(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165333
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電波反射装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20231108BHJP
H01Q 15/10 20060101ALI20231108BHJP
H01Q 15/23 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
H01Q15/10
H01Q15/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076236
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竇 元珠
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA02
5J020AA03
5J020BA01
5J020BA06
5J020BB01
5J020BB08
(57)【要約】
【課題】薄型化を図った電波反射装置を提供する。
【解決手段】電波反射装置は、電波レンズと、前記電波レンズを透過した電波を反射する凹曲面形状の反射面を有する反射体とを含み、前記反射面は前記電波レンズの焦点距離を半径とする球面の一部であり、前記電波レンズは、平板状である。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波レンズと、
前記電波レンズを透過した電波を反射する凹曲面形状の反射面を有する反射体と
を含み、
前記反射面は前記電波レンズの焦点距離を半径とする球面の一部であり、
前記電波レンズは、平板状である、電波反射装置。
【請求項2】
前記電波レンズは、基板と、前記基板に設けられる共振器とを有するメタマテリアルレンズである、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項3】
前記電波レンズの中心と、前記焦点距離を半径とする球面を含む球体の中心とが一致する、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項4】
前記メタマテリアルレンズは、前記共振器を複数有し、
複数の前記共振器は、平面視における前記電波レンズの中心に対して対称的に配置される、請求項2に記載の電波反射装置。
【請求項5】
前記共振器は、リング共振器である、請求項2に記載の電波反射装置。
【請求項6】
複数の前記共振器は、複数のリング共振器であり、
前記複数のリング共振器は、直径が異なる複数種類のリング共振器を含む、請求項4に記載の電波反射装置。
【請求項7】
前記共振器は、非リング状で平面視において点対称又は線対称な形状を有する、請求項2に記載の電波反射装置。
【請求項8】
前記メタマテリアルレンズは、前記共振器を複数有し、
複数の前記共振器の各々は、非リング状で平面視において点対称又は線対称な形状を有し、
複数の前記共振器は、平面視におけるサイズが異なる複数種類の共振器を含む、請求項2に記載の電波反射装置。
【請求項9】
前記反射体は、柔軟素材で形成されている、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項10】
前記電波レンズ及び前記反射面を複数含み、
複数の前記電波レンズ及び前記反射面は、平面的に配置されている、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電波反射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波反射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電磁波に対して透明な球形の誘電体レンズと、前記誘電体レンズの焦点距離に設けた電磁波を反射する反射体と、前記反射体を前記誘電体レンズの焦点距離に位置決め保持する保持機構とを有する誘電体レンズを含む反射器がある。前記誘電体レンズは、球形に形成する代わりに、球を少なくとも1つの平面あるいは曲面でカットした形状を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の反射器(電波反射装置)は、球を少なくとも1つの平面あるいは曲面でカットした樽のような形状を有する誘電体レンズを含むため、電波反射装置が厚くなり、薄型化が求められるような用途には不向きである。
【0005】
そこで、薄型化を図った電波反射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態の電波反射装置は、電波レンズと、前記電波レンズを透過した電波を反射する凹曲面形状の反射面を有する反射体とを含み、前記反射面は前記電波レンズの焦点距離を半径とする球面の一部であり、前記電波レンズは、平板状である。
