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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165298
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】水素ガス感知器
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/22 20060101AFI20231108BHJP
   G01N 25/34 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G01N25/22
G01N25/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076167
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 辰志
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 香那子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 尚史
(72)【発明者】
【氏名】名川 良春
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AB07
2G040AB16
2G040BA01
2G040BA23
2G040BB01
2G040CA02
2G040CA17
2G040CA22
2G040DA09
2G040DA13
2G040EA13
2G040FA09
2G040GA05
2G040HA03
(57)【要約】
【課題】電気のような特段のエネルギーを要さずに、雰囲気中の水素ガスの存在を感知し、それに伴い電気回路の導通状態を変更することの可能な水素ガス感知器を提供する。
【解決手段】水素ガスを常温で触媒燃焼させる常温触媒を含む触媒層が表面に形成された発熱部と、前記発熱部における発熱で形状が変化する変形部と、前記変形部の形状変化に伴い電気回路の導通状態を変更させるスイッチと、を備える、水素ガス感知器。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを常温で触媒燃焼させる常温触媒を含む触媒層が表面に形成された発熱部と、
前記発熱部における発熱で形状が変化する変形部と、
前記変形部の形状変化に伴い電気回路の導通状態を変更させるスイッチと、
を備える、水素ガス感知器。
【請求項2】
前記変形部は、前記スイッチを開放させる、請求項1に記載の水素ガス感知器。
【請求項3】
前記変形部は、前記スイッチを閉鎖させる、請求項1に記載の水素ガス感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気中の水素ガス濃度が所定値以上となったときに、電気回路の導通状態を変更させる水素ガス感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水素ガスと触媒との触媒反応による発熱を熱電変換して発生する電圧を検出して水素ガスを検知する水素ガス検知センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-201100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術では、触媒を所定の温度に加熱するため、水素ガス以外の炭化水素のような可燃性ガスも燃焼するため、発熱が水素ガスの触媒反応によるかどうかが不明である。さらに、触媒の加熱のために電源が必要となっていた。
【0005】
本開示の実施態様は、電気のような特段のエネルギーを要さずに、雰囲気中の水素ガスの存在を感知し、それに伴い電気回路の導通状態を変更することの可能な水素ガス感知器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施態様に係る水素ガス感知器は、水素ガスを常温で触媒燃焼させる常温触媒を含む触媒層が表面に形成された発熱部と、前記発熱部における発熱で形状が変化する変形部と、前記変形部の形状変化に伴い電気回路の導通状態を変更させるスイッチと、を備える。
【0007】
すなわち、本実施態様に係る水素ガス感知器は、発熱部と、変形部と、スイッチとを備える。発熱部には、水素ガスを常温で触媒燃焼させる常温触媒を含む触媒層が表面に形成される。このような常温触媒としては、たとえば、白金を0.2質量%以上含有する触媒が挙げられる。また、ここでいう常温とは、特段の加熱又は冷却を行わない温度をいい、具体的には概ね15~30℃の範囲の温度をいう。常温での触媒燃焼とは、触媒に測定ガスを接触させる際、燃焼部にヒータ等での加熱が行われないことをいう。
【0008】
