(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165276
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】直動ダンパーおよびステアリング装置
(51)【国際特許分類】
F16F 9/16 20060101AFI20231108BHJP
F16F 9/58 20060101ALI20231108BHJP
B62D 3/12 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F16F9/16
F16F9/58 A
F16F9/58 B
B62D3/12 511
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076118
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】中屋 一正
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC05
3J069CC06
3J069DD47
3J069EE01
(57)【要約】
【課題】組立およびメンテナンスの各作業性を良好にすることができる直動ダンパーおよびこの直動ダンパーを備えたステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリング装置100は、ラックバー103とラックエンド106との間に直動ダンパー120を備えている。直動ダンパー120は、円筒状に形成された内室形成体121の内部に相対変位体140が往復変位可能な状態で設けられている。内室形成体121の内部には、第1流通制御弁127および第2流通制御弁128をそれぞれ支持する弁支持部123の両側に第1内室125aおよび第2内室125bがそれぞれ形成されているとともに、第2内室125bに隣接して弾性体収容部130が形成されている。弾性体収容部130は、外気に連通した状態で形成されており、その内部に復帰用弾性体131を収容している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されてこの筒状に形成された部分の内側に流体を液密的に収容する内室を有する内室形成体と、
前記内室形成体内に摺動自在に嵌合して前記内室形成体に対して相対変位する相対変位体と、
前記内室形成体および前記相対変位体のうちの少なくとも一方に設けられて前記流体の流動を制限しつつ流動させる流通制御弁とを備えて、互いに直線的に相対変位する2つの取付け対象物体間に配置されてこの相対変位によって受ける外力を前記流体の流動を制限することで減衰させる直動ダンパーであって、
前記相対変位体に弾性力を付与して前記外力を弾性的に受け止める復帰用弾性体を備え、
前記内室形成体は、
同内室形成体の内側に外気に連通した状態で前記復帰用弾性体を収容するための弾性体収容部を有しており、
前記復帰用弾性体は、
前記弾性体収容部内に収容されていることを特徴とする直動ダンパー。
【請求項2】
請求項1に記載した直動ダンパーにおいて、
前記弾性体収容部は、
前記内室形成体における一方の端部に前記復帰用弾性体を出し入れ可能な大きさに形成された開口部を介して外気に連通した状態で形成されていることを特徴とする直動ダンパー。
【請求項3】
請求項2に記載した直動ダンパーにおいて、さらに、
前記内室形成体における前記開口部に取り付けられて前記復帰用弾性体の弾性力を受ける弾性体受け体を備えることを特徴とする直動ダンパー。
【請求項4】
請求項3に記載した直動ダンパーにおいて、
前記弾性体受け体は、
前記内室形成体の前記相対変位によって前記2つの取付け対象物体のうちの一方の突き当たる位置に配置されているとともに、この突き当たりを弾性的に受け止める弾性体で構成された突当り部を有していることを特徴とする直動ダンパー。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した直動ダンパーにおいて、
前記内室は、
前記流通制御弁を介して前記流体が流通する第1内室および第2内室を有しており、
前記相対変位体は、
同相対変位体の前記相対変位によって前記第1内室の体積を拡大または縮小させながら同第1内室を形成する第1内室形成壁と、
前記相対変位体の前記相対変位によって前記第2内室の体積を拡大または縮小させながら同第2内室を形成する第2内室形成壁とをそれぞれ有しており、
前記第1内室形成壁および前記第2内室形成壁のうちの一方は、
前記相対変位体の前記相対変位によって前記弾性体収容部の体積を拡大または縮小させながら同弾性体収容部を形成することを特徴とする直動ダンパー。
【請求項6】
棒状に延びて形成されてステアリングホイールの操作によって回転するステアリングシャフトと、
棒状に延びて形成されて前記ステアリングシャフトの回転運動が軸線方向の往復運動に変換されて伝達されるラックバーと、
前記ラックバーの両端部にそれぞれ連結されて同各両端部に対して操舵対象となる車輪を直接的または間接的に連結する中間連結体と、
前記ラックバーを覆うラックハウジングとを備えたステアリング装置において、
請求項1に記載した直動ダンパーを備え、
前記直動ダンパーは、
前記ラックハウジングと前記ラックバーまたは前記中間連結体との間に設けられて前記車輪からの衝撃および/または前記ステアリングシャフト側からの慣性力による衝撃を減衰することを特徴とするステアリング装置。
【請求項7】
請求項6に記載したステアリング装置において、
前記相対変位体は、前記中間連結体に繋がっており、
前記内室形成体は、
