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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165329
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20231108BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076228
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】冨永 隆一朗
(72)【発明者】
【氏名】國森 敬介
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070CB02
5E070CB12
(57)【要約】
【課題】回路パターンを含むコイル部品において、回路パターンの、厚み及び又は表面形状を含む構造の一様性を向上する。
【解決手段】コイル部品1は、主面を有する絶縁層11と、絶縁層に埋設され、上記主面に沿って延在する回路パターン12と、を備え、回路パターンは、当該回路パターン内で上記主面に沿って延在するシードパターン13を含み、回路パターンの延在方向に直交する断面には、回路パターン内のシードパターンの数が2以上である部分が存在する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する絶縁層と、
前記絶縁層に埋設され、前記主面に沿って延在する回路パターンと、を備え、
前記回路パターンは、前記回路パターン内で前記主面に沿って延在するシードパターンを含み、
前記回路パターンの延在方向に直交する断面には、前記回路パターン内の前記シードパターンの数が2以上である部分が存在する、
コイル部品。
【請求項2】
前記断面において、前記絶縁層は、前記シードパターンの配列方向に沿って前記回路パターンを挟む2つの絶縁壁を有し、前記絶縁壁の一方について、当該絶縁壁から、当該絶縁壁に最も近い前記シードパターンまでの距離W1と、前記シードパターンどうしの間隔W2とが、W1×2<W2の関係を有する、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記回路パターンは、前記主面に直交する方向に2つ以上並ぶ、
請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記シードパターンは、前記回路パターン内でリング状となる部分を有する、
請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記シードパターンは、前記回路パターン内でX字状となる部分を有する、
請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記シードパターンは、前記回路パターン内で、前記回路パターンに沿って並走する2つ以上の部分を有する、
請求項1または2に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、めっき配線により形成されたスパイラル状の回路パターンを含む配線層を、磁性粉を含む樹脂に埋め込んで構成されるコイル部品が知られている(特許文献1)。このコイル部品の配線層では、絶縁層上に形成された複数の絶縁体の壁のそれぞれの間において1本のシードパターンからのめっき成長によりスパイラル状の回路パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-225463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のコイル部品の配線層では、隣接する絶縁体の壁の間には一定の幅を有するシードパターンが1本のみ形成されているため、隣接する絶縁体の壁の間隔が異なる2つの部分、すなわち、これらの絶縁体の壁の間でめっき形成される回路パターンの幅が異なる2つの部分において、当該回路パターンの厚みがばらつくこととなる。また、同様の理由から、回路パターンの両端部に他の配線層に繋がるビア導体との接続のための幅広のパッド部分を形成する場合には、パッド部分の厚みは、パッド部分の幅の広さに応じて回路パターンの他の部分の厚みよりも薄くなる。このような回路パターンの厚みが薄い部分には、配線層の上面を平坦化するために、回路パターンを覆う絶縁材料が他の部分に比べてより多く充填されることとなるため、コイル部品全体における樹脂の占める割合は大きくなり、実現し得るインダクタンスの上限値が制限されることとなり得る。
【0005】
