。HSS6の入力端子T1は、交流電源11に接続される。HSS6の出力端子T2は、電気負荷12に接続される。
【0013】
バイパス経路10は、交流電源11と電気負荷12との間でHSS6と電気的に並列に接続される。バイパス経路10は、瞬低補償装置1の過負荷が検出された場合、またはHSS6もしくは補償給電回路5が故障した場合に交流電源11からの電力が供給される経路である。
【0014】
遮断器7は、交流電源11と入力端子T1との間の電路に設けられる。遮断器8は、出力端子T2と電気負荷12との間の電路に設けられる。遮断器9は、バイパス経路10に設けられる。
【0015】
補償給電回路5は、出力端子T2に接続され、かつ、遮断器8を通じて電気負荷12に接続可能に構成される。補償給電回路5は、交流電源11の瞬低または停電時に電気負荷12に電力を供給する。補償給電回路5から電気負荷12への給電を「補償給電」とも表す。補償給電回路5は、蓄電装置3と、電力変換器2と、変圧器4とを含む。蓄電装置3は、充電可能に構成された二次電池であり、交流電源11の瞬低または停電時に電気負荷12に供給されるための電力を蓄える。
【0016】
電力変換器2は、出力端子T2と蓄電装置3との間の電路に設けられ、双方向の電力変換を行うように構成されている。電力変換器2は、交流電源11の瞬低または停電時には蓄電装置3の直流電力を交流電力に変換して変圧器4を通じて電気負荷12に供給するように構成されている。電力変換器2は、交流電源11の正常時には変圧器4からの交流電力を直流電力に変換して蓄電装置3を充電するように構成されている。
【0017】
変圧器4は、出力端子T2と電力変換器2との間の電路に設けられる。変圧器4は、交流電源11の正常時には、交流電源11からHSS6を通じて供給される交流電力の電圧を変換して(降圧して)、変換後の電圧の交流電力を電力変換器2に供給するように構成されている。変圧器4は、交流電源11の瞬低または停電時には、蓄電装置3から電力変換器2を通じて供給される交流電力の電圧を変換して(昇圧して)、変換後の電圧の交流電力を電気負荷12に供給するように構成されている。
【0018】
センサユニット13Aは、交流電源11から供給される電力の電流および電圧を検出する。センサユニット13Bは、交流電源11からHSS6を通じて変圧器4に供給される電力の電流および電圧、ならびに、電力変換器2から変圧器4を通じて電気負荷12に供給される電力の電流および電圧を検出する。センサユニット13A,13Bの検出値は、制御装置100に与えられる。
【0019】
制御装置100は、プロセッサ21と、メモリ22とを含む。プロセッサ21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、各種の演算処理を実行する。メモリ22は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含む(いずれも図示せず)。ROMは、プロセッサ21により実行されるプログラムを格納する。RAMは、ワーキングメモリとして機能する。
【0020】
制御装置100は、HSS6、遮断器7~9および補償給電回路5を制御する。以下、制御装置100により実行される制御を説明する。
【0021】
図2は、交流電源11が正常状態にある場合の電力の流れを示す図である。図2を参照して、制御装置100は、交流電源11から電気負荷12に交流電力が供給されるように、HSS6をオンし、遮断器7,8を閉状態に制御し、遮断器9を開状態に制御する。さらに、制御装置100は、交流電源11から蓄電装置3に電力が供給されるように(蓄電装置3が充電されるように)電力変換器2を制御する。交流電源11が正常状態にある場合の交流電源11から電気負荷12への給電を「通常給電」とも表す。
【0022】
図3は、瞬低または停電が起こった場合(交流電源11が異常である場合)の電力の流れを示す図である。図3を参照して、制御装置100は、補償給電回路5による補償給電が実行されるように、HSS6、遮断器7~9および補償給電回路5を制御する。具体的には、制御装置100は、HSS6をオフし、蓄電装置3から電気負荷12に電力が供給されるように電力変換器2を制御する。
【0023】
制御装置100は、定電圧定周波数(CVCF:Constant Voltage Constant Frequency)制御方式により電力変換器2を作動させることによって補償給電を実行するように構成されている。CVCF制御方式は、電力変換器2による変換後の交流電圧の実効値および周波数の各々が一定になるように電力変換器2を制御する方式である。
