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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165275
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ひずみゲージ
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076117
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 彩
(72)【発明者】
【氏名】小笠 洋介
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063CA28
2F063EC03
2F063EC05
2F063EC20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ひずみゲージのひずみ限界を向上する。
【解決手段】基材と、基材上に形成された抵抗体と、基材上に形成され、抵抗体の両端部に直列に接続された2つの配線と、を有し、抵抗体は、長手方向を第1方向に向けて並置され、互いに直列に接続された複数の細長状部を含み、配線の一方は、第1方向に直交する第2方向の一端に位置する細長状部に並置され、細長状部の第1方向の一端に接続され、配線の他方は、第2方向の他端に位置する細長状部に並置され、細長状部の第1方向の一端に接続され、各々の配線は、第1金属層と、第1金属層上に積層された第1金属層よりも体積抵抗率の低い材料から形成された第2金属層と、を含み、平面視で、第1金属層の外縁は、第2金属層から露出し、平面視で、第2金属層の第1方向の一端側の端部は、第1金属層と、第1金属層に隣接する細長状部との間の空隙の第1方向の一端側の端部よりも第1方向の一端側に突出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成された抵抗体と、
前記基材上に形成され、前記抵抗体の両端部に直列に接続された2つの配線と、を有し、
前記抵抗体は、長手方向を第1方向に向けて並置され、互いに直列に接続された複数の細長状部を含み、
前記配線の一方は、前記第1方向に直交する第2方向の一端に位置する前記細長状部に並置され、該細長状部の前記第1方向の一端に接続され、
前記配線の他方は、前記第2方向の他端に位置する前記細長状部に並置され、該細長状部の前記第1方向の一端に接続され、
各々の前記配線は、第1金属層と、前記第1金属層上に積層された前記第1金属層よりも体積抵抗率の低い材料から形成された第2金属層と、を含み、
平面視で、前記第1金属層の外縁は、前記第2金属層から露出し、
平面視で、前記第2金属層の前記第1方向の一端側の端部は、前記第1金属層と、前記第1金属層に隣接する前記細長状部との間の空隙の前記第1方向の一端側の端部よりも前記第1方向の一端側に突出している、ひずみゲージ。
【請求項2】
前記第2金属層の前記第1方向の一端側の端部の、前記空隙の前記第1方向の一端側の端部を基準とした前記第1方向の一端側に突出する長さは、1μm以上である、請求項1に記載のひずみゲージ。
【請求項3】
前記突出する長さは、前記細長状部の前記第2方向の長さ以上である、請求項2に記載のひずみゲージ。
【請求項4】
前記細長状部の前記第2方向の長さは、5μm以上である、請求項3に記載のひずみゲージ。
【請求項5】
前記第1金属層の前記第1方向の一端側の端部と、前記第2金属層の前記第1方向の一端側の端部との間の前記第1方向の長さは、5μm以上である、請求項1乃至4の何れか一項に記載のひずみゲージ。
【請求項6】
前記第2金属層は、前記第1金属層よりも伸縮性に優れた材料から形成されている請求項1乃至5の何れか一項に記載のひずみゲージ。
【請求項7】
前記第1金属層は、前記抵抗体と同一材料により一体に形成されている請求項1乃至6の何れか一項に記載のひずみゲージ。
【請求項8】
前記抵抗体は、Cr、CrN、及びCrNを含む膜から形成されている請求項1乃至7の何れか一項に記載のひずみゲージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物に貼り付けて使用するひずみゲージが知られている。ひずみゲージは、ひずみを検出する抵抗体を備えており、抵抗体は、例えば、絶縁性樹脂上に形成されている。抵抗体は、例えば、配線を介して、電極と接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-74934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ひずみゲージは起歪体へ貼り付けられ、起歪体の動きに追従して伸縮することで、起歪体のひずみ量を検出する。そのため、より大きなひずみ量を検出するためには、伸縮の過程でひずみゲージ自身が破損してはならず、より高いひずみ限界が求められている。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、ひずみゲージのひずみ限界を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るひずみゲージは、基材と、前記基材上に形成された抵抗体と、前記基材上に形成され、前記抵抗体の両端部に直列に接続された2つの配線と、を有し、前記抵抗体は、長手方向を第1方向に向けて並置され、互いに直列に接続された複数の細長状部を含み、前記配線の一方は、前記第1方向に直交する第2方向の一端に位置する前記細長状部に並置され、該細長状部の前記第1方向の一端に接続され、前記配線の他方は、前記第2方向の他端に位置する前記細長状部に並置され、該細長状部の前記第1方向の一端に接続され、各々の前記配線は、第1金属層と、前記第1金属層上に積層された前記第1金属層よりも体積抵抗率の低い材料から形成された第2金属層と、を含み、平面視で、前記第1金属層の外縁は、前記第2金属層から露出し、平面視で、前記第2金属層の前記第1方向の一端側の端部は、前記第1金属層と、前記第1金属層に隣接する前記細長状部との間の空隙の前記第1方向の一端側の端部よりも前記第1方向の一端側に突出している。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、ひずみゲージのひずみ限界を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図2】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)である。