図12は、関連技術としての、めっき形成される回路パターンの、幅に応じた厚み変化の一例を示す図である。図12は、回路パターンの延在方向に直交する面に沿った断面である。図12において、基板40上には、3つの回路パターン41a、41b、41cが形成されている。これらの回路パターン41a、41b、41cは、図示上方から視た平面視においてスパイラル状に形成された1本の回路パターン41の一部である。
【0006】
基板40上には、4つの絶縁体の壁42a、42b、42c、42dが形成されており、これらの壁42a、42b、42c、42dにより仕切られた3つの空間の、基板40の表面上には、一定幅のシードパターン43が、それぞれ一つずつ形成されている。これらのシードパターン43は、上記スパイラル状の回路パターン41に沿って形成された1本のシードパターンの一部である。
【0007】
図12では、4つの絶縁体の壁42a、42b、42c、42dが区画する3つの空間の幅はそれぞれ異なり、図示右側から左に向かってそれらの空間の幅が広くなっている。これにより、これらの空間においてシードパターン43から同時にめっき成長される回路パターンの厚みは、最も幅が狭い図示右側の空間における回路パターン41cが最も厚く、図示左側の空間における回路パターン41aが最も薄くなる。
【0008】
また、最も幅広に形成されて最も厚みが薄くなる回路パターン41aの部分においては、その幅に依存して、めっき成長された回路パターン41aの上面の表面形状が平坦ではなく、上に凸な曲線を呈することとなる。これにより、例えば、その上部に更に他の回路パターンを形成する場合には、当該他の回路パターンにおいて平坦な上面(例えば、平坦な外部電極面)を得ることが困難ともなり得る。
【0009】
本発明の目的は、回路パターンを含むコイル部品において、回路パターンの、厚み及び又は表面形状を含む構造の一様性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の態様は、主面を有する絶縁層と、前記絶縁層に埋設され、前記主面に沿って延在する回路パターンと、を備え、前記回路パターンは、前記回路パターン内で前記主面に沿って延在するシードパターンを含み、前記回路パターンの延在方向に直交する断面には、前記回路パターン内の前記シードパターンの数が2以上である部分が存在する、コイル部品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回路パターンを含むコイル部品において、回路パターンの、厚み及び又は表面形状を含む構造の一様性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係るコイル部品の内部構造を示す模式図である。
図2図1のA部における回路パターンの詳細図である。
図3図2に示す回路パターンのシードパターンの平面図である。
図4図1に示すコイル部品の製造工程を示す図である。
図5図1に示すコイル部品の、図4に続く製造工程を示す図である。
図6図1に示すコイル部品の、図5に続く製造工程を示す図である。
図7】第1の変形例に係る回路パターンの構成を示す図である。
図8】第2の変形例に係る回路パターンの構成を示す図である。
図9】第3の変形例に係る回路パターンの構成を示す図である。
図10】第4の変形例に係る回路パターンの構成を示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係るコイル部品の内部構造を示す模式図である。
図12】本発明の関連技術に係る配線層について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は、一部に模式図を含む場合がある。また、模式図における寸法や比率は実際の数値と異なる場合がある。
【0014】
[第1実施形態]
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るコイル部品1の内部構造を示す模式図である。
コイル部品1は、絶縁層11と、絶縁層11に埋設されたスパイラル状の回路パターン12と、を備える。なお、絶縁層11と回路パターン12はリング状の1層の配線層10を構成する。ここで、図1は、回路パターン12の延在方向に直交する面に沿った断面を示している。以下、回路パターン12の延在方向に直交する面に沿った断面を、回路パターン12の幅方向断面という。
【0015】
絶縁層11は、絶縁性材料を主材とし、例えば絶縁性樹脂である。なお、絶縁性材料は、酸化ケイ素(SiO)や酸化アルミニウム(Al)を主材とするフィラー材を含んでいてもよい。
配線層10は、磁性粉を含む樹脂である素体2に埋設されている。素体2の主面方向と絶縁層11の主面方向とは略平行である。
【0016】