前記ラックバーの前記往復運動によって前記ラックハウジングに接触または離隔するように形成されていることを特徴とするステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動運動における運動エネルギを減衰する直動ダンパーおよびこの直動ダンパーを備えるステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直動運動における運動エネルギを減衰する直動ダンパーがある。例えば、下記特許文献1には、自走式車両のステアリング装置におけるラックハウジングに対して相対変位するラックエンドに流体の流動を制限することによって発生する減衰力でラックエンドとラックハウジングとの間に生じる衝撃荷重を低減する直動ダンパーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された直動ダンパーにおいては、ラックエンドが連結されている相対変位体をラックエンド側に弾性的に押圧する復帰用弾性体が流体で満たされた内室内に設けられているため、直動ダンパーの組立およびメンテナンスの各作業が行い難いという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、組立およびメンテナンスの各作業性を良好にすることができる直動ダンパーおよびこの直動ダンパーを備えたステアリング装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、筒状に形成されてこの筒状に形成された部分の内側に流体を液密的に収容する内室を有する内室形成体と、内室形成体内に摺動自在に嵌合して内室形成体に対して相対変位する相対変位体と、内室形成体および相対変位体のうちの少なくとも一方に設けられて流体の流動を制限しつつ流動させる流通制御弁とを備えて、互いに直線的に相対変位する2つの取付け対象物体間に配置されてこの相対変位によって受ける外力を流体の流動を制限することで減衰させる直動ダンパーであって、相対変位体に弾性力を付与して前記外力を弾性的に受け止める復帰用弾性体を備え、内室形成体は、同内室形成体の内側に外気に連通した状態で復帰用弾性体を収容するための弾性体収容部を有しており、復帰用弾性体は、弾性体収容部内に収容されていることにある。
【0007】
これによれば、直動ダンパーは、内室形成体の内側に外気に連通した状態で復帰用弾性体を収容するための弾性体収容部を有して構成されているため、復帰用弾性体を簡単に弾性体収容部内に収容することができ、直動ダンパーの組立およびメンテナンスの各作業性を良好にすることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記直動ダンパーにおいて、弾性体収容部は、内室形成体における一方の端部に復帰用弾性体を出し入れ可能な大きさに形成された開口部を介して外気に連通した状態で形成されていることにある。
【0009】
これによれば、直動ダンパーは、弾性体収容部が内室形成体における一方の端部に復帰用弾性体を出し入れ可能な大きさに形成された開口部を介して外気に連通した状態で形成されているため、直動ダンパーの組立時およびメンテナンス時に容易に復帰用弾性体を内室形成体内に出し入れすることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記直動ダンパーにおいて、さらに、内室形成体における開口部に取り付けられて復帰用弾性体の弾性力を受ける弾性体受け体を備えることにある。
【0011】
これによれば、直動ダンパーは、内室形成体における前記開口部に取り付けられて復帰用弾性体の弾性力を受ける弾性体受け体を備えているため、復帰用弾性体を内室形成体内から飛び出さないようにすることができ、直動ダンパーの組立およびメンテナンスの各作業性を良好にすることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記直動ダンパーにおいて、弾性体受け体は、内室形成体の相対変位によって前記2つの取付け対象物体のうちの一方の突き当たる位置に配置されているとともに、この突き当たりを弾性的に受け止める弾性体で構成された突当り部を有していることにある。
【0013】
これによれば、直動ダンパーは、弾性体受け体が2つの取付け対象物体のうちの一方の突き当たる位置に配置されてこの突き当たりを弾性的に受け止める弾性体で構成された突当り部を有しているため、突当り時における衝突音または衝撃の発生を効果的に抑えることができる。この場合、突当り部は、エラストマ材で構成することができる。ここで、エラストマ材は、突当り部が物体との衝突時の衝撃を弾性的に受け止めることができるゴム材または樹脂材などであり、より具体的には、熱硬化性エラストマ材(例えば、加硫ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなど)、熱可塑性エラストマ材(例えば、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系またはアミド系の各樹脂など)がある。なお、突当り部は、エラストマ材以外の材料、例えば、金属製の板バネまたはコイルスプリングで構成できることは当然である。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記直動ダンパーにおいて、内室は、流通制御弁を介して流体が流通する第1内室および第2内室を有しており、相対変位体は、同相対変位体の相対変位によって第1内室の体積を拡大または縮小させながら同第1内室を形成する第1内室形成壁と、相対変位体の相対変位によって第2内室の体積を拡大または縮小させながら同第2内室を形成する第2内室形成壁とをそれぞれ有しており、第1内室形成壁および第2内室形成壁のうちの一方は、相対変位体の相対変位によって弾性体収容部の体積を拡大または縮小させながら同弾性体収容部を形成することにある。
【0015】
これによれば、直動ダンパーは、相対変位体が第1内室および第2内室をそれぞれ形成する第1内室形成壁および第2内室形成壁を備えるとともに、第1内室形成壁および第2内室形成壁のうちの一方は弾性体収容部の体積を拡大または縮小させながら同弾性体収容部を形成しているため、装置構成を簡単化および小型化することができる。
【0016】
また、本発明は直動ダンパーの発明として実施できるばかりでなく、この直動ダンパーを備えるステアリング装置の発明としても実施できるものである。
【0017】
具体的には、ステアリング装置は、棒状に延びて形成されてステアリングホイールの操作によって回転するステアリングシャフトと、棒状に延びて形成されてステアリングシャフトの回転運動が軸線方向の往復運動に変換されて伝達されるラックバーと、ラックバーの両端部にそれぞれ連結されて同各両端部に対して操舵対象となる車輪を直接的または間接的に連結する中間連結体と、ラックバーを覆うラックハウジングとを備えたステアリング装置において、請求項1に記載した直動ダンパーを備え、直動ダンパーは、ラックハウジングとラックバーまたは中間連結体との間に設けられて車輪からの衝撃および/またはステアリングシャフト側からの慣性力による衝撃を減衰する。これによれば、本発明に係るステアリング装置は、上記した直動ダンパーと同様の作用効果が期待できる。
【0018】