【発明の効果】
【0007】
薄型化を図った電波反射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の電波反射装置100の一例を示す図である。
【
図2A】
図1の破線の四角で囲む部分を拡大して示す図である。
【
図2B】
図1の破線の四角で囲む部分の断面構造の一例を示す図である。
【
図3A】電波反射装置100に電波が入射したときの反射の様子の一例を示す図である。
【
図3B】電波反射装置100に電波が入射したときの反射の様子の一例を示す図である。
【
図4A】電波レンズ120のバリエーションの一例を説明する図である。
【
図4B】電波レンズ120のバリエーションの一例を説明する図である。
【
図5】共振器122の平面形状のバリエーションの一例を示す図である。
【
図6】共振器122の平面形状のバリエーションの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の電波反射装置を適用した実施形態について説明する。
【0010】
以下では、XYZ座標系を定義して説明する。X軸に平行な方向(X方向)、Y軸に平行な方向(Y方向)、Z軸に平行な方向(Z方向)は、互いに直交する。また、以下では、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称す場合があるが、普遍的な上下関係を表すものではない。また、平面視とはXY面視することをいう。
【0011】
また、以下では構成が分かりやすくなるように各部の長さ、太さ、厚さ等を誇張して示す場合がある。また、平行、上下等の文言は、実施形態の効果を損なわない程度のずれを許容するものとする。
【0012】
<実施形態>
図1は、実施形態の電波反射装置100の一例を示す図である。
図2Aは、
図1の破線の四角で囲む部分を拡大して示す図である。
図2Bは、
図1の破線の四角で囲む部分の断面構造の一例を示す図である。
【0013】
<電波反射装置100の構成>
電波反射装置100は、反射体110及び電波レンズ120を含み、電波を反射する。電波は、どのような周波数帯のものであってもよいが、例えば、ミリ波帯(30GHz~300GHzの周波数帯域)の電波であってもよい。
【0014】
電波レンズ120は、一例として、反射体110の上部に配置され、反射体110に対して固定されている。図示しない接着剤やネジ等を用いて電波レンズ120を反射体110に直接固定してもよいし、図示しない部材等を用いて、反射体110及び電波レンズ120の相対位置を固定してもよい。この場合に、反射体110の上面と電波レンズ120の下面との間に隙間が存在していてもよい。
【0015】
反射体110は、
図2Bに示すように反射面111及び傾斜面112を有し、電波レンズ120は、
図1、
図2A、及び
図2Bに示すように基板121と、複数の共振ユニット122Uとを有する。すなわち、1つの反射面111に対して1つの電波レンズ120が設けられており、電波反射装置100は、反射面111及び電波レンズ120を複数含む。反射面111及び電波レンズ120の数は等しい。複数の反射面111及び電波レンズ120は、平面的(2次元的)に配置されている。共振ユニット122Uは、
図1に破線の四角内に示すように略円形状に集合する複数の共振器122を有する。1つの共振ユニット122Uに含まれる複数の共振器122は、平面視では
図2Aに示すように、サイズの異なる共振器122-1、122-2、及び122-3を含む。以下では、共振器122-1、122-2、及び122-3を特に区別しない場合には、単に共振器122と称す。
【0016】
各共振器122は、メタマテリアルである。このため、電波レンズ120は、メタマテリアルレンズである。また、電波レンズ120は、平板状であり、薄型のメタマテリアルレンズである。
【0017】
図1には、一例として、X方向及びY方向に4個ずつの合計16個の共振ユニット122Uが平面的(2次元的)に配置されている状態を示す。反射面111は、各共振ユニット122Uに対応して1つずつ設けられている。このため、反射体110は、16個の反射面111を有する。
【0018】
図1には、電波反射装置100が16個の反射面111と16個の共振ユニット122Uとを有する形態について説明するが、このような構成は一例であり、電波反射装置100は、反射面111及び共振ユニット122Uを少なくとも1つずつ有していればよく、反射面111及び共振ユニット122Uの数は幾つであってもよい。また、共振ユニット122Uは共振器122を少なくとも1つ有していればよく、共振ユニット122Uに含まれる共振器122の数は幾つであってもよい。
【0019】
<電波レンズ120の具体的な構成>
電波レンズ120の基板121は、電波反射装置100が反射する電波に対して透明な材料で作製されていればよい。基板121は、例えば、ガラスやテフロン(登録商標)、液晶ポリマ等の樹脂で作製可能な薄板状の基板である。各共振器122は、基板121の一方の面(ここでは一例として上面121A)に銅箔等の導体パターンで形成され、所定の共振周波数を有し、共振周波数と等しい周波数の電波の位相を遅延させるメタマテリアルである。