回路パターン12は、絶縁層11の主面方向に沿ってスパイラル状に形成された一本の導体であって、コイル部を形成している。絶縁層11は、主面方向に延在して回路パターン12の下面を覆う下蓋層11aと、主面方向において回路パターン12のそれぞれを挟む複数の絶縁壁11bと、下蓋層11aに対向する方向から絶縁壁11bおよび回路パターン12を覆う上蓋層11cと、を有する。
【0017】
回路パターン12の一部であるパッド部分12aは、引き出し配線14に接続されている。引き出し配線14は、素体2の一の主面の表面まで延在し、当該表面から露出した引き出し配線14の端面が、外部電極15となる。外部電極15が設けられた素体2の主面を、電極面2aと称する。引き出し配線14に接続された回路パターン12のパッド部分12aの幅は、回路パターン12の他の回路部分12bの幅よりも広い。
【0018】
また、絶縁層11の主面は、その面内に凹凸を含んでもよい。また、配線層10の主面は、主面法線方向を含む断面の断面視において歪みを含んでもよい。
【0019】
図2は、図1に示すA部における配線層10の回路パターン12の部分詳細図である。なお、図2においては、素体2、上蓋層11cおよび引き出し配線14の図示を省略している。
回路パターン12は、絶縁層11の主面に沿った一の面である下蓋層11a上面において回路パターン12に沿って延在するシードパターン13を含む。回路パターン12は、例えば、SAP(Semi Additive Process;セミアディティブ工法)を用いて形成され、シードパターン13は、SAPのめっき成長の際に用いられる給電電極である。シードパターン13を除いた回路パターン12の材料は、例えば、銅であり、シードパターン13の材料は、例えば、銅やチタン、クロム、これらの合金などである。
【0020】
本実施形態では、特に、回路パターン12の延在方向に沿った回路パターン12の少なくとも一の部分において、回路パターン12の幅方向断面で視たシードパターン13の数が2以上である。これにより、シードパターン13の数が2以上である上記断面を含む回路パターン12の部分では、それぞれのシードパターン13からめっき成長が進むので、シードパターン13の数が増えるに従い、回路パターン12の当該部分における表面の平坦性がより向上する。また、絶縁壁11bの間隔に応じて、シードパターン13の数や、それぞれのシードパターン13の幅を調整することで、回路パターン12の当該部分における厚みを調整して、延在方向に沿った回路パターン12の厚みの一様性も向上することができる。ここで、回路パターン12の表面とは、回路パターン12における、シードパターン13が形成されている側の面に対向する面をいう。
【0021】
具体的には、コイル部品1では、図2において、回路パターン12の幅方向断面で視たシードパターン13の数は、回路パターン12の回路部分12bにおいては1であり、回路部分12bよりも幅広のパッド部分12aにおいては2である。
【0022】
図3は、回路パターン12が含むシードパターン13を素体2の電極面2aの側から視た平面図である。なお、図2に示すA部詳細図は、図3におけるBB断面図に相当する。
【0023】
図3において図示一点鎖線で示す回路パターン12のパッド部分12aが形成される領域は、平面視が円形に形成されており、シードパターン13は、パッド部分12aにおいて、当該パッド部分12aと同心円のリング状のリングパターン13aにより終端されている。なお、図2および図3において、シードパターン13は、リングパターン13aも含めて一定の幅Wを有する。
【0024】
上記の構成を有するコイル部品1では、回路パターン12の幅方向断面における回路パターン12の数が、回路部分12bにおいて1であるのに対し、これより幅広のパッド部分12aにおいては2であることから、幅広のパッド部分12aにおける回路パターン12の表面形状の平坦性(厚みの均一性)の崩れおよび回路部分12bと比較した厚みの減少を抑制することができる。その結果、コイル部品1では、回路パターン12と引き出し配線14との接続信頼性を向上し、および上蓋層11cの厚みが厚くなるのを防止してインダクタンス値及び又は直流抵抗値などの電気的特性の製造安定性を向上することができる。
【0025】
なお、図2に示すように、回路パターン12の表面における平坦性を向上する観点からは、回路パターン12の幅方向断面において、2以上のシードパターン13は、これらシードパターン13の配列方向に沿って回路パターン12を挟む2つの絶縁壁11bの一方又は双方について、絶縁壁11bから、絶縁壁11bに最も近いシードパターン13までの距離W1と、シードパターン13どうしの間隔W2とが、次の式(1)の関係を有することが好ましい。
W1×2<W2 (1)
