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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165320
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両の下部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
B62D25/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076209
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】棗 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】古賀 俊之
(72)【発明者】
【氏名】中本 晶子
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健人
(72)【発明者】
【氏名】谷本 晃一
(72)【発明者】
【氏名】横木 悠二
(72)【発明者】
【氏名】西元 嘉恵
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB04
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB22
3D203CA25
3D203CA34
3D203CA53
(57)【要約】
【課題】通常走行時におけるクロスメンバの断面変形抑制と、当該断面変形抑制によるフロアパネルの振動抑制と、車両側突時におけるバッテリユニットの保護と、を達成する車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【解決手段】フロアパネル1の車幅方向中央位置において、上方に突出して車両前後方向に延びるフロアトンネル2と、フロアトンネル2の後端で車幅方向に延びる稜線X3,X5を有し、閉断面部21が左右一対のサイドシル5間を連結するクロスメンバ18と、フロアパネル1の下方で、かつ、サイドシル5間に位置し、フロアトンネル2を隔てて車幅方向左右に設けられる左右一対のバッテリユニット31,32と、を備え、クロスメンバ18は、車幅方向において、少なくともバッテリユニット31,32の車幅方向位置を含むと共に車幅方向中央位置を除く範囲の稜線X3,X5を補強する補強部41,42を有することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの車幅方向中央位置において、上方に突出して車両前後方向に延びるフロアトンネルと、上記フロアトンネルの後端で車幅方向に延びる稜線を有し、閉断面部が左右一対のサイドシル間を連結するクロスメンバと、
上記フロアパネルの下方で、かつ、上記サイドシル間に位置し、上記フロアトンネルを隔てて車幅方向左右に設けられる左右一対のバッテリユニットと、を備え、
上記クロスメンバは、車幅方向において、少なくとも上記バッテリユニットの車幅方向位置を含むと共に
車幅方向中央位置を除く範囲の上記稜線を補強する補強部を有することを特徴とする
車両の下部車体構造。
【請求項2】
上記補強部は、上記クロスメンバの上記稜線に沿って設けられる断面L字形状のレインフォースメントである
請求項1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
上記クロスメンバの車幅方向中央位置にはブラケットが設けられ、該ブラケットと上記レインフォースメントとが接合されている
請求項2に記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
上記ブラケットの車幅方向中央位置に脆弱部が形成された
請求項3に記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
上記脆弱部はノッチである
請求項4に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記ブラケットは上記クロスメンバとの間に減衰性能を有する柔結合部を備える
請求項3または4に記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
上記クロスメンバの上記稜線は、上側稜線と下側稜線とを備え、
上記レインフォースメントは上記上側稜線と上記下側稜線とを補強する
請求項2に記載の車両の下部車体構造。
【請求項8】
上記下側稜線を補強する上記レインフォースメントは、燃料タンクを取付けるタンク取付け部を有する
請求項7に記載の車両の下部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の下部車体構造に関し、詳しくは、フロアパネルの車幅方向中央位置において、上方に突出して車両前後方向に延びるフロアトンネルと、上記フロアトンネルの後端で車幅方向に延びる稜線を有し、閉断面部が左右一対のサイドシル間を連結するクロスメンバと、上記フロアパネルの下方で、かつ、上記サイドシル間に位置し、上記フロアトンネルを隔てて車幅方向左右に設けられる左右一対のバッテリユニットと、を備えたような車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラグイン・ハイブリッド車のようにフロアトンネルを隔ててフロアパネル下方いわゆる床下に左右一対のバッテリユニットを搭載する場合、車両側突時において、バッテリユニットが配設されていないトンネル領域を潰すことで、サイドシル側の車体がバッテリユニットと衝突する挙動を抑制させたいという要請がある。