図3】抵抗体及び配線にクラックが生じた様子を模式的に示す図である。
図4図1における抵抗体と配線の接続部近傍の部分拡大平面図である。
図5】比較例に係るひずみゲージにおける抵抗体と配線の接続部近傍の部分拡大平面図である。
図6】ひずみ限界の実験結果を示す図である。
図7】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部には同一の符号を付す場合がある。また、各図面の説明において、既に説明した構成部と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。また、各図面において、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸を規定する場合がある。この場合、X軸方向において、矢印の始点(根元)側をX-側、矢印の終点(矢尻)側をX+側と称する場合がある。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。また、X軸と平行な方向を第1方向X、Y軸と平行な方向を第2方向Yと称する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図2は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)であり、図1のA-A線に沿う断面を示している。
【0011】
図1及び図2を参照すると、ひずみゲージ1は、基材10と、抵抗体30と、配線40と、電極50と、カバー層60とを有している。カバー層60は、必要に応じて設けることができる。なお、図1及び図2では、便宜上、カバー層60の外縁のみを破線で示している。まずは、ひずみゲージ1を構成する各部について詳細に説明する。
【0012】
なお、本実施形態では、便宜上、ひずみゲージ1において、基材10の抵抗体30が設けられている側を「上側」と称し、抵抗体30が設けられていない側を「下側」と称する。又、各部位の上側に位置する面を「上面」と称し、各部位の下側に位置する面を「下面」と称する。ただし、ひずみゲージ1は天地逆の状態で用いることもできる。又、ひずみゲージ1は任意の角度で配置することもできる。又、平面視とは、基材10の上面10aに対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。
【0013】
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる部材である。基材10は可撓性を有する。基材10の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ1の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、基材10の厚さは5μm~500μm程度であってよい。ひずみゲージ1の下面側には、接着層等を介して起歪体が接合されていてもよい。なお、起歪体の表面から受感部へのひずみの伝達性、及び、環境変化に対する寸法安定性の観点から考えると、基材10の厚さは5μm~200μmの範囲内であることが好ましい。また、絶縁性の観点から考えると、基材10の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0014】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成される。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、かつ可撓性を有する部材を指す。
【0015】
基材10が絶縁樹脂フィルムから形成される場合、当該絶縁樹脂フィルムには、フィラーや不純物等が含まれていてもよい。例えば、基材10は、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成されてもよい。
【0016】
基材10の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられる。又、前述の結晶性材料以外に非晶質のガラス等を基材10の材料としてもよい。又、基材10の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。金属を用いる場合、金属製の基材10上に絶縁膜が設けられる。
【0017】
抵抗体30は、基材10上に所定のパターンで形成された薄膜である。ひずみゲージ1において、抵抗体30は、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体30は、基材10の上面10aに直接形成されてもよいし、基材10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。なお、図1では、便宜上、抵抗体30を密度の高い梨地模様で示している。
【0018】
抵抗体30は、複数の細長状部31と、複数の折り返し部32とを含む。図1の例では、抵抗体30は、6つの細長状部31と、7つの折り返し部32を含むが、細長状部31と折り返し部32の個数は、図1の例には限定されない。
【0019】
抵抗体30において、複数の細長状部31は、長手方向を第1方向Xに向けて並置されている。そして、複数の折り返し部32は、複数の細長状部31の中で隣接する細長状部31の端部を互い違いに連結して各々の細長状部31を互いに直列に接続する。これにより、抵抗体30は、全体としてジグザグに折り返す構造となっている。複数の細長状部31の長手方向である第1方向Xがグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向である第2方向Yがグリッド幅方向となる。
