(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165337
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車室側部構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20231108BHJP
B60R 5/04 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60R5/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076242
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】大井 貴典
(72)【発明者】
【氏名】喜多 優斗
【テーマコード(参考)】
3D022
3D023
【Fターム(参考)】
3D022BA06
3D022BB04
3D022BC08
3D023BB07
3D023BC01
3D023BD18
3D023BE02
(57)【要約】
【課題】ラゲッジボードを縦置き姿勢で支持するための剛性を向上させる。
【解決手段】車室側部構造は、車室の側壁であるサイドトリム1の一部を構成すると共にサイドトリム1の所定の基準面1aから車幅方向内側に突出する前支持部2a及び後支持部2bを含み、車室内に配置されたラゲッジボード10の車幅方向外縁部であるボード外縁部10aが前支持部2aの後端壁2a2と後支持部2bの前端壁2b2との間に挿入されることで、車室内でラゲッジボード10を縦置き姿勢で支持する。車室側部構造は、サイドトリム1の基準面1aよりも車幅方向内側に位置し且つ前支持部2aの後端壁2a2と後支持部2bの前端壁2b2とを連結する連結部3を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室の側壁の一部を構成し、前記側壁の車幅方向内側の面における所定の基準面から車幅方向内側に突出する前支持部と、
前記側壁の一部を構成し、前記基準面から車幅方向内側に突出すると共に前記前支持部に対して車幅方向後方に離隔する後支持部と、
を含み、
前記車室内に配置されたラゲッジボードの車幅方向外縁部が前記前支持部の後端壁と前記後支持部の前端壁との間に挿入されることで、前記車室内で前記ラゲッジボードを縦置き姿勢で支持する、車室側部構造であって、
前記基準面よりも車幅方向内側に位置し且つ前記後端壁と前記前端壁とを連結する連結部を含む、車室側部構造。
【請求項2】
前記連結部は、前記後端壁と前記前端壁との間において上方に臨む上面を有する端壁部と、当該端壁部の車幅方向内端から車両下方に延びる延伸部と有する、請求項1に記載の車室側部構造。
【請求項3】
前記端壁部は、階段状断面を有して車両前後方向に延伸している、請求項2に記載の車室側部構造。
【請求項4】
前記ラゲッジボードは、前記縦置き姿勢で、車幅方向の一方の前記側壁の前記端壁部のうちの最も上方に位置する最上方面に当接する第1当接部と、車幅方向の他方の前記側壁の前記端壁部の前記最上方面に当接する第2当接部と、前記第1当接部と前記第2当接部との間に位置し前記第1当接部及び前記第2当接部よりも下方に延びる延長部と、を有する、請求項3に記載の車室側部構造。
【請求項5】
前記縦置き姿勢をとった前記ラゲッジボードの前記延長部の下端と前記車室のフロア上面との間に隙間が生じるように、前記フロア上面に対する前記最上方面の車両上下方向についての高さ位置が設定されている、請求項4に記載の車室側部構造。
【請求項6】
前記連結部は、前記基準面から車幅方向内側に延びた後に車両下方に延びる連結側壁部を有する、請求項1に記載の車室側部構造。
【請求項7】
前記側壁は、
前記前支持部の上方において前記基準面から車幅方向内側に突出する前ガイド部と、
前記後支持部の上方において前記基準面から車幅方向内側に突出する後ガイド部と、
を含み、
前記前ガイド部及び前記後ガイド部は、互いに車両前後方向に離隔して並ぶように配置され、
前記前ガイド部のガイド後端壁と前記後ガイド部のガイド前端壁との間の離隔距離は、前記前支持部の前記後端壁と前記後支持部の前記前端壁との間の離隔距離よりも大きく設定され、
前記ラゲッジボードが前記縦置き姿勢をとった状態において、
前記ガイド後端壁及び前記ガイド前端壁の一方が前記ラゲッジボードに当接するように配置されると共に、前記ガイド後端壁及び前記ガイド前端壁の他方が前記ラゲッジボードに対して離隔するように配置される、請求項1に記載の車室側部構造。
【請求項8】
前記ガイド後端壁及び前記ガイド前端壁の前記一方は、前記ガイド後端壁である、請求項7に記載の車室側部構造。
【請求項9】
前記側壁は、
前記前支持部の上方において前記基準面から車幅方向内側に突出する前ガイド部と、
前記後支持部の上方において前記基準面から車幅方向内側に突出する後ガイド部と、
を含み、
前記前ガイド部及び前記後ガイド部は、互いに車両上下方向について異なる位置に配置され、
前記ラゲッジボードが前記縦置き姿勢をとった状態において、
前記前ガイド部のガイド後端壁及び前記後ガイド部のガイド前端壁は前記ラゲッジボードに当接するように配置される、請求項1に記載の車室側部構造。
【請求項10】