この場合、前記ステアリング装置において、相対変位体は、中間連結体に繋がっており、内室形成体は、ラックバーの往復運動によってラックハウジングに接触または離隔するように形成することができる。
【0019】
これによれば、本発明に係るステアリング装置は、相対変位体が中間連結体に繋がって設けられているとともに、内室形成体がラックバーの往復運動によってラックハウジングに接触または離隔するように形成されてダンパーがタイロッドまたはラックエンドなどの中間連結体に設けられているため、直動ダンパーのメンテナンスまたは交換を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るステアリング装置の全体構成の概略を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図1に示すステアリング装置を構成する直動ダンパーの外観構成の概略を相対変位体のラックエンド連結部側から見た斜視図である。
【
図3】
図1に示すステアリング装置を構成する直動ダンパーの外観構成の概略を突当り部側から見た斜視図である。
【
図4】
図1に示す直動ダンパーの外観構成の概略を突当り部側から見た正面図である。
【
図5】
図4に示す5-5線から見た直動ダンパーの内部構成の概略を示す断面図である。
【
図6】
図5に示す直動ダンパーにおいて内室形成体がラックハウジングに接触した瞬間の状態を示す断面図である。
【
図7】
図6に示す直動ダンパーにおいて内室形成体がラックハウジング側に押圧された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る直動ダンパーを備えたステアリング装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るステアリング装置100の全体構成の概略を模式的に示す説明図である。また、
図2は、
図1に示すステアリング装置100を構成する直動ダンパー120の外観構成の概略を相対変位体140のラックエンド連結部側から見た斜視図である。
図3は、
図1に示すステアリング装置100を構成する直動ダンパー120の外観構成の概略を突当り部134側から見た斜視図である。また、
図4は、
図1に示す直動ダンパー120の外観構成の概略を突当り部134側から見た正面図である。また、
図5は、
図4に示す5-5線から見た直動ダンパー120の内部構成の概略を示す断面図である。なお、
図2および
図3においては、直動ダンパー120を構成しないラックバー103およびソケット体108とともに直動ダンパー120を描いている。
【0022】
このステアリング装置100は、四輪の自走式車両(図示せず)における2つの前輪(または後輪)を左右方向にそれぞれ操舵するための機械装置である。
【0023】
(ステアリング装置100の構成)
ステアリング装置100は、ステアリングホイール101を備えている。ステアリングホイール101は、自走式車両の運転者が進行方向を手動で操作するための操作子(つまり、ハンドル)であり、樹脂材または金属材を円環状に形成して構成されている。このステアリングホイール101には、ステアリングシャフト102が連結されている。
【0024】
ステアリングシャフト102は、棒状に形成されてステアリングホイール101の時計回りまたは反時計回りの回転操作に応じて軸線周りに回転する部品であり、金属製の1つの棒体または複数の棒体を自在継手などを介して連結して構成されている。このステアリングシャフト102は、一方の端部にステアリングホイール101が連結されているとともに、他方の端部にピニオンギア102aが形成されてラックバー103に連結されている。
【0025】
ラックバー103は、棒状に形成されて軸線方向に往復変位することによって2つの車輪112をそれぞれ操舵する力および操舵の量をそれぞれナックルアーム111に伝達する部品であり、金属材で構成されている。この場合、ラックバー103の一部には、ラックギア103aが形成されており、ステアリングシャフト102のピニオンギア102aが噛み合っている。すなわち、ピニオンギア102aとラックギア103aとは、ステアリングシャフト102の回転運動をラックバー103の往復直線運動に変換するラック&ピニオン機構(ステアリングギアボックス)を構成している。
【0026】
このラックバー103は、ラック&ピニオン機構がラックハウジング104によって覆われた状態で軸線方向の両端部がラックハウジング104から露出している。そして、ラックバー103における前記ラックハウジング104からそれぞれ露出した各両端部には直動ダンパー120、中間連結体105およびナックルアーム111をそれぞれ介して車輪112が連結されている。
【0027】
ラックハウジング104は、ラックバー103におけるラック&ピニオン機構などの主要部を覆って保護するための部品であり、金属材を円筒状に形成して構成されている。このラックハウジング104は、自走式車両のシャシー(図示せず)に固定的に取り付けられている。
【0028】
中間連結体105は、ラックバー103から伝達される操舵力および操舵量をナックルアーム111に伝達するための部品であり、主として、ラックエンド106およびタイロッド110を備えて構成されている。ラックエンド106は、ラックバー103の先端部に対してタイロッド110を可動的に連結するとともに直動ダンパー120が連結される部品であり、主として、スタッド体107とソケット体108とで構成されている。
【0029】
スタッド体107は、ソケット体108に対してタイロッド110を可動的に連結するための部品であり、金属材を丸棒状に形成して構成されている。このスタッド体107は、一方(図示左側)の端部に球状のボール部107aが形成されるとともに、他方(図示右側)にはタイロッド110の端部にねじ込まれる雄ネジ部(図示せず)が形成さている。
【0030】
ソケット体108は、相対変位体140の先端部に対してスタッド体107を可動的に連結するための部品であり、金属材を丸棒状に形成して構成されている。より具体的には、ソケット体108は、主として、ソケット本体108aと連結部108bとで構成されている。ソケット本体108aは、ボール部107aを摺動可能な状態で保持する部分であり、ボール部107aを覆う凹状の球面形状に形成されている。連結部108bは、相対変位体140に連結される軸状の部分であり、相対変位体140内にねじ込まれる雄ネジが形成さている。
【0031】