【0003】
特許文献1には、車両側突時にクロスメンバによる側突荷重の荷重伝達向上を図る目的で、稜線を増加する構造が開示されている。
この先行技術文献に開示された構造を、上述の車両の下部車体構造に適用すると、車両側突時にクロスメンバの増加した稜線が突っ張ることで、クロスメンバとサイドシルとの接合部に応力が集中し、フロアトンネルが潰れにくくなり、バッテリユニットが配設されるフロアパネル領域を潰してしまい、サイドシル側の車体がバッテリユニットに衝突したり、左右一対のバッテリユニット同士が衝突するというおそれがあった。
【0004】
この点について図15を参照して以下に説明する。図15はクロスメンバ96の稜線を増加した従来の車両の下部車体構造を示す底面図である。
図15に示すように、サイドシル91の車幅方向内側前部にはフロアフレーム92が設けられており、サイドシル91の車幅方向内側後部にはリヤサイドフレーム93が設けられている。
【0005】
フロアトンネルとしてのトンネル部94の下部には、トンネルサイドメンバ95が設けられている。トンネル部94の後端には車幅方向に延びて左右一対のサイドシル91,91間を連結するクロスメンバ96が設けられている。
【0006】
このクロスメンバ96はクロスメンバアッパ97とクロスメンバロア98とを有して、車幅方向に延びる閉断面部を備えている。クロスメンバアッパ97の車幅方向端部は直接サイドシル91に接合されており、クロスメンバロア98はリヤサイドフレーム93を介してサイドシル91に接合されている。
【0007】
上述のように、クロスメンバ96に稜線を増加すると、車両側突時に、該稜線が突っ張ることで、クロスメンバ96とサイドシル91との接合部99に応力が集中し、ポール等の衝突物からの側突入力が直接バッテリユニット(図示せず)に入り、トンネル部94が潰れにくくなる一方で、フロアパネル100が大きく潰れる。
これにより、サイドシル91側の車体がバッテリユニットと衝突したり、左右一対のバッテリユニット同士が衝突するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-220715号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、通常走行時におけるクロスメンバの断面変形抑制と、当該断面変形抑制によるフロアパネルの振動抑制と、車両側突時におけるバッテリユニットの保護と、を達成することができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、フロアパネルの車幅方向中央位置において、上方に突出して車両前後方向に延びるフロアトンネルと、上記フロアトンネルの後端で車幅方向に延びる稜線を有し、閉断面部が左右一対のサイドシル間を連結するクロスメンバと、上記フロアパネルの下方で、かつ、上記サイドシル間に位置し、上記フロアトンネルを隔てて車幅方向左右に設けられる左右一対のバッテリユニットと、を備え、上記クロスメンバは、車幅方向において、少なくとも上記バッテリユニットの車幅方向位置を含むと共に車幅方向中央位置を除く範囲の上記稜線を補強する補強部を有することを特徴とする車両の下部車体構造である。
【0011】
上述の補強部は、クロスメンバと一体であってもよく、別体であってもよい。
この発明によれば、上記補強部にてクロスメンバの稜線が補強されるので、通常走行時においてクロスメンバの断面変形を抑制することができ、車両剛性の向上を図ることができる。また、車体剛性の向上により、フロアパネルの振動を抑制することができる。
【0012】
さらに、上記補強部が車幅方向中央部を除いてクロスメンバの稜線を補強するので、車両側突時に、フロアトンネルの折曲変形を阻害しない。このため、サイドシルとクロスメンバとの接合部に応力が集中することを抑制し、サイドシル側の車体とバッテリユニットとの衝突を抑制することができる。
また、車両側突時には、左右一対のバッテリユニットの車幅方向内側がフロアトンネルの変形に伴い上方に変位するため、バッテリユニット同士の衝突を抑制することもできる。
【0013】
この発明の態様として、上記補強部は、上記クロスメンバの上記稜線に沿って設けられる断面L字形状のレインフォースメントであってもよい。
この発明によれば、クロスメンバとは別体のレインフォースメントを当該クロスメンバの稜線に沿って設ける簡単な構成により、クロスメンバの稜線を補強し、通常走行時のクロスメンバの断面変形を抑制することができる。
【0014】
この発明の態様として、上記クロスメンバの車幅方向中央位置にはブラケットが設けられ、該ブラケットと上記レインフォースメントとが接合されていてもよい。
この発明によれば、上記ブラケットを設けることで、通常走行時においてクロスメンバの荷重伝達を阻害しない。詳しくは、上記ブラケットが荷重の伝達経路として作用するので、通常走行時のクロスメンバの荷重伝達を阻害しないことになる。
【0015】
この発明の態様として、上記ブラケットの車幅方向中央位置に脆弱部が形成されてもよい。
上述の脆弱部は、ノッチ、板厚を小さくしたもの、熱処理により他部に対して脆弱化したもの、材料強度を変更したもの等を含む。
【0016】
この発明によれば、ブラケットに上記脆弱部を形成したので、車両側突時に脆弱部を起点としてブラケットが変形することで、フロアトンネルの変形を阻害しない。
