(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016532
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ライフジャケット
(51)【国際特許分類】
B63C 9/115 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
B63C9/115
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120906
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】松本 美緒
(72)【発明者】
【氏名】小山 諒
(72)【発明者】
【氏名】森越 康倫
(57)【要約】
【課題】着用者の口元を速やかに浮上させることができるライフジャケットを提供することを課題とする。
【解決手段】第1浮力を発生させる第1浮力材を有する前身頃と、第2浮力を発生させる第2浮力材を有する後身頃と、を備えるライフジャケットであって、前記第1浮力材の浮心が前記前身頃の着丈方向の下端から37~50%に位置しているライフジャケット。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1浮力を発生させる第1浮力材を有する前身頃と、
第2浮力を発生させる第2浮力材を有する後身頃と、を備えるライフジャケットであって、
前記第1浮力材の浮心が、前記前身頃の着丈方向の下端から37~50%に位置している、ライフジャケット。
【請求項2】
前記第2浮力材の浮心が、前記第1浮力材の浮心よりも上方に位置している、請求項1に記載のライフジャケット。
【請求項3】
前記第1浮力材の浮心が、前記前身頃の着丈方向の下端から37~38%に位置し、
前記第2浮力材の浮心が、前記後身頃の着丈方向の下端から50~51%に位置している、請求項1又は2に記載のライフジャケット。
【請求項4】
前記第1浮力が、前記第2浮力よりも大きい、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のライフジャケット。
【請求項5】
前記第1浮力が、前記第1浮力と前記第2浮力との合計浮力に対して57%以上である、請求項4に記載のライフジャケット。
【請求項6】
前記第1浮力が、前記第1浮力と前記第2浮力との合計浮力に対して61%以上である、請求項5に記載のライフジャケット。
【請求項7】
前記第1浮力材が、発泡材料によって構成されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のライフジャケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライフジャケットに関する。
【背景技術】
【0002】
釣りをする際や、船舶を利用する際などに、ライフジャケットの着用が求められことがある。従来から使用されているライフジャケットは、水中で浮力を発生させる浮力材を有する。例えば、特許文献1には、第1浮力を発生させる第1浮力材を有する前身頃と、第2浮力を発生させる第2浮力材を有する後身頃とを備えるライフジャケットが記載されている。かかるライフジャケットは、浮力材を有することによって、落水した着用者を水面に浮上させるように機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、着用者が落水した場合に着用者の呼吸を確保するためには、着用者の口元を速やかに浮上させることが望まれる。例えば、着用者が下を向いた状態で落水した場合には、着用者を仰向けの状態とさせつつ、口元を速やかに浮上させることが望まれる。しかしながら、従来のライフジャケットは、このような機能を十分に備えるとは言い難い。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、着用者の口元を速やかに浮上させることができるライフジャケットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るライフジャケットは、
第1浮力を発生させる第1浮力材を有する前身頃と、第2浮力を発生させる第2浮力材を有する後身頃とを備え、
前記第1浮力材の浮心が、前記前身頃の着丈方向の下端から37~50%に位置している。
【0007】
斯かる構成によれば、第1浮力材の浮心が、前身頃の着丈方向の下端から37~50%に位置していることによって、着用者の口元を速やかに浮上させることができる。