タイロッド110は、ラックエンド106の先端部に対してナックルアーム111を可動的に連結する部品であり、棒状に延びるタイロッド本体の先端部にボールジョイントが可動的に取り付けられて構成されている。また、ナックルアーム111は、タイロッド110に対して車輪112を保持してタイロッド110から伝達される操舵力および操舵量を車輪112に伝達するための金属製の部品であり、円筒部の周囲から複数の棒状体が延びた形状に形成されている。また、車輪112は、自走式車両を前方または後方に移動させるために路面上を転動する左右一対の部品であり、金属製のホイールの外側にゴム製のタイヤが取り付けられて構成されている。
【0032】
直動ダンパー120は、ステアリングシャフト102側からの慣性力および/または車輪112から伝達される強い押圧力(衝撃)を吸収するための器具であり、左右の各中間連結体105とラックバー103の両端部との間に設けられている。この直動ダンパー120は、内室形成体121を備えている。
【0033】
内室形成体121は、第1内室125a、第2内室125bおよび弾性体収容部130
をそれぞれ形成しつつ相対変位体140を支持する部品であり、金属材を円筒状に形成して構成されている。この内室形成体121は、内周面122の軸方向の中央部に弁支持部123が形成されている。弁支持部123は、第1流通制御弁127、第2流通制御弁128および相対変位体140をそれぞれ支持する部分であり、内周面122から径方向内側に円環状に張り出して形成されている。
【0034】
この弁支持部123には、周方向に沿って等間隔に4つの貫通孔(2つのみ図示)が軸方向に貫通した状態で形成されており、これらの4つの貫通孔のうちの3つの貫通孔に第1流通制御弁127(1つのみ図示)が嵌合した状態で保持されているとともに残余の1つの貫通孔に第2流通制御弁128が嵌合した状態で保持されている。また、弁支持部123の内周面は、弾性体からなるシールリング124が嵌め込まれた状態で相対変位体140が摺動自在に嵌合している。これにより、弁支持部123における内室形成体121の軸線方向の両側には、第1内室125aおよび第2内室125bがそれぞれ形成されている。
【0035】
第1内室125aおよび第2内室125bは、流体126を液密的に収容する部分であり、相対変位体140の外周部上に軸線方向に延びる円環筒状に形成されている。すなわち、第1内室125aおよび第2内室125bは、相対変位体140と内室形成体121との間の空間領域として形成されている。この場合、第1内室125aは、内室形成体121における図示右側の端部に開口した状態で形成された円筒状の部分内における相対変位体140の第1内室形成壁142と弁支持部123との間に形成されている。
【0036】
また、第2内室125bは、内室形成体121における図示左側の端部に開口した状態で形成された円筒状の部分内における相対変位体140の第2内室形成壁145と弁支持部123との間に形成されている。そして、これらの第1内室125aおよび第2内室125bは、内室形成体121内を往復摺動する相対変位体140の位置によって容積が変化する。これらの第1内室125aおよび第2内室125bが、本発明に係る内室に相当する。
【0037】
流体126は、第1内室125aと第2内室125bとの間に配置される前記3つの第1流通制御弁127内をそれぞれ流動する際の抵抗によって直動ダンパー120にダンパー機能を作用させるための物質であり、第1内室125aと第2内室125bとで形成される空間内に満たされている。この流体126は、直動ダンパー120の仕様に応じた粘性を有する流動性を有する液状、ジェル状または半固体状の物質で構成されている。この場合、流体126の粘度は、直動ダンパー120の仕様に応じて適宜選定される。本実施形態においては、流体126は、油、例えば、鉱物油またはシリコーンオイルなどによって構成されている。なお、流体126は、
図5~
図7において破線円内のハッチングで示している。
【0038】
3つの第1流通制御弁127は、第1内室125aと第2内室125bとの間の流体126の流れを制限しつつ双方向に流通させることができる弁でそれぞれ構成されている。この場合、第1流通制御弁127における流体126の流れを制限しつつとは、第2流通制御弁128における流体126の流通方向での流れ易さに対して同一条件(例えば、圧力および作動液の粘度など)下において流体126が流れ難いことを意味する。
【0039】
第2流通制御弁128は、第2内室125b側から第1内室125a側に流体126を流動させるとともに第1内室125a側から第2内室125b側へは流体126の流れを阻止する弁で構成されている。
【0040】
弾性体収容部130は、復帰用弾性体131を収容する部分であり、内室形成体121内において相対変位体140の外周部の外側に軸線方向に延びる円環筒状に形成されている。この場合、弾性体収容部130は、内室形成体121における図示左側の端部に開口する開口部130aを有して形成された円筒部分内において、相対変位体140の第2内室形成壁145に対して第2内室125bとは反対側に形成されている。すなわち、弾性体収容部130は、第2内室125bと共通の円筒部分内に第2内室形成壁145を隔てて隣接して形成されている。この弾性体収容部130は、内室形成体121における図示左側の端部に復帰用弾性体131の外径以上の大きさで開口して形成されている。
【0041】
復帰用弾性体131は、相対変位体140における第2内室形成壁145および第1内室形成壁142をそれぞれ第2内室125b内および第1内室125a内における図示右側端部に弾性的に押圧するための部品であり、金属製のウェーブスプリングを弾性体収容部130の軸線方向に複数枚重ねて配置して構成されている。この復帰用弾性体131は、一方(図示右側)の端部が第2内室形成壁145を弾性的に押圧するとともに、他方(図示左側)の端部が弾性体受け体133を弾性的に押圧している。また、これらの復帰用弾性体131の外周部には、覆い体132が設けられている。
【0042】
覆い体132は、ウェーブスプリングがエンジンまたは自走式車両の走行路面の性状などの自走式車両の作動状態に起因する振動によって共振することを防止するための部品であり、復帰用弾性体131の振動を減衰し得るエラストマなどの弾性体で構成されている。本実施形態においては、覆い体132は、復帰用弾性体131を構成するウェーブスプリングのうちの一部の外周部に密着する筒状のゴム材で構成されている。なお、覆い体132は、復帰用弾性体131を構成するウェーブスプリングの全体を覆うように構成されていてもよい。
【0043】