この発明の態様として、上記脆弱部はノッチであってもよい。
上述のノッチは、凹部、刻み目、切込み等により形成することができる。
この発明によれば、ブラケットに上記ノッチを形成したので、車両側突時にノッチを起点としてブラケットが変形することで、フロアトンネルの変形を阻害しない。
【0017】
この発明の態様として、上記ブラケットは上記クロスメンバとの間に減衰性能を有する柔結合部を備えていてもよい。
上述の減衰性能を有する柔結合部は、ヤング率(縦弾性係数)が高く、歪みエネルギを蓄積して、熱として消散することにより振動減衰を図る振動減衰接着剤であってもよい。
この発明によれば、ブラケットとクロスメンバとの間に上記柔結合部を介設することで、乗り心地を改善することができる。
【0018】
この発明の態様として、上記クロスメンバの上記稜線は、上側稜線と下側稜線とを備え、上記レインフォースメントは上記上側稜線と上記下側稜線とを補強してもよい。
この発明によれば、上記レインフォースメントで上側稜線と下側稜線とを補強するので、クロスメンバの断面変形をより一層抑制することができる。
【0019】
この発明の態様として、上記下側稜線を補強する上記レインフォースメントは、燃料タンクを取付けるタンク取付け部を有していてもよい。
この発明によれば、上記レインフォースメントがタンク取付け部を有するので、別途タンク取付けブラケットを設ける必要がなく、燃料タンクを取付けることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、通常走行時におけるクロスメンバの断面変形抑制と、当該断面変形抑制によるフロアパネルの振動抑制と、車両側突時におけるバッテリユニットの保護と、を達成することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】車両の下部車体構造を示す斜視図。
図2図1の要部を前上方向から見た状態で示す上面斜視図。
図3図2からクロスメンバアッパを取外した状態で示す上面斜視図。
図4】(a)は図2のA-A線に沿う要部の矢視断面図、(b)は図2のB-B線に沿う要部の矢視断面図。
図5】クロスメンバロア、上下のレインフォースメントおよびブラケットの関連構造を、クロスメンバアッパを取外した状態で示す斜視図。
図6図5から上側のレインフォースメントを取外して示す斜視図。
図7】ブラケットの正面図。
図8】バッテリユニットの配置構造を示す底面図。
図9図8のC-C線矢視断面図。
図10】燃料タンクの配置構造を示す底面図。
図11】車両側突時のバッテリユニットの挙動を、車両後方から見た状態で示す説明図。
図12】車両側突時のクロスメンバの挙動を、車両後方から見た状態で示す説明図。
図13】車両側突時の上下のレインフォースメントおよびブラケットの挙動を、車両後方から見た状態で示す説明図。
図14】本実施例の下部車体構造における車両側突時の挙動を示す底面図。
図15】従来の下部車体構造における車両側突時の挙動を示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
通常走行時におけるクロスメンバの断面変形抑制と、当該断面変形抑制によるフロアパネルの振動抑制と、車両側突時におけるバッテリユニットの保護と、を達成するという目的を、フロアパネルの車幅方向中央位置において、上方に突出して車両前後方向に延びるフロアトンネルと、上記フロアトンネルの後端で車幅方向に延びる稜線を有し、閉断面部が左右一対のサイドシル間を連結するクロスメンバと、上記フロアパネルの下方で、かつ、上記サイドシル間に位置し、上記フロアトンネルを隔てて車幅方向左右に設けられる左右一対のバッテリユニットと、を備え、上記クロスメンバは、車幅方向において、少なくとも上記バッテリユニットの車幅方向位置を含むと共に車幅方向中央位置を除く範囲の上記稜線を補強する補強部を有するという構成にて実現した。
【実施例0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の下部車体構造を示し、図1は当該下部車体構造を示す斜視図、図2図1の要部を前上方向から見た状態で示す上面斜視図、図3図2からクロスメンバアッパを取外した状態で示す上面斜視図、図4(a)は図2のA-A線に沿う要部の矢視断面図、図4(b)は図2のB-B線に沿う要部の矢視断面図である。
【0024】
また、図5はクロスメンバロア、上下のレインフォースメントおよびブラケットの関連構造を、クロスメンバアッパを取外した状態で示す斜視図、図6図5から上側のレインフォースメントを取外して示す斜視図である。
【0025】
さらに、図7はブラケットの正面図、図8はバッテリユニットの配置構造を示す底面図、図9図8のC-C線矢視断面図、図10は燃料タンクの配置構造を示す底面図である。
【0026】
但し、図1図9はプラグイン・ハイブリッド車(plug-in hybrid electric vehicle、いわゆるPHEV)の下部車体構造を示し、図10図1図9と同一構造の車両からバッテリユニットを取外し、燃料タンクを取付けた一般的な内燃機関駆動による四輪駆動(いわゆる4WD)車または前部機関後輪駆動(いわゆるFR、フロントエンジン・リヤドライブ)車の下部車体構造を示す。
【0027】
図1図3図8図10に示すように、車室の床面を構成するフロントフロアパネル1を設け、該フロントフロアパネル1の車幅方向中央位置において、上方に突出して車両の前後方向に延びるフロアトンネルとしてのトンネル部2を設けている。
【0028】