なお、式(1)が示す好ましい関係は、平面視が円形に形成されたパッド部分12aに限らず、一方向に延在する回路部分12bにおいても、シードパターン13が2つ以上存在する場合には同様に適用され得る。なお、式(1)はW1=0である場合も含む。
【0026】
コイル部品1は、以下のように作製され得る。
図4図5、および図6は、コイル部品1の製造工程を示す図である。
図4において、まず、基板3を準備する(S100)。基板3は、例えば、平坦なセラミック板である。次に、基板3の上に、ポリイミドなどの感光性の絶縁性樹脂を塗布した後にフォトリソグラフィによりパターンニングして絶縁層11の下蓋層11aを形成し(S102)、その上に、シード層5を形成する(S104)。シード層5は、SAPを用いためっき成長を行うための銅から成る給電電極であり、スパッタまたは無電解めっきを用いて形成され得る。なお、シード層5は、銅からなる層の下層に、下蓋層11aとの密着性に優れたチタン及びクロムを含む合金層を形成した積層構造であってもよい。
【0027】
次に、フォトリソグラフィによりシード層5をパターンニングして、シードパターン13を形成する(S106)。シードパターン13は、後の工程において回路パターン12がめっき成長される部分であり、目標とする回路パターン12と同様なパターンを描くように、下蓋層11a上に形成される。本実施形態では、上記パターンは、回路パターン12をコイル部とするためのスパイラル状のパターンである。
【0028】
次に、下蓋層11a上において、シードパターン13を挟む位置に絶縁壁11bを形成する(S108)。具体的には、下蓋層11aおよびシードパターン13を覆うように絶縁性樹脂4を厚く形成したのち、これをパターンニングして絶縁壁11bとする。絶縁壁11bの間隔は、後の工程おいてそれらの絶縁壁11bの間の開口部分又は間隙部分に形成される回路パターン12の幅を規定する。
【0029】
続いて、隣り合う絶縁壁11bの間の開口部に沿って、シードパターン13を用いて電解めっきにより銅をめっき成長させ、回路パターン12を形成する(S110)。本実施形態では、基板3上の図示左右において、それぞれ、左から、回路パターン12のパッド部分12aと2つの回路部分12bが形成される。
【0030】
本実施形態では、特に、隣接する絶縁壁11bの間の下蓋層11a上において、それらの絶縁壁11bの間隔に応じた数及び又は幅のシードパターン13が形成されるように、予めシードパターン13および絶縁壁11bのパターン設計が行われる。このため、ステップS110においてめっき成長される回路パターン12のパッド部分12aは、その上部表面が平坦に形成され、かつ、パッド部分12aおよび回路部分12bは、それらの幅が異なっても、同じ厚みで形成され得る。
【0031】
図5を参照し、次に、絶縁壁11bおよび回路パターン12(詳細には、パッド部分12aおよび2つの回路部分12b)を覆うように上蓋層11cを形成する(S112)。具体的には、絶縁壁11bおよび回路パターン12を覆うように絶縁性樹脂4を形成した後、これをフォトリソグラフィによりパターンニングして不要部分を除去し、上蓋層11cとする。このとき、上蓋層11cのうちパッド部分12aの上部の部分に開口が形成されるように、上記パターンニングが行われる。これにより、下蓋層11a、絶縁壁11b、および上蓋層11cで構成される絶縁層11に、パッド部分12aおよび回路部分12bを含む回路パターン12が埋設された配線層10が、基板3上に形成される。
【0032】
次に、上蓋層11cの上部にレジスト6を塗布し、フォトリソグラフィによりパッド部分12aの上部に開口部を設ける(S114)。続いて、パッド部分12aの上部に銅をめっき成長させて引き出し配線14を形成したのち、レジスト6を除去する(S116)。その後、基板3上に形成された配線層10および引き出し配線14の全体を覆うように、素体2の図示上半分を構成する上部磁性層7を形成する(S118)。
【0033】
図6を参照し、次に、上部磁性層7の外面を研削することにより、引き出し配線14の上面を上部磁性層7から露出させて外部電極15とする(S120)。続いて、基板3を剥離したのち(S122)、上部磁性層7の図示下側に、素体2の下半分を構成する下部磁性層8を形成する(S124)。これにより、上部磁性層7および下部磁性層8を含む素体2の内部に、配線層10および引き出し配線14が埋設されて、コイル部品1が完成する。なお、下部磁性層8の形成後において、素体2は、面取り加工や表面処理が施されてもよい。
【0034】
次に、コイル部品1における回路パターン12のいくつかの変形例について説明する。以下に示す変形例に係る回路パターンは、回路パターン12に代えてコイル部品1に用いることができる。また、これらの変形例に係る回路パターンを備えるコイル部品1は、図4図5、および図6に示す回路パターン12を備えたコイル部品1の作製方法と同様の作製方法を用いて作製することができる。