前記前ガイド部は、車両上下方向について前記後ガイド部よりも高い位置に配置されている、請求項9に記載の車室側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラゲッジボードを支持する車両の車室側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車室後部に荷室を有する車両では、荷室がラゲッジボード(仕切り板などとも言う)によって区画できるようになっている場合がある。このような車両では、荷室の側壁(つまり、車室の側壁のうちの後側部分)のそれぞれに、ラゲッジボードを支持するための突出部が形成されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている車両の荷室構造では、荷室の側壁であるサイドトリムの下側の部分において、互いに前後に離隔する一対の突出部が車幅方向内側に突出している。そして、この荷室構造は、ラゲッジボードを一対の突出部の間に縦置き姿勢で支持することで、荷室を前後方向に区画(分離)できるようになっている。そして、サイドトリムは樹脂成形品であることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、走行時や荷室への荷物搬入時などに、縦置き姿勢をとったラゲッジボードに対して、荷重が車両前後方向から作用すると、この荷重は荷室の側壁に形成された突出部に伝達され得る。したがって、特許文献1の構造では、ラゲッジボードに作用する荷重の大きさによっては、サイドトリム(つまり、荷室の側壁)におけるラゲッジボードを支持する部分(突出部)に変形や破損などが生じてしまい、ラゲッジボードを所望の姿勢(荷室区画状態)で支持することが困難になる可能性がある、という課題がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ラゲッジボードを縦置き姿勢で支持するための剛性を向上させることができる構造を有した車両の車室側部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る車室側部構造は、車両の車室の側壁の一部を構成し、前記側壁の車幅方向内側の面における所定の基準面から車幅方向内側に突出する前支持部と、前記側壁の一部を構成し、前記基準面から車幅方向内側に突出すると共に前記前支持部に対して車幅方向後方に離隔する後支持部と、を含み、前記車室内に配置されたラゲッジボードの車幅方向外縁部が前記前支持部の後端壁と前記後支持部の前端壁との間に挿入されることで、前記車室内で前記ラゲッジボードを縦置き姿勢で支持する。前記車室側部構造は、前記基準面よりも車幅方向内側に位置し且つ前記後端壁と前記前端壁とを連結する連結部を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ラゲッジボードを縦置き姿勢で支持するための剛性を向上させることができる構造を有した車室側部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車室側部構造のサイドトリム(側壁)を含む部分斜視図である。
【
図2】ラゲッジボードの支持状態を説明するための概念図である。
【
図3】
図1においてリアシートが収納された状態を示した部分斜視図である。
【
図4】
図2においてリアシートが収納された状態を示した概念図である。
【
図6】荷室内から視た前記サイドトリムの平面図である。
【
図7】
図6に示すA-A線位置での前記サイドトリムのカットモデル図である。
【
図8】
図6に示すA-A線位置における断面図である。
【
図10】前記ラゲッジボードの支持状態を説明するための断面図である。
【
図11】荷室内から視た前記側壁の要部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る車室側部構造の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る車室側部構造の側壁を含む部分斜視図であり、
図2はラゲッジボードの支持状態を説明するための概念図である。なお、図において、矢印F方向は車両前後方向における前方(車両前方)を示し、矢印B方向は車両前後方向における後方(車両後方)を示す。矢印R及び矢印Lは、乗員が車両前方を見たときの車両幅方向(車幅方向)における右側及び左側を示す。そして、矢印Uは車両上下方向における上方を示す。
【0012】
図1及び
図2を参照すると、本実施形態の車室側部構造は、車両の車室後部(つまり車室のうちの後側領域)が主に荷室(荷物収容空間)Sとして用いられる車両に適用される。車両の乗員等は、フロントサイドドア(図示省略)により開閉されるフロントサイドドア開口11、リアサイドドア(図示省略)により開閉されるリアサイドドア開口12、及び、バックドア(図示省略)により開閉されるバックドア開口13を通じて、車室内にアクセスすることができる。
【0013】
車両の車室内には、例えば、フロントシート14(
図1では取り外されている)とリアシート15が配置されている。リアシート15のシートバック15aは倒伏可能であり、リアシート15が起立した状態では、車室のうちのリアシート15のシートバック15aよりも後方の領域が荷室Sとして利用され得る。ここでは、リアシート15の座部15bは、着座位置と着座位置に対して前方且つ下方である収納位置との間で、座面を概ね平行に維持した状態で移動可能に支持されている。リアシート15は、座部15bが着座位置に位置し且つシートバック15aが起立している着座状態(
図1及び
図2参照)と、座部15bが収納位置に移動され且つシートバック15aが前方に倒されている収納状態(後述の
図3及び
図4参照)との間で移動操作され、着座状態と収納状態とに切り替え可能に構成されている。
【0014】
図3は
図1においてリアシート15が収納された状態を示した部分斜視図であり、
図4は
図2においてリアシート15が収納された状態を示した概念図である。
図3及び
図4を参照すると、収納状態において、リアシート15のシートバック15aの背面(この状態では上方に臨んでいる面)の高さ位置と、車室後部のフロア部(リアフロアとも言う)16の上面であるフロア上面16aの高さ位置が、互いに概ね一致するように構成されている。