図1図3に示すように、車室内に突出したトンネル部2の上側左右のコーナ部上面には、当該トンネル部2に沿って車両の前後方向に延びるトンネルレインフォースメント3,3が設けられている。
一方、図8図10に示すように、トンネル部2の下端部には、トンネルスカート部の下端側とトンネル下端面2aとに沿って車両の前後方向に延びるトンネルサイドメンバ4,4が設けられている。
【0029】
図2図3図8図10に示すように、フロントフロアパネル1の車幅方向の左右両端部には、左右一対のサイドシル5が設けられている。同図に示すように、該サイドシル5は、サイドシルインナ6とサイドシルアウタ7とを接合固定して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面8(図9参照)を備えた車体強度部材である。
【0030】
図1図3に示すように、車両前後方向の中間において、上述のサイドシル5と図示しないルーフサイドレールとを上下方向に連結するセンタピラー9を備えている。該センタピラー9はセンタピラーインナと、センタピラーアウタ10とを有し、車両の上下方向に延びるセンタピラー閉断面を備えているが、図1図3ではセンタピラーアウタ10のみを図示している。
【0031】
図1図3に示すように、左右一対のサイドシル5の後端には、ホイールハウスインナ11とホイールハウスアウタ12とを備えたリヤホイールハウス13が設けられている。
【0032】
同図に示すように、リヤホイールハウス13のホイールハウスインナ11に沿って車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム14を設けている。図9に示すように、上述のリヤサイドフレーム14はリヤサイドフレームアッパ15とリヤサイドフレームロア16とを接合固定して、車両前後方向に延びるリヤサイド閉断面17を形成した車体強度部材である。
【0033】
図1図3図8図10に示すように、上述のリヤサイドフレーム14の前部は、上述のサイドシル5の後部とオーバラップするように設けられている。
【0034】
図1図3に示すように、トンネル部2の後端で車幅方向に延びて左右一対のサイドシル5,5間を連結するクロスメンバ18(いわゆるNo.3クロスメンバ)を設けている。図4に示すように、該クロスメンバ18は、キックアップ部を兼ねるクロスメンバアッパ19と、クロスメンバロア20と、を接合固定して、車幅方向に延びる閉断面部21を備えている。
【0035】
図1図3に示すように、上述のクロスメンバ18の後部から車両後方に延びるリヤフロアパネルとしてのリヤシートパン22を設けている。このリヤシートパン22はクロスメンバ18の後部からリヤホイールハウス13の前後方向中間部と対応する位置まで車両前後方向に延びると共に、当該リヤシートパン22の車幅方向左右両端部は左右のリヤサイドフレーム14に連結されている。
【0036】
図1図3に示すように、上述のリヤシートパン22の後端には車幅方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム14,14間を連結するリヤクロスメンバ23(いわゆるNo.4クロスメンバ)を設けている。また、該リヤクロスメンバ23の後部から車両後方に延びるリヤフロアパネルとしての荷室フロア24を設けている。
【0037】
この荷室フロア24はリヤクロスメンバ23の後部からリヤエンド位置まで車両前後方向に延びると共に、当該荷室フロア24の車幅方向左右両端部は左右のリヤサイドフレーム14に連結されている。
【0038】
一方で、図1図3に示すように、上述のトンネル部2の左側のスカート部と車両左側のサイドシル5におけるサイドシルインナ6との間を車幅方向に延びて連結する左側のフロントクロスメンバ25(いわゆるNo.2.5クロスメンバ)を設け、このフロントクロスメンバ25とフロントフロアパネル1との間には、車幅方向に延びる閉断面26を形成している。
【0039】
同様に、図2図3に示すように、上述のトンネル部2の右側のスカート部と車両右側のサイドシル5におけるサイドシルインナ6との間を車幅方向に延びて連結する右側のフロントクロスメンバ27(いわゆるNo.2.5クロスメンバ)を設け、このフロントクロスメンバ27とフロントフロアパネル1との間には、車幅方向に延びる閉断面28を形成している。
【0040】
図8に示すように、上述のリヤクロスメンバ23の直前部において、当該リヤクロスメンバ23と車両前方に離間した位置には、車幅方向に延びて左右一対のリヤサイドフレーム14間を連結するインタミディエートクロスメンバ29(いわゆるNo.3.5クロスメンバ)を設け、このインタミディエートクロスメンバ29とリヤシートパン22下面との間には車幅方向に延びる閉断面30を形成している。
【0041】
図8図9に示すように、上述のサイドシル5の車幅方向内側に隣接し、フロントフロアパネル1およびリヤシートパン22の下方には、トンネル部2を隔て、かつ、車幅方向に離間して左右のバッテリユニット31,32、すなわち、第1バッテリユニット31と第2バッテリユニット32と、を設けている。
【0042】
上述の第1および第2の各バッテリユニット31,32は、図9に示すように、複数のバッテリモジュール33から成るバッテリ34と、当該バッテリ34の下部を覆う断面凹形状のバッテリトレイ35と、上記バッテリ34の上部を覆う断面逆凹形状のバッテリカバー36と、を備えている。
【0043】
つまり、上述の第1および第2の各バッテリユニット31,32は、バッテリ34がバッテリトレイ35で支持されると共に、当該バッテリ34はバッテリトレイ35とバッテリカバー36とで囲繞されたバッテリ格納空間内に配置されている。