【0024】
制御装置100は、可変電圧可変周波数(VVVF:Variable Voltage Variable Frequency)制御方式により電力変換器2を作動させることもできる。VVVF制御方式は、電力変換器2による変換後の交流電圧の実効値および周波数の各々が変化するように電力変換器2を制御する方式である。この例では、VVVF制御方式において、この電圧およびこの周波数の比率が一定に保たれるものとする。
【0025】
図4は、瞬低補償装置1の過負荷が検出された場合の電力の流れを示す図である。図4を参照して、制御装置100は、瞬低補償装置1の過負荷を検出するように構成されている。例えば、通常給電時にセンサユニット13Aの電流検出値またはセンサユニット13Bの電流検出値が瞬低補償装置1の定格電流値を超過すると、制御装置100は、瞬低補償装置1の過負荷を検出する。上記の定格電流値は、制御装置100のメモリ22に予め格納されている。
【0026】
制御装置100は、瞬低補償装置1の過負荷を検出すると、交流電源11からバイパス経路10を通じて電気負荷12に電力が供給されるように、HSS6、遮断器7~9および補償給電回路5を制御する。具体的には、制御装置100は、HSS6をオフし、遮断器7,8を開状態に制御し、遮断器9を閉状態に制御し、電力変換器2を停止する。交流電源11からバイパス経路10を通じた電気負荷12への給電を「バイパス給電」とも表す。このようにバイパス給電が実行される場合、電気負荷12が補償給電回路5から電気的に切り離されている。その結果、補償給電を実行することができない。よって、万一交流電源11の瞬低または停電が発生した場合には、電気負荷12を瞬低および停電から保護することができない(瞬低補償装置1による電気負荷12への瞬低補償機能が損なわれる)。
【0027】
図5は、瞬低補償装置1の過負荷検出時(バイパス給電時)に過電流が検出された場合に制御装置100により実行される制御を説明するための図である。図5を参照して、バイパス給電時にセンサユニット13Aの電流検出値が遮断器9の定格電流値を超過すると、制御装置100は、遮断器9を保護するために遮断器9を閉状態から開状態に切り替える。その結果、バイパス給電が中断され、電気負荷12の作動が中断されることがある。このような事態は、好ましくない。
【0028】
電気負荷12の始動時には、交流電源11から瞬低補償装置1を通じて電気負荷12へ突入電流(始動電流)が発生することがある。電気負荷12としてモータが用いられる場合、モータの始動電流は、他の電気負荷の始動電流よりも大きい。そのため、モータの始動時に、例えば交流電源11から瞬低補償装置1を通じてモータに大電流が供給されることがある。そのような大きな始動電流は、瞬低補償装置1の過負荷を招きやすい。その結果、通常給電がバイパス給電(図4)に切り替わり、瞬低補償装置1によるモータへの瞬低補償機能が損なわれたり、電気負荷12への給電が中断されたりする(図5)。
【0029】
実施の形態1に従う瞬低補償装置1は、上記の問題に対処するための構成を備える。以下、この点について詳しく説明する。
【0030】
図6は、モータの始動時に制御装置100により実行される制御を説明するための図である。図6を参照して、モータMは、電気負荷12(図1図5)としての交流モータであり、瞬低補償装置1から交流電力を受けて作動するように構成されている同期電動機または誘導電動機である。
【0031】
制御装置100は、HSS6をオフに制御し、遮断器7および遮断器8を閉状態に制御した状態で、電力変換器2に蓄電装置3の直流電力を交流電力に変換してモータMに供給させることによってモータMを始動する。そして、制御装置100は、モータMの始動時、モータMの回転速度の上昇とともに電力変換器2からモータMへの交流電力の実効電圧および周波数が徐々に上昇するようにVVVF制御方式により電力変換器2を作動させる。
【0032】
具体的には、制御装置100は、電力変換器2からモータMへの交流電圧の実効値および周波数がそれぞれ交流電源11の定格電圧および定格周波数よりも低い状態で電力変換器2からモータMへの給電を開始する。そして、電力変換器2からモータMへの交流電圧の実効値および周波数がそれぞれ交流電源11の定格電圧および定格周波数に徐々に近づいていくようにモータMへの給電を電力変換器2に実行させる。これにより、モータMのソフトスタートが実施される。