図3を参照すると、収納状態において、リアシート15の後部とフロア部16との間の隙間は、ラゲッジボード10とは別に設けられる補助ボード17(目隠し部)によって塞がれ得る。なお、
図4では、補助ボード17の図示は省略されている。
【0015】
図1~
図4を参照すると、本実施形態の車室側部構造は、ラゲッジボード10を荷室S内において縦置き姿勢(つまり、車幅方向且つ車両上下方向に延びた姿勢)で支持する構造を有する。
【0016】
ラゲッジボード10は、荷室Sに配置され、荷室Sを仕切って分離し得る板部材である。ラゲッジボード10は、後に詳述するが、例えば、平面視で概ね矩形状に形成される。
【0017】
リアシート15が着座状態にある場合(
図1及び
図2参照)において、ラゲッジボード10が縦置き姿勢で荷室Sに配置されると、荷室Sは車両前後方向に区画されて二つの領域に分離される。そして、ラゲッジボード10が縦置き姿勢で配置された状態で、リアシート15が移動操作されて着座状態(
図1及び
図2参照)から収納状態(
図3及び
図4参照)に切り替えられると、車室のうちの荷室Sとして用い得る領域(空間)が前方に拡張される。
【0018】
本実施形態の車室側部構造は、車室のうちの後側領域(荷室S)の側壁としてのサイドトリム1を主要部材として含む。つまり、本実施形態のサイドトリム1は、車両の側壁のうちの後側部分であり、荷室Sの車幅方向についての端壁を構成する。サイドトリム1は、車室後部のフロア部16の車幅方向の両側に設けられる。サイドトリム1は、荷室側壁やリアサイドトリムとも呼ばれる。なお、
図1~
図4では車幅方向右側のサイドトリム1が示されており、
図1及び
図3において、車幅方向左側のサイドトリム1は取り外されている。
【0019】
サイドトリム1は、例えば、膨出形状を有した樹脂成形品である。サイドトリム1の大半の部分は、成形の際のヒケ防止等の観点から、概ね同程度の厚み(板厚)を有している。サイドトリム1の下側の領域は、車体のホイールハウスなどに対応して車幅方向内側に大きく膨らんでいる。サイドトリム1の前方には、センターピラートリム18(
図1及び
図3参照)が設けられている。サイドトリム1の前縁はリアサイドドア開口12の開口後縁を形成し、センターピラートリム18の後縁はリアサイドドア開口12の開口前縁を形成している。本実施形態では、サイドトリム1の後部には、バックドア開口13の開口側縁及び開口下縁を形成するトリムが一体に形成されている。なお、サイドトリム1の前縁は、車体の一部を構成する金属板状のクォータパネルの前縁部のピラー19(後述する
図11参照)に沿うように延びると共にピラー19に取り付けられている。このピラー19は、サイドトリム1の前縁と一緒にリアサイドドア開口12の開口後縁を形成する。
【0020】
図5はサイドトリム1の斜視図である。サイドトリム1は、上述のように、車室後部のフロア部16の車幅方向の両側に設けられている。
図5、後述する
図6~
図8、
図10及び
図11では、右側のサイドトリム1が示されている。左側のサイドトリム1は、右側のサイドトリム1に対して車幅方向について対称であることを除いて、以下に詳述する形状と同一の形状を有している。
【0021】
サイドトリム1には、ラゲッジボード10を縦置き姿勢で支持するための、前支持部2a及び後支持部2bが設けられている。前支持部2a及び後支持部2bのそれぞれは、サイドトリム1の一部を構成する。前支持部2aは、サイドトリム1の車幅方向内側の面(つまり、車室に臨む意匠面)における所定の基準面1aから車幅方向内側に突出している。後支持部2bは、サイドトリム1の基準面1aから車幅方向内側に突出すると共に前支持部2aに対して車幅方向後方に離隔している。
【0022】
本実施形態では、前支持部2a及び後支持部2bは、サイドトリム1における車両上下方向下側の領域に設けられている。サイドトリム1の所定の基準面1aは、例えば、サイドトリム1における車両上下方向上側で且つ車両前後方向前側に設定され、車室(荷室S)に臨む平坦な面である。前支持部2a及び後支持部2bは、サイドトリム1における基準面1aが設定された領域である基準面部と連続して形成されている。そして、前支持部2a及び後支持部2bは、例えば、サイドトリム1の基準面部の厚み(板厚)と同程度の厚み(板厚)を有している。
【0023】
前支持部2aは、基準面1aから車幅方向内側に突出する前上壁部2a1と、前支持部2aの車両前後方向の後端をなす後端壁2a2と、を有する。前上壁部2a1は、サイドトリム1の下側且つ前縁側において車両前後方向に延びている。後端壁2a2は、前上壁部2a1の後端から下方に延びている。
【0024】
後支持部2bは、基準面1aから車幅方向内側に突出する後上壁部2b1と、後支持部2bの車両前後方向の前端をなす前端壁2b2と、を有する。後上壁部2b1は、前上壁部2a1と同じ高さ位置で車両前後方向に延びている。前端壁2b2は、後上壁部2b1の前端から下方に延びている。
【0025】
後端壁2a2及び前端壁2b2は、サイドトリム1の一部を構成し、サイドトリム1の基準面1aよりも車幅方向内側において互いに前後方向に離隔している。後端壁2a2は前端壁2b2に対して前方に離隔している。後端壁2a2と前端壁2b2との離隔距離である基準離隔距離D0はラゲッジボード10の厚みより僅かに大きい寸法に設定されている。なお、特に限定されるものではないが、本実施形態では、前支持部2aについての基準面1aからの車幅法方向内側への突出長は後支持部2bについての基準面1aからの車幅法方向内側への突出長よりも短く、後端壁2a2の車幅方向の寸法は前端壁2b2の車幅方向の寸法よりも小さい。
【0026】