弾性体受け体133は、復帰用弾性体131の弾性力を受けるとともに突当り部134を支持するための部品であり、金属材料を筒状に形成して構成されている。より具体的には、弾性体受け体133は、図示右側の端部に復帰用弾性体131が嵌まり込んで位置を規制する凹状の嵌合部133aが形成されているとともにこの嵌合部133aの外側に内室形成体121の図示左側の端部を構成する開口部130aにネジ嵌合する雄ネジが形成されている。また、弾性体受け体133は、図示左側の端部に突当り部134が嵌合する凹状の溝が円環状に形成されている。
【0044】
突当り部134は、直動ダンパー120がラックハウジング104に衝突した際の衝撃を緩和するための部品であり、弾性変形する弾性体を円筒状に形成して構成されている。本実施形態においては、突当り部134は、ゴム材を弾性体受け体133と同じ外径および内径の円筒状に形成して構成されている。この突当り部134には、周方向に沿って弾性調整孔134aが形成されている。
【0045】
弾性調整孔134aは、突当り部134の弾性力を調整するための部分であり、貫通孔または有底の穴で構成されている。本実施形態においては、弾性調整孔134aは、周方向に配置された3つのボルト135の間に均等な間隔で突当り部134の軸線方向の長さの半分程度の深さの有底穴で構成されている。また、突当り部134は、周方向に沿って均等な間隔で3つの貫通孔が形成されており、これらの各貫通孔に弾性体受け体133にネジ嵌合するボルト135が貫通することで弾性体受け体133に取り付けられている。すなわち、弾性体収容部130は、内室形成体121における図示左側の端部に対して弾性体受け体133および突当り部134によって開口部130aの一部が塞がれた状態で外部に対して開口して外気に連通している。
【0046】
相対変位体140は、ラックバー103とラックエンド106とを互いに連結するとともに内室形成体121とともに第1内室125aおよび第2内室125bをそれぞれ形成するための部品であり、金属材料を丸棒状に形成して構成されている。この相対変位体140は、主として、内室対向部141、第1内室形成壁142、第2内室形成壁145、ラックエンド連結部148、ラックバー連結部149および補償装置収容部150をそれぞれ備えて構成されている。
【0047】
内室対向部141は、第1内室125aおよび第2内室125bをそれぞれ形成するとともに弁支持部123が摺動する部分であり、滑らかで断面が円となる曲面で構成されている。この内室対向部141は、相対変位体140の軸線方向の中央部に形成されている。
【0048】
第1内室形成壁142は、第1内室125aを形成するとともに内室形成体121の内周面122を摺動して流体126を押圧する部分であり、内室対向部141における一方(図示右側)の端部にフランジ状に張り出して形成されている。この場合、第1内室形成壁142は、相対変位体140と同一材料で一体的に形成されている。この第1内室形成壁142の外周部は、弾性体からなるシールリング143が嵌め込まれた状態で内室形成体121の内周面122が摺動自在に嵌合している。また、第1内室形成壁142には、第1内室125a側の端面に第1変位限界規定部144が設けられている。
【0049】
第1変位限界規定部144は、第1内室形成壁142が弁支持部123側に変位して突き当たることで相対変位体140の変位範囲の両端における一方の変位限界を規定するとともに突き当り時の衝撃を緩和するための部品であり、弾性変形する弾性体を円環状に形成して構成されている。本実施形態においては、第1変位限界規定部144は、ゴム材で構成されている。また、第1変位限界規定部144は、弁支持部123側よりも第1内室形成壁142側の外径が大きいテーパ状の円錐形に形成されている。
【0050】
第2内室形成壁145は、第2内室125bおよび弾性体収容部130をそれぞれ形成するとともに内室形成体121の内周面122を摺動して流体126を押圧する部分であり、内室対向部141における他方(図示左側)の端部にフランジ状に張り出して設けられている。この場合、第2内室形成壁145は、弾性体収容部130に収容されている復帰用弾性体131の弾性力を受けながら内室形成体121内を摺動する。
【0051】
この第2内室形成壁145は、相対変位体140と別体の金属材料を円環状に形成して構成されており、相対変位体140の外周部にねじ込まれることで相対変位体140と一体化している。この場合、第2内室形成壁145の外周部は、弾性体からなるシールリング146が嵌め込まれた状態で内室形成体121の内周面122が摺動自在に嵌合している。第2内室形成壁145における弾性体収容部130側の端面には、復帰用弾性体131が嵌合する受け凹部145aが円環状に窪んで形成されている。一方、第2内室形成壁145における第2内室125b側の端面には、第2変位限界規定部147が設けられている。
【0052】
第2変位限界規定部147は、第2内室形成壁145が弁支持部123側に変位して突き当たることで相対変位体140の変位範囲の両端における他方の変位限界を規定するとともに突き当り時の衝撃を緩和するための部品であり、弾性変形する弾性体を円環状に形成して構成されている。本実施形態においては、第2変位限界規定部147は、ゴム材で構成されている。
【0053】
ラックエンド連結部148は、ラックエンド106のソケット体108を連結する部分であり、相対変位体140の軸線方向に延びて図示右側の端部に開口する有底穴内に形成されている。この場合、ラックエンド連結部148は、有底穴の内周面にソケット体108の連結部108bの雄ネジがネジ嵌合する雌ネジが形成されている。
【0054】
ラックバー連結部149は、ラックバー103を連結する部分であり、相対変位体140の軸線方向に延びて図示左側の端部に開口する有底穴の内周面にラックバー103の端部に形成された雌ネジがネジ嵌合する雄ネジが形成されて構成されている。
【0055】
補償装置収容部150は、体積変化補償装置153を液密的に収容するための部分であり、ラックエンド連結部148と一体的に形成された有底穴状に形成されている。この補償装置収容部150は、内室連通路151を介して第2内室125bに連通しているとともに、大気連通路152を介して直動ダンパー120の外側の大気に連通している。
【0056】