【0020】
抵抗体30において、第2方向Yの一端(Y-側の端部)に位置する細長状部31の第1方向Xの一端(X-側の端部)は、Y-方向に屈曲し、抵抗体30のグリッド幅方向の一方の終端30eに達する。また、第2方向Yの他端(Y+側の端部)に位置する細長状部31の第1方向Xの一端(X-側の端部)は、Y+方向に屈曲し、抵抗体30のグリッド方向の他方の終端30eに達する。各々の終端30e及び30eは、配線40を介して、電極50と電気的に接続されている。言い換えれば、配線40は、抵抗体30のグリッド幅方向の各々の終端30e及び30eと各々の電極50とを電気的に接続している。なお、図1では、便宜上、終端30e及び30eを破線で示しているが、抵抗体30と配線40の第1金属層41(後述)とは、一体に形成することができる。
【0021】
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0022】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、及びCrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでいてもよい。
【0023】
抵抗体30の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ1の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、抵抗体30の厚さは0.05μm~2μm程度であってよい。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上である場合、抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する。また、抵抗体30の厚さが1μm以下である場合、抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する、(i)膜のクラックおよび(ii)膜の基材10からの反りが、低減される。
【0024】
横感度を生じ難くすることと、断線対策とを考慮すると、抵抗体30の各々の細長状部31の幅は5μm以上100μm以下であることが好ましい。更に言えば、抵抗体30の各々の細長状部31の幅は5μm以上70μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であるとより好ましい。
【0025】
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上させることができる。又例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、抵抗体30がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、「主成分」とは、抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占める成分のことを意味する。ゲージ特性を向上させるという観点から考えると、抵抗体30はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。更に言えば、同観点から考えると、抵抗体30はα-Crを90重量%以上含むことがより好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0026】
又、抵抗体30がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ひずみゲージ1のゲージ率の低下を抑制することができる。
【0027】
又、Cr混相膜におけるCrNとCrNとの比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が80重量%以上90重量%未満となるようにすることが好ましい。更に言えば、同比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が90重量%以上95重量%未満となるようにすることがより好ましい。CrNは半導体的な性質を有する。そのため、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで抵抗体30のセラミックス化を低減し、抵抗体30の脆性破壊が起こりにくくすることができる。
【0028】
一方で、CrNは化学的に安定であるという利点を有する。Cr混相膜にCrNをより多く含むことで、不安定なNが発生する可能性を低減することができるため、安定なひずみゲージを得ることができる。ここで「不安定なN」とは、Cr混相膜の膜中に存在し得る、微量のNもしくは原子状のNのことを意味する。これらの不安定なNは、外的環境(例えば高温環境)によっては膜外へ抜け出ることがある。不安定なNが膜外へ抜け出るときに、Cr混相膜の膜応力が変化し得る。
【0029】
ひずみゲージ1において、抵抗体30の材料としてCr混相膜を用いた場合、高感度化かつ、小型化を実現することができる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、抵抗体30の材料としてCr混相膜を用いた場合は0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。また、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、抵抗体30の材料としてCr混相膜を用いた場合の大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化することができる。
【0030】