また、上述の各バッテリユニット31,32におけるバッテリトレイ35の底面は空力性能を考慮して平坦に形成されている(図9参照)。
【0044】
図9に示すように、第1バッテリユニット31と第2バッテリユニット32との後部には、車両の電気回路を切換えるリレー部REが固定されている。
図8図10に示すように、バッテリユニット31,32の車幅方向内側位置と対応して、トンネル部2の上部下面と側部の車外側の壁面とに跨がって複数、例えば、合計6つのブラケット37,37…を溶接手段等にて固定している。
【0045】
合計6つのブラケット37のうち、車両前側に位置する左右一対のブラケット37と、車両後側に位置する左右一対のブラケット37とは、バッテリユニット31,32支持用のブラケットであり、車両前後方向中間に位置する左右一対のブラケット37はプロペラシャフト38(図11参照)支持用のブラケットである。
【0046】
第1および第2の各バッテリユニット31,32の車幅方向内側は、上述のブラケット37に取付けられるバッテリユニット吊下げ支持部材にて上述のトンネル部2に支持されている。
【0047】
また、上述の第1および第2の各バッテリユニット31,32の車幅方向外側は、図8図9に示すように、固定部材39と固定ブラケット40とを用いて、リヤサイドフレーム14におけるリヤサイドフレームロア16およびサイドシルインナ6の下面部に固定支持されている。
【0048】
ところで、図2図4に示すように、クロスメンバ18におけるクロスメンバアッパ19は、前部に位置してフロントフロアパネル1およびトンネル部2に接合固定されるフランジ部19aと、フランジ部19aの後端から上方に立上がる縦壁部19bと、縦壁部19bの上端から急角度で後上に延びる急傾斜部19cと、急傾斜部19cの上端から緩角度で後上に延びる緩傾斜部19dと、緩傾斜部19dの後端から後方に延びてリヤシートパン22に接合固定される上面部19eと、を一体形成したものである。
【0049】
そして、上記フランジ部19aと縦壁部19bとの間、縦壁部19bと急傾斜部19cとの間、急傾斜部19cと緩傾斜部19dとの間、緩傾斜部19dと上面部19eとの間には、それぞれ車幅方向に延びる稜線X1,X2,X3,X4が形成されている。
【0050】
また、図4に示すように、クロスメンバ18におけるクロスメンバロア20は、前部に位置してフロントフロアパネル1およびトンネル部2に接合固定される下面部20aと、下面部20aの後端から後上方向に立上がる縦壁部20bと、縦壁部20bの上端から後方に延びてリヤシートパン22に接合固定される上面部20cと、を一体形成したものである。
【0051】
そして、上記下面部20aと縦壁部20bとの間、並びに、縦壁部20bと上面部20cとの間には、それぞれ車幅方向に延びる稜線X5,X6が形成されている。
【0052】
図3図4(b)に示すように、上述のクロスメンバ18は、車幅方向において少なくともバッテリユニット31,32の車幅方向位置を含むと共に、車幅方向中央位置を除く範囲の上記稜線、詳しくは、クロスメンバアッパ19の複数の稜線X1~X4のうちの1つの稜線X3と、クロスメンバロア20の複数の稜線X5,X6のうちの1つの稜線X5を補強する補強部としての左右一対の上部レインフォースメント41および左右一対の下部レインフォースメント42を有している。この実施例では上記上下の各レインフォースメント41,42は、クロスメンバ18と別体に構成されている。
【0053】
詳しくは、図5に示すように、車両左側に位置する上部レインフォースメント41の車幅方向内端と、車両右側に位置する上部レインフォースメント41の車幅方向内端とは、トンネル部2に対応して車幅方向中央位置にて車幅方向に離間している。
【0054】
同様に、図5図6に示すように、車両左側に位置する下部レインフォースメント42の車幅方向内端と、車両右側に位置する下部レインフォースメント42の車幅方向内端とは、トンネル部2に対応して車幅方向中央位置にて車幅方向に離間している。
【0055】
このように、上述の上下の各レインフォースメント41,42にてクロスメンバ18の稜線X3,X5が補強されることで、通常走行時においてクロスメンバ18の断面変形を抑制し、車両剛性の向上を図り、斯る車体剛性の向上により、フロントフロアパネル1の振動を抑制するように構成している。
【0056】
さらに、上述の上下の各レインフォースメント41,42が車幅方向中央部を除いてクロスメンバ18の稜線X3,X5を補強することで、車両側突時に、トンネル部2の折曲変形を阻害しない。このため、サイドシル5とクロスメンバ18との接合部43(図2図3参照)に応力が集中することを抑制し、サイドシル5側の車体とバッテリユニット31,32との衝突を抑制するように構成している。
【0057】
また、車両側突時には、左右一対のバッテリユニット31,32の車幅方向内側がトンネル部2の変形に伴い上方に変位するため、バッテリユニット31,32同士の衝突を抑制するように構成したものである。
【0058】
図4(b)に示すように、上述の補強部はクロスメンバアッパ19の稜線X3とクロスメンバロア20の稜線X5とに沿って設けられる断面L字形状の上部レインフォースメント41および下部レインフォースメント42である。
【0059】
詳しくは、上部レインフォースメント41はクロスメンバアッパ19の急傾斜部19cに沿う前面部41aと、クロスメンバアッパ19の緩傾斜部19dに沿う上面部41bと、これら各面部41a,41b間に位置して車幅方向に延びる稜線X7と、を備えている。