体積変化補償装置153は、第1内室125a内および第2内室125b内の流体126の温度変化による膨張または収縮による体積変化を補償する器具である。この体積変化補償装置153は、補償装置収容部150内を往復摺動するピストンをコイルスプリングで内室連通路151側に弾性的に押圧した状態で収容して構成されている。この場合、コイルスプリングが収容された空間が大気連通路152を介して直動ダンパー120の外側の大気に連通している。
【0057】
(直動ダンパー120の組み立て)
ここで、直動ダンパー120の組み立て作業について説明する。作業者は、機械加工された内室形成体121、弾性体受け体133、相対変位体140および第2内室形成壁145をそれぞれ用意する。また、作業者は、市販部品としてのシールリング124、流体126、第1流通制御弁127、第2流通制御弁128、復帰用弾性体131、ボルト135、シールリング146および体積変化補償装置153をそれぞれ用意する。また、作業者は、成形品としての覆い体132、突当り部134、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147をそれぞれ用意する。
【0058】
次に、作業者は、内室形成体121に対してシールリング124、第1流通制御弁127および第2流通制御弁128をそれぞれ組み付けるとともに、内室形成体121内に相対変位体140を組み付ける。この場合、作業者は、体積変化補償装置153が組み付けられた相対変位体140を内室形成体121内に組み付ける。次いで、作業者は、内室形成体121に組み付けられた相対変位体140に対してシールリング146が組み付けられた第2内室形成壁145を組み付ける。そして、作業者は、内室形成体121内に相対変位体140を組み付けることで形成される第1内室125a、第2内室125bおよび補償装置収容部150の各内部に流体126を充填する。
【0059】
次に、作業者は、内室形成体121内に相対変位体140を組み付けることで形成される弾性体収容部130内に復帰用弾性体131を収容する。この場合、作業者は、復帰用弾性体131を構成するウェーブスプリングの一部に覆い体132を被せた状態で弾性体収容部130内に開口部130aを介して収容する。
【0060】
次いで、作業者は、弾性体受け体133に突当り部134をボルト135で取り付けた後、この弾性体受け体133を内室形成体121の開口部130aにねじ込んでネジ嵌合させる。この場合、作業者は、弾性体収容部130内に収容されている復帰用弾性体131の弾性力に抗しながら弾性体受け体133を内室形成体121の開口部130aにねじ込むことで突当り部134および弾性体受け体133を内室形成体121に取り付けることができる。
【0061】
すなわち、作業者は、内室形成体121における図示左側に開口部130aを介して開口した弾性体収容部130内に復帰用弾性体131を挿入して弾性体受け体133および突当り部134で弾性体収容部130の開口部130aを塞ぐことで復帰用弾性体131を組み付けることができる。この場合、弾性体収容部130は、弾性体受け体133および突当り部134がそれぞれ円筒状に形成されているため、弾性体収容部130が完全に塞がれることなく外気に連通した状態を維持している。これにより、作業者は、直動ダンパー120を組み立てることができる。
【0062】
次に、作業者は、組み立てた直動ダンパー120を2つの取付け対象物体間に取り付ける。本実施形態においては、作業者は、組み立てた直動ダンパー120をラックバー103とラックエンド106との間に取り付ける。より具体的には、作業者は、相対変位体140におけるラックバー連結部149をラックバー103にネジ嵌合させるとともに、ラックエンド連結部148を連結部108bにネジ嵌合させる。これにより、作業者は、直動ダンパー120をステアリング装置100に取り付けることができる。すなわち、作業者は、前記した手順とは逆の手順によって直動ダンパー120をステアリング装置100から取り外した後、弾性体受け体133および突当り部134を内室形成体121から取り外すことで復帰用弾性体131をメンテナンスすることができる。
【0063】
(ステアリング装置100の作動)
次に、このように構成されたステアリング装置100の作動について説明する。このステアリング装置100は、図示しない四輪の自走式車両における操舵輪(例えば、2つの前輪)を左右方向に操舵する機構として自走式車両の内部に組み込まれる。そして、このステアリング装置100は、自走式車両の運転者によるステアリングホイール101の操作に応じて2つの車輪112の各向きを変更して自走式車両の進行方向を決定する。
【0064】
このような自走式車両の運転中において、ステアリング装置100における直動ダンパー120は、ラックバー103がピニオンギア102aとの関係において左右の変位限界近くまで変位した場合に作用する。この場合、ラックバー103の変位限界とは、車輪112の左右の操舵限界であり、自走式車両の運転者がステアリングホイール101を時計回りまたは反時計回りに回動限界近くまで回動させた場合のほか、車輪112が縁石などの障害物に衝突してラックバー103に対して車輪112側から大きな入力が作用した場合がある。
【0065】
まず、直動ダンパー120に外力が作用せず直動ダンパー120が作動しない場合について説明する。この直動ダンパー120は、
図5に示すように、自走式車両の車輪112が操舵限界付近まで操舵されない場合などラックバー103が変位限界付近に達しない範囲においては、内室形成体121がラックハウジング104に衝突しないため作動することはない。この場合、直動ダンパー120は、
図5に示すように、内室形成体121は復帰用弾性体131によって内室形成体121の変位範囲における図示左側に弾性的に押圧されることで変位限界を規定する第2内室形成壁145が弁支持部123に第2変位限界規定部147を介して弾性的に押し付けられている。
【0066】
次に、直動ダンパー120に外力が作用して直動ダンパー120が作動する場合について説明する。この直動ダンパー120は、
図6に示すように、自走式車両の車輪112が操舵限界付近まで操舵された場合などラックバー103が変位限界付近まで達した場合には、内室形成体121の端部がラックハウジング104に接触して作動を開始する。すなわち、ラックハウジング104は、本発明に係る2つの取付け対象物体のうちの他方となる取付け対象物体に相当する。なお、中間連結体105は、本発明に係る2つの取付け対象物体のうちの一方となる取付け対象物体に相当する。
【0067】
この場合、まず、直動ダンパー120は、突当り部134がラックハウジング104に突き当たって圧縮の弾性変形することで突き当り時の衝撃を減衰する。次いで、直動ダンパー120は、