乗員などによって、ラゲッジボード10の車幅方向外縁部であるボード外縁部10aが後端壁2a2と前端壁2b2との間の領域Vに挿入される(嵌め込まれる)と、ラゲッジボード10のボード外縁部10aが後端壁2a2と前端壁2b2との間に挟み込まれる。その結果、ラゲッジボード10は荷室Sにおいて縦置き姿勢で左右のサイドトリム1における前支持部2a及び後支持部2bを介して支持される。
【0027】
つまり、本実施形態の車室側部構造は、車室内に配置されたラゲッジボード10の車幅方向外縁部であるボード外縁部10aが前支持部2aの後端壁2a2と後支持部2bの前端壁2b2との間に挿入されることで、車室内でラゲッジボード10を縦置き姿勢で支持する。
【0028】
ところで、走行時や荷室への荷物搬入時などに、縦置き姿勢をとったラゲッジボード10に対して、荷重が車両前後方向から作用すると、この荷重は主にサイドトリム1の後端壁2a2及び前端壁2b2に伝達され得る。したがって、ラゲッジボード10に作用する荷重の大きさによっては、サイドトリム1におけるラゲッジボード10を縦置き姿勢で支持する主要部分である後端壁2a2及び前端壁2b2に変形や破損などが生じ、ラゲッジボード10を縦置き姿勢で支持することが困難になるおそれがある。特に、ラゲッジボード10の上下寸法が長くなると、後端壁2a2及び前端壁2b2に作用するモーメントなどの荷重がテコの原理に起因して増加し易くなり、その結果、変形などが生じる可能性が高くなり得る。これに対し、本実施形態に係る車室側部構造では、後端壁2a2及び前端壁2b2の変形などを効果的に抑制するために、以下に説明する構造(変形抑制構造)を有している。
【0029】
次に、変形抑制構造について詳述する。
図6は荷室S内から視たサイドトリム1の平面図、
図7は
図6に示すA-A線位置で切断されたサイドトリム1のカットモデル図、
図8は
図6に示すA-A線位置におけるサイドトリム1の断面図である。
【0030】
図5~
図8を参照すると、本実施形態における車室側部構造は、サイドトリム1の基準面1aよりも車幅方向内側に位置し且つ後端壁2a2と前端壁2b2とを連結する連結部3を含む。
【0031】
本実施形態では、連結部3は、サイドトリム1の一部を構成し、前支持部2a及び後支持部2bと一体に成形されている。本実施形態では、連結部3は、端壁部3aと、延伸部3bと、連結側壁部3cと、を有する。連結部3は、例えば、サイドトリム1の前記基準面部の厚み(板厚)と同程度の厚み(板厚)を有している。
【0032】
端壁部3aは、後端壁2a2と前端壁2b2との間において上方に臨む上面を有する部分である。本実施形態では、端壁部3aは、階段状断面を有して車両前後方向に延伸している。つまり、端壁部3aのうちの車幅方向の中間位置に、車両上下方向にオフセットする段差壁3a1が設けられている。端壁部3aの上面のうちの最も上方に位置する最上方面3a2は、平坦な面として形成されている。また、ここでは、端壁部3aのうちの段差壁3a1よりも車幅方向内側の部分は、車幅方向内側下がりで傾斜している。
【0033】
延伸部3bは、端壁部3aの車幅方向内端から車両下方に延びる部分である。ここでは、延伸部3bは、端壁部3aのうちの段差壁3a1よりも車幅方向内側の部分の端部に連続して車両後方に延びている。
【0034】
連結側壁部3cは、サイドトリム1の基準面1aから車幅方向内側に延びた後に車両下方に延びている。ここでは、連結側壁部3cのうちの基準面1aから車幅方向内側に延びた部分3c1は、前支持部2aの前上壁部2a1と後支持部2bの後上壁部2b1との間を接続すると共に前上壁部2a1と後上壁部2b1と一体になって上方を臨む平坦な面を形成している。そして、連結側壁部3cのうちの車両上下方向に延びた部分である側壁部3c2は、連結側壁部3cのうちの基準面1aから延びた部分3c1の車幅方向内端と、端壁部3aの車幅方向外端とを接続している。つまり、連結側壁部3cは端壁部3aと同様に階段状断面を有している。連結側壁部3cの大半の部分は、側壁部3c2で構成されている。
【0035】
以上のように、ラゲッジボード挿入用の領域Vの前側終端は前支持部2aの後端壁2a2で規定され、領域Vの後側終端は後支持部2bの前端壁2b2で規定され、領域Vの車幅方向外側の終端は連結側壁部3cの側壁部3c2で規定されている。本実施形態では、領域Vの下側終端は端壁部3aで規定されている。換言すると、ラゲッジボード挿入用の溝が後端壁2a2、前端壁2b2、端壁部3a及び側壁部3c2との内側に形成され、この溝は車両上下方向の上方及び車幅方向の内方に開放されている。また、連結部3は、上から順に、連結側壁部3c、端壁部3a、延伸部3bの順番で連続して形成され、全体としても階段状断面を有している。
【0036】
次に、ラゲッジボード10の形状及びその支持状態について説明する。
図9はラゲッジボード10の平面図であり、
図10はラゲッジボードの支持状態を説明するための断面図である。
【0037】
ラゲッジボード10は、所定の厚みを有し板状に形成されている。ラゲッジボード10は、平面視で全体として車幅方向に長い概ね矩形の外形を有している。本実施形態では、ラゲッジボード10は、第1当接部10bと、第2当接部10cと、延長部10dと、を有する。
【0038】
第1当接部10bは、ラゲッジボード10が車室(荷室S)内に縦置き姿勢に配置された状態で、右側(車幅方向の一方)のサイドトリム1の端壁部3aの最上方面3a2に当接する部分である。第1当接部10bは、縦置き姿勢で、サイドトリム1の右側のボード外縁部10aの下端に位置し、下方に臨む面を有している。
【0039】