【0033】
その結果、モータMの始動電流は、ソフトスタートが実施されない場合(例えば、通常給電が実行される場合)のモータMの始動電流よりも低減される。よって、モータMの始動時の瞬低補償装置1の負荷が低減される。これにより、瞬低補償装置1の過負荷の検出に起因してバイパス給電が実行される事態を回避することができる。その結果、瞬低補償装置1によるモータMへの瞬低補償機能が損なわれる事態を回避することができる。したがって、瞬低補償装置1の信頼性を向上させることができる。
【0034】
制御装置100は、VVVF制御方式による電力変換器2の作動中に、電力変換器2からモータMへの交流電力(この例では、より詳細には変圧器4からモータMへの交流電力)の電圧と交流電源11の電圧との同期(以下、単に「同期」とも表す)が成立するか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、これらの電圧の振幅、周波数および位相が一致するか否かをセンサユニット13A,13Bの検出値に従って判定する。
【0035】
同期が成立すると、制御装置100は、電力変換器2の制御方式をVVVF制御方式からCVCF制御方式に切り替える。これにより、制御方式の切り替え後には同期が保たれる。その結果、一定の実効値の電圧および一定周波数の交流電力が電力変換器2から変圧器4を通じてモータMに安定して供給される。したがって、モータMの安定動作が可能になる。
【0036】
同期が成立すると、制御装置100は、さらに、HSS6をオンする。これにより、補償給電回路5からの交流電力と、交流電源11からの交流電力とが干渉する(横流が発生する)事態を回避しつつ交流電源11からモータMへの給電を実行することができる。
【0037】
制御装置100は、HSS6をオンした後、交流電源11からHSS6を通じて供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電装置3を充電するように電力変換器2を制御する。すなわち、制御装置100は、CVCF制御方式による電力変換器2からモータMへの給電制御から、電力変換器2から蓄電装置3への給電制御に電力変換器2の制御を切り替える。これにより、モータMの始動時に減少した蓄電装置3の蓄電量を再び増加させることができる。
【0038】
図7は、実施の形態1において制御装置100により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理の開始前、遮断器7~9が開状態であり、かつ、HSS6がオフであるものとする。このフローチャートの処理は、瞬低補償装置1の起動時に開始する。
【0039】
図7を参照して、制御装置100は、遮断器7,8を開状態から閉状態に切り替える(ステップS102)。次いで、制御装置100は、VVVF制御方式により電力変換器2を作動させることによってモータMを始動する(ステップS105)。すなわち、制御装置100は、電力変換器2のVVVF制御によるモータMのソフトスタートを実施する。
【0040】
次いで、制御装置100は、補償給電回路5からモータMへの交流電力と、交流電源11の電力との同期が成立したか否かを判定する(ステップS110)。同期が成立していない場合(ステップS110においてNO)、処理は、ステップS105に戻る。他方、同期が成立した場合(ステップS110においてYES)、処理は、ステップS115に進む。
【0041】
次いで、制御装置100は、電力変換器2の制御方式をVVVF制御方式からCVCF制御方式に切り替え(ステップS115)、HSS6をオンする(ステップS120)。
【0042】
次いで、制御装置100は、交流電源11からHSS6を通じて供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電装置3を充電するように電力変換器2を制御する(ステップS125)。その後、図7の処理が終了し、通常給電が実行される。
【0043】