【0008】
また、本発明に係るライフジャケットは、好ましくは、前記第2浮力材の浮心が、前記第1浮力材の浮心よりも上方に位置している。
【0009】
斯かる構成によれば、第2浮力材の浮心が、第1浮力材の浮心よりも上方に位置していることによって、着用者の口元をより速やかに浮上させることができる。
【0010】
また、本発明に係るライフジャケットは、好ましくは、
前記第1浮力材の浮心が、前記前身頃の着丈方向の下端から37~38%に位置し、
前記第2浮力材の浮心が、前記後身頃の着丈方向の下端から50~51%に位置している。
【0011】
斯かる構成によれば、第1浮力材の浮心及び第2浮力材の浮心のそれぞれが上記のように位置していることによって、着用者の口元をさらに速やかに浮上させることができる。
【0012】
また、本発明に係るライフジャケットは、前記第1浮力が、前記第2浮力よりも大きいことが好ましい。
【0013】
斯かる構成によれば、第1浮力が第2浮力よりも大きいことによって、着用者の口元をより一層速やかに浮上させることができる。
【0014】
また、本発明に係るライフジャケットは、前記第1浮力が、前記第1浮力と前記第2浮力との合計浮力に対して、57%以上であることが好ましく、61%以上であることがより好ましい。
【0015】
斯かる構成によれば、第1浮力が前記第1浮力と前記第2浮力との合計浮力に対して57%以上、好ましくは61%以上であることによって、着用者の口元をとりわけ速やかに浮上させることができる。
【0016】
また、本発明に係るライフジャケットは、前記第1浮力材が、発泡材料によって構成されていることが好ましい。
【0017】
斯かる構成によれば、第1浮力材が発泡材料によって構成されていることによって、空気などのガスが充填された浮力材と比較して、所望の浮力が維持され易くなる。また、流動性のある空気などと比較して、浮力材の浮心の位置が安定する。
【発明の効果】
【0018】
以上の通り、本発明によれば、着用者の口元を速やかに浮上させることができるライフジャケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係るライフジャケットを着用した着用者の上半身における正面図である。
【
図2】
図1の着用者の上半身における背面図である。
【
図3】
図1の着用者の上半身における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、一実施形態に係るライフジャケットについて説明する。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係るライフジャケット1は、着用者を正面側から覆う前身頃10と、着用者を背面側から覆う後身頃20とを備えている。本実施形態の前身頃10は、ライフジャケット1の前開き部を形成するように着丈方向に沿って延び且つ前身頃10の幅方向中央部に形成されたファスナ部14を有する。また、
図3に示されるように、本実施形態のライフジャケット1は、着用者の左右両側面に沿って配される一対の側部30を備えている。
【0022】
本実施形態のライフジャケット1は、水中で浮力を発生させる浮力材40を有する。浮力材40は、前身頃10に備えられて着用者の正面側に第1浮力を発生させる第1浮力材41と、後身頃20に備えらえて着用者の背面側に第2浮力を発生させる第2浮力材42と、側部30のそれぞれに備えられて着用者の左右両側面側に浮力を発生させる一対の第3浮力材43とを含む。
【0023】
本実施形態の前身頃10、後身頃20、及び側部30のそれぞれは、着用時に視認される表面をなす表生地と、裏面をなす裏生地とが接合されることによって形成されている。表生地及び裏生地は、これらの間に浮力材40を収容する収容空間Sを形成している。すなわち、前身頃10、後身頃20、及び側部30のそれぞれは、第1浮力材41、第2浮力材42、及び第3浮力材43のそれぞれを収容する収容空間S1、収容空間S2、及び収容空間S3を有する。
【0024】
本実施形態の前身頃10及び後身頃20のそれぞれは、着用者の肩部から腰回りの位置までを覆う長さを有する。なお、本明細書では、前身頃10及び後身頃20の上下方向を着丈方向と称し、着丈方向に直交する方向を幅方向と称する。
【0025】
本実施形態では、前身頃10の上端縁部11と後身頃20の上端縁部21とは、ネックラインを形成しつつつながっている。また、前身頃10の側端縁部12と後身頃20の側端縁部22とは、アームホールを形成しつつ側部30を介してつながっている。また、前身頃10は、幅方向に沿って延びる下端縁部13を有し、同様に、後身頃20は、幅方向に沿って延びる下端縁部23を有する。