第2当接部10cは、ラゲッジボード10が車室(荷室S)内に縦置き姿勢に配置された状態で、左側(車幅方向の他方)のサイドトリム1の端壁部3aの最上方面3a2に当接する部分である。第2当接部10cは、縦置き姿勢で、サイドトリム1の左側のボード外縁部10aの下端に位置し、下方に臨む面を有している。
【0040】
延長部10dは、第1当接部10bと第2当接部10cとの間に位置し第1当接部10b及び第2当接部10cよりも下方に延びる部分である。延長部10dは、ラゲッジボード10の下縁部を構成している。
【0041】
また、ラゲッジボード10のボード外縁部10aには、第1凹部10e及び第2凹部10fが形成されている。第1凹部10e及び第2凹部10fのそれぞれは、車幅方向外側に開放された切欠きであり、第2凹部10fは第1凹部10eの上方に設けられている。
【0042】
図10を参照すると、本実施形態では、縦置き姿勢をとったラゲッジボード10の延長部10dの下端と車室(荷室S)のフロア上面16aとの間に隙間Gが生じるように、フロア上面16aに対する端壁部3aの最上方面3a2の車両上下方向についての高さ位置が設定されている。
【0043】
本実施形態では、車室側部構造は、ラゲッジボード10を後端壁2a2と前端壁2b2との間に挿入する際などのガイドをなすガイド構造を有している。
【0044】
図5~
図8に戻って、本実施形態では、サイドトリム1は、互いに前後方向に離隔する第1の前ガイド部4a及び第1の後ガイド部4bと、互いに前後方向に離隔する第2の前ガイド部5a及び第2の後ガイド部5bと、をさらに含む。本実施形態では、前ガイド部(4a、5a)及び後ガイド部(4b、5b)は、いずれも、サイドトリム1の一部を構成しており、前支持部2a、後支持部2b及び連結部3と一体に成形されている。
【0045】
サイドトリム1において、各前ガイド部(4a、5a)は前支持部2aの上方に位置し、各後ガイド部(4b、5b)は後支持部2bの上方に位置し、第2の前ガイド部5aは第1の前ガイド部4aの上方に位置し、第2の後ガイド部5bは第1の後ガイド部4bの上方に位置している。
【0046】
各前ガイド部(4a、5a)は前支持部2aの上方において基準面1aから車幅方向内側に突出しており、各後ガイド部(4b、5b)は後支持部2bの上方において基準面1aから車幅方向内側に突出している。
【0047】
第1の前ガイド部4a及び第1の後ガイド部4bは互いに車両前後方向に離隔して並ぶように配置され、第2の前ガイド部5a及び第2の後ガイド部5bは互いに車両前後方向に離隔して並ぶように配置されている。つまり、第1の前ガイド部4aの車両前後方向の後端をなす第1のガイド後端壁4a1と、第1の後ガイド部4bの車両前後方向の前端をなす第1のガイド前端壁4b1は、互いに前後方向に離隔している。そして、第2の前ガイド部5aの車両前後方向の後端をなす第2のガイド後端壁5a1と、第2の後ガイド部5bの車両前後方向の前端をなす第2のガイド前端壁5b1は、互いに前後方向に離隔している。
【0048】
第1の前ガイド部4a及び第2の後ガイド部5bは互いに車両上下方向について異なる位置に配置され、第2の前ガイド部5a及び第1の後ガイド部4bは互いに車両上下方向について異なる位置に配置されている。
【0049】
図11は車室(荷室S)内から視たサイドトリム1の要部の拡大平面図である。
【0050】
前後に並ぶガイド部セット(つまり、第1の前ガイド部4a及び第1の後ガイド部4b、又は、第2の前ガイド部5a及び第2の後ガイド部5b)毎に着目する。この場合、ラゲッジボード10が縦置き姿勢をとった状態において、ガイド後端壁(4a1、5a1)及びガイド前端壁(4b1、5b1)の一方がラゲッジボード10に当接するように配置されると共に、ガイド後端壁(4a1、5a1)及びガイド前端壁(4b1、5b1)の他方がラゲッジボード10に対して離隔するように配置される。
【0051】
本実施形態では、第1の前ガイド部4a及び第1の後ガイド部4bのセットでは、ラゲッジボード10が縦置き姿勢をとった状態において、第1のガイド前端壁4b1がラゲッジボード10に当接し、第1のガイド後端壁4a1がラゲッジボード10に対して離隔している。そして、これとは逆に、第2の前ガイド部5a及び第2の後ガイド部5bのセットでは、ラゲッジボード10が縦置き姿勢をとった状態において、第2のガイド後端壁5a1がラゲッジボード10に当接し、第2のガイド前端壁5b1がラゲッジボード10に対して離隔している。つまり、最上段のガイド部(5a、5b)のセットにおいて、後方に臨むガイド後端壁(5a1)がラゲッジボード10に当接している。したがって、最上段のガイド部(5a、5b)のセットに着目すると、ラゲッジボード10に当接する、ガイド後端壁及びガイド前端壁の一方は、ガイド後端壁(つまり、第2のガイド後端壁5a1)である。
【0052】
そして、車両上下方向について異なる位置に配置されるガイド部セット(つまり、第1の前ガイド部4a及び第2の後ガイド部5b、第2の前ガイド部5a及び第1の後ガイド部4b)毎に着目する。この場合、ラゲッジボード10が縦置き姿勢をとった状態において、第1の前ガイド部4a及び第2の後ガイド部5bのセットでは、第1のガイド後端壁4a1及び第2のガイド前端壁5b1はラゲッジボード10に対して離隔するように配置されている。そして、ラゲッジボード10が縦置き姿勢をとった状態において、第2の前ガイド部5a及び第1の後ガイド部4bのセットでは、第2のガイド後端壁5a1及び第1のガイド前端壁4b1はラゲッジボード10に当接するように配置されている。したがって、本実施形態では、車両上下方向について異なる位置に配置されるガイド部セットのうちのラゲッジボード10に当接するセットに含まれる前ガイド部(ここでは、第2の前ガイド部5a)は上下方向について後ガイド部(ここでは、第1の後ガイド部4b)よりも高い位置に配置されている。
【0053】