変形部は、発熱部における発熱で形状が変化する。変形部には、たとえば、バイメタルを利用したサーモスタットをもって充てることができる。スイッチは、変形部の形状変化に伴い、所定の電気回路の導通状態を変更させる。たとえば、変形部の形状変化で、電気回路のスイッチを開放させることで、雰囲気中に水素ガスが存在することが望ましくない機器の作動を停止させることができる。一方、変形部の形状変化で、電気回路のスイッチを閉鎖させることで、雰囲気中に水素ガスが存在することを報知する機器を作動させることができる。
【0009】
本実施態様に係る水素ガス感知器では、水素ガスが雰囲気中に存在していれば、電気等の特段のエネルギーを消費することなく、常温触媒による触媒燃焼で発熱部が発熱する。すなわち、電気回路の導通状態の変更のために特段の電源を必要としないので、設置環境の制約を受けない。また、電源が不要のため小型化及び低コスト化を図ることができる。さらには、発熱部は常温で触媒燃焼が起こるため、炭化水素のような水素以外の可燃ガスでは燃焼が起こらず、水素への選択性が優れ、水素以外のガス成分による誤作動の可能性も低減できる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施態様は、上記のように構成されているので、電気のような特段のエネルギーを要さずに、雰囲気中の水素ガスの存在を感知し、それに伴い電気回路の導通状態を変更することの可能な水素ガス感知器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係る水素ガス感知器の構成を示した模式図である。
図2図1の水素ガス感知器の作動状態を示した模式図である。
図3図1の水素ガス感知器が設けられる電気回路を示す模式図である。
図4】上昇温度と水素ガス濃度との関係を示したグラフである。
図5図1の水素ガス感知器及び図3の電気回路が設けられる装置の例を示す模式図である。
図6図1の水素ガス感知器及び図3の電気回路が設けられる装置の別の例を示す模式図である。
図7】本開示の第2実施形態に係る水素ガス感知器の構成を示した模式図である。
図8図7の水素ガス感知器の作動状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下で言及する各図面における各部位の大きさ及び各部位間の比率は、模式的に表現されており、実際の各部位の大きさ及び各部位間の比率を必ずしも反映していない。なお、各図において共通して付されている符号は、特に説明がない場合でも、同一の対象を指し示すものである。
【0013】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る水素ガス感知器10について図1図5に従って説明する。
【0014】
本実施形態の水素ガス感知器10の構成を図1に示す。水素ガス感知器10は、発熱部20と、変形部30と、スイッチ40とを備えている。
【0015】
図1の水素ガス感知器10は、上方が開放した有底で略筒状のケース11の中に、金属製のバネ42で付勢されて接点41が接触した状態のスイッチ40が収容されている。バネ42の一端はリベット52でケース11の底面に固定され、その先に端子50が突設されている。ケース11の上面は中心にピン51が貫通したリテーナ12で閉塞されている。ピン51の上端はリテーナ12の上面から上方へ突出している。ピン51の下端はバネ42に接触している。上方に突出したリテーナ12の周縁には、中央部が上方に湾曲したバイメタル製の変形部30が掛け渡されている。変形部30の中央部は、ピン51の上端と平面視で同一位置にある。
【0016】
リテーナ12は、変形部30とともにキャップ形状の発熱部20で被覆されている。発熱部20の表面には、水素ガスを常温で触媒燃焼させる常温触媒を含む触媒層21が形成されている。この触媒層21は、雰囲気中に水素ガスが存在すると、触媒燃焼により発熱するため、触媒層21を含めた発熱部20が発熱することになる。
【0017】
触媒層21に含まれる常温触媒は、水素を常温(室温)で燃焼させることが可能なものであり、たとえば、アルミナ担持白金触媒(Pt-Al)等の金属酸化物担持白金触媒を使用することができる。ここで、0.2質量%の白金をアルミナ担体が担持した触媒(0.2%Pt-Al触媒)を用いて、1000ppmの水素を燃焼させた場合に、燃焼開始温度が室温となることが知られている(貞森 博己、「特殊燃焼技術特集 触媒燃焼技術の現状 触媒燃焼バーターを中心として」、燃料協会誌、第58巻第626号、1979年6月発行、422~423頁)。
【0018】
ここで、発熱部20の表面は、前記したように触媒層21に覆われている。この触媒層21は、アルミナ担持白金触媒等の水素を常温で燃焼させる触媒により構成された塗膜である。触媒層21の形成方法としては、粉末状の触媒と蒸留水等とを混合した液状の触媒を発熱部20の表面に塗布して乾燥させる方法を例示できる。
【0019】
発熱部20が発熱すると、その熱は変形部30に伝導し、図2に示すように、変形部30は温度上昇により下方へ湾曲するように形状が変化する。この形状変化に伴い、ピン51が変形部30の中央部により押圧され下方へ移動すると、ピン51の下端がバネ42の付勢力に抗してこれを押圧する。バネ42が押圧され変形することで、接触状態にあったスイッチ40の接点41が互いに離間する。
【0020】