【0035】
[第1変形例]
図7は、回路パターン12の第1の変形例に係る回路パターン12-1の構成を示す図である。図7は、回路パターン12-1を含む配線層20の幅方向断面の断面図であり、配線層10の詳細を示した図2に相当する図である。図7において、図2に示す回路パターン12および配線層10と同じ構成要素については、図2における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図2についての説明を援用する。なお、図7においては、図2と同様に、素体2、上蓋層11cおよび引き出し配線14の図示を省略している。
【0036】
図7に示す回路パターン12-1は、パッド部分12a-1および回路部分12b-1を有する。回路パターン12-1のパッド部分12a-1および回路部分12b-1は、図2に示す回路パターン12のパッド部分12aおよび回路部分12bと同様の構成を有するが、シードパターン13に代えて、シードパターン21が、下蓋層11a上に形成されている。
シードパターン21は、シードパターン13と同様の構成を有するが、パッド部分12a-1における数が3である点が、シードパターン13と異なる。
【0037】
これにより、回路パターン12-1は、回路パターン12に比べて、幅広に形成されるパッド部分12a-1における厚みのばらつきを更に低減して、パッド部分12a-1の表面形状の平坦性をより向上することができる。
【0038】
なお、シードパターン21は、例えば、図3に示すシードパターン13において、リングパターン13aのリングの中心部に円盤状の導体パターンを形成することにより実現され得る。上記円盤状の導体パターンは、例えば、その円周の一部分が、リングパターン13aの内周の一部との間に設けられたブリッジ導体(不図示)により、リングパターン13aと電気的に接続されるものとすることができる。
【0039】
[第2変形例]
図8は、回路パターン12の第2の変形例に係る回路パターン12-2の構成を示す図であり、回路パターン12の構成を示す図3に相当する図である。なお、図8において、図3に示す配線層10と同じ構成要素については、図3における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図3についての説明を援用する。
【0040】
図8に示す回路パターン12-2は、パッド部分12a-2および回路部分12b-2を有する。回路パターン12-2のパッド部分12a-2および回路部分12b-2は、回路パターン12のパッド部分12aおよび回路部分12bと同様の構成を有するが、シードパターン13に代えてシードパターン23を有する点が異なる。シードパターン23は、シードパターン13と同様の構成を有するが、シードパターン13とは異なり、回路パターン12-2のパッド部分12a-2が形成される図示一点鎖線の円形領域において、平面視がX字状のクロスパターン23aにより終端されている。
【0041】
上記の構成を有する回路パターン12-2では、図8に示すように幅広のパッド部分12a-2を通過する線C1、C2、C3に沿った断面を視た場合、少なくとも線C1および線C3に沿ったそれぞれの断面においては、クロスパターン23aの2つの腕を含むこととなるので、当該断面において一つのシードパターンを含む構成に比べて、回路パターン12-2に関する表面形状および厚みについての構造の一様性を向上することができる。
【0042】
[第3変形例]
図9は、回路パターン12の第3の変形例に係る回路パターン12-3の構成を示す図であり、回路パターン12の構成を示す図3に相当する図である。なお、図9において、図3に示す配線層10と同じ構成要素については、図3における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図3についての説明を援用する。
【0043】
図9に示す回路パターン12-3は、パッド部分12a-3、並びに回路部分12b-3、12b-4、および12b-5を有する。回路部分12b-3は、パッド部分12a-3につながる部分である。回路部分12b-4は、回路部分12b-3に隣接する部分であり、回路部分12b-5は、回路部分12b-4に隣接する部分である。
【0044】
回路パターン12-3のパッド部分12a-3および回路部分12b-3、12b-4、12b-5は、回路パターン12のパッド部分12aおよび回路部分12bと同様の構成を有するが、シードパターン13に代えてシードパターン25を有する点が異なる。シードパターン25は、シードパターン13と同様の構成を有するが、シードパターン13とは異なるパターンを有する。まず、シードパターン25は、回路パターン12-3のパッド部分12a-3が形成される図示一点鎖線の円形領域において、平面視が円盤状の円形パターン25aにより終端されている。これにより、パッド部分12a-3は、平坦性の良好な表面を持つように、且つ回路部分12b-3と同程度の厚みをもつように形成され得る。