【0026】
本実施形態では、前身頃10の下端縁部13と後身頃20の下端縁部23とを重ねたときに、前身頃10の上端縁部11の幅方向中央部は、後身頃20の上端縁部21の幅方向中央部よりも下方に配されている。
【0027】
前身頃10の上端縁部11は、着丈方向において最も上方に位置する上端111を有する。本実施形態では、上端111は、上端縁部11におけるネックラインを形成する部分の端部に位置している。また、前身頃10の下端縁部13は、着丈方向において最も下方に位置する下端131を有する。本実施形態では、下端縁部13の下端が、前身頃10の下端131をなしている。
【0028】
後身頃20の上端縁部21は、着丈方向において最も上方に位置する上端211を有する。本実施形態では、上端211は、上端縁部21におけるネックラインを形成する部分の端部に位置している。また、後身頃20の下端縁部23は、着丈方向において最も下方に位置する下端231を有する。本実施形態では、下端縁部23の下端が、後身頃20の下端231をなしている。
【0029】
前身頃10は、収容空間S1に第1浮力材41を収容している。本実施形態の第1浮力材41は、所定の形状及び大きさを有する複数の板状のブロック材401によって構成されている。これによって、着用者が動き易くなり、例えば、釣りをする際の動作時に前身頃10が邪魔になりにくくなる。
【0030】
具体的には、本実施形態の第1浮力材41は、前身頃10の中央部にファスナ部14を介して配された一対の中央部ブロック材401aと、中央部ブロック材401aに幅方向に隣り合うように配され且つ中央部ブロック材401aと前身頃10の両側端縁部12との間に延在する一対の側部ブロック材401bとを有する。また、第1浮力材41は、一対の中央部ブロック材401aに着丈方向の下方に隣り合うように配され且つ中央部ブロック材401aと前身頃10の下端縁部13との間に延在する一対の下部中央部ブロック材401cと、下部中央部ブロック材401cに幅方向に隣り合うように配され且つ下部中央部ブロック材401cと前身頃10の両側端縁部12との間に延在する一対の下部側部ブロック材401dとを有する。さらに、第1浮力材41は、中央部ブロック材401aのそれぞれに着丈方向の上方に隣り合うように配され且つ中央部ブロック材401aと前身頃10の上端縁部11との間に延在するように配された一対の上部ブロック材401eを有する。上部ブロック材401eは、着丈方向において、側部ブロック材401bとも隣り合っている。
【0031】
一対の中央部ブロック材401a、一対の側部ブロック材401b、一対の下部中央部ブロック材401c、及び一対の下部側部ブロック材401dは、平面視において矩形状に形成されている。一方で、一対の上部ブロック材401eは、平面視において、下方から上方に向かって幅が小さくなるように形成されている。また、中央部ブロック材401aのそれぞれは、幅が、一つの側部ブロック材401bよりも大きくなるように形成されている。下部中央部ブロック材401cのそれぞれは、幅が、一つの下部側部ブロック材401dよりも大きくなるように形成されている。さらに、中央部ブロック材401aのそれぞれは、着丈方向の長さが、下部中央部ブロック材401cよりも長くなるように形成されている。
【0032】
通常、一対の中央部ブロック材401aは、着用者の上半身正面側の中央部に沿うように配されることとなる。また、一対の下部中央部ブロック材401cは、着用者の腹部中央部に沿うように配されることとなる。また、一対の上部ブロック材401eは、着用者の胸部中央部に沿うように配されることとなる。
【0033】
後身頃20は、収容空間S2に第2浮力材42を収容している。本実施形態の第2浮力材42は、所定の形状及び大きさを有する複数の板状のブロック材402によって構成されている。これによって、着用者が動き易くなる。また、落水した着用者を仰向けの状態で支持する際に、着用者を楽な状態で支持することができる。
【0034】
具体的には、本実施形態の第2浮力材42は、後身頃20の中央部に配された中央部ブロック材402aと、中央部ブロック材402aに幅方向に隣り合うように配され且つ中央部ブロック材402aと後身頃20の両側端縁部22との間に延在する一対の側部ブロック材402bとを有する。また、第2浮力材42は、中央部ブロック材402aに着丈方向の下方に隣り合うように配され且つ中央部ブロック材402aと後身頃20の下端縁部23との間に延在する下部ブロック材402cを有する。さらに、第2浮力材42は、中央部ブロック材402aに着丈方向の上方に隣り合うように配され且つ中央部ブロック材402aと後身頃20の上端縁部21との間に延在する上部ブロック材402dを有する。また、下部ブロック材402cは、着丈方向において、各側部ブロック材402bとも隣り合っている。