図1の水素ガス感知器10は、図3に示すような、交流電源61及び抵抗器として表した電気機器62を含む電気回路60に電気的に組み込まれている。そして、図1に示すように、平常時にはスイッチ40が閉鎖した状態にある場合には、電気回路60が導電状態にあり、電気機器62は作動している。そして、図2に示すように、発熱部20の発熱に伴いスイッチ40が開放すると、電気回路60は非導電状態となり、電気機器62は停止する。すなわち、図1の水素ガス感知器10は、雰囲気中の水素ガス濃度が上昇すると、触媒層21で水素ガスが触媒燃焼することに伴う温度上昇を感知するサーモスタットとして機能する。なお、スイッチ40の開閉をもたらす変形部30の変形は、雰囲気中の水素ガスの触媒燃焼に伴う発熱部20の発熱に起因するものである。よって、電気回路60の導通状態を変更させるためのスイッチ40の開放には電源は要さない。
【0021】
なお、常温触媒における温度上昇は、図4のグラフに示すように水素濃度と相関がある。よって、検知したい水素濃度で水素ガス感知器10が作動するように、適切な触媒を選択し、また、変形部30の検知温度をあらかじめ調整しておく必要がある。
【0022】
図1に示す水素ガス感知器10は、たとえば、図5の模式図に示すような、水素の存在下での使用には危険を伴う装置70の筐体71に、後付けの安全対策機器として設置することができる。水素ガス感知器10は、この装置70の筐体71に設けられた通風口72を通じて雰囲気中の水素ガスが装置70内へ侵入してくると、図2に示すようにスイッチ40を開放することで装置70の電気的な作動を呈することができる。
【0023】
図1に示す水素ガス感知器10は、たとえば、図6の模式図に示すような、水素を消費する装置70、又は水素を製造する装置70の内部での水素漏れを検知するための組み込み式部品とすることもできる。水素ガス感知器10は、この装置70内の気体流路73から水素漏れがあると、図2に示すようにスイッチ40を開放することで装置70の電気的な作動を停止させることができる。
【0024】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る水素ガス感知器10について図7及び図8に従って説明する。
【0025】
本実施形態の水素ガス感知器10の構成を図7に示す。水素ガス感知器10は、発熱部20と、変形部30と、スイッチ40とを備えている。
【0026】
図7の水素ガス感知器10は、上方が開放した有底で略筒状のケース11の中に、金属製のバネ42が付勢力に抗して湾曲されて接点41が離間した状態のスイッチ40が収容されている。バネ42の一端はリベット52でケース11の底面に固定され、その先に端子50が突設されている。ケース11の上面は中心にピン51が貫通したリテーナ12で閉塞されている。ピン51の上端はリテーナ12の上面から上方へ突出している。ピン51の下端はバネ42の付勢力に抗して押圧している。上方に突出したリテーナ12の周縁には、中央部が下方に湾曲したバイメタル製の変形部30が掛け渡されている。変形部30の中央部は、ピン51の上端と平面視で同一位置にある。
【0027】
発熱部20及び触媒層21については、第1実施形態と同様である。
【0028】
発熱部20が発熱すると、その熱は変形部30に伝導し、図8に示すように、変形部30は温度上昇により上方へ湾曲するように形状が変化する。この形状変化に伴い、ピン51の下端はバネ42の付勢力を受けて上方へ押圧される。これに伴いバネ42への押圧が解かれることでバネ42が自らの付勢力より上方へ移動して、離間状態にあったスイッチ40の接点41が互いに接触する。
【0029】
図7の水素ガス感知器10も、図3に示すような、交流電源61及び抵抗器として表した電気機器62を含む電気回路60に電気的に組み込まれている。そして、図7に示すように、平常時にはスイッチ40が開放した状態にある場合には、電気回路60が非導電状態にあり、電気機器62の作動は停止している。そして、図8に示すように、発熱部20の発熱に伴いスイッチ40が閉鎖すると、電気回路60は導電状態となり、電気機器62は作動する。すなわち、図1の水素ガス感知器10は、雰囲気中の水素ガス濃度が上昇すると、触媒層21で水素ガスが触媒燃焼することに伴う温度上昇を感知するサーモスタットとして機能する。なお、スイッチ40の開閉をもたらす変形部30の変形は、雰囲気中の水素ガスの触媒燃焼に伴う発熱部20の発熱に起因するものである。よって、電気回路60の導通状態を変更させるためのスイッチ40の閉鎖には電源は要さない。このような電気機器62としては、たとえば、雰囲気中の水素ガス濃度上昇を報知する警報器が挙げられる。
【0030】
<その他>
変形部30としては、上記したようなバイメタル式のサーモスタットに限られず、たとえば液体膨張式のサーモスタットを採用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 水素ガス感知器
20 発熱部
21 触媒層
30 変形部
40 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8