【0045】
シードパターン25は、また、図示上側に示すパッド部分12a-3につながる回路部分12b-3に形成された幅W3のシードパターン25bと、回路部分12b-4に形成された、それぞれ幅W22およびW21をもつ2つのシードパターン25c、25dと、回路部分12b-5に形成された、それぞれ幅W12およびW11をもつ2つのシードパターン25e、25fを含む。ここで、W3、W22、W21、W12、W11は、次の式(2)の関係を有する。
W3>W22、W21、W12、W11 (2)
【0046】
回路パターン12-3では、例えば、W3と、W22+W21の合計幅と、W12+W11の合計幅と、がほぼ同じとなるように調整することにより、回路部分12b-3、12b-4および12b-5における厚みをほぼ等しくすることができる。ただし、回路部分12b-4および12b-5では、それぞれ2つのシードパターン25c、25dおよび25e、25fを有するのに対し、回路部分12b-3では1つのシードパターン25bを有することから、回路部分12b-4および12b-5では、回路部分12b-3よりも表面の平坦性が向上する。
【0047】
なお、シードパターン25b、25c、25d、25e、25fは、SAPを用いためっき工程において互いに同電位となるように、図示しない部分において互いの間が直接または間接に電気的に接続されているものとする。例えば、シードパターン25cおよび25dは、シードパターン25bが2つに分岐することにより形成され、シードパターン25eおよび25fは、それぞれ、シードパターン25cおよび25dと接続されているものとすることができる。
【0048】
[第4変形例]
図10は、回路パターン12の第4の変形例に係る回路パターン12-4の構成を示す図であり、回路パターン12の構成を示す図3に相当する図である。なお、図9において、図3に示す配線層10と同じ構成要素については、図3における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図3についての説明を援用する。
【0049】
図10に示す回路パターン12-4は、パッド部分12a-4、並びに回路部分12b-6、12b-7、および12b-8を有する。回路部分12b-6は、パッド部分12a-4につながる部分である。回路部分12b-7は、回路部分12b-6に隣接する部分であり、回路部分12b-8は、回路部分12b-7に隣接する部分である。
【0050】
本変形例においては、特に、回路部分12b-7の部分が、回路部分12b-6および回路部分12b-8に対して幅広に形成されている。すなわち、回路部分12b-6、12b-7、12b-8の幅L1、L2、L3は、次の関係を有している。
L2>L1、L3 (3)
【0051】
回路パターン12-4のパッド部分12a-4および回路部分12b-6、12b-7、12b-8は、回路パターン12のパッド部分12aおよび回路部分12bと同様の構成を有するが、シードパターン13に代えてシードパターン25を有する点が異なる。シードパターン27は、シードパターン13と同様の構成を有するが、シードパターン13とは異なるパターンを有する。まず、シードパターン27は、回路パターン12-4のパッド部分12a-4が形成される図示一点鎖線の円形領域において、平面視が円盤状の円形パターン27aにより終端されている。これにより、パッド部分12a-4は、平坦性の良好な表面を持つように、且つ回路部分12b-6と同程度の厚みをもつように形成され得る。
【0052】
シードパターン27は、また、図示上側に示すパッド部分12a-4につながる回路部分12b-6に形成された1つのシードパターン27bと、回路部分12b-7に形成された2つのシードパターン27c、27dと、回路部分12b-8に形成された1つのシードパターン27eとを含む。ここで、シードパターン27b、27c、27d、27eは、互いに同じ幅を有している。
【0053】
これにより、本変形例では、回路部分12b-7における回路パターン12-4の厚みが回路部分12b-6および12b-8の厚みに対して減少するのを防止して、回路パターン12-4の厚みの一様性を向上すると共に、回路部分12b-7における表面の平坦性を向上することができる。
【0054】
なお、シードパターン27b、27c、27d、27eは、SAPを用いためっき工程において互いに同電位となるように、図示しない部分において互いの間が直接または間接に電気的に接続されているものとする。