【0060】
そして、上部レインフォースメント41の稜線X7をクロスメンバアッパ19の稜線X3に沿わせて、上部レインフォースメント41とクロスメンバアッパ19とを締結部材による締結、または、溶接手段にて、互いに固定している。
【0061】
また、下部レインフォースメント42は、クロスメンバロア20の下面部20aに沿う下面部42aと、クロスメンバロア20の縦壁部20bに沿う後面部42bと、これら各面部42a,42bに位置して車幅方向に延びる稜線X8と、を備えている。
【0062】
そして、下部レインフォースメント42の稜線X8をクロスメンバロア20の稜線X5に沿わせて、下部レインフォースメント42とクロスメンバロア20とを締結部材による締結、または、溶接手段にて、互いに固定している。
【0063】
これにより、クロスメンバ18とは別体のレインフォースメント41,42を当該クロスメンバ18の稜線X3,X5に沿って設ける簡単な構成により、クロスメンバ18の稜線X3,X5を補強し、通常走行時のクロスメンバ18の断面変形を抑制するように構成している。
【0064】
図5図6に示すように、クロスメンバ18の車幅方向中央位置にはブラケット50が設けられており、該ブラケット50と下部レインフォースメント42とが接合されている。
【0065】
図5図6図7に示すように、上述のブラケット50は、前側中央部51と、前側中央部51の左右に段差部52を介して連続形成された左右の前面部53と、左右の前面部53の車幅方向外端から後方に延びる左右の側面部54と、左右の側面部54の後端から車幅方向外側に延びる後部接合片55と、左右の側面部54に脚部56を介して車幅方向外側に延びる下部接合片57と、を備えている。
【0066】
また、上述のブラケット50は、上側中央部58と、上側中央部58の左右に段差部59を介して連続形成された左右の上面部60と、左右の上面部60の車幅方向外側から下方に延びる折曲げ片61と、を備えている。この実施例では、図7に示すように、上記ブラケット50は左右対称に形成されている。
【0067】
そして、上述の後部接合片55がスポット溶接等の手段により下部レインフォースメント42の後面部42bに接合されると共に、下部接合片57がスポット溶接等の手段により下部レインフォースメント42の下面部42aに接合され、これにより、ブラケット50と下部レインフォースメント42とが接合固定されたものである。
【0068】
上記ブラケット50を設けることで、通常走行時においてクロスメンバ18の荷重伝達を阻害しない。詳しくは、上記ブラケット50が側突荷重の伝達経路として作用することで、通常走行時のクロスメンバ18の荷重伝達を阻害しないように構成している。
【0069】
図5図6図7に示すように、上述のブラケット50の車幅方向中央位置には、ノッチ62,63が形成されている。すなわち、ブラケット50の上側中央部58には、脆弱部として車両後方側が開放するノッチ62が形成されており、ブラケット50の前側中央部51の下部には、脆弱部として車両下方側が開放するノッチ63が形成されている。
【0070】
図面では上記ノッチ62,63としてU字ノッチを例示したが、これはV字ノッチでもよく切り込み部でもよい。
このように、上述のブラケット50に脆弱部としての上記ノッチ62,63を形成することで、車両側突時にノッチ62,63を起点としてブラケット50が変形し、これにより、トンネル部2の変形を阻害しないように構成している。
【0071】
図4図5図6図7に示すように、上述のブラケット50はクロスメンバ18との間に減衰性能を有する柔結合部64を備えている。
【0072】
この実施例においては、上述の減衰性能を有する柔結合部64として、ヤング率(縦弾性係数)が高く、歪みエネルギを蓄積して、熱として消散することにより振動減衰を図る減衰接着剤を用いている。
【0073】
図4図7に示すように、上述の柔結合部64はブラケット50における上面部60上部に設けられており、上部レインフォースメント41を介してクロスメンバアッパ19の緩傾斜部19dに当接している。
【0074】
このように、上述のブラケット50とクロスメンバ18のクロスメンバアッパ19との間に上記柔結合部64を介設することにより、乗り心地を改善すべく構成している。
【0075】
図4に示すように、上述のクロスメンバアッパ19の複数の稜線X1~X4のうち特定の稜線X3は、上側稜線であり、クロスメンバロア20の複数の稜線X5,X6のうち特定の稜線X5は下側稜線である。
【0076】
すなわち、クロスメンバ18は上側稜線X3と下側稜線X5とを備えている。そして、上述の上下のレインフォースメント41,42は上側稜線X3と下側稜線X5とを補強している。詳しくは、上部レインフォースメント41は上側稜線X3を補強し、下部レインフォースメント42は下側稜線X5を補強している。
【0077】
このように、上下の各レインフォースメント41,42で上側稜線X3と下側稜線X5とを補強することで、クロスメンバ18の断面変形をより一層抑制するように構成している。
【0078】
図3図10に示すように、上述の下側稜線X5を補強する下部レインフォースメント42は、燃料タンク70を取付ける左右一対のタンク取付け部45を有している。
【0079】
図8に示すプラグイン・ハイブリッド車の下部車体構造からバッテリユニット31,32を取外して、同一車体構造のものを、一般的な内燃機関駆動による四輪駆動車または前部機関後輪駆動車の下部車体構造に適用する場合には、燃料タンク70が必要となる。
【0080】