【0035】
中央部ブロック材402a、下部ブロック材402c、及び上部ブロック材402dは、平面視において矩形状に形成されている。一方で、一対の側部ブロック材402bは、平面視において、後身頃20の側端縁部22から中央部に向かって上端縁が上方傾斜する台形状に形成されており、これによって、下方から上方に向かって幅が小さくなっている。また、下部ブロック材402cは、第2浮力材42を構成するブロック材の中で、最も幅が大きくなるように形成されるとともに、面積が最も大きくなるように形成されている。
【0036】
通常、中央部ブロック材402aは、着用者の上半身背面側の中央部に沿うように配されることとなる。また、下部ブロック材402cは、着用者の腰部中央部に沿うように配されることとなる。また、上部ブロック材402dは、着用者の背中中央部に沿うように配されることとなる。
【0037】
第1浮力材41における隣り合うブロック材401及び第2浮力材42における隣り合うブロック材402のそれぞれは、対向する端縁部どうしが並行するように配置されている。ブロック材401及びブロック材402のそれぞれは、前身頃10及び後身頃20のそれぞれを形成する表生地及び裏生地に挟まれるようにして収容空間S1及び収容空間S2のそれぞれに配されている。本実施形態の前身頃10及び後身頃20のそれぞれは、表生地及び裏生地を接合するステッチを有する。ステッチは、ブロック材401及びブロック材402を個別に収容する区画を形成している。すなわち、本実施形態では、ステッチによって、ブロック材401及びブロック材402を個別に収容するように、収容空間S1及び収容空間S2に区画が形成されている。ステッチは、ブロック材401及びブロック材402のそれぞれの外縁に沿うように形成されている。
【0038】
後身頃20の第2浮力材42の上端(具体的には上部ブロック材402dの上端)は、前身頃10の第1浮力材41の上端(具体的には上部ブロック材401eの上端)よりも、上方に配されている。
【0039】
本実施形態では、第1浮力材41及び第2浮力材42のそれぞれは、前身頃10及び後身頃20それぞれの幅方向中央を基準に左右対称に配されている。
【0040】
前身頃10における第1浮力材41及び後身頃20における第2浮力材42は、水による浮力が作用していないとき(具体的には着用者の非落水時)には、隣り合うブロック材が隙間Dを形成しつつ配されている。これによって、前身頃10及び後身頃20に通気性を持たせることができる。
【0041】
一方で、前身頃10における第1浮力材41及び後身頃20における第2浮力材42は、水による浮力が作用しているとき(具体的には着用者の落水時)には、隣り合うブロック材が表生地又は裏生地を介して互いに接した状態となるように構成されている。これを可能にするために、隙間Dの大きさの最大値は、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。これによって、第1浮力材41の浮心の位置及び第2浮力材42の浮心の位置を前身頃10及び後身頃20における所望の位置に安定化させ得る。
【0042】
前身頃10における各ブロック材401の厚みは、同一であることが好ましい。また、後身頃20における各ブロック材402の厚みは、同一であることが好ましい。なお、ブロック材44の厚みは、ブロック材44の全体にわたって且つ等間隔となるように選択した20箇所の平均厚みを意味するものとする。また、“各ブロック材の厚みが同一”には、ブロック材の平均厚みに対して±10%の範囲内の差が許容されるものとする。
【0043】
ここで、前身頃10において、下端131の位置を0%とし且つ上端縁(ネックライン)の幅方向中央の位置を100%として着丈方向における位置を定め、且つ、後身頃20において、下端231の位置を0%とし且つ上端縁(ネックライン)の幅方向中央の位置を100%として着丈方向における位置を定めることとする。すなわち、
図1及び
図2に示されるように、前身頃10の着丈L1を着丈方向における0%の位置から100%の位置までの長さとし、且つ、後身頃20の着丈L2を着丈方向における0%の位置から100%の位置までの長さとする。