【0055】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図11は、本発明の第2の実施形態に係るコイル部品30の内部構造を示す模式図であり、コイル部品1の内部構造を示す図1に相当する図である。
【0056】
コイル部品30は、リング状の配線層33を2層含む。配線層33は、配線層10と同様に、絶縁層31と、絶縁層31に埋設されたスパイラル状の回路パターン32と、を備える。2層に重なった配線層33のそれぞれの回路パターン32は、それらの一部が互いに接続されてコイル部を形成している。
【0057】
絶縁層31は、配線層10の絶縁層11の下蓋層11a、絶縁壁11b、上蓋層11cと同様の下蓋層31a、絶縁壁31b、上蓋層31cを有する。回路パターン32は、回路パターン12のパッド部分12aおよび回路部分12bと同様のパッド部分32aおよび回路部分32bを有する。
【0058】
回路パターン32は、回路パターン12と同様に、絶縁層31の主面に沿った一の面である下蓋層31a上面において回路パターン32に沿って延在するシードパターン35を含む。回路パターン32は、回路パターン12と同様に、回路パターン32の延在方向沿った回路パターン32の少なくとも一の部分(例えば、パッド部分32a)において、回路パターン32の延在方向に直交する断面で視たシードパターン35の数が2である。
【0059】
これにより、それぞれの配線層33は、上述した配線層10と同様に、回路パターン32の表面形状および厚みの一様性が向上する。このため、2つの配線層33のそれぞれの回路パターン32間の接続部の信頼性を高めることができる。また、同様に、配線層33の回路パターン32と他の配線パターン(たとえば、外部電極につながる配線パターン)との接続部の信頼性も高めることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、コイル部品30は、2つの配線層33を備えるものとしたが、積み重ねられた3以上の配線層33を有するものとしてもよい。これらの積み重ねられる配線層のそれぞれの回路パターンは、コイル部品30の設計に応じて、それらの回路パターンの表面形状および又は厚みについての一様性が求められる任意の場所において、2以上のシードパターンを有しているものとすることができる。
【0061】
上述した実施形態及び変形例によれば、次の効果を奏する。
【0062】
上述したコイル部品1は、主面を有する絶縁層11と、絶縁層11に埋設され、上記主面に沿って延在する回路パターン12と、を備える。回路パターン12は、回路パターン12内で主面に沿って延在するシードパターン13を含み、回路パターン12の延在方向に直交する断面には、回路パターン12内のシードパターン13の数が2以上である部分が存在する。
この構成によれば、回路パターン12の厚み及び又は表面形状を含む構造の一様性を向上することができる。
【0063】
また、上記断面において、絶縁層11は、シードパターン13の配列方向に沿って回路パターン12を挟む2つの絶縁壁11bを有する。絶縁壁11bの一方について、絶縁壁11bから、当該絶縁壁11bに最も近いシードパターン13までの距離W1と、シードパターン13どうしの間隔W2とは、W1×2<W2の関係を有することが好ましい。
この構成によれば、回路パターン12の厚みの均一性を効果的に向上することができる。
【0064】
また、回路パターン32は、主面に直交する方向に2つ以上並んでいる。この構成によれば、厚みの均一性が向上された回路パターンを多層に構成することができる。
【0065】
また、シードパターン13は、回路パターン12内でリング状となる部分を有する。この構成によれば、例えば、平面視が円形状のパッド部分12aにおける回路パターン12の厚みの均一性を向上することができる。
【0066】
また、例えば、シードパターン23は、回路パターン12-2内でX字状となる部分を有する。この構成によれば、上記と同様に、例えば、平面視が円形状のパッド部分12aにおける回路パターン12の厚みの均一性を向上することができる。
【0067】
また、例えば、シードパターン27は、回路パターン12-4内で、回路パターン12-4に沿って並走する2つ以上の部分を有する。この構成によれば、例えば、回路パターン12-4のうち幅が異なる2つの部分において、互いの厚みを略等しくして回路パターン12-4の厚みの均一性を向上することができる。
【0068】
なお、上述した全ての実施形態および変形例は、本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変形及び応用が可能である。
【0069】