この場合、図10に示すように、リヤシートパン22の下方に燃料タンク70を配設する。燃料タンク70は車幅方向に離間して左右一対のタンクバンド71,71を備えており、タンクバンド71の前端部は、締結部材72を用いてクロスメンバ18におけるクロスメンバロア20に締結され、タンクバンド71の後端部は、締結部材73を用いてリヤクロスメンバ23に締結され、これにより、燃料タンク70がリヤシートパン22の下方に配置される。
【0081】
図10に示すタンクバンド71前端部をクロスメンバロア20に締結する締結部材72は、図3に示す下部レインフォースメント42に設けられたタンク取付け部45に締結固定される。
【0082】
このように、上述の下部レインフォースメント42がタンク取付け部45を有するので、別途タンク取付けブラケットを設ける必要がなく、燃料タンク70を取付けることができるように構成したものである。
【0083】
次に、図11図14を参照して車両側突時の挙動について説明する。
図11は車両側突時のバッテリユニットの挙動を、車両後方から見た状態で示す説明図、図12は車両側突時のクロスメンバの挙動を、車両後方から見た状態で示す説明図、図13は車両側突時の上下のレインフォースメントおよびブラケットの挙動を、車両後方から見た状態で示す説明図、図14は車両側突時の挙動を示す底面図である。なお、図13においては、クロスメンバロア20を取外した状態で示している。
【0084】
但し、これらの各図11図14は、車両左側からの側突荷重入力時点から同一時間経過後における各部の変形挙動を示すものである。
【0085】
図13に示すように、クロスメンバ18の車幅方向中央位置に設けられたブラケット50には車幅方向中央位置にノッチ62,63が形成されているので、車両側突時に当該ノッチ62,63を起点としてブラケット50が変形する。
【0086】
また、上下のレインフォースメント41,42は車幅方向中央部を除いてクロスメンバ18の稜線X3,X5を補強しているので、車両側突時には、トンネル部2の折曲変形を阻害しない。これにより、該トンネル部2は、図13に示すように、車幅方向中央部が車両上方に挙動するように折曲変形する。
【0087】
このため、サイドシル5とクロスメンバ18との接合部43に応力が集中することを抑制し、サイドシル5側の車体とバッテリユニット31との衝突を抑制することができる。
【0088】
上述のクロスメンバ18およびリヤシートパン22は図12図13に示すように、車幅方向中央部が上方へ変位するように変形する。また、左右一対のバッテリユニット31,32は当該バッテリユニット31,32の車幅方向内側上部がトンネル部2の潰れ変形に伴って、図11に示すように、上方かつ車幅方向外側に変形することで、バッテリユニット31,32同士の衝突を抑制することができる。
【0089】
さらに、上述のトンネル部2の潰れ変形によりフロントフロアパネル1は、図15で示した従来構造と比較して、その潰れ量が小さくなる(図14参照)。
【0090】
なお、以上の説明においては、車幅方向左側外方からの側突荷重入力に対する各部の挙動について説明したが、この実施例においては、車幅方向右側外方からの側突荷重入力時においても、各部は上述同様に変形挙動する。
【0091】
図11において、74は排気管である。また、図13図14において、75はサイドシルインナ6の車幅方向内側とフロントフロアパネル1との間に設けられた床下フロアフレームである。
【0092】
さらに、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印LEは車幅方向左側外方を示し、矢印RIは車幅方向右側外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0093】
以上のように、本実施例に係る車両の下部車体構造は、フロアパネル(フロントフロアパネル1)の車幅方向中央位置において、上方に突出して車両前後方向に延びるフロアトンネル(トンネル部2)と、上記フロアトンネル(トンネル部2)の後端で車幅方向に延びる稜線X3,X5を有し、閉断面部21が左右一対のサイドシル5間を連結するクロスメンバ18と、上記フロアパネル(フロントフロアパネル1)の下方で、かつ、上記サイドシル5間に位置し、上記フロアトンネル(トンネル部2)を隔てて車幅方向左右に設けられる左右一対のバッテリユニット31,32と、を備え、上記クロスメンバ18は、車幅方向において、少なくとも上記バッテリユニット31,32の車幅方向位置を含むと共に車幅方向中央位置を除く範囲の上記稜線X3,X5を補強する補強部(レインフォースメント41,42)を有することを特徴としている(図1図3図4図8図9参照)。
【0094】
このような車両の下部車体構造によれば、上記補強部(レインフォースメント41,42)にてクロスメンバ18の稜線X3,X5が補強されるので、通常走行時においてクロスメンバ18の断面変形を抑制することができ、車両剛性の向上を図ることができる。また、車体剛性の向上により、フロアパネル(フロントフロアパネル1)の振動を抑制することができる。
【0095】
さらに、上記補強部(レインフォースメント41,42)が車幅方向中央部を除いてクロスメンバ18の稜線X3,X5を補強するので、車両側突時に、フロアトンネル(トンネル部2)の折曲変形を阻害しない。このため、サイドシル5とクロスメンバ18との接合部43に応力が集中することを抑制し、サイドシル5側の車体とバッテリユニット31,32との衝突を抑制することができる。
【0096】