図11を参照すると、本実施形態では、第1のガイド後端壁4a1と第1のガイド前端壁4b1との間の離隔距離である第1離隔距離D1は、前支持部2aの後端壁2a2と後支持部2bの前端壁2b2との間の離隔距離である基準離隔距離D0よりも大きく設定されている。第2のガイド後端壁5a1と第2のガイド前端壁5b1との間の離隔距離である第2離隔距離D2は、基準離隔距離D0よりも大きく設定されている。
【0054】
そして、第2離隔距離D2は第1離隔距離D1よりも大きくなるように設定されている。つまり、D2>D1>D0の関係が成立している。さらに、基準離隔距離D0と第2離隔距離D2との差分値ΔD02は基準離隔距離D0と第1離隔距離D1との差分値ΔD01よりも大きくなるように設定されている(ΔD02>ΔD01)。この結果、乗員などが、ラゲッジボード10をラゲッジボード挿入用の領域Vに向けて上方から下方に挿入する際に、ラゲッジボード10が挿入され易くなる。そして、差分値ΔD01が差分値ΔD02より小さいため、挿入作業の際に、ラゲッジボード10との隙間が徐々に小さくなり、その結果、ラゲッジボード10の位置決めが容易になされ得る。さらに、差分値ΔD01に相当する隙間がラゲッジボード10の前方にあり、差分値ΔD02に相当する隙間がラゲッジボード10の後方にある。これにより、乗員などは、ラゲッジボード10を上方から後方に傾けた状態で挿入できるので、ラゲッジボード10を縦置き姿勢で配置する作業の効率化が図られる。
【0055】
本実施形態では、第1位置決め凸部6が後支持部2bの後上壁部2b1の上面に設けられ、第2位置決め凸部7が第1の後ガイド部4bの上面に設けられ、第3位置決め凸部8が第2の後ガイド部5bの上面に設けられている。第1位置決め凸部6は、後支持部2bの前端壁2b2及び連結部3の近傍に設けられている。その結果、サイドトリム1における連結部3および前端壁2b2の周辺部分の剛性の向上が図られている。また、第1位置決め凸部6の前端は後支持部2bの前端壁2b2の直上に配置されている。その結果、第1位置決め凸部6は、縦置き姿勢のラゲッジボード10に伝達され得る荷重を受け止め得る。
【0056】
本実施形態では、サイドトリム1は、ラゲッジボード10を荷室S内において縦置き姿勢だけでなく、横置き姿勢(つまり、車幅方向且つ車両前後方向に延びた姿勢)で支持可能である。
【0057】
例えば、ラゲッジボード10のボード外縁部10aは、サイドトリム1の前支持部2a(前上壁部2a1)の上面及び後支持部2b(後上壁部2b1)の上面や、第1の前ガイド部4aの上面及び第1の後ガイド部4bの上面や、第2の前ガイド部5aの上面及び第2の後ガイド部5bの上面に、載置され得る。その結果、ラゲッジボード10は、車両上下方向の複数の箇所(ここでは、3箇所)で、横置き姿勢で支持され得る。この横置き姿勢のラゲッジボード10は、荷室Sを車両上下方向に区画(分離)している。そして、横置き姿勢において、ラゲッジボード10の第1凹部10eには、第1位置決め凸部6が嵌まり込み、第2凹部10fには、いずれかの位置決め凸部(6、7、8)が嵌まり込むことができるようになっている。
【0058】
本実施形態では、各前ガイド部(4a、5a)は、車幅方向内側から視た平面視で、車体の一部を構成する剛性部材であるクォータパネルの前縁部のピラー19と重なる位置に設けられている。その結果、各前ガイド部(4a、5a)がラゲッジボード10から荷重を受けたとしても、当該荷重が高剛性部材であるピラー19で受け止められるので、各前ガイド部(4a、5a)の変形が効果的に抑制される。
【0059】
図10に戻って、ラゲッジボード10の第1凹部10e及び第2凹部10fは、ラゲッジボード10が縦置き状態にあるとき、車両前後方向の一方から視た平面視で、前支持部2a及び後支持部2b、並びに、第1の前ガイド部4a及び第1の後ガイド部4bと重ならない位置に配置されている。その結果、ラゲッジボード10のボード外縁部10aとこれらの部分(2a、2b、4a、4b)との十分な当接面積が確保され、良好な当接がなされる。
【0060】
また、
図10を参照すると、前支持部2a及び後支持部2bの下方には、車体の一部を構成するホイールハウス21が位置している。そして、発砲ポリプロピレン等の発泡材からなるクッション材20がホイールハウス21の上面で支持され、前支持部2aの前上壁部2a1及び後支持部2bの後上壁部2b1はクッション材20の上面で支持されている。その結果、前上壁部2a1及び後上壁部2b1に作用し得る荷重がクッション材20を介してホイールハウス21によって受け止められ得る。これにより、前支持部2a及び後支持部2bの変形が効果的に抑制される。
【0061】
また、縦置き姿勢のラゲッジボード10が上方後部から荷重を受けたときに、ラゲッジボード10の上部が前方へ、ラゲッジボード10の下部が後方に移動しようとする力が生じ得る。この点、
図8等を参照すると、後支持部2bの車両幅方向内側への突出量は、前支持部2aの車両幅方向内側への突出量よりも大きくなっており、後支持部2bの前端壁2b2で受け得る単位面積当たりの荷重が前支持部2aの後端壁2a2で受け得る単位面積当たりの荷重より小さくなっている。また、後支持部2bの車両前後方向の長さは、前支持部2aの車両前後方向の長さよりも長く設定されている。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る車室側部構造は、前支持部2aと、後支持部2bと、サイドトリム1の基準面1aよりも車幅方向内側に位置する連結部3と、を含み、荷室S内に配置されたラゲッジボード10のボード外縁部10aが前支持部2aの後端壁2a2と後支持部2bの前端壁2b2との間に挿入されることで、荷室S内でラゲッジボード10を縦置き姿勢で支持している。