【0020】
図2Aに示すように、1つの共振ユニット122Uの中では、サイズの異なる共振器122-1、122-2、及び122-3が同心円状に配置されている。
図2Aには、XYZ座標の方向を示すとともに、共振ユニット122Uの中心122Cを原点とするX軸とY軸を示す。また、
図2Aには、中心122Cを中心とする破線の円C1及びC2を示す。円C2の半径は、円C1の半径よりも大きい。
【0021】
共振器122-1は、中心122Cを中心として、共振ユニット122Uの中央に1つ設けられている。8つの共振器122-2は、円C1上に中心が位置するように、円C1上に等間隔で配置されている。また、16個の共振器122-3は、円C2上に中心が位置するように、円C2上に等間隔で配置されている。このため、共振器122-1、122-2、及び122-3は、同心円状に配置されている。なお、平面視において、共振器122-1及び122-2は、反射面111と重なる位置にあるが、共振器122-3は、反射面111よりも外側にある。
【0022】
また、共振器122-1、122-2、及び122-3は、中心122Cに対して対称的に配置されている。ここで、中心122Cに対して対称的に配置されるとは、共振器122-2及び122-3については、平面視で、中心122Cに対して点対称、又は、中心122Cを通るX軸と、Y軸と、X軸及びY軸に対して角度を有する軸(例えばX軸及びY軸に対して45度の方向に延在する破線の2本)とを対称軸として線対称に配置されることである。また、中心122Cに対して対称的に配置されるとは、中心122C上に位置する共振器122-1については、平面視で、中心122Cを中心とする点対称、又は、中心122Cを通る対称軸に対して線対称な形状を有することである。なお、共振ユニット122Uは、中心122C上に位置する共振器122-1を有していなくてもよい。
【0023】
共振器122-1、122-2、及び122-3の各々は、円環状のリング共振器であり、共振器122-1の等価誘電率が最も高く、共振器122-3の等価誘電率が最も小さい。このため、共振器122-1が電波を遅延する量が最も大きく、共振器122-3が電波を遅延する量が最も小さい。共振器122-1、122-2、及び122-3に生じる電波遅延は中心122Cから離れるに従って小さく設定されており、電波レンズ120は、共振ユニット122Uに入射する電波を1点に集束させることができるように構成されている。共振器122-1、122-2、及び122-3によって電波を1点に集束する焦点距離を、以下では電波レンズ120の焦点距離と称す。
【0024】
このような共振ユニット122Uを有する電波レンズ120は、上面側から入射する電波を集束する集束レンズとして機能する。なお、
図2Bには、共振器122が基板121の上面に設けられる構成を示すが、共振器122は、基板121の下面に設けられていてもよい。
【0025】
<反射体110の具体的な構成>
反射体110の反射面111は、例えば金属等の導体で形成される。反射面111の周囲には、傾斜面112が設けられている。傾斜面112は、平面視で円形の反射面111の周囲を囲む円環状の部分であり、
図2Bに示すように径方向の内側に向かって傾斜しているテーパ状かつ円環状の表面である。傾斜面112は、円錐体の側面のような形状を有する。傾斜面112は、平面視で反射面111よりも外側に位置する共振器122-3で集束された電波が反射面111に向けて伝搬する経路を確保するために設けられており、再帰性の反射には関与しない部分である。なお、ここでは、反射体110が反射面111の周囲に傾斜面112を有する形態について説明するが、傾斜面112の代わりに、
図2Bに傾斜面112を示す部分に、反射体110の上面から反射面111の上端の位置まで-Z方向に凹んだ凹部が設けられていてもよい。また、反射面111は、半球状であってもよい。
【0026】
反射体110は、全体が導体製であってもよい。反射体110は、例えば、金属等の導体の塊を削ることによって作製されていてもよく、薄板状の導体をプレス加工等で加工することによって作製してもよい。また、反射体110は、樹脂製であって、反射面111の部分にだけ金属等の導体が形成されている構成であってもよい。例えば、柔軟性を有する樹脂のような柔軟素材で反射体110を作製し、反射面111の部分にだけ金属等の導体が形成した場合には、様々な物体の湾曲面等に取り付けることが容易になる。この場合に、例えば、反射面111及び電波レンズ120のペア毎に、様々な物体の湾曲面等の凹凸形状等に合わせた形で取り付けてもよい。この場合には、反射面111の変形等を効果的に抑制でき、再帰性反射板としての良好な反射特性を保持できる。また、反射面111及び電波レンズ120のペアが、湾曲面等の凹凸を跨ぐ場合でも、柔軟素材で作製される反射体110が凹凸を吸収することで、再帰性反射板としての良好な反射特性を保持できる。なお、電波反射装置100が反射面111及び電波レンズ120を1つずつ含む構成であっても、反射体110が柔軟素材で作製されることで、様々な物体の湾曲面等に合わせて取り付けることが容易になり、再帰性反射板としての良好な反射特性を保持できる。