また、車両側突時には、左右一対のバッテリユニット31,32の車幅方向内側がフロアトンネル(トンネル部2)の変形に伴い上方に変位するため、バッテリユニット31,32同士の衝突を抑制することもできる。
【0097】
また、かかる車両の下部車体構造においては、上記補強部は、上記クロスメンバ18の上記稜線X3,X5に沿って設けられる断面L字形状のレインフォースメント41,42である(図3図4参照)。
【0098】
このような車両の下部車体構造によれば、クロスメンバ18とは別体のレインフォースメント41,42を当該クロスメンバ18の稜線X3,X5に沿って設ける簡単な構成により、クロスメンバ18の稜線X3,X5を補強し、通常走行時のクロスメンバ18の断面変形を抑制することができる。
【0099】
さらに、かかる車両の下部車体構造においては、上記クロスメンバ18の車幅方向中央位置にはブラケット50が設けられ、該ブラケット50と上記レインフォースメント41,42とが接合されている(図5図7参照)。
【0100】
このような車両の下部車体構造によれば、上記ブラケット50を設けることで、通常走行時においてクロスメンバ18の荷重伝達を阻害しない。詳しくは、上記ブラケット50が荷重の伝達経路として作用するので、通常走行時のクロスメンバ18の荷重伝達を阻害しないことになる。
【0101】
さらにまた、かかる車両の下部車体構造においては、上記ブラケット50の車幅方向中央位置に脆弱部(ノッチ62,63参照)が形成されている(図5図7参照)。
このような車両の下部車体構造によれば、ブラケット50に脆弱部(ノッチ62,63参照)を形成したので、車両側突時に脆弱部(ノッチ62,63参照)を起点としてブラケット50が変形することで、フロアトンネル(トンネル部2)の変形を阻害しない。
【0102】
また、かかる車両の下部車体構造においては、上記脆弱部はノッチ62,63であることを特徴とする。
このような車両の下部車体構造によれば、ブラケット50にノッチ62,63を形成したので、車両側突時にノッチ62,63を起点としてブラケット50が変形することで、フロアトンネル(トンネル部2)の変形を阻害しない。
【0103】
加えて、かかる車両の下部車体構造においては、上記ブラケット50は上記クロスメンバ18との間に減衰性能を有する柔結合部64を備えている(図5図7参照)。
このような車両の下部車体構造によれば、ブラケット50とクロスメンバ18との間に上記柔結合部64を介設することで、乗り心地を改善することができる。
【0104】
また、かかる車両の下部車体構造においては、上記クロスメンバ18の上記稜線X3,X5は、上側稜線X3と下側稜線X5とを備え、上記レインフォースメント41,42は上記上側稜線X3と上記下側稜線X5とを補強する(図4参照)。
このような車両の下部車体構造によれば、上記レインフォースメント41,42で上側稜線X3と下側稜線X5とを補強するので、クロスメンバ18の断面変形をより一層抑制することができる。
【0105】
さらに、かかる車両の下部車体構造においては、上記下側稜線X5を補強する上記レインフォースメント42は、燃料タンク70を取付けるタンク取付け部45を有する(図3図10参照)。
【0106】
このような車両の下部車体構造によれば、上記レインフォースメント42がタンク取付け部45を有するので、別途タンク取付けブラケットを設ける必要がなく、燃料タンク70を取付けることができる。
【0107】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロアパネルは、実施例のフロントフロアパネル1に対応し、
以下同様に、
フロアトンネルは、トンネル部2に対応し、
サイドシルは、サイドシル5に対応し、
クロスメンバは、クロスメンバ18に対応し、
閉断面部は、閉断面部21に対応し、
バッテリユニットは、第1バッテリユニット31、第2バッテリユニット32に対応し、
補強部は、上部レインフォースメント41、下部レインフォースメント42に対応し、
タンク取付け部は、タンク取付け部45に対応し、
ブラケットは、ブラケット50に対応し、
脆弱部は、ノッチ62,63に対応し、
柔結合部は、柔結合部64に対応し、
燃料タンクは、燃料タンク70に対応し、
稜線は、上側稜線X3、下側稜線X5に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上説明したように、本発明は、フロアパネルの車幅方向中央位置において、上方に突出して車両前後方向に延びるフロアトンネルと、上記フロアトンネルの後端で車幅方向に延びる稜線を有し、閉断面部が左右一対のサイドシル間を連結するクロスメンバと、上記フロアパネルの下方で、かつ、上記サイドシル間に位置し、上記フロアトンネルを隔てて車幅方向左右に設けられる左右一対のバッテリユニットと、を備えた車両の下部車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0109】
1…フロントフロアパネル(フロアパネル)
2…トンネル部(フロアトンネル)
5…サイドシル
18…クロスメンバ
21…閉断面部
31…第1バッテリユニット(バッテリユニット)
32…第2バッテリユニット(バッテリユニット)
41…上部レインフォースメント(補強部)
42…下部レインフォースメント(補強部)
45…タンク取付け部
50…ブラケット
62,63…ノッチ(脆弱部)
64…柔結合部
70…燃料タンク
X3…上側稜線(稜線)
X5…下側稜線(稜線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15