このとき、第1浮力材41の浮心F1が37~50%に位置していることが重要である。また、第1浮力材41の浮心F1が35~50%に位置し、且つ、第2浮力材42の浮心F2が35~55%に位置していることが好ましい。さらに、第1浮力材41の浮心F1が37~38%に位置し、且つ、第2浮力材42の浮心F2が50~51%の位置していることがより好ましい。本実施形態では、
図1に示されるように、第1浮力材41の浮心F1は、着丈方向において中央部ブロック材401a(又は側部ブロック材401b)が延在している領域に位置しており、より具体的には、該領域の着丈方向中央よりも下方に位置している。これによって、落水した着用者の顔面を優先的に水面上に浮上させることができる。なお、前身頃10及び後身頃20のそれぞれの浮心は、着丈方向において上記範囲に位置していればよく、幅方向における位置は特に限定されない。例えば、各浮心の幅方向の位置は、前身頃10及び後身頃20それぞれの中央部にあってもよい。
【0044】
また、本実施形態では、後身頃20の第2浮力材42の浮心F2が、前身頃10の第1浮力材41の浮心よりも上方に位置している。より具体的には、後身頃20の浮心が、前身頃10の浮心よりも10%以上、上方に位置している。本実施形態では、
図2に示されるように、第2浮力材42の浮心F2は、着丈方向において中央部ブロック材402a(又は側部ブロック材402b)が延在している領域に位置しており、より具体的には、該領域の着丈方向中央よりも下方に位置している。これによって、落水した着用者の口元を優先的に水面上に浮上させることができる。
【0045】
ここで、前身頃10における浮心F1の位置、及び、後身頃20における浮心F2の位置は、次の方法(1)又は方法(2)によって定めることができる。
【0046】
ケース1:浮力材が単一のブロック材によって構成される場合
方法(1):該単一のブロック材の体積の中心を浮心の位置とする。
【0047】
ケース2:浮力材が複数のブロック材によって構成される場合
方法(2):
(ステップ21)各ブロック材の浮心の着丈方向下端からの位置c1、c2、c3…(%)をそれぞれのブロック材の体積の中心により定める。
(ステップ22)浮力材が発生させる全体浮力に対する各ブロック材が発生させる浮力の割合p1、p2、p3…(%)を算出する。
(ステップ23)下記計算式により算出される値を浮力材の浮心の位置とする。
[浮心の位置]=c1×p1/100+c2×p2/100+c3×p3/100…
【0048】
本実施形態では、前身頃10における第1浮力材41が発生させる第1浮力は、水中において4.0kgf以上である。好ましい態様としては、第1浮力は4.5kgf以上である。また、後身頃20における第2浮力材42が発生させる第2浮力は、水中において3.0kgfである。また、本実施形態では、第1浮力と第2浮力とを足し合わせた合計浮力は、7.5kgf以上である。好ましい態様としては、第1浮力は、第2浮力以上であることが好ましく、第2浮力よりも大きいことがより好ましく、第1浮力は、第2浮力よりも1kgf以上大きいことが好ましい。より具体的には、第1浮力と第2浮力との合計浮力に対する第1浮力の割合は、50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。なお、各浮力は、淡水に浮力材を沈めたときの値を採用するものとする。
【0049】
浮力材40としては、従来公知のものが使用可能である。本実施形態の浮力材40は、樹脂発泡材料によって構成されている。樹脂発泡材料としては、例えば、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂発泡材料、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂発泡材料等が挙げられる。
【0050】
浮力材40(ブロック材401、402)は、厚みが20~50mmであることが好ましく、35~50mmであることがより好ましい。
【0051】
各側部30は、第3浮力材43を有する。各第3浮力材43は、同一形状に形成され且つ同じ浮力を示す。
【0052】