以上のように、この実施の形態1によれば、制御装置100は、同期が成立するまで電力変換器2のVVVF制御を実行することによってモータMのソフトスタートを実施する。そして、同期が成立した後に、制御装置100は、電力変換器2の制御方式をVVVF制御方式からCVCF制御方式に切り替える。これにより、通常給電によりモータMが始動する場合のモータMの始動電流よりも、モータMの始動電流を低減することができる。その結果、モータMの始動時の過負荷に起因して瞬低補償装置1によるモータMへの瞬低補償機能が損なわれる事態を回避することができる。したがって、瞬低補償装置1の信頼性を向上させることができる。
【0044】
<実施の形態2>
この実施の形態2では、瞬低補償装置がモータMおよび他の電気負荷の双方に電力を供給するように構成される。
【0045】
図8は、この実施の形態2に従う瞬低補償装置を含む瞬低補償システムの構成を示す図である。図8を参照して、瞬低補償システム150Aは、モータMと、電気負荷17と、交流電源11に接続される瞬低補償装置1Aとを含む。
【0046】
電気負荷17は、モータMとは異なる種類の電気負荷12(図1)であり、例えば、瞬低補償装置1Aの外部のサーバのCPUである。この例では、瞬低補償装置1Aから電気負荷17に与えられる電力の実効電圧および周波数は、電気負荷17の安定作動を可能にするために一定であることが好ましいものとする。電気負荷17の始動電流は、モータMの始動電流よりも小さく、かつ、電気負荷17の始動電流に起因しては瞬低補償装置1Aの過負荷が検出されないものとする。
【0047】
瞬低補償装置1Aは、補償給電回路5が遮断器14(第1遮断機器)をさらに含む点において瞬低補償装置1とは異なる。遮断器14は、出力端子T2と電力変換器2との間の電路に設けられる。
【0048】
瞬低補償装置1Aは、補償給電回路50と、遮断器15,16とをさらに備える点において、瞬低補償装置1とは異なる。
【0049】
補償給電回路50は、出力端子T2に接続され、補償給電回路5と電気的に並列に設けられる。補償給電回路50は、交流電源11の瞬低または停電時に電気負荷17に電力を供給するように構成されている。補償給電回路50は、蓄電装置30と、電力変換器20と、変圧器40と、遮断器140とを含む。蓄電装置30は、交流電源11の瞬低または停電時に電気負荷17に供給されるための電力を蓄える。電力変換器20および変圧器40は、それぞれ、電力変換器2および変圧器4と同様である。
【0050】
遮断器15(第2遮断器)は、電力変換器2と前記モータMとの間に接続される。具体的には、遮断器15は、その第1端部が変圧器4を通じて電力変換器2に接続され、かつ、その第2端部がモータMに接続される。遮断器16(第3遮断器)は、出力端子T2およびモータMの間の電路に設けられる。
【0051】
瞬低補償装置1Aの他のハードウェア構成要素は、瞬低補償装置1のそれらと同様である。例えば、入力端子T1は、遮断器7を通じて交流電源11に接続される。出力端子T2は、遮断器8を通じて電気負荷17に接続される。電力変換器2は、出力端子T2と蓄電装置3との間の電路に設けられ、双方向の電力変換を行うように構成されている。
【0052】
制御装置100は、HSS6、電力変換器2,20、および遮断器7,8,9,14,140,15,16などの、瞬低補償装置1Aの各機器を制御する。
【0053】
モータMおよび電気負荷17の双方の始動時に、交流電源11からこれらの双方への通常給電が実行されると、モータMの大きな始動電流に起因して瞬低補償装置1Aの過負荷が検出されることがある。これにより、通常給電がバイパス給電に切り替わり、補償給電回路5,50がそれぞれ電気負荷17およびモータMと電気的に切り離される。その結果、瞬低補償装置1Aによる電気負荷17およびモータMの双方への瞬低補償機能が損なわれる可能性がある。
【0054】
そのため、モータMの始動時には、過負荷防止の観点から、モータMのソフトスタートが実施されることが好ましい。すなわち、モータMに供給される電力の実効電圧および周波数は徐々に上昇することが好ましい。他方、電気負荷17の始動時には、電気負荷17の安定動作の観点から、電気負荷17に供給される電力の実効電圧および周波数は一定であることが好ましい。
【0055】
実施の形態2に従う瞬低補償装置1Aは、モータMおよび電気負荷17の始動時の、過負荷防止と電気負荷17の安定動作とを両立するための構成を備える。以下、この点について詳しく説明する。
【0056】
図9は、モータMおよび電気負荷17の始動時に制御装置100により実行される制御を説明するための図である。
【0057】