【0027】
反射面111は、一例として板状の反射体110の上面からテーパ状かつ円環状に凹んだ傾斜面112の下端から、曲面状に凹んだ反射面である。反射面111は、半径rの球体の球面の一部に相当する凹曲面形状を有し、半径rは、電波レンズ120の焦点距離に等しい。
図2Bには、反射面111の凹曲面形状を含む仮想的な球体の中心111Cを通りZ軸に平行な中心軸CAを太破線で示す。反射面111は、電波レンズ120の焦点距離を半径とする球面のうちの中心111Cよりも下方の部分であることで、半径rの球体の球面の一部に相当する凹曲面形状を有する。反射面111は、中心軸CAに対して軸対称な形状を有する。また、以下では、反射面111を含む仮想球体の中心111Cと称す。
【0028】
このような反射面111の半径rは、電波レンズ120の焦点距離に等しく、反射体110及び電波レンズ120は、反射面111を含む仮想球体の中心111Cと、共振ユニット122Uの平面視における中心122Cとが一致するように配置されるため、反射面111の全体が電波レンズ120の焦点距離の位置に存在することになる。このため、電波レンズ120に様々な方向から電波が入射しても、反射面111上に集束すれば、反射面111に対して入射した方向に反射される。すなわち、反射面111は、電波を入射方向に反射する再帰性反射面として機能する。反射体110は、電波レンズ120を透過して反射面111に集束する電波を、反射面111に対する入射方向と等しい方向に反射する再帰性反射板として機能する。このことについては、
図3A及び
図3Bを用いて後述する。
【0029】
図3A及び
図3Bは、電波反射装置100に電波が入射したときの反射の様子の一例を示す図である。反射面111は、中心軸CAに対して軸対称な形状を有し、電波レンズ120は、平面視において中心122Cに対して点対称な構成を有するため、反射面111での反射は、中心軸CAを含む断面であれば、どのような断面においても同様に生じる。このため、
図3A及び
図3Bでは、XZ断面での反射について説明する。
【0030】
図3A及び
図3Bにおいて、入射波A及び反射波Aを実線で示し、入射波B及び反射波Bを破線で示し、入射波C及び反射波Cを一点鎖線で示す。入射波A及び反射波A、入射波B及び反射波B、入射波C及び反射波C、及び中心軸CAが重なる部分については、見やすさを優先して、線同士をずらして示す。
【0031】
例えば、
図3Aに示すように、電波反射装置100の上方から-Z方向に伝搬する電波が電波レンズ120の全体に入射した場合には、電波レンズ120の中央の共振器122-1に入射する入射波Aは、中心軸CAに沿って-Z方向に伝搬し、反射面111と中心軸CAの交点αで反射され、反射波Aは入射波Aと同じ経路を辿って電波レンズ120の共振器122-1を透過する。電波レンズ120の+X方向側の共振器122-3に入射する入射波Bは、反射面111と中心軸CAの交点αに向かって集束され、反射面111上の交点αで反射され、反射波Bは電波レンズ120の-X方向側の共振器122-3を透過する。電波レンズ120の-X方向側の共振器122-3に入射する入射波Cは、反射面111と中心軸CAの交点αに向かって集束され、反射面111上の交点αで反射され、反射波Cは電波レンズ120の+X方向側の共振器122-3を透過する。入射波C及び反射波Cの経路は、入射波B及び反射波Bの経路の逆である。入射波A、B、及びCの位相は揃っており、反射波A、B、及びCの位相も揃っている。このようにして、電波レンズ120の全体に入射して集束された電波は、反射面111と中心軸CAの交点αで反射され、再び電波レンズ120を通る際に平行な電波に変換されて+Z方向に伝搬する。共振器122-1、122-2、及び122-3の等価誘電率は、このような再帰性反射が実現されるように設定されている。このように、反射面111を有する反射体110が再帰性反射板として機能することで、電波は電波反射装置100に到来した方向に反射される。
【0032】
また、例えば、