以上のように、例示として一実施形態を示したが、本発明に係るライフジャケットは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係るライフジャケットは、上記した作用効果により限定されるものでもない。本発明に係るライフジャケットは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態では、前身頃10と後身頃20とを接合するように一対の側部30が備えられているが、これに限定されず、側部30を備えていなくてもよく、前身頃10と後身頃20とが直接的にそれぞれの側端縁部において接合されていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、前身頃10は前開き部を形成するためのファスナ部14を有するが、これに限定されず、本発明のライフジャケットは、前開き部を有さず、着用者が頭部から被るようにして着用するタイプのものであってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、前身頃10及び後身頃20におけるブロック材401及びブロック材402の位置ずれを抑制するために、収容空間S1を及びS2をステッチにより区画する態様を示したが、この他、前身頃及び後身頃のそれぞれは、ブロック材を個別に収容する収納袋(不図示)を有していてもよく、この場合、該収納袋は、前身頃又は後身頃を形成する表生地及び裏生地に接合されていてもよい。また、各ブロック材は、直接、表生地及び裏生地に接合されていてもよい。これによって、各ブロック材が所定の位置からずれにくくなる。
【0056】
また、上記実施形態では、浮力材が発泡材料によって構成されているが、これに限らず、浮力材は、例えば、空気などのガスが充填された気密の袋材によって構成されていてもよい。
【実施例0057】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0058】
[浮力材の配置の評価]
口元にマークを付した樹脂製の人形(身長30cm、311g)を用意した。この人形に、前身頃と後身頃とを備えるベスト型のジャケットを着せた。なお、前身頃及び後身頃は、人形の首元から腰回りまでを覆う長さを有するように形成した。そして、前身頃及び後身頃における浮力材の位置及び浮力について評価するために、下記表1に示すように、ブロック材(縦2cm、横2cm、厚み1.5cm)を前身頃及び後身頃に固定した。具体的には、前身頃及び後身頃のそれぞれの表面にブロック材を固定可能なように、前身頃及び後身頃の表面に縦3つ×横3つの合計9つの区画を形成し、この区画にブロック材を固定した(表1の黒色に塗りつぶした区画が、ブロック材の固定された区画である)。そして、水浴を用い、水平方向に沿う仰向けの状態とした人形を、手で把持しながら水浴の所定の深さに沈め、手を放してから人形の口元のマークが水面から出るまでの時間を計測した。結果は表1に示したとおりである。
【0059】
【0060】
表1の結果をもとに、前身頃及び後身頃における浮力材の位置及び浮力についてさらに評価した。なお、試験例11及び試験例12では、浮力材の合計浮力が、表1の試験例2~9と同じになるように設計した。結果は表2に示したとおりである。
【0061】
【0062】
表1の試験例1の結果を参照すると、口元マークが水面に出るまでの時間が2秒未満であるため、着用者の口元を速やかに浮上させることに優れていることがわかる。
一方で、試験例1よりも浮力材の使用量の少ない試験例2~9の結果を参照すると、後身頃に浮力材を有さない(第2浮力材を有さない)試験例2~4は、口元マークが水面に出るまでの時間が2秒を超えており、試験例1よりも結果が劣っている。また、第1浮力材及び第2浮力材の両方を有し、第1浮力材の浮心が着丈方向の下端から16.7、33.3、又は83.3%に位置する試験例5~9も、口元マークが水面に出るまでの時間が2秒を超えており、試験例1よりも結果が劣っている。
これに対して、表2の試験例11及び試験例2の結果を参照すると、試験例11及び試験例12の方が、試験例1よりも使用した浮力材の量が少ないにも関わらず、試験例1よりも、口元マークが水面に出るまでの時間が短かった。
これらの結果から、第1浮力材の浮心の位置を前身頃の着丈方向の下端から37~50%に設定することによって、着用者の口元を速やかに浮上させ得ることがわかった。
1:ライフジャケット、10:前身頃、11:上端縁部、111:上端、12:側端縁部、13:下端縁部、131:下端、14:ファスナ部、20:後身頃、21:上端縁部、211:上端、22:側端縁部、23:下端縁部、231:下端、30:側部、41:第1浮力材、42:第2浮力材、43:第3浮力材、401、402:ブロック材、401a:中央部ブロック材、401b:側部ブロック材、401c:下部中央部ブロック材、401d:下部側部ブロック材、401e:上部ブロック材、402a:中央部ブロック材、402b:側部ブロック材、402c:下部ブロック材、402d:上部ブロック材、S1、S2、S3:収容空間、D:隙間、L1:前身頃の着丈、L2:後身頃の着丈、F1:第1浮力材の浮心、F2:第2浮力材の浮心