上述した実施形態では、一例としてコイル部品1、30を示したが、本発明は、その一部に配線層10、20、22、24、26、または33と同様の構造を有する配線層を一つ以上含む、コイル部品以外の任意の電子部品にも同様に適用され得る。そのような配線層の平面視は、リング状に限らず、電子部品における回路設計に応じて、任意の形状を有し得る。
【0070】
また、上述した実施形態では、回路パターン12は、スパイラル状であったが、これに限られず、1ターン未満の周回形状や、直線状、ミアンダ状などであってもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、外部電極15は、引き出し配線14の端面であったが、これに限られず、外部電極15が、引き出し配線14の端面上に別途形成されていてもよい。この場合、外部電極15は、塗布、めっき、スパッタなどの任意の形成方法を用いて形成され、材料も銅、銀、ニッケル、錫、金など、任意のものであり得る。また、外部電極15は、異なる層を複数有する積層構造であってもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、絶縁層11は、絶縁性樹脂であったが、ガラスやアルミナ、フェライトなどの焼結体であってもよい。また、絶縁層11は、素体2と同じ構成を有して素体2と一体化していてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態および変形例に示す特徴構成は、任意の電子部品において相互に組み合わせて用いることができる。例えば、電子部品は、上述した配線層10、20、22、24、26、および33と同様の構成を有する任意の数の配線層の任意の組み合わせを備えるものとすることができる。
【0074】
また、上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状、材料は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状、材料と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【0075】
上述した実施形態及び変形例は、以下の構成をサポートする。
(構成1)主面を有する絶縁層と、前記絶縁層に埋設され、前記主面に沿って延在する回路パターンと、を備え、前記回路パターンは、前記回路パターン内で前記主面に沿って延在するシードパターンを含み、前記回路パターンの延在方向に直交する断面には、前記回路パターン内の前記シードパターンの数が2以上である部分が存在する、コイル部品。
(構成2)前記断面において、前記絶縁層は、前記シードパターンの配列方向に沿って前記回路パターンを挟む2つの絶縁壁を有し、前記絶縁壁の一方について、当該絶縁壁から、当該絶縁壁に最も近い前記シードパターンまでの距離W1と、前記シードパターンどうしの間隔W2とが、W1×2<W2の関係を有する、構成1に記載のコイル部品。
(構成3)前記回路パターンは、前記主面に直交する方向に2つ以上並ぶ、構成1または2に記載のコイル部品。
(構成4)前記シードパターンは、前記回路パターン内でリング状となる部分を有する、構成1ないし3のいずれかに記載のコイル部品。
(構成5)前記シードパターンは、前記回路パターン内でX字状となる部分を有する、構成1ないし4のいずれかに記載のコイル部品。
(構成6)前記シードパターンは、前記回路パターン内で、前記回路パターンに沿って並走する2つ以上の部分を有する、構成1ないし5のいずれかに記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0076】
1、30…コイル部品、2…素体、3、40…基板、4…絶縁性樹脂、5…シード層、6…レジスト、7…上部磁性層、8…下部磁性層、10、20、22、24、26、33…配線層、11、31…絶縁層、11a、31a…下蓋層、11b、31b…絶縁壁、11c、31c…上蓋層、12、12-1、12-2、12-3、12-4、32、41、41a、41b、41c…回路パターン、12a、12a-1、12a-2、12a-3、12a-4、32a…パッド部分、12b、12b-1、12b-2、12b-3、12b-4、12b-5、12b-6、12b-7、12b-8、32b…回路部分、13、21、23、25、25b、25c、25d、25e、25f、27、27b、27c、27d、27e、35、43…シードパターン、13a…リングパターン、14…引き出し配線、15…外部電極、23a…クロスパターン、25a、27a…円形パターン、42a、42b、42c、42d…壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12