図3Bに示すように、電波反射装置100の上方から中心軸CAに対して角度θの方向から伝搬する電波が電波レンズ120の全体に入射した場合には、電波レンズ120の中央の共振器122-1に入射する入射波Aは、角度θの方向に真っ直ぐ伝搬し、反射面111上の点βで反射し、反射波Aは入射波Aと同じ経路を辿って電波レンズ120を透過する。反射面111上の点βは、反射面111と中心軸CAの交点αからずれている。電波レンズ120の+X方向側の共振器122-3に角度θで入射する入射波Bは、反射面111上の点βに向けて集束されて反射面111上の点βで反射され、反射波Bは電波レンズ120の-X方向側の共振器122-3を透過し、角度θで出射する。電波レンズ120の-X方向側の共振器122-3に角度θで入射する入射波Cは、反射面111上の点βに向けて集束されて反射面111上の点βで反射され、反射波Cは電波レンズ120の+X方向側の共振器122-3を透過し、角度θで出射する。入射波C及び反射波Cの経路は、入射波B及び反射波Bの経路の逆である。入射波A、B、及びCの位相は揃っており、反射波A、B、及びCの位相も揃っている。このようにして、電波レンズ120の全体に角度θで入射した電波は、反射面111上の点βで反射され、平行な電波に変換されて角度θの方向に出射する。共振器122-1、122-2、及び122-3の等価誘電率は、このような再帰性反射が実現されるように設定されている。このように、反射面111を有する反射体110が再帰性反射板として機能することで、中心軸CAに対して角度θの方向に到来した電波は、電波反射装置100に到来した方向(中心軸CAに対する角度θの方向)に反射される。
【0033】
<電波レンズ120のバリエーション>
図4A及び
図4Bは、電波レンズ120のバリエーションの一例を説明する図である。
【0034】
図4Aに示す電波レンズ120Aは、
図2Aに示す電波レンズ120の共振器122-2及び122-3のうち、X軸上に位置しない共振器122-2及び122-3の位置をY方向における外側にずらした構成を有する。X軸上に位置しない共振器122-2及び122-3の中心は、Y方向においてX軸から遠ざかるほど、円C1及びC2からずらされている。このため、8つの共振器122-2と、16個の共振器122-3とは、平面視でY方向に長軸を有する楕円状に配置されている。
【0035】
このように、8つの共振器122-2と、16個の共振器122-3とが、平面視でY方向に長軸を有する楕円状に配置される場合には、
図2Aに示す電波レンズ120に比べて、円C1及びC2からずれた分だけY方向において反射の向きが変化し、Y方向に広がる。このため、電波レンズ120Aは、電波を反射する領域をY方向に広げることができ、Y方向に広がった反射波を利用したいような用途に向いている。なお、
図2Aに示す電波レンズ120の共振器122-2及び122-3のうち、Y軸上に位置しない共振器122-2及び122-3の位置をX方向における外側にずらせば、X方向に広がった反射波を得ることができる。
【0036】
なお、
図4Aに示す電波レンズ120Aでは、共振器122-1、122-2、及び122-3は、中心122Cを通るX軸と、Y軸とを対称軸として線対称に配置されている。
【0037】
また、
図4Bに示す電波レンズ120Bでは、円C1上に直径の異なる8つの共振器122-2が位置している。8つの共振器122-2の直径は3種類あり、直径が最も小さい2つの共振器122-2がY軸上に位置し、直径が最も大きい2つの共振器122-2がX軸上に位置し、直径が中間サイズの4つの共振器122-2がX軸とY軸の間に位置している。
【0038】
また、16個の共振器122-3の直径は5種類あり、Y軸上に位置する2つの共振器122-3の直径が最も小さく、X軸上に位置する2つの共振器122-3の直径が最も大きい。一例として、16個の共振器122-3の直径は、Y軸上に位置する2つの共振器122-3からX軸上に位置する2つの共振器122-3に向かって順番に大きくなっている。
【0039】
このように、円C1上に直径が異なる8つの共振器122-2を配置すると、円C1上において電波が屈折される電波の周波数が異なるため、8つの共振器122-2によって複数の周波数の電波を集束することができる。なお、8つの共振器122-2によって、電波は1点に集束する。
【0040】
また、円C2上に直径が異なる16個の共振器122-3を配置すると、円C2上において電波が屈折される電波の周波数が異なるため、16個の共振器122-3によって複数の周波数の電波を集束することができる。なお、16個の共振器122-3によって、電波は1点に集束し、8つの共振器122-2によって電波が集束する位置と等しい。
【0041】
このため、電波レンズ120Bは、集束する電波の広帯域化を図ることができる。このような電波レンズ120Bは、例えば、複数の周波数の電波を反射させたいような用途に向いている。
【0042】
なお、電波レンズ120Bでは、共振器122-1、122-2、及び122-3は、中心122Cを通るX軸と、Y軸とを対称軸として線対称に配置されている。
【0043】
また、
図4Aに示す電波レンズ120Aのように、X軸上に位置しない共振器122-2及び122-3の位置をY方向における外側にずらす構成と、
図4Bに示す電波レンズ120Bのように、円C1上に直径が異なる8つの共振器122-2を配置するとともに、円C2上に直径が異なる16個の共振器122-3を配置する構成とを組み合わせてもよい。このようにすることで、電波レンズが電波を反射する領域をY方向に広げるとともに、集束する電波の広帯域化を図ることができる。
【0044】
<共振器122のバリエーション>
図5及び
図6は、共振器122の平面形状のバリエーションの一例を示す図である。共振器122は、