図7に示すように、突当り部134が弾性変形の限界に達した場合には、相対変位体140が内室形成体121内をラックハウジング104側に復帰用弾性体131の弾性力に抗しながら変位する。すなわち、相対変位体140は、第1内室形成壁142が弁支持部123に向かって流体126を押しながら変位する。
【0068】
これにより、直動ダンパー120は、第1内室125a内の流体126が3つの第1流通制御弁127をそれぞれ流動抵抗を伴いながら第2内室125b側に流動することで減衰力を発生させる。そして、直動ダンパー120は、第1変位限界規定部144が弁支持部123に突き当たった場合には、第1変位限界規定部144の圧縮による弾性変形によって突き当り時の衝撃および相対変位体140を変位させる外力をそれぞれ減衰させる。
【0069】
次に、自走式車両の車輪112が操舵限界まで操舵されてラックバー103が変位限界まで達した後、車輪112が元の位置に戻る場合には、直動ダンパー120は突当り部134がラックハウジング104から離隔した後に内室形成体121が相対変位体140に対してラックハウジング104側に変位する。すなわち、内室形成体121は、復帰用弾性体131の弾性力によって弁支持部123が第2内室形成壁145に向かって流体126を押しながら変位する。
【0070】
これにより、直動ダンパー120は、第2内室125b内の流体126が1つの第2流通制御弁128を極めて小さい流動抵抗を伴いながら第1内室125a側に流動する。すなわち、直動ダンパー120は、内室形成体121の復帰時においては外力に対する減衰力を殆ど発生させない。そして、直動ダンパー120は、弁支持部123が第2変位限界規定部147に突き当たった場合には、第2変位限界規定部147の圧縮による弾性変形によって突き当り時の衝撃が減衰させる(
図5参照)。
【0071】
なお、直動ダンパー120の突当り部134がラックハウジング104に突き当たった場合には、この突き当りの反力またはこの突き当りを解消するための運転者によるハンドル操作によって直動ダンパー120が極めて短時間にラックハウジング104から離隔する。このため、内室形成体121は、ラックハウジング104から離隔した状態で(換言すれば、ラックハウジング104から離隔した後に)ラックハウジング104側に変位することになる。これらにより、自走式車両の車輪112は、元の位置に復帰する。
【0072】
上記作動方法の説明からも理解できるように、直動ダンパー120は、内室形成体121の内側に外気に連通した状態で復帰用弾性体131を収容するための弾性体収容部130を有して構成されているため、復帰用弾性体131を簡単に弾性体収容部130内に収容することができ、直動ダンパー120の組立およびメンテナンスの各作業性を良好にすることができる。
【0073】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
【0074】
例えば、上記実施形態においては、復帰用弾性体131は、ウェーブスプリングで構成した。しかし、復帰用弾性体131は、相対変位体140に弾性力を付与して相対変位体140に作用する外力を弾性的に受け止めることができる弾性体で構成されていればよい。したがって、復帰用弾性体131は、複数のウェーブワッシャ、コイルスプリングまたはエラストマで構成することができる。
【0075】
また、上記実施形態においては、弾性体収容部130の開口部130aは、復帰用弾性体131の外径よりも大きな内径に形成した。しかし、弾性体収容部130の開口部130aは、復帰用弾性体131の外径と同じまたは同外径よりも小さな内径に形成することもできる。この場合、復帰用弾性体131は、外径が弾性変形可能なエラストマなどの材料で構成するとよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、直動ダンパー120は、突当り部134を備えて構成した。しかし、直動ダンパー120は、突当り部134を省略して構成することもできる。
【0077】
また、上記実施形態においては、直動ダンパー120は、弾性体受け体133を備えて構成した。しかし、直動ダンパー120は、弾性体受け体133を省略して構成することもできる。この場合、直動ダンパー120は、弾性体収容部130内に配置された復帰用弾性体131の弾性力を第2内室形成壁145とラックハウジング104とで受けて支持するように構成することもできる。
【0078】
また、上記実施形態においては、突当り部134、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147は、それぞれゴム材で構成した。しかし、突当り部134、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147は、外力を弾性的に受け止めることができる弾性体で構成されていればよい。この場合、弾性体としては、外力に対してゆっくり変形して衝撃または振動を吸収する粘弾性体が好ましい。また、粘弾性体としては、反発弾性率が低い粘弾性体、具体的には、反発弾性率が50%以下の粘弾性体が好ましい。
【0079】
したがって、突当り部134、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147は、ゴム材のほか、熱硬化性エラストマ材(例えば、加硫ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなど)または熱可塑性エラストマ材(例えば、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系またはアミド系の各樹脂など)などの樹脂材で構成することができる。また、突当り部134、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147は、エラストマ材以外の材料、例えば、金属製の板バネまたはコイルスプリングのほか、粘性を有する流動体を封入したダンパーでも構成することができる。また、突当り部134、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147は、弾性体の表面に剛性を有する樹脂板または金属板を貼り付けて構成することもできる。これによれば、突当り部134、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147は、ラックハウジング104などの突き当たる物体に対する耐摩耗性を向上させることができるとともに損傷を与えることを防止することができる。