そして、この車室側部構造は、連結部3によって、前支持部2aの後端壁2a2と後支持部2bの前端壁2b2とを連結している。したがって、サイドトリム1におけるラゲッジボード10を縦置き姿勢で支持する主要部分である後端壁2a2及び前端壁2b2を含む部分の剛性が効果的に高まることになり、ラゲッジボード10を縦置き姿勢で支持する支持剛性の向上が図られる。その結果、走行時や荷室への荷物搬入時などに、縦置き姿勢をとったラゲッジボード10に対して、荷重が車両前後方向から作用して、この荷重はサイドトリム1の後端壁2a2及び前端壁2b2に伝達されたとしても、後端壁2a2及び前端壁2b2が変形したり破損したりすることが効果的に抑制又は防止される。したがって、ラゲッジボード10が所望の姿勢(荷室区画状態)で支持され、この状態及び姿勢が維持される。このように、本実施形態に係る車室側部構造は、ラゲッジボード10を縦置き姿勢で支持するための剛性を向上させることができる構造を有している。
【0063】
本実施形態では、連結部3は、後端壁2a2と前端壁2b2との間において上方に臨む上面を有する端壁部3aと、端壁部3aの車幅方向内端から車両下方に延びる延伸部3bと有している。つまり、連結部3は、端壁部3aと延伸部3bとの間で上下方向に屈曲している。これにより、連結部3についての車両前後方向についての剛性が高まり、その結果、連結部3による後端壁2a2及び前端壁2b2の支持剛性が効果的に高まる。また、本実施形態では、端壁部3aのうちの段差壁3a1よりも車幅方向内側の部分は車幅方向内側下がりで傾斜している。その結果、後端壁2a2と前端壁2b2との接続面積は、端壁部3aのうちの段差壁3a1よりも車幅方向内側の部分が水平に延びている場合と比較すると、効果的に増加する。また、端壁部3aのうちの段差壁3a1よりも車幅方向内側の部分にラゲッジボード10が当接する場合には、端壁部3aのうちの段差壁3a1よりも車幅方向内側の部分が傾斜していることによって、端壁部3aにおけるラゲッジボード10との当接面積が増加する。
【0064】
本実施形態では、連結部3の端壁部3aは、階段状断面を有して車両前後方向に延伸しているので、端壁部3aの断面積が増加することになる。その結果、端壁部3aについての車両前後方向についての剛性がさらに高まり、連結部3による後端壁2a2及び前端壁2b2の支持剛性がより効果的に高まる。
【0065】
本実施形態では、連結部3は基準面1aから車幅方向内側に延びた後に車両下方に延びる連結側壁部3cを有しているため、連結部3における端壁部3aよりも上方の部分の剛性の向上も図られ、連結部3による後端壁2a2及び前端壁2b2の支持剛性がさらに顕著に高まる。
【0066】
本実施形態では、ラゲッジボード10は、サイドトリム1の端壁部3aの最上方面3a2に当接する各当接部(10b、10c)と、各当接部(10b、10c)よりも下方に延びる延長部10dと、を有している。これにより、サイドトリム1において、端壁部3aとラゲッジボード10との当接位置を比較的高い位置に容易に設定することができるようになる。その結果、端壁部3aを下方から支持する支持部分が容易に確保され、ラゲッジボード10に対する上下方向についての支持剛性の向上が容易に図られ得る。
【0067】
本実施形態では、縦置き姿勢をとったラゲッジボード10の延長部10dの下端とフロア上面16aとの間に隙間Gが空けられている。したがって、ラゲッジボード10がフロア部16に当接してしまい、フロア上面16aに傷がついてしまうことが防止され、荷室S内の美観が良好に維持され得る。
【0068】
本実施形態では、同じ高さ位置で前後に並ぶガイド部セット(つまり、第1の前ガイド部4a及び第1の後ガイド部4b、又は、第2の前ガイド部5a及び第2の後ガイド部5b)毎に着目すると、ラゲッジボード10が縦置き姿勢をとった状態において、ガイド後端壁(4a1、5a1)及びガイド前端壁(4b1、5b1)の一方がラゲッジボード10に当接し、ガイド後端壁(4a1、5a1)及びガイド前端壁(4b1、5b1)の他方がラゲッジボード10に対して離隔している。つまり、前後に並ぶガイド部セットにおいて、ラゲッジボード10に伝達された荷重が一方のガイド部で受け止められつつ、他方のガイド部がラゲッジボード10に対して非当接となるように配置されている。その結果、ボード挿入用の領域Vへの上方からのラゲッジボード10の挿入が容易になる。
【0069】
ここで、縦置き姿勢でのラゲッジボード10の上下寸法が長くなると、サイドトリム1におけるラゲッジボード10に対する支持点(支持要素)となる後端壁2a2、前端壁2b2及び連結部3(端壁部3a等を含む)等に作用する荷重(モーメント)がテコの原理で大きくなり得る。
【0070】
この点、本実施形態では、同じ高さ位置で前後に並ぶガイド部セット毎に着目した場合、上下方向について支持点(支持要素)よりも高い位置において、ガイド後端壁(4a1、5a1)及びガイド前端壁(4b1、5b1)の一方がラゲッジボード10に当接しており、この当接したガイド後端壁又はガイド前端壁でも荷重を受け止めることができる。その結果、後端壁2a2、前端壁2b2、連結部3の変形などが抑制される。
【0071】
また、縦置き姿勢で配置されたラゲッジボード10の後方側に荷物が積み上げられると、上方側の荷物ほど小物である場合が多いので、車両後方から荷室Sへの荷物の搬入時や減速・停車時などに、上方側の荷物が前後方向に移動し、ラゲッジボード10の上端側の後部に荷重が作用し易い。したがって、前後に並ぶガイド部セットに着目した場合、サイドトリム1は、前側のガイド部がラゲッジボード10に当接する、ガイド部セットを含むとよい。本実施形態では、最上段のガイド部(5a、5b)のセットに着目すると、ラゲッジボード10に当接する、ガイド後端壁及びガイド前端壁の一方は、ガイド後端壁(つまり、第2の前ガイド部5aの第2のガイド後端壁5a1)である。この第2の前ガイド部5aの第2のガイド後端壁5a1によって、ラゲッジボード10に車両後方から作用する荷重が効果的に受け止められる。その結果、後端壁2a2、前端壁2b2、連結部3の変形などが効果的に抑制される。