図9を参照して、制御装置100は、遮断器7,8,140を閉状態に制御し、かつ、遮断器9,14,16を開状態に制御した状態でHSS6をオンすることによって電気負荷17を始動する。これにより、交流電源11から電気負荷17に実質的に一定の実効電圧および一定周波数の電力が電路P1を通じて供給される(交流電源11から電気負荷17への通常給電が実行される)。その結果、電気負荷17がその始動時から安定して作動することができる。
【0058】
制御装置100は、交流電源11から電気負荷17に電力が供給されている間、蓄電装置30を充電するように電力変換器20を制御する。具体的には、制御装置100は、交流電源11からHSS6および遮断器140を通じて供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電装置30を充電するように電力変換器20を制御する。これにより、交流電源11の瞬低または停電に先立って蓄電装置30の蓄電量を増加させることができる。以下、モータMの始動方法を説明する。
【0059】
制御装置100は、遮断器14を開状態に制御し、かつ遮断器15を閉状態に制御した状態で、電力変換器2に蓄電装置3の直流電力を交流電力に変換して電路P2を通じてモータMに供給させることによってモータMを始動する。遮断器14が開状態であるため、電路P2が電路P1から電気的に絶縁された状態で(すなわち、補償給電回路5から電路P2を通じてモータMに供給される交流電力と、交流電源11から電路P1を通じて電気負荷17に供給される交流電力とが干渉する事態を回避しつつ)電力変換器2からモータMへの給電が実行される。
【0060】
制御装置100は、モータMの始動時、モータMの回転速度の上昇とともに電力変換器2からモータMへの交流電力(この例では、より詳細には変圧器4からモータMへの交流電力)の実効電圧および周波数が徐々に上昇するようにVVVF制御方式により電力変換器2を作動させる。これにより、モータMのソフトスタートが実施される。
【0061】
制御装置100は、VVVF制御方式による電力変換器2の作動中に、電力変換器2からモータMへの交流電力の電圧と交流電源11の電圧との同期が成立するか否かを判定する。同期が成立すると、制御装置100は、電力変換器2の制御方式をVVVF制御方式からCVCF制御方式に切り替える。これにより、制御方式の切り替え後には同期が保たれる。
【0062】
図10は、電力変換器2からモータMへの交流電力の電圧と交流電源11の電圧との同期が成立した後に制御装置100によりさらに実行される制御を説明するための図である。
【0063】
図10を参照して、同期が成立すると、制御装置100は、さらに、遮断器16を開状態から閉状態に切り替える。これにより、交流電源11からの電力がHSS6および電路P3を通じてモータMに供給される(交流電源11からモータMへの通常給電が実行される)。その結果、以後、交流電源11から電気負荷17およびモータMの双方への通常給電が実行される。
【0064】
そして、制御装置100は、遮断器14を開状態から閉状態に切り替えた後に、遮断器15を閉状態から開状態に切り替える。これにより、電力変換器2およびモータMが遮断器8,16を通じて電気的に接続された後、遮断器15を通じた電力変換器2およびモータMの電気的な接続が切断される。
【0065】
制御装置100は、遮断器16が閉状態に切り替わる時から遮断器15が開状態に切り替わる時までの期間中に遮断器15,16の双方が閉状態になるように遮断器15,16を切り替える(遮断器15,16のオーバーラップ切り替え)。これにより、モータMへの給電を補償給電回路5からの給電から通常給電に無瞬断で切り替えることができる。
【0066】
制御装置100は、遮断器14を開状態から閉状態に切り替えた後、蓄電装置3を充電するように電力変換器2を制御する。具体的には、制御装置100は、交流電源11からHSS6および遮断器14を通じて供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電装置3を充電するように電力変換器2を制御する。これにより、モータMの始動時に減少した蓄電装置3の蓄電量を再び増加させることができる。
【0067】
図11は、実施の形態2において制御装置100により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理の開始前、遮断器7~9,14,15,16,140が開状態であり、かつ、HSS6がオフであるものとする。このフローチャートの処理は、瞬低補償装置1の起動時に開始する。