【0080】
また、上記実施形態においては、突当り部134、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147は、円環状に形成した。しかし、突当り部134、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147は、円形(だ円形を含む)以外の環状、例えば、三角形、四角形、五角形または六角形などの多角形のほか、不規則な異形形状の環状に形成することができる。この場合、突当り部134および第2変位限界規定部147は、第1変位限界規定部144のように円錐形状に形成することもできる。また、突当り部134、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147は、小片を環状に配置して構成することもできる。
【0081】
また、上記実施形態においては、突当り部134は、弾性調整孔134aを備えて構成した。これにより、突当り部134は、弾力性を調整することができる。このため、突当り部134は、必要な弾力性に応じて弾性調整孔134aの形成数、形成位置または大きさを自由に設定することができる。しかし、突当り部134は、有底穴および貫通孔のうちの少なくも一方を備えて構成することで弾力性を調整することができる。また、突当り部134は、弾性調整孔134aを用いなくても必要な弾力性を有しているなど弾性調整孔134aが不要である場合には弾性調整孔134aを省略することができる。
【0082】
また、上記実施形態においては、突当り部134は、ボルト135を貫通させて弾性体受け体133に取り付けた。しかし、突当り部134は、ボルト135以外の手法、例えば、接着剤または溶着などの手法を用いて弾性体受け体133に取り付けることができる。
【0083】
また、上記実施形態においては、復帰用弾性体131は、覆い体132によって外周部の一部を覆うように構成した。しかし、復帰用弾性体131は、覆い体132を省略して構成することもできる。
【0084】
また、上記実施形態においては、直動ダンパー120は、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147をそれぞれ備えて構成した。これにより、直動ダンパー120は、相対変位体140が外力を受けて変位限界位置に達したときおよび相対変位体140が外力を受ける前の元の位置の変位限界位置に達したときの衝撃または外力を減衰することができる。しかしながら、直動ダンパー120は、第1変位限界規定部144および第2変位限界規定部147のうちの少なくとも一方を省略して構成することもできる。
【0085】
また、上記実施形態においては、直動ダンパー120は、体積変化補償装置153を備えて構成した。しかし、直動ダンパー120は、流体126の体積変化が無視できるのであれば体積変化補償装置153を省略して構成することができる。また、直動ダンパー120は、体積変化補償装置153を相対変位体140または内室形成体121の外側に設けることもできる。
【0086】
また、上記実施形態においては、直動ダンパー120は、相対変位体140をラックバー103および中間連結体105にそれぞれ連結して内室形成体121がラックハウジング104に接触または離隔するように構成した。しかし、直動ダンパー120は、内室形成体121をラックハウジング104に連結するとともに、相対変位体140に対してラックバー103または中間連結体105が接近または離隔するように構成することもできる。この場合、相対変位体140は、ラックバー103が貫通するように円筒状に形成するとともに、ラックバー103の往復変位によってラックバー103またはこのラックバー103に直接連結する中間連結体105の一部が接近して接触する部分に突当り部134を設けておく。ステアリング装置100は、直動ダンパー120がラックハウジング104に設けられているため、ラックバー103または中間連結体105(タイロッド110またはラックエンド106など)を軽量化することができる。
【0087】
また、上記実施形態においては、直動ダンパー120は、3つの第1流通制御弁127と1つの第2流通制御弁128とからなる4つの流通制御弁を備えて構成した。しかし、流通制御弁は、直動ダンパー120の仕様に応じた数および仕様が適宜設定されるものであることは当然である。また、流通制御弁は、内室形成体121に代えてまたは加えて相対変位体140に設けることもできる。
【0088】
また、上記各実施形態においては、直動ダンパー120を機械的な構成のステアリング装置100に適用した。しかし、直動ダンパー120は、油圧を用いた油圧式パワーステアリングのほか、電動機を用いた電動パワーステアリングに適用することができることは当然である。
【0089】
また、上記各実施形態においては、直動ダンパー120をステアリング装置100に適用した。しかし、直動ダンパー120は、ステアリング装置100以外の装置または器具、具体的には、扉の開閉機構、自走式車両以外の機械装置、電機装置、器具または家具に取り付けて用いることができる。
【符号の説明】
【0090】
100…ステアリング装置、101…ステアリングホイール、102…ステアリングシャフト、102a…ピニオンギア、103…ラックバー、103a…ラックギア、104…ラックハウジング、105…中間連結体、106…ラックエンド、107…スタッド体、107a…ボール部、108…ソケット体、108a…ソケット本体、108b…連結部、
110…タイロッド、111…ナックルアーム、112…車輪、
120…直動ダンパー、121…内室形成体、122…内周面、123…弁支持部、124…シールリング、125a…第1内室、125b…第2内室、126…流体、127…第1流通制御弁、128…第2流通制御弁、
130…弾性体収容部、130a…開口部、131…復帰用弾性体、132…覆い体、133…弾性体受け体、133a…嵌合部、134…突当り部、134a…弾性調整孔、135…ボルト、
140…相対変位体、141…内室対向部、142…第1内室形成壁、143…シールリング、144…第1変位限界規定部、145…第2内室形成壁、145a…受け凹部、146…シールリング、147…第2変位限界規定部、148…ラックエンド連結部、149…ラックバー連結部、
150…補償装置収容部、151…内室連通路、152…大気連通路、153…体積変化補償装置。