【0072】
本実施形態では、異なる高さに配置されるガイド部セット(つまり、第1の前ガイド部4a及び第2の後ガイド部5b、第2の前ガイド部5a及び第1の後ガイド部4b)が二組設けられている。そして、縦置き姿勢において、一方の組のガイド部セット(ここでは、第1の前ガイド部4a及び第2の後ガイド部5b)は、いずれもラゲッジボード10に対して離隔しているが、他方の組のガイド部セット(ここでは、第2の前ガイド部5a及び第1の後ガイド部4b)は、いずれもラゲッジボード10に当接している。つまり、サイドトリム1は、互いに上下前後に離隔し且つラゲッジボード10に当接する前ガイド部(5a)及び後ガイド部(4b)を有している。これにより、ラゲッジボード10に伝達された荷重が受け止められて、前支持部2a、後支持部2b、連結部3などの変形が抑制される。さらに、ラゲッジボード10との当接点が上下方向にオフセットされることで、ラゲッジボード10が縦置き姿勢で設置される際に、ラゲッジボード10が前支持部2aと後支持部2bとの間の領域Vに挿入され易くなる。
【0073】
本実施形態では、異なる高さに配置されるガイド部セットのうちのラゲッジボード10に当接するセットに含まれる前ガイド部(ここでは、第2の前ガイド部5a)は上下方向について後ガイド部(ここでは、第1の後ガイド部4b)よりも高い位置に配置されている。これにより、ラゲッジボード10の上端側の後部に荷重が作用し易い場合において、支持点(支持要素)よりも高い、最上段の位置において、荷重を受け止めることができ、後端壁2a2、前端壁2b2、連結部3の変形などが抑制される。
【0074】
なお、本実施形態では、前ガイド部及び後ガイド部は、前支持部2a及び後支持部2bの上方において、上下方向について2段に設けられているが、これに限らず、1段でもよい。つまり、サイドトリム1は、前ガイド部及び後ガイド部として、第1の前ガイド部4a及び第1の後ガイド部4bのみを有してもよいし、第2の前ガイド部5a及び第2の後ガイド部5bのみを有してもよいし、これらのガイド部セットとは異なる高さ位置で、前ガイド部及び後ガイド部を有してもよい。第1の前ガイド部4a及び第1の後ガイド部4bのみの場合は、前ガイド部4aのガイド後端壁4a1がラゲッジボード10に当接するとよい。
【0075】
また、例えば、ラゲッジボード10の上部前方から荷重を受けやすい場合などには、上記とは反対に、前支持部2aの車両幅方向内側への突出量が、後支持部2bの車両幅方向内側への突出量よりも大きく、前支持部2aの車両前後方向の長さが後支持部2bの車両前後方向の長さよりも長く設定されてもよい。
【0076】
本実施形態では、連結部3は前支持部2aと後支持部2bとの間にのみ設けられているが、これに限らず、連結部3は前ガイド部(4a、5a)と後ガイド部(4b、5b)との間にさらに設けられてもよい。この場合、各ガイド部用の連結部3は、ラゲッジボード10と干渉することなく、基準面1aよりも車幅方向内側に位置し且つ前ガイド部のガイド後端壁(4a1、5a1)と後ガイド部のガイド前端壁(4b1、5b1)とを連結すればよい。また、本実施形態では、連結部3により連結される前支持部2a及び後支持部2bは、サイドトリム1における下端側部分に設けられているが、これに限らない。前支持部2a及び後支持部2bは、例えば、第1の前ガイド部4a及び第1の後ガイド部4bに相当する高さ位置にのみ設けられてもよいし、第2の前ガイド部5a及び第2の後ガイド部5bに相当する高さ位置にのみ設けられてもよい。これらの場合、サイドトリム1における下端側部分には、例えば、互いに前後方向に離隔すると共に連結部3によって連結されない前ガイド部及び後ガイド部が設けられる。
【0077】
また、本実施形態では、後端壁2a2の車幅方向の寸法は、前端壁2b2の車幅方向の寸法よりも小さいが、これに限らず、前端壁2b2の車幅方向の寸法と同じでもよいし、前端壁2b2の車幅方向の寸法より大きくてもよい。
【0078】
また、端壁部3aのうちの段差壁3a1よりも車幅方向内側の部分は、車幅方向に傾斜しているが、これに限らず、円弧状に延びていてもよい。この場合、後端壁2a2と前端壁2b2との接続面積がさらに効果的に増加する。また、端壁部3aは、階段状断面を有して車両前後方向に延伸しているが、これに限らず、水平方向に延びてもよいし、全体として車両幅方向内側下がりで傾斜して延びていてもよい。
【0079】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…サイドトリム(側壁)、1a…所定の基準面、
2a…前支持部、2a2…後端壁、2b…後支持部、2b2…前端壁、
3…連結部、3a…端壁部、3a2…最上方面、3b…延伸部、3c…連結側壁部、
4a…第1の前ガイド部(前ガイド部)、4a1…第1のガイド後端壁(ガイド後端壁)、
4b…第1の後ガイド部(後ガイド部)、4b1…第1のガイド前端壁(ガイド前端壁)、
5a…第2の前ガイド部(前ガイド部)、5a1…第2のガイド後端壁(ガイド後端壁)、
5b…第2の後ガイド部(後ガイド部)、5b1…第2のガイド前端壁(ガイド前端壁)、
10…ラゲッジボード、
10a…ボード外縁部(車幅方向外縁部)、10b…第1当接部、10c…第2当接部、10d…延長部、
16a…フロア上面、
D0…基準離隔距離(離隔距離)、D1…第1離隔距離(離隔距離)、D2…第2離隔距離(離隔距離)、G…隙間、S…荷室(車室)