【0068】
図11を参照して、このフローチャートは、ステップS202,S220の処理がそれぞれステップS102,S120に代えて実行される点において実施の形態1のフローチャート(図7)とは異なる。図11のフローチャートは、ステップS203,S222,S223の処理が追加されている点において図7のフローチャートとは異なる。ステップS205~S215,S225の処理は、それぞれ、ステップS105~S115,S125の処理と同様である。以下の説明において、図9および図10を適宜参照する。
【0069】
制御装置100は、遮断器7,8を開状態から閉状態に切り替え、HSS6をオンする(ステップS202)。これにより、交流電源11から電気負荷17への通常給電が実行される。加えて、制御装置100は、遮断器140を開状態から閉状態に切り替え、蓄電装置30を充電するように電力変換器20を制御する。
【0070】
次いで、制御装置100は、遮断器15を開状態から閉状態に切り替え(ステップS203)、VVVF制御方式により電力変換器2を作動させることによってモータMを始動する(ステップS205)。すなわち、制御装置100は、電路P2が電路P1から電気的に絶縁された状態で電力変換器2のVVVF制御によるモータMのソフトスタートを実施する。そして、ステップS210,S215の処理の後、処理は、ステップS220に進む。
【0071】
次いで、制御装置100は、遮断器16を開状態から閉状態に切り替える(ステップS220)。これにより、交流電源11から電路P3を通じたモータMへの通常給電が実行される。
【0072】
次いで、制御装置100は、遮断器14を開状態から閉状態に切り替え(ステップS222)、その後、遮断器15を閉状態から開状態に切り替える(ステップS223)。これにより、遮断器15を通じた電力変換器2およびモータMの電気的な接続が切断される。そして、ステップS225の処理の後、図11の処理が終了する。
【0073】
以上のように、この実施の形態2によれば、制御装置100は、電気負荷17およびモータMの双方の始動時に、交流電源11から電気負荷17への通常給電を実行する一方で電力変換器2のVVVF制御によるモータMのソフトスタートを実施する。これにより、電気負荷17およびモータMの始動時に過負荷防止と電気負荷17の安定動作とを両立することができる。その結果、過負荷の検出に起因してバイパス給電が実行されて瞬低補償装置1Aによる電気負荷17およびモータMの双方への給電補償機能が損なわれる事態を回避することができる。
【0074】
<実施の形態2の変形例>
実施の形態2では、説明の簡略化のため、瞬低補償装置1Aは、1つのモータと、モータとは異なる1つの電気負荷とに電力を供給するものとした。この変形例では、瞬低補償装置1Aは、1つまたは複数のモータと、1つまたは複数の電気負荷とに電力を供給するように構成される。各モータには、補償給電回路5と同様の補償給電回路が接続されているものとする。これらのモータおよび電気負荷は、電気的に並列に設けられる。
【0075】
制御装置100は、これらのモータおよび電気負荷のうちモータのみにソフトスタート用の電力(実効電圧および周波数が徐々に上昇する電力)が供給されるように、補償給電回路の電力変換器をVVVF制御方式により制御してもよい。すなわち、制御装置100は、これらのモータおよび電気負荷のうちモータのみをソフトスタートさせてもよい。その一方で、制御装置100は、交流電源11からの電力(一定の実効電圧および一定周波数の電力)がこれらのモータおよび電気負荷のうち電気負荷のみに供給されるように、HSS6および各遮断器を制御することによって電気負荷を始動してもよい。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1,1A 瞬低補償装置、2,20 電力変換器、3,30 蓄電装置、4,40 変圧器、5,50 補償給電回路、7,8,9,14,15,16,140 遮断器、10 バイパス経路、11 交流電源、12,17 電気負荷、100 制御装置、150,150A 瞬低補償システム、M モータ。
図1
図2
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図11