図2Aに示すようにリング状のリング共振器である代わりに、
図5及び
図6に示すような平面視において非リング状(円環状ではない形状)で、点対称又は線対称な形状であってもよい。
【0045】
例えば、共振器122は、
図5(A)に示すように円形であってもよい。また、共振器122は、
図5(B)に示すように矩形状であってもよく、正方形又は長方形であってもよい。また、共振器122は、
図5(C)に示すように三角形であってもよい。また、共振器122は、
図5(D)に示すように四隅を湾曲させた四角形であってもよい。また、共振器122は、
図5(E)に示すように菱形であってもよい。また、共振器122は、
図5(F)に示すように五角形であってもよく、さらに、六角形以上の多角形であってもよい。
【0046】
また、共振器122は、
図6(A)に示すように十字型であってもよい。また、共振器122は、
図6(B)に示すように正方形型の矩形環状であってもよい。また、共振器122は、
図6(C)に示すように長方形型の矩形環状であってもよい。また、共振器122は、
図6(D)に示すように、変形した十字型、又は、凹型の多角形と言えるような形状であってもよい。
【0047】
図5及び
図6に示すような様々な形状の共振器122を用い、各共振器122のサイズを調整することで、電波に対して与える遅延量を調整することができる。
【0048】
<効果>
以上のように、電波反射装置100は、電波レンズ120と、電波レンズ120を透過した電波を反射する凹曲面形状の反射面111を有する反射体110とを含み、反射面111は電波レンズ120の焦点距離を半径とする球面の一部であり、電波レンズ120は、平板状である。
【0049】
したがって、薄型化を図った電波反射装置100を提供することができる。
【0050】
また、電波レンズ120は、基板121と、基板121に設けられる共振器122とを有するメタマテリアルレンズであるので、立体型の誘電体レンズよりも焦点距離を短くすることができ、メタマテリアルレンズを用いることで効果的に薄型化を図った電波反射装置100を提供することができる。
【0051】
また、電波レンズ120の共振器122の中心122Cと、電波レンズ120の焦点距離を半径rとする球面を含む球体の中心111Cとが一致するので、反射面111を有する反射体110を再帰性反射板として機能させて、電波を入射方向に反射することができる。
【0052】
また、メタマテリアルレンズは、共振器122を複数有し、複数の共振器122は、平面視における基板121の中心121Cに対して対称的に配置されるので、メタマテリアルレンズに入射する電波を焦点に向けて高い精度で集束させることができる。
【0053】
また、複数の共振器122は、複数のリング共振器であるので、集束させる電波の周波数をリング共振器の共振周波数で正確に設定することができ、所望の周波数の電波を焦点に向けて高い精度で集束させることができる。
【0054】
また、複数のリング共振器は、直径が異なる複数種類のリング共振器を含むので、様々な周波数の電波を集束させることができ、集束可能な電波の広帯域化を図ることができる。
【0055】
また、共振器122は、非リング状で平面視において点対称又は線対称な形状を有するので、非リング状の共振器122の共振特性に応じて所望の周波数の電波を焦点に向けて高い精度で集束させることができる。
【0056】
また、メタマテリアルレンズは、共振器122を複数有し、複数の共振器122の各々は、非リング状で平面視において点対称又は線対称な形状を有し、複数の共振器122は、平面視におけるサイズが異なる複数種類の共振器122を含むので、複数の非リング状の共振器122の共振特性に応じて、様々な周波数の電波を集束させることができ、集束可能な電波の広帯域化を図ることができる。
【0057】
反射体110は、柔軟素材で形成されているので、湾曲面等に対して容易かつ確実に取り付けることができる。
【0058】
以上のような実施形態の電波反射装置100は、例えば、車両の後部に取り付けて、ミリ波レーダを搭載した後続車両が自車両をミリ波レーダで検出する際に、ミリ波レーダが後続車両に向かって反射されることで、自車両が後続車両によって検出されやすくすることができる。車両の後部には、可視光を反射する再帰性反射板の設置が義務づけられている。これと同様に、例えば、ミリ波レーダを再帰性反射する反射装置を車両の後部等に設置する場合に、実施形態の電波反射装置100は、非常に有用である。また、このような場合に、反射体110が柔軟素材で形成されていれば、車両の外表面の湾曲面等に対して容易かつ確実に取り付けることができる。
【0059】
以上、本開示の例示的な実施形態の電波反射装置について説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 電波反射装置
110 反射体
111 反射面
120、120A、120B 電波レンズ
121 基板
122、122-1、122-2、122-3 共振器
122U 共振ユニット