配線40は、基材10上に2つ形成されている。配線40の一方は、第2方向Yの一端(Y-側の端部)に位置する細長状部31に並置され、折り返し部32を介して、該細長状部31の第1方向Xの一端(X-側の端部)に接続されている。配線40の他方は、第2方向Yの他端(Y+側の端部)に位置する細長状部31に並置され、折り返し部32を介して、該細長状部31の第1方向Xの一端(X-側の端部)に接続されている。
【0031】
配線40は、少なくとも第1方向Xの一端側において細長状部31に並置されていればよく、配線40の全体が細長状部31に並置されてなくてもよい。すなわち、配線40は直線状には限定されず、少なくとも第1方向Xの一端側において細長状部31に並置された任意のパターンとすることができる。又、配線40は、任意の長さとすることができる。
【0032】
電極50は、基材10上に形成され、配線40を介して抵抗体30と電気的に接続されており、例えば、配線40よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極50は、ひずみにより生じる抵抗体30の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線等が接合される。
【0033】
各々の配線40は、第1金属層41と、第1金属層41上に積層された第2金属層42とを有している。また、各々の電極50は、第1金属層51と、第1金属層51上に積層された第2金属層52とを有している。第1金属層51は、配線40の第1金属層41を介して抵抗体30の終端30e及び30eと電気的に接続されている。第1金属層51は、平面視において、略矩形状に形成されている。第1金属層51は、配線40と同じ幅に形成しても構わない。なお、図1では、便宜上、第1金属層41及び51を抵抗体30と同じ密度の梨地模様で示しており、第2金属層42及び52を抵抗体30よりも低密度の梨地模様で示している。
【0034】
第2金属層42及び52は、第1金属層41及び51の上面の一部に形成されている。具体的には、第2金属層42及び52は、第1金属層41及び51の上面の外縁を除く領域に形成されている。そのため、平面視で、第1金属層41の外縁は、第2金属層42から露出している。また、平面視で、第1金属層51の外縁は、第2金属層52から露出している。
【0035】
第2金属層42と第2金属層52は、同一材料で一体に形成してもよく、別々の材料で形成してもよい。第2金属層42及び52の材料には、抵抗体30(第1金属層41及び51)よりも体積抵抗率の低い材料を選択することができる。このような材料としては、例えば、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt等、又は、これら何れかの金属の合金、これら何れかの金属の化合物、或いは、これら何れかの金属、合金、化合物を適宜積層した積層膜が挙げられる。特に第2金属層42及び52の材料として、CuやCu合金、AlやAg、Au、CrMn等を用いることが好ましい。第2金属層42及び52の厚さは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。第2金属層42及び52の厚さは、例えば、0.5μm~5μm程度とすることができる。
【0036】
第2金属層52の上面に、更に他の1層以上の金属層を積層してもよい。例えば、第2金属層52を銅層とし、銅層の上面に金層を積層してもよい。或いは、第2金属層52を銅層とし、銅層の上面にパラジウム層と金層を順次積層してもよい。電極50の最上層を金層とすることで、電極50のはんだ濡れ性を向上できる。
【0037】
なお、抵抗体30と第1金属層41と第1金属層51とは便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成することができる。従って、抵抗体30と第1金属層41と第1金属層51とは、厚さが略同一であってよい。又、第2金属層42と第2金属層52とは便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成することができる。従って、第2金属層42と第2金属層52とは、厚さが略同一であってよい。
【0038】
このように、配線40は、抵抗体30と同一材料からなる第1金属層41上に、第1金属層41よりも体積抵抗率の低い材料から形成された第2金属層42が積層された構造である。そのため、配線40は抵抗体30よりも抵抗が低くなり、配線40が抵抗体として機能してしまうことを抑制できる。その結果、抵抗体30によるひずみ検出精度を向上できる。
【0039】
言い換えれば、抵抗体30よりも体積抵抗率の低い材料を用いて配線40を形成することで、ひずみゲージ1の実質的な受感部を抵抗体30が形成された局所領域に制限できる。そのため、抵抗体30によるひずみ検出精度を向上できる。
【0040】
特に、抵抗体30としてCr混相膜を用いたゲージ率10以上の高感度なひずみゲージにおいて、配線40を抵抗体30よりも低抵抗化して実質的な受感部を抵抗体30が形成された局所領域に制限することは、ひずみ検出精度の向上に顕著な効果を発揮する。又、配線40を抵抗体30よりも低抵抗化することは、横感度を低減する効果も奏する。
【0041】
カバー層60は、必要に応じ、基材10の上面10aに、抵抗体30及び配線40を被覆し電極50を露出するように設けられる。カバー層60の材料としては、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂が挙げられる。なお、カバー層60は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層60の厚さは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、カバー層60の厚さは2μm~30μm程度とすることができる。カバー層60を設けることで、抵抗体30に機械的な損傷等が生じることを抑制することができる。又、カバー層60を設けることで、抵抗体30を湿気等から保護することができる。
【0042】
図3は、抵抗体及び配線にクラックが生じた様子を模式的に示す図である。ひずみゲージ1に与えるひずみを大きくしていくと、抵抗体30や第1金属層41にクラックが生じる。発明者らの検討によれば、図3に示すように、クラックCは、配線40を構成する第2金属層42の第1方向Xの端部付近において、おおよそ第2方向Yに伸びるように生じる傾向がある。
【0043】
図4は、図1における抵抗体と配線の接続部近傍の部分拡大平面図である。図4に示すように、ひずみゲージ1では、平面視で、第2金属層42の第1方向Xの一端側(X-側)の端部は、第1金属層41と、第1金属層41に隣接する細長状部31との間の空隙Sの第1方向Xの一端側(X-側)の端部よりも第1方向Xの一端側(X-側)に突出している。つまり、第2金属層42の第1方向Xの一端側の端部の、空隙Sの第1方向Xの一端側の端部を基準とした第1方向Xの一端側に突出する長さをL1とすると、長さL1>0である。なお、ひずみゲージ1において、平面視で、第2金属層42の第1方向Xの一端側の端部と、隣接する細長状部31同士の間の空隙の第1方向Xの一端側の端部との位置関係は任意としてよい。
【0044】
図5は、比較例に係るひずみゲージにおける抵抗体と配線の接続部近傍の部分拡大平面図である。図5の比較例では、図4に示す長さL1が0である。すなわち、図5の比較例では、第1方向Xにおいて、第2金属層42の第1方向Xの一端側の端部は、空隙Sの第1方向Xの一端側の端部と同じ位置にある。この場合、図3に示すようなクラックCが生じると、配線40と、配線40に隣接する細長状部31との間が断線して電流が流れなくなるため、比較例に係るひずみゲージは、ひずみゲージとして機能しなくなる。
【0045】
これに対して、図4に示すひずみゲージ1では、長さL1>0であるため、図3に示すようなクラックCが生じても、配線40と、配線40に隣接する細長状部31との間は断線せずに電気的な接続が維持されるため、ひずみゲージとして機能し続けることができる。図4において、長さL1は、1μm以上であることが好ましい。これにより、配線40と、配線40に隣接する細長状部31との間の通電幅を確保して電気的な接続を維持しやすくなる。
【0046】
図4において、長さL1は、細長状部31の第2方向Yの長さL2(すなわち、細長状部31の幅)以上である事がより好ましい。細長状部31の第2方向Yの長さは、5μm以上であることが好ましい。すなわち、長さL1は、5μm以上であることがより好ましい。これにより、配線40と、配線40に隣接する細長状部31との間の通電幅をさらに確保して電気的な接続を一層維持しやすくなる。
【0047】
また、図4において、第1金属層41の第1方向Xの一端側の端部と、第2金属層42の第1方向Xの一端側の端部との間の第1方向Xの長さL3は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
【0048】
ひずみゲージ1の製造工程では、第1金属層41及び第2金属層42をエッチングしてパターニングするが、エッチングの際に第1金属層41が第2金属層42よりもオーバーエッチングされる場合がある。オーバーエッチングにより、第2金属層42の端部が第1金属層41の端部より水平方向に突出すると、配線40を覆うカバー層60を設ける場合に、配線40とカバー層60との密着性が低下する。例えば、配線40において、第1金属層41がCr混相膜から形成され、第2金属層42が銅から形成されている場合、ひずみゲージ1の製造工程でのエッチングの際にCr混相膜が銅よりも1~2μm程度オーバーエッチングされる。また、オーバーエッチングにより、第2金属層42の端部が第1金属層41の端部より水平方向に突出すると、例えば、第2金属層42が銅から形成されている場合、銅が突出した部分が酸化して銅が劣化し、ひずみゲージ1の信頼性が低下する。
【0049】
そこで、平面視で、第1金属層41の外縁は、第2金属層42から露出していることが好ましく、長さL3は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。これにより、第1金属層41が第2金属層42に対してオーバーエッチングされることを抑制できるため、配線40とカバー層60との密着性を維持することができる。また、第2金属層42が銅から形成されている場合でも、銅が酸化して劣化することを防止できる。
【0050】
図6は、ひずみ限界の実験結果を示す図であり、複数個の試験用ひずみゲージにおけるひずみ限界の最小値をプロットしたものである。図4において、L1=0μmは、比較例に係るひずみゲージの実験結果を示している。一方、L1=1μmは、第1実施形態に係るひずみゲージ1の実験結果を示している。
【0051】
図6において、縦軸はひずみ限界[μST]を示している。ひずみ限界とは、ひずみゲージにひずみを与えたときに、断線が生じてひずみゲージとして機能できなくなる機械的ひずみの値である。図6の結果から、L1=5μmの場合は、L1=0μmの場合よりも、ひずみ限界が約1.4倍向上することが確認できた。
【0052】
なお、発明者らの別の検討によれば、第1金属層41に第2金属層42を積層しないことは好ましくない。第1金属層41に第2金属層42を積層しない場合、図6に示すL1=0μmの場合よりも、ひずみ限界がさらに低下する。例えば、第1金属層41がCr混相膜である場合、Cr混相膜は伸縮性に乏しいため、配線40をCr混相膜のみから形成すると、ひずみ限界が低くなると考えられる。Cr混相膜からなる第1金属層41上に、銅等のCr混相膜よりも伸縮性に優れている材料からなる第2金属層42を積層することで、ひずみ限界を向上することができる。
【0053】
すなわち、ひずみ限界を向上する観点から、配線40は、第1金属層41と第2金属層42の積層構造とすることが好ましく、第2金属層42は第1金属層41よりも伸縮性に優れた材料から形成されていることが好ましい。つまり、第2金属層は、第1金属層よりも体積抵抗率が低く、かつ第1金属層41よりも伸縮性に優れた材料から形成されていることが好ましい。第1金属層がCr混相膜である場合、第1金属層よりも体積抵抗率が低く、かつ第1金属層41よりも伸縮性に優れた材料としては、銅以外に金、銀、及びアルミニウムが挙げられる。
【0054】
[ひずみゲージの製造方法]
本実施形態に係るひずみゲージ1では、基材10上に、抵抗体30と、配線40と、電極50と、カバー層60とが形成される。なお、基材10とこれらの部材の層の間に別の層(後述する機能層等)が形成されてもよい。
【0055】
以下、ひずみゲージ1の製造方法について説明する。ひずみゲージ1を製造するためには、まず、基材10を準備し、基材10の上面10aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて抵抗体30と、配線40と、電極50となる層である。従って、金属層Aの材料や厚さは、前述の抵抗体30等の材料や厚さと同様である。
【0056】
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法、蒸着法、アークイオンプレーティング法、またはパルスレーザー堆積法等を用いて成膜されてもよい。
【0057】
なお、基材10の上面10aに下地層を形成してから金属層Aを形成してもよい。例えば、基材10の上面10aに、所定の膜厚の機能層をコンベンショナルスパッタ法により真空成膜してもよい。このように下地層を設けることによって、ひずみゲージ1のゲージ特性を安定化させることができる。
【0058】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層A(抵抗体30)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素または水分による金属層Aの酸化を防止する機能、および/または、基材10と金属層Aとの密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0059】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むことがあり、また、Crは自己酸化膜を形成することがある。そのため、特に金属層AがCrを含む場合、金属層Aの酸化を防止する機能を有する機能層を成膜することが好ましい。
【0060】
このように、金属層Aの下層に機能層を設けることにより、金属層Aの結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層Aを作製することができる。その結果、ひずみゲージ1において、ゲージ特性の安定性が向上する。又、機能層を構成する材料が金属層Aに拡散することにより、ひずみゲージ1において、ゲージ特性が向上する。
【0061】
機能層の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0062】
図7は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。図7は、抵抗体30、配線40、及び電極50の下地層として機能層20を設けた場合のひずみゲージ1の断面形状を示している。
【0063】
機能層20の平面形状は、例えば抵抗体30、配線40、及び電極50の平面形状と略同一にパターニングされてよい。しかしながら、機能層20と抵抗体30、配線40、及び電極50との平面形状は略同一でなくてもよい。例えば、機能層20が絶縁材料から形成される場合には、機能層20を抵抗体30、配線40、及び電極50の平面形状と異なる形状にパターニングしてもよい。この場合、機能層20は例えば抵抗体30、配線40、及び電極50が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層20は、基材10の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0064】
次に、金属層Aの上面に、第2金属層42及び第2金属層52を形成する。第2金属層42及び第2金属層52は、例えば、周知のフォトリソグラフィ法により所定のパターンに形成することができる。
【0065】
次に、金属層Aの上面、第2金属層42の上面、及び第2金属層52の上面に、感光性のレジストを形成し、そのレジストを露光及び現像して図1の抵抗体30、配線40、及び電極50と同様の平面形状にパターニングする。そして、レジストをエッチングマスクとし、レジストから露出する金属層Aをウェットエッチング等により除去する。次に、レジストを除去することで、図1に示す平面形状の抵抗体30、配線40、及び電極50を形成することができる。このとき、第1金属層41が第2金属層42に対してオーバーエッチングされないように、レジストの形状を制御する。
【0066】
抵抗体30、配線40、及び電極50を形成した後、必要に応じ、基材10の上面10aにカバー層60を形成する。カバー層60は抵抗体30及び配線40を被覆するが、電極50はカバー層60から露出していてよい。例えば、基材10の上面10aに、抵抗体30及び配線40を被覆し電極50を露出するように、半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートして、その後に当該絶縁樹脂フィルムを加熱して硬化させることにより、カバー層60を形成することができる。以上の工程により、ひずみゲージ1が完成する。
【0067】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本開示に係るひずみゲージは、上述した実施形態等に限定されない。例えば、上述した実施形態等に係るひずみゲージについて、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ひずみゲージ、10 基材、10a 上面、20 機能層、30 抵抗体、30e、30e 終端、31 細長状部、32 折り返し部、40 配線、41、51 第1金属層、42、52 第2金属層、50 電極